(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ステアバイワイヤーステアリングシステムの劣化コンセプト
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
B62D6/00
(21)【出願番号】P 2022563359
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2020061017
(87)【国際公開番号】W WO2021213618
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】500024274
【氏名又は名称】ティッセンクルップ・プレスタ・アクチエンゲゼルシヤフト
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】カカス, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】丹野 友哉
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴也
(72)【発明者】
【氏名】判治 宗嗣
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-240399(JP,A)
【文献】特開2016-078490(JP,A)
【文献】特開平06-321119(JP,A)
【文献】特開2005-059795(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130648(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0306654(US,A1)
【文献】特表2009-512951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04, 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラを有する、自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム(1)であって、コントローラが、運転者の入力又は自律運転ユニットの入力に依存して操舵可能なロードホイールのステアリングを制御し、コントローラが、十分なステアリング機能を有しかつ品質問題のない正常作動モード(AB)を有するものにおいて、コントローラが、ステアリングシステムの性能が劣化した状態にある少なくとも二つの劣化作動モード(BC,CD,DE)を有し、ステアリングシステムが、評価手段を含み、評価手段が、ステアリングシステムの性能劣化の状態を評価し、かつ評価結果に従ってコントローラの作動モードを設定すること
、及び作動モード(AB,BC,CD,DE)の各々が、ステアリングシステムの性能制限値によって制限される範囲によって規定されることを特徴とする自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項2】
少なくとも二つの劣化作動モード(BC,CD,DE)が、全てのステアリング操作を完了するために十分な性能のステアリングシステムを有する一つの劣化作動モード、及びステアリングシステムの性能がステアリング操作を完了できないほど低すぎかつ車両スピード制限を使用する一つの劣化作動モードを含むことを特徴とする請求項
1に記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項3】
正常作動モード(AB)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の100%と、ステアリングシステムの利用可能な性能の90~99%の範囲にある第一下限(B)との間の範囲にあることを特徴とする請求項1
又は2に記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項4】
第一下限(B)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の95%であることを特徴とする請求項
3に記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項5】
少なくとも二つの劣化作動モードのうちの第一のもの(BC)が、第一上限(B)と第二下限(C)の間の範囲にあり、第一上限(B)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の90~99%の範囲にあり、第二下限(C)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の60~90%の範囲にあることを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項6】
第一上限(B)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の95%であり、かつ/又は第二下限(C)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の70%であることを特徴とする請求項
5に記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項7】
第一劣化作動モード(BC)が、十分なステアリング機能をもたらすことを特徴とする請求項
5又は
6に記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項8】
少なくとも二つの劣化作動モードのうちの第二のもの(CD)が、第二上限(C)と第三下限(D)の間の範囲にあり、第二上限(C)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の60~90%の範囲にあり、第三下限(D)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の30~70%の範囲にあることを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項9】
第二上限(C)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の70%であり、かつ/又は第三下限(D)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の50%であることを特徴とする請求項
8に記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項10】
第二劣化作動モード(CD)が、十分なステアリング機能をもたらし、第二劣化作動モード(CD)において、ステアリングシステムのコントローラが、車両駆動コントローラにスピード制限をもたらすことを特徴とする請求項
8又は
9に記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項11】
少なくとも二つの劣化作動モードのうちの第三のもの(DE)が、第三上限(D)とステアリングシステムの利用可能な性能のゼロの間の範囲にあり、第三上限(D)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の30~70%の範囲にあることを特徴とする請求項1~
10のいずれかに記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項12】
第三上限(D)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の50%であることを特徴とする請求項
11に記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項13】
第三劣化作動モード(DE)が、ステアリング機能の十分でない性能をもたらし、第三劣化作動モード(DE)において、ステアリングシステムのコントローラが、車両駆動コントローラにスピード制限をもたらすことを特徴とする請求項
11又は
12に記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項14】
コントローラが、合計四つの作動モード(AB,BC,CD,DE)を有し、第一下限(B)が、第一上限(B)に等しく、第二下限(C)が、第二上限(C)に等しく、第三下限(D)が、第三上限(D)に等しいことを特徴とする請求項1~
13のいずれかに記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項15】
ステアリングシステムのコントローラが、その状態を情報出力ユニットに送るように設計され、情報出力ユニットが、劣化作動を運転者に通知することできることを特徴とする請求項1~
14のいずれかに記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項16】
情報出力ユニットが、少なくとも一つの通知手段を制御し、通知手段が、車両ディスプレイ、車両スピーカ又はステアリング手段であることができ、それが、通知のために振動することができるか、又はステアバイワイヤーステアリングシステムの仮想ギア比を修正することによって、もしくはステアバイワイヤーステアリングシステムのフィードバックアクチュエータによって与えられるフィードバックを増加することによって通知手段として機能することができることを特徴とする請求項
15に記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム。
【請求項17】
自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステム(1)を制御する方法であって、ステアリングシステムが、コントローラを有し、コントローラが、運転者の入力又は自律運転ユニットの入力に依存して操舵可能なロードホイールのステアリングを制御し、コントローラが、十分なステアリング機能を有しかつ品質問題のない正常作動モード(AB)を有するものにおいて、コントローラが、ステアリングシステムの性能が劣化した状態にある少なくとも二つの劣化作動モード(BC,CD,DE)を有し、以下の方法工程を含むことを特徴とする方法:
- ステアリングシステムの性能劣化の状態を評価によって評価すること;及び
- 評価結果に従ってコントローラを正常作動モード(AB)に又は少なくとも二つの劣化作動モード(BC,CD,DE)の一つに設定すること
、ただし、作動モード(AB,BC,CD,DE)の各々が、ステアリングシステムの性能制限値によって制限される範囲によって規定される。
【請求項18】
正常作動モード(AB)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の100%と、ステアリングシステムの利用可能な性能の90~99%の範囲にある第一下限(B)との間の範囲にあることを特徴とする請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
第一下限(B)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の95%であることを特徴とする請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも二つの劣化作動モードのうちの第一のもの(BC)が、第一上限(B)と第二下限(C)の間の範囲にあり、第一上限(B)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の90~99%の範囲にあり、第二下限(C)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の60~90%の範囲にあることを特徴とする請求項17~
19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
第一上限(B)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の95%であり、かつ/又は第二下限(C)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の70%であることを特徴とする請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
方法が、以下の工程を含むことを特徴とする請求項
20又は
21に記載の方法:
- コントローラを第一劣化作動モード(BC)に設定し、第一劣化作動モード(BC)において、コントローラによって十分なステアリング機能をもたらすこと。
【請求項23】
少なくとも二つの劣化作動モードのうちの第二のもの(CD)が、第二上限(C)と第三下限(D)の間の範囲にあり、第二上限(C)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の60~90%の範囲にあり、第三下限(D)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の30~70%の範囲にあることを特徴とする請求項17~
22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
第二上限(C)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の70%であり、かつ/又は第三下限(D)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の50%であることを特徴とする請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
方法が、以下の工程を含むことを特徴とする請求項
23又は
24に記載の方法:
- コントローラを第二劣化作動モード(CD)に設定し、第二劣化作動モード(CD)において、コントローラによって十分なステアリング機能をもたらし、ステアリングシステムのコントローラによって車両駆動コントローラにスピード制限をもたらし、スピード制限が、40~130km/hの範囲にあること。
【請求項26】
少なくとも二つの劣化作動モードのうちの第三のもの(DE)が、第三上限(D)とステアリングシステムの利用可能な性能のゼロの間の範囲にあり、第三上限(D)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の30~70%の範囲にあることを特徴とする請求項17~
25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
第三上限(D)が、ステアリングシステムの利用可能な性能の50%であることを特徴とする請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
方法が、以下の工程を含むことを特徴とする請求項
26又は
27に記載の方法:
- コントローラを第三劣化作動モード(DE)に設定し、第三劣化作動モード(DE)において、ステアリングシステムのコントローラによって車両駆動コントローラにステアリング機能のために十分でない性能及びスピード制限をもたらすこと。
【請求項29】
コントローラが、合計四つの作動モード(AB,BC,CD,DE)を有し、第一下限(B)が、第一上限(B)に等しく、第二下限(C)が、第二上限(C)に等しく、第三下限(D)が、第三上限(D)に等しいことを特徴とする請求項17~
28のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提文に記載の自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械式ステアリングシステムを有する自動車では、劣化(性能低下)が生じることがあり、かかる劣化(性能低下)は許容される。自律運転車の安全重視ステアリングシステム及び/又はステアバイワイヤーシステムのための条件及び構成は様々である。主な条件の一つは、ステアリングシステムがフォールトトレラントでなければならないことであり、それは、もし一つの欠陥が起こってもステアリングシステムがなおも作動可能でなければならず、主要な機能を与えることを意味する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、劣化が起こった後であっても車両の軌道を制御し、安全重視の状況を回避することができる、自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステムを提供することである。
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を有する、自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステムによって達成される。
【0005】
即ち、本発明によれば、コントローラを有する、自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステムが提供され、コントローラは、運転者の入力又は自律運転ユニットの入力に依存して操舵可能なロードホイールのステアリングを制御し、コントローラは、十分なステアリング機能を有しかつ品質問題のない正常作動モードを有する。さらに、コントローラは、ステアリングシステムの性能が劣化した状態にある少なくとも二つの劣化作動モードを有し、ステアリングシステムは、評価手段を含み、評価手段は、ステアリングシステムの性能劣化の状態を評価し、かつ評価結果に従ってコントローラの作動モードを設定する。
【0006】
基本的にこの劣化コンセプトは、ステアリングシステムの作動の存在が安全重視である種類のステアリングシステムにおいて使用されることができる。好ましくは、ステアリングシステムは、フォールトトレラントである。もしシステムがフォールトトレラントでなく、この最初の欠陥の確率が許容されうるような低い値であるなら、このコンセプトは、同様にそのような種類のステアリングシステムに使用されることができる。
【0007】
本発明によれば、ステアリングシステムの利用可能な性能がある程度失われた後であっても、運転者又は車両自体は、安全な方法で軌道を制御することができる。従って、安全重視の状況を回避することができる。
【0008】
好ましくは、作動モードの各々は、ステアリングシステムの性能制限値によって制限される範囲によって規定される。範囲選択の例は、以下に与えられる。
【0009】
好ましい実施形態では、正常作動モードは、ステアリングシステムの利用可能な性能の100%と、ステアリングシステムの利用可能な性能の90~99%の範囲、好ましくはステアリングシステムの利用可能な性能の95%付近の範囲にある第一下限との間の範囲にある。
【0010】
少なくとも二つの劣化作動モードのうちの第一のものは、第一上限と第二下限の間の範囲にあり、第一上限は、ステアリングシステムの利用可能な性能の90~99%の範囲にあり、第二下限は、ステアリングシステムの利用可能な性能の60~90%の範囲にあることが好ましい。第一上限は、ステアリングシステムの利用可能な性能の95%であることが有利であり、かつ/又は第二下限は、ステアリングシステムの利用可能な性能の70%であることが有利である。
【0011】
第一劣化作動モードは、好ましくは十分なステアリング機能をもたらすが、第一劣化作動モードにおいて、品質問題は、起こりうる。
【0012】
さらに、少なくとも二つの劣化作動モードのうちの第二のものは、第二上限と第三下限の間の範囲にあり、第二上限は、ステアリングシステムの利用可能な性能の60~90%の範囲にあり、第三下限は、ステアリングシステムの利用可能な性能の30~70%の範囲にあることが好ましい。
【0013】
好ましくは、第二上限は、ステアリングシステムの利用可能な性能の70%であり、かつ/又は第三下限は、ステアリングシステムの利用可能な性能の50%である。
【0014】
第二劣化作動モードは、好ましくは十分なステアリング機能をもたらすが、第二劣化作動モードにおいて、ステアリングシステムのコントローラは、車両駆動コントローラにスピード制限をもたらし、スピード制限は、前もって設定された範囲にある。
【0015】
さらに、少なくとも二つの劣化作動モードのうちの第三のものが存在することができ、それは、第三上限とステアリングシステムの利用可能な性能のゼロの間の範囲であることが好ましく、第三上限は、ステアリングシステムの利用可能な性能の30~70%、特にステアリングシステムの利用可能な性能の50%付近の範囲にある。
【0016】
第三劣化作動モードは、ステアリング機能を全くもたらさないことが好ましく、第三劣化作動モードにおいて、ステアリングシステムのコントローラは、車両駆動コントローラにスピード制限をもたらし、スピード制限は、前もって設定された範囲にある。
【0017】
上述の作動モードのうちの三つだけを劣化コンセプトに含めることが可能である。しかしながら、コントローラが合計四つの作動モードを有し、第一下限が第一上限に等しく、第二下限が第二上限に等しく、第三下限が第三上限に等しいことが有利である。
【0018】
ステアリングシステムのコントローラが、その状態を情報出力ユニットに送るように設計され、情報出力ユニットが、性能が劣化した状態にあることを運転者に通知することできることが好ましい。通知は、各劣化作動モードに対して特有のものであることができる。情報出力ユニットは、好ましくは少なくとも一つの通知手段を制御し、通知手段は、車両ディスプレイ、車両スピーカ又はステアリング手段であることができ、それは、通知のために振動することができるか、又はステアバイワイヤーステアリングシステムの仮想ギア比を修正することによって、もしくはステアバイワイヤーステアリングシステムのフィードバックアクチュエータによって与えられるフィードバックを増加することによって、もしくはEPASシステムにおいてアシスト力を減少することによって通知手段として機能することができる。また、一つより多くの通知手段が、ステアリングシステムの劣化を運転者に通知するために使用されることが可能である。
【0019】
さらに、本発明によれば、自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステム又は自律運転自動車のためのステアリングシステムを制御する方法が提供され、ステアリングシステムは、上述のコントローラを有し、コントローラは、運転者の入力又は自律運転ユニットの入力に依存して操舵可能なロードホイールのステアリングを制御し、コントローラは、十分なステアリング機能を有しかつ品質問題のない正常作動モードを有し、コントローラは、ステアリングシステムの性能が劣化した状態にある少なくとも二つの劣化作動モードを有し、方法は、以下の方法工程を含む:
- ステアリングシステムの性能劣化の状態を評価によって評価すること;及び
- 評価結果に従ってコントローラを正常作動モードに又は少なくとも二つの劣化作動モードの一つに設定すること。
【0020】
好ましくは、少なくとも二つの劣化作動モードは、全てのステアリング操作を完了するために十分な性能のステアリングシステムを有する一つの劣化作動モード、及びステアリングシステムの性能がステアリング操作を完了できないほど低すぎかつ車両スピード制限が使用される一つの劣化作動モードを含む。
【0021】
作動モードの各々は、ステアリングシステムの性能制限値によって制限される範囲によって規定されることが好ましい。制限値及び作動モードの特性は、上で与えた通りである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して記載されるだろう。
【
図1】
図1は、電気機械式ステアリングシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、ステアリングシステムの性能劣化のダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、電気機械式パワーステアリング機構1の概略図を示す。ステアリング軸2は、運転者による操作のためにハンドル3に接続される。ステアリング軸2は、ギヤピニオン5を介してステアリングラック4に連結される。ステアリングラックロッド6は、ステアリングラック4及び自動車の操舵可能なホイール7に接続される。ステアリング軸2の回転は、トルクに耐える態様でステアリング軸2に接続されるギヤピニオン5によってステアリングラック4の軸変位を起こす。アシスト力が、電気モータを駆動することによってステアリング機構に付与される。電気機械式パワーステアリング機構1は、コラムアシスト、ラックアシスト又はピニオンアシストタイプであることができる。コラムアシストEPAS(電気式パワーアシストステアリング)システムは、ステアリングコラム2に接続された電気モータを持つ。ラックアシストEPASシステムは、ステアリングラック4に接続された電気モータを持つ。ピニオンアシストEPASシステムは、ピニオン5に接続された電気モータを持つ。
図1は、全ての三つのアシストタイプを示し、それらのうち通常一つだけが実施される。EPASシステムは、自律操舵される道路車両の一部である。車両は、完全に自律的であることができ、又は車両は、例えば駐車又は長距離走行のために自律モードを与えることができる。かかるEPASシステムは、高い安全手段を持たなければならず、従って安全重視である。
【0024】
安全重視ステアリングシステムはまた、ステアバイワイヤーシステムを含み、そこではハンドルと操舵可能なホイールの間に機械的な接続がない。さらに、操舵可能なホイール同士の間の操舵を同期するための機械的な連結がない。
【0025】
これらの安全重視ステアリングシステムは全て、四つの作動モード(即ち、正常作動モード(AB)及び三つの劣化作動モード(BC,CD,DE))を有するコントローラを含む。評価手段は、ステアリングシステムの性能劣化の状態を評価する。評価手段の評価結果に従って、コントローラの作動モードが設定される。
【0026】
図2は、ステアリングシステムの利用可能な性能に関する安全重視ステアリングシステムのコントローラの四つの作動モード(AB,BC,CD,DE)を示す。
【0027】
A,B,C,D,Eは、利用可能な性能制限値を表わす。AB,BC,CD,DEは、様々な作動モードを表わし、それらは、性能制限値間の区域によってそれぞれ規定される。
【0028】
作動モードABは、正常作動モードである。ステアリングシステムの利用可能な性能は、非常に高く、全ての運転操作が実施されることができ、制限が全くない。Aは、利用可能な性能の100%に等しく、Bは、利用可能な性能の90~99%の範囲にある。好ましくは、Bは、95%である。
【0029】
作動モードBCは、劣化した作動を有する第一劣化作動モードである。全ての運転操作が可能であるが、品質問題が起こりうる。即ち、運転者は、ハンドルの動きと比較して車両の動きに少しの遅れを感じることがあり、それは、安全重視ではない。Cは、利用可能な性能の60~90%の範囲、好ましくは70%にある。
【0030】
情報出力ユニットは、劣化した作動を運転者に通知するために使用される。情報出力ユニットは、少なくとも一つの通知手段を制御する。通知手段は、例えば車両ディスプレイ又はスピーカである。ハンドルはまた、例えば振動によって又はステアバイワイヤーステアリングシステムの仮想ギヤ比を修正することによって又はステアバイヤーステアリングシステムのフィードバックアクチュエータによって与えられるフィードバックを増加することによってフィードバックを与えるために使用されることができる。上述の通知手段はまた、組み合わせることができる。
【0031】
従って、運転者は、通知手段によって警告され、次いで車を直ちに駐車したり、又はレッカー移動サービスを呼び出したり、又は問題箇所を修理するために作業場まで運転したりすることを決定することができる。
【0032】
作動モードCDは、劣化した作動を有する第二劣化作動モードである。全ての運転操作は可能であるが、品質問題が起こりうる。Dは、ステアリングシステムの利用可能な性能の30~70%の範囲にある。十分な車両制御性を維持するために、車両は、スピード制限を有する予め決められた車両スピード範囲内で走行させられる。
【0033】
かかる中程度の車両スピードは、ステアリングシステムのさらなる劣化、例えば道路車輪アクチュエータの機能の損失を防止するために設定されることができる。
【0034】
フィードバックは、上記のステアリングシステムの劣化作動モードを知らせるために運転者に与えられる。
【0035】
第四作動モードDEは、緊急モードとして機能する第三劣化作動モードである。Eは、利用可能な性能のゼロに等しい。ステアリング機能は失われている。なぜなら性能が低すぎてステアリング機能を与えるこができないからである。車両は、操舵なしで車を安全に停止させることができるスピード制限を有する予め決められた車両スピード範囲内で走行することを強制される。さらに、システムがその劣化状態について情報を与え、車両レベル外部アクチュエータ(例えばドライブトレーン及び/又はブレーキ)が車両の横方向の動きを制御するように助けることができることが実施されうる。
【0036】
フィードバックは、ステアリングシステムの緊急モードを知らせるために運転者に与えられる。フィードバックは、上記のように与えられることができる。
【0037】
幾つかの作動モードの記載したコンセプトは、システムの作動が安全重視である全てのステアリングシステムに使用されることができる。作動は、フォールトトレラントである必要はない。システムがフォールトトレラントでなく、最初の欠陥の確率が安全問題に関して許容されるような低い値である場合には、このコンセプトが同様に使用されることができる。