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特許7499322リチウム二次電池用正極活物質、およびこれを含むリチウム二次電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240606BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240606BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022520064
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2019012962
(87)【国際公開番号】W WO2021066229
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(73)【特許権者】
【識別番号】523180436
【氏名又は名称】ポスコヒューチャーエム株式会社
【氏名又は名称原語表記】POSCO FUTURE M CO. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジョンフン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 チャン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヨン サン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、 サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ファンボ、 グン
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-239434(JP,A)
【文献】特開2009-289726(JP,A)
【文献】特開2009-117241(JP,A)
【文献】特開2008-270161(JP,A)
【文献】特開2015-201432(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0086403(KR,A)
【文献】特開2015-122234(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0297947(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/500-4/62
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含むリチウム金属酸化物であって、
前記ニッケルの含有量は金属全体モル数基準50mol%以上であり、
前記リチウム金属酸化物はタングステン(W)およびホウ素(B)がドーピングされたものであり、
一次粒子からなる二次粒子形態であり、前記リチウム金属酸化物内の金属1モル%に対して、タングステン(W)は0.0005~0.005モル%ドーピングされ、ホウ素(B)は0.0005~0.005モル%ドーピングされた、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記二次粒子の比表面積は0.19m/g以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記一次粒子の結晶粒(grain)の大きさは100~500nmである、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記一次粒子は層状(layered)構造である一次粒子および岩塩(Rocksalt)構造である一次粒子を全て含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、
リチウム金属酸化物であり、タングステン(W)およびホウ素(B)がドーピングされた、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、下記化学式1で表される、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[化学式1]
Li[(NiCoMn1-b-cA’]O
(前記化学式1で、
0.8≦a≦1.3、0.001≦b≦0.015、0≦c≦0.1、0.50≦x≦0.95、および0≦y≦0.3、0<z≦0.5であり、
AはWおよびBであり、
A’はZr、Ti、Al、およびMgの中から選択された少なくともいずれか一つである。)
【請求項7】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、
リチウム金属酸化物であり、タングステン(W)およびホウ素(B)がドーピングされた構造であり、
前記ホウ素(B)はB形態で表面部にドーピングされ、
前記タングステン(W)はWO形態で表面部にドーピングされ、WO形態で内部にドーピングされた、請求項1~いずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含むリチウム金属酸化物であり、
前記ニッケルの含有量は金属全体モル数基準50mol%以上であり、
前記リチウム金属酸化物はタングステン(W)およびホウ素(B)がドーピングされたものであり、
前記リチウム金属酸化物内の金属1モル%に対して、タングステン(W)は0.0005~0.005モル%ドーピングされ、ホウ素(B)は0.0005~0.005モル%ドーピングされた、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項9】
正極;
負極;および
電解質;を含み、
前記正極は、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、リチウム二次電池用正極活物質、およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、高性能の小型電池の形態で作製され、スマートフォン、ノートパソコン、およびコンピュータをはじめとする移動用情報通信機器のエネルギー貯蔵源として使用されているだけでなく、近年は高出力大型輸送機器用電池の形態で作製して電気自動車(Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle)などに活用するための研究も行われている。
【0003】
このような小型および大型分野を全て含めるためには、充放電特性、寿命特性、高率特性、高温での安定性などに優れた二次電池が要求される。これと関連して、リチウム二次電池の場合、基本的に高い電圧および高いエネルギー密度を有しているため、前記のような要求に一応符合するが、大型分野に適用されるには依然として先決されるべき問題が残っている。
【0004】
具体的には、リチウム二次電池の主要構成要素のうち、正極活物質の場合、他の要素に比べて生産単価が高いものであり、現在主に市販される正極活物質としてはLiCoOなどがある。
【0005】
しかし、前記正極活物質の原価を節減する問題だけでなく、充放電を繰り返すことによって前記正極活物質の主成分が溶出する問題、そして電池内部の水分などにより電解質が分解される場合に前記正極活物質が劣化したり、電池内部の抵抗が増加する問題などが指摘されており、まだこのような問題が解消されていない実情である。
【0006】
また、LCOを代替する正極素材として高容量化が可能なNCMが注目されており、ハイニッケル(High Nickel)組成に応じた安全性と寿命特性改善のための研究開発が近年活発に行われている。高容量のためにNi組成を高めれば相対的にMn、Co含有量が減って安全性と出力特性が落ちるようになり、容量退化が相対的に急速に進行する。多様な元素のドーピングとコーティング工程を通じてこの問題を解決しようとする試みが続いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高容量正極材ハイニッケル(High Nickel)NCMの寿命特性の問題を補完しようとする。より具体的には、放電容量およびレート(rate)特性を維持しながら、寿命特性の容量減少の問題を改善させて長寿命を維持しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、一次粒子からなる二次粒子形態であり、前記一次粒子は表面が粗い構造であるリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0009】
前記二次粒子の比表面積は0.19m/g以下であってもよい。より具体的には、0超過および0.19m/g以下であってもよい。
【0010】
前記一次粒子の結晶粒(grain)の大きさは100~500nmであってもよい。より具体的には、200~400nmであってもよい。
【0011】
前記一次粒子は層状(layered)構造である一次粒子および岩塩(Rocksalt)構造である一次粒子を全て含むことができる。
【0012】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、リチウム金属酸化物であり、タングステン(W)およびホウ素(B)がドーピングされたものであってもよい。
【0013】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、リチウム金属酸化物であり、タングステン(W)およびホウ素(B)がドーピングされた構造であり、前記リチウム金属酸化物内の金属1モル%に対して、タングステン(W)は0.0005~0.005モル%ドーピングされ、ホウ素(B)は0.0005~0.005モル%ドーピングされたものであってもよい。
【0014】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、下記化学式1で表されてもよい。
[化学式1]
Li[(NiCoMn1-b-cA’]O
前記化学式1において、0.8≦a≦1.3、0.001≦b≦0.015、0≦c≦0.1、0.50≦x≦0.95、および0≦y≦0.3、0<z≦0.5であり、AはWおよびBであり、A’はZr、Ti、Al、およびMgの中から選択された少なくともいずれか一つである。
【0015】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、リチウム金属酸化物であり、タングステン(W)およびホウ素(B)がドーピングされた構造であり、前記ホウ素(B)はB形態で表面部にドーピングされ、前記タングステン(W)はWO形態で表面部にドーピングされ、WO形態で内部にドーピングされたものであってもよい。
【0016】
本発明の他の一態様では、リチウム金属酸化物であり、タングステン(W)およびホウ素(B)がドーピングされたリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0017】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、リチウム金属酸化物であり、タングステン(W)およびホウ素(B)がドーピングされた構造であり、前記リチウム金属酸化物内の金属1モル%に対して、タングステン(W)は0.0005~0.005モル%ドーピングされ、ホウ素(B)は0.0005~0.005モル%ドーピングされたものであってもよい。
【0018】
本発明の他の一態様では、正極;負極;および電解質;を含み、前記正極は、前述の本発明の一態様によるリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
放電容量およびレート(rate)特性を維持しながら、寿命特性の容量減少の問題を改善させて長寿命を維持する正極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】合成に含まれる原料に対するTGA結果である。
図2a】正極材の合成後にXRDとXPS分析を行った結果である。
図2b】正極材の合成後にXRDとXPS分析を行った結果である。
図3a】電気化学評価のうち初期充放電曲線とC-rate評価結果である。
図3b】電気化学評価のうち初期充放電曲線とC-rate評価結果である。
図4a】電気化学評価のうち常温/高温寿命特性評価結果である。
図4b】電気化学評価のうち常温/高温寿命特性評価結果である。
図5a】サイクリックボルタンメトリーと微分容量曲線の分析結果である。
図5b】サイクリックボルタンメトリーと微分容量曲線の分析結果である。
図6】インピーダンス測定結果である。
図7】In-situ XRD測定結果である。
図8】FE-SEMを通じたモルフォロジー(morphology)分析内容である。
図9】低電圧SEM分析結果である。
図10】低電圧SEM分析結果である。
図11】FE-TEM分析結果である。
図12】回折パターンによる結晶構造分析結果である。
図13】粒子強度測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、本発明はこれによって制限されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇のみによって定義される。
【0022】
本発明の一態様では、一次粒子からなる二次粒子形態であり、前記一次粒子は表面が粗い構造であるリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0023】
前記一次粒子は、前述のように、タングステンおよびホウ素のドーピング効果により成長時のモルフォロジー(morphology)の変化を意味する。これについては後述する実施例の部分で詳細に説明する。
【0024】
前記一次粒子は平均結晶粒が100~500nmであってもよい。これは当該ドーピングを通じて約40~50%程度の減少率を見せる水準である。
【0025】
より具体的に、タングステンおよびホウ素ドーピングを行わない比較(Pristine)物質に比べて縦横比が大きくなる構造(ニードル(needle)構造)であってもよい。これによって、一次粒子がより濃密(dense)に形成され得るようになる。
【0026】
より具体的には、タングステンのドーピングにより結晶粒の成長が抑制されると考えられ、これによって一次粒子が薄くて長く成長され得る。これによって、二次粒子の内部空隙率が減少するようになると推測される。
【0027】
より具体的には、前記二次粒子内部の空隙はタングステンおよびホウ素ドーピングを行わない比較(Pristine)物質に比べて10~30体積%以下であってもよい。
【0028】
より具体的には、前記二次粒子の比表面積は0.19m/g以下であってもよい。より具体的には、より濃密(dense)な構造の一次粒子により二次粒子の比表面積はむしろ減少するようになる。二次粒子の比表面積の減少は電解液との副反応が抑制されて寿命性能向上および粒子強度増加の要因になる。
【0029】
結晶学的に前記一次粒子は、層状(layered)構造である一次粒子および岩塩(Rocksalt)構造である一次粒子を全て含むことができる。より具体的には、層状(layered)構造および岩塩(Rocksalt)構造が混在されている形態であってもよい。
【0030】
前述のように、前記リチウム二次電池用正極活物質は、リチウム金属酸化物であり、タングステン(W)およびホウ素(B)がドーピングされた形態であってもよい。
【0031】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、リチウム金属酸化物であり、タングステン(W)およびホウ素(B)がドーピングされた構造であり、前記リチウム金属酸化物内の金属1モル%に対して、タングステン(W)は0.0005~0.005モル%ドーピングされ、ホウ素(B)は0.0005~0.005モル%ドーピングされた形態であってもよい。
【0032】
具体的な例を挙げると、ドーピング原料にWB(tungsten boride)を使用することができ、このような場合、タングステンおよびホウ素が同一のモル%でドーピングされ得る。
【0033】
ドーピング量が3,000ppmまでは抵抗が減る傾向があり、寿命特性が向上する効果がある。ただし、3,000ppmで初期放電容量および粒子強度が小幅減少することを確認した(図13参照)。
【0034】
より具体的には、前記リチウム二次電池用正極活物質は、下記化学式1で表されてもよい。
【0035】
[化学式1]
Li[(NiCoMn1-b-cA’]O
【0036】
前記化学式1において、0.8≦a≦1.3、0.001≦b≦0.015、0≦c≦0.1、0.50≦x≦0.95、および0≦y≦0.3、0<z≦0.5であり、AはWおよびBであり、A’はZr、Ti、Al、およびMgの中から選択された少なくともいずれか一つである。
【0037】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、リチウム金属酸化物であり、タングステン(W)およびホウ素(B)がドーピングされた構造であり、前記ホウ素(B)はB形態で表面部にドーピングされ、前記タングステン(W)はWO形態で表面部にドーピングされ、WO形態で内部にドーピングされ得る。
【0038】
つまり、ホウ素は二次粒子の外部に位置して実質的にコーティング層のように電解液との反応を抑制する役割を果たすことができる。
【0039】
本発明のまた他の一態様によれば、正極;負極;および電解質;を含み、前記正極は、前述したもののうちのいずれか一つによるリチウム二次電池用正極活物質を含む、リチウム二次電池を提供する。
【0040】
前記正極は、正極集電体、および前記正極集電体の上に形成される正極活物質層を含む。前記正極活物質層は、前述した正極活物質、そして選択的にバインダー、導電剤、またはこれらの組み合わせを含む。
【0041】
以下、前述した正極活物質に対する重複説明は省略し、リチウム二次電池に含まれる残りの構成を説明する。
【0042】
前記集電体としては、アルミニウムを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0043】
前記バインダーは、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどであってもよい。
【0044】
前記導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、電池において化学変化を生じさせず、電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能である。導電剤の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを使用することができ、また、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上を混合して使用することができる。
【0045】
前記負極は、集電体、および前記集電体の上に形成された負極活物質層を含む。
【0046】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0047】
前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー組成物、および/または導電剤を含む。
【0048】
前記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0049】
前記負極活物質とバインダー組成物、導電剤に対する説明は省略する。
【0050】
前記電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。前記非水性有機溶媒とリチウム塩は、商用のものであれば制限なしに適用され得るため、詳しい説明は省略する。
【実施例
【0051】
以下、本発明の好ましい実施例および試験例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【0052】
<本発明の一実施例によるリチウム二次電池用正極活物質の製造およびこれを含むリチウム二次電池(Half-cell)の作製>
比較例および実施例1-3:異種元素でドーピングされたリチウム二次電池用正極活物質の製造
目的とする化学量論的モル比になるように、ニッケル系金属水酸化物前駆体、リチウムの原料物質であるLiOH、WおよびB原料であるWB(tungsten boride)を乾式で混合した。
【0053】
【表1】
【0054】
乾式混合物計100gの混合物を耐火匣(saggar)に充填させ、酸素(O)雰囲気下の焼結炉で、740℃まで2.5℃/minで昇温し、13時間維持した。
【0055】
タングステンとホウ素の添加量によりSPL.1からSPL.3まで表記した。(WB 1,000ppm-SPL.1、WB 2,000ppm-SPL.2、WB 3,000ppm-SPL.3)
【0056】
タングステンとホウ素を添加しないものを比較例とした。
【0057】
これによって得られた物質を粉砕分級して正極活物質として得た。
【0058】
リチウム二次電池(Half-cell)の製造
実施例1-3および比較例の正極活物質と導電剤(Super-P)、バインダー(PVDF)の質量比が96.5:1.5:2(活物質:導電剤:バインダー)になるようにN-メチル-2ピロリドン(NMP)溶媒で均一に混合した。
【0059】
前記の混合物をアルミニウム箔に均一に塗布した後、熱風乾燥を通じてNMPを蒸発させ、ロールプレスで圧搾し、100~120℃真空オーブンで12時間真空乾燥して正極を製造した。相対電極としてLi-metalを使用し、電解液としてエチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)=1:2である混合溶媒に1.0モルのLiPF溶液を液体電解液で使用して通常の製造方法によりCR2032コインタイプの半電池(half coin cell)を製造した。
【0060】
<実験例:実施例および比較例の各リチウム二次電池用正極活物質およびリチウム二次電池の特性評価>
評価方法
定電流と定電圧を順次に印加しながら電気化学評価を行った。レート(rate)特性評価は0.1Cから2Cまで測定し、寿命特性評価は0.3Cで30回まで常温、高温測定して比較した。このとき、10sで発生される直流抵抗値を計算して増加率を確認した。
【0061】
微分容量曲線を通じて酸化-還元ピーク(peak)のシフト(shift)程度を測定し、単位時間当たり一定の電圧を走査するサイクリックボルタンメトリーを利用して相変化を観察した。インピーダンス(Impedance)でサイクル進行による抵抗増加率を比較した。
【0062】
FE-SEMを通じて一次粒子の変化を確認し、低電圧SEMを通じて具体的な一次粒子形状について観察した。
【0063】
FIBで薄く加工した試片をFE-TEMで表面と内部の一次粒子形状を確認し、平均粒子の大きさを比較した。また各grainの回折パターンを分析して結晶構造が特定のパターンで分布するのか確認した。
【0064】
BETで内部空隙および比表面積を確認し、XPSを通じてドーピング元素が如何なる形態で存在するのかエッチングしながら観察した。
【0065】
TGA分析結果
図1は合成に含まれる原料に対するTGA結果である。
【0066】
当該サンプルは明確な変化を確認するために概略的な重量比1:1に混合して50℃から800℃まで1分当たり10℃の昇温速度で観察した。TGA分析は、各温度区間で発生する重量変化で当該温度での現象を判断することができる。
【0067】
ドーピング原料であるWBは、O焼成時、550~730℃区間でWO、Bの酸化物形態で存在し、重量が増加することを確認することができる。
【0068】
リチウム原料であるLiOH(MP:462℃)とWB混合時、LiOH融点を過ぎながら重量減少が起こった後、再び酸化物形態に変わりながら重量が増加することを確認することができる。
【0069】
Me(OH)形態の前駆体とWB混合時、250℃付近で前駆体が酸化物形態に変わりながら一定量の重量が減少した後、以降、グラフの動きはWBと類似して現れている。前駆体の焼成温度は740℃に設定し、当該温度領域ではWBが酸化物形態で存在することを予想することができる。
【0070】
XRDおよびXPS分析結果
図2aおよび2bは正極材の合成後にXRDとXPS分析を行った結果である。
【0071】
WB少量添加により不純物ピーク(peak)は確認されず、典型的な層状(layered)構造のパターンを確認した。XPSは、表面部を含む1hr、2hr etchingで粒子内部の分析まで行った。Pristineと比較してSPL.3でB元素はB酸化物形態で表面部にのみ微量確認され、W元素は表面にWOの形態で内部にはWO、W-Clなどのようなcomplex形態で確認された。XPS分析を通じてTGAで予想された結果を確認した。
【0072】
初期充放電曲線とC-rate評価結果
図3aおよび3bは電気化学評価のうち初期充放電曲線とC-rate評価結果である。評価は、常温25℃で行われ、初期容量は0.2Cで比較した。基準容量は200mAh/gであり、電極loading densityは16.5mg/cmで製造した。C-rateは、各rateによる容量維持率で相対比較した。
【0073】
ドーピング元素の添加量が増加するにも拘らず、初期容量とC-rateは同等水準で現れ、一定の添加量以降、容量減少が現れることを確認した。
【0074】
常温/高温寿命特性の評価結果
図4aおよび4bは電気化学評価のうち常温/高温寿命特性の評価結果である。また、各サイクルの放電10秒でのDCR値を測定して増加分を図式化した
【0075】
Pristineに比べてWBの添加量が増加するほど、容量維持率が大幅に向上することを確認した。SPL.2、SPL.3は常温/高温で全て95%以上の維持率を示す。これと比例してDCR増加率も改善されることを確認した。容量維持率が増加した原因を確認するために多様な電気化学評価を追加的に行った。
【0076】
サイクリックボルタンメトリー分析結果
図5aはサイクリックボルタンメトリー分析結果である。
【0077】
相転移(phase transition)を確認するためにCV(cyclicvoltammetry)評価を行った。単位時間当たり一定の電圧を走査して電流変化を確認する方法として、定電流とは異なり、過電圧がかからなくて当該電圧での相転移を容易に確認することができる。
【0078】
全てが類似の動きを示しながらWBドーピングによる特別なピーク(peak)は確認されない。ただし、WB添加量が増加することによって酸化-還元ピーク(peak)のシフト(shift)が相対的に少なく起こることを確認することができ、30サイクルでもピーク(peak)が10サイクルと類似の動きを示すことを確認することができる。高電圧(4.1~4.25V)での相転移の回復が円滑に起こることは、WB含有量が増加するほど容量維持率が高い原因のうちの一つとなる。
【0079】
微分容量曲線の分析結果
図5bは微分容量曲線の分析結果である。より具体的には、過電圧発生時に相転移程度を確認するために微分容量曲線を確認した。
【0080】
ハイニッケル(High Nickel)NCM正極材の高容量発現が可能な理由は、4.1V以上で発現するH2⇔H3のphase transitionによるNiイオンの酸化数差のためである。4.1V付近のpeakのintensityが高いほど高い容量を発現し、peak shiftが少ないほど容量維持率が高く現れる傾向がある。Pristineに比べてSPL.3のpeakは100サイクルまでpeakが鮮明に高いintensityを維持しながら存在することを確認することができる。
【0081】
インピーダンス測定結果
図6はインピーダンス測定結果である。
【0082】
寿命特性評価のうち、1st、10th、30thサイクルSOC100%状態でインピーダンス(Impedance)を測定した。初期界面抵抗は類似して確認されるが、サイクルが進行するほどSPL.3の抵抗(Rct)増加率が少ないと測定される。当該結果はWBドーピングによる高容量維持要因になる。
【0083】
In-situ XRD測定結果
図7はIn-situ XRD測定結果である。
【0084】
電極製造の場合、8:2(active:superP)比率のpowder electrodeタイプで実験を行い、セル毎に40~60mA/gの電流速度で4.25VでCC/CV 30分して3cycle測定した結果である。ドーピング量が増加するほど充放電間a軸、c軸、volume変化が次第に小さくなることを確認した。これは寿命特性向上に影響を与えると判断される。
【0085】
モルフォロジー(morphology)分析結果
図8はFE-SEMを通じたモルフォロジー(morphology)の分析内容である。
【0086】
5kの同一の倍率で15um内外の球形粒子を選別してモルフォロジー(morphology)を観察した。同一の前駆体に微量のドーピング元素の添加にも拘らず、一次粒子が変わったことを確認することができる。Pristineに比べてSPL.3の一次粒子が針のように(needle like)薄い形状を有している。この部分を低電圧SEMを通じて詳細に確認した。
【0087】
低電圧SEMの分析結果
図9および図10は低電圧SEM分析結果である。
【0088】
30k高倍率でより鮮明に一次粒子が対比され、0.3~0.8kVの低電圧SEMでは粒子の形態が完全に異なるモルフォロジー(morphology)を示していることを確認した。微量のWBドーピング元素添加により一次粒子の形状がチュロスタイプ(Churros type)の特異な模様で観察された。
【0089】
図10で倍率を最大に高めて特異形状を詳細に観察した。
【0090】
多孔性と見える表面形状により電解液と副反応が高まることを憂慮したが、BET測定値はそれぞれ0.1989m/g(Pristine)と0.1685m/g(SPL.3)で、WBドーピング時に比表面積の数値がむしろ減少したと確認される。
【0091】
当該結果はドーピングにより一次粒子が針のように(needle like)なりながら、より濃密(dense)な内部構造に形成されたと判断される。電気化学評価の寿命特性と関連してSPL.3の容量減少が少ないことからみて電解液との副反応はむしろ減少した結果である。
【0092】
FE-TEMの分析結果
図11はFE-TEM分析結果である。
【0093】
FIBで試片を薄く加工して粒子の断面(cross section)を観察した。表面だけでなく、内部コア部分まで一次粒子が薄い模様で形成されていることを確認することができる。BET結果と同様に、内部に空隙は相対的にSPL.3に比べてPristineで多く観察される。XPSで確認されたように、これは粒子内部でも測定されるドーピング元素Wによる影響である。少量のWドーピング元素添加により結晶粒の成長(grain growth)が抑制されて一次粒子が薄くなるだけでなく、緻密に再配列されたことを確認した。Astm e112 methodにより平均粒子の大きさ(average grain sizes)は538±64nm(Pristine)から229±20nm(SPL.3)に減少したことを確認した。
【0094】
回折パターンによる結晶構造分析結果
図12は回折パターンによる結晶構造分析結果である。
【0095】
全体写真でそれぞれのGrainの回折パターンを晶帯軸(Zone axis)を取って分析した。分析した結果、ドーピング有無に依存せずに層状(layered)と岩塩(Rocksalt)構造が二つのサンプル共に無作為に混在されていると確認された。結論的に、当該発明はドーピング元素による結晶構造による効果でなく、特異なモルフォロジー(morphology)の影響であると判断される。
【0096】
粒子強度分析結果
図13はサンプル一個単位の粒子強度の分析結果である。
【0097】
サンプルが破断あるいは定められた荷重まで到達した時までサンプルを押した距離と、この時に発生される力を計算した。1サンプル当たり20回反復測定して当該サンプルの粒子強度の結果をグラフ化した。WBドーピングにより粒子強度が相当改善されたことが分かる。
【0098】
本発明は、前記実施例に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に製造可能であり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に実施可能であることを理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13