(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】吊り治具
(51)【国際特許分類】
B66C 1/66 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
B66C1/66
(21)【出願番号】P 2023088342
(22)【出願日】2023-05-30
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 秀人
(72)【発明者】
【氏名】阿藻 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-183585(JP,A)
【文献】特開2022-169347(JP,A)
【文献】特開2021-070978(JP,A)
【文献】特開2018-100564(JP,A)
【文献】特開2018-204427(JP,A)
【文献】特開2004-263449(JP,A)
【文献】特開2022-112317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00- 3/20
B66C 9/00-15/06
E01D 21/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横行手段と吊持手段との間で荷物を受け渡し可能にするために前記荷物に取り付けられる吊り治具であって、
前記吊持手段のスリングを掛合可能な第一掛合部と、
前記横行手段の保持部に掛合可能な第二掛合部と、
前記荷物に取り付けられる基部と、
前記基部の中央部に配置された柱部とを備えており、
前記第一掛合部は、前記柱部の上部に形成されており、
前記第二掛合部は、前記柱部の下部に形成されていることを特徴とする吊り治具。
【請求項2】
前記基部を補強する補強部と、
前記基部と前記補強部とを繋ぐ荷重分散部と、
前記荷重分散部と前記柱部とを繋ぐ脚部とを備えることを特徴とする請求項
1に記載の吊り治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば道路橋等における床版取替工事では、既設床版を搬出する作業や新設床版を搬入し設置する作業を繰り返し行う必要がある。このような作業は、クレーン車を用いて行うことができるが、作業時におけるアウトリガーの張出幅員制限や空頭制限等によって最適なクレーン車を使用できない場合には、床版を搬送可能な搬送装置を作業エリアに設置する場合もある。
クレーン車に代わる搬送装置として、特許文献1~3には、作業エリアの上方に横架されるレールと、当該レールに沿って横行可能なチェーンブロック(巻上機)とを備えるものが開示されている。特許文献1~3の搬送装置では、巻上機によって床版を吊り上げ、そのまま横行させることで、床版を移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-300688号公報
【文献】特開2004-300689号公報
【文献】特開2022-169347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻上機に吊り上げられた床版は、前後左右に揺れやすい状態にあり、横行の開始・停止時は、床版に作用する慣性力によって床版の揺れが大きくなる虞がある。しかも、橋梁上は強風に晒されやすいため、横行の開始・停止時のみならず、巻上機の横行中においても、慎重な作業が要求される。
巻上機を床版の昇降作業のみに使用し、別途用意した台車等で床版を横行させるという作業手順を採用すれば、上記の問題は解消できるが、吊った状態の床版を横行用の設備に受け渡す作業、あるいは横行用の設備に保持された荷物を吊持手段に受け渡す作業に手間取ると、作業効率が悪化する必要がある。
このような観点から、本発明は、横行手段と吊持手段との間で荷物を受け渡す作業を効率良く行うことができる吊り治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る吊り治具は、横行手段と吊持手段との間で荷物を受け渡し可能にするために前記荷物に取り付けられる吊り治具であって、前記吊持手段のスリングを掛合可能な第一掛合部と前記横行手段の保持部に掛合可能な第二掛合部とを備える。
横行手段が荷物を旋回させる機構を備えており、吊持手段が前記荷物を吊持する機構を備えている場合には、前記荷物に取り付けられる基部を設け、前記第二掛合部を前記基部の中央部に配置することが好ましい。
【0006】
本発明に係る吊り治具によれば、スリングに掛合可能な第一掛合部と横行手段の保持部に掛合可能な第二掛合部とを別々に備えているので、スリングで吊り上げた荷物を横行手段に受け渡すことができ、または、横行手段に保持された荷物を吊持手段に受け渡すことができる。
【0007】
本発明に係る吊り治具は、前記荷物に取り付けられる基部と、前記基部の中央部に配置された柱部とを備え、前記第一掛合部は、前記柱部の上部に形成されており、前記第二掛合部は、前記柱部の下部に形成されていることが好ましい。このようにすると、吊り治具を平面視したときに、第一掛合部および第二掛合部が基部の重心あるいは重心近傍に位置するようになるので、吊り治具の姿勢が安定し易くなる。
また、本発明に係る吊り治具は、好ましくは、前記基部を補強する補強部と、前記基部と前記補強部とを繋ぐ荷重分散部と、前記荷重分散部と前記柱部とを繋ぐ脚部とを備える。このようにすると、吊り治具を用いて荷物を吊り持あるいは保持した際、柱部に作用する力を基部と補強部に好適に分散させることができるので、吊り冶具に大きな変形が生じ難くなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、横行手段と吊持手段との間で荷物を受け渡す作業を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る搬送装置を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る搬送装置を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図3】実施形態に係る搬送装置を示す図であって、(a)は
図2(b)のA-A断面図、(b)は
図2(b)のB-B断面図である。
【
図4】実施形態に係る搬送装置のうち、横行手段、吊持手段、吊り治具を示す拡大斜視図である。
【
図5】実施形態に係る搬送装置の機能ブロック図である。
【
図6】実施形態に係る搬送装置を使用した床版移動方法によって既設床版を搬出先に移動する一連の工程を示す図であって、(a)は吊上げ準備工程を示す斜視図、(b)は吊上げ工程および横行準備工程を示す斜視図、(c)は横行工程を示す斜視図である。
【
図7】実施形態に係る搬送装置を使用した床版移動方法によって既設床版を搬出先に移動する一連の工程を示す図であって、(a)回送工程および吊下げ準備工程を示す斜視図、(b)は吊下げ工程を示す斜視図である。
【
図8】実施形態に係る搬送装置の移動方法を説明する図であって、(a)は第一の重心移動作業を示す斜視図、(b)は支持脚を縮めて走行手段に受け替える第二の重心移動作業を示す斜視図、(c)は走行手段に受替えた状態を示す斜視図である。
【
図9】実施形態に係る搬送装置の移動方法を説明する図であって、(a)は移動完了時の状態を示す斜視図、(b)は固定モードに戻した様子を示す斜視図である。
【
図10】実施形態に係る搬送装置を構成する第一の架台ユニットを運搬車両に積載した状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図11】実施形態に係る搬送装置を構成する第二の架台ユニットを運搬車両に積載した状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図12】実施形態に係る搬送装置の組立方法を説明する図であって、(a)~(c)は第一の仮置き作業を示す斜視図である。
【
図13】実施形態に係る搬送装置の組立方法を説明する図であって、(a)~(c)は第一の仮置き作業を示す斜視図である。
【
図14】実施形態に係る搬送装置の組立方法を説明する図であって、(a)~(c)は第二の仮置き作業を示す斜視図である。
【
図15】実施形態に係る搬送装置の組立方法を説明する図であって、(a)は連結作業を示す斜視図、(b)は支持レールに直交する方向へ移動する姿勢を示す斜視図、(c)は吊持手段の設置作業を示す斜視図である。
【
図16】実施形態に係る搬送装置の組立方法を説明する図であって、(a)は吊持手段、横行手段および吊り治具の設置作業を示す斜視図、(b)は電源ユニットの設置作業を示す斜視図、(c)は組立完了状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る搬送装置を示す斜視図である。
図2は、実施形態に係る搬送装置を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図3は、実施形態に係る搬送装置を示す図であって、(a)は
図2(b)のA-A断面図、(b)は
図2(b)のB-B断面図である。
本実施形態に係る搬送装置100は、橋梁上の既設床版を新設床版に取り替える際に使用する床版搬送用の工事用設備である。作業現場に搬出入する荷物は床版であり、搬送装置100によって搬送される搬送対象物は、「吊り治具8を取り付けた床版7」または「吊り治具8のみ」である。なお、
図1~
図3に示された床版7は、既設の床版であるが、新設の床版であってもよい。また、床板の形状等に制限はなく、平板状の床版のみならず、壁高欄と一体になったL型の床版等も含まれる。
【0011】
図1~
図3に示すように、本実施形態の搬送装置100は、作業エリアA(
図1においてドットを付したエリア)および準備エリアBに設置される。作業エリアAは、既設床版を撤去する作業および新設床版を設置する作業を行うエリアである。準備エリアBは、既設床版を運搬車両に積み込む作業および新設床版を運搬車両から積み降ろす作業を行うエリアであり、作業エリアAに隣接している。
なお、搬送装置100は、作業エリアAにおいて既設床版の撤去作業および新設床版の設置作業の両方を行う場合だけでなく、作業エリアAにおいて既設床版の撤去作業のみを行う場合や、作業エリアAにおいて新設床版の設置作業のみを行う場合にも使用できる。
【0012】
搬送装置100は、支持架台1と、搬送対象物を横行させる横行手段2と、搬送対象物を昇降させる吊持手段3とを備えている。また、搬送装置100は、横行手段2および吊持手段3を制御する制御装置4(
図5参照)と、横行手段2や吊持手段3に電力を供給する電源ユニット5とを備えている。
すなわち、搬送装置100は、搬送対象物を吊り上げて横行させるための各種設備ユニット(横行手段2、吊持手段3、電源ユニット5など)を支持架台1に搭載して構成した工事用設備である。
【0013】
<支持架台>
支持架台1は、設備ユニットを支持する構造体であり、作業エリアAおよび準備エリアBに設置される。
支持架台1は、設備ユニットを使用して床版を搬出入するときの形態である固定モード(
図1~
図3、
図6、
図7参照)と、搬送装置100を移設するときの形態である可動モード(
図8(c)参照)とを切替可能である。
支持架台1自体を作業現場に搬出入するとき(
図12~
図14参照)は、複数(本実施形態では二つ)の架台ユニット1A,1Bに分割された形態となる。すなわち、本実施形態の支持架台1は、二つの架台ユニット1A,1Bを連結したものである。固定モードでは、一方の架台ユニット1A(第一の架台ユニット1A)が作業エリアAに設置され、他方の架台ユニット1B(第二の架台ユニット1B)が準備エリアBに設置される。なお、支持架台1の分割数や架台ユニット1A,1Bの設置場所は、支持架台1の大きさや作業現場の状況に応じて適宜設定すればよい。
【0014】
支持架台1は、作業エリアAおよび準備エリアBの上方に並設された複数の支持レール11と、支持レール11を支持する複数の支持体12と、隣り合う支持レール11,11を繋ぐ横桁13とを備えている。本実施形態では、支持レール11、支持体12および横桁13が支持架台1の本体(固定モードにおける架構)を構成している。
また、支持架台1は、固定モード以外の形態において使用される設備として、走行手段14と、第一支持脚15と、第二支持脚16と、運搬用支持脚17とを備えている。
【0015】
以下の説明においては、便宜上、支持レール11の長手方向を前後方向(
図1の左側を「前側」、右側を「後側」)とし、支持レール11の長手方向に直交する横方向を左右方向とする。
【0016】
支持レール11は、横行手段2および吊持手段3を支持する部材であり、搬送対象物の移動元および移動先の上方に設置される。本実施形態では、二本の支持レール11,11が左右に間隔をあけて並設されている。
図3(b)に示すように、支持レール11は、主桁11aと、主桁11aの上面に設けられた上側軌条11bと、主桁11aの下面に設けられた下側軌条11cとを備えている。
主桁11aは、設備ユニットおよび搬送対象物の重量に耐え得る強度・剛性を有した部材であり、フランジを上下に配したI形鋼からなる。
上側軌条11bは、横行手段2の横行をガイドする部材であって、角形鋼管からなり、主桁11aの上側フランジの上面に固定されている。
下側軌条11cは、吊持手段3の横行をガイドする部材であって、フランジを上下に配したI形鋼からなり、主桁11aの下側フランジの下面に固定されている。
なお、主桁11a、上側軌条11b、下側軌条11cを構成する鋼材の種類は特に限定されず、I形鋼、H形鋼、溝形鋼、角形鋼管などの中から適宜選択できる。
【0017】
図1および
図2に示すように、各支持レール11は、作業エリアAの上方に配置される作業側レール部11Aと、準備エリアBの上方に配置される準備側レール部11Bとを有する。作業側レール部11Aは、第一の架台ユニット1Aを構成する部材であり、準備側レール部11Bは、第二の架台ユニット1Bを構成する部材である。
【0018】
支持体12は、支持レール11を支持する部材であり、床版に立設されている。本実施形態では、各支持レール11の両端部および中間部に支持体12が配置されている。なお、支持体12の位置や数は、図示のものに限定されず、支持レール11の長さや設備ユニットの重量等に応じて変更可能である。
支持体12は、
図1に示すように、支持レール11に取り付けられたブラケット12aと、ブラケット12aに取り付けられたメイン支柱12bとを備えている。
ブラケット12aは、支持レール11の外側面(主桁11aのウェブ)から側方に向かって張り出している。ブラケット12aは、支持レール11とメイン支柱12bを繋いでいる。
メイン支柱12bは、ブラケット12aから下方に向かって延出している。メイン支柱12bは、長さ調節機構を有している。本実施形態のメイン支柱12bは、直動アクチュエータ(例えば油圧ジャッキ等)であり、ブラケット12aに取り付けられたシリンダと、シリンダに対して出没可能なロッドと、ロッドの下端に取り付けられたシューとを備えている。
【0019】
一つの支持レール11を支持する三つの支持体12のうちの一つは、作業側レール部11Aの前端部に接続されており、残り二つは、準備側レール部11Bの両端部に接続されている。作業側レール部11Aに接続された支持体12は、第一の架台ユニット1Aを構成する部材であり、準備側レール部11Bに接続された支持体12は、第二の架台ユニット1Bを構成する部材である。
【0020】
横桁13は、左右に隣り合う支持レール11,11の間隔を保持する部材である。本実施形態の横桁13は、左右に隣り合う支持体12,12の間において、支持レール11,11に架設されている。すなわち、横桁13は、支持レール11の両端部および中間部に配置されている。なお、横桁13の位置や数は、図示のものに限定されるわけではなく、支持レール11の長さ等に応じて変更可能である。
横桁13は、支持レール11の内側面(主桁11aのウェブ)に固定された桁受部13aと、桁受部13aに接続された桁本体部13bとを備えている。本実施形態の横桁13は、左右一対の桁受部13a,13aと、左右の桁受部13a,13aに架設された桁本体部13bを備えている。
桁受部13aは、一方の支持レール11の内側面から他方の支持レール11に向かって張り出している。桁受部13aは、角筒状を呈していて、桁本体部13bの端部を収容可能である。
桁本体部13bは、角筒状を呈している。桁本体部13bの端部は、桁受部13aに挿入されている。桁本体部13bは、桁受部13aに対してスライド可能である。桁受部13aと桁本体部13bとをスライド可能に連結することによって、横桁13の長さ調節機構が形成されている。すなわち、桁受部13aに対する桁本体部13bの挿入長さを大きくすると、横桁13が縮んだ状態となり、桁受部13aから桁本体部13bを引き出すと、横桁13が伸びた状態となる。
なお、桁受部13aは、桁本体部13bの一端側のみに配置してもよい。この場合には、桁本体部13bの他端を支持レール11に直接固定する。
【0021】
走行手段14は、搬送装置100(または組立途中の搬送装置100)を移動させる際に使用される。本実施形態の支持架台1には、左右に二つずつ、合わせて四つの走行手段14,14,…が備わっている。四つの走行手段14,14,…は、いずれも架台ユニット1Bに設けられている。
走行手段14は、多軸多輪(本実施形態では2軸4輪)の無軌条式台車であり、車軸を回転させる駆動源(例えばインホイールモータ)を備えている。なお、走行手段14は、軌条式台車であってもよいし、軸数、輪数、駆動源の種類、駆動源の有無にも制限はない。
本実施形態の走行手段14は、第二支持脚16の下端に取り付けられており、走行面(床版の上面等)に垂直な軸回りに回転可能である。すなわち、走行手段14は、床版上を支持レール11の長手方向(橋軸方向)に走行可能であるとともに、床版上を横桁13の長手方向(橋軸直角方向)に走行可能である。本実施形態では、横行手段2、吊持手段3を第二の架台ユニット1Bに移動させるとともに、搬送装置100全体を低空頭にすることにより、搬送装置100の重心が架台ユニット1B側かつ下側に移動し、四つの走行手段14だけで走行可能となる(
図8(c)参照)。
【0022】
第一支持脚15は、運搬車両6によって運ばれてきた第一の架台ユニット1Aを荷台61から降ろすとき、あるいは、架台ユニット1Aを荷台61に積み込むときに使用される荷役用支持脚である(
図12,
図13参照)。架台ユニット1Aには、左右に二つずつ、合わせて四つの第一支持脚15,15,…が備わっている。なお、第一支持脚15の位置や数は、架台ユニット1Aや大きさや重量等に応じて変更可能であるが、一直線上に並ばない少なくとも三つの第一支持脚15を備えることが好ましい。
【0023】
第一支持脚15は、支持レール11の作業側レール部11Aに取り付けられたブラケット15aと、ブラケット15aに接続された張出部15b(
図12(b)参照)と、張出部15bに取り付けられた補助支柱15cとを備えている。
ブラケット15aは、作業側レール部11Aの外側面から側方に向かって張り出している。ブラケット15aは、角筒状を呈していて、張出部15bの端部を収容可能である。
張出部15b(
図12(b)参照)は、角筒状を呈していて、ブラケット15aに挿入されている。張出部15bは、ブラケット15aに対して進退可能である。すなわち、作業側レール部11Aのウェブに箱型のブラケット15aが取り付けられるとともに、箱型のブラケット15aの中に箱型の張出部15bが挿入されていて、張出部15bをブラケット15aから引き出すことが可能である。作業側レール部11Aのウェブを挟んでブラケット15aの反対側には、スチフナーからなる補強部15dが形成されている。
補助支柱15cは、張出部15bの端部に取り付けられている。補助支柱15cは、張出部15bの端部において横軸回りに回動可能であり、支持レール11に沿う収納状態(
図1参照)と、鉛直方向に沿う使用状態(
図12(b)(c)参照)とを選択可能である。補助支柱15cは、長さ調節機構を有している。本実施形態の補助支柱15cは、直動アクチュエータ(例えば油圧ジャッキ等)であり、張出部15bに取り付けられたシリンダと、シリンダに対して出没可能なロッドと、ロッドの先端に取り付けられたシューとを備えている。補助支柱15cは、床版に立設された状態で、第一の架台ユニット1Aを昇降可能である。
上記のとおり、第一支持脚15は、固定モード以外の形態において使用される荷役用支持脚であり、第一の架台ユニット1Aの本体(作業側レール部11A)から側方に向けて延出する延出部(ブラケット15aおよび張出部15b)と、延出部から下向きに延出する補助支柱15c(
図12(b)(c)参照)を備えている。
【0024】
第二支持脚16は、支持レール11と走行手段14との間に介設されている。第二支持脚16は、運搬車両6によって運ばれてきた第二の架台ユニット1Bを荷台61から降ろすとき、および、架台ユニット1Bを荷台61に積み込むときは、走行手段14とともに荷役用支持脚として機能する(
図13、
図14参照)。
第二の架台ユニット1Bには、左右に二つずつ、合わせて四つの第二支持脚16,16,…が備わっている。なお、第二支持脚16の位置や数は、図示のものに限定されず、架台ユニット1Bや大きさや重量等に応じて変更可能であるが、一直線上に並ばない少なくとも三つの第二支持脚16を備えることが好ましい。
【0025】
第二支持脚16は、支持レール11の準備側レール部11Bに取り付けられたブラケット16aと、ブラケット16aに接続された張出部16bと、張出部16bに取り付けられた補助支柱16cとを備えている。
ブラケット16aは、準備側レール部11Bの外側面から側方に向かって張り出している。ブラケット16aは、角筒状を呈していて、張出部16bの端部を収容可能である。
張出部16bは、角筒状を呈していて、ブラケット16aに挿入されている。張出部16bは、ブラケット16aに対して進退可能である。すなわち、準備側レール部11Bのウェブに箱型のブラケット16aが取り付けられるとともに、箱型のブラケット16aの中に箱型の張出部16bが挿入されていて、張出部16bをブラケット16aから引き出すことが可能である。準備側レール部11Bのウェブを挟んでブラケット16aの反対側には、スチフナーからなる補強部16dが形成されている。
補助支柱16cは、張出部16bの端部に取り付けられている。補助支柱16cは、長さ調節機構を有している。本実施形態の補助支柱16cは、直動アクチュエータ(例えば油圧ジャッキ等)であり、張出部16bに取り付けられたシリンダと、シリンダに対して出没可能なロッドとを備えている。ロッドの下端は、走行手段14に取り付けられている。補助支柱16cは、走行手段14が走行面(床版の上面等)に接地した状態(補助支柱16cが走行面に立設された状態)で、架台ユニット1Bを昇降可能である。
上記のとおり、第二支持脚16は、固定モード以外の形態において使用される荷役用支持脚であり、第二の架台ユニット1Bの本体(準備側レール部11B)から側方に向けて延出する延出部(ブラケット16aおよび張出部16b)と、延出部から下向きに延出する補助支柱16c(
図14(b)参照)を備えている。
【0026】
運搬用支持脚17は、第一の架台ユニット1Aを運搬車両6によって運搬するとき、あるいは架台ユニット1Aを単独で自立させるときに使用される(
図12、
図13参照)。すなわち、運搬用支持脚17は、運搬時や組立時に架台ユニット1Aの安定性を高めるものであり、荷台61上または運搬車両6の走行面上に立設可能である。
第一の架台ユニット1Aには、左右に一つずつ、合わせて二つの運搬用支持脚17,17,…が備わっている。なお、運搬用支持脚17の位置や数は、図示のものに限定されず、架台ユニット1Aや大きさや重量等に応じて変更可能である。
運搬用支持脚17は、支持レール11の作業側レール部11Aに取り付けられた回動台座17aと、回動台座17aに取り付けられた補助支柱17bとを備えている。
回動台座17aは、作業側レール部11Aの外側面(ウェブ)に取り付けられている。
補助支柱17bは、回動台座17aに取り付けられている。補助支柱17bは、回動台座17aに備わる横軸回りに回動可能であり、支持レール11に沿う収納状態(
図1参照)と、鉛直方向に沿う使用状態(
図12、13参照)とを選択可能である。
【0027】
<横行手段>
横行手段2は、搬送対象物(吊り治具8を取り付けた床版7等)を横行させる機能を有するものであり、支持架台1に支持されている。本実施形態の横行手段2は、吊持手段3に吊持されていない搬送対象物を保持した状態で、支持レール11に沿って移動可能である。横行手段2は、支持レール11の下側に配置されている。
図4は、横行手段2、吊持手段3および吊り治具8を示す拡大斜視図である。なお、
図4では、支持レール11の図示を省略している。
横行手段2は、前後方向に移動(横行)するための構成として、支持レール11(
図1~
図3参照)に沿って走行可能な横行台車21と、横行台車21に駆動力を付与する台車用駆動源22を備えている。また、横行手段2は、搬送対象物を保持可能な保持部23と、保持部23に駆動力を付与する保持部用駆動源24とを備えている。
【0028】
横行台車21は、懸垂式の台車であり、鋼材を組み合わせて形成した矩形枠状の台枠と、台枠上に設けられた駆動輪21aおよび従動輪21bとを備えている。駆動輪21aおよび従動輪21bは、台枠上に立設された軸受けプレート21cに支持されている。駆動輪21aおよび従動輪21bは、支持レール11の下側軌条11c(
図3(b)参照)の下側フランジに掛合し、下側フランジの上面を転動する。なお、駆動輪21aおよび従動輪21bの数、配置等は、台枠の形状や荷重バランス等に応じて適宜設定すればよい。
横行台車21は、保持部用軌条21dを備えている。保持部用軌条21dは、保持部23の左右方向への移動(横行)をガイドする部材であって、台枠の上面に固定されている。
なお、図示は省略するが、横行台車21の横行(前後方向への移動)を阻止する状態と許容する状態を切り替えるロック機構として、支持架台1に係合するストッパを横行台車21に設けるか、横行台車21に係合するストッパを支持架台1に設けてもよい。
台車用駆動源22は、駆動輪21aの車軸を回転させる駆動源(例えば電動モータ)であり、横行台車21の台枠上に搭載されている。なお、横行台車21をワイヤー等で牽引する場合は、台車用駆動源を支持架台1に取り付ける。
【0029】
保持部23は、横行台車21に支持されており、吊持手段3に吊持されていない搬送対象物を保持した状態においても、支持レール11と交差する横方向(左右方向)に移動可能である。
本実施形態の保持部23は、横行台車21から垂れ下がる前後一対の腕部23a,23aと、腕部23a,23aに支持された基部23bと、上下方向の軸を中心に回動可能な旋回体23cと、旋回体23cに設けられた掛合部23dとを備えている。
【0030】
腕部23a,23aは、横行台車21の前後に配置されており、横行台車21を挟んで対向している。すなわち、一方の腕部23aは、横行台車21の前側に配置されており、他方の腕部23aは、横行台車21の後側に配置されている。腕部23aは、横行台車21の台枠から下方に向かって延出している。
腕部23aは、保持部用軌条21dに沿って横方向(左右方向)に移動可能である。腕部23aの上端部は、保持部用軌条21dに上側から覆い被さり、図示せぬ車輪を介して台枠上に載置される。車輪は、腕部23aの上端部に内蔵されており、保持部用軌条21dに沿って台枠上を転動する。
基部23bは、横行台車21の下方において腕部23a,23aに架設されている。基部23bは、旋回体23cを支持する略円形の基部本体と、基部本体から腕部23aの下側に張り出すフランジとを備えている。図示は省略するが、基部23bは、旋回体23cを支持する環状の受部(例えばスラスト玉軸受)を備えている。腕部23aの下端部は、基部23bのフランジに接合されている。
【0031】
旋回体23cは、基部23bの下側に配置されている。旋回体23cは、基部23bの受部に載置され、旋回体23cに作用する下向きの荷重を基部23bに伝達しつつ、基部23bに対して回動する。旋回体23cの外周面には、ギヤ(例えば平歯車)が形成されている。図示は省略するが、旋回体23cのギヤには、ピニオンが歯合している。保持部用駆動源24の一つである電動モータ(図示略)は、腕部23aまたは基部23bに取り付けられており、電動モータの駆動力がピニオンを介してギヤに伝達されることで、旋回体23cが回動する。
掛合部23dは、スリングを介することなく吊り治具8に掛合可能である。
図3の(b)に示すように、本実施形態の掛合部23dは、旋回体23cの下面に突設されたL字状のフックである。掛合部23dは、旋回体23cの回転中心軸を中心とする仮想円の周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では二つ)配置されている。
【0032】
図4に示すように、保持部23の中央部には、基部23bおよび旋回体23cを上下に貫通する開口部23eが形成されている。開口部23eは、スリング35を挿通可能な大きさを有し、横行台車21の台枠、腕部23aおよび保持部用駆動源24と平面視で重ならない位置に形成されている。
なお、図示は省略するが、保持部23の横行(左右方向への移動)を阻止する状態と許容する状態を切り替えるロック機構として、横行台車21に係合するストッパを保持部23に設けるか、保持部23に係合するストッパを横行台車21に設けてもよい。
【0033】
保持部用駆動源24は、保持部用軌条21dに沿って保持部23を移動させるための第一駆動源24aと、旋回体23cを回動させるための第二駆動源(図示略)とを備えている。
本実施形態の第一駆動源24aは、横行台車21の下方に配置された直動アクチュエータ(例えば電動アクチュエータ)であり、シリンダと、当該シリンダに対して進出・縮退するロッドとを備えている。第一駆動源24aは、横行台車21と一方の腕部23aとに固定される。本実施形態では、ロッドの先端が横行台車21の左右方向の一端(本実施形態では左端)に固定されており、シリンダが一方の腕部23aに固定されている。第一駆動源24aは、横行台車21に反力をとって一方の腕部23aを押し引きすることで、保持部23をスライドさせる。なお、第一駆動源24aの最大出力は、搬送対象物を保持した状態の保持部23を移動させることができない大きさとすることが好ましい。また、直動アクチュエータに代えて、腕部23aに内蔵された車輪を駆動する電動モータを第一駆動源としてもよい。
第二駆動源(図示略)は、腕部23aまたは基部23bに取り付けられた電動モータであり、旋回体23dcのギヤに歯合するピニオンを正逆回転させることで、旋回体23cを回動させる。
【0034】
<吊持手段>
吊持手段3は、搬送対象物を搬送元から横行手段2に向けて上昇させる機能、および、搬送対象物を横行手段2から搬送先に向けて下降させる機能を有するものであり、支持架台1に支持されている。吊持手段3は、横行手段2の上方に配置されている。このようにすると、吊持手段3の揚程を短くすることが可能となる。
本実施形態の吊持手段3は、支持レール11の上側に配置されており、搬送対象物を吊持していない状態であれば、支持レール11に沿って移動可能である。すなわち、吊持手段3は、スリング35を介して搬送対象物を昇降可能であるとともに支持レール11に沿って移動可能である。なお、搬送対象物を吊持していない状態とは、例えば、スリング35が搬送対象物から外れた状態や、スリング35が搬送対象物に接続されているもののスリング35が弛んだ状態である。
図4に示すように、吊持手段3は、前後方向に移動(横行)するための構成として、支持レール11(
図1~
図3参照)に沿って走行可能な吊持台車31と、吊持台車31に駆動力を付与する台車用駆動源32とを備えている。また、吊持手段3は、左右方向に移動(横行)するための構成として、吊持台車31上において横方向に移動可能な支持フレーム33と、支持フレーム33に駆動力を付与するフレーム用駆動源34とを備えている。さらに、吊持手段3は、搬送対象物を昇降させるための構成として、搬送対象物に接続されるスリング35と、スリング35の繰り出し長さを調節する操出部36と、スリング35に作用する引張力を測定するロードセル37とを備えている。
【0035】
吊持台車31は、鋼材を組み合わせて形成した矩形枠状の台枠と、台枠上に設けられた駆動輪31aおよび従動輪31bとを備えている。駆動輪31aおよび従動輪31bは、支持レール11の上側軌条11b(
図3(b)参照)に掛合し、上側軌条11bの上面を転動する。なお、駆動輪31aおよび従動輪31bの数、配置等は、台枠の形状や荷重バランス等に応じて適宜設定すればよい。
吊持台車31は、支持フレーム用軌条31cを備えている。支持フレーム用軌条31cは、支持フレーム33の左右方向への横行をガイドする部材であって、台枠の上面に固定されている。支持フレーム用軌条31cには、前方または後方に窪む係止溝が形成されている。
なお、図示は省略するが、吊持台車31の横行(前後方向への移動)を阻止する状態と許容する状態を切り替えるロック機構として、支持架台1に係合するストッパを吊持台車31に設けるか、吊持台車31に係合するストッパを支持架台1に設けてもよい。
図3(b)に示す台車用駆動源32は、駆動輪31aの車軸を回転させる駆動源(例えば電動モータ)であり、吊持台車31の台枠下に搭載されている。台車用駆動源32の最大出力(最大トルク)は、吊持手段3に搬送対象物を吊り下げた状態で駆動輪31aの車軸を回転させることができない大きさとすることが好ましい。なお、吊持台車31をワイヤー等で牽引する場合は、台車用駆動源を支持架台1に取り付ける。
【0036】
図4に示す支持フレーム33は、操出部36を支持する架台であり、吊持台車31に載置されている。支持フレーム33は、搬送対象物を吊持していない状態であれば、支持レール11と交差する横方向(左右方向)に移動可能である。支持フレーム33を左右方向に移動(横行)させると、スリング35を搬送対象物の重心に合わせることが可能になるので、吊持した際の搬送対象物の姿勢を安定させることができる。
本実施形態の支持フレーム33は、間隔をあけて配置された一対の支持梁33a,33aと、支持梁33aの一端側に配置されたスペーサ33bと、支持梁33aの他端側に配置された取付座33cと、支持梁33aの上面に配置された操出部用軌条33dとを備えている。
【0037】
支持梁33a,33aは、操出部36の構成要素の一部を支持する部材であり、左右(支持梁33aの短手方向)に間隔をあけて平行に配置されている。支持梁33aの長さは、吊持台車31の台枠の奥行きよりも大きく、支持梁33aの前端および後端は、それぞれ台枠の前方および後方に位置している。すなわち、支持梁33aは、吊持台車31の台枠の前方および後方に張り出している。支持梁33aは、例えば、フランジを上下に配したI形鋼からなる。
スペーサ33bは、支持梁33a,33aの前端側の間隔を保持する部材であり、支持梁33a,33aの前端部同士を繋いでいる。
取付座33cは、操出部36の一部の構成要素を支持する部材であり、支持梁33a,33aの後端部に設けられている。本実施形態の取付座33cは、支持梁33a,33aの後端部同士を繋ぐ中央部と、支持梁33a,33aの左右に張り出す張出部とを備えている。
操出部用軌条33dは、操出部36の構成要素うち、前後方向にスライドする部材をガイドする部材であって、支持梁33aの上面に固定されている。
【0038】
支持フレーム33は、前後方向に延在するスリット33eを有する。スリット33eは、支持梁33aのうち、吊持台車31の台枠よりも前方に張り出した部分の側面(ウェブ)を貫通している。
なお、図示は省略するが、支持フレーム33は、支持フレーム用軌条31cの係止溝に入り込む逸脱阻止部、支持フレーム用軌条31c上を転動する車輪などをさらに備えている。支持フレーム33に設けた逸脱阻止部を支持フレーム用軌条31cの係止溝に係止することで、支持フレーム33の前後移動や浮き上がりが阻止される。
【0039】
フレーム用駆動源34は、支持フレーム用軌条31c沿って支持フレーム33を移動させるための駆動源である。
本実施形態のフレーム用駆動源34は、吊持台車31の上方に配置された直動アクチュエータ(例えば電動アクチュエータ)であり、シリンダと、当該シリンダに対して進出・縮退するロッドとを備えている。フレーム用駆動源34は、吊持台車31と一方の支持梁33aとに固定される。本実施形態では、ロッドの先端が吊持台車31に固定されており、シリンダが一方の支持梁33aに固定されている。フレーム用駆動源34は、吊持台車31に反力をとって一方の支持梁33aを押し引きすることで、支持フレーム33を横行させる。
ストロークが大きい直動アクチュエータをフレーム用駆動源34とする場合には、吊持台車31の左右方向の一端と、吊持台車31の一端から遠い方の支持梁33aとに直動アクチュエータを固定するとよい。この場合、電動アクチュエータは、吊持台車31の一端に近い方の支持梁33aを貫通または交差するように配置する。本実施形態のフレーム用駆動源34(電動アクチュエータ)は、左側の支持梁33aを貫通している。ロッドの先端は、吊持台車31の左端に固定されており、シリンダは、吊持台車31の左端から遠い方の支持梁33a(右側の支持梁33a)の右側面に固定されている。なお、電動アクチュエータは、吊持台車31の一端に近い方の支持梁33a(本実施形態では左側)に固定してもよい。
なお、フレーム用駆動源34の最大出力は、搬送対象物を吊持した状態の支持フレーム33を移動させることができない大きさとすることが好ましい。また、直動アクチュエータに代えて、支持梁33aに内蔵された車輪を駆動する電動モータや、ワイヤーを介して支持フレーム33を牽引するウインチをフレーム用駆動源としてもよい。
【0040】
スリング35は、吊持手段3から垂れ下がり、横行手段2を通って搬送対象物に至る。スリング35は、例えばワイヤーロープスリング、チェーンスリング、ベルトスリング等などである。スリング35の下端には、吊り治具8に掛止されるフックが形成されている。
【0041】
操出部36は、スリング35の繰り出し長さを調節するものであり、支持フレーム33に搭載されている。すなわち、操出部36は、支持フレーム33を介して吊持台車31に支持されており、支持フレーム33と一緒に、支持レール11と交差する横方向にスライドする。
本実施形態の操出部36は、支持フレーム33に支持された固定シーブ36aと、支持フレーム33にスライド可能に支持されたスライド部36bと、固定シーブ36aに対して接近離間する移動シーブ36cと、スライド部36bを固定シーブ36aに対して接近離間させる直動アクチュエータ36dとを備えている。
【0042】
固定シーブ36aは、支持梁33a,33aの間に配置されており、支持梁33a,33aに架設された軸部に支持されている。固定シーブ36aは、支持梁33aの上または下に配置してもよいが、支持梁33a,33aの間に配置すると、操出部36の高さが抑えられるため、操出部36がコンパクトになる。
固定シーブ36aは、吊持台車31の台枠の上方に配置されているが、少なくとも固定シーブ36aの後端は、台枠の中央部(開口部)の上方に位置している。固定シーブ36aの外周には、スリング35が掛け回される少なくとも一つ(本実施形態では二つ)の溝部が形成されている。
【0043】
スライド部36bは、支持梁33a,33aの間に配置されており、左右の操出部用軌条33d,33dに沿って前後方向にスライドする。スライド部36bの左右の縁部は、支持梁33aの上面を操出部用軌条33dに沿ってスライドする機構を備えている。なお、図示は省略するが、スライド部36bの左右の縁部に車輪を取り付け、当該車輪を介して支持梁33aの上面に載置してもよい。スライド部36bは、支持梁33aの上または下に配置してもよいが、支持梁33a,33aの間に配置すると、操出部36の高さが抑えられるため、操出部36がコンパクトになる。
スライド部36bは、スリング接続部361と、シーブ支持部362とを備えている。
スリング接続部361は、移動シーブ36cの前方かつ固定シーブ35aおよび移動シーブ36cよりも高い位置に設けられている。スリング接続部361には、固定シーブ36aから斜め上方に延出するスリング35の端部が接続されている。
シーブ支持部362は、移動シーブ36cを挟んで対向する一対の軸受け板と、両軸受け板に架設された軸部363とを備えている。シーブ支持部362は、支持梁33aの側面(ウェブ)に間隔をあけて対向している。
軸部363は、支持梁33aのスリット33eを貫通し、支持フレーム33の外側に突出している。スライド部36bが前後方向にスライドする際、軸部363はスリット33e内を前後方向にスライドする。つまり、スリット33eは、スライド部36bのガイドとして機能する。
【0044】
移動シーブ36cは、固定シーブ36aの前方において支持梁33a,33aの間に配置されており、スライド部36bの軸部363に支持されている。移動シーブ36cは、支持梁33aの上または下に配置してもよいが、支持梁33a,33aの間に配置すると、操出部36の高さが抑えられるため、操出部36がコンパクトになる。
移動シーブ36cの外周には、スリング35が掛け回される少なくとも一つ(本実施形態では一つ)の溝部が形成されている。
【0045】
直動アクチュエータ36dは、支持フレーム33を挟んで両側(すなわち、支持梁33a,33aを挟んで両側)にそれぞれ配置されている。各直動アクチュエータ36dは、支持梁33aの側方に配置されている。
直動アクチュエータ36dは、シリンダと、当該シリンダに対して進出・縮退するロッドとを備えている。直動アクチュエータ36dは、支持フレーム33とスライド部36bとに固定される。本実施形態では、シリンダが支持フレーム33の取付座33c(より具体的には、取付座33cの張出部)に固定されており、ロッドの先端がスライド部36bの軸部363に固定されている。直動アクチュエータ36dは、支持フレーム33に反力をとって軸部363を押し引きすることで、スライド部36bを前後方向にスライドさせる。軸部363を押し引きする際は、スリット33eの上下の縁によって軸部363の上下動が抑制される。
【0046】
本実施形態の吊持手段3において、搬送対象物からスリング接続部361に向かうスリング35は、固定シーブ36aおよび移動シーブ36cを介してスリング接続部361に至る。
より具体的に説明すると、搬送対象物から上方に向けて延びるスリング35は、固定シーブ36aの一の溝部に対して後側から略1/4周ほど掛け回されて移動シーブ36cに向かい、移動シーブ36cの溝部に対して上側から略半周ほど掛け回されて再び固定シーブ36aに向かい、固定シーブ36aの他の溝部に対して下側から略半周ほど掛け回されたうえで、スリング接続部361に接続されている。
そして、直動アクチュエータ36dのロッドを進出させてスライド部36bを前方に移動させると、スリング接続部361および移動シーブ36cが固定シーブ36aから遠ざかり、操出部36に巻き取られるスリング35の長さが増すことで、スリング35の下端(搬送対象物側の端部)が上昇する。
また、直動アクチュエータ36dのロッドを縮退させてスライド部36bを後方に移動させると、スリング接続部361および移動シーブ36cが固定シーブ36aに近づき、操出部36に巻き取られるスリング35の長さが減ることで、スリング35の下端(搬送対象物側の端部)が下降する。
【0047】
スライド部36bを進退させる際は、一対の直動アクチュエータ36d,36dのストローク量および進退速度を同期させることが好ましい。一対の直動アクチュエータ36d,36dを同期させると、スライド部36bを鉛直軸回りに回転させようとする力が発生せず、スライド部36bの直進性が高まる。つまり、操出部用軌条33dとスライド部36bとの競りが抑制されるため、移動対象物をスムーズに昇降させることが可能となる。
【0048】
上記のとおり、吊持手段3は、直動アクチュエータ36dによってスリング35の繰り出し長さを調節するものであるが、汎用の資機材を利用しているため、施工条件に応じて装置の諸元やレイアウトを容易に変更することができる。
例えば、直動アクチュエータ36dは、電動に限らず、油圧式でもよい。
また、固定シーブ36aの溝部の数、移動シーブ36cの溝部の数は、スリング35の繰り出し長さと直動アクチュエータ36dのストローク量に応じて適宜変更可能である。
スリング35の繰り出し長さが直動アクチュエータ36dのストローク量以下である場合には、移動シーブ36cを省略してもよい。この場合、固定シーブ36aの溝部は一つでよい。
なお、移動シーブ36cを設けると、搬送対象物を吊り上げる際に必要となる力が搬送対象物の重量よりも小さくなるので、直動アクチュエータ36dの出力(推力)よりも大きい重量の搬送対象物を吊り上げることが可能となる。
ちなみに、本実施形態では、固定シーブ36aとスライド部36bとの間にスリング35が3本配置されるので、スリング35の繰り出し長さ(吊持手段3の揚程)は、直動アクチュエータ36dのストローク量の3倍となる。
【0049】
ロードセル37は、スリング35に作用する引張力を測定する荷重計である。本実施形態のロードセル37は、スリング35の端部とスライド部36bのスリング接続部361との間に介設されている。ロードセル37で取得されたデータは、制御装置(
図5参照)に出力される。
【0050】
<制御装置>
図5は、実施形態に係る搬送装置100の機能ブロック図である。
制御装置4は、ロードセル37で取得されたデータまたはコントローラCからの指令に基づいて横行手段2および吊持手段3を制御する。制御装置4は、支持架台1や設備ユニット(横行手段2、吊持手段3、電源ユニット5)に設けることができる。本実施形態の制御装置4は、判定手段41と、横行制御手段42と、昇降制御装置43と、回転制御手段44とを備えている。
【0051】
判定手段41は、搬送対象物がスリング35に吊られた状態(吊持状態)であるか否かを判定し、判定結果を横行制御手段42、昇降制御装置43および回転制御手段44に出力する。
本実施形態の判定手段41は、ロードセル37で取得されたデータ(引張力の大きさ)に基づいて吊持状態であるか否かを判定する。すなわち、判定手段41は、ロードセル37で計測された引張力の大きさが閾値を超えた場合には、搬送対象物がスリング35に吊られた状態(吊持状態)であると判定し、閾値以下である場合には、搬送対象物がスリング35に吊られていない状態(非吊持状態)であると判定する。ロードセル37から出力される引張力の値は、スリング35に作用している引張力を反映した値であるので、ロードセル37で取得されたデータを使用すると、吊持状態であるか否か(すなわち、操出部36に搬送対象物の重量が作用しているか否か)を容易かつ確実に判定できる。
閾値は、搬送対象物(床版7および吊り治具8)の重量に基づいて都度設定してもよいし、搬送対象物が吊り治具8のみの場合を想定し、吊り治具8の重量を下回る固定値としてもよい。
【0052】
横行制御手段42は、横行可能な構成要素(横行手段2の横行台車21と保持部23、吊持手段3の吊持台車31と支持フレーム33)の移動方向および移動速度がコントローラCの操作通りとなるよう各種駆動源の出力等を制御する機能を備えている。本実施形態の横行制御手段42は、さらに、横行手段2および吊持手段3の移動を阻止する状態(横行阻止状態)と許容する状態(横行許容状態)とを切り替える機能を備えている。すなわち、横行制御手段42は、判定手段41により吊持状態であると判定されたときは、横行手段2および吊持手段3の移動(前後方向への移動および左右方向への移動)を阻止する制御(横行阻止制御)を実行し、判定手段41により非吊持状態であると判定されたときは、横行手段2および吊持手段3の移動を許容する制御(横行許容制御)を実行する。
判定手段41により吊持状態であると判定され、横行制御手段42により横行阻止制御が実行されると、横行手段2および吊持手段3は横行阻止状態となり、コントローラCを介して横行手段2または吊持手段3の移動(前後方向への移動または左右方向への移動)を制御装置4に指示しても、停止状態が維持される。
横行阻止制御は、例えば、横行手段2の駆動源(台車用駆動源22、保持部用駆動源24)および吊持手段3の駆動源(台車用駆動源32、フレーム用駆動源34)を非作動とする制御である。駆動源が電動である場合は、駆動源を非作動とする制御として、駆動源への電力の供給を停止する制御(電源回路の開閉器をオフにする制御)を実行することが好ましい。駆動源が流体圧(油圧や空気圧など)で作動する場合は、駆動源を非作動とする制御として、流体の供給を停止する制御(ポンプを停止する制御や流体の流路に設けた開閉弁を閉じる制御など)や、流体圧をリリーフする制御を実行することが好ましい。
なお、横行台車21、保持部23、吊持台車31および支持フレーム33の横行を阻止するロック機構(ストッパなど)を備えている場合には、横行制御手段42は、横行阻止制御として、ロック機構を作動させる制御(ストッパを出現させる制御等)を実行する。
【0053】
昇降制御装置43は、搬送対象物を昇降させる動作がコントローラCの操作通りになるよう操出部36の直動アクチュエータ36dを制御する機能を備えている。
回転制御手段44は、横行手段2の旋回体23cの回転方向がコントローラCの操作通りになるよう保持部用駆動源24の一つである第二駆動源(図示略)を制御する機能を備えている。
【0054】
<電源ユニット>
図1に示す電源ユニット5は、電動の駆動源や制御装置4に電力を供給する設備ユニットであり、支持架台1に支持されている。
電源ユニット5は、支持レール11,11の端部に取り付けられた台座51と、台座51に載置された発電機とを備えている。
台座51は、第二の架台ユニット1Bの後端部(準備側レール部11Bの後端部)に取り付けられており、架台ユニット1Bの後端部から後方に向かって片持ち状に張り出している。
発電機52の電力供給先に制限はないが、本実施形態では、横行手段2の駆動源(台車用駆動源22、保持部用駆動源24)、吊持手段3の駆動源(台車用駆動源32、フレーム用駆動源34)、ロードセル37、制御装置4などに図示せぬ電力ケーブルを介して電力を供給している。
なお、搬送装置100を移設する過程において、支持架台1の形態を可動モード(
図8(c)参照)にするとき(搬送装置100を第二支持脚16だけで自立させるとき)は、電源ユニット5がカウンターウエイトとなる。台座51と電源ユニット52の重量だけでバランスが取れない場合は、錘となる部材(図示略)を台座51に搭載してもよい。
【0055】
<吊り治具>
吊り治具8は、
図1に示すように、横行手段2および吊持手段3に掛合可能な機構を備える床版搬送用の冶具であり、床版7に取り付けられる。
図4に示すように、吊り治具8は、スリング35を掛合可能な第一掛合部86と、横行手段2の保持部23に掛合可能な第二掛合部87とを備えている。すなわち、吊り治具8は、スリング35に掛合可能な第一掛合部86と横行手段2の保持部23に掛合可能な第二掛合部87とを別々に備えるものである。
このような吊り治具8を床版7に取り付ければ、スリング35で吊り上げた搬送対象物(吊り治具8を取り付けた床版7)を横行手段2に受け渡すことができ、あるいは、横行手段2に保持された搬送対象物を吊持手段3に受け渡すことができる。
【0056】
本実施形態の吊り治具8は、第一掛合部86および第二掛合部87に加えて、床版7に取り付けられる基部81と、基部81の中央部に配置された柱部85とを備えている。
さらに、本実施形態の吊り治具8は、基部81を補強する補強部82と、基部81と補強部82とを繋ぐ荷重分散部83と、荷重分散部83と柱部85とを繋ぐ脚部84とを備えている。
【0057】
基部81は、複数の鋼材(H形鋼、I形鋼、溝形鋼等)を組み合わせて形成したものであり、床版7の外形よりも小さい矩形枠状を呈している。
補強部82は、鋼材からなり、基部81を構成する四つの鋼材のうち、対向する二つの鋼材を繋ぐように配置されている。補強部82の端部は、基部81に接合されている。補強部82の向きに制限はないが、本実施形態の補強部82は、基部81の長手方向に沿って配置されている。また、補強部82の本数にも制限はないが、本実施形態では、二本の補強部82,82が基部81の短手方向に間隔をあけて並設されている。二本の補強部82,82は、柱部85を挟んで対向している。
荷重分散部83は、補強部82と交差する方向に配置された鋼材(鋼棒など)からなり、基部81を構成する四つの鋼材のうち、補強部82と平行な二つの鋼材と、補強部82,82とを貫通している。すなわち、荷重分散部83は、基部81の短手方向に沿って配置されている。荷重分散部83の本数に制限はないが、本実施形態では、二本の荷重分散部83,83が基部81の長手方向に間隔をあけて並設されている。荷重分散部83,83は、柱部85を挟んで対向している。
脚部84は、柱部85の下部から荷重分散部83に向かって張り出す鋼材(例えば鋼板)からなる。荷重分散部83は、脚部84を貫通している。
柱部85は、基部81の中央部に配置された鋼材(鋼管など)からなり、補強部82、荷重分散部83および脚部84を介して基部81に連結されている。柱部85は、基部81の上方に向かって延出しており、吊り治具8を横行手段2の保持部23に向けて上昇させると、開口部23eに挿入される。
【0058】
第一掛合部86は、柱部85の上部に形成されている。本実施形態の第一掛合部86は、柱部85の上部に接合された一対の鉤状板からなる。一対の鉤状板は、柱部85の上部から上方に向かって立ち上がっていて、間隔をあけて対向している。本実施形態では、スリング35の下端部に横向き棒状のフックが形成されていることに対応して、第一掛合部86をなす一対の鉤状板の上部をそれぞれ逆J字状とし、かつ、一対の鉤状板を逆向きに配置している。なお、スリング35の下端部にJ字状のフックが形成されている場合には、環状のフックを第一掛合部86としてもよい。
【0059】
第二掛合部87は、柱部85の下部に形成されている。本実施形態の第二掛合部87は、柱部85の下部に接合された円形の掛合板からなる。掛合板は、基部81と平行に配置されている。掛合板には、一対の掛合孔87aが形成されている。掛合孔87aは、柱部85の中心軸を中心とする仮想円の周方向に沿って形成された長孔である。掛合孔87aの一端側の開口幅は、横行手段2の保持部23の掛合部23dを挿入可能な大きさに設定されており、掛合孔87aの他端側の開口幅は、一端側よりも狭くなっている。掛合孔87aの一端側に掛合部23dを挿入した状態で、保持部23の旋回体23cを回動させ、掛合部23dを掛合孔87aの他端側に移動させると、掛合孔87aの周縁部に掛合部23dが掛合する。
【0060】
基部81の中央部に柱部85を配置し、さらに、柱部85の上部に第一掛合部86を配置し、柱部85の下部に第二掛合部87を配置すると、吊り治具8を平面視したときに、第一掛合部86および第二掛合部87が基部81の重心あるいは重心近傍に位置するようになるので、吊り治具8の姿勢が安定し易くなる。
また、基部81と柱部85との間に、補強部82、荷重分散部83および脚部84を介在させると、吊り治具8を用いて荷物を吊持あるいは保持した際、柱部85に作用する力を基部81と補強部82に好適に分散させることができるので、吊り治具8に大きな変形が生じ難くなる。
【0061】
なお、吊り治具8を床版7に取り付ける方法に制限はないが、床版7に貫設したPC鋼棒、床版7に植設したアンカーボルト、床版7のインサートナットに螺着したボルトなどを吊り治具8に締着することが好ましい。
【0062】
<搬送装置の使用例>
搬送装置100を使用すると、吊持手段3によって搬送対象物を吊り上げ、吊り上げた搬送対象物を横行手段2に受け渡した後、横行手段2によって搬送対象物を横行させることができる。
また、搬送装置100は、搬送対象物がスリング35に吊られた状態(負荷状態)であるか否かを判定することができ、かつ、負荷状態であると判定されたときは横行手段2および吊持手段3の横行を阻止する状態となる。すなわち、搬送装置100を使用すると、搬送対象物をスリング35に吊った状態で横行させないという作業手順を遵守することができる。ちなみに、スリングに吊った搬送対象物を横行できない機構を備えている搬送装置100は、クレーン等安全規則におけるクレーンに該当するものではない。
以下、搬送装置100の使用例として、橋梁上の既設床版を新設床版に取り替える床版取替方法を例示する。
図1に示すように、床版取替方法に使用する搬送装置100は、作業エリアA(
図1においてドットを付したエリア)および準備エリアBに設置される。
本実施形態に係る床版取替方法は、搬送装置100を使用した床版移動方法によって既設の床版7を所定の搬出先(準備エリアB)に移動する床版撤去工程と、床版7の搬出先に運び込まれた新設の床版(図示略)を、搬送装置100を使用した床版移動方法によって床版7の搬出元(作業エリアA)に移動する床版設置工程と、を備える。
【0063】
図6および
図7は、搬送装置100を使用した床版移動方法によって既設床版を搬出先に移動する床版撤去工程を示す斜視図である。
床版撤去工程では、
図6(a)(b)に示すように、作業エリアAにおいて吊持手段3によって搬送対象物(吊り治具8を取り付けた既設の床版7)を上昇させ、作業エリアAの上方において搬送対象物を横行手段2に受け渡した後、
図6(c)および
図7(a)に示すように、横行手段2によって搬送対象物を準備エリアBの上方まで横行させる。
また、床版撤去工程では、
図7に示すように、空荷状態の吊持手段3を横行手段2の上方まで回送させ、準備エリアBの上方において搬送対象物を横行手段2から吊持手段3に 受け渡した後、吊持手段3によって搬送対象物を運搬車両6の荷台61まで下降させる。
【0064】
以下、床版撤去工程を例にして、本実施形態に係る床版移動方法をより詳細に説明する。
本実施形態に係る床版移動方法は、吊上げ準備工程(
図6(a))、吊上げ工程および横行準備工程(
図6(b))、横行工程(
図6(c))、回送工程および吊下げ準備工程(
図7(a))、吊下げ工程(
図7(b))を備えている。なお、以下の説明において、
図6および
図7に示されていない横行手段2,吊持手段3および吊り治具8の具体的構成は、
図4を参照して説明する。
【0065】
吊上げ準備工程は、搬送対象物を吊り上げる前に行われる工程である。吊上げ準備工程には、治具搬送作業、治具受替え作業、治具下降作業、治具固定作業、スリング接続作業などが含まれている。
図6(a)は、吊下げ準備工程が完了した状態を示している。
治具搬送作業は、吊上げ準備工程における搬送対象物である吊り治具8を、横行手段2を用いて床版7の上方まで移動させる作業である。吊り治具8は、横行手段2の保持部23に保持させる。なお、治具搬送作業中は、吊持手段3のスリング35に引張力が作用しない非吊持状態となる(
図5に示す判定手段41により非吊持状態であると判定される)ため、横行手段2および吊持手段3の移動(横行)が許容される。横行手段2を前後方向に横行させて吊り治具8を撤去対象の床版7の上方まで移動させたら、横行手段2の保持部23を左右方向に横行させて、床版7の重心を通る鉛直線上に吊り治具8の柱部85(吊り治具8の重心)が一致するように吊り治具8の位置調整を行う。吊り治具8の位置調整が完了したら、吊持手段3を前後方向に横行させるとともに、支持フレーム33を左右方向に横行させて、横行手段2の保持部23の中心とスリング35が一致するように吊持手段3の位置調整を行う。
【0066】
治具受替え作業は、横行手段2に保持された吊り治具8を吊持手段3に受け渡す作業である。治具受替え作業では、スリング35の下端部を吊り治具8の第一掛合部86に掛合し、吊り治具8の重量をスリング35に作用させた後、横行手段2の旋回体23cを回転させて掛合部23dと吊り治具8の第二掛合部87との掛合状態を解除する。
治具下降作業は、スリング35に吊り下げられた吊り治具8を、床版7まで下降させる作業である。治具下降作業は、吊持手段3の操出部36を作動させることにより行う。吊り治具8を床版7上に載置したら、スリング35の下端部を吊り治具8の第一掛合部86から取り外す。
治具固定作業は、吊り治具8を床版7に固定する作業である。治具固定作業は、例えば、床版7に貫設したPC鋼棒等の締結部品を吊り治具8に締着することにより行う。
スリング接続作業は、スリング35を搬送対象物(吊り治具8を取り付けた床版7)に接続する作業である。スリング接続作業では、スリング35の下端部を吊り治具8の第一掛合部86に掛合する。
なお、治具下降作業の完了後、スリング35の下端部を吊り治具8の第一掛合部86から取り外さない場合は、治具固定作業を行うことにより、スリング接続作業も完了する。
【0067】
吊上げ工程は、
図6(b)に示すように、吊持手段3を使用して搬送対象物(吊り治具8を取り付けた床版7)を上昇させる工程である。吊上げ工程は、吊持手段3の操出部36を作動させることにより行う。具体的には、操出部36の直動アクチュエータ36dのロッドを進出させてスライド部36bを前方に移動させる。
なお、吊り治具8の第一掛合部86の位置を搬送対象物の重心に合わせているので、吊上げ工程中の搬送対象物の姿勢を安定させることができる。
横行手段2の保持部23の下方まで搬送対象物を上昇させたら、保持部23の開口部23eに吊り治具8の柱部85を挿入させつつ、さらに搬送対象物を上昇させ、吊り治具8の掛合孔87a,87aの一端側に横行手段2掛合部23d,23dを挿入する。
なお、吊上げ工程中は、吊持手段3のスリング35に引張力が作用する吊持状態となる(判定手段41により吊持状態であると判定される)ため、横行手段2および吊持手段3の移動(横行)は阻止される。
【0068】
横行準備工程は、横行手段2に搬送対象物を保持させ、吊持手段3に吊持された搬送対象物を横行手段2に受け渡す工程である。横行準備工程では、横行手段2の旋回体23cを略90度回転させて掛合部23dを吊り治具8の第二掛合部87に掛合させ、その後、スリング35の下端部を吊り治具8の第一掛合部86から取り外す。本実施形態では、横行手段2の保持部23の中央部に吊り治具8の柱部85が入り込み、保持部23とスリング35とが同軸上に配置されるので、吊持手段3から横行手段2に搬送対象物を受け渡す際に、搬送対象物の姿勢を維持し易い。
なお、スリング35の下端部と吊り治具8の第一掛合部86との掛合状態を解除すると、搬送対象物の自重が横行手段2に作用し、吊持手段3のスリング35に引張力が作用しない非吊持状態となる(判定手段41により非吊持状態であると判定される)ため、横行準備工程後は、横行手段2および吊持手段3の移動(横行)が許容される。
【0069】
横行工程は、
図6(c)に示すように、横行手段2を前後方向に移動させる工程である。横行工程では、横行台車21を支持レール11に沿って走行させ、搬送対象物を作業エリアAの上方から準備エリアBの上方まで移動させる。
横行準備工程の完了後、横行工程を開始する前、または、横行工程の途中で、搬送対象物の向きを変更する回転工程を行ってもよい。
図6(c)に示すように、本実施形態では、搬送対象物の長手方向の寸法が、左右に隣り合うメイン支柱12b,12bの間隔よりも大きいため、横行工程の途中で、搬送対象物の短手方向が左右方向となるように搬送対象物を90度回転させている。回転工程は、横行手段2の旋回体23cを回転させることにより行う。
【0070】
回送工程は、
図7(a)に示すように、空荷状態の吊持手段3を搬送対象物の移動先(
図7(a)においては準備エリアB)の上方に移動させる工程である。回送工程では、吊持台車31を支持レール11に沿って走行させる。本実施形態では、横行工程の完了後に回送工程を行っているが、横行準備工程の完了後(すなわち、非吊持状態にあるとき)であれば、横行工程の前に回送工程を行ってもよいし、横行工程と同時に回送工程を行ってもよい。
横行手段2の移動先まで吊持手段3を回送させれば、横行手段2に保持された搬送対象物を下降させる際にも吊持手段3を利用することが可能となる。
【0071】
吊下げ準備工程は、搬送対象物の移動先の上方において吊持手段3のスリング35を搬送対象物に接続し、横行手段2に保持された搬送対象物を吊持手段3に受け渡す工程である。吊下げ準備工程では、スリング35の下端部を吊り治具8の第一掛合部86に掛合し、搬送対象物の重量をスリング35に作用させた後、横行手段2の旋回体23cを回転させて掛合部23dと吊り治具8の第二掛合部87との掛合状態を解除する。
【0072】
吊下げ工程は、
図7(b)に示すように、吊持手段3を使用して搬送対象物を下降させる工程である。本実施形態の吊下げ工程では、スリング35に吊り下げられた搬送対象物を、運搬車両6の荷台61まで下降させる。吊下げ工程は、吊持手段3の操出部36を作動させることにより行う。
搬送対象物を荷台61上に載置したら、床版7から吊り治具8を取り外し、吊持手段3を使用して吊り治具8を上昇させる。
吊下げ工程が完了したら、運搬車両6により床版7を準備エリアBから作業現場外に運び出す。
【0073】
床版撤去工程の後、引き続き床版設置工程を行う場合には、運搬車両6によって新設の床版を準備エリアBに運び込み、床版撤去工程と逆の手順により、新設の床版を作業エリアAまで移動させる。
すなわち、床版設置工程では、荷台61に載置された搬送対象物(吊り治具8を取り付けた新設の床版)を吊持手段3によって上昇させ、準備エリアBの上方において搬送対象物を吊持手段3から横行手段2に受け渡した後、横行手段2によって搬送対象物を作業エリアAの上方まで横行させる。
さらに、床版設置工程では、空荷状態の吊持手段3を横行手段2の上方まで回送させ、作業エリアAの上方において搬送対象物を横行手段2から吊持手段3に受け渡した後、吊持手段3によって搬送対象物を作業エリアAまで下降させる。
【0074】
なお、吊持手段3を支持レール11に沿って移動できない構成とした場合には、搬送対象物の位置が変わる度に搬送装置100全体を移動させる必要があるが、本実施形態の吊持手段3は、空荷状態であれば支持レール11に沿って移動できるため、支持レール11の長手方向に並んでいる複数の搬送対象物を順次移動させる場合であっても、支持架台1全体を都度移動させる必要はなく、効率良く作業することができる。
【0075】
<搬送装置の移動方法>
作業エリアAでの床版取替作業が完了したら、搬送装置100を移動させる。
図8および
図9は、搬送装置100の移動方法を説明する図である。
本実施形態の搬送装置移動方法は、支持架台1の形態を固定モードから可動モードに変更する第一のモード変更工程(
図8)と、搬送装置100を自走させる自走工程と、支持架台1の形態を可動モードから固定モードに変更する第二のモード変更工程(
図9)を備えている。なお、固定モードは、支持体12が床版に接地する形態であり、可動モードは、走行手段14のみが床版に接地する形態である。
【0076】
第一のモード変更工程には、第一の重心移動作業(
図8(a))、第二の重心移動作業(
図8(b))、受替え作業(
図8(c))が含まれている。
第一の重心移動作業は、
図8(a)に示すように、吊り治具8を保持した横行手段2を支持架台1の後部(第二の架台ユニット1B)に移動させるとともに、吊持手段3を支持架台1の後部(第二の架台ユニット1B)に移動させる作業である。すなわち、第一の重心移動作業は、支持架台1に搭載された設備ユニット(横行手段2、吊持手段3、電源ユニット5)および吊り治具8を第二の架台ユニット1Bに集約し、搬送装置100の重心位置を架台ユニット1B内に移動させる作業である。
第二の重心移動作業は、
図8(b)に示すように、支持架台1の支持レール11,11を下降させる作業である。すなわち、第二の重心移動作業は、支持架台1に搭載された設備ユニット(横行手段2、吊持手段3、電源ユニット5)および吊り治具8を支持レール11,11とともに下降させ、搬送装置100の重心位置を下側に移動させる作業である。本実施形態では、支持体12のメイン支柱12bの長さ調節機構(直動アクチュエータ)を作動させ、メイン支柱12bを縮めることで、支持レール11,11を下降させる。
受替え作業は、
図8(c)に示すように、搬送装置100の自重を支持体12から走行手段14に受け替える作業である。本実施形態では、第二支持脚16の補助支柱16cの長さ調節機構(直動アクチュエータ)を作動させ、補助支柱16cを伸ばすことで、搬送装置100の自重を支持体12から走行手段14に受け替える。走行手段14が床版(走行面)に接地したら、補助支柱16cをさらに伸ばし、支持体12を宙に浮かせた状態とする。受替え作業が完了すると、支持架台1の形態が可動モードに切り替わり、準備エリアBに配置した四つの走行手段14のみによって搬送装置100が支持される。
【0077】
自走工程は、
図9(a)に示すように、搬送装置100を移設先まで自走させる工程である。支持架台1の形態が可動モードであるときは、走行手段14を備えた第二の架台ユニット1Bによって搬送装置100が支持され、第一の架台ユニット1Aは床版から浮いた状態となる。したがって、準備エリアB側(
図8、
図9において右側)に向けて搬送装置100を自走させると、作業エリアAを走行せずに搬送装置100を移設できる。
【0078】
第二のモード変更工程は、
図9(b)に示すように、支持架台1の形態を固定モードに戻す工程である。第二のモード変更工程には、搬送装置100の自重を走行手段14から支持体12に受け替える作業と、支持架台1に搭載された設備ユニット(横行手段2、吊持手段3、電源ユニット5)および吊り治具8を支持レール11,11とともに上昇させる作業が含まれている。
本実施形態では、補助支柱16cを縮めることで、搬送装置100の自重を走行手段14から支持体12に受け替え、メイン支柱12bを伸ばすことで、設備ユニットとともに支持レール11,11を上昇させる。
第二のモード変更工程が完了すると、支持架台1の形態が固定モードに切り替わり、支持体12によって搬送装置100が支持される。
【0079】
このように、本実施形態の搬送装置移動方法によれば、作業エリアAを走行せずに搬送装置100を移設できるので、新設の床版上に敷鉄板を敷設する作業(新設の床版を防護する作業)を省略あるいは簡略化できる。
また、支持体12が長さ調節可能なメイン支柱12bを備えており、第二支持脚16が長さ調節可能な補助支柱16cを備えているので、固定モードと可動モードの切り替えが容易である。
【0080】
<搬送装置の搬入・搬出方法>
搬送装置100は、
図10および
図11に示すように、運搬車両6に搭載可能なユニットに分けて作業現場に搬入され、あるいは作業現場から搬出される。
図10は、搬送装置100を構成する第一の架台ユニット1Aを運搬車両6に積載した状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図11は、搬送装置100を構成する第二の架台ユニット1Bを運搬車両6に積載した状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
本実施形態では、支持架台1を第一の架台ユニット1Aと第二の架台ユニット1Bに分けて運搬車両6に積載する。図示は省略するが、設備ユニット(横行手段2、吊持手段3、電源ユニット5等)は支持架台1から取り外し、架台ユニット1A,1Bとは別の運搬車両6に積載する。
【0081】
図10(a)に示すように、架台ユニット1Aを運搬車両6の荷台61に積載する際は、横桁13を縮めて、架台ユニット1Aの幅寸法を運搬車両6の車幅よりも小さくする。また、
図10(b)に示すように、支持体12のメイン支柱12bを縮めるとともに、運搬用支持脚17の補助支柱17bを鉛直方向に沿う状態に切り替え、支持体12と運搬用支持脚17によって架台ユニット1Aを荷台61上に自立させる。
図11(a)に示すように、架台ユニット1Bを荷台61に積載する際は、前後の横桁13,13を縮めて、架台ユニット1Bの幅寸法を運搬車両6の車幅よりも小さくする。また、
図11(b)に示すように、支持体12のメイン支柱12bを縮めたうえで、四つの支持体12,12,…によって架台ユニット1Bを荷台61上に自立させる。
【0082】
上記のとおり、架台ユニット1A,1Bは、運搬車両6の荷台61上で自立するため、架台ユニット1A,1Bを運搬するにあたり、荷台61上に運搬用架台(架台ユニット1A,1Bを支える架台)設置する必要がない。
【0083】
<搬送装置の組立方法>
搬送装置100は、クレーンを使用せずに組み立てることができる。
以下、
図12~
図16を参照して、搬送装置100の組立方法を説明する。
図12~
図16は、搬送装置100の組立方法を説明する図である。
本実施形態の組立方法は、支持架台1を組み立てる架台設置工程(
図12~
図14、
図15(a)(b))と、支持架台1に設備ユニットを搭載する設備組立工程(
図15(c)、
図16)とを備えている。
【0084】
架台設置工程は、架台ユニット1A,1Bを作業現場に運び込む工程として、第一の架台ユニット1Aを仮置きする第一の仮置き作業(
図12,
図13)と、第二の架台ユニット1Bを仮置きする第二の仮置き作業(
図14)とを備えている。また、架台設置工程は、支持架台1を組み立てる工程として、架台ユニット1A,1Bを連結する連結作業(
図15(a))と、連結された架台ユニット1A,1Bを拡幅する拡幅作業(
図15(b)とを備えている。
【0085】
第一の仮置き作業では、
図12(a)に示すように、まず、運搬車両6の荷台61に積載した第一の架台ユニット1Aを作業現場に搬入する。架台ユニット1Aは、荷台61上に自立させた状態で運搬する。架台ユニット1Aに備わる本設の支持体12は二つであるが、支持体12に加えて二つの運搬用支持脚17,17を備えているため、組立後と同様の姿勢のまま運搬することができる。
続いて、
図12(b)に示すように、架台ユニット1Aに収納されている荷役用支持脚(第一支持脚15)を使用時の形態に変化させる。具体的には、ブラケット15a(
図1参照)に収容された張出部15bを引き出すとともに、張出部15bの端部において横軸回りに補助支柱15cを回転させ、補助支柱15cを鉛直方向に沿う状態にする。
その後、
図12(c)に示すように、補助支柱15cを伸し、補助支柱15cの下端が床版(運搬車両6の走行面)に接地したら、補助支柱15cをさらに伸ばし、架台ユニット1Aを荷台61から浮かせた状態にする。つまり、架台ユニット1Aに備わる荷役用支持脚(第一支持脚15)によって架台ユニット1Aを床版上に自立させる。
架台ユニット1Aを荷台61から浮かせたら、運搬車両6を移動させる(
図13(a)参照)。
続いて、
図13(b)に示すように、第一支持脚15の補助支柱15cを縮めて、支持体12と運搬用支持脚17を床版に接地させる。
その後、
図13(c)に示すように、第一支持脚15の補助支柱15cを収納時の形態(支持レール11に沿う状態)に変化させ、支持体12と運搬用支持脚17によって架台ユニット1Aを床版上に自立させる。架台ユニット1Aに備わる本設の支持体12は二つであるが、支持体12に加えて二つの運搬用支持脚17,17を備えているため、組立後と同様の姿勢で仮置きすることができる。
【0086】
第二の仮置き作業では、
図14(a)に示すように、まず、運搬車両6の荷台61に積載した第二の架台ユニット1Bを作業現場に搬入する。架台ユニット1Bは、支持体12によって荷台61上に自立している。
続いて、
図14(b)に示すように、第二の架台ユニット1Bに収納されている荷役用支持脚(第二支持脚16)を使用時の形態に変化させる。具体的には、ブラケット16a(
図1参照)に収容された張出部16bを引き出す。
その後、
図14(c)に示すように、補助支柱16cを伸し、走行手段14が床版(走行面)に接地したら、補助支柱16cをさらに伸ばし、第二の架台ユニット1Bを荷台61から浮かせた状態にする。つまり、架台ユニット1Bに備わる荷役用支持脚(第二支持脚16)によって架台ユニット1Bを床版上に自立させる。架台ユニット1Bを荷台61から浮かせたら、運搬車両6を移動させる。
続いて、
図15(a)に示すように、第二の架台ユニット1Bを走行手段14で自走させて、第一の架台ユニット1Aに隣接する位置まで移動させ、さらに、第二支持脚16の補助支柱16cを縮めて、第二の架台ユニット1Bの高さを第一の架台ユニット1Aの高さに合わせる。
なお、走行手段14を備えた第二の架台ユニット1Bは、床版(運搬車両6の走行面)上の任意の位置に移動できるので、例えば、第一の架台ユニット1Aから離れた場所で運搬車両6から下ろした後、架台ユニット1Aに隣接する位置まで移動させてもよい。
【0087】
連結作業では、架台ユニット1Aの作業側レール部11A,11A(
図1参照)と架台ユニット1Bの準備側レール部11B,11B(
図1参照)とを連結し、支持架台1を形成する。また、架台ユニット1Aの運搬用支持脚17の補助支柱17bを収納時の形態(支持レール11に沿う状態)に変化させる。
拡幅作業では、まず、支持体12のメイン支柱12bを伸ばし、支持架台1を床版から浮かせた状態にする。その後、
図15(b)に示すように、走行手段14の向きを支持レール11に直交する方向(左右方向)に変更する。続いて、支持体12のメイン支柱12bを縮めるか、あるいは、第二支持脚16の補助支柱16cを伸ばして、走行手段14を床版に接地させる。走行手段14が床版に接地したら、補助支柱16cをさらに伸ばし、支持体12を床版から浮かせ、支持架台1の形態を可動モードに切り替える。その後、走行手段14を左右方向に走行させることで、支持レール11,11の間隔を広げ、横桁13を伸ばす。支持架台1の形態を可動モードにすれば、走行手段14によって支持架台1が支持されるので、支持レール11,11の間隔調節をスムーズに行うことができる。
拡幅作業が完了したら、第二支持脚16の補助支柱16cを縮めるか、あるいは、支持体12のメイン支柱12bを伸ばし、支持体12によって支持架台1を床版上に自立させ、走行手段14を床版から浮かせた状態にする。その後、走行手段14の向きを支持レール11に沿う方向(前後方向)に変更する。
【0088】
このように、支持架台1は、横桁13の長さを調節することによって支持レール11,11の間隔を変更できる。したがって、
図10および
図11に示すように、架台ユニット1A,1Bの状態で運搬車両6の荷台61に積載するときは、横桁13を縮めて作業側レール部11A,11Aまたは準備側レール部11B,11Bの間隔を狭めることで、車幅寸法に収まるコンパクトな形態を選択できる。一方、搬送装置100を共用するときは、
図2に示すように、横桁13を伸ばして支持レール11,11の間隔を広げることで、支持架台1の安定性を高めることが可能となる。
【0089】
設備組立工程は、支持架台1と、荷台61に設備ユニットを積載した運搬車両6とを利用して搬送装置100を組み立てる工程である。
本実施形態の設備組立工程は、吊持手段3を支持架台1に設置する第一の設置作業(
図15(c))と、横行手段2を支持架台1に設置する第二の設置作業(
図16(a))と、電源ユニット5を支持架台1に設置する第三の設置作業(
図16(b))とを備えている。
支持架台1に搭載する設備ユニット(横行手段2、吊持手段3および電源ユニット5)および吊り治具8は、作業順に並べて運搬車両6の荷台61に積載することが好ましい。本実施形態では、荷台61の後部から前部に向かって、吊持手段3、横行手段2、吊り治具8、電源ユニット5の順に並べている。
【0090】
第一の設置作業では、まず、吊持手段3を積載した運搬車両6の荷台61の後端部を支持架台1の内部空間内に進入させる(車両進入工程)。次に、荷台61上の吊持手段3の高さに合わせて支持架台1の高さ(支持レール11の高さ)を調整する(高さ調整工程)。具体的には、支持レール11の上側軌条11b(
図3(b)参照)の高さを、吊持手段3の駆動輪31aおよび従動輪31b(
図4参照)の高さに合わせる。その後、吊持手段3を支持架台1に取り付ける(取付け工程)。本実施形態では、荷台61上の吊持手段3を前方に移動させ、支持レール11の上側軌条11bに吊持手段3を乗り込ませることで、吊持手段3を支持架台1に取り付ける。なお、運搬車両6を後進(荷台61を支持架台1の前方に移動)させることで、吊持手段3を支持レール11に乗り込ませてもよい。
【0091】
第二の設置作業では、
図16(a)に示すように、支持体12のメイン支柱12bを伸ばし、支持レール11,11を上昇させる。次に、横行手段2を積載した運搬車両6を後進(荷台61を支持架台1の前方に移動)させ、荷台61を支持架台1の内部空間内に進入させる(車両進入工程)。次に、荷台61上の横行手段2の高さに合わせて支持架台1の高さ(支持レール11の高さ)を調整する(高さ調整工程)。具体的には、支持レール11の下側軌条11c(
図3(b)参照)の高さを、横行手段2の駆動輪21aおよび従動輪21b(
図4参照)の高さに合わせる。その後、横行手段2を支持架台1に取り付ける(取付け工程)。本実施形態では、荷台61上の横行手段2を前方に移動させ、支持レール11の下側軌条11cに横行手段2を乗り込ませることで、横行手段2を支持架台1に取り付ける。なお、運搬車両6を後進(荷台61を支持架台1の前方に移動)させることで、横行手段2を支持レール11に乗り込ませてもよい。
横行手段2を支持架台1に取り付けたら、支持体12のメイン支柱12bを伸ばし、支持レール11,11を上昇させる。その後、吊り治具8を積載した運搬車両6を後進させ、荷台61を支持架台1の内部空間内に進入させる(車両進入工程)。具体的には、横行手段2の保持部23(
図4参照)の直下に吊り治具8の第二掛合部87(
図4参照)を位置させる。次に、荷台61上の吊り治具8の高さに合わせて支持架台1の高さ(支持レール11の高さ)を調整する(高さ調整工程)。具体的には、支持体12のメイン支柱12bを縮め、支持レール11,11とともに横行手段2を下降させ、横行手段2の保持部23(
図4参照)に柱部85(
図4参照)を入り込ませつつ、吊り治具8の第二掛合部87を保持部23の掛合部23d(
図4参照)に掛合させる。吊り治具8を横行手段2に保持させたら、横行手段2を荷台61よりも前方に移動させる。
【0092】
第三の設置作業では、
図16(b)に示すように、電源ユニット5を積載した運搬車両6を後進(荷台61を支持架台1の前方に移動)させ、荷台61を支持架台1の内部空間内に進入させる(車両進入工程)。次に、荷台61上の電源ユニット5の高さに合わせて支持架台1の高さ(支持レール11の高さ)を調整する(高さ調整工程)。具体的には、支持体12のメイン支柱12bを縮め、支持レール11,11を下降させる。支持レール11の端部に電源ユニット5を位置させたら、電源ユニット5を支持架台1に取り付ける(取付け工程)。
その後、運搬車両6を移動させ、
図16(c)に示すように、支持体12のメイン支柱12bを伸ばすと、床版を搬出入可能な搬送装置100が得られる。
【0093】
上記のとおり、設備組立工程では、荷台61に積載された設備ユニット(横行手段2、吊持手段3および電源ユニット5)の高さに支持架台1の高さを合わせた状態で、支持架台1に設備ユニットを近接させることができるので、設備ユニットをクレーンで吊り上げることなく支持架台1に取り付けることができる。
【0094】
<搬送装置の解体方法>
搬送装置100は、クレーンを使用せずに解体(分解)することができる。
図示は省略するが、搬送装置100の解体方法は、組立方法と逆の手順で行う。解体途中の様子は、
図12~
図16に示す組立途中の様子と同様である。
すなわち、本実施形態の解体方法は、支持架台1から設備ユニットを取り外す設備分解工程と、支持架台1を分解する架台分解工程とを備える。
【0095】
設備分解工程は、支持架台1と運搬車両6とを利用して搬送装置100から設備ユニット(横行手段2、吊持手段3および電源ユニット5)を取り外す工程であり、車両進入工程と、高さ調整工程と、取外し工程とを備える。
車両進入工程では、運搬車両6の荷台61の少なくとも一部を支持架台1の内部空間内に進入させる。
高さ調整工程では、支持架台1の高さ(すなわち、支持レール11の高さ)を調整して、支持架台1上の設備ユニットの高さを荷台61の高さに合わせる。
取外し工程では、荷台61の高さに合わせた設備ユニットを支持架台1から取り外す。
このような手順であれば、設備ユニットの高さを荷台61の高さを合わせた状態で、設備ユニットを荷台61に近接させることができるので、支持架台1から取り外した設備ユニットをクレーンで吊り上げることなく荷台61に積載することができる。
【0096】
架台分解工程は、支持架台1の幅を狭める縮幅作業と、架台ユニット1A,1Bの連結を解除する分離作業と、架台ユニット1A,1Bを運搬車両6の荷台61に積み込む積載作業とを備える。
縮幅作業では、支持架台1の形態を可動モードに切り替えたうえで、支持レール11,11の間隔を狭める。
第一の架台ユニット1Aの積載作業では、架台ユニット1Aから床版(運搬車両6の走行面)に荷役用支持脚(第一支持脚15,15)を下ろし、床版上に立設された荷役用支持脚によって架台ユニット1Aを上昇させる。支持体12の下端の高さが荷台61の上面の高さを上回ったら、架台ユニット1Aの内部空間内に運搬車両6の荷台61を進入させる。その後、荷役用支持脚によって架台ユニット1Aを下降させると、架台ユニット1Aを荷台61上に載置することができる。
第二の架台ユニット1Bの積載作業では、架台ユニット1Bから床版(運搬車両6の走行面)に荷役用支持脚(第二支持脚16,16)を下ろし、床版上に立設された荷役用支持脚によって架台ユニット1Bを上昇させる。支持体12の下端の高さが荷台61の上面の高さを上回ったら、架台ユニット1Bの内部空間内に運搬車両6の荷台61を進入させる。その後、荷役用支持脚によって架台ユニット1Bを下降させると、架台ユニット1Bを荷台61上に載置することができる。
【0097】
<搬送装置の作用効果>
搬送装置100は、吊持手段3のスリング35に吊られた搬送対象物をそのまま横行させるのではなく、吊持手段3に吊持された搬送対象物を横行手段2に受け渡した後、横行手段2によって搬送対象物を横行させるものである。搬送装置100は、以下のような作用効果を奏する。
(1)搬送対象物を吊った状態にあるときは横行させないという作業手順を遵守することができる。
(2)作業エリアAに立設される支持体12と準備エリアBに立設される支持体12とによって支持レール11が支持されるので、支持体12の本数や間隔を適宜設定することにより、支持レール11の長さ(すなわち、搬送対象物の横行可能距離)を大きくすることができる。また、搬送装置100(支持架台1)を可動モードにすると、準備エリアBに配置した走行手段14によって搬送装置100が支持されるので、作業エリアAを走行せずに搬送装置100を移設できる。
(3)クレーンを使用せずに荷台61への架台ユニット1A,1Bの積み込みまたは荷台61からの架台ユニット1A,1Bの積み下ろしが可能となる。
(4)クレーンを使用することなく支持架台1に設備ユニットを脱着することができる。
(5)施工条件に応じて搬送装置100の諸元やレイアウトを容易に変更することができる。
(6)搬送対象物を横行させる際の安定性を高めることが可能となる。
(7)スリング35に吊持されていない搬送対象物を横行させることができるため、スリング35に吊り下げたまま横行させる場合に比べて、横行時に大きな揺れが発生することを抑制できる。
(8)吊り治具8を使用すると、横行手段2と吊持手段3との間で搬送対象物を受け渡す作業を効率良く行うことができる。
【符号の説明】
【0098】
100 搬送装置(工事用設備)
1 支持架台
1A 架台ユニット
1B 架台ユニット
11 支持レール
11A 作業側レール部
11B 準備側レール部
12 支持体
12a ブラケット
12b メイン支柱
13 横桁
14 走行手段
15 第一支持脚(荷役用支持脚)
15a ブラケット
15c 補助支柱
16 第二支持脚(荷役用支持脚)
16a ブラケット
16c 補助支柱
17 運搬用支持脚
2 横行手段(設備ユニット)
21 横行台車
21a 駆動輪
21b 従動輪
22 台車用駆動源
23 保持部
23d 掛合部
23e 開口部
24 保持部用駆動源
3 吊持手段(設備ユニット)
31 吊持台車
31a 駆動輪
31b 従動輪
32 台車用駆動源
33 支持フレーム
33a 支持梁
33e スリット
34 フレーム用駆動源
35 スリング
36 操出部
36a 固定シーブ
36b スライド部
361 スリング接続部
362 シーブ支持部
363 軸部
36d 直動アクチュエータ
37 ロードセル
4 制御装置
41 判定手段
42 横行制御手段
5 電源ユニット(設備ユニット)
51 台座
52 発電機
6 運搬車両
61 荷台
7 床版(搬送対象物)
8 吊り治具(搬送対象物)
81 基部
82 補強部
83 荷重分散部
84 脚部
85 柱部
86 第一掛合部
87 第二掛合部
87a 掛合孔
A 作業エリア
B 準備エリア
【要約】
【課題】横行手段と吊持手段との間で荷物を受け渡す作業を効率良く行うことができる吊り治具を提供すること。
【解決手段】
横行手段2と吊持手段3との間で荷物(床版7)を受け渡し可能にするために荷物に取り付けられる吊り治具8であって、吊持手段3のスリング35を掛合可能な第一掛合部86と横行手段2の保持部23に掛合可能な第二掛合部87とを備える。好ましくは、荷物に取り付けられる基部81と、基部81の中央部に配置された柱部85とを備え、第一掛合部86は、柱部85の上部に形成されており、第二掛合部87は、柱部85の下部に形成されている。
【選択図】
図4