(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】電気装置、パネルおよび熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 1/047 20060101AFI20240606BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240606BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F28D1/047 Z
H05K7/20 N
F28F1/02 Z
(21)【出願番号】P 2022566291
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2021057936
(87)【国際公開番号】W WO2021219305
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-12
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロデューア,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】アギルレ,ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】ベル・フィディラ,レベイ
(72)【発明者】
【氏名】トーレンス,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】サンド,ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】マレクサイーディ,サイード
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-524893(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0033070(US,A1)
【文献】特開平05-067890(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0058042(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0270987(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0187984(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 21/00
F28F 1/00 - 99/00
H05K 7/20
H01L 23/34 - 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(14)と、
前記ケーシング(14)の内部に配置された発熱電気部品(18)と、
3次元格子セル構造体(22)を備える熱交換器(12)であって、前記3次元格子セル構造体(22)は誘電性の冷却流体(16)を、周囲流体(20)との熱交換のために前記ケーシング(14)の外側で前記ケーシング(14)から導き、前記電気部品(18)の冷却のために前記ケーシング(14)に向かって戻すように配置される、熱交換器(12)と
を備
え、
前記3次元格子セル構造体(22)内に前記周囲流体(20)の流れを生成するように構成されたファン装置(38、40、68)をさらに備え、
前記ファン装置(38、40、68)は、少なくとも2つの異なる方向で前記3次元格子セル構造体(22)内に前記周囲流体(20)の流れを生成するように構成される、電気装置(10)。
【請求項2】
前記熱交換器(12)は複数の本体(52、60)を備え、各本体(52、60)は3次元格子セル構造体(22)または2次元格子構造体(62)を含む、請求項1に記載の電気装置(10)。
【請求項3】
各本体(52、60)は前記ケーシング(14)に着脱可能に接続される、請求項2に記載の電気装置(10)。
【請求項4】
各本体は2次元格子セル構造体(62)を含むパネル(60)である、請求項2または3に記載の電気装置(10)。
【請求項5】
前記パネル(60)は、前記3次元格子セル構造体(22)を形成するようにスタック状に配置される、請求項4に記載の電気装置(10)。
【請求項6】
前記3次元格子セル構造体(22)は、三重周期的実質的極小曲面を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電気装置(10)。
【請求項7】
前記3次元格子セル構造体(22)は、非平坦および流れ促進端部(42)を備える、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気装置(10)。
【請求項8】
前記熱交換器(12)は、並列に配置された2つの3次元格子セル構造体(22)を備え、各3次元格子セル構造体(22)は前記冷却流体(16)を、周囲流体(20)との熱交換のために前記ケーシング(14)の前記外側で前記ケーシング(14)から導き、前記電気部品(18)の冷却のために前記ケーシング(14)に向かって戻すように配置される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電気装置(10)。
【請求項9】
前記熱交換器(12)は、前記3次元格子セル構造体(22)を通して前記周囲流体(20)を導くためのパイプ(44)をさらに備える、
請求項1~8のいずれか1項に記載の電気装置(10)。
【請求項10】
前記熱交換器(12)は、前記3次元格子セル構造体(22)の内側に案内構造体(48)を備え、前記案内構造体(48)は、前記3次元格子セル構造体(22)の内側の画定された経路(50)に沿って前記冷却流体(16)を案内するように配置される、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電気装置(10)。
【請求項11】
前記3次元格子セル構造体(22)を通る前記冷却流体(16)の流れを生成するように構成されたポンプ装置(58)をさらに備える、
請求項1~10のいずれか1項に記載の電気装置(10)。
【請求項12】
前記電気装置は、電力変圧器または分路リアクトルなどの高電圧静電誘導システムである、
請求項1~11のいずれか1項に記載の電気装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、一般に、電気装置用の熱交換器に関する。特に、熱交換器を備える電気装置、熱交換器用のパネル、および複数のパネルを備える熱交換器が提供される。
【背景技術】
【0002】
背景
電力変圧器に使用される変圧器油は、放熱器または冷却器などの冷却装置によって冷却されることが多い。これらの冷却装置は、変圧器の設置面積のかなりの部分を構成することが多い。
【0003】
米国特許出願公開第2020033070A1号は、エンクロージャと、エンクロージャ内の極小曲面構造体とを含む熱交換器を開示している。エンクロージャは、第1の入口、第1の出口、第2の入口、および第2の出口を含む。極小曲面構造体は、エンクロージャ内の第1の容積と第2の容積とを分離する。第1の入口および第1の出口は、第1の容積と流体連通し、第2の入口および第2の出口は、第2の容積と流体連通する。第1および第2の容積は、互いに混合することから分離される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
概要
本開示の1つの目的は、発熱電気部品と熱交換器とを備える電気装置を提供することであり、この電気装置は、電気部品の冷却を改善することを可能にする。
【0005】
本開示のさらなる目的は、熱交換器を備える電気装置であって、簡単なメンテナンスを可能にする電気装置を提供することである。
【0006】
本開示のさらに別の目的は、熱交換器を備える電気装置であって、コンパクトな設計を有する電気装置を提供することである。
【0007】
本開示のさらに別の目的は、熱交換器を備える電気装置であって、軽量の電気装置を提供することである。
【0008】
本開示のさらに別の目的は、熱交換器を備える電気装置であって、必要とする誘電性の冷却流体が少量である電気装置を提供することである。
【0009】
本開示のさらに別の目的は、熱交換器を備える電気装置であって、前述の目的のいくつかまたはすべてを組み合わせて解決する電気装置を提供することである。
【0010】
本開示のさらに別の目的は、前述の目的のうちの1つ、いくつか、またはすべてを解決する熱交換器用のパネルを提供することである。
【0011】
本開示のさらに別の目的は、前述の目的のうちの1つ、いくつか、またはすべてを解決する電気装置用の熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様によれば、ケーシングと、ケーシングの内部に配置された発熱電気部品と、3次元格子セル構造体を備える熱交換器であって、3次元格子セル構造体は誘電性の冷却流体を、周囲流体との熱交換のためにケーシングの外側でケーシングから導き、電気部品の冷却のためにケーシングに向かって戻すように配置される、熱交換器とを備える電気装置が提供される。
【0013】
3次元格子セル構造体は、熱伝達のために露出される表面積を増加させる。したがって、熱伝達効率は、3次元格子セル構造体によって改善される。これにより、電気部品の冷却効率も向上する。熱交換器の高い熱伝達効率のために、冷却流体の量も比較的少なくすることができる。3次元格子セル構造体は、良好な混合環境および低い圧力降下の増加をさらに提供する。
【0014】
3次元格子セル構造体は、熱交換器のコンパクトな設計をさらに可能にする。結果として、電気装置もよりコンパクトにすることができる。あるいは、電気装置は、同じ設置面積でより強力にすることができる。
【0015】
さらに、3次元格子セル構造体によって、電気装置をより軽くすることができる。これにより、輸送コストが削減される。3次元格子セル構造体はまた、電気装置をより容易に製造することを可能にする。
【0016】
3次元格子セル構造体は、3つの異なる方向の各々に周期パターンを含んでもよい。各周期パターンは、少なくとも3つの周期を含んでもよい。方向は、実質的に直交していてもよいし、直交していてもよい。3次元格子セル構造体は、複数のセルを含む。セルは、2つまたは3つの方向に実質的に直交して、または直交して配置されてもよい。
【0017】
3次元格子セル構造体は、内部格子セル構造体容積を画定してもよい。内部格子セル構造体容積は、連続でも不連続でもよい。したがって、内部格子セル構造体容積は、冷却流体のための連続ラビリンスネットワークを形成してもよく、または冷却流体のためのいくつかの並列ラビリンスネットワークを形成してもよい。いずれの場合でも、内部格子セル構造体容積は、ケーシングの内部と流体連通してもよい。
【0018】
3次元格子セル構造体は、外部格子セル構造体容積を画定してもよい。外部格子セル構造体容積は、連続でも不連続でもよい。したがって、外部格子セル構造体容積は、周囲流体のための連続ラビリンスネットワークを形成してもよく、または周囲流体のためのいくつかの並列ラビリンスネットワークを形成してもよい。いずれの場合でも、外部格子セル構造体容積は、周囲流体と流体連通してもよい。
【0019】
冷却流体は、誘電油などの誘電性の液体であり得る。周囲流体は、周囲空気または水であり得る。
【0020】
ケーシングおよび3次元格子セル構造体は、冷却流体のための回路を画定してもよい。熱交換器は、1つまたは複数の入口および1つまたは複数の出口を備えてもよい。この場合、3次元格子セル構造体は、1つまたは複数の入口と1つまたは複数の出口との間に流体的に配置されてもよい。各入口および各出口は、ケーシングと3次元格子セル構造体との間に流体的に配置されてもよい。入口は、出口よりも測地的に高く配置されてもよい。
【0021】
ケーシングは、複数の壁を備えてもよい。3次元格子セル構造体は、壁の1つに埋め込まれてもよい。代替的または追加的に、3次元格子セル構造体は、壁の1つに溶接またはボルト締めされてもよい。
【0022】
熱交換器は複数の本体を備えてもよく、各本体は3次元格子セル構造体または2次元格子構造体を含む。各本体は、一体的に形成されてもよい。例えば、各本体は、積層造形されてもよい。積層造形の一例は、3D印刷である。
【0023】
各本体はケーシングに着脱可能に接続されてもよい。これにより、組立て時間が短縮され、修理が容易になる。例えば、残りの本体を交換せずに、本体のうちの1つを交換してもよい。交換が必要な1つの理由は、漏れであり得る。
【0024】
各本体は2次元格子セル構造体を含むパネルであってもよい。2次元格子セル構造体は、2つの異なる方向の各々に周期パターンを含んでもよい。各周期パターンは、少なくとも3つの周期を含んでもよい。方向は、実質的に直交していてもよいし、直交していてもよい。
【0025】
パネルは、3次元格子セル構造体を形成するようにスタック状に配置されてもよい。この場合、隣接するパネルのセルは整列またはオフセットされてもよい。あるいは、各本体は、パイプ形状などの細長い形状であってもよい。
【0026】
3次元格子セル構造体は、三重周期的極小曲面TPMSなどの三重周期的実質的極小曲面を含んでもよい。TPMSは、例えばシュワルツP曲面を含み得る。三重周期的実質的極小曲面は、TPMSに類似しているが、TPMSと呼ばれる要件を満たさない曲面であってもよい。
【0027】
3次元格子セル構造体は、非平坦および流れ促進端部を備えてもよい。端部は、例えば、円錐または半球であってもよい。各端部は、3次元格子セル構造体のそれぞれのセルを閉じてもよい。
【0028】
熱交換器は、並列に配置された2つの3次元格子セル構造体を備えてもよく、各3次元格子セル構造体は冷却流体を、周囲流体との熱交換のためにケーシングの外側でケーシングから導き、電気部品の冷却のためにケーシングに向かって戻すように配置されてもよい。この場合、熱交換器は、複数の入口および複数の出口を備えてもよい。入口および出口の各対は、1つの3次元格子セル構造体に関連付けられてもよい。各3次元格子セル構造体は、関連する入口と出口との間に流体的に配置されてもよい。
【0029】
熱交換器は、3次元格子セル構造体を通して周囲流体を導くためのパイプをさらに備えてもよい。この場合、周囲流体は、パイプの内側および外側の両方で3次元格子セル構造体を通って流れ得る。すなわち、周囲流体は、パイプの内側および外部格子セル構造体容積の内側の両方を流れ得る。これにより、冷却流体と周囲流体との間の熱伝達がさらに増加する。パイプは、3次元格子セル構造体のセルを通って延在してもよい。
【0030】
代替として、パイプは、2相冷却剤を含むヒートパイプであってもよい。この場合、ヒートパイプの内面は、毛細管構造体を備えてもよい。3次元格子セル構造体の外側のヒートパイプのセクションは凝縮器領域を構成してもよく、3次元格子セル構造体の内側のヒートパイプのセクションは蒸発器領域を構成してもよい。冷却流体に隣接するヒートパイプの蒸発器領域において、2相冷却剤は、冷却流体から熱を吸収して蒸発する。蒸気は、ヒートパイプの内側であるが毛細管構造の外側で、3次元格子セル構造体の外側のヒートパイプの低温凝縮器領域に移動し、そこで蒸気は凝縮して液体に戻り、毛細管構造体によって吸収される。次いで、液体は、毛細管構造体の内側を凝縮器領域から蒸発器領域に戻るように移動する。
【0031】
熱交換器は、3次元格子セル構造体の内側に案内構造体を備えてもよく、案内構造体は、3次元格子セル構造体の内側の画定された経路に沿って冷却流体を案内するように配置される。経路は、3次元格子セル構造体の実質的に全体または全体を通過してもよい。経路は蛇行経路であってもよい。案内構造体は、複数のプレートを備えてもよい。
【0032】
電気装置は、3次元格子セル構造体を通る冷却流体の流れを生成するように構成されたポンプ装置をさらに備えてもよい。これにより、熱交換がさらに向上する。ポンプ装置は、1つまたは複数のポンプを備えてもよい。あるいは、電気装置は、自然対流によってのみ、すなわち冷却流体を循環させるための機械的補助なしに冷却流体を循環させるように構成されてもよい。
【0033】
電気装置は、3次元格子セル構造体内に周囲流体の流れを生成するように構成されたファン装置をさらに備えてもよい。これにより、熱交換がさらに向上する。ファン装置は、3次元格子セル構造体を通る周囲流体の流れを生成するように構成されてもよい。ファン装置は、1つまたは複数のファンを備えてもよい。
【0034】
ファン装置は、少なくとも3つの異なる方向など、少なくとも2つの異なる方向で3次元格子セル構造体内に周囲流体の流れを生成するように構成されてもよい。方向は、実質的に直交していてもよいし、直交していてもよい。
【0035】
電気装置は、電力変圧器または分路リアクトルなどの高電圧静電誘導システムであってもよい。本明細書で使用される場合、高電圧は、少なくとも100kVなどの少なくとも30kVであり得る。電気装置は、主に電力変圧器として説明されるが、電気装置は電力変圧器に限定されない。
【0036】
さらなる態様によれば、熱交換器用のパネルが提供され、パネルは、入口と、出口と、入口と出口との間に流体的に配置された2次元格子セル構造体とを備える。パネルは、本開示による任意の種類のものであってもよい。
【0037】
さらなる態様によれば、電気装置のための熱交換器が提供され、熱交換器は本開示による複数のパネルを備え、パネルは、3次元格子セル構造体を形成するようにスタック状に配置される。隣接するパネルのセルは、整列またはオフセットされてもよい。
【0038】
各パネルは、2次元格子セル構造体を備えてもよい。2次元格子セル構造体は、2つの異なる方向の各々に周期パターンを含んでもよい。各周期パターンは、少なくとも3つの周期を含んでもよい。方向は、実質的に直交していてもよいし、直交していてもよい。
【0039】
図面の簡単な説明
本開示のさらなる詳細、利点、および態様は、図面と併せて以下の実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】熱交換器を備える電気装置の側面図を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の熱交換器の3次元格子セル構造体の部分斜視図を概略的に示す図である。
【
図3】熱交換器のさらなる例を備える電気装置の側面図を概略的に示す図である。
【
図4】
図3の熱交換器の部分斜視図を概略的に示す図である。
【
図5】熱交換器のさらなる例を備える電気装置の側面図を概略的に示す図である。
【
図6】熱交換器のさらなる例を備える電気装置の側面図を概略的に示す図である。
【
図7】熱交換器のさらなる例を備える電気装置の側面図を概略的に示す図である。
【
図8】
図7の熱交換器のパネルの斜視図を概略的に示す図である。
【
図9】
図8のパネルの正面図を概略的に示す図である。
【
図10】熱交換器のさらなる例を備える電気装置の側面図を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
以下では、熱交換器を備える電気装置、熱交換器用のパネル、および複数のパネルを備える熱交換器について説明する。同じまたは類似の参照番号は、同じまたは類似の構造的特徴を示すために使用される。
【0042】
図1は、熱交換器12を備える電力変圧器10の側面図を概略的に示す。電力変圧器10は、電気装置の一例である。電力変圧器10は、ケーシング14を備える。ケーシング14は、誘電油16を収容する。誘電油16は誘電性の冷却流体の一例である。
【0043】
電力変圧器10は、電気部品18をさらに備える。電気部品18は、ケーシング14の内部に配置される。電気部品18は、油16に浸漬される。電気部品18は、電力変圧器10の動作中に熱を発生する。電気部品18は、例えば、電力変圧器10の巻線であってもよい。
【0044】
図1は、ケーシング14の外側の周囲空気20をさらに示す。空気20は、大気であってもよい。空気20は、周囲流体の一例である。
【0045】
熱交換器12は、3次元格子セル構造体22を備える。3次元格子セル構造体22は、複数のセル24を含む。この例の3次元格子セル構造体22は、細長いシュワルツP曲面を有する三重周期的実質的極小曲面を含む。3次元格子セル構造体22は、例えば、3D印刷されてもよい。
【0046】
3次元格子セル構造体22は、内部格子セル構造体容積26および外部格子セル構造体容積28を画定する。内部格子セル構造体容積26および外部格子セル構造体容積28は、2つの別個のネットワークを構成する。ケーシング14の内部からの油16は、内部格子セル構造体容積26に出入りすることができる。空気20は、外部格子セル構造体容積28に出入りすることができる。この例では、内部格子セル構造体容積26および外部格子セル構造体容積28の各々は連続である。
【0047】
したがって、3次元格子セル構造体22は油16を、ケーシング14からケーシング14の外側に導き、ケーシング14に向かって戻すように構成される。3次元格子セル構造体22は、油16と空気20との間の熱交換のための大きな表面積を含む。試験は、熱交換器12が非常に高い熱伝達係数を有することを示している。これにより、放熱器の数を減らすことができる。熱交換のための大きな表面積にもかかわらず、3次元格子セル構造体22はまたコンパクトである。
【0048】
熱交換器12は、入口30および出口32を備える。入口30および出口32の各々は、ケーシング14と3次元格子セル構造体22との間に流体的に配置される。入口30は、出口32よりも測地的に高く配置されてもよい。
【0049】
図1に示すように、ケーシング14および3次元格子セル構造体22は、ケーシング14、入口30、3次元格子セル構造体22および出口32を含む油16のための回路を画定する。
図1では、油16は、矢印で示すように、電力変圧器10の動作中に時計回り方向にこの回路を流れる。すなわち、油16は、電気部品18によって加熱される。次いで、高温の油16は、入口30を通って3次元格子セル構造体22に入る。次いで、内部格子セル構造体容積26内の高温の油16は、外部格子セル構造体容積28内の空気20との熱交換によって冷却される。次いで、低温の油16は、出口32を通って3次元格子セル構造体22を出る。その後、電気部品18は、低温の油16によって冷却される。
【0050】
ケーシング14は、4つの側壁34と、上壁36とを備える。
図1の例では、3次元格子セル構造体22は、側壁34の1つに埋め込まれてもよい。3次元格子セル構造体22は、例えば、側壁34に溶接またはボルト締めされてもよい。
【0051】
電力変圧器10は、ファン装置をさらに備える。ファン装置は、前部ファン38および底部ファン40を備える。前部ファン38は、3次元格子セル構造体22内に水平方向に空気20を吹き込むように構成される。底部ファン40は、3次元格子セル構造体22内に鉛直方向に空気20を吹き込むように構成される。電力変圧器10の冷却効率は、ファン38、40の速度を調整することによって容易に調整することができる。ファン装置はまた、前部ファン38の送風方向に垂直なさらなる水平方向に空気20を送風するさらなるファン(図示せず)を備えてもよい。
【0052】
3次元格子セル構造体22は、非平坦および流れ促進端部42をさらに備える。各端部42は、3次元格子セル構造体22のそれぞれのセル24を閉じる。
【0053】
図2は、
図1の熱交換器12の3次元格子セル構造体22の部分斜視図を概略的に示す。
図2に示すように、3次元格子セル構造体22は、3つの直交する方向の各々に周期パターンを含む。各周期パターンは複数の周期を含む。セル24は、3方向に直交して配置されている。
図2に示すように、この例の各非平坦および流れ促進端部42は、円錐の形状を有する。
【0054】
図3は、熱交換器12のさらなる例を含む電力変圧器10の側面図を概略的に示し、
図4は、
図3の熱交換器12の部分斜視図を概略的に示す。
図3および
図4をまとめて参照し、主に
図1および
図2との相違点について説明する。
【0055】
図3および
図4の熱交換器12は、複数のパイプ44を備える。この例では、各パイプ44は直線状であり、鉛直に向けられている。パイプ44は、3次元格子セル構造体22を通して空気20を案内するように構成される。
【0056】
各パイプ44は、3次元格子セル構造体22全体を通って延在する。この例では、各パイプ44は、3次元格子セル構造体22のセル24を通って延在する。
【0057】
図3の熱交換器12は、マニホールド46をさらに備える。マニホールド46は、パイプ44に分岐している。底部ファン40は、マニホールド46を介してパイプ44を通して空気20を吹き付けるように構成されている。前部ファン38は、
図1と同様に、3次元格子セル構造体22内に空気20を吹き込むように配置されている。したがって、
図3では、油16と空気20との間の熱交換は、内部格子セル構造体容積26と外部格子セル構造体容積28との間、および内部格子セル構造体容積26とパイプ44との間の両方で行われる。このようにして、油16と空気20との間の熱伝達効率がさらに高められる。
図3の熱交換器12はまた、簡単な構造を有する。
【0058】
図3および
図4のパイプ44は、あるいは、2相冷却剤を含み内部毛細管構造を備えたヒートパイプとして構成されてもよい。この場合、パイプ44は、3次元格子セル構造体22のさらに外側に延在してもよい。
【0059】
図5は、熱交換器12のさらなる例を備える電力変圧器10の側面図を概略的に示す。主に
図1および
図2との相違点について説明する。
【0060】
図5の熱交換器12は、複数のプレート48をさらに備える。プレート48は、内部格子セル構造体容積26の内側に経路50を画定する。
図5に示すように、経路50は、蛇行形状である。プレート48は、3次元格子セル構造体22の内部の油16を案内するための案内構造体の一例である。
【0061】
図5に示すように、プレート48は、油16を3次元格子セル構造体22の遠位(ケーシング14に対して)領域に押し出す。これにより、プレート48は、3次元格子セル構造体22内の油16と空気20との間の熱伝達をさらに改善する。
【0062】
図6は、熱交換器12のさらなる例を備える電力変圧器10の側面図を概略的に示す。主に
図1および
図2との相違点について説明する。
【0063】
図6の熱交換器12は、複数の本体52を備える。各本体52は、3次元格子セル構造体22を備える。したがって、本体52は、油16のための複数の並列ネットワークを形成する。各3次元格子セル構造体22は油16を、空気20との熱交換のためにケーシング14の外側でケーシング14から導き、電気部品18を冷却するためにケーシング14に向かって戻すように構成される。
【0064】
各本体52はケーシング14に着脱可能に接続可能である。電力変圧器10は、本体52のうちの1つが交換のために取り外された場合でも機能することができる。この場合、交換のために取り外された本体52への開口部を閉じる必要がある。1つの本体52のみの交換は、より簡単で安価である。
【0065】
しかしながら、本体52は、ケーシング14に直接接続可能である必要はない。
図6に示すように、熱交換器12は、上部マニホールド54および下部マニホールド56を備える。上部マニホールド54は、各本体52の入口30に分岐している。各本体52の出口32は、下部マニホールド56によって合流している。各本体52は、上部マニホールド54および下部マニホールド56に着脱可能に接続可能である。
【0066】
図6の電力変圧器10は、ポンプ58をさらに備える。ポンプ58は、ポンプ装置の一例を構成する。ポンプ58は、3次元格子セル構造体22を通る油16の流れを選択的に増強するように構成される。電力変圧器10の冷却効率は、ポンプ58の速度を調整することによって容易に調整することができる。
図6の例では、ポンプ58は、下部マニホールド56内、すなわち本体52の下流に配置されている。
【0067】
図6の電力変圧器10は、複数の底部ファン40をさらに備える。各底部ファン40は、3次元格子セル構造体22のうちの1つの下方に配置される。各3次元格子セル構造体22には、1つの底部ファン40が関連付けられている。
【0068】
図7は、熱交換器12のさらなる例を備える電力変圧器10の側面図を概略的に示す。熱交換器12は、複数のパネル60を備える。
図8は、
図7の熱交換器12のパネル60のうちの1つの斜視図を模式的に示し、
図9は、
図8のパネル60の正面図を模式的に示す。
図7~
図9をまとめて参照し、主に
図6との相違点について説明する。
【0069】
パネル60は、本開示による本体のさらなる例である。各パネル60はケーシング14に着脱可能に接続可能である。各パネル60は、2次元格子セル構造体62を備える。さらに、この例における各パネル60は、複数の孔64を備える。孔64は、セル24の間に配置される。
【0070】
パネル60は、スタック状に配置されている。このようにして、パネル60は、3次元格子セル構造体22をともに形成する。パネル60間の距離は変化させることができ、例えば、熱伝達を改善するために最適化することができる。
図7に示すように、各パネル60は、水平に向けられている。
図7~
図9の例では、内部格子セル構造体容積26は不連続である。したがって、3次元格子セル構造体22は、油16のための複数の並列ラビリンスネットワーク、すなわち各パネル60内の1つのネットワークを形成する。
【0071】
孔64によって、外部格子セル構造体容積28は連続的である。しかしながら、例えばパネル60が板金製である場合、パネル60は孔64を備える必要はない。この場合、外部格子セル構造体容積28は、パネル60間で不連続である。
【0072】
パネル60は、高密度構成で配置されている。この例では、パネル60は重なっている。すなわち、1つのパネル60のセル24が、隣接するパネル60のセル24の間のそれぞれの空間に入り込む。したがって、隣接するパネル60のセル24はオフセットされる。
【0073】
代替として、パネル60の非平坦端部42は、平坦な端部で置き換えられてもよい。この場合、パネル60は、互いに向かい合ってコンパクトに配置することができ、隣接するパネル60のセル24をオフセットする必要はない。
【0074】
熱交換器12は、導管66をさらに備える。各パネル60の出口32は、導管66に接続されている。導管66は、ケーシング14に接続する前に(油16の流れ方向に見て)垂直から水平に移行する。ポンプ58は、導管66内、ここではその鉛直部分内に配置される。底部ファン40は、3次元格子セル構造体22と導管66の水平部分との間に垂直に配置される。
【0075】
図8および
図9によるパネル60は、単なる1つの具体例である。特に、入口30および出口32の設計は変更され得る。
【0076】
図10は、熱交換器12のさらなる例を含む電力変圧器10の側面図を概略的に示し、
図11は、
図10の電力変圧器10の正面図を概略的に示す。
図10および
図11をまとめて参照し、主に
図7との相違点について説明する。
【0077】
図10および
図11で使用されるパネル60は、
図8および
図9と同じタイプである。
図10および
図11に示すように、各パネル60は、鉛直に向けられている。パネル60は、3次元格子セル構造体22をともに形成するようにスタック状に配置される。
【0078】
図11は、ファン装置が2つのさらなるファン68を備えることをさらに示す。各ファン68は、前部ファン38の送風方向に垂直な水平方向に3次元格子セル構造体22内に空気20を吹き込むように配置される。
【0079】
以上、例示的な実施形態を参照して本開示を説明したが、本発明は上述したものに限定されないことが理解されよう。例えば、部品の寸法は必要に応じて変えることができることが理解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され得ることが意図される。