(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】無菌プラスチック容器の製造および処理のための方法および設備
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20240606BHJP
B65B 55/04 20060101ALI20240606BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A61L2/20
B65B55/04 N
B29C49/42
(21)【出願番号】P 2022535498
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2020085675
(87)【国際公開番号】W WO2021116364
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】102019008631.7
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509073707
【氏名又は名称】ケー エッチ エス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KHS GmbH
【住所又は居所原語表記】Juchostrasse 20 44143 Dortmund Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】マルティン、ゲルハルヅ
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506330(JP,A)
【文献】特表2013-528130(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0084430(US,A1)
【文献】特開2019-069818(JP,A)
【文献】特開昭52-120594(JP,A)
【文献】特開2001-212874(JP,A)
【文献】特開平10-157712(JP,A)
【文献】特開2014-193752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/20
B65B 55/04
B29C 49/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料で作られたプリフォームが、加熱部の領域で加熱され、次いで空気圧または液圧によって容器に形成され、また、プリフォームもしくは容器またはその両方が、殺菌され、エンクロージャ(2,2’)で囲まれた少なくとも1つの低菌ゾーン(1,1’)を通過する、無菌プラスチック容器を製造および処理する方法であって、前記エンクロージャ(2,2’)は、外部ハウジング(3,3’)および気密チャンバ(4,4’)を有し、前記気密チャンバを通して、処理媒体が前記低菌ゾーン(1,1’)から吸引され、同時に、空気が前記外部ハウジング(3,3’)の外部環境から吸引さ
れ、
前記気密チャンバ(4,4’)が、前記エンクロージャ(2,2’)の前記外部ハウジング(3,3’)および内部ハウジング(5,5’)の間に形成され、
前記エンクロージャ(2,2’)が、前記気密チャンバ(4,4’)の吸引開口部(8,8’)が設置面(11)に向くように前記設置面(11)上に配置される
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記気密チャンバ(4,4’)が、前記外部ハウジング(3,3’)の下端(6,6’)にチャネル(7,7’)によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気密チャンバ(4,4’)が、下方向に向いた吸引開口部(8,8’)を有することを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
ガス状処理媒体が、フィルタ装置(9,9’)を介して殺菌され、その後、前記低菌ゾーン(1,1’)を通過することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
熱可塑性材料のプリフォームが、加熱部の領域で加熱され、次いで空気圧または液圧によって容器に形成され、また、プリフォームもしくは容器またはその両方が、殺菌され、エンクロージャ(2,2’)で囲まれた少なくとも1つの低菌ゾーン(1,1’)を通過する、無菌プラスチック容器を製造および処理する設備であって、前記エンクロージャ(2,2’)は、外部ハウジング(3,3’)と、気密チャンバ(4,4’)に接続された吸引装置(10,10’)が、低菌ゾーン(1,1’)から処理媒体を吸引でき、同時に、前記吸引装置が、外部ハウジング(3,3’)の外部環境から気密チャンバ(4,4’)を通じて空気を吸引できるように配置された吸引開口部(8,8’)を備える前記気密チャンバとを有し、
前記気密チャンバ(4,4’)が、前記エンクロージャ(2,2’)の前記外部ハウジング(3,3’)および内部ハウジング(5,5’)の間に形成され、
前記エンクロージャ(2,2’)が、前記気密チャンバ(4,4’)の前記吸引開口部(8,8’)が設置面(11)に向くように前記設置面(11)上に配置される
ことを特徴とする、設備。
【請求項6】
前記気密チャンバ(4,4’)が、前記外部ハウジング(3,3’)の下端(6,6’)にチャネル(7,7’)によって形成されることを特徴とする、請求項5に記載の設備。
【請求項7】
前記設備が、それを通して、ガス状処理媒体が、殺菌され、次いで、前記低菌ゾーン(1,1’)に搬送されるフィルタ装置を有することを特徴とする、請求項5または6のいずれか1項に記載の設備。
【請求項8】
前記気密チャンバ(4,4’)の前記吸引開口部(8,8’)が、下方向に向いており、設置面に向いていることを特徴とする、請求項5~7のいずれか1項に記載の設備。
【請求項9】
前記プリフォームもしくは前記プラスチック容器またはその両方を処理するための1つまたは複数の処理ステーションが、前記低菌ゾーン(1,1’)に収容されることを特徴とする、請求項5~8のいずれか1項に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無菌プラスチック容器の製造および処理のための方法および設備に関し、ここで、熱可塑性材料で作られたプリフォームが、加熱部の領域で加熱され、次いで空気圧または液圧によって容器に形成され、また、プリフォームもしくは容器またはその両方が、殺菌され、エンクロージャで囲まれた少なくとも1つの低菌ゾーンを通過する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックボトルなどのプラスチック容器は、主にPET(ポリエチレンテレフタレート)などの熱可塑性材料で作られたプリフォームを使用して製造される。プリフォームは、空気圧(ブロー圧力)または液圧(特に、充填される流体の圧力)によって所望の容器に形成される。
【0003】
しかしながら、完成した容器に充填材料が充填される前に、プリフォームもしくは完成した容器またはその両方は、殺菌されなければならない。この目的のために、プリフォームまたは容器を殺菌剤で処理する方法および装置が知られている。原理的には、微生物を殺滅するのに適するすべての媒体、特に過酸化水素、オゾン、二酸化塩素などの化学薬品を殺菌剤として使用できる。殺菌剤は、約100~130℃の高温にて、殺菌蒸気(エアロゾル)の形でしばしば使用される。このタイプの方法および装置は、独国特許出願公開第102010032336号明細書、欧州特許第1941913号明細書および欧州特許第2394950号明細書に記載されている。
【0004】
プラスチック容器またはプリフォームの殺菌は、一般に、過酸化水素を用いた乾式殺菌として実施される。しかしながら、オゾンや二酸化塩素のような化学薬品も適している。ただし、乾式殺菌に加えて、例えば過酢酸を使用する湿式殺菌も可能である。
【0005】
プリフォームが殺菌された場合(プリフォーム殺菌)、完成したプラスチック容器の追加的な殺菌は必要ない。殺菌すべきプリフォームの表面は、殺菌すべき完成したプラスチック容器の表面よりも小さいので、プリフォーム殺菌は、殺菌剤の消費量も削減する。
【0006】
乾式殺菌の1つ利点は、幅広いタイプのボトルおよびクロージャを殺菌できることである。この目的のために、過酸化水素エアロゾルがプラスチック容器内またはクロージャ上にそれぞれ噴霧され、容器またはクロージャの表面で凝縮した後、無菌の熱風を供給することによって再び除去される。その結果、乾燥しかつ無菌の容器およびクロージャの表面が得られる。プラスチック容器の外側表面を過酸化水素エアロゾルで殺菌することもできる。
【0007】
過酸化水素エアロゾルは、プラスチックボトル内に配置されてボトルネックの直下で終端するランスを通して、任意のプラスチックボトル内に導入できる。エアロゾル噴霧は、ボトル内の全ての領域が過酸化水素に曝露されることを確実にする。これは、リブ付き、エンボス加工、長方形のボトルであっても、高度に構造化された表面を有するボトルにおいても行われる。ボトルの形状およびサイズによっては、殺菌プロセスで使用される過酸化水素は、予備加熱されていないプラスチックボトルに約100℃で入り、ボトル内に連続的な無菌フィルムを形成させる。プラスチックボトルの外側の殺菌は、ボトル壁上に過酸化水素を直接噴霧することによって行われる。続いて、通常、例えば、乾燥カルーセルまたはその他の乾燥もしくは加熱またはその両方の装置内で、過酸化水素の無残渣または低残渣乾燥を行う。代替的に、または追加的に、過酸化水素の無残渣または低残渣除去は、ボトル輸送中の通常の蒸発過程によっても可能である。
【0008】
欧州特許出願公開第2407417号明細書は、プリフォームもしくはプラスチックボトルまたはその両方を過酸化水素および無菌の空気で処理して、プリフォームもしくはプラスチックボトルまたはその両方を殺菌する、無菌プラスチックボトルの製造についても記載している。対応する処理ユニットは、この目的のために、処理媒体を閉じ込める空間を提供するために、絶縁ハウジングに収容される。
【0009】
殺菌の結果、使用される殺菌剤は、殺菌されるべきプリフォームまたは完成したプラスチックボトルに到達するだけでなく、望ましくない設備部品に流れこみ、損傷を与える可能性がある。殺菌剤が設備から出てゆき、解放された作業領域に到達する可能性さえある。これは、その後、殺菌剤に直接さらされている人の健康被害につながる可能性がある。
【0010】
殺菌後、プラスチックボトルまたはプリフォームがさらに処理され、例えば、移送ステーション、ブローステーション、充填ステーションなどの他の処理ステーションに供給する場合には、導入された殺菌剤が生産ホールから漏れないことを保証するように注意しなければならない。各処理ステーションにおいてプラスチックボトルのその後の汚染が起こらないことも重要である。したがって、無菌状態がプラスチックボトルの近傍において広がっている必要があり、つまり、これらの領域への微生物の侵入は回避されなければならない。
【0011】
したがって、無菌ゾーンにおいて、無菌空気などの処理媒体がプラスチックボトルの周りを流れることが有用であることが証明されている。欧州特許出願公開第2407417号明細書は、そのような手段も提供する。この目的のために、上部から底部へ向かう流れが絶縁ハウジング内で生成される。処理媒体は、吸気ノズルを介して上部から絶縁ハウジングに入り、収集パイプを介して下部領域に再び出る。絶縁ハウジング内部の常時の過圧は、外部汚染が発生しないことを確実にすることを意図している。
【0012】
しかしながら、処理媒体(例えば、無菌空気または殺菌媒体)が吸引される場合には、それぞれの処理チャンバの個々の領域内で負圧が起こりうる可能性があり、その結果、外気が吸い込まれ、これに関連して、それぞれの処理チャンバに望ましくない菌の侵入が起こり得る。
【0013】
独国特許出願公開第102012106532号明細書には、2つの吸引装置が接続された処理チャンバを有するクロージャを殺菌するための装置が記載されている。処理チャンバが殺菌媒体で完全に洗い流されるように、これらの吸引装置を介して導入された殺菌媒体が吸引される。
【0014】
しかしながら、殺菌媒体の吸引は、この装置による汚染リスクももたらす。加えて、殺菌媒体が殺菌ゾーンから漏れ出る可能性も、排除できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、無菌プラスチック容器の製造および処理の間に起こる汚染のリスクをさらに減少させ、漏れ出た可能性のあるあらゆる殺菌媒体を回収することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、エンクロージャが外部ハウジングと気密チャンバとを有し、これを通じて、低菌ゾーンからの処理媒体と同時に、外部ハウジングの外部環境からの空気が吸引されることを特徴とする方法によって課題が解決する。
【0017】
本発明の目的のために、無菌プラスチック容器は、微生物を殺滅するための殺菌処理がそれぞれ行われた、それらのプラスチック容器とこれらのプリフォームである。その後、無菌プラスチック容器は、例えば無菌状況での充填のためなど、さらなる処理のために個々の低菌ゾーンを通過できる。低菌ゾーンでは、殺菌ゾーンとは異なって、殺菌処理は行われず、むしろ、微生物の移動を防止するように低菌ゾーンが設計される。
【0018】
プラスチック容器は、具体的にはプラスチックボトルなどのような飲料容器である。したがって、本発明のさらなる説明は、それらの目的にいかなる限定も意味することなく、プラスチックボトルに言及し得る。
【0019】
プリフォームまたは完成したプラスチックボトルが殺菌またはその後に通過する処理ステーションは、微生物のない状態を維持しなければならない。この目的のために、1つまたは複数の低菌ゾーンが形成される。例えば、低菌ゾーン内に、移送ステーション、ブローステーション、殺菌ステーションまたは充填ステーションを設けることができる。
【0020】
低菌ゾーンは、無菌処理媒体、好ましくは無菌空気の常時の導入によって特徴づけられる。無菌処理媒体に対して正の変位流が生成され、これにより菌が低菌ゾーンに侵入するのを防止する。
【0021】
しかしながら、処理媒体が低菌ゾーンから吸引されると、この明細書の導入部分に示されているように、汚染が起こり得る。本発明によれば、処理媒体が、それと同時に外部ハウジングの外部環境から空気が通る気密チャンバを介して吸引される場合、これらの汚染を回避できる。この方法では、外気の好ましくない流入をもたらすであろう負圧が低菌ゾーンに生成されない。殺菌または低菌ゾーンに対して気密チャンバ内に負圧があり、したがって、気密チャンバに入る外気が殺菌または低菌ゾーンに入ることができないため、気密チャンバに入る外気は、汚染のリスクをもたらさない。予想に反して、殺菌媒体が製造の間に漏れた場合、機械に入るまたは外部に到達する殺菌媒体もまた吸引され得る。
【0022】
しかしながら、気密チャンバは、低菌ゾーンからの処理媒体と外部ハウジングの外部環境からの空気とが同時に気密チャンバを介して吸引され得るように適切な方式で配置される吸引開口部を有していなければならない。気密チャンバが下向きに開口すること、または、1つまたは複数の適切に配置された吸引開口部を気密チャンバに提供することが有利であることが証明されている。この場合、設備の被覆の汚染を防ぐために、開口部をフィルタで覆うことができる。低菌ゾーンが脚部またはその他のスペーサ要素の上に配置されている場合、処理媒体および外気の所望の吸引は、低菌ゾーンの底部において行われ得る。
【0023】
外部ハウジングは、低菌ゾーンおよびその中に収容される機材の主要部分を取り囲むように構成され、かつ、寸法決めされる。例えば、移送装置、プリフォームを柔らかくするための加熱装置、プリフォームを容器に成形するためのブローホイールを備える成形装置、殺菌装置および充填装置などが、外部ハウジングによって囲まれてもよい。好ましくは、外部ハウジングは機械の高さ全体にわたって形成され、実質的に立方体である。
【0024】
外部ハウジングの設計は、いわゆる「ルーム・イン・ルーム(room-in-room)」の概念が実装され得るという特定の利点を示す。この場合、殺菌ゾーンは、外部ハウジングの内側に配置され、殺菌ゾーンは、可能な限り小さく、周囲の機械室からさらに保護される。
【0025】
したがって、本発明による処理媒体は、殺菌媒体および無菌ガス状媒体、特に空気であり、低菌ゾーンに導入される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、気密チャンバは、外部ハウジングと内部ハウジングとの間に形成され、両者は低菌ゾーンを囲んでいる。この場合、外部ハウジングは、内部ハウジングから相隔たっており、すべてまたは個々のハウジングの側面もしくはハウジングの天井またはその両方の間に間隔を設けることができる。好ましくいやり方においては、気密チャンバは、外部ハウジングおよび内部ハウジングの垂直側面の間のみに形成される。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、外部ハウジングの下端のチャネルが気密チャンバを形成する。このような気密チャンバは、外部ハウジングの全体の側部にわたって延在する気密チャンバよりも小さい。ドア、フラップ、ローラブラインドなどの外部ハウジングの遮断装置を二重壁にする必要がないため、二重壁の変例よりも利点がある。チャネル形状の気密チャンバは、好ましくは、外部ハウジングの下端でのすべての内壁に沿って及ぶ。
【0028】
本発明の別の実施形態によれば、気密チャンバは、下方向に向いた吸引開口部を有する。この場合、吸引開口部は、外部ハウジングの壁の全長にわたって延在しうる。連続的な吸引開口部に代えて、個々のより小さな吸引開口部がチャネルの下側部にわたって分散されてもよい。
【0029】
処理媒体を低菌ゾーンに導入するために、殺菌のためのガス状処理媒体がフィルタを介して低菌ゾーンに供給されることが提供される。特に、空気は、ガス状処理媒体としてみなされ得る。
【0030】
フィルタ装置は、菌(微生物)または微生物が付着できる固体粒子を低菌ゾーンから排除するように少なくとも1つの無菌フィルタを有する。HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Airフィルタ)および除菌可能なカートリッジフィルタがフィルタとして使用され得る。
【0031】
ガス状処理媒体は、好ましくは上部から、すなわち、外部ハウジングの天井を通り、場合によっては内部ハウジングの天井を通って、例えば連結フランジを介して、導入され、上述した変位流を生成する。低菌ゾーンのサイズおよび幾何配置に応じて、天井全体にわたって分散され得る、1つまたは複数の流入開口が提供される。外部ハウジングの、場合によっては内部ハウジングの側壁でさえも、このような流入開口を、特に上部の領域に有してもよい。
【0032】
本発明の目的は、エンクロージャが、外部ハウジングと、気密チャンバに接続された吸引装置によって、処理媒体が低菌ゾーンから吸引され、同時に、空気が外部ハウジングの外部環境から気密チャンバを通じて吸引されるように配置された吸引開口部を有する気密チャンバとを備えることを特徴とする設備によって解決されてもよい。
【0033】
本発明による設備のさらなる説明および処理媒体の所望の吸引については、上記説明を参照されたい。
【0034】
本発明の好ましい実施形態によれば、エンクロージャは、設置面上に配置され、この設置面に気密チャンバの吸引開口部が向いている。脚部またはその他の隔たり要素は、設置面との距離に起因して、処理媒体および外気の好ましい吸引を行い得ることを確保する。設置面は、設置場所の床が好ましい。しかしながら、少なくとも特定の領域では、設置面がベースプレートによって形成されることもあり得る。
【0035】
加えて、プリフォームもしくはプラスチック容器またはその両方を処理するための1つまたは複数の処理ステーションは、低菌ゾーンに収容され得る。これは、エンクロージャが1つまたは複数の処理ステーションを囲むことを意味し、それによって、1つのみのエンクロージャ内で、個々の処理ステーションが、気密部またはその他の通路システムによって互いを次々に分離できる可能性がある。
【0036】
個々のエンクロージャへ個々の処理ステーションのみを割り当てることは、処理媒体の供給および排出が、個々の処理ゾーンについて完全に個別に制御できるという利点をもたらす。
【0037】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照しながら以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】各々が、外部ハウジング3,3’と内部ハウジング5,5’との間の気密チャンバ4,4’を有する2つのエンクロージャ2,2’の概略図を示す。
【
図2】各々が、外部ハウジング3,3’の下端6,6’にあるチャネル7,7’の形態で気密チャンバ4,4’を有する2つのエンクロージャ2,2’の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照しながら以下に説明される。
【0040】
図1は、各々が、外部ハウジング3,3’と内部ハウジング5,5’との間の気密チャンバ4,4’を有する2つのエンクロージャ2,2’を示し、ここで、気密チャンバ4,4’は、外部ハウジング3,3’および内部ハウジング5,5’の4つの垂直側面のすべての間に形成される。エンクロージャ2,2’は、それぞれ低菌ゾーン1,1’を囲んでいる。第1の低菌ゾーン1は殺菌装置を収容し、第2の低菌ゾーン1’は充てん装置を収容する。原則として、殺菌および充填装置ならびにその構造は既知なので、それらは詳細に説明しない。
【0041】
殺菌後、既知の構造を有する乾燥ステーションに容器を供給することができる。このような乾燥ステーションは、殺菌装置と同じエンクロージャ2内に配置することができる。無菌容器は、乾燥ステーションから充填装置に移送することができる。低菌ゾーン1,1’に収容される装置に応じて、エンクロージャ2,2’は、低菌ゾーン1,1’の全体の体積が総じて大きくなりすぎるのを防ぐための、個々のまたはいくつかの延長部14を有してもよい。
【0042】
外部ハウジング3,3’および内部ハウジング5,5’の壁15,15’,16,16’および天井17,17’,18,18’は、例えばステンレス鋼またはアクリルガラスなどの、金属またはプラスチックで作られてよい。加えて、壁15,15’,16,16’および天井17,17’,18,18’は、例えばメンテナンス目的のための、または製造中断の際に、機械および容器へのアクセスを可能とするためのドア、フラップ、ローラブラインドなどの遮断装置を組み込んでもよい。
【0043】
図示の実施形態においては、エンクロージャ2,2’の全体は、脚部19,19’,20,20’を使用して設置面11上に配置されている。外部ハウジング3,3’および内部ハウジング5,5’は、設置面11から離間して配置され、外部ハウジング3,3’の天井17,17’まで上方に延在し、設置面11に向かって下方に開口する、周縁気密チャンバ4,4’を形成する。この開口は、それを通して、低菌ゾーン1,1’からの処理媒体と、外部ハウジング3,3’の外部環境からの空気とが同時に気密チャンバ4,4’に入ることができ、かつ、吸引され得る、吸引開口部8,8’を表す。矢印は流路を表している。設置面11は、好ましくは、設置場所の床である。少なくとも設置面11を部分的に形成するベースプレートを使用することもあり得る。
【0044】
気密チャンバ4,4’を介した処理媒体および空気の吸引は、吸引装置10,10’によって行われ、吸引装置10,10’は、吸引ポンプ13,13’を備え、また、気密チャンバ4,4’の上端12,12’に配置される。
【0045】
図2も、各々が、気密チャンバ4,4’を有する2つのエンクロージャ2,2’を示す。
この実施形態の例では、気密チャンバ4,4’は、外部ハウジング3,3’の下端6,6’にチャネル7,7’によって形成される。チャネル7,7’は、低菌ゾーン1,1’に向かって閉じられ、設置面11に向かう底部に向かって開口している。
図1による実施形態の例のように、低菌ゾーン1,1’からの処理媒体と、外部ハウジング3,3’の外部環境からの空気とが同時に、吸引開口部8,8’を通って気密チャンバ4,4’に入ることができ、また、吸引され得る。吸引ポンプ13,13’を備える吸引装置10,10’は、外部ハウジング3,3’またはチャネル7,7’の横方向に配置される。しかしながら、吸引は、エンクロージャ2,2’を通って適切な吸引ラインを介してチャネル7,7’の上部から提供されてもよい。
【0046】
図1および
図2による実施形態の例の両方において、フィルタ装置9,9’が提供され、それを介して、ガス状処理媒体が、殺菌され、その後にポンプ21によって低菌ゾーン1,1’に搬送される。低菌ゾーン1,1’内にある処理装置の種類に応じて、外部ハウジング3,3’または内部ハウジング5,5’の天井17,17’,18,18’のいくつかの流入開口を介して分散された方式で無菌空気を導入でき、それぞれの処理装置に適合した変位流を生成する。
【符号の説明】
【0047】
1,1’…低菌ゾーン、
2,2’…エンクロージャ、
3,3’…外部ハウジング、
4,4’…気密チャンバ、
5,5’…内部ハウジング、
6,6’…下端、
7,7’…チャネル、
8,8’…吸引開口部、
9,9’…フィルタ装置、
10,10’…吸引装置、
11…設置面、
12,12’…上端、
13,13’…吸引ポンプ、
14…延長部、
15,15’…壁、
16,16’…壁、
17,17’…天井、
18,18’…天井、
19,19’…脚部、
20,20’…脚部、
21,21’…ポンプ、