IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒタチ・エナジー・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-冷却システム用の膨張容器 図1
  • 特許-冷却システム用の膨張容器 図2
  • 特許-冷却システム用の膨張容器 図3
  • 特許-冷却システム用の膨張容器 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】冷却システム用の膨張容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/74 20060101AFI20240606BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B65D88/74
F25B1/00 385Z
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022070059
(22)【出願日】2022-04-21
(65)【公開番号】P2022167843
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】21169955
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ストレムベリ
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00117389(EP,A2)
【文献】独国実用新案第08710347(DE,U1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0226197(US,A1)
【文献】実開昭54-018051(JP,U)
【文献】実開平02-059190(JP,U)
【文献】特開2000-039246(JP,A)
【文献】実開昭63-034972(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/74
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む冷却媒体を使用する冷却システム(1)用の膨張容器(10)であって、前記膨張容器(10)は、垂直方向(V)の延長部を有するチャンバ(100)を形成し、前記冷却システム(1)の通常動作中、前記チャンバ(100)は、前記チャンバの周囲大気に対して開放され、
-前記冷却媒体の冷却媒体体積(200)であって、前記チャンバ(100)内の最小冷却媒体レベル(201min)と最大冷却媒体レベル(201max)との間に位置する冷却媒体表面(201)まで前記チャンバ(100)を満たす、冷却媒体体積(200)と、
-前記冷却媒体の密度と前記大気の密度との間の密度を有する流体の流体体積(400)であって、
前記流体体積(400)は、前記冷却媒体表面(201)から流体体積上面(401)まで前記チャンバ(100)を満たし、前記最小冷却媒体レベル(201min)と前記最大冷却媒体レベル(201max)との間の前記冷却媒体表面(201)の各位置について、前記冷却媒体表面(201)から前記流体体積上面(401)までの前記流体体積(400)の厚さが、前記流体体積(400)を介して前記大気が前記冷却媒体に溶解するのを妨げるのに十分であるように選択される、流体体積(400)と、
-大気の非ゼロの空気体積(300)であって、前記空気体積(300)は、前記流体体積上面(401)の垂直上方の前記チャンバ(100)の残りの部分を満たす、非ゼロの空気体積(300)と、
を備え、
前記流体は、アルゴン、キセノン、クリプトン、温室効果ガス、フッ化ガス、ハイドロフルオロカーボンガス、またはパーフルオロカーボンガスである、膨張容器。
【請求項2】
前記流体は、前記冷却媒体に不溶な流体であるか、又は前記流体は前記冷却媒体に可溶である、請求項1に記載の膨張容器。
【請求項3】
前記流体体積(400)は、前記チャンバ(100)内の前記冷却媒体表面(201)の各位置について、前記流体体積(400)の前記厚さが少なくとも2cm、であるように選択される、請求項1または2に記載の膨張容器(10)。
【請求項4】
前記流体体積(400)は、前記チャンバ(100)内の前記冷却媒体表面(201)の各位置について、前記流体体積(400)の前記厚さが50cm未満であるように選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の膨張容器(10)。
【請求項5】
前記冷却媒体は、水道水又は脱イオン水である、請求項1から4のいずれか1項に記載の膨張容器(10)。
【請求項6】
前記チャンバは、大気圧の空気の入口及び/又は出口のための少なくとも1つの空気導管(101)を備える、及び/又は、
前記チャンバ(100)は、冷却媒体の入口及び/又は出口のための少なくとも1つの冷却媒体導管(102、103)を備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の膨張容器(10)。
【請求項7】
前記チャンバ(100)は、前記流体の入口/出口のための流体導管(104)を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の膨張容器(10)。
【請求項8】
前記チャンバ(100)内の前記冷却媒体表面(201)の垂直位置を決定するための冷却媒体レベル測定装置(500)を備え、
前記チャンバ(100)内の流体オーバーフローレベル(201o)は、それを超えると前記チャンバ(100)の体積が前記流体体積(400)に等しくなる前記チャンバ(100)内の垂直レベルとして定義され、
前記冷却媒体レベル測定装置(500)は、前記冷却媒体表面(201)が前記チャンバ(100)の前記流体オーバーフローレベルを超えたかどうかを決定し、超えた場合、前記流体体積(400)を回復するために前記膨張容器(10)への流体の補充の必要性を示す信号を発するように構成される、請求項1から7のいずれか1項に記載の膨張容器(10)。
【請求項9】
前記チャンバは、前記流体の出口のための流体オーバーフロー導管(105)を備え、前記流体オーバーフロー導管(105)は流体アセンブリユニットに接続される、請求項1から8のいずれか1項に記載の膨張容器(10)。
【請求項10】
水を含む冷却媒体を使用する冷却システムにおける膨張容器内の腐食を妨げるための方法であって、前記膨張容器(10)は、垂直方向(V)の延長部を有するチャンバ(100)を形成し、前記冷却システム(1)の通常動作中に前記チャンバの周囲大気に対して開放されるように配置され、前記チャンバ(100)は、前記冷却媒体の冷却媒体体積(200)を備えるように適合され、前記冷却媒体体積(200)は、前記チャンバ(100)の最小冷却媒体レベル(201min)と最大冷却媒体レベル(201max)との間に位置する冷却媒体表面(201)まで前記チャンバ(100)を満たし、
前記方法は、
-ある体積の流体を前記チャンバ(100)内に導入するステップを含み、前記流体は、前記冷却媒体の密度と大気の密度との間の密度を有し、
その結果、前記最小冷却媒体レベル(201min)と前記最大冷却媒体レベル(201max)との間の前記冷却媒体表面(201)の各垂直位置について、前記冷却媒体表面(201)から流体体積上面(401)までの前記流体体積(400)の厚さが、前記大気が前記流体体積(400)を介して前記冷却媒体に溶解するのを妨げるのに十分であるように選択される流体体積(400)が前記チャンバ(100)内に形成され、
前記流体は、アルゴン、キセノン、クリプトン、温室効果ガス、フッ化ガス、ハイドロフルオロカーボンガス、またはパーフルオロカーボンガスである、方法。
【請求項11】
前記方法は、前記冷却システム(1)の動作を開始する前に前記冷却システム(1)の初期セットアップ中に実行され、及び/又は
前記方法は、前記冷却システム(1)の動作期間の後に実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の膨張容器内の流体層を補充するための信号を発する方法であって、
-前記チャンバ(100)内の現在の冷却媒体表面(201)の前記垂直位置を決定するステップと、
-前記現在の冷却媒体表面(201)の前記位置を前記チャンバ(100)の流体オーバーフローレベル(201o)と比較するステップと、
-前記現在の冷却媒体表面(201)の前記位置が前記流体オーバーフローレベル(201o)以上である場合、
前記流体体積(400)を補充する必要性を示す信号を発するステップと、を備える、方法。
【請求項13】
前記流体体積(400)を補充する必要性を示す信号を発する前記ステップの前に、
-現在の冷却媒体表面(201)の前記垂直位置が前記流体オーバーフローレベル(201o)を下回るレベルに戻ったと決定するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記チャンバ(100)は流体供給源(600)に接続され、
-前記流体供給源(600)から前記チャンバ(100)への流体の補充を開始するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
水を含む冷却媒体を使用する冷却システム(1)であって、前記冷却システム(1)は、使用時に大気圧に開放されるように適合された前記チャンバ(100)を形成する請求項1に記載の前記膨張容器(10)を備え、前記チャンバ(100)は、大気圧の空気の入口及び/又は出口のための少なくとも1つの空気導管(101)と、冷却媒体の入口及び/又は出口のための少なくとも1つの冷却媒体導管(102、103)と、前記冷却媒体の密度よりも大きく空気の密度よりも小さい密度を有する流体を前記チャンバ(100)に供給するための流体供給源(600)に接続された少なくとも1つの流体導管とを備え、
前記流体は、アルゴン、キセノン、クリプトン、温室効果ガス、フッ化ガス、ハイドロフルオロカーボンガス、またはパーフルオロカーボンガスである、冷却システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、水を含む冷却媒体を使用する冷却システム用の膨張容器であって、周囲空気に対して開放されている膨張容器に関する。本開示はまた、膨張容器を備える冷却システム、膨張容器内の腐食を防止するための方法、及び膨張容器内の流体層を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
水を含む液体冷却媒体を利用する冷却システムは、例えば送電用途及び産業用に広く使用されている。多くの用途では、純水冷却システムが好ましく、すなわち、液体冷却媒体は、場合によっては不凍剤などの添加剤を含むが、追加の冷却剤は含まず、水自体を含む。
【0003】
純水冷却システムは、例えば、HVDC(高電圧直流)、SVC(静的Var補償器)、整流器及び変換器、冶金加工、研究及び医療用途、非電気的環境などの用途に使用される。
【0004】
冷却システムは、従来、例えば冷却システムの温度変動によって引き起こされる冷却媒体の膨張及び縮小を吸収するための1つ又は複数の膨張容器を備える。したがって、冷却システム用の膨張容器は、様々な体積の冷却媒体を取り込むことができるように設計される。
【0005】
閉鎖膨張容器、すなわち周囲空気及び大気圧に閉じている膨張容器は、一般に加圧された容器である。したがって、それらは、例えば容器の定期的な検査を含む厳しい規制要件の対象となる。また、閉鎖膨張容器を加圧する必要性は、冷却システム内に加圧装置のための追加の空間を必要とし、冷却システム内に閉鎖膨張容器を配置する際に特に懸念が生じる。
【0006】
開放膨張容器は、周囲空気に対して開放されており、したがって大気圧で動作する容器である。したがって、開放膨張容器は、加圧容器のように安全要件を満たすための定期的な検査を必要としない。また、開放膨張容器は、単純な構造及び動作という利点を有し、したがって、冷却システムにおける空間及び配置要件に関して利点を提供する。
【0007】
したがって、水を含む冷却媒体を使用する冷却システムについては開放膨張容器を利用することが望ましい。
【0008】
しかしながら、純水冷却システムなどの水を含む冷却媒体を使用する冷却システムにおける開放膨張容器の1つの欠点は、容器が周囲空気に対して開放されているため、空気中の酸素が水に溶解し得ることである。溶存酸素は、冷却媒体が導電性になるという観点で問題を引き起こし、容器内の腐食も促進するイオンを生成する。これらの欠点のために、水を含む冷却媒体を利用する冷却システムは、従来、閉鎖膨張容器を備えている。
【0009】
本発明の目的は、既存の膨張容器に対する改善を提供しながら、水を含む冷却媒体を使用し、周囲空気に対して開放された冷却システム用の膨張容器を提供することである。
【0010】
発明の概要
上述の目的は、第1の態様では、水を含む冷却媒体を使用する冷却システム用の膨張容器によって達成され、膨張容器は、垂直方向の延長部を有するチャンバを形成し、冷却システムの通常動作中、チャンバは、チャンバの周囲の大気に対して開放されており、
-チャンバ内の最小冷却媒体レベルと最大冷却媒体レベルとの間に位置する冷却媒体表面までチャンバを満たす冷却媒体の冷却媒体体積と、
-冷却媒体の密度と大気の密度との間の密度を有する流体の流体体積であって、
流体体積は、冷却媒体表面から流体体積上面までチャンバを満たし、流体体積は、最小冷却媒体レベルと最大冷却媒体レベルとの間の冷却媒体表面の各位置について、冷却媒体表面から流体体積上面までの流体体積の厚さが、大気が流体体積を介して冷却媒体に溶解するのを妨げるのに十分であるように選択される、流体の流体体積と、
-非ゼロの空気体積の大気であって、空気体積は、流体体積上面の垂直上方のチャンバの残りの部分を満たす、大気と、を備える。
【0011】
膨張容器は、チャンバの大気に対して開放されたチャンバを備える。チャンバが大気に対して開放されていることは、チャンバの内部と周囲空気との間の大気の交換が、チャンバの内部を大気圧に保持することを可能にすることを意味する。したがって、空気フィルタ又は通気口などの装置を、大気にチャンバ内を通過させるように配置することができる。
【0012】
膨張容器のチャンバは、使用時に、冷却システムにおける現在の冷却媒体膨張の必要性に応じてサイズが異なる冷却媒体体積を備える。冷却媒体体積は、冷却媒体表面までチャンバを満たすことになり、これは、容器内の冷却媒体表面の垂直位置がチャンバ内の現在の冷却媒体のサイズに応じて変動することを意味する。膨張容器の通常動作中、冷却媒体表面の位置は、チャンバ内の最小冷却媒体レベルと最大冷却媒体レベルとの間で変動してもよい。したがって、冷却容器のチャンバは、冷却媒体の膨張体積が最小冷却媒体レベルと最大冷却媒体レベルとの間のチャンバの体積に対応するように冷却システムに適合させることができる。
【0013】
膨張容器は、使用時に、流体体積をさらに備える。流体体積は、冷却媒体の密度と大気の密度との間の密度を有する流体の流体体積である。その密度により、流体体積は、冷却媒体表面から流体体積上面までチャンバを満たす。したがって、流体体積は冷却媒体表面に接触する、すなわち、流体体積は冷却媒体体積の真上にある。
【0014】
膨張容器の通常動作中、流体体積は一定である。したがって、冷却媒体表面の垂直位置を変動させる冷却媒体体積の変動は、流体体積をチャンバ内で垂直方向に移動させる。
【0015】
膨張容器は大気圧で周囲空気に対して開放されているため、チャンバは、使用時に、非ゼロの空気体積の大気をさらに備え、空気体積は、流体体積上面の垂直上方のチャンバの残りの部分を満たす。
【0016】
やはり、周囲空気に対する流体体積の密度によって、空気体積は、流体体積上面からチャンバの残りの部分を満たす。したがって、空気体積は流体体積上面に接触する、すなわち、空気体積は流体体積の真上にある。
【0017】
膨張容器の通常動作中、非ゼロの空気体積のサイズは、チャンバ内の冷却媒体体積のサイズの任意の変動を考慮するように変動してもよい。
【0018】
上記で説明したように、流体体積は、チャンバ内の冷却媒体体積と空気体積との間に配置される。したがって、流体体積は、冷却媒体と空気体積との間に層を形成する。
【0019】
流体体積は、最小冷却媒体レベルと最大冷却媒体レベルとの間の冷却媒体表面の各位置について、冷却媒体表面から流体体積上面までの流体体積の厚さが、大気が流体体積を介して冷却媒体に溶解するのを妨げるのに十分であるように選択される。
【0020】
したがって、流体体積は、大気が冷却媒体に溶解するのを妨げ、それに関連する、例えば導電率及び腐食に関する欠点を回避することができる。
【0021】
チャンバ内の冷却媒体表面の位置における流体体積の厚さを決定するためには、容器に導入された流体体積のサイズから流体体積上面の位置を理論的に計算することで十分である。したがって、容器内の流体体積上面の現在位置を実際に決定する必要はない。
【0022】
チャンバが、最小冷却媒体レベルと最大冷却レベルとの間の垂直方向に垂直な平面内に一定の面積を有する場合、流体体積の厚さは、容器の通常動作中に一定であることが理解されよう。
【0023】
しかしながら、チャンバが、最小冷却媒体レベルと最大冷却媒体レベルとの間で、垂直方向に垂直な平面内に変動する面積を有する場合、一定の流体体積の厚さは、冷却媒体表面の異なる垂直位置の間で変動する。この場合、垂直方向に垂直な、最小冷却媒体レベルと最大冷却媒体レベルとの間のチャンバの最大面積における流体体積の厚さが、大気が冷却媒体に溶解するのを妨げるのに十分であると決定することで十分であり得る。
【0024】
流体体積の必要な厚さを決定するために、流体の特性を研究することができる。例えば、比較的高密度のガスを使用する場合、流体体積の必要な厚さは、比較的低密度のガスを使用する場合よりも低くなり得る。また、容器のサイズ及び形状は、ガス層の必要な厚さに影響を及ぼし得る。一般に、より小さい容器は、より大きい容器よりも低い厚さを必要とし得る。
【0025】
したがって、本開示によれば、水を含む冷却媒体を利用する冷却システム用の開放膨張容器が提案され、この膨張容器は、腐食に関連する問題を回避しながら大気圧で動作することができる。
【0026】
任意選択的に、流体は、冷却媒体に不溶性の流体である。したがって、流体は、水に不溶な流体であってもよい。
【0027】
任意選択的に、流体は、イオンを形成することなく冷却媒体に可溶性であってもよい。流体がイオンを形成することなく冷却媒体に可溶性である場合、流体イオンが冷却媒体を導電性にする、又は腐食を引き起こすリスクを回避することができる。したがって、流体は、イオンを形成せずに水に可溶な流体であってもよい。
【0028】
任意選択的に、流体は不活性流体である。
任意選択的に、流体は気体である。
【0029】
任意選択的に、流体は希ガスである。例えば、ガスは、アルゴン、キセノン又はクリプトンである。
【0030】
本明細書において気体又は液体などの物質の状態を指す場合、冷却システムに関連する温度及び大気圧における物質の状態を指す。また、大気の密度及び冷却媒体の密度と比較したガスの密度に言及する場合、比較は、冷却システムに関連する温度及び大気圧で行われるべきである。ガスの密度は、冷却液の密度よりも小さく、同温度の大気の密度よりも大きくなければならない。
【0031】
水を含む冷却媒体は、一般に液体である。
任意選択的に、流体体積は、チャンバ内の冷却媒体表面の各位置について、流体体積の厚さが少なくとも2cm、好ましくは少なくとも3cm、最も好ましくは少なくとも5cmであるように選択される。これらの値は、特にアルゴンなどの希ガスに適していることが分かっている。
【0032】
一般に、流体体積の厚さを大きくすると、空気が冷却媒体に溶解するのを流体体積が妨げることが確実になるが、膨張容器のための流体及び/又は空間の不必要な消費を回避するように流体体積を制限することが依然として望ましい場合がある。上記で概説したように、膨張容器のチャンバは、その通常動作中に、非ゼロの体積の大気を含む。これは、流体体積の厚さが膨張容器内の空気体積の要件によって制限されること、及び本明細書で提案される膨張容器が、冷却媒体体積が例えば最大冷却媒体レベルに達した場合にチャンバから押し出されてしまう初期流体体積などの流体の過剰消費を回避することができることを意味する。
【0033】
任意選択的に、流体体積は、チャンバ内の冷却媒体表面の各位置について、流体体積の厚さが50cm未満、好ましくは15cm未満、最も好ましくは10cm未満であるように選択される、先行する請求項のいずれか1項に記載の膨張容器。
【0034】
任意選択的に、冷却媒体は水道水又は脱イオン水である。水道水又は脱イオン水は、不凍剤を含んでもよい。この場合、冷却システムは、有利には純水システムであってもよい。
【0035】
任意選択的に、冷却媒体は、少なくとも30体積%の水、好ましくは少なくとも40体積%の水を含む。
【0036】
任意選択的に、チャンバは、大気圧の空気の入口及び/又は出口のための少なくとも1つの空気導管を備える。例えば、チャンバは、空気の入口及び出口のための単一の空気導管を備えてもよい。別の例では、チャンバは、空気の入口用の1つの空気導管と、空気の出口用の別の空気導管とを備えてもよい。
【0037】
任意選択的に、空気導管は、吸気用のフィルタを備えてもよい。任意選択的に、空気導管は、弁、例えば二重方向弁を備えてもよい。
【0038】
任意選択的に、空気導管は、チャンバの垂直上方部分、例えばチャンバの最上部に配置されてもよい。
【0039】
任意選択的に、チャンバは、冷却媒体の入口及び/又は出口のための少なくとも1つの冷却媒体導管を備える。
【0040】
例えば、チャンバは、冷却媒体の入口及び出口のための単一の冷却媒体導管を備えてもよい。
【0041】
別の例では、チャンバは、冷却媒体の入口用の1つの冷却媒体導管と、冷却媒体の出口用の1つの冷却媒体導管とを備えてもよい。
【0042】
任意選択的に、冷却媒体導管は、チャンバの垂直下方部分に配置されてもよい。
任意選択的に、冷却媒体導管は、チャンバが周囲空気に対して開放されている位置の垂直下方、例えば空気導管の垂直下方に配置されてもよい。
【0043】
本明細書で使用される「垂直に」又は「垂直」とは、垂直方向のみへの言及を意味する。したがって、互いに垂直下方に位置するアイテムは、異なる水平面に位置するアイテムであり、これらのアイテムは整列される必要はない。
【0044】
任意選択的に、チャンバは、流体の入口/出口のための流体導管を備える。そのような流体導管は、チャンバに流体体積を補充するために使用することができる。
【0045】
例えば、流体用の流体導管は、任意の冷却媒体導管の垂直上方に配置されてもよい。例えば、流体用の流体導管は、空気導管の垂直下方に配置されてもよい。
【0046】
別の代替形態では、流体体積は、例えば空気導管を介して、チャンバへの大気の取り込みを介して補充されてもよい。
【0047】
任意選択的に、膨張容器は、チャンバ内の冷却媒体表面の垂直位置を決定するための冷却媒体レベル測定装置を備える。
【0048】
容器の通常動作中、冷却媒体表面は、チャンバ内の最小冷却媒体レベルと最大冷却媒体レベルとの間で変動してもよい。したがって、容器の通常動作中、流体体積はチャンバ内で一定のままである。
【0049】
しかしながら、チャンバ内の流体オーバーフローレベルは、それを超えるとチャンバの体積が流体体積に等しくなるチャンバ内の垂直レベルとして定義されてもよい。
【0050】
任意選択的に、冷却媒体レベル測定装置は、冷却媒体表面がチャンバの流体オーバーフローレベルを超えたかどうかを決定するように配置されてもよい。冷却媒体表面が流体オーバーフローレベルを超えた場合、これは、チャンバの残りの体積が流体体積及び非ゼロの空気体積を収容するのに十分ではないことを意味し、したがって、冷却媒体は流体体積の少なくとも一部をチャンバから押し出す。したがって、その場合、冷却媒体レベル測定装置は、流体体積を回復するために膨張容器への流体の補充の必要性を示す信号を発するように構成されてもよい。
【0051】
この状況は、冷却システムにおける例外的な事象中に発生する可能性があり、その結果、冷却媒体の膨張が想定される膨張体積よりも大きくなる。冷却システムの通常動作中、チャンバ内の流体体積は、上述のように一定のままであり、補充を必要としない。
【0052】
任意選択的に、冷却媒体レベル測定装置は、冷却媒体表面がチャンバの最大冷却媒体レベルを超えたかどうかを決定し、超えた場合、流体体積を回復するために膨張容器への流体の補充の必要性を示す信号を発するように構成されてもよい。これは、流体の補充を必要とする可能性がある冷却システム内の例外的な事象を示すために使用することができる。
【0053】
冷却媒体レベル測定装置を設けること、及び流体の補充の必要性を示す信号を発することは任意選択であり、冷却システムで例外的な事象が発生した場合に警告するのに有用であると考えられる。
【0054】
例外的な事象がなければ、流体体積はチャンバ内で実質的に一定のままである。しかしながら、それでも流体体積のいくらかのゆっくりとした漏れが経時的に発生する可能性があるため、流体体積を制御し、必要に応じて冷却システムのメンテナンス手順で補充することができることが想定される。そのようなメンテナンスは、例えば、膨張容器の2~3年の運転後に行われ得ることが想定される。
【0055】
流体がチャンバから押し出される場合、それは例えば吸気口を介して出ることができる。
【0056】
任意選択的に、チャンバは、流体の出口のための流体オーバーフロー導管を備えてもよく、流体オーバーフロー導管は流体アセンブリユニットに接続され、例えば、流体アセンブリユニットは流体供給源である。このようにして、チャンバを出る任意の流体を集めて、大気への流体の漏れを防止することができる。
【0057】
第2の態様では、水を含む冷却媒体を使用する冷却システム内の膨張容器内の腐食を妨げるための方法が提供され、膨張容器は、垂直方向の延長部を有するチャンバを形成し、冷却システムの通常動作中にチャンバの周囲の大気に対して開放されるように配置され、チャンバは、冷却媒体の冷却媒体体積を含むように適合され、冷却媒体体積は、チャンバの最小冷却媒体レベルと最大冷却媒体レベルとの間に位置する冷却媒体表面までチャンバを満たし、方法は、
ある体積の流体をチャンバ内に導入するステップであって、流体は、冷却媒体の密度と大気の密度との間の密度を有し、
その結果、最小冷却媒体レベルと最大冷却媒体レベルとの間の冷却媒体表面の各垂直位置について、冷却媒体表面から流体体積上面までの流体体積の厚さが、大気が流体体積を介して冷却媒体に溶解するのを妨げるのに十分であるように選択される流体体積がチャンバ内に形成される。
【0058】
本方法は、冷却システムの動作を開始する前に、冷却システムの初期セットアップ中に実行することができる。
【0059】
任意選択的に、本方法は、冷却システムの動作期間の後に実行される。例えば、本方法は、流体体積が補充を必要とする可能性があるという信号を受信したときに実行することができる。
【0060】
任意選択で、本方法は手動で実行されてもよい。
別の選択肢では、方法は、例えば、チャンバに補充される流体の量を制御する制御ユニットによって制御されてもよい。任意選択的に、そのような制御ユニットは、上記で説明したような冷却媒体測定装置に接続されてもよい。
【0061】
第3の態様では、本発明は、第1の態様による膨張容器内の流体層を補充するための信号を発する方法を含み、方法は、チャンバ内の現在の冷却媒体表面の垂直位置を決定するステップと、
現在の冷却媒体表面の位置をチャンバの流体オーバーフローレベルと比較するステップと、
現在の冷却媒体表面の位置が流体オーバーフローレベル以上である場合、
流体体積を補充する必要性を示す信号を発するステップと、を含む。
【0062】
任意選択的に、本方法は、流体体積を補充する必要性を示す信号を発するステップの前に、現在の冷却媒体表面の垂直位置が流体オーバーフローレベルを下回るレベルに戻ったと決定するステップを含む。このように、冷却媒体表面は、必要な流体体積のための空間がチャンバ内に存在するようなレベルに戻ることが保証される。
【0063】
流体オーバーフローレベルは、最大冷却媒体レベル以上である。
任意選択的に、本方法は、現在の冷却媒体表面の垂直位置が流体オーバーフローレベルを下回るレベルに戻り、流体オーバーフローレベルも最大冷却媒体レベルを下回ったと決定するステップを含むことができる。その結果、流体が補充される前に容器が正常動作に戻ることが保証される。
【0064】
任意選択的に、チャンバは流体供給源に接続されてもよく、本方法は、流体供給源(600)からチャンバ(100)への流体の補充を開始するステップをさらに含む。
【0065】
第4の態様では、水を含む冷却媒体を使用する冷却システムが提供され、冷却システムは、使用時に大気圧に開放されるように適合されたチャンバを形成する膨張容器を備え、チャンバは、大気圧の空気の入口及び/又は出口のための少なくとも1つの空気導管と、冷却媒体の入口及び/又は出口のための少なくとも1つの冷却媒体導管と、冷却媒体の密度よりも大きく空気の密度よりも小さい密度を有する流体をチャンバに供給するための流体供給源に接続された少なくとも1つの流体導管とを備える。
【0066】
任意選択的に、膨張容器は、チャンバ内の冷却媒体表面の垂直位置を決定するための冷却媒体レベル測定装置を備え、冷却システムが作動しているときに、冷却媒体表面がチャンバの流体オーバーフローレベルを超えたかどうかを決定し、超えた場合、流体供給源からチャンバへの流体の補充を開始するように構成される。
【0067】
第5の態様では、水を含む冷却媒体に適合された冷却システムが提供され、冷却システムは膨張容器を備え、
膨張容器は、大気圧に開放されたチャンバを形成し、チャンバ内の冷却媒体表面のための最小冷却媒体レベル及び最大冷却媒体レベルを画定するように適合され、最小冷却媒体レベルと最大冷却媒体レベルとの間のチャンバ内の体積は、冷却システムの冷却媒体膨張体積に等しく、
チャンバ内の最大冷却媒体レベルより上方の体積は、流体体積以上であり、流体体積は、最小冷却媒体レベルと最大冷却媒体レベルとの間の各冷却媒体表面について、媒体表面から流体体積上面までの流体体積が、大気が流体体積を介して冷却媒体に溶解するのを妨げるのに十分であるように選択される。
【0068】
本明細書で使用される場合、冷却システムの冷却媒体膨張体積は、冷却システムの通常動作中に予想される冷却媒体の体積変動である。
【0069】
本明細書に記載の本開示の異なる態様を有利に組み合わせることができることが理解されよう。一態様に関連して説明された特徴及び機能は、本明細書に記載された他の態様にも等しく適用可能である。
【0070】
図面の簡単な説明
次に、本発明の変形例を示す添付の図面を参照して、本発明を以下により完全に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】本発明の第1の変形例による冷却システム用の概略的に示された膨張容器の断面図を示す。
図2】本発明の第2の変形例による冷却システム用の概略的に示された膨張容器の断面図を示す。
図3】本発明の別の変形例による冷却システム用の概略的に示された膨張容器の断面図を示す。
図4】本発明の変形例による膨張容器を備える冷却システムの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
別段の指示がない限り、図面全体を通して同様の参照番号は同様の特徴を示す。
詳細な説明
本開示は、水を含む冷却媒体を使用する冷却システム用の膨張容器に関する。膨張容器は、チャンバの周囲の大気に対して開放されたチャンバを備える。本開示はまた、冷却媒体として水を含み、かつ本明細書に開示される膨張容器を含む冷却システムに関する。冷却システムは、熱を発生する部品を冷却するため、及び熱に敏感な部品を冷却するために、多くの用途で使用されている。
【0073】
図4には、冷却システム1の一例が例示的なスキームで示されている。これは、本明細書に記載の膨張容器10を使用することができ、多数の他の冷却システムにおける適用が可能である冷却システム1の例示的な例である。膨張容器10は、運転中の冷却システム1の冷却媒体の体積の膨張及び縮小を調整するための空間を有するチャンバを有する。膨張容器10は、大気に対して開放されている。
【0074】
冷却システム1は、水を含む冷却媒体を備える。水は、システム内で導電していない脱イオン水であってもよい。本明細書に開示される膨張容器10は、冷却システム1内に配置され、膨張容器10は、膨張容器10の周囲の大気に対して開放されている。冷却システム1内の水は、塵又は粒子を避けるためにメカニカルフィルタ801によって濾過され、水からイオン及び酸素が連続的に取り除かれる。膨張容器10の流れ方向前方には、イオン交換体802及びフィルタ801が配置されている。ポンプ803は、効果的な冷却のために冷却水を循環させ、冷却対象物804に水を循環させるように構成される。ポンプ803は、空気がポンプ803に入らないことを保証するために、膨張容器0の後ろに膨張容器0に結合される。冷却対象物804は、システム1内に結合され、冷却対象物804からエネルギーが受け取られる温水は、システム1内に圧送され、水を冷却する熱交換器805に到達する。ストレーナ806は、システム1内に配置されてもよく、主冷却水用のメカニカルフィルタである。冷却媒体を所望の温度に保つ必要がある場合、バイパス807をシステム1に配置することができる。冷却媒体用の入口808を用いて、必要に応じて冷却媒体を満たす可能性がある。これは、自動又は手動で行うことができる。
【0075】
膨張容器
膨張容器10は、温度変動に起因する冷却媒体の体積変動に対処する。膨張容器10は大気に対して開放されており、容器の上部に換気二重方向弁を含むことができ、システム1からの水が膨張容器10に出入りしているかどうかに応じて、それを通して空気が出入りすることができる。冷却システム1を腐食から保護するために、冷却媒体を空気から保護する流体の流体体積が膨張容器10に含まれる。流体は、不活性ガスであってもよい。大気に対して開放された膨張容器10は、冷却システムのレベルより上のレベルに配置される。
【0076】
フィルタ
小さな粒子がシステム内を循環することを回避するために、冷却システムに微細なフィルタを使用することができる。
【0077】
イオン交換体
水の脱イオンは、システムからイオンを取り除くために使用され得る。水の導電率は、<0.1μS/cm(25°)という低い値に保つことができる。イオン交換体の例は、水を規定のレベルまで脱イオン化する化学樹脂を含むエンクロージャであってもよい。
【0078】
フィルタ801及びイオン交換体802は、冷却システムの浄化部に含まれると考えることができる。
【0079】
ポンプ
ポンプ803は、効果的な冷却のため、及び冷却媒体を冷却対象物804に循環させるために使用することができる。ポンプ803内の空気は、冷却水の循環に悪影響を及ぼす空洞を生成する可能性がある。したがって、ポンプ803は、膨張容器10の直後に連結されてもよい。さらに、空気がポンプ803に入るため、膨張容器10を空にすることはできない。
【0080】
熱交換器
熱交換器805は、例えば、液体から液体への冷却交換器、液体から空気への冷却交換器、又は二相蒸発技術に基づくものであってもよい。
【0081】
冷却対象物
例えば純水冷却システムなどの水を含む冷却媒体を利用する冷却システムを使用して、多数の異なる物体を冷却することができる。
【0082】
冷却対象物の例は、HVDC(高電圧直流)及びSVC(静的Var補償)用途のための半導体弁、コンバータ、整流器、撹拌器、発電機などである。さらなる例は、原子力、風力、HVDC(高電圧直流)及びSVC(静的Var補償)プロジェクト、産業、非電気環境、医療及び研究用途である。
【0083】
冷却システムは、屋内及び屋外環境、沖合及び陸上などのすべてのタイプの環境に設置することができる。
【0084】
上述したように、図4に記載の冷却システムは、本明細書に記載の膨張容器及び方法を使用することができる冷却システムの一例にすぎない。本開示は、追加の構成要素又はより少ない構成要素を含む他の冷却システムに適用されてもよい。
【0085】
図1には、本開示の第1の変形例による膨張容器10が示されている。膨張容器10は、水を含む冷却媒体を使用する冷却システムで使用される。膨張容器10は、垂直方向Vの延長部を有するチャンバ100を形成し、冷却システムの通常動作中、チャンバ100は、チャンバの大気周囲に対して開放されている。膨張容器10は、冷却媒体の冷却媒体体積200を備え、冷却媒体体積200は、チャンバ100内の最小冷却媒体レベル201minと最大冷却媒体レベル201maxとの間に位置する冷却媒体表面201までチャンバ100を満たす。チャンバ100は、冷却媒体の密度と大気の密度との間の密度を有する流体の流体体積400をさらに備える。流体体積400は、冷却媒体表面201から流体体積上面401までチャンバ100を満たし、流体体積400は、最小冷却媒体レベル201minと最大冷却媒体レベル201maxとの間の冷却媒体表面201の各位置について、冷却媒体表面201から流体体積上面401までの流体体積400の厚さが、大気が流体体積400を介して冷却媒体に溶解するのを妨げるのに十分であるように選択される。チャンバ100は、大気の非ゼロの空気体積300をさらに備え、空気体積300は、流体体積上面401の垂直上方のチャンバ100の残りの部分を満たす。
【0086】
流体体積400の目的は、空気が冷却媒体の水と接触するのを妨げることである。空気が水と接触すると、空気からの酸素が水に溶解する。酸素は、例えば空気-水界面を横切る酸素の移動によって水に溶解し得る。水中に溶存する酸素は腐食の原因となる。
【0087】
膨張容器10に含まれる流体は、冷却媒体の密度と空気との間の密度を有し、冷却媒体体積200内の水と空気体積300内の空気との間にガス層を形成する。空気、したがって酸素は、水との接触から妨げられる。これは、空気からの酸素が水に溶解しないことを意味する。
【0088】
流体体積400の厚さを決定するためには、チャンバ100に満たされた流体体積を理論的に使用し、流体体積が冷却媒体表面201の位置で始まると仮定することで十分である。したがって、上部流体表面401の垂直位置は、実際に決定されるのではなく、理論的に計算されてもよい。
【0089】
「大気に対して開放されている」とは、膨張容器10の外側の大気が膨張容器10にアクセスでき、容器内の圧力が大気圧であることを意味する。空気は、開口部を介して膨張容器10にアクセスする。開口部は、例えば空気導管101であってもよく、空気導管101は弁を備えてもよい。弁は、二方向弁であってもよい。膨張容器10はさらに、容器の上部で完全に開いている容器であってもよい。この場合、容器の上部に別個の蓋を配置することができるが、膨張容器10への空気アクセスが可能である。膨張容器には必ずしも屋根や上部カバーが必要ではないが、容器が室外にある場合には、雨や汚れが膨張容器10に侵入するのを防ぐために屋根を有することが好ましい。
【0090】
膨張容器10の開口部によって、容器内の空気も膨張容器10から出ることができる。冷却システム内の冷却液が膨張すると、冷却媒体表面201は流体体積表面401と同様に上方に移動し、空気は膨張容器10から出るように強制される。さらに、冷却システム内の冷却液の体積200が減少すると、空気は反対方向に膨張容器10に入り、冷却媒体表面201が下がり、流体体積表面401が下がる。チャンバ100が空気導管101を備える場合、チャンバ100は、大気圧の空気の入口及び/又は出口のための少なくとも1つの空気導管101を備えることができる。空気導管101は、チャンバの上端又はその近傍に配置されてもよい。さらに、空気導管101は、二重方向弁を備えてもよい。空気導管101はまた、汚れ及び塵が膨張容器10に入るのを妨げるためのフィルタを備えてもよい。
【0091】
流体は、冷却媒体に不溶な流体であってもよいし、イオンを形成することなく冷却媒体に可溶であってもよい。流体は、冷却媒体体積200の上に層を形成する不活性流体でなければならない。
【0092】
好ましい流体はガスである。有利には、ガスは希ガスであってもよい。例えば、ガスは、アルゴン、キセノン及びクリプトンから選択されてもよい。
【0093】
代替的な重質ガスは、温室効果ガス又はフッ化ガス、例えばハイドロフルオロカーボンガス又はパーフルオロカーボンガスであってもよい。
【0094】
膨張容器は大気に対して開放されているが、膨張容器10のチャンバ100は好ましくは環境から保護されている。したがって、流体体積400は、例えば風などの環境の影響を受けないが、冷却システム内の容器10の通常動作中に実質的に一定の流体体積400でチャンバ100内に残る。
【0095】
流体体積400は、チャンバ内の流体体積400の厚さが少なくとも2cm、好ましくは少なくとも3cm、最も好ましくは少なくとも5cmであるように選択され得る。これは、冷却媒体表面201の各位置について有効である。冷却媒体表面201は、容器10の動作中に冷却媒体体積200が膨張しているか又は縮小しているときに垂直に移動することが理解されよう。冷却媒体表面201は、最小冷却媒体レベル201minと最大冷却媒体レベル201maxとの間で移動する。チャンバ100が垂直方向Vに垂直な規則的な断面を有する場合、流体体積400の厚さは、冷却媒体表面201のすべての垂直位置について同じになる。しかしながら、垂直方向に垂直なチャンバ100の断面が規則的でない場合、流体体積400の厚さは、容器内の冷却媒体表面201の異なる位置間で変動する。
【0096】
流体層が厚いほど、空気が冷却媒体表面201に到達するのをより良好に妨げる。しかしながら、薄層であれば、使用される流体がより少なくなるため、より安価である。
【0097】
より小さな容器は、表面上の変動が少ないために表面被覆率が維持されるので、より薄い流体層が必要となる場合がある。
【0098】
流体体積400は、チャンバ100内の冷却媒体表面201の各位置に対する流体体積400の厚さが50cm未満、好ましくは15cm未満、好ましくは10cm未満であるように選択され得る。空気及び酸素が冷却媒体表面201に到達するのを妨げるのに有効な流体体積の厚さが達成され、同時に、流体体積400の体積の厚さが必要以上に高くなくてもよいため、費用効果の高い冷却システムが達成される。
【0099】
冷却媒体は、水道水又は脱イオン水であってもよい。水道水又は脱イオン水は、不凍剤を含んでもよい。不凍剤はグリコールであってもよい。冷却システムが、温度が水の凍結温度より低いことがある環境に位置する場合には、不凍液の添加が好ましい。
【0100】
チャンバ100は、冷却媒体の入口及び/又は出口のための少なくとも1つの冷却媒体導管102、103を備えてもよい。冷却媒体導管102、103は、チャンバ100の下端に、又はチャンバの下端に隣接して配置されてもよい。チャンバの底部に冷却媒体導管102、103を配置することにより、冷却媒体がチャンバに入るときに冷却媒体表面201が移動するリスクが低減される。
【0101】
図1に示す変形例のように、膨張容器が冷却媒体の入口及び出口それぞれに2つの冷却媒体導管102、103を使用する場合、膨張容器内の水の循環が存在する。これは、イオンが水に含まれることを回避することが望まれるHVDCにしばしば使用される。静水はイオンを生成し得る。
【0102】
図1の変形形態では、空気導管101は、冷却媒体導管102、103の垂直上方に配置される。
【0103】
本開示による膨張容器の別の例を図2に示す。図2の膨張容器は、図1の膨張容器と概ね同様であり、同様の特徴の説明はここでは繰り返さない。膨張容器10は、流体の入口/出口のための流体導管104を備えてもよい。
【0104】
上述したように、膨張容器10の通常動作中、流体体積400は実質的に一定であり、補充する必要はない。
【0105】
しかしながら、冷却システム1の例外的な状況では、チャンバ100に流体を補充する必要があり得る。例えば、冷却媒体体積200が膨張している場合、すなわち、冷却媒体表面201が最大冷却媒体レベル201maxよりも高いレベルまで上昇するような量で冷却媒体がチャンバ100に入っている場合、膨張容器10内にオーバーフローが存在し得る。例えば、冷却媒体表面201は、流体体積400及びその流体体積上面401がチャンバ100の上部に到達するほど高いチャンバ100内のレベルに到達することができ、これは、流体体積400の少なくとも一部が空気導管101又は流体導管104を介してチャンバ100から出ることを意味する。
【0106】
図2に示すように、膨張容器10は、チャンバ100内の冷却媒体表面201の垂直位置を決定するための冷却媒体レベル測定装置500を備えてもよい。冷却媒体が膨張しているか又は体積が減少しているとき、冷却媒体表面201は、上方又は下方に移動する。冷却媒体の膨張がオーバーフローをもたらす場合、すなわち、流体が空気導管101又は流体導管104を介して膨張容器から出る場合、流体を補充するための信号が送信される。冷却媒体表面201が最大冷却媒体レベル201maxを下回るレベルまで戻った後に、流体を補充することができる。任意選択的に、冷却媒体がチャンバ100を出るほどに冷却媒体の体積が膨張している場合、冷却媒体を補充するための信号を送信することができる。
【0107】
チャンバ100は、それを超えるとチャンバ100の体積が流体体積400に等しくなるチャンバ100内の垂直レベルとして定義される流体オーバーフローレベル201oを有することができる。流体オーバーフローレベル201oより上のチャンバ体積は、流体体積400に等しい。チャンバ100内の冷却媒体体積200が大きすぎて、冷却媒体表面201がチャンバの流体オーバーフローレベル20oを超えると、流体体積400がオーバーフローする。冷却媒体レベル測定装置500は、冷却媒体表面201がチャンバの流体オーバーフローレベル201oを超えたかどうかを決定するように構成されてもよい。流体オーバーフローレベル201oを超えた場合、流体体積400を回復するために膨張容器10に流体を補充する必要性を示す信号が発せられてもよい。冷却媒体のオーバーフローがある状況は例外的な状況である。冷却システムの通常動作下では、オーバーフローは発生しないと予想される。
【0108】
冷却媒体レベル測定装置500は、代替的に又は追加的に、冷却媒体表面201がチャンバの最大冷却媒体レベル201maxを超えたかどうかを決定するように構成されてもよい。超えた場合、流体体積400を回復するために膨張容器10に流体を補充する必要性を示す信号が発せられてもよい。これは、流体体積400を補充する必要がある可能性があること、又は最大冷却媒体レベルがチャンバ100の高レベルに設定されている場合、流体のオーバーフローがあり、流体を補充する必要があり得ることのいずれかであり得る。
【0109】
冷却媒体レベル測定装置500は、レベルセンサ、レーダなどを使用するなど、任意の適切な決定方法で決定を実行するように構成されてもよい。
【0110】
上述したように、測定装置500は任意である。測定装置500が使用されない場合、メンテナンス中に流体の補充を実行することができる。例えば手動検査のための可視冷却媒体表面レベルインジケータは、膨張容器と流体接続して膨張容器の外側に配置されたガラス管とすることができ、冷却媒体表面レベルを見ることができる。
【0111】
さらに、図1に例示されるように、膨張容器は、流体供給源600に接続されてもよい。流体供給源600は、例えばそのような信号が発せられたときに流体を補充するために使用される流体を備える。流体供給源600は、1つ又は複数の弁601を介して膨張容器10に接続されてもよい。例えば、冷却媒体表面201が流体オーバーフローレベル201oを超えたことを測定装置500が示すと、弁601を開いて流体供給源600から流体を補充することができる。しかしながら、補充の前に、現在の冷却媒体表面201の垂直位置が流体オーバーフローレベル201oより下のレベルに戻ったと決定することができる。
【0112】
本開示はさらに、水を含む冷却媒体を使用する冷却システム1における腐食を防止するための方法に関する。膨張容器10は、垂直方向Vに延びるチャンバ100を形成し、冷却システム1の通常動作中にチャンバの周囲の大気に対して開放されるように配置され、チャンバ100は、冷却媒体の冷却媒体体積200を含むように適合され、冷却媒体体積200は、チャンバ100の最小冷却媒体レベル201minと最大冷却媒体レベル201maxとの間に位置する冷却媒体表面201までチャンバ100を満たす。本方法は、 ある体積の流体をチャンバ100内に導入するステップであって、流体は、冷却媒体の密度と大気の密度との間の密度を有し、
その結果、最小冷却媒体レベル201minと最大冷却媒体レベル201maxとの間の冷却媒体表面201の各垂直位置について、冷却媒体表面201から流体体積上面401までの流体体積400の厚さが、大気が流体体積を介して冷却媒体に溶解するのを妨げるのに十分であるように選択される流体体積400がチャンバ100内に形成される。
【0113】
本方法は、冷却システム1の動作を開始する前に、冷却システム1の初期セットアップ中に実行することができる。大気に対して開放された膨張容器を使用する既存の冷却システムを使用することができ、ある体積の流体を開口部を介して膨張容器に入れることができる。流体は、補充開口部を介して、又は空気導管101を介して入れられてもよい。
【0114】
方法はまた、冷却システム1の動作期間の後に実行されてもよい。例えば、流体体積400が補充を必要とする可能性があるという信号の受信時であってもよい。
【0115】
システム内で流体のオーバーフローを引き起こす例外的な事象が発生しなくても、冷却システムの定期的なメンテナンス中に流体体積を有利に制御し、必要に応じて補充することができ、これは例えば2~3年ごとに実行することができることが想定される。
【0116】
本開示はまた、本明細書に開示される膨張容器10内の流体層を補充するための信号を発する方法に関する。本方法は、
チャンバ100内の現在の冷却媒体表面201の垂直位置を決定するステップと、
現在の冷却媒体表面201の位置をチャンバ100の流体オーバーフローレベル201oと比較するステップと、
現在の冷却媒体表面201の位置が流体オーバーフローレベル201o以上である場合、
流体体積400を補充する必要性を示す信号を発するステップと、を含む。
【0117】
任意選択的に、流体体積400を補充する必要性を示す信号を発するステップの前に、本方法は、現在の冷却媒体表面201の垂直位置が流体オーバーフローレベル201oを下回るレベルに戻ったと決定するステップを含む。この場合、膨張容器に流体を補充するための十分なスペースがある。
【0118】
本方法は、チャンバ100が流体供給源600に接続されることをさらに含むことができ、本方法は、
流体供給源600からチャンバ100への流体の補充を開始するステップをさらに含むことができる。
【0119】
流体オーバーフローレベル201oは、最大冷却媒体レベル201max以上である。最大冷却媒体レベル201maxが流体オーバーフローレベル201oに達すると、流体のオーバーフローが生じる。
【0120】
本開示はまた、水を含む冷却媒体を使用する冷却システム1に関し、冷却システム1は、使用時に大気圧に開放されるように適合されたチャンバ100を形成する膨張容器10を備え、チャンバ100は、大気圧の空気の入口及び/又は出口のための少なくとも1つの空気導管101と、冷却媒体の入口及び/又は出口のための少なくとも1つの冷却媒体導管102、103と、冷却媒体よりも大きく空気よりも小さい密度を有する流体をチャンバ100に供給するための流体供給源600に接続された少なくとも1つの流体導管104とを備える。
【0121】
本開示はさらに、冷却システム1に関し、膨張容器10は、チャンバ100内の冷却媒体表面201の垂直位置を決定するための冷却媒体レベル測定装置500を備え、冷却システム1が動作しているときに、冷却媒体表面201がチャンバの流体オーバーフローレベル201oを超えたかどうかを決定し、超えた場合、流体供給源600からチャンバ100への流体の補充を開始するように構成される。
【0122】
本開示はまた、水を含む冷却媒体に適合された冷却システム1に関し、冷却システム1は膨張容器10を備える。膨張容器は、大気圧に開放されたチャンバ100を形成し、チャンバ100内の冷却媒体表面201について最小冷却媒体レベル201min及び最大冷却媒体レベル201maxを画定するように適合される。最小冷却媒体レベル(201min)と最大冷却媒体レベル201maxとの間のチャンバ100内の体積は、冷却システム1の冷却媒体膨張体積に等しく、チャンバ100内の最大冷却媒体レベル201maxより上方の体積は、流体体積400以上であり、流体体積400は、最小冷却媒体レベル201minと最大冷却媒体レベル201maxとの間の各冷却媒体表面201について、媒体表面201から流体体積上面401までの流体体積400が、大気が流体体積を介して冷却媒体に溶解するのを妨げるのに十分であるように選択される。
【0123】
本開示による膨張容器の別の例を図3に示す。図3の膨張容器は、図1及び図2の膨張容器と概ね同様であり、同様の特徴の説明はここでは繰り返さない。
【0124】
チャンバ100は、流体の出口のための流体オーバーフロー導管105を備えることができ、流体オーバーフロー導管105は流体アセンブリユニットに接続される。流体アセンブリユニットは、流体供給源600であってもよい。流体体積400がオーバーフロー導管105のレベルまで増加すると、いくらかの流体が流体供給源600に流れることがある。オーバーフローした流体は、流体の補充のために後で再利用される可能性がある。任意選択で、流体オーバーフロー導管105は、代わりに、後で再使用するために流体を集めるための流体アセンブリユニットに接続されてもよい。したがって、環境及び経済のために、流体が膨張容器10から漏れないことを確実にすることができる。
【0125】
本明細書に記載の容器、システム及び方法の多数の代替物が利用可能であることが理解されよう。
【0126】
本明細書に開示される方法は、制御ユニット、例えば、容器及び/又は冷却システムを制御するための上記のような測定装置に接続された制御ユニットによって実施されてもよいことが理解されよう。
図1
図2
図3
図4