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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】骨切除システム及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/80 20060101AFI20240606BHJP
   A61B 17/15 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A61B17/80
A61B17/15
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022525103
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 US2020057845
(87)【国際公開番号】W WO2021087033
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】62/927,325
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509224376
【氏名又は名称】スケルタル ダイナミクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SKELETAL DYNAMICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】オルベイ、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】クック、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】トレモルズ、エドワード
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-280949(JP,A)
【文献】特開2003-180704(JP,A)
【文献】特開平06-000195(JP,A)
【文献】特表2015-525616(JP,A)
【文献】特表2011-510754(JP,A)
【文献】特表2005-511116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0310179(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0270850(US,A1)
【文献】米国特許第09414871(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/80
A61B 17/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨よりも硬質のプレートであって、近位端及び遠位端を有する長尺状の本体を含、長手本体軸線を定義する、プレートであって、
前記プレートが、骨接触側及び反対側と、左側壁及び右側壁と、を有し、前記骨接触側、前記反対側、前記左側壁及び前記右側壁の全てが、前記プレートの前記近位端と前記プレートの前記遠位端との間に延びており、かつ、前記長手本体軸線と整列している、プレートと、
前記プレートの前記近位端に隣接して配置された、前記反対側と前記骨接触側との間で前記プレートを貫通する近位側長尺状スロットであって、骨ねじを受容するようになっている、近位側長尺状スロットと、
前記反対側と前記骨接触側との間で前記プレートを貫通する遠位側長尺状スロットであって、前記近位側長尺状スロットに隣接しつつ前記プレートにおいて前記近位側長尺状スロットに対して遠位側に位置して、骨ねじを受容するようになっている、遠位側長尺状スロットと、
前記反対側と前記骨接触側との間で前記プレートを貫通する1以上の骨ねじ孔であって、前記プレートにおいて前記遠位側長尺状スロットに対して遠位側に位置して、骨ねじを受容するようになっている、1以上の骨ねじ孔と、
前記プレートの前記反対側にある凹部と、
前記左側壁に凹設された左側軌道であって、軌道制限点と前記プレートの前記近位端との間で長手方向に延びており、上側境界壁及び下側境界壁と境を接している、左側軌道であって、前記下側境界壁が前記左側軌道の全長に亘って延びている一方で、前記上側境界壁が前記左側軌道の前記遠位端から前記左側軌道の前記近位端より遠位の位置まで部分的に延びている、左側軌道と、
前記右側壁に凹設された右側軌道であって、軌道制限点と前記プレートの前記近位端との間で長手方向に延びており、上側境界壁及び下側境界壁と境を接している、右側軌道であって、前記下側境界壁が前記右側軌道の全長に亘って延びている一方で、前記上側境界壁が前記右側軌道の前記遠位端から前記右側軌道の前記近位端より遠位の位置まで部分的に延びている、右側軌道と、
を備え、
前記下側境界壁にのみ境を接する、前記左側軌道及び前記右側軌道の部分は、前記プレートの前記反対側からアクセス可能な、前記左側軌道及び前記右側軌道への頂部入口を提供する、骨プレート。
【請求項2】
前記近位側長尺状スロット及び前記遠位側長尺状スロットのうちの少なくとも一方がねじ切りされている、
請求項1に記載の骨プレート。
【請求項3】
前記近位側長尺状スロット及び前記遠位側長尺状スロットのうちの少なくとも一方がねじ切りされていない、
請求項1に記載の骨プレート。
【請求項4】
前記プレートの前記近位端及び前記プレートの前記遠位端のうちの少なくとも一方がテーパ状になっている、
請求項1に記載の骨プレート。
【請求項5】
前記骨接触側の少なくとも一部が円筒状の凹面である、
請求項1に記載の骨プレート。
【請求項6】
前記1以上の骨ねじ孔のうちの少なくとも1つがねじ切りされている、
請求項1に記載の骨プレート。
【請求項7】
前記1以上の骨ねじ孔のうちの少なくとも1つがねじ切りされていない、
請求項1に記載の骨プレート。
【請求項8】
前記1以上の骨ねじ孔のうちの少なくとも1つは、前記骨接触側に対して垂直なねじ軸線を定義する、
請求項1に記載の骨プレート。
【請求項9】
前記1以上の骨ねじ孔のうちの少なくとも1つは、前記骨接触側に対して傾斜したねじ軸線を定義する、
請求項1に記載の骨プレート。
【請求項10】
前記凹部は、整復用鉗子のブレード先端を受容するようになっている、
請求項1に記載の骨プレート。
【請求項11】
骨よりも硬質な骨プレートと、
前記骨プレートとスライド可能に協働するように適合された骨切断ガイドと、
を備える骨切除システムであって、
前記骨プレートが、
近位端及び遠位端を有するとともに長手本体軸線を定義する長尺状の本体と、
骨接触側及び反対側並びに左側壁及び右側壁であって、前記骨接触側、前記反対側、前記左側壁及び前記右側壁の全てが、前記骨プレートの前記近位端と前記骨プレートの前記遠位端との間に延びており、かつ、前記長手本体軸線と整列している、骨接触側及び反対側並びに左側壁及び右側壁と、
前記骨プレートの前記近位端に隣接して配置された、前記反対側と前記骨接触側との間で前記骨プレートを貫通する近位側長尺状スロットであって、骨ねじを受容するようになっている、近位側長尺状スロットと、
前記反対側と前記骨接触側との間で前記骨プレートを貫通する遠位側長尺状スロットであって、前記近位側長尺状スロットに隣接しつつ前記骨プレートにおいて前記近位側長尺状スロットに対して遠位側に位置して、骨ねじを受容するようになっている、遠位側長尺状スロットと、
前記反対側と前記骨接触側との間で前記骨プレートを貫通する1以上の骨ねじ孔であって、前記骨プレートにおいて前記遠位側長尺状スロットに対して遠位側に位置して、骨ねじを受容するようになっている、1以上の骨ねじ孔と、
前記骨プレートの前記反対側にある凹部と、
前記左側壁に凹設された左側軌道であって、軌道制限点と前記骨プレートの前記近位端との間で長手方向に延びており、上側境界壁及び下側境界壁と境を接している、左側軌道であって、前記下側境界壁が前記左側軌道の全長に亘って延びている一方で、前記上側境界壁が前記左側軌道の前記遠位端から前記左側軌道の前記近位端より遠位の位置まで部分的に延びている、左側軌道と、
前記右側壁に凹設された右側軌道であって、軌道制限点と前記骨プレートの前記近位端との間で長手方向に延びており、上側境界壁及び下側境界壁と境を接している、右側軌道であって、前記下側境界壁が前記右側軌道の全長に亘って延びている一方で、前記上側境界壁が前記右側軌道の前記遠位端から前記右側軌道の前記近位端より遠位の位置まで部分的に延びている、右側軌道と、
を有し、
前記下側境界壁にのみ境を接する、前記左側軌道及び前記右側軌道の部分は、前記骨プレートの前記反対側からアクセス可能な、前記左側軌道及び前記右側軌道への頂部入口を提供し、
前記骨切断ガイドが、
ハンドリング特徴部と、
前記ハンドリング特徴部から下方に延びて、それぞれ左右の水平ガイドブレードで終端する左案内壁及び右案内壁であって、前記左右の水平ブレードがそれぞれ前記骨プレートの左右の軌道と噛み合うようになっている、左案内壁及び右案内壁と、
前記ハンドリング特徴部、前記右案内壁及び前記左案内壁のうちの一方から下方に延びるとともに、フランジを含む、アームと、
前記フランジに配置された切断スロットと、
を有し、
前記左右の水平ブレードがそれぞれ前記骨プレートの前記左右の軌道に係合しているときに、前記切断ガイドが前記骨プレートに対して近位-遠位方向にスライドする、
骨切除システム。
【請求項12】
前記近位側長尺状スロット及び前記遠位側長尺状スロットのうちの少なくとも一方がねじ切りされている、
請求項11に記載の骨切除システム。
【請求項13】
前記近位側長尺状スロット及び前記遠位側長尺状スロットのうちの少なくとも一方がねじ切りされていない、
請求項11に記載の骨切除システム。
【請求項14】
前記骨プレートの前記近位端及び前記骨プレートの前記遠位端のうちの少なくとも一方がテーパ状になっている、
請求項11に記載の骨切除システム。
【請求項15】
前記骨接触側の少なくとも一部が円筒状の凹面である、
請求項11に記載の骨切除システム。
【請求項16】
前記1以上の骨ねじ孔のうちの少なくとも1つがねじ切りされている、
請求項11に記載の骨切除システム。
【請求項17】
前記1以上の骨ねじ孔のうちの少なくとも1つがねじ切りされていない、
請求項11に記載の骨切除システム。
【請求項18】
前記1以上の骨ねじ孔のうちの少なくとも1つは、前記骨接触側に対して垂直なねじ軸線を定義する、
請求項11に記載の骨切除システム。
【請求項19】
前記1以上の骨ねじ孔のうちの少なくとも1つは、前記骨接触側に対して傾斜したねじ軸線を定義する、
請求項11に記載の骨切除システム。
【請求項20】
前記凹部は、整復用鉗子のブレード先端を受容するようになっている、
請求項11に記載の骨切除システム。
【請求項21】
前記骨切断ガイドは、前記左右の案内壁の一方又は両方を貫通する1以上のK-ワイヤ孔をさらに備える、
請求項11に記載の骨切除システム。
【請求項22】
前記骨プレート及び前記切断ガイドの一方又は両方が、前記骨プレートに対する前記切断ガイドの移動の長さを測定するように適合されたしるしを含む、
請求項11に記載の骨切除システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、整形外科用インプラント並びに外科用装置及びシステムに関し、特に、骨切除術における使用及び尺骨(但しこれに限定されない)を含む短縮骨の安定化のためのプレート及び切断ガイドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の整形外科的状態及び損傷を治療するために、骨を短縮させることが必要な場合がある。最も一般的には、骨の一部を切断して除去し、骨の端部を結合して安定させ、端部の融合を促進するために骨を圧迫して保持し、骨の長さの全体的な減少をもたらす骨切除術を実施することによって達成される。本明細書には、骨切除術の実施及び短縮骨の安定化を容易にする骨プレート及び切断ガイドを含むシステムが記載されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、骨プレートと切断ガイドとを備え、切断ガイドは、切断ガイドを頭上方向から骨プレートに挿入することによってスライド可能に係合するようになっており、切断ガイドは、容易に確認可能なオフセット距離での骨の平行切断面を実現にするようになっている骨切除システムを提供することである。
【0004】
骨プレートは、近位端及び遠位端を有する長尺状の本体を含む実質的に硬質のプレートであって、長手本体軸線を定義する、プレートであって、前記プレートが、骨接触側及び反対側と、左側壁及び右側壁と、を有し、前記骨接触側、前記反対側、前記左側壁及び前記右側壁の全てが、前記プレートの前記近位端と前記プレートの前記遠位端との間に延びており、かつ、前記長手本体軸線と実質的に整列している、プレートと、前記プレートの前記近位端に隣接して配置された、前記反対側と前記骨接触側との間で前記プレートを貫通する近位側長尺状スロットであって、骨ねじを受容するようになっている、近位側長尺状スロットと、前記反対側と前記骨接触側との間で前記プレートを貫通する遠位側長尺状スロットであって、前記近位側長尺状スロットに隣接しつつ前記プレートにおいて前記近位側長尺状スロットに対して遠位側に位置して、骨ねじを受容するようになっている、遠位側長尺状スロットと、前記反対側と前記骨接触側との間で前記プレートを貫通する1以上の骨ねじ孔であって、前記プレートにおいて前記遠位側長尺状スロットに対して遠位側に位置して、骨ねじを受容するようになっている、1以上の骨ねじ孔と、前記プレートの前記反対側にある凹部と、前記左側壁に凹設された左側軌道であって、軌道制限点と前記プレートの前記近位端との間で長手方向に延びており、上側境界壁及び下側境界壁と接している、左側軌道であって、前記下側境界壁が前記左側軌道の全長に亘って延びている一方で、前記上側境界壁が前記左側軌道の前記遠位端から前記左側軌道の前記近位端より遠位の位置まで部分的に延びている、左側軌道と、前記右側壁に凹設された右側軌道であって、軌道制限点と前記プレートの前記近位端との間で長手方向に延びており、上側境界壁及び下側境界壁と接している、右側軌道であって、前記下側境界壁が前記右側軌道の全長に亘って延びている一方で、前記上側境界壁が前記右側軌道の前記遠位端から前記右側軌道の前記近位端より遠位の位置まで部分的に延びている、右側軌道と、を備え、前記下側境界壁にのみ接する、前記左側軌道及び前記右側軌道の部分は、前記プレートの前記反対側からアクセス可能な、前記左側軌道及び前記右側軌道への頂部入口を提供する。
【0005】
切削ガイドは、ハンドリング特徴部と、前記ハンドリング特徴部から下方に延びて、それぞれ左右の水平ガイドブレードで終端する左案内壁及び右案内壁であって、前記左右の水平ブレードがそれぞれ前記骨プレートの左右の軌道と噛み合うようになっている、左案内壁及び右案内壁と、前記ハンドリング特徴部、前記右案内壁及び前記左案内壁のうちの一方から下方に延びるとともに、フランジを含む、アームと、前記フランジに配置された切断スロットと、を有し、前記左右の水平ブレードがそれぞれ前記骨プレートの前記左右の軌道に係合しているときに、前記切断ガイドが前記骨プレートに対して近位-遠位方向にスライドする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】尺骨短縮骨切除術における使用に適合された本発明の一実施形態に係る骨プレートの等角上面図を示す。
図1B図1Aに示される実施形態に係る骨プレートの等角底面図を示す。
図1C図1A及び図1Bに示す骨プレートの案内用軌道の詳細図を示す。
図1D図1A及び図1Bに示された骨プレートの、上方と下方に境を接する軌道を有する位置からの断面図を示す。
図1E図1A及び図1Bに示される骨プレートの、下方にのみ境を接する軌道を有する位置からの断面図を示す。
図2A】尺骨短縮骨切除術における使用に適合された本発明の一実施形態に係る骨切断ガイドの等角上面図を示す。
図2B図2Aに示される実施形態に係る骨切断ガイドの等角底面図を示す。
図2C図2A及び図2Bに示される骨切断ガイドの後方立面図を示す。
図3図1A図1E及び図2A図2Cに示される骨プレート及び骨切断ガイドの組立のための順序を示す。
図4】組立後の図1A図1E及び図2A図2Cの骨プレート及び骨切断ガイドを示す。
図5】切断後に尺骨に移植された図1A図1Eの骨プレートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1A図1Eを参照すると、尺骨短縮骨切除術を実施するように適合された本発明の一実施形態に係る骨プレート(100)の種々の図が示されている。図示された骨プレートは、尺骨から所望の長さを正確に切断し、骨の2つの端部を再結合し、再結合された骨端部を圧縮して安定させ、その後の融合を促進するために、図2に示す切断ガイドと共に外科医をガイドするために使用される。
【0008】
骨プレート(100)は、テーパ状の遠位端(101)及び近位端(102)を有する実質的に長尺状の金属プレートを含む。骨プレート(100)はさらに、骨接触側(103)及び反対側(104)、左側壁(110)及び右側壁(111)を含む。骨接触側は、処置される骨の輪郭に全体的に従うか、又は従うように曲げることができる、全体的に円筒状の凹面形状を有する。また、骨プレートは、近位側長尺状スロット(105)及び遠位側長尺状スロット(106)を含み、これらスロットは、ねじ切りされていてもいいし、ねじ切りされていなくてもよい。さらに、骨プレート(100)は、皮質骨ねじ又はペグに適した1以上のねじ切りされた又はねじ切りされていない骨ねじ孔(107a~107d)を含む。いくつかの骨ねじ孔(107a,107b,107c)は、骨接触面に対して実質的に垂直に骨ねじを取り付けるようになっていてもよく、他の骨ねじ孔(107d)は、傾斜したねじを取り付けるようになっていてもよい。傾斜したねじは、斜めの角度で切断されて再結合された骨端部に追加の圧縮を加えるのに特に有用であり、この場合、ねじは、切断の角度に対して実質的に垂直に挿入することができる。骨プレート(100)の反対側(104)には、整復用鉗子の先端を受容するようになっている凹部(109)が配置されている。
【0009】
骨プレート(100)の左右の側壁(110,111)にそれぞれ位置するのは、骨プレート(100)の長さに沿って長手方向に延びる左側軌道(112)及び右側軌道(113)である。軌道(112,113)は、軌道制限点(119)から近位側に向けて延びる。図示の実施形態では、左右の軌道(112,113)は鏡像であり、それぞれ左右の壁(110,111)に沿った対称配置と実質的に同一である。ただし、軌道は切断ガイド(200)内の対応する特徴部分(後述する図に示す)と係合するようになっていればよく、必ずしも鏡像対称配置である必要はない。図示された実施形態の左側軌道(112)又は右側軌道(113)のいずれかに適用される図1Cに詳細に示されているように(左側軌道(112)は例示の目的のみのために示されている)、軌道は、上側境界壁(114)及び下側境界壁(115)を含む。下側境界壁(115)は軌道の全長に亘って延びている一方、上側境界壁(114)は、軌道(119)の遠位端から軌道(118)の近位端の手前の位置(117)まで部分的に延びて、軌道への頂部入口(116)を形成する。
【0010】
左側軌道(112)と右側軌道(113)との関係は、図1D及び図1Eにおいてより明確に示される。図1Dは、軌道が上下の境界壁(114,115)と境を接する位置における骨プレート(100)の断面を示す。図1Eは、軌道が下側境界壁(115)にのみ境を接する位置における骨プレート(100)の断面を示す。
【0011】
骨プレート(100)の反対側(104)にレーザエッチングされるか、又は他の方法で固定されるのは、骨プレート(100)に対する切断ガイド(200)の近位-遠位移動を測定するために使用されるゼロマーク線(121)を含む、一連のしるし(120)である。
【0012】
次に図2A図2Cを参照すると、尺骨短縮骨切除術を実施するように適合された本発明の一実施形態に係る骨切断ガイド(200)の種々の図が示されている。骨切断ガイド(200)の図示の実施形態は、図1A図1Eに示す骨プレート(100)と協働するようになっている。骨切断ガイド(200)はハンドリング特徴部(201)を備え、ハンドリング特徴部(201)は、必要に応じて、近位端(212)及び遠位端(213)を有してもよいし、表面加工されていてもよいし、概ね水平面内に配向されてもよい。ハンドリング特徴部(201)の左側及び右側からそれぞれ下方に延びているのは案内壁(202,203)であり、案内壁(202,203)は水平ガイドブレードの左側(204)と右側(205)にて終端している。左右のガイドブレード(204,205)は、骨プレート(100)の左右の軌道(112,113)と正確に噛み合うように、骨切断ガイド(200)に位置している。ハンドリング特徴部(201)と、案内壁(202,203)と、左右のガイドブレード(204,205)とによって区画される内部空間(206)は、ガイドブレード(204,205)が一旦軌道(112,113)に係合されると、骨プレート(100)が骨切断ガイド(200)から干渉されることなく近位-遠位方向に滑ることを可能にするのに十分な大きさである。もちろん、切断ガイド(200)の遠位方向への移動は、軌道制限点(119)にて規制される。
【0013】
切断ガイドは、さらにアーム(207)を備え、図示の実施形態に示すように、アーム(207)は、ハンドリング特徴部(201)の一方(左又は右)側から遠位方向に延びるか、あるいは、案内壁(202又は203)から遠位方向に延びる。アームの遠位端から下方に延びているのは、切断ブレードスロット(209)が組み込まれたフランジ(208)である。ブレードスロット(209)は、標準的な外科用振動鋸又は他の同様の骨切断装置(図示せず)からブレードを案内して、標的となる骨に一連の正確な平行骨切断を行うようになっている。フランジ(208)は、必要に応じて、骨プレート(100)の切断ガイド(200)のスライドを必要とすることなく、最初の切断からの既知の値ほどオフセット(この場合は4mm)して追加の切断を行うことを可能にするために、ブレードスロット(209)に平行でかつその近位に位置する二次ブレードスロット(210)を備えてもよい。同様に、必要に応じて、追加のブレードスロット(図示せず)をフランジ(208)が含むことにより、最初の切断から異なる標準的なオフセットで切断するようにしてもよい。
【0014】
また、切断ガイド(200)は、必要に応じて、案内壁(202,203)の一方又は両方に、1以上のキルシュナー線(K-ワイヤ)孔(211)を含んでもよい。これらのK-ワイヤ孔(211)は、斜めに配向され、K-ワイヤを標的となる骨内に案内して、標的となる骨に対する切断ガイド(200)の位置を一時的にロックするようになっている。これに代えて、切断ガイド(200)の位置は、切断ガイド(200)と骨プレート(100)との間のロックねじ又はクランプ(図示せず)を用いてロックされてもよい。
【0015】
次に図3を参照すると、骨プレート(100)及び切断ガイド(200)の組立のための一連の工程が示されている。第1工程では、切断ガイド(200)は、骨プレート(100)の真上に配置され、ガイドブレード(204,205)は下向きになっており、骨プレート(100)の反対側(104)は上向きになっている。ガイドブレード(204,205)は、軌道頂部入口(116)に位置合わせする必要がある。第2工程では、軌道(204,205)が下側境界壁(115)に載るまで、切断ガイドが下方に移動する。最後に、第3工程において、遠位移動が軌道制限点(119)によって規制されるまで、切断ガイド(200)を骨プレート(100)に対して遠位方向にスライドさせる。この例示的な図示は、切断ガイド(200)が真上位置から骨プレート(100)に係合することを示しているが、本発明のシステムでは、切断ガイド(200)が後方位置から骨プレート(100)に係合することも可能である。
【0016】
使用方法
以下には、手術において、尺骨の骨切除術を実施して再結合された骨を安定化するために開示されたシステムを利用するために典型的に行われる工程を列挙している。
【0017】
1.尺骨を露出させるために、尺骨の遠位から中央の皮下境界に沿って10cmから12cmの縦切開を行う。
2.骨プレートを尺骨に固定するために、適切なサイズのドリル(及び、必要に応じてロックねじを使用する場合はドリルガイド)を使用して、適切な長さの2本の皮質ねじを2つの遠位側骨ねじ孔(107a,107b,107c)に配置する。
【0018】
3.近位側長尺状スロット(105)を固定するために、適切なサイズのドリル(及び、必要に応じてロックねじを使用する場合はドリルガイド)を使用して、適切な長さの皮質ねじを、近位側長尺状スロット(105)の最も近位側となる位置に配置する。
【0019】
4.近位側長尺状スロット(106)を固定するために、適切なサイズのドリル(及び、必要に応じてロックねじを使用する場合はドリルガイド)を使用して、適切な長さの皮質ねじを、近位側長尺状スロット(106)の最も近位側となる位置に配置する。
【0020】
5.X線透視法を用いて骨プレート(100)の位置を確認する。位置がずれている場合は、ねじを緩め、プレートの位置を調整してねじを締め直す。
6.切断ガイド(200)を骨プレート(100)に取り付けるために、前述の手順を用いて、骨プレート(100)に適切な切断ガイド(200)(必要に応じて、横向き(図示せず)及び斜め(図1A~1E、図2A~2C)にも使用可能)を位置合わせして取り付ける。近位縁(213)がゼロマーク線(121)のちょうど遠位側にくるように切断ガイド(200)を配置する。2本のK-ワイヤを使用して、それらK-ワイヤを切断ガイド(200)のK-ワイヤ孔(211)に入れて骨内に入れることにより、切断ガイド(200)を一時的に固定する。
【0021】
7.骨の遠位側を切断するために、振動鋸(図示せず)を用いて、切断ガイド(200)のブレードスロット(209)を通じて尺骨を切断する。尺骨を完全に切断したら、K-ワイヤを外す。
【0022】
8.決定された骨切り長さに達するまで、切断ガイド(200)を近位方向にスライドさせる。骨プレート(100)上の各レーザエッチングされたしるし線(120)は、2mmの付加的な骨切り長さに対応する。再度、2本のK-ワイヤを使用して、それらK-ワイヤを切断ガイド(200)のK-ワイヤ孔(211)に入れて骨内に入れることにより、切断ガイド(200)を一時的に固定する。
【0023】
9.骨の近位側を切断するために、振動鋸(図示せず)を用いて、切断ガイド(200)のブレードスロット(209)を通じて尺骨を切断する。尺骨を完全に切断したら、K-ワイヤを外す。切断ガイド(200)を骨プレート(100)から取り外し、切除された骨片を尺骨から取り外す。
【0024】
10.骨切り術において整復を行うために、近位側及び遠位側の長尺状スロット(105,106)の2つのねじを緩め、適切なサイズの鉗子の一方のブレードを凹部(109)に入れ、他方のブレードを緩んだねじの一方の頭部に入れる。別の実施形態では、鉗子の他のブレードは、緩めたねじの1つの頭部の反対側に隣接して配置することができる。この工程を補助するために、一方のブレードの先端が凹部(109)と噛み合うように形成され、他方のブレードの先端がねじの頭部のドライバーパターン又はねじの頭部の側面のいずれかと噛み合うように形成された、特殊な鉗子を使用してもよい。鉗子を用いて、骨切り部位全体に十分な圧迫が得られるまで尺骨骨片を整復し、一緒に圧迫する。この工程で、前に緩めた2本のねじを締める。
【0025】
11.適当なサイズのドリル(及び、必要に応じてロックねじを使用する場合はドリルガイド)を用いて、適当な長さの皮質ねじを残りの遠位側骨ねじ孔(107a、107b、又は107c)に入れる。
【0026】
12.斜位骨切除術を選択した場合、傾斜ラグねじを骨切除術界面に設置してもよい。適当なサイズのドリルを用いて、適当な長さの皮質ラグねじを骨プレート(100)の傾斜骨ねじ孔(107d)に入れる。
【0027】
配置と骨切除術の圧迫が適切に行うために、X線透視下でプレートとねじの軌跡をチェックし、切開を閉じる。
図5には、骨切除術後に尺骨に移植された骨プレート(100)が例示されている。
【0028】
特定の骨のタイプ及び部分、すなわち尺骨に関連して上記の説明を行ったが、これらの説明は限定を意図するものではなく、本発明の思想から逸脱することなく、また説明した実施形態に均等な範囲内で様々な修正を行うことができるものである。本発明が包含された実施形態は、骨切除術及び骨の安定化を必要とするすべての用途において使用することができる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5