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特許7499368二重層二重リング回路を備えるように構成されたレドーム
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  • 特許-二重層二重リング回路を備えるように構成されたレドーム 図1
  • 特許-二重層二重リング回路を備えるように構成されたレドーム 図2A
  • 特許-二重層二重リング回路を備えるように構成されたレドーム 図2B
  • 特許-二重層二重リング回路を備えるように構成されたレドーム 図3A
  • 特許-二重層二重リング回路を備えるように構成されたレドーム 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】二重層二重リング回路を備えるように構成されたレドーム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/42 20060101AFI20240606BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01Q1/42
H01Q15/14 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023032600
(22)【出願日】2023-03-03
(65)【公開番号】P2024062916
(43)【公開日】2024-05-10
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】111140407
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】508205811
【氏名又は名称】明泰科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】陳躍仁
(72)【発明者】
【氏名】林保維
(72)【発明者】
【氏名】陳家賢
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-4609(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0058746(US,A1)
【文献】米国特許第4814785(US,A)
【文献】米国特許第4467330(US,A)
【文献】Huanqing Wang, et al.,"The Design of Multi-bandpass FSS",2015 IEEE 12th Intl Conf on Ubiquitous Intelligence and Computing and 2015 IEEE 12th Intl Conf on Autonomic and Trusted Computing and 2015 IEEE 15th Intl Conf on Scalable Computing and Communications and Its Associated Workshops (UIC-ATC-ScalCom),2015年,DOI: 10.1109/UIC-ATC-ScalCom-CBDCom-IoP.2015.289
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/42
H01Q 15/14
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ装置を保護するためのレドームであって、前記レーダ装置への/該レーダ装置からの信号の伝送経路に配置され、
シェルと、
前記シェルの保護される前記レーダ装置に面する側に配置され、前記シェルに面した第1内側回路リング及び第1外側回路リングを有し、前記第1内側回路リングが前記第1外側リングにより囲まれて該第1外側リングとは絶縁され、前記第1内側回路リング及び前記第1外側回路リングの各々が閉ループを形成している第1回路基板と、
前記第1回路基板と前記シェルとの間に配置され、前記シェルに面した第2内側回路リング及び第2外側回路リングを有し、前記第2内側回路リングが前記第2外側回路リングにより囲まれて該第2外側回路リングとは絶縁され、前記第2内側回路リング及び前記第2外側回路リングの各々が閉ループを形成している第2回路基板と、
前記第1回路基板と前記第2回路基板との間に配置された第1絶縁層と、
前記第2回路基板と前記シェルとの間に配置された第2絶縁層と、を備えたことを特徴とするレドーム。
【請求項2】
前記第1回路基板と前記第2回路基板との間の距離は、前記第2回路基板と前記シェルとの間の距離よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のレドーム。
【請求項3】
前記第1絶縁層の誘電率及び前記第2絶縁層の誘電率は、前記シェルの誘電率よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のレドーム。
【請求項4】
前記シェルは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)により形成され、前記第1及び第2絶縁層は、発泡材料により形成されていることを特徴とする請求項3に記載のレドーム。
【請求項5】
前記第1外側回路リングの幅は、前記第1内側回路リングの幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のレドーム。
【請求項6】
前記第2外側回路リングの幅は、前記第2内側回路リングの幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のレドーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドームに関し、より詳細には二重層二重リング回路を備えるように構成されたレドームに関する。
【背景技術】
【0002】
レドームは、外的衝撃力からレーダ装置を保護するために設けられる構造体である。レドームは、レーダ装置への/レーダ装置からの信号の伝送経路に配置されるので、信号の効果的な送受信を妨げてレーダのSNR(信号対雑音比)を低下させ得る。そのため、レーダ装置の性能を低下させることなく、レーダ装置を保護することができるレドームを開発することが必要となっている。
【0003】
従来、レドームは、単一の材料により構成されている。各種材料は、特有の周波数適用域を有するので、単一の材料で構成されたレドームの適用範囲は、かなり限定されている。言い換えれば、それでは地球低軌道衛星システムで使用される2GHzスパンの無線信号のような幅広い周波数域において、信号の良好な送受信効果を与えることができない。送受信効果が満足できないものになると、システム全体の性能も低下してしまう。従って、地球低軌道衛星システムに限らず、レーダ装置を使用するシステムではレーダ装置の送受信効果を十分に確保するレドームが非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、幅広い周波数域において無線信号が効果的に送受信されるような内部構成を備えたレドームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、レーダ装置を保護するためのレドームを与え、前記レーダ装置への/該レーダ装置からの信号の伝送経路に配置される。本レドームは、シェルと、前記シェルの保護される前記レーダ装置に面する側に配置され、前記シェルに面した第1内側回路リング及び第1外側回路リングを有し、前記第1内側回路リングが前記第1外側リングにより囲まれて該第1外側リングとは絶縁され、前記第1内側回路リング及び前記第1外側回路リングの各々が閉ループを形成している第1回路基板と、前記第1回路基板と前記シェルとの間に配置され、前記シェルに面した第2内側回路リング及び第2外側回路リングを有し、前記第2内側回路リングが前記第2外側回路リングにより囲まれて該第2外側回路リングとは絶縁され、前記第2内側回路リング及び前記第2外側回路リングの各々が閉ループを形成している第2回路基板と、前記第1回路基板と前記第2回路基板との間に配置された第1絶縁層と、前記第2回路基板と前記シェルとの間に配置された第2絶縁層と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、レドームの適用バンド幅がレドームの層及びリングのパラメータを調整することにより最適化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明は、以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することにより、当業者には容易に明確となるであろう。
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るレドームの構成を示す概略図。
【0009】
図2A図1のレドームにおいて下部回路基板として使用可能な回路基板を示す概略図。
【0010】
図2B図2Aに示した回路基板の上面図。
【0011】
図3A図1のレドームにおいて上部回路基板として使用可能な回路基板を示す概略図。
【0012】
図3B図3Aに示した回路基板の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以下の実施形態を参照してより具体的に説明される。この発明の好ましい実施形態に関する以下の説明は、例示及び説明の目的のためだけに提示されていることに留意されたい。本発明は、開示された正確な形態に徹底又は限定されるものではない。
【0014】
無線信号の強度は、入射角により変化するものの、レドームを透過する際に多かれ少なかれ減衰することは当業者に理解されよう。そこで、本発明は、無線信号が比較的大きな角度、例えば、60度で入射したとしても、幅広い周波数域において強度低下を抑制して無線信号を効果的に透過させることができるレドームを提供することを目的とする。特に大きな角度で入射した無線信号の強度が大きく変化しない周波数域は、レドームの適用バンド幅として定義される。
【0015】
本発明の実施形態に係るレドームは、レーダ装置を保護するためのシェルを含み、シェルとレーダ装置との間に二重層二重リング回路を備えるように構成されている。例えば、図1に示すように、レドーム10は、保護されるレーダ装置(不図示)近傍の下部回路基板100と、シェル140近傍の上部回路基板120と、を含み、各々の回路基板は、図2A、2B、3A及び3Bを参照して後述する内側回路リング及び外側回路リングを含む。レドーム10は、下部回路基板100と上部回路基板120との間の下部絶縁層110と、上部回路基板120とシェル140との間の上部絶縁層130と、を更に含む。下部回路基板100、下部絶縁層110、上部回路基板120、上部絶縁層130及びシェル140の厚みは、それぞれH1、H2、H3、H4及びH5で表記されている。ここで用いられる「絶縁」という用語は、電流が流れない状態を示す。なお、上述の層は、互いに完全且つ直接に隣接するように示されているが、それは説明のための一例に過ぎないことに留意されたい。或いは、実用的な製造上の要求に応じて、隣接する層が互いに部分的に接触していてもよいし、2つの層の間にインターリーフ層が存在してもよい。言い換えれば、下部絶縁層110は、下部回路基板100と上部回路基板120との間に配置されることが要件であるが、下部絶縁層110は、下部回路基板100又は上部回路基板120と完全又は直接に連続する必要はない。同様に、上部絶縁層130は、上部回路基板120とシェル140との間に配置されることが要件であるが、上部絶縁層130は、上部回路基板120又はシェル140と完全又は直接に連続する必要はない。
【0016】
回路基板の二重リング構成が概略的に示される図2Aを参照されたい。回路基板20のアクティブ面20aに、外側回路200及び内側回路210が形成されている。回路基板20は、図1に示す構造においてシェル140にアクティブ面20aが面した状態で下部回路基板100として使用され得る。一方、回路基板20の反対側の面20bは、回路基板20がレドーム10の下部回路基板100として使用される場合、レドーム10により保護されるレーダ装置(不図示)に面する。本実施形態では、外側回路200及び内側回路210の各々は、金属製で閉ループを形成しており、外側回路200及び内側回路210は、互いに絶縁されている。外側回路200及び内側回路210は、類似した矩形で間に均等な間隔を有するように示されているが、それらは同一又は類似である必要はなく矩形にも限定されないことは当業者に理解される。また、それらは、実用的な要件に応じて円形、多角形又は任意の他の適切な形状であってもよい。
【0017】
次に、回路基板20の二重リング構成の設計を、図2Bに示す上面図を参照してより詳細に説明する。X軸及びY軸は、図2A及び図2Bの両方において関連する方向を示すために共通に使用される。本実施形態において、外側回路200は、X軸方向のセクション200a、200b及びY軸方向のセクション200c、200dにより規定された金属リングであり、これらセクションは、金属リングの四隅で重なり合っている。同様に、内側回路210は、X軸方向のセクション210a、210b及びY軸方向のセクション210c、210dにより規定された金属リングであり、これらセクションは、金属リングの四隅で重なり合っている。セクション200a、200b各々の幅及び長さはW1及びA1で示され、セクション200c、200d各々の幅及び長さはW2及びA2で示され、セクション210a、210b各々の幅及び長さはW3及びA3で示され、セクション210c、210d各々の幅及び長さはW4及びA4で示される。
【0018】
本発明に係る二重リング構成によれば、レドームの適用バンド幅が、外側回路200と内側回路210との間のギャップを調整、例えば、大きくすることにより拡張され得る。言い換えれば、回路基板20に対して法線方向に入力される無線信号が満足できる強度に保たれ得る条件では、外側回路200と内側回路210との間のギャップが大きくなればなるほど、無線信号の周波数域が大きくなる。「ギャップ」という用語は、2つの金属リングの特定ポイント又はセクション間のスペース又は所定の計算式に従って計算された等価ギャップと定義され得ることは、当業者に理解されるところである。それは、実用的な設計に基づいたリングの形状や相対的な位置により変化してもよい。しかしながら、特定の周波数バンド内の無線信号が、法線方向から比較的大きな角度、例えば、60度を隔てて入力される場合、外側回路200と内側回路210との間の大きなギャップは無線信号の入力反射係数S11を低下させ、レドームに入る無線信号の強度が低下する。その結果、レドームの適用バンド幅が、期待するほど広くなくなる。そこで、レドームの最適な適用バンド幅を得るために、外側回路200と内側回路210との間の最大ギャップではなく最適ギャップが求められる。本発明によれば、外側回路200と内側回路210との間の最適ギャップは、所望のバンド幅に基づいて決定され、図2Bを参照して上述した幅パラメータW1、W2、W3、W4及び長さパラメータA1、A2、A3、A4を調整することにより達成され得る。
【0019】
上述のように、無線信号の入力反射係数S11は、レドームの適用バンド幅に影響を与える要因の1つである。入力反射係数S11は、当技術分野において信号状態を分析するために一般的に使用される散乱パラメータの1つである。例えば、入力反射係数S11は、無線信号の反射強度及び入力強度を演算することで一般に得られる入力反射損失を示し、デシベル(dB)で表されて負値として認識される。基本的に、負値の絶対値が大きいほど、入力反射損失は小さくなる。
【0020】
別の正の透過係数S21が、伝送挿入損失を示すために本発明で用いられる。伝送挿入損失は、レドーム存在下での特定位置における無線信号の強度と、レドーム非存在下での同位置における無線信号の強度とを演算することで一般的に得られ、その強度は、デシベル(dB)で表されて負値として認識される。基本的に、負値の絶対値が小さいほど、レドームの存在下及び非存在下で得られる無線信号の強度差が小さく、伝送挿入損失が小さい。
【0021】
同様に、回路基板の別の二重リング構成が概略的に示される図3Aを更に参照されたい。回路基板30のアクティブ面30aに、外側回路300及び内側回路310が形成されている。回路基板30は、図1に示した上部回路基板120として使用されるように適合され、アクティブ面30aがシェル140に面している。一方、回路基板30の反対側の面30bは、回路基板30がレドーム10の上部回路基板120として使用される場合、レドーム10により保護されるレーダ装置(不図示)に面している。外側回路300及び内側回路310の各々は、金属製で閉ループを形成し、外側回路300及び内側回路310は、互いに絶縁されている。外側回路300及び内側回路310の形状は、同一又は類似である必要はなく、矩形にも限定されないことが理解される。また、それらは、実用的な要件に応じて円形、多角形又は任意の他の適切な形状であってもよい。
【0022】
次に、回路基板30の二重リング構成の設計について、図3Bに示す上面図を参照してより詳細に説明する。X軸及びY軸は、図3A及び図3Bの両方において関連する方向を示すために共通に使用される。本実施形態では外側回路300が、X軸方向のセクション300a、300b及びY軸方向のセクション300c、300dで規定された金属リングであり、これらセクションは、金属リングの四隅で重なり合っている。同様に、内側回路310は、X軸方向のセクション310a、310b及びY軸方向のセクション310c、310dで規定された金属リングであり、これらセクションは、金属リングの四隅で重なり合っている。セクション300a、300b各々の幅及び長さはW5及びA5で示され、セクション300c、300d各々の幅及び長さはW6及びA6で示され、セクション310a、310b各々の幅及び長さはW7及びA7で示され、セクション310c、310d各々の幅及び長さはW8及びA8で示される。
【0023】
上述のように、レドームの適用バンド幅は、外側回路300と内側回路310との間のギャップを大きくすることにより拡張可能で、外側回路300と内側回路310との間の最大ギャップではなく最適ギャップが、レドームの最適適用バンド幅を得るために追求される。本発明によれば、外側回路300と内側回路310との間の最適ギャップは、所望のバンド幅に基づいて決定されてもよく、図3Bを参照して上述した幅パラメータW5、W6、W7、W8及び長さパラメータA5、A6、A7、A8を調節することにより達成され得る。
【0024】
下部回路基板及び/又は上部回路基板における外部回路と内部回路との間のギャップに加えて、1つ又は複数の他の物理パラメータも、レドームの最適適用バンド幅を達成するために調整され得る。例えば、レドームの適用バンド幅は、図1に示した下部絶縁層110、上部絶縁層130及び/又はシェル140の厚み及び/又は誘電率を変更することで調整されてもよい。更に、下部回路基板100の厚み、下部回路基板100の誘電率、上部回路基板120の厚み、上部回路基板120の誘電率、下部回路基板100と上部回路基板120との間の距離及び上部回路基板120とシェル140との間の距離も、レドーム10の適用バンド幅に影響を与えるパラメータであり得る。
【0025】
以下、実用設計の例を参照のために挙げる。この例では、10.7~12.7GHzのバンド幅で信号を受信し、14.0~14.5GHzのバンド幅で信号を送信する地球低軌道(LEO)衛星に用いるため、レドーム10は、60度までの角度での無線信号入力のために10.7~12.7GHz又は14.0~14.5GHzの適用バンド幅を持つように設計される。更に、簡略化のため、下部回路基板100のアクティブ面、例えば、図2Aに示したアクティブ面20aは、下部絶縁層110の下面に完全に重なり、下部絶縁層110の上面は、上部回路基板120の下面、例えば、図3Aに示した面30bに完全に重なり、上部回路基板120のアクティブ面、例えば、図3Aに示したアクティブ面30aは、上部絶縁層130の下面に完全に重なり、上部絶縁層130の上面は、シェル140に完全に重なる。
【0026】
10.7~12.7GHz又は14.0~14.5GHzの指定バンド幅において、レドームの入力反射係数S11を満足できるものとして透過係数S21をより良くするために、下部絶縁層110の材料及び上部絶縁層130の材料は、シェル140の材料及び回路基板100、120の材料両方の誘電率よりも低い誘電率を持つことが望ましい。例えば、回路基板100、120の材料は、2.4*8.85x10-12ファラッド/メートル(F/m)の比誘電率を持ち、シェル140の材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、2.1*8.85x10-12ファラッド/メートル(F/m)の比誘電率を持ち、絶縁層110、130の材料、例えば、発泡材料は、1.06*8.85x10-12ファラッド/メートル(F/m)の比誘電率を持つ。
【0027】
下部回路基板100及び上部回路基板120を製造するための材料が決まれば、下部回路基板100及び上部回路基板120に形成される金属リングの大きさが、例えば、以下の式(1)及び(2)に基づいて推定され得る。


ここで、εrは基板材料の比誘電率であり、εeffは下部/上部回路基板の実効誘電率であり、L及びWは金属リングにおいて隣接する端部の長さであり、frは下部/上部回路基板に印加される無線信号の周波数である。
【0028】
例えば、下部回路基板100及び上部回路基板120を製造するための材料は、2.4の誘電率εrを持つ。金属リングにおいて隣接する端部の長さL、Wは、図2Bに示した長さA1、A2又は図3Bに示した長さA5、A6である。金属リングに適用される周波数域の端点を周波数frにそれぞれ代入することにより、長さL、Wの適用範囲が得られる。そして、長さの適用範囲における最適長さL、Wは、実用設計により変化し得る付加的パラメータを更に考慮して決定され得る。
【0029】
例えば、以下の表1に示すパラメータが、レドームを製造するために使用される。得られるレドームの適用バンド幅は、信号を受信するため衛星のレーダ装置での使用に適合された10.7~12.7GHzの範囲をカバーし得る。
【表1】
【0030】
更に、図1で示したレドーム10の物性を単一化するために、下部回路基板100及び上部回路基板120は、図2及び図3で示した回路基板20、30を実装し、回路基板20の外側回路200及び内側回路210の中心と回路基板30の外側回路300及び内側回路310の中心は、回路基板20、30に垂直な同一線上に配置されることが望ましい。この構成により、回路200、210、300、310は、かなりの程度互いに重なり合う。
【0031】
上記パラメータで製作されたレドームにおいて、正の透過係数S21で示される挿入損失の絶対値は、無線信号が10.7GHzから12.7GHzまでの範囲の周波数及び0度から60度までの入射角を有する条件で、横電場モード及び横磁場モード両方のプログラミングシミュレーションで1デシベル未満となり得ることが分かっている。更に、入力反射係数S11で示される入力反射損失の絶対値は、10以上のレベルに維持され得る。このことから、本レドームは、10.7GHzから12.7GHzの周波数バンドにおいて、入力反射損失及び挿入損失の点で非常に優れた性能を有することが分かる。従って、本発明のレドームで保護されたレーダ装置は、信号を受信するために10.7~12.7GHzの周波数バンドを用いる衛星と組み合わせて使用され得る。
【0032】
別の例では、以下の表2に示すパラメータが、レドームを製造するために使用される。得られるレドームの適用バンド幅は、信号を送信するために衛星のレーダ装置での使用に適合された14.0~14.5GHzの範囲をカバーし得る。
【表2】
【0033】
同様に、表2の上記パラメータで製作されたレドームにおいて、正の透過係数S21で示される挿入損失の絶対値は、無線信号が14.0GHzから14.5GHzまでの範囲の周波数及び0度から60度までの入射角を有する条件で、横電場モード及び横磁場モード両方のプログラミングシミュレーションで1デシベル未満となり得る。本発明のレドームで保護されたレーダ装置は、信号を送信するために14.0~14.5GHzの周波数バンドを用いる衛星と用いられるように適応される。
【0034】
更に、レドームのバンド幅は、外側が狭くて内側が広い回路構成により増強され得るという事実から、外側回路200の幅は、内側回路210の幅よりも狭い幅を有する、すなわち、幅W1は幅W3より小さく、幅W2は幅W4より小さくなるように設計される。同様に、外側回路300の幅は、内側回路310の幅よりも狭い幅を有する、すなわち、幅W5は幅W7より小さく、幅W6は幅W8より小さくなるように設計される。また、下部回路基板100と上部回路基板120との間の距離、例えば、下部絶縁層110の厚みH2は、上部回路基板120とシェル140との間の距離、例えば、上部絶縁層130の厚みH4より小さいことにも留意されたい。
【0035】
要約すると、本発明に係るレドームは、二重層二重リング回路を含み、回路における二層それぞれの二つのリングは、互いに独立して電気的に絶縁されている。異なる周波数を必要とするアプリケーションのためにレドームの適用バンド幅は変更可能となっており、比較的大きな角度で入射する無線信号の強度損失レベルは、回路の二層間のギャップ又は回路の二つのリング間のギャップを調整することで最小化され得る。更に、二重層二重リング回路により、レドームの適用バンド幅が従来の二重層一重リング回路と比較して向上され得るだけでなく、レドームの適用バンド幅が無線信号の入射角度の違いにより大きく変化しない。従って、本発明により与えられるレドームは、入力無線信号の挿入損失が小さいという効果を達成することができる。
【0036】
本発明は、現時点で最も実用的で好ましい実施形態と考えられるものとして説明されているが、本発明は、開示された実施形態に限定される必要はないことを理解すべきである。逆に、本発明は、添付の請求項の精神及び範囲に含まれる様々な変更及び類似構造をカバーすることを意図し、そのような変更及び類似構造のすべてを包含するように最も広い解釈が与えられるべきである。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B