(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】状態監視システム、状態監視装置、状態監視方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
F04B 51/00 20060101AFI20240606BHJP
F04D 27/00 20060101ALI20240606BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F04B51/00
F04D27/00 F
G05B23/02 T
(21)【出願番号】P 2022559045
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2021038678
(87)【国際公開番号】W WO2022091888
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2020179725
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 和也
(72)【発明者】
【氏名】角野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】來田 真之
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛正
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/136897(WO,A1)
【文献】特開2008-019763(JP,A)
【文献】特開2019-120433(JP,A)
【文献】特開昭57-026300(JP,A)
【文献】特開平9-145404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 51/00
F04D 27/00
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項14】
コンピュータに、
第1周期で記録されたブロワの運転データと、イベントの発生をトリガとして送信される、前記第1周期より短い第2周期で記録された前記ブロワの運転データとを取得し、
取得した前記第2周期の運転データを分析して前記ブロワの状態を推定し、
推定結果を出力する
処理を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態監視システム、状態監視装置、状態監視方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排水処理施設などにおける曝気用途、粉体処理装置における粉体の移送用途などにブロワが使用されている。ブロワの一種であるターボブロワは、インペラと、インペラを回転駆動するモータとを備え、モータの駆動によりインペラを回転させることにより、空気などのガスを移送するように構成されている(例えば、特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-236164号公報
【文献】特開2015-182036号公報
【文献】特開2016-185513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ターボブロワは、例えば、インペラを回転させるモータ、モータを駆動するための駆動電力を供給するインバータ、インバータを冷却する冷却ファンなどのコンポーネントを備えており、コンポーネントの故障に伴う異常が検知された場合、ターボブロワの動作を自動的に停止させる仕組みを有する。例えば、インバータを冷却する冷却ファンが故障した場合、インバータを冷却することができず、インバータに温度異常が発生する。ターボブロワは、インバータの温度異常を検知した場合、自装置の動作を停止させる。
【0005】
このように、従来では、コンポーネントに故障が発生したことに伴う異常を検知した場合、ブロワの動作を停止させることが可能であるが、コンポーネントの故障や劣化を推定することは行っていない。
【0006】
本発明は、ブロワを構成するコンポーネントの故障又は劣化を推定できる状態監視システム、状態監視装置、状態監視方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る状態監視システムは、ブロワの運転データを送信する通信装置と、該通信装置から送信される前記ブロワの運転データを取得し、取得した運転データに基づき、前記ブロワの状態を監視する状態監視装置とを備える状態監視システムにおいて、前記通信装置は、第1周期で記録された前記ブロワの運転データを送信する第1送信部と、前記第1周期よりも短い第2周期で記録された前記ブロワの運転データを、イベントの発生をトリガとして送信する第2送信部とを備え、前記状態監視装置は、前記通信装置より送信される前記第1周期の運転データ及び前記第2周期の運転データを取得する取得部と、取得した前記第2周期の運転データを分析し、前記ブロワの状態を推定する推定部と、該推定部による推定結果を出力する出力部とを備える。
【0008】
本発明の一態様に係る状態監視装置は、通信装置より送信されるブロワの運転データを取得し、取得した運転データに基づき、前記ブロワの状態を推定する状態監視装置において、前記通信装置より送信される第1周期で記録された前記ブロワの運転データと、イベントの発生をトリガとして前記通信装置より送信される、前記第1周期よりも短い第2周期で記録された前記ブロワの運転データとを取得する取得部と、取得した前記第2周期の運転データを分析し、前記ブロワの状態を推定する推定部と、該推定部による推定結果を出力する出力部とを備える。
【0009】
本発明の一態様に係る状態監視方法は、ブロワの運転データに基づき、前記ブロワの状態を監視する状態監視方法において、コンピュータを用いて、第1周期で記録された前記ブロワの運転データと、イベントの発生をトリガとして送信される、前記第1周期よりも短い第2周期で記録された前記ブロワの運転データとを取得し、取得した前記第2周期の運転データを分析して前記ブロワの状態を推定し、推定結果を出力する。
【0010】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、第1周期で記録されたブロワの運転データと、イベントの発生をトリガとして送信される、前記第1周期より短い第2周期で記録された前記ブロワの運転データとを取得し、取得した前記第2周期の運転データを分析して前記ブロワの状態を推定し、推定結果を出力する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本願によれば、ブロワを構成するコンポーネントの故障又は劣化を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】状態監視システムの構成を示す模式図である。
【
図3】ブロワにおける計測系の構成を説明する説明図である。
【
図4】制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図5】クラウドサーバが備える運転履歴テーブルの一例を示す概念図である。
【
図6】状態監視装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図9】制御装置が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図10】状態監視装置が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図12】学習モデルの構成例を説明する模式図である。
【
図13】学習モデルを用いた推定手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は状態監視システムの構成を示す模式図である。実施の形態に係る状態監視システムは、ブロワ1の運転データに基づき、ブロワ1の状態を監視するためのシステムである。ブロワ1は、例えば、排水処理施設において曝気用途に使用される。代替的に、ブロワ1は、粉体処理装置における粉体の移送用途、物品の乾燥や冷却用途などに使用されるものであってもよい。状態監視システムは、ブロワ1に搭載される制御装置100と、ブロワ1の外部に設けられる状態監視装置200とを含む。制御装置100及び状態監視装置200は、インターネット網などの通信ネットワークNを介して、クラウドサーバ300にアクセスできるように構成されている。
【0014】
制御装置100は、ブロワ1の動作を制御すると共に、ブロワ1の運転中に得られる運転データをクラウドサーバ300へ送信(アップロード)する。本実施の形態では、制御装置100は、第1周期(例えば1分間隔)で記録される運転データをクラウドサーバ300へ送信し、イベントの発生をトリガとして、第2周期(例えば0.1秒間隔)で記録される運転データをクラウドサーバ300へ送信する。ここで、イベントは、ブロワ1の起動イベント、停止イベント、異常停止イベントなどを含む。制御装置100は、イベントが発生した場合、イベント発生後に得られる運転データだけでなく、イベント発生前後の所定期間にて得られる第2周期の運転データをクラウドサーバ300へ送信する。
【0015】
なお、ブロワ1の起動とは、後述するモータ12(
図2を参照)を作動させてインペラ11(
図2を参照)の回転駆動を開始することをいう。ブロワ1の停止とは、モータ12の作動を停止してインペラ11の回転駆動を停止させることをいう。これに対し、ブロワ1の運転中とは、モータ12が作動しているか否かに関わらず(すなわち、インペラ11を回転駆動しているか否かに関わらず)、運転データをクラウドサーバ300へ送信できる状態にあることをいう。
【0016】
状態監視装置200は、クラウドサーバ300へ送信されたブロワ1の運転データを適宜取得して分析し、分析結果に基づく情報をブロワ1の管理者等に提示する。例えば、状態監視装置200は、第1周期(例えば1分間隔)の運転データに基づき、トレンドグラフを生成し、生成したトレンドグラフを管理者等に提示する。また、状態監視装置200は、第2周期(例えば0.1秒間隔)の運転データに基づき、ブロワ1を構成するコンポーネントの劣化やブロワ1で発生した異常停止の原因を推定し、推定結果を管理者等に提示する。
【0017】
本実施の形態では、制御装置100からクラウドサーバ300へ運転データを送信し、クラウドサーバ300へ送信された運転データを状態監視装置200が取得する構成としたが、クラウドサーバ300を介さずに、ブロワ1の制御装置100から状態監視装置200へ直接的に運転データを送信する構成としてもよい。また、本実施の形態では、ブロワ1に搭載される制御装置100と、ブロワ1の外部に設けられる状態監視装置200とを用いて、ブロワ1の状態を監視する構成としたが、ブロワ1に搭載される制御装置100にて運転データを分析し、分析結果に基づく情報を管理者等に提示してもよい。すなわち、制御装置100と状態監視装置200とは別体である必要はなく、一体的に構成されてブロワ1に搭載されるものであってもよい。
【0018】
図2はブロワ1の構成を示す模式図である。本実施の形態において、ブロワ1は、ターボ型のブロワ(ターボブロワ)である。ターボブロワは、インペラ(羽根)の回転運動により空気などのガスを送るための送風機である。このような送風機はターボ型と容積型とに大別される。ターボ型は軸流型及び遠心型を含み、容積型はルーツ型を含む。軸流型の送風機は、吸込方向と吐出方向とが一直線状に並ぶ。軸流型の送風機は、低圧大風量に適しており、トンネル送風機等に利用されている。一方、遠心型の送風機は、吸込方向と吐出方向とが略直角に交わり、遠心力を利用して空気などのガスを送る。ルーツ型の送風機は、ハウジング内で2つのロータを同期させて逆方向に回転させ、ハウジングとロータとで囲まれた空間の容積が増減することを利用してガスを送るものであり、容積型故に回転数に対する送風量が安定しているという特徴がある。遠心型やルーツ型の送風機は、排水処理施設等の曝気用に利用されている。
図2に一例として示すブロワ1はターボブロワの中でも遠心型送風機であり、吸込方向と吐出方向とが略直角に交わる。ブロワ1は、遠心型送風機に限らず、軸流型送風機やルーツ型送風機であってもよい。
【0019】
ブロワ1は、インペラハウジング10に収容されるインペラ11と、インペラ11を回転駆動するモータ12とを備える。実施の形態に係るブロワ1は、高信頼性及び省メンテナンス性を実現するために、モータ回転軸12Aの軸受にエアフォイルベアリング(空気軸受)13を採用している。エアフォイルベアリング13は、モータ回転軸12Aを非接触で支持するものであるが、起動時や停止時においてモータ12の回転速度が3000min-1以下になると、モータ回転軸12Aとエアフォイルベアリング13の部品であるトップフォイル(不図示)とが接触する場合がある。
【0020】
ブロワ1は、吸込口10Aを通じてインペラハウジング10の内部に導入されるガスを、インペラ11の回転運動によって生じる遠心力により、ガスの吸込方向とは略直角に交わる方向(
図2の例では上方)へ送り出す。インペラハウジング10から送り出されるガスは、吐出路L1を通じてブロワ1の外部へ吐出される。ブロワ1の外部へ吐出されるガスは、
図2に部分的に示すガス供給ラインL2を通じて貯水槽などの所定の供給先へ送られる。
【0021】
吐出路L1の中途には、吐出すべきガスの一部をバイパスさせるバイパス路L3が接続されている。このバイパス路L3には、ブローオフバルブBOVを介して、放風ラインL4、冷却ガス排出ラインL5が接続される。また、インペラハウジング10の吸込口10Aと対向するブロワ1の側面部には、吸い込むべきガスに含まれる塵や埃などの異物を除去するためのフィルタFが設けられている。フィルタFには例えば不織布が用いられる。
【0022】
図3はブロワ1における計測系の構成を説明する説明図である。ブロワ1は、前述のモータ12を駆動する駆動装置120と、駆動装置120を含むブロワ全体の動作を制御する制御装置100とを備える。
【0023】
駆動装置120は、商用電源から供給される三相交流電圧などを直流電圧に変換して出力するコンバータ121と、コンバータ121から入力される直流電圧をPWM(Pulse Width Modulation)波形の電圧に変換して出力するインバータ122とを備える。駆動装置120は、必要なモータ12の回転速度に応じて、インバータ122の電圧波形を変化させ、モータ12に供給する電流の大きさを調整する。なお、駆動装置120は、コンバータ121を備えずに商用電源を直接インバータ122に入力する構成としてもよい。
【0024】
ブロワ1は、モータ12に供給する電流(インバータ122の出力電流)を計測する電流センサS1を備え、ブロワ1における運転データの1つとして、インバータ122の出力電流を計測する。電流センサS1の計測データは制御装置100に与えられる。また、ブロワ1は、モータ12の回転速度を計測する回転速度センサS2を備え、ブロワ1における運転データの1つとして、モータ12の回転速度を計測する。回転速度センサS2の計測データは制御装置100に与えられる。なお、インバータ122の出力電流はインバータ122の消費電力から算出してもよく、モータ12の回転速度はインバータ122の出力周波数とモータ12の極数とから算出してもよい。
【0025】
ブロワ1が備えるモータ12は、駆動装置120のインバータ122から供給される電流により駆動され、インペラ11を回転させる。ブロワ1は、インペラハウジング10の吸込口10Aから吸い込むガスの温度(吸込温度)を計測する温度センサS3、吸い込むガスの流量(吸込ガス量)を計測する流量センサS4、吐出路L1へ吐出するガスの圧力(吐出圧力)を計測する圧力センサS5などを備え、ブロワ1における運転データとして、これらの値を計測してもよい。温度センサS3、流量センサS4、及び圧力センサS5の計測データは制御装置100に与えられる。なお、吸込ガス量は、吸込口10Aから吸い込まれる単位時間あたりのガス量を表す。ガス量とは、温度を20℃、湿度を65%、圧力を大気圧とした状態(工業的な標準状態)での換算値を用いてもよく、温度を0℃、湿度を0%、圧力を大気圧とした状態(学術的な基準状態)での換算値など特定の条件におけるガス量に換算した値を用いてもよい。
【0026】
ブロワ1の運転データとして計測される計測データは上記に限定されない。例えば、モータ12の温度、駆動装置120の温度、ブロワ1の消費電力、フィルタFにおけるフィルタ損失、累積運転時間、累積起動時間などを計測し、これらの計測データを制御装置100に与えてもよい。
【0027】
図4は制御装置100の内部構成を示すブロック図である。制御装置100は、制御部101、記憶部102、入力部103、及び通信部104を備え、ブロワ1の動作を制御すると共に、ブロワ1の運転中に得られる運転データをクラウドサーバ300へ出力する。
【0028】
制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える。制御部101が備えるROM
には、上述したハードウェア各部の動作を制御する制御プログラム等が記憶される。制御部101内のCPUは、ROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、制御装置100の少なくとも一部を本発明における通信装置として機能させる。RAMには、制御プログラムの実行中に生成されるデータが一時的に記憶される。また、制御部101には、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能が搭載されてもよい。
【0029】
記憶部102は、ハードディスク、フラッシュメモリなどを用いた記憶装置を備える。記憶部102には、各種の制御に必要なデータ、入力部103を通じて入力される運転データ等が記憶される。なお、本実施の形態では、運転データを定期的にクラウドサーバ300にアップロードするので、記憶部102は、入力された全ての運転データを蓄積する必要はなく、最新の時刻から一定時間(例えば1日や数分)だけ遡った期間の運転データを記憶していればよい。例えば、記憶部102は、1日分の第1周期の運転データを記憶する第1記憶領域(ROM)と、数分間の第2周期の運転データを上書きしながら記憶する第2記憶領域(RAM)とを備える。
【0030】
入力部103は、各種センサを接続するための接続インタフェースを備える。入力部103が備える接続インタフェースは、有線のインタフェースであってもよく、無線のインタフェースであってもよい。入力部103に接続されるセンサは、例えば、インバータ122の出力電流を計測する電流センサS1、モータ12の回転速度を計測する回転速度センサS2、吸込温度を計測する温度センサS3、吸込ガス量を計測する流量センサS4、吐出圧力を計測する圧力センサS5などを含む。制御部101は、入力部103を通じて、各種センサS1~S5による計測データを取得する。
【0031】
通信部104は、外部機器と通信するための通信インタフェースを備える。通信部104が備える通信インタフェースは、例えば、WiFi(登録商標)やイーサネット(登録商標)などで用いられるLAN(Local Area Network)の通信規格に準じた通信インタフェースである。代替的に、Bluetooth(登録商標) 、ZigBee(登録商標
)、3G、4G、5G、LTE(Long Term Evolution)等の通信規格に準じた通信イン
タフェースであってもよい。本実施の形態では、制御装置100は、通信部104を通じて通信ネットワークNに接続されており、通信ネットワークNを介してクラウドサーバ300と通信できるように構成されている。
【0032】
更に、制御装置100は、ブロワ1の管理者等の指示又は操作を受付ける操作部、ブロワ1の管理者等に報知すべき情報を表示する表示部などを備えてもよい。
【0033】
本実施の形態では、制御装置100は、ブロワ1の運転データ(各種センサS1~S5の計測データ)をクラウドサーバ300へ送信する。より詳細には、制御装置100は、ブロワ1の運転開始後は運転データを第1周期(例えば1分間隔)で記録し、記録した運転データを適宜のタイミングでクラウドサーバ300へ送信する。制御装置100は、運転データを第1周期で記録する都度、クラウドサーバ300へ送信してもよく、所定時間分の第1周期の運転データをまとめてクラウドサーバ300へ送信してもよい。また、制御装置100は、イベントが発生した場合、第2周期(例えば0.1秒間隔)で記録したデータのうち、イベントの開始時点を含む所定期間(例えば3分間)の運転データをクラウドサーバ300へ送信する。制御装置100は、例えば、前記イベントに関する第2周期の運転データの記録が完了した後にクラウドサーバ300へ送信する。なお、イベントの開始時点は、ブロワ1の管理者等によって与えられてもよく、例えば電流センサS1の出力等に基づき制御部101が判断してもよい。
【0034】
クラウドサーバ300は、通信ネットワークNを介して制御装置100から受信した第1周期の運転データ及び第2周期の運転データを運転履歴テーブルに記憶する。
図5はクラウドサーバ300が備える運転履歴テーブルの一例を示す概念図である。クラウドサーバ300が備える運転履歴テーブルは、第1周期の運転データを記憶する第1運転履歴テーブル301Aと、第2周期の運転データを記憶する第2運転履歴テーブル301Bとにより構成される。
【0035】
第1運転履歴テーブル301Aには、ブロワ1の第1周期(例えば1分間隔)の運転データが記憶される。第2運転履歴テーブル301Bには、イベントの発生をトリガとして送信されるブロワ1の第2周期(例えば0.1秒間隔)の運転データが記憶される。運転データは、モータ12に供給する電流(インバータ122の出力電流)、モータ12の回転速度、ブロワ1の吸込温度、ブロワ1の吸込ガス量、ブロワ1の吐出圧力などを含む。
【0036】
第1運転履歴テーブル301Aには、ブロワ1の運転中に計測される長期的な運転データが記憶されるのに対し、第2運転履歴テーブル301Bには、イベント毎の所定期間(例えばイベント発生前後の3分間)の短期的かつ詳細な運転データが記憶される。例えば、ブロワ1において起動イベントが2020年8月1日の12時に発生した場合、11時59分から12時02分までの0.1秒間隔の運転データが第2運転履歴テーブル301Bに記憶される。
【0037】
図6は状態監視装置200の内部構成を示すブロック図である。状態監視装置200は、専用又は汎用のコンピュータであり、制御部201、記憶部202、通信部203、操作部204、及び表示部205を備える。状態監視装置200は、クラウドサーバ300から運転データを取得し、取得した運転データを分析してブロワ1の状態を推定する。
【0038】
制御部201は、例えば、CPU、ROM、RAMなどを備える。制御部201が備えるROMには、上述したハードウェア各部の動作を制御する制御プログラム等が記憶される。制御部201内のCPUは、ROMに記憶された制御プログラムや後述する記憶部202に記憶された各種コンピュータプログラムを実行し、ハードウェア各部の動作を制御することにより、状態監視装置200を本発明における状態監視装置として機能させる。制御部201が備えるRAMには、演算の実行中に利用されるデータ等が一時的に記憶される。
【0039】
本実施の形態において、制御部201は、CPU、ROM、及びRAMを備える構成としたが、必ずしもこのような構成に限定されない。制御部201は、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、量子プロセッサ、揮発性又は不揮発性のメモリ等を備える1又は複数
の演算回路又は制御回路であってもよい。また、制御部201は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を備えてもよい。
【0040】
記憶部202は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの記憶装置を備える。記憶部202には、制御部201によって実行される各種コンピュータプログラムや制御部201によって利用される各種データが記憶される。
【0041】
記憶部202に記憶されるコンピュータプログラムは、ブロワ1の運転データに基づきブロワ1の状態を推定するための状態推定プログラムPGを含む。状態推定プログラムPGは、第1周期で記録されるブロワ1の運転データと第2周期で記録されるブロワ1の運転データとを取得し、取得した第2周期の運転データを分析してブロワ1の状態を推定し、推定結果を出力する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0042】
記憶部202に記憶されるコンピュータプログラムは、当該コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体Mにより提供される。記録媒体Mは、例えば、CD-ROM、USBメモリ、SD(Secure Digital)カード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの可搬型メモリである。制御部201は、図に示していない読取装置を用いて、記録媒体Mに記録されたコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムを記憶部202に記憶させる。代替的に、記憶部202に記憶されるコンピュータプログラムは、通信によって提供されてもよい。この場合、制御部201は、通信部203を通じてコンピュータプログラムを取得し、取得したコンピュータプログラムを記憶部202に記憶させればよい。
【0043】
通信部203は、各種データを送受信する通信インタフェースを備える。通信部203が備える通信インタフェースは、例えば、WiFi(登録商標)やイーサネット(登録商標)で用いられるLAN(Local Area Network)の通信規格に準じた通信インタフェースである。本実施の形態において、通信部203は、通信ネットワークNを介してクラウドサーバ300にアクセスし、第1運転履歴テーブル301Aに記憶されている第1周期の運転データ、及び第2運転履歴テーブル301Bに記憶されている第2周期の運転データを取得する。
【0044】
操作部204は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの操作デバイスを備え、管理者等による各種の操作及び設定を受付ける。制御部201は、操作部204より与えられる各種の操作情報に基づき適宜の制御を行い、必要に応じて設定情報を記憶部202に記憶させる。
【0045】
表示部205は、液晶モニタや有機EL(Electro-Luminescence)などの表示デバイスを備え、制御部201からの指示に応じて管理者等に報知すべき情報を表示する。
【0046】
なお、状態監視装置200は、単一のコンピュータである必要はなく、複数のコンピュータや周辺機器からなるコンピュータシステムであってもよい。更に、状態監視装置200は、ソフトウェアによって仮想的に構築される仮想マシンであってもよい。
【0047】
状態監視装置200は、クラウドサーバ300から第1周期の運転データ及び第2周期の運転データを取得するので、例えば、イベントが発生した場合において、イベント発生前後の運転データを管理者等に提示することができる。
【0048】
図7は運転データの表示例を示す模式図である。
図7は起動イベント発生時の運転データの表示例を示している。状態監視装置200の制御部201は、操作部204を通じて管理者等の指示を受付けた場合、ブロワ1にて所定のイベントが発生した場合などにおいて、表示画面220の画面データを生成し表示部205に表示させる。
【0049】
表示画面220は、例えば、イベント種別選択欄221、イベント日時指定欄222、表示項目選択欄223、項目グループ選択欄224、グラフ表示欄225を備える。イベント種別選択欄221は、プルダウンメニュー形式の選択欄であり、イベント種別の選択を受付ける。イベント種別は、起動、停止、異常停止を含む。イベント日時指定欄222は、プルダウンメニュー形式の指定欄であり、イベント種別選択欄221にて選択されたイベントに関して発生日時の指定を受付ける。
図7の例では、2020年8月20日9時26分0.863秒に発生した起動イベントが選択されていることを示している。
【0050】
表示項目選択欄223は、チェックボックス形式の選択欄であり、表示すべき運転データ(計測値)の選択を受付ける。項目グループ選択欄224は、選択ボタンにより構成されており、表示すべき項目グループの選択を受付ける。例えば、「電力」のラベルが付された選択ボタンが選択された場合、表示項目選択欄223において、電力に関する項目(
図7の例では、消費電力、入力電流、出力電流)が自動的に選択されるように構成されている。
【0051】
グラフ表示欄225には、イベント種別選択欄221、及びイベント日時指定欄222により選択されたイベントに関し、表示項目選択欄223で選択された項目の運転データがグラフとして表示される。
図7の例では、表示項目選択欄223において、「モータ回転速度」、「吸込空気量」、「吐出圧力」、「消費電力」、「出力電流」が選択されているので、これらの計測値の時間変化を示すグラフがグラフ表示欄225に表示されている。グラフの横軸は時間を示し、縦軸は各計測値の大きさを予め想定した最大値に対する割合により示している。横軸(時間)の表示範囲は、イベント発生時刻を含む所定期間である。起動イベントでは、イベント開始前の1分及びイベント開始後の2分の第2周期(例えば0.1秒間隔)の運転データが表示される。一方、停止イベント及び異常停止イベントでは、イベント開始前の2分及びイベント開始後の1分の第2周期(例えば、0.1秒間隔)の運転データが表示される。
【0052】
このように、本実施の形態では、イベント発生の開始前後の運転データを詳細に表示することができるので、各計測値の挙動(波形)を詳細に分析することができる。例えば、制御部201は、ブロワ1の起動直後(例えば起動開始から30秒経過するまでの間)において、モータ12の回転速度やインバータ122の出力電流がどのような振る舞いを示しているのかを分析することにより、エアフォイルベアリング13の劣化を推定することができる。また、制御部201は、起動後の定速運転時(例えば起動開始後30秒経過した時点から45秒経過するまでの間)において、モータ12の回転速度、インバータ122の出力電流、ブロワ1の吐出圧力、ブロワ1の吸込空気量がどのような振る舞いを示しているのかを分析することにより、インペラ11への塵埃の付着に伴う効率低下やエアフォイルベアリング13の劣化を推定することができる。
【0053】
図8は分析手法の一例を説明する説明図である。
図8に示すグラフは、起動直後のインバータ122の出力電流の時間変化を示している。グラフの横軸は時間であり、縦軸は出力電流の値である。制御部201は、過去に収集された起動直後の出力電流の波形から、インバータ122の出力電流の時間変化に関して、例えば線形近似式と偏差とを事前に導出しておく。
図8では、導出した線形近似式を実線により示し、破線により信頼区間(偏差)を示している。
【0054】
制御部201は、起動時の運転データを新たに取得した場合、運転データに含まれるインバータ122の出力電流の値が信頼区間に含まれるか否かを判断する。信頼区間に含まれる場合、制御部201は、エアフォイルベアリング13の劣化はないと推定する。一方、信頼区間から外れる場合、制御部201は、エアフォイルベアリング13の劣化があると推定する。なお、計測誤差の可能性を排除するために、複数の計測値が連続して信頼区間から外れる場合にのみ、劣化と推定してもよい。
【0055】
図8の例では、インバータ122の出力電流波形を線形近似し、信頼区間を設定する構成としたが、曲線近似を行い、得られた近似式に対して信頼区間を設定してもよい。また、
図8の例では、1つの信頼区間を設けた構成としたが、劣化を推定するための信頼区間、劣化の予兆を推定する信頼区間を設けてもよい。
【0056】
図8の例では、インバータ122の出力電流に基づき、エアフォイルベアリング13の劣化を推定する構成としたが、インバータの出力電流に代えて、モータ12の回転速度に基づき、エアフォイルベアリング13の劣化を推定する構成としてもよい。また、モータ12の回転速度とインバータ122の出力電流とに基づき、エアフォイルベアリング13の劣化を推定する構成としてもよい。
【0057】
同様に、制御部201は、ブロワ1に停止指示が与えられた直後(例えば、停止指示が与えられてから10秒経過するまでの間)において、モータ12の回転速度、インバータ122の出力電流がどのような振る舞いを示しているのかを分析することにより、エアフォイルベアリング13の劣化を推定してもよい。
【0058】
また、制御部201は、ブロワ1の起動後の定速運転(例えば、起動後に30秒経過してから45秒が経過するまでの間)において、モータ12の回転速度、インバータ122の出力電流、ブロワ1の吐出圧力、ブロワの吸込空気量がどのような振る舞いを示しているのかを分析することにより、インペラ11への塵埃の付着に伴う効率低下を推定してもよい。分析手法は、エアフォイルベアリング13の劣化の推定と同様であり、信頼区間からのずれの有無に基づいて判断すればよい。
【0059】
更に、制御部201は、異常停止イベントが発生した場合、異常停止前後の運転データを分析することにより、異常停止の原因を推定してもよい。分析手法は、エアフォイルベアリング13の劣化の推定と同様に信頼区間からのずれの有無を判断し、信頼区間からずれが生じた計測値を特定することにより、異常停止の原因を推定すればよい。例えば、異常停止イベントが発生した際、インバータ122の出力電流が信頼区間から外れ、他の計測値が信頼区間に収まっている場合、制御部201は、異常停止の原因をインバータ122の異常と推定することができる。
【0060】
以下、本実施の形態に係る状態監視システムの動作について説明する。
図9は制御装置100が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。制御装置100の制御部101は、ブロワ1の運転開始後、各種センサS1~S5から出力される計測データを入力部103より随時取得する。制御部101は、内蔵クロックの出力を参照して、取得した計測データを第1周期で記憶部102の第1記憶領域内に記録し、第2周期で記憶部102の第2記憶領域内に記録する。本実施の形態において、センサS1~S5からの計測データは、ブロワ1の運転データである。
【0061】
制御部101は、第1周期の運転データをクラウドサーバ300へ送信するか否かを判断する(ステップS101)。制御部101は、例えば、計測データを第1周期で記録する都度、クラウドサーバ300へ送信すると判断する。代替的に、制御部101は、第1周期と異なる所定周期(例えば数分間隔~数時間間隔)で送信すると判断してもよく、所定時刻に送信すると判断してもよい。ステップS101で送信しないと判断した場合(S101:NO)、制御部101は、ステップS103以降の処理を実行する。
【0062】
ステップS101で送信すると判断した場合(S101:YES)、制御部101は、記憶部102の第1記憶領域に記録された第1周期の運転データをクラウドサーバ300へ送信する(ステップS102)。このとき、制御部101は、前回送信してから今回送信するまでの間に記録した第1周期の運転データをクラウドサーバ300へ送信すればよい。送信された第1周期の運転データは、クラウドサーバ300において、第1運転履歴テーブル301Aに記憶される。
【0063】
次いで、制御部101は、イベントが発生したか否かを判断する(ステップS103)。ステップS103では、ブロワ1の起動イベント、停止イベント、異常停止イベント等が判断できればよい。イベント発生の有無は、第1周期の運転データに基づき判断される。例えば、制御部101は、インバータ122の出力電流を監視することにより、ブロワ1が起動したタイミング、停止したタイミング、異常停止したタイミングを特定することができる。また、制御部101は、ブロワ1に起動指示や停止指示が与えられた場合、イベントが発生したと判断してもよい。イベントが発生していない場合(S103:NO)、制御部101は、処理をステップS101へ戻す。
【0064】
イベントが発生したと判断した場合(S103:YES)、制御部101は、そのイベントに関する第2周期の運転データを送信するか否かを判断する(ステップS104)。発生したイベントが停止イベント又は異常停止イベントである場合、制御部101は、イベント発生時より例えば1分が経過した時点で第2周期の運転データを送信すると判断する。また、発生したイベントが起動イベントである場合、制御部101は、イベント発生時より例えば2分が経過した時点で第2周期の運転データを送信すると判断する。
【0065】
ステップS104で送信しないと判断した場合(S104:NO)、制御部101は、送信タイミングとなるまで待機する。この待機期間において、制御部101は、運転データの記録を継続的に行う。すなわち、制御部101は、入力部103を通じて取得した運転データを第1周期で記憶部102の第1記憶領域に記録すると共に、第2周期で記憶部102の第2記憶領域に記録する。
【0066】
ステップS104で送信すると判断した場合(S104:YES)、制御部101は、記憶部102の第2記憶領域に記録された第2周期の運転データをクラウドサーバ300へ送信する(ステップS105)。発生したイベントが停止イベント又は異常停止イベントである場合、制御部101は、例えばイベント発生時より2分前から1分後の合計3分間の運転データを記憶部102の第2記憶領域から読み出し、読み出した運転データを通信部104よりクラウドサーバ300へ送信する。発生したイベントが起動イベントである場合、制御部101は、例えばイベント発生時より1分前から2分後の合計3分間の運転データを記憶部102の第2記憶領域から読み出し、読み出した運転データを通信部104よりクラウドサーバ300へ送信する。送信された第2周期の運転データは、クラウドサーバ300において、第2運転履歴テーブル301Bに記憶される。
【0067】
図10は状態監視装置200が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。状態監視装置200の制御部201は、記憶部202に記憶された状態推定プログラムPGを読み出して実行することにより、以下の処理を実行する。制御部201は、通信部203を通じて、クラウドサーバ300にアクセスし、第1周期の運転データを取得する(ステップS121)。このとき、状態監視装置200は、ユーザ認証を受付け、認証に成功した場合にのみ、クラウドサーバ300へのアクセスを許可してもよい。
【0068】
制御部201は、イベントが発生したか否かを判断する(ステップS122)。ステップS122では、ブロワ1の起動イベント、停止イベント、異常停止イベント等が判断できればよい。イベント発生の有無は、第1周期の運転データに基づき判断される。例えば、制御部201は、インバータ122の出力電流を監視することにより、ブロワ1が起動したタイミング、停止したタイミング、異常停止したタイミングを特定することができる。代替的に、制御部201は、ブロワ1に起動指示や停止指示が与えられた旨の情報を制御装置100から取得して、イベントの発生の有無を判断してもよい。イベントが発生していない場合(S122:NO)、制御部201は、処理をステップS121へ戻す。
【0069】
イベントが発生したと判断した場合(S122:YES)、制御部201は、通信部203を通じて、クラウドサーバ300にアクセスし、第2周期の運転データを取得する(ステップS123)。
【0070】
次いで、制御部201は、取得した第2周期の運転データを分析し、ブロワ1の状態を推定する(ステップS124)。制御部201は、例えば、インバータ122の出力電流やモータ12の回転速度が事前に得られた信頼区間に収まっているか否かを判断することにより、エアフォイルベアリング13の劣化を推定することができる。また、制御部201は、ブロワ1の起動後の定速運転時(例えば、起動後に30秒経過してから45秒が経過するまでの間)におけるモータ12の回転速度、インバータ122の出力電流、ブロワ1の吐出圧力、ブロワの吸込空気量が事前に得られた信頼区間に収まっているか否かを判断することにより、インペラ11への塵埃の付着に伴う効率低下を推定してもよい。更に、制御部201は、異常停止イベントが発生した場合、異常停止前後の運転データを分析することにより、異常停止の原因を推定してもよい。
【0071】
次いで、制御部201は、推定結果を出力する(ステップS125)。
図11は推定結果の出力例を示す模式図である。
図11の出力例は、エアフォイルベアリング13の劣化が生じている旨の文字情報を、各計測値のグラフと共に表示部205に表示した例を示している。このとき、制御部201は、エアフォイルベアリング13の劣化の推定に用いた推定値(例えば、インバータ122の出力電流)のグラフをハイライト表示してもよい。
図11では、エアフォイルベアリング13に劣化が生じた旨の文字情報を表示した例を示したが、同様に、制御部201は、インペラ11への塵埃の付着に伴う効率低下が発生した旨の文字情報、異常停止の原因を示す文字情報等を表示部205に表示させてもよい。また、制御部201は、表示部205に表示させる構成に代えて、通信部203を通じて、管理者等が使用する端末装置に通知してもよい。
【0072】
以上のように、本実施の形態では、イベントが発生した際に送信される第2周期の運転データを分析し、ブロワ1の状態を推定するので、ブロワ1を構成する各コンポーネントの振る舞いを詳細に把握することができ、例えば、エアフォイルベアリング13の劣化、インペラ11への塵埃の付着による効率低下、異常停止の原因等を把握することができる。
【0073】
(実施の形態2)
実施の形態2では、学習モデルを用いて、ブロワ1の状態を推定する構成について説明する。
【0074】
実施の形態2では、電流センサS1により計測されるインバータ122の出力電流、回転速度センサS2により計測されるモータ12の回転速度、温度センサS3により計測されるブロワ1の吸込温度、流量センサS4により計測される吸込流量、圧力センサS5により計測される吐出圧力の計測データと、ブロワ1の状態との関係を学習してある学習モデルMD(
図12を参照)を用いて、ブロワ1の状態を推定する。学習モデルMDは、例えば状態監視装置200の記憶部202に記憶される。代替的に、学習モデルMDは、状態監視装置200からアクセス可能な外部装置(例えば、クラウドサーバ300)に記憶されてもよい。
【0075】
図12は学習モデルMDの構成例を説明する模式図である。学習モデルMDは、例えば、深層学習を含む機械学習の学習モデルであり、ニューラルネットワークによって構成される。学習モデルMDは、入力層LY1、中間層LY2,LY3、及び出力層LY4を備える。
図12の例では、2つの中間層LY2,LY3を記載しているが、中間層の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0076】
入力層LY1、中間層LY2,LY3、及び出力層LY4には、1つまたは複数のノードが存在し、各層のノードは、前後の層に存在するノードと一方向に所望の重みおよびバイアスで結合されている。学習モデルMDの入力層LY1には、入力層LY1が備えるノードの数と同数のデータが入力される。本実施の形態において、入力層LY1のノードに入力されるデータは、ブロワ1に関して得られる第2周期の運転データである。すなわち、入力層LY1のノードに入力されるデータは、インバータ122の出力電流、モータ12の回転速度、ブロワ1の吸込温度、吸込流量、吐出圧力の第2周期の計測データが入力される。
【0077】
入力された計測データは、入力層LY1を構成するノードを通じて、最初の中間層LY2が備えるノードへ出力される。最初の中間層LY2に入力されたデータは、中間層LY2を構成するノードを通じて、次の中間層LY3が備えるノードへ出力される。このとき、ノード間において設定されている重み及びバイアスを含む活性化関数を用いて出力が算出される。以下同様にして、ノード間において設定されている重み及びバイアスを含む活性化関数を用いた演算を実行し、出力層LY4による演算結果が得られるまで次々と後の層に伝達される。
【0078】
ここで、ノード間を結合する重み、バイアス等のパラメータは、所定の学習アルゴリズムによって学習される。各種パラメータを学習する学習アルゴリズムには、例えば誤差逆伝搬法を含む深層学習の学習アルゴリズムが用いられる。本実施の形態では、前述の計測データと、ブロワ1の状態(劣化の有無、異常発生の原因など)を示すラベルデータとを訓練データとして収集し、収集した訓練データを用いて、計測データが入力された場合、ブロワ1の状態に関する演算結果を出力するように、所定の学習アルゴリズムによってノード間の重み及びバイアスを含む各種パラメータを学習する。なお、学習モデルMDの生成は、状態監視装置200の内部で行ってもよく、外部サーバ(例えばクラウドサーバ300)で行ってもよい。
【0079】
出力層LY4は、ブロワ1の状態に関する演算結果を出力する。例えば、出力層LY4を第1ノードから第3ノードまでの3個のノードにより構成し、第1ノードからブロワ1のコンポーネントが劣化している可能性(確率P1)を出力し、第2ノードから劣化の予兆がある可能性(確率P2)、第3ノードから劣化していない可能性(確率P3)を出力する。
【0080】
出力層LY4を構成するノードの数や各ノードに割り当てる演算結果は、上述の例に限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。例えば、出力層LY4の第1ノードから異常停止の原因がインバータ異常である可能性(確率P1)、第2ノードから異常停止の原因がモータ12の故障である可能性(確率P2)、第3ノードからエアフォイルベアリング13の故障である可能性(確率P3)を出力してもよい。
【0081】
また、学習モデルMDは、イベント種別毎に用意されてもよく、入力する計測データの種別毎に用意されてもよい。
【0082】
図13は学習モデルMDを用いた推定手順を説明するフローチャートである。状態監視装置200の制御部201は、記憶部202に記憶された状態推定プログラムPGを実行することにより、以下の処理を行う。
【0083】
制御部201は、通信部203を通じて、クラウドサーバ300より取得した第2周期の運転データを学習モデルMDへ入力し(ステップS201)、学習モデルMDによる演算を実行する(ステップS202)。入力層LY1のノードに与えられたデータは、隣接する中間層LY2のノードへ出力される。中間層LY2ではノード間の重み及びバイアスを含む活性化関数を用いた演算が行われ、演算結果は後段の中間層LY3へ出力される。中間層LY3において、更に、ノード間の重み及びバイアスを含む活性化関数を用いた演算が行われ、演算結果は出力層LY4の各ノードへ出力される。出力層LY4の各ノードは、ブロワ1の状態に関する演算結果を出力する。
【0084】
制御部201は、学習モデルMDの演算結果に基づきブロワ1の状態を推定する(ステップS203)。学習モデルMDの出力層LY4がブロワ1のコンポーネントが劣化している可能性、劣化の予兆がある可能性、劣化していない可能性を確率P1~P3として出力する場合、制御部201は、これらの確率P1~P3のうち、最も高い確率を出力するノードを特定することにより、コンポーネントの劣化を推定することができる。また、学習モデルMDの出力層LY4が異常停止の原因に関する情報を出力する場合、制御部201は、出力層LY4からの出力に基づき、異常停止の原因を推定してもよい。
【0085】
制御部201は、推定結果に基づく情報を出力する(ステップS204)。例えば、制御部201は、コンポーネントの劣化に関する情報、又は異常停止の原因に関する情報を表示部205に表示する。また、制御部201は、コンポーネントの劣化に関する情報、又は異常停止の原因に関する情報を通信部203より管理者等の端末装置に通知してもよい。なお、制御部201は、単発の計測データによる誤判定を避けるために、劣化(若しくは劣化予兆)ありと推定した回数が所定回数(例えば10回)以上連続した場合にのみ、コンポーネントが劣化している旨の情報を出力してもよい。
【0086】
以上のように、実施の形態2では、深層学習を含む機械学習の学習モデルMDを用いて、ブロワ1の状態を推定し、推定結果に基づく情報を出力することができるので、必要に応じてブロワ1を構成するコンポーネントの交換やメンテナンスをユーザに促すことができる。
【0087】
本実施の形態2では、ニューラルネットワークによって構成される機械学習の学習モデルMDを用いてブロワ1の状態に関する演算結果を取得する構成について説明したが、学習モデルMDは特定の手法を用いて得られるモデルに限定されない。
【0088】
例えば、深層学習によるニューラルネットワークに代えて、パーセプトロン、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、残差ネットワーク、自己組織化マップ等による学習モデルであってもよい。
【0089】
また、上記のニューラルネットワークによる学習モデルに代えて、線形回帰、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン等を含む回帰分析手法、決定木、回帰木、ランダムフォレスト、勾配ブースティング木等の探索木を用いた手法、単純ベイズ等を含むベイズ推定法、AR(Auto Regressive)、MA(Moving Average)、ARIMA(Auto Regressive Integrated Moving Average)、状態空間モデル等を含む時系列予測手法、K近傍法等を含むクラスタリング手法、ブースティング、バギング等を含むアンサンブル学習を用いた手法、階層型クラスタリング、非階層型クラスタリング、トピックモデル等を含むクラスタリング手法、アソシエーション分析、強調フィルタリング等を含むその他の手法により学習された学習モデルであってもよい。
【0090】
更に、PLS(Partial Least Squares)回帰、重回帰分析、主成分分析、因子分析、
クラスター分析等を含む多変量分析を用いて学習モデルを構築してもよい。
【0091】
また、本実施の形態では、センサS1~S5から得られる計測データを学習モデルMDへ入力する構成としたが、計測データを入力する構成に代えて、計測値の時系列変化を示すグラフ(画像)を入力する構成としてもよい。この場合、学習モデルMDには、CNN(Convolutional Neural Networks)、R-CNN(Region-based CNN)、YOLO(You
Only Look Once)、SSD(Single Shot Detector)、GAN(Generative Adversarial Network)などにより構築される学習モデルを用いればよい。
【0092】
また、本実施の形態では、センサS1~S5から得られる計測データを基にしたが、センサの種類はS1~S5に限ったものではなく、モータ温度、インバータ温度など、
図7の表示項目選択欄223に示す計測データを用いてもよい。
【0093】
本実施の形態では、エアフォイルベアリング(空気軸受)13を備えたブロワ1を基にしたが、エアフォイルベアリングに限らず、磁気軸受やティルティングパッド軸受などエアフォイルベアリング以外のすべり軸受を用いたブロワであってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 ブロワ
11 インペラ
12 モータ
100 制御装置
101 制御部
102 記憶部
103 入力部
104 通信部
120 駆動装置
121 コンバータ
122 インバータ
200 状態監視装置
201 制御部
202 記憶部
203 通信部
204 操作部
205 表示部
300 クラウドサーバ