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特許7499355分散型温度センシングのための結合ウェーブレットノイズ除去
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】分散型温度センシングのための結合ウェーブレットノイズ除去
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/324 20210101AFI20240606BHJP
【FI】
G01K11/324
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022567808
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 US2021032804
(87)【国際公開番号】W WO2021236539
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】63/026,218
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/321,464
(32)【優先日】2021-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ファン、 ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ティン
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0003177(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105241390(CN,A)
【文献】特表2002-508540(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0152220(US,A1)
【文献】特開平07-271763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型温度センシング(DTS)システムであって、
ある長さの光センシングファイバと、
光パルスを生成し、該光パルスを前記光ファイバに導入し、前記光ファイバから後方散乱のストークス(S)信号および反ストークス(AS)信号を受信し、前記後方散乱の信号から前記光ファイバに沿った点における1つまたは複数の温度を決定する光インタロゲータユニットと、を有し、
AS信号とS信号との両方を同時にウェーブレット係数の多重層に分解することを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項に記載のシステムにおいて、
前記多重層のそれぞれにおける前記AS信号と前記S信号のウェーブレット係数の間の相関を決定することを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項に記載のシステムにおいて、
共同推定したノイズ閾値を決定することおよび前記共同推定したノイズ閾値と相関とを比較することによりノイズ成分を特定することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項に記載のシステムにおいて、
前記特定されたノイズ成分に従って、前記AS信号および前記S信号のウェーブレット係数の両方に閾値化または収縮関数を適用することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項に記載のシステムにおいて、
逆ウェーブレット変換によってノイズ除去されたSおよびAS信号を再構成することを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項に記載のシステムにおいて、
前記ノイズ除去されたSおよびAS信号から測定された温度を決定することを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、分散型光ファイバセンシング(DFOS)に関する。より詳細には、結合ウェーブレットノイズ除去を採用したDFOS/分散型温度センシング(DTS)システム、方法、および構造に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、分散型光ファイバセンシング/分散型温度センシングは、とりわけ、インフラストラクチャ監視および石油およびガス操作を含む任意の数のアプリケーションに適用されると、大きな有用性を示している。
【0003】
ラマン光ファイバ分散型温度センサ(ラマンDTS)は、ラマン散乱の効果を介して光センシングファイバ/ケーブルに沿って温度を測定する光OTDRシステムである。典型的なラマンDTSの構成および動作は、光ファイバ/ケーブル内に光ポンプパルスを発射し、ラマンストークス(S)信号および反ストークス(AS)信号の両方を受信し、S信号およびAS信号の振幅から温度値を決定することを含む。光ファイバにおけるラマン散乱の性質により、SおよびAS信号の電力は通常非常に弱く(<1nW)、これは検出の課題をもたらす。そして、高利得なアバランシェ光検出器が、検出特性を改善するためにラマンDTSシステムに使用するために採用されてきたが、特にファイバが長い場合に、センシングファイバの遠端で経験される信号対ノイズ比(SNR)は、依然として非常に低く、その結果、長距離のセンシング用途には適さない大きな測定誤差をもたらす。
【発明の概要】
【0004】
分散型温度センシングのためのシステム、方法、および構造を対象とする本開示の態様によって、上記の問題は解決され、当技術分野における進歩がなされる。
【0005】
従来技術とは対照的に、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、先行技術と比較して、拡張されたセンサファイバ距離にわたって優れたSNRを達成するために、結合ウェーブレットノイズ除去を採用する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のより完全な理解は、添付図面を参照することによって実現され得る。
【0007】
図1】当技術分野で一般的に知られているような、分散型光ファイバセンシング(DFOS)のための例示的な従来技術の分散型光ファイバセンシングシステムの概略を示す図である。
【0008】
図2】分散型温度センシングのためのウェーブレットノイズ除去に対する例示的な従来技術のアプローチの概略を示す図である。
【0009】
図3】本開示の態様による、分散型温度センシングのための例示的な結合ウェーブレットノイズ除去の概略を示す図である。
【0010】
図4】本開示の態様による、分散型温度センシング構成の例示的な使用事例の概略を示す図である。
【0011】
図5】本開示の態様による結合ウェーブレットノイズ除去を伴う分散型温度センシングを示す概略フロー図である。
【0012】
図6】本開示の態様による、システム、方法、および構造の多数の特徴を示す概略ブロック図である。
【0013】
例示的な実施形態は、図面および詳細な説明によってより完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は、様々な形態で実施することができ、図面および詳細な説明に記載された特定のまたは例示的な実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は、本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0015】
さらに、本明細書に列挙されるすべての実施例および条件付き言語は、読者が本開示の原理および本発明者によって当該技術分野を促進するために寄与される概念を理解するのを助けるための教育目的のためにのみ意図され、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0016】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を列挙する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的均等物の両方を包含することを意図する。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物および将来開発される等価物、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実行する開発された任意の要素の両方を含むことが意図される。
【0017】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図は、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことが当業者には諒解されよう。
【0018】
本明細書で明示的に指定されない限り、図面を含む図は、一定の縮尺で描かれていない。
【0019】
いくつかの追加的背景として-および当技術分野で一般的に知られている例示的な分散型光ファイバセンシングシステム(DFOS)の概略図である図1を参照して-我々は、まず、分散型光ファイバセンシング(DFOS)が、温度(分散型温度センシング-DTS)、振動(分散型振動センシング-DVS)、伸張レベルなどの環境条件を検出するための重要で広く使用されている技術であり、それは、今度はインタロゲータに接続される光ファイバケーブルに沿った任意の場所であることに着目することから始める。周知のように、現代のインタロゲータは、ファイバへの入力信号を生成し、反射/散乱され、続いて受信された信号を検出/分析するシステムである。信号を分析し、ファイバの長さ方向に沿って遭遇する環境条件を示す出力を生成する。そのように受信された信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、およびブリリオン後方散乱のようなファイバ内の反射から生じることがある。また、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号にすることもできる。一般性を損なうことなく、以下の説明では、同様のアプローチを転送された信号にも適用することができるが、反射された信号を仮定する。
【0020】
理解されるように、現代のDFOSシステムは、周期的に光パルス(または任意の符号化信号)を生成し、それらを光ファイバに注入するインタロゲータを含む。注入された光パルス信号は、光ファイバに沿って搬送される。
【0021】
ファイバの長さに沿った位置で、信号の小さな部分が反射され、インタロゲータに戻って搬送される。反射された信号は、例えば、反射された信号の振幅の値から温度を伝えるラマンストークスおよび反ストークス信号のような、インタロゲータが検出するために使用する情報を搬送する。
【0022】
反射された信号は、電気領域に変換され、インタロゲータの内部で処理される。パルス注入時間および時間信号が検出されることに基づいて、インタロゲータは、信号がファイバに沿ったどの位置から来ているかを決定し、それにより、ファイバに沿った各位置の温度を検知することができる。
【0023】
先に述べたように、光ファイバにおけるラマン散乱の性質のために、ストークス(S)および反ストークス(AS)信号の電力は通常非常に弱く(<1nW)、これが検出の課題をもたらす。そして、検出特性を改善するためにラマンDTSシステムに使用するために採用される高利得アバランシェ光検出器の広範な使用にもかかわらず、特にファイバが長い場合に、センシングファイバの遠端で経験される信号対ノイズ比(SNR)は、依然として非常に低く、その結果、測定誤差が大きくなり、もちろん、長距離のセンシング用途には適さない。
【0024】
ノイズを低減し、SNRを向上させるために、従来技術において、ラマンDTSシステムにいくつかの信号ノイズ除去方法が導入されている。1つの一般的な方法は、決定された温度を平均化する。しかし、センシングファイバの温度状態をタイムリーに報告する必要があるため、平均化時間を無限に増加させることはできない。すなわち、センシングファイバの温度は、平均化が継続するとき、後の時間において平均をあまり有用でなくするように変化し得る。別のノイズ除去方法は、いくつかの帯域外ノイズ成分を除去するフィルタ(時間領域または周波数領域のいずれか)を使用する。しかしながら、ラマン信号は通常かなり広い帯域幅を占有するので、フィルタは空間分解能を劣化させ、検知性能を劣化させる。
【0025】
空間分解能を維持しながらノイズを低減するために、ウェーブレットノイズ除去(WD)技術はラマンDTSシステムに採用されている。当技術分野で知られているように、WDはウェーブレット変換に基づく高速処理およびエッジ保存信号ノイズ除去技術である。フィルタリング技術と比較して、WDは空間分解能を犠牲にすることなくノイズを効果的に低減できる。WD方法は、図1-DTSのための従来技術のウェーブレットノイズ除去の概略図を示す-に示されるように、ウェーブレット収縮ノイズ除去方法を用いて、SおよびAS信号を別々にノイズ除去することを試みる。
【0026】
動作上、各信号(SまたはAS)について、図に示される従来技術のウェーブレットノイズ除去処理は、以下のように簡潔に説明され得る:1)適切な基本ウェーブレットおよび分解レベル(L)を選択すること;(2)Lレベルウェーブレット変換(連続ウェーブレット変換、CWT、または離散ウェーブレット変換、DWTなどであり得る)を行って、入力信号(SまたはASであり得る)をL層ウェーブレット係数に分解すること;(3)ノイズレベルを推定し、ノイズ閾値を決定すること;(4)ウェーブレット係数に適切な閾値化または収縮関数を適用すること;および(5)逆ウェーブレット変換を通してノイズ除去された信号を再構成すること。最後に、ノイズ除去されたSおよびAS信号を使用して、測定された温度を決定する。
【0027】
本発明者らは、この従来技術のアプローチが有用であると文献に記載されていることに留意する。しかしながら、実際の用途では、その性能は、少なくともいくつかの理由で制限される。
【0028】
第1に、従来技術のWD方法は、常にすべてのノイズ成分を除去することができるわけではない。ノイズ閾値推定は統計的に設計されているが、有限の長さのデータでは、センサファイバの長さに沿ったある位置でのノイズはノイズ除去後も残ることがある。これは、温度測定でのグリッチ、歪み、ギブズのリンギングなどの不都合な結果につながり、滑らかさを損なうことになる。
【0029】
第2に、従来技術のWD方法は、SおよびAS信号を別個のものとして考慮するだけであり、それらに既存のWD方法を別個に適用する。
【0030】
従来技術と対照的に、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、本発明者らが、結合ウェーブレットノイズ除去(JWD)と呼ぶ新しいウェーブレットノイズ除去技術を使用することによって、上述の問題を有利に解決し、従来技術の欠陥を治癒する。より具体的には、従来技術はASおよびS信号を別々に扱うが、JWDを使用する本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、有利には、それらを一緒に考慮する。従来技術とはさらに対照的に、我々のJWD技術は、図2に例示的に示すように、ノイズからの実温度事象/測定を識別するために、ASおよびS信号の共通温度依存性を有利に利用する。
【0031】
JWDでは、ASとSはウェーブレット係数の多重層に分解されるであろう。ASとS信号に対するノイズレベルおよび閾値は、それらの相関を計算することにより共同推定され、閾値化/収縮は、結合ノイズ推定に従って両方に適用されるであろう。
【0032】
本開示の態様による先行技術の方法、システム、方法、および構造は、従来技術と比較して、少なくとも以下の利点を提示する。
【0033】
より詳細には、本開示の態様によるシステム方法および構造は、著者らが既存のWD方法の欠点を有利に克服する結合ウェーブレットノイズ除去(JWD)と呼ぶ新しいウェーブレットノイズ除去技術を採用することによって、SNR問題を解決する。既存の従来技術の方法とは対照的に、著者らのJWD技術は反ストークスおよびストークス光信号を別々に処理し、有利には、それらの共通温度依存性を利用して、ノイズから実温度事象を識別する。JWDでは、ASとSはウェーブレット係数の多重層に分解される。AS信号とS信号に対するノイズレベルおよび閾値は、それらの相関を計算することにより共同推定され、閾値化/収縮は、結合ノイズ推定に従ってそれらの両方に適用される。
【0034】
本開示の態様による先行技術の方法、システム、方法、および構造と比較して、少なくとも以下の利点を示す。第1に、より良いノイズ除去性能、すなわち、有用な信号は、ASおよびSウェーブレット係数の両方において同じ位置で生じるが、ノイズはランダムであり、無相関である。著者らの相関演算の後、有用な信号は強化され、保持され、一方、不要なノイズは抑圧され、除去される。したがって、ノイズ除去性能は、当技術分野よりも大幅に改善される。
【0035】
第2に、より良好な平滑性、すなわち、他の従来技術のWD方法を悩ませるグリッチなどの好ましくない結果が、本開示の態様によるシステム、方法、および構造において緩和される。
【0036】
第3に、より優れたロバスト性、すなわち、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、既存の従来技術のWD方法と比較して、ノイズのランダム性にあまり敏感ではない。
【0037】
第4に、容易な展開、すなわち、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、既存のWD技法において容易に実施可能な修正されたステップとともに有利に使用される。
【0038】
第5に、低コスト、すなわち、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、一般に、追加の特殊なハードウェアを必要としない。したがって、実装は、非常に費用効率が高い。
【0039】
そのような考慮事項を考慮すると、当業者は、本開示の態様によるシステム、方法、および構造が、問題の重要なセットに対する解決策を提供し、DOFS/DTSシステムおよびそれらの操作に大きな商業的価値を提供することを容易に理解し、認識するであろう。当業者は、本開示の態様によるシステム、方法、および構造が、多くの商業的に重要な用途に適用可能であることを容易に理解し、認識するであろう。
【0040】
図4は、本開示の態様による、分散型温度センシング構成の例示的な使用事例の概略図を示す。その図に例示的に示されるように、ラマンDTSシステムは、中央制御室内に配置され、そこから、例えば、電力線、パイプライン、トンネル、および石油・ガス探査設備に沿ってまたは内部に配置された光ファイバに沿って温度を監視/測定する。
【0041】
ここで注目するように、本開示の態様によるシステム、方法、および構造の特に特有の態様は、(1)ASおよびS信号の両方の同時でのウェーブレット分解、(2)各層のASおよびSウェーブレット係数間の相関の決定、(3)共同で推定されたノイズ閾値と相関を比較することによる任意のノイズ成分の識別、および(4)共同ノイズ識別に従ってASおよびSウェーブレット係数の両方に適切な閾値または収縮関数を適用することを含む。
【0042】
我々はまた、光ファイバにおける自然発生のラマン散乱の物理的性質に関して、AS光強度IASとS光強度ISとの両方は、いずれも温度Tの関数であり、次式で表される。
【数1】
式中、A1およびA2は、それぞれASおよびSの温度非依存係数であり、B(T)は、所望の情報を含む温度関連関数である。
【0043】
当業者が容易に理解し、認識するように、この関係は、センシングファイバにおける温度関連事象について、AS信号およびS信号の両方が(振幅差にかかわらず)同様の応答を有することを明らかにする。長距離検知距離では、AS光とS光の群速度はわずかに異なることに注意されたい。しかし、この群速度差を補償した後、温度関連事象は同一の位置で発生するはずである。
【0044】
注目すべきことに、筆者らの結合ウェーブレットノイズ除去技法は、検出したASおよびS信号(群速度補償後)が「温度関連」であるが、無相関ノイズによって汚染されているというこの現象に触発された。
【0045】
図5は、本開示の態様による結合ウェーブレットノイズ除去を伴う分散型温度センシングを示す概略フロー図を示す。その図を参照して、著者らは、適切な基本ウェーブレットと分解レベル(L)とを選択した;元のASとSの両方の信号をL層ウェーブレット係数に分解するために、Lレベルウェーブレット変換を実行した;各層のASとSウェーブレット係数の間の相関を決定した;ASとSウェーブレット係数の両方からのノイズレベルとノイズ閾値とを共同推定した;相関と共同推定したノイズ閾値とを比較することによりノイズ成分を特定した;ノイズ特定に従い、ASとSウェーブレット係数の両方に関する適切な閾値化または収縮関数を適用した;ノイズ除去ASとS信号とを逆ウェーブレット変換により再構成した;ノイズ除去SとAS信号とを測定した温度を決定するために使用した。
【0046】
この手法の有効性を示すために、20kmの光ファイバでのラマンDTS実験を行った。2つのファイバセグメント(近端および遠端)を水浴(ホットスポット)に入れた。3つの一般的なWD方法(VisuShrink、SureShrink,MinimaxShrink)の性能を比較した。
【0047】
公平な比較を得るために、4つのWD法すべての基本ウェーブレットとしてDaubechiesの4ウェーブレット(db4)を選択し、分解レベルを6に固定した。従来のWD方法では、グリッチ、未除去ノイズ、歪みなどの厳しい結果が存在することが分かった。しかしながら、本開示の態様による本方法では、グリッチが軽減され、ノイズがほぼ完全に除去される。さらに、本開示の態様による本方法は、近端および遠端ホットスポット事象の両方の鋭いエッジを維持しながら、優れた滑らかさをもたらす。これらの予備的な実験的知見は、本発明者らの技術、システム、方法、およびそれらを使用する構造の有効性および利点を検証した。
【0048】
図6は、本開示の態様による、システム、方法、および構造の多数の特徴を示す概略ブロック図を示す。
【0049】
この時点で、いくつかの特定の例を使用して本開示を提示したが、当業者は、本教示がそのように限定されないことを認識するであろう。したがって、この開示は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6