(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】伝熱管用止栓治具および熱交換器、排煙処理装置、伝熱管の漏洩検出方法
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20240606BHJP
F28D 1/047 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F28F9/02 301Z
F28F9/02 J
F28D1/047 B
(21)【出願番号】P 2023141513
(22)【出願日】2023-08-31
【審査請求日】2023-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315016723
【氏名又は名称】三菱重工パワー環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 素明
(72)【発明者】
【氏名】徳重 信
(72)【発明者】
【氏名】吉田 輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇雄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】磯 英也
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特許第7221436(JP,B1)
【文献】米国特許第03777110(US,A)
【文献】実開昭56-109625(JP,U)
【文献】特開2015-160288(JP,A)
【文献】国際公開第2011/104918(WO,A1)
【文献】特開2014-030843(JP,A)
【文献】特開昭52-108548(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191600(WO,A1)
【文献】中国実用新案第209961055(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F9/02
F23J15/00-15/08
G01M3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスパスを区画するダクトケーシングと、熱媒体の給排部と作業孔が前記ダクトケーシングの外側に位置するように前記ダクトケーシングに設けられるヘッダと、前記ダクトケーシングの内部に配置されて端部が前記ヘッダに連結される伝熱管とを備える熱交換器において、
前記ダクトケーシングの外側から前記作業孔および前記伝熱管の端部を閉塞する伝熱管用止栓治具であって、
前記伝熱管の端部に嵌入して閉止可能な止栓プラグと、
前記作業孔に嵌入して閉止可能なヘッダプラグと、
一端部に前記止栓プラグが連結されて他端部側に前記ヘッダプラグが軸方向に沿って移動自在に支持される連結軸と、
を備
え、
前記ヘッダプラグと前記連結軸は、互いにねじ係合することで軸方向に沿って相対移動自在である、
伝熱管用止栓治具。
【請求項2】
前記止栓プラグは、円錐台形状をなして前記連結軸の一端部が貫通するシリコンゴム製の止栓プラグ本体と、外径が前記止栓プラグ本体の外径より小さくて前記止栓プラグ本体を貫通した前記連結軸の一端部に固定される固定部とを有し、前記連結軸は、ねじ軸と、前記ねじ軸の一端部側に固定されて前記固定部と共に前記止栓プラグ本体を挟持するプラグ押えとを有する、
請求項1に記載の伝熱管用止栓治具。
【請求項3】
前記ヘッダプラグは、ヘッダプラグ本体と、前記ヘッダプラグ本体の先端部に設けられて前記作業孔の内周部に設けられた雌ねじ部に螺合する雄ねじ部とを有する、
請求項1に記載の伝熱管用止栓治具。
【請求項4】
前記ヘッダプラグは、前記雄ねじ部が平行ねじであり、前記ヘッダの外面にシール部材を介して接触するフランジ部を有する、
請求項3に記載の伝熱管用止栓治具。
【請求項5】
前記ヘッダプラグは、円筒形状をなし、前記連結軸の他端部が螺合する第1雌ねじ部と、前記第1雌ねじ部より大径の第2雌ねじ部を有し、前記ヘッダの外側から前記ヘッダプラグの前記第2雌ねじ部に螺合するリーク防止蓋が設けられる、
請求項1に記載の伝熱管用止栓治具。
【請求項6】
前記リーク防止蓋は、前記ヘッダプラグを貫通した前記連結軸の他端部との接触を阻止する空間部が設けられる、
請求項5に記載の伝熱管用止栓治具。
【請求項7】
請求項1に記載の伝熱管用止栓治具が装着される熱交換器。
【請求項8】
排ガスの熱の一部を回収する熱回収装置と、
熱回収後の前記排ガスに含まれるばいじんを除去する集塵装置と、
集塵後の前記排ガスに含まれる硫黄酸化物を除去する脱硫装置と、
脱硫後の前記排ガスを再加熱する再加熱装置と、
を備え、
請求項7に記載の熱交換器が前記熱回収装置と前記再加熱装置の少なくともいずれか一方に適用される、
排煙処理装置。
【請求項9】
請求項7に記載の熱交換器において、
前記伝熱管用止栓治具の前記ヘッダプラグにより前記作業孔を閉止したままで前記止栓プラグを前記伝熱管の端部から抜き取るステップと、
前記ヘッダおよび前記伝熱管を密閉状態として加圧するステップと、
前記ヘッダおよび前記伝熱管の空間部の圧力低下の有無を検出するステップと、
を有する伝熱管の漏洩検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝熱管用止栓治具、熱交換器、排煙処理装置、伝熱管の漏洩検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電設備などに設けられる排煙処理装置は、熱回収装置と、電気集塵装置と、脱硫装置と、再加熱装置などから構成される。ボイラから排出される排ガスは、電気集塵装置により含有するばいじんが除去され、脱硫装置により含有する亜硫酸ガスが除去される。このとき、熱回収装置は、排ガスから熱を回収する。再加熱装置は、熱回収装置が回収した熱により脱硫後の排ガスを再加熱し、白煙の排出を抑制する。
【0003】
熱回収装置や再加熱装置としての熱交換器は、ケーシングと、入口ヘッダと、出口ヘッダと、複数の伝熱管とを備える。入口ヘッダと出口ヘッダは、ケーシングに固定され、複数の伝熱管は、ケーシングの内部に配置され、一端部が入口ヘッダに連結され、他端部が出口ヘッダに連結される。そのため、入口部からケーシングの内部に導入された排ガスと、複数の伝熱管の内部を流れる熱媒体との間で熱交換を行う。
【0004】
上述した熱交換器にて、排ガスは、ばいじんを含んでおり、伝熱管は、排ガスに含まれるばいじんが接触することで摩耗が発生し、熱媒体の漏洩が発生することがある。また、排ガスは、硫黄酸化物を含んでおり、伝熱管は、漏洩した熱媒体の影響を受けて腐食する。伝熱管が損傷すると、損傷した伝熱管の入口部と出口部を止栓して使用不能とする。このような熱交換器としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
損傷した伝熱管を止栓する場合、作業者は、まず、入口ヘッダ(または、出口ヘッダ)に設けられた作業孔から、作業工具を用いて止栓を入口ヘッダの内部に挿入し、伝熱管の端部に押し込む。作業者は、次に、作業工具を挿入した作業孔に隣接する作業孔から溶接トーチを差し込み、止栓を伝熱管の端部に溶接により固定する。このように伝熱管の止栓作業は、作業者が入口ヘッダの内部の狭い空間で行われることから、作業が高度で困難なものとなるという課題がある。そして、伝熱管の端部への止栓の溶接が不十分であると、熱媒体の漏洩を防止することができない。
【0007】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、止栓作業の作業性の向上を図る伝熱管用止栓治具および熱交換器、排煙処理装置、伝熱管の漏洩検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の伝熱管用止栓治具は、ガスパスを区画するダクトケーシングと、熱媒体の給排部と作業孔が前記ダクトケーシングの外側に位置するように前記ダクトケーシングに設けられるヘッダと、前記ダクトケーシングの内部に配置されて端部が前記ヘッダに連結される伝熱管とを備える熱交換器において、前記ダクトケーシングの外側から前記作業孔および前記伝熱管の端部を閉塞する伝熱管用止栓治具であって、前記伝熱管の端部に嵌入して閉止可能な止栓プラグと、前記作業孔に嵌入して閉止可能なヘッダプラグと、一端部に前記止栓プラグが連結されて他端部側に前記ヘッダプラグが軸方向に沿って移動自在に支持される連結軸と、を備える。
【0009】
また、本開示の熱交換器は、前記伝熱管用止栓治具が装着される。
【0010】
また、本開示の排煙処理装置は、排ガスの熱の一部を回収する熱回収装置と、熱回収後の前記排ガスに含まれるばいじんを除去する集塵装置と、集塵後の前記排ガスに含まれる硫黄酸化物を除去する脱硫装置と、脱硫後の前記排ガスを再加熱する再加熱装置と、を備え、前記熱交換器が前記熱回収装置と前記再加熱装置の少なくともいずれか一方に適用される。
【0011】
また、本開示の伝熱管の漏洩検出方法は、前記熱交換器において、前記伝熱管用止栓治具の前記ヘッダプラグにより前記作業孔を閉止したままで前記止栓プラグを前記伝熱管の端部から抜き取るステップと、前記ヘッダおよび前記伝熱管を密閉状態として加圧するステップと、前記ヘッダおよび前記伝熱管の空間部の圧力低下の有無を検出するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の伝熱管用止栓治具および熱交換器、排煙処理装置、伝熱管の漏洩検出方法によれば、止栓作業の作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態の排煙処理装置を表す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の熱回収装置および再加熱装置を表す概略構成図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の熱交換器を表す概略図である。
【
図6】
図6は、入口ヘッダのプラグ取付孔を表す断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の止栓治具が装着された入口ヘッダを表す断面図である。
【
図8】
図8は、止栓治具におけるヘッダプラグを表す断面図である。
【
図9】
図9は、止栓治具における止栓プラグを表す断面図である。
【
図13】
図13は、止栓治具が装着された入口ヘッダを表す断面図である。
【
図14】
図14は、伝熱管の漏洩検出方法を表すフローチャートである。
【
図15】
図15は、伝熱管の漏洩検出方法を説明するための概略図である。
【
図16】
図16は、伝熱管の漏洩検出方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0015】
[排煙処理装置]
図1は、本実施形態の排煙処理装置を表す概略構成図である。
【0016】
本実施形態において、
図1に示すように、排煙処理装置100は、各種の発電プラントや工場などにて、ボイラ111から排出される排ガス(排煙)Gが煙突112から放出される過程で、排ガスGに含まれるばいじんや硫黄酸化物(SOx)を除去するものである。
【0017】
排煙処理装置100は、熱回収装置101と、電気集塵装置102と、送風装置(誘引通風機)103と、脱硫装置104と、再加熱装置105と、送風装置(脱硫通風機)106とを備える。送風装置103,106が駆動することで、ボイラ111から排出される排ガスGは、熱回収装置101、電気集塵装置102、脱硫装置104、再加熱装置105を通って煙突112に送られる。なお、熱回収装置101の上流側に脱硝装置を設けてもよい。
【0018】
ボイラ111は、2つの排ガス通路121a,121bが設けられる。排ガス通路121aは、熱回収装置101aと電気集塵装置102aと送風装置103aが設けられ、排ガス通路121bは、熱回収装置101bと電気集塵装置102bと送風装置103bが設けられる。2つの排ガス通路121a,121bは、下流側が排ガス通路121cに合流する。排ガス通路121cは、脱硫装置104と再加熱装置105が設けられる。排ガス通路121cは、下流側が2つの排ガス通路121d,121eに分岐する。排ガス通路121dは、送風装置106aが設けられ、排ガス通路121eは、送風装置106bが設けられる。2つの排ガス通路121d,121eは、下流側が排ガス通路121fに合流する。排ガス通路121fは、煙突112に連結される。また、排ガス通路121cにおける脱硫装置104の上流側と排ガス通路121fとを連結する排ガス通路121gが設けられる。排ガス通路121gは、開閉弁122が設けられる。
【0019】
熱回収装置101(101a,101b)は、ボイラ111から排出された排ガスG(約140℃)と熱媒体(水など)との間で熱交換することで、排ガスGから熱を回収する。熱回収装置101で熱回収された排ガスG(約90℃)は、電気集塵装置102(102a,102b)に導入される。電気集塵装置102は、排ガスGからばいじんを除去する。
【0020】
電気集塵装置102でばいじんが除去された排ガスGは、脱硫装置104に導入される。脱硫装置104は、石灰石(CaCO3)により、排ガスG中の硫黄酸化物を吸収除去し、副生成物として石膏(CaSO4.2H2O)を生成する。脱硫装置104は、ミストエリミネータ123を有する。ミストエリミネータ123は、脱硫後の排ガスGからミストを除去する。
【0021】
脱硫装置104により脱硫処理された排ガスG(約50℃)は、ガスガスヒータの再加熱装置105に導入される。再加熱装置105は、熱回収装置101との間で熱媒体を循環する過程で、熱回収装置101により回収された熱により排ガスGを再加熱する。熱回収装置101と再加熱装置105とは、第1熱媒体循環ラインL11および第2熱媒体循環ラインL12により連結される。第1熱媒体循環ラインL11は、循環ポンプ131が設けられる。循環ポンプ131を駆動することで、再加熱装置105の熱媒体を第1熱媒体循環ラインL11により熱回収装置101に戻す。第2熱媒体循環ラインL12は、ヒータ132が設けられる。循環ポンプ131により熱回収装置101の熱媒体を第2熱媒体循環ラインL12により再加熱装置105に供給する。この過程で、必要に応じてヒータ132を作動することで、熱媒体を加熱する。
【0022】
排ガスGは、脱硫装置104で脱硫処理されることで温度が低下し、低温のままでは拡散しにくく白煙になるおそれがある。再加熱装置105は、拡散および白煙低減を目的として排ガスGを再加熱することで昇温(約90℃)させ、煙突112から大気に放出する。
【0023】
[熱回収装置および再加熱装置の構成]
図2は、本実施形態の熱回収装置および再加熱装置を表す概略構成図である。
【0024】
図2に示すように、熱回収装置101および再加熱装置105は、完全向流方式の熱交換器である。但し、熱回収装置101および再加熱装置105は、高温予熱向流方式、高温予熱並流方式、中温予熱方式などの他の方式の熱交換器であってもよい。
【0025】
熱回収装置101は、高温熱回収部141と、中温熱回収部142と、低温熱回収部143とを備える。高温熱回収部141と中温熱回収部142と低温熱回収部143は、排ガス通路121a(121b)に配置される。
【0026】
高温熱回収部141は、複数の第1伝熱管151を有する。第1伝熱管151は、排ガス通路121a(121b)に排ガスGの流れ方向に沿って配置される。第1伝熱管151は、排ガスGの流れ方向の上流側に位置する端部151aが第1ヘッダ152に連結され、排ガスGの流れ方向の下流側に位置する端部151bが第2ヘッダ153に連結される。
【0027】
中温熱回収部142は、高温熱回収部141より排ガスGの流れ方向の下流側に配置される。中温熱回収部142は、複数の第2伝熱管154を有する。第2伝熱管154は、排ガス通路121a(121b)に排ガスGの流れ方向に沿って配置される。第2伝熱管154は、排ガスGの流れ方向の上流側に位置する端部154aが第1ヘッダ155に連結され、排ガスGの流れ方向の下流側に位置する端部154bが第2ヘッダ156に連結される。
【0028】
低温熱回収部143は、中温熱回収部142より排ガスGの流れ方向の下流側に配置される。低温熱回収部143は、複数の第3伝熱管157を有する。第3伝熱管157は、排ガス通路121a(121b)に排ガスGの流れ方向に沿って配置される。第3伝熱管157は、排ガスGの流れ方向の上流側に位置する端部157aが第1ヘッダ158に連結され、排ガスGの流れ方向の下流側に位置する端部157bが第2ヘッダ159に連結される。
【0029】
再加熱装置105は、高温加熱部161と、中温加熱部162と、低温加熱部163とを備える。高温加熱部161と中温加熱部162と低温加熱部163は、排ガス通路121cに配置される。
【0030】
高温加熱部161は、複数の第1伝熱管171を有する。第1伝熱管171は、排ガス通路121cに排ガスGの流れ方向に沿って配置される。第1伝熱管171は、排ガスGの流れ方向の下流側に位置する端部171aが第1ヘッダ172に連結され、排ガスGの流れ方向の上流側に位置する端部171bが第2ヘッダ173に連結される。
【0031】
中温加熱部162は、高温加熱部161より排ガスGの流れ方向の上流側に配置される。中温加熱部162は、複数の第2伝熱管174を有する。第2伝熱管174は、排ガス通路121cに排ガスGの流れ方向に沿って配置される。第2伝熱管174は、排ガスGの流れ方向の下流側に位置する端部174aが第1ヘッダ175に連結され、排ガスGの流れ方向の上流側に位置する端部174bが第2ヘッダ176に連結される。
【0032】
低温加熱部163は、中温加熱部162より排ガスGの流れ方向の上流側に配置される。低温加熱部163は、複数の第3伝熱管177を有する。第3伝熱管177は、排ガス通路121cに排ガスGの流れ方向に沿って配置される。第3伝熱管177は、排ガスGの流れ方向の下流側に位置する端部177aが第1ヘッダ178に連結され、排ガスGの流れ方向の上流側に位置する端部177bが第2ヘッダ179に連結される。
【0033】
第1熱媒体循環ラインL11は、上流側の端部が再加熱装置105における低温加熱部163の第2ヘッダ179に接続され、下流側の端部が熱回収装置101における低温熱回収部143の第2ヘッダ159に接続される。また、第2熱媒体循環ラインL12は、上流側の端部が熱回収装置101における高温熱回収部141の第1ヘッダ152に接続され、下流側の端部が高温加熱部161の第1ヘッダ172に接続される。
【0034】
高温熱回収部141の第2ヘッダ153と中温熱回収部142の第1ヘッダ155は、第1接続ラインL21よりに接続される。中温熱回収部142の第2ヘッダ156と低温熱回収部143の第1ヘッダ158は、第2接続ラインL22よりに接続される。また、高温加熱部161の第2ヘッダ173と中温加熱部162の第1ヘッダ65は、第1接続ラインL23よりに接続される。中温加熱部162の第2ヘッダ156と低温加熱部163の第1ヘッダ178は、第2接続ラインL24よりに接続される。
【0035】
また、第1熱媒体循環ラインL11は、循環ポンプ131とドレンタンク133が設けられ、第2熱媒体循環ラインL12は、ヒータ132が設けられる。そして、蒸気供給源(図示略)からヒータ132、ドレンタンク133に対して蒸気ラインL13が設けられ、ドレンタンク133に蒸気ドレンラインL14が設けられる。そして、蒸気ラインL13は、開閉弁134が設けられる。
【0036】
そのため、再熱された低温の熱媒体は、第1熱媒体循環ラインL11から熱回収装置101に供給される。熱回収装置101では、熱媒体が低温熱回収部143、中温熱回収部142、高温熱回収部141の順に流れ、各伝熱管151,154,157を流れるときに排ガスGの熱を回収する。排ガスGの熱を回収した熱媒体は、第2熱媒体循環ラインL12に排出される。熱回収された高温の熱媒体は、第2熱媒体循環ラインL12から再加熱装置105に供給される。再加熱装置105では、熱媒体が高温加熱部161、中温加熱部162、低温加熱部163の順に流れ、各伝熱管171,174,177を流れるときに排ガスGを再加熱する。排ガスGを再加熱した熱媒体は、第1熱媒体循環ラインL11に排出される。
【0037】
[熱交換器の構成]
本実施形態では、本発明の熱交換器が上述した排煙処理装置100における熱回収装置101や再加熱装置105に適用されたものとして説明する。但し、本発明の熱交換器は、排煙処理装置100における熱回収装置101や再加熱装置105に限定されるものではない。
【0038】
【0039】
図3に示すように、熱交換器11(熱回収装置101または再加熱装置105)は、1つのバンドル12を備える。但し、熱交換器11は、複数のバンドル12を備えていてもよい。すなわち、バンドル12は、例えば、熱回収装置101を構成する高温熱回収部141、中温熱回収部142、低温熱回収部143、または、再加熱装置105を構成する高温加熱部161、中温加熱部162、低温加熱部163に相当する。
【0040】
バンドル12は、ダクトケーシング13の内部に配置される。ダクトケーシング13は、水平方向に沿った四角筒形状をなし、内部に排ガス通路14が区画される。排ガス通路(ガスパス)14は、鉛直方向に沿って設けられ、排ガスGが鉛直方向に沿って流れる。但し、排ガス通路14は、鉛直方向に限らず、水平方向に沿って設けられ、排ガスGが水平方向に沿って流れるように構成してもよい。
【0041】
バンドル12は、ケーシング21と、入口ヘッダ22と、出口ヘッダ23と、複数の伝熱管24とを有する。バンドル12は、ダクトケーシング13の内部に配置され、ダクトケーシング13の内壁部に支持される。
【0042】
入口ヘッダ22と出口ヘッダ23は、ダクトケーシング13の側壁部13aに固定されて支持される。入口ヘッダ22と出口ヘッダ23は、円筒管形状をなし、水平方向に沿って配置される。入口ヘッダ22と出口ヘッダ23は、鉛直方向に間隔を空けてダクトケーシング13の側壁部13aに固定されて支持される。この場合、入口ヘッダ22と出口ヘッダ23は、水平方向の一方側(
図3の右方側)が排ガス通路14に面し、水平方向の他方側(
図3の左方側)が排ガス通路14の外側に面する。
【0043】
複数の伝熱管24は、水平方向に沿って配置される。複数の伝熱管24は、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23の長手方向に交差する水平方向に沿って配置される。入口ヘッダ22は、複数の伝熱管24における長手方向の一端部が連結され、出口ヘッダ23は、複数の伝熱管24におけるの他端部が連結される。複数の伝熱管24は、排ガス通路14に位置する。すなわち、複数の伝熱管24は、一端部が入口ヘッダ22における排ガス通路14に面する側に連結されて内部が連通する。複数の伝熱管24は、他端部が出口ヘッダ23における排ガス通路14に面する側に連結されて内部が連通する。
【0044】
バンドル12は、外側にケーシング21が配置される。ケーシング21は、複数の伝熱管24を取り囲むように配置され、長手方向の端部が入口ヘッダ22および出口ヘッダ23に連結されると共に、ダクトケーシング13の内壁部に支持される。ケーシング21は、排ガスGの流れ方向(鉛直方向)の上流側と下流側が開口する。
【0045】
入口ヘッダ22は、側部に連結フランジ31を有するフランジ接手32が固定される。フランジ接手32は、円筒形状をなし、入口ヘッダ22における排ガス通路14に面しない側に連結されて内部が連通する。フランジ接手32は、入口ヘッダ22における長手方向の一端部に配置される。出口ヘッダ23は、側部に連結フランジ33を有するフランジ接手34が固定される。フランジ接手34は、円筒形状をなし、出口ヘッダ23における排ガス通路14に面しない側に連結されて内部が連通する。フランジ接手34は、出口ヘッダ23における長手方向の他端部に配置される。
【0046】
伝熱管24は、複数の直線部24aと、複数の第1湾曲部24bと、複数の第2湾曲部24cとを有する。複数の直線部24aは、素管の周囲に螺旋形状をなすフィンが固定されて構成される。複数の第1湾曲部24bと複数の第2湾曲部24cは、素管だけで構成され、フィンが設けられていない。複数の直線部24aは、隣接するもの同士の一端部が第1湾曲部24bにより連結され、隣接するもの同士の他端部が第2湾曲部24cにより連結される。伝熱管24は、排ガスGの流れ方向の下流側の直線部24aの一端部が入口ヘッダ22に連結され、排ガスGの流れ方向の上流側の直線部24aの一端部が出口ヘッダ23に連結される。
【0047】
1つの伝熱管24は、直線部24aと第1湾曲部24bと第2湾曲部24cが排ガスGの流れ方向である鉛直方向に間隔を空けて配置される。複数の伝熱管24は、排ガスGの流れ方向に直交する水平方向(
図3の紙面直交方向)に間隔を空けて配置されることで、伝熱管群を構成する。すなわち、複数の伝熱管24は、一端部が入口ヘッダ22における長手方向(水平方向)に間隔を空けて連結され、他端部が出口ヘッダ23における長手方向(水平方向)に間隔を空けて連結される。
【0048】
熱媒体供給ラインL31は、配管により構成され、端部にフランジ接手を有する。熱媒体供給ラインL31は、配管のフランジ接手がバンドル12における入口ヘッダ22のフランジ接手32に連結される。熱媒体排出ラインL32は、配管により構成され、端部にフランジ接手を有する。熱媒体排出ラインL32は、配管のフランジ接手がバンドル12における出口ヘッダ23のフランジ接手34に連結される。
【0049】
[熱交換器の作動]
熱交換器11は、排ガスGと熱媒体との間で熱交換することで、排ガスGから熱を回収して熱媒体を加熱、または、熱媒体の熱により排ガスGを加熱する。
【0050】
熱媒体は、熱媒体供給ラインL31からバンドル12に供給され、入口ヘッダ22から複数の伝熱管24に流れる。バンドル12は、熱媒体が複数の伝熱管24を流れるとき、熱媒体と排ガス通路14を流れる排ガスGとの間で熱交換する。
【0051】
排ガスGとの間で熱交換した熱媒体は、複数の伝熱管24から出口ヘッダ23に流れ、熱媒体排出ラインL32に排出される。
【0052】
[ヘッダの構成]
図4は、入口ヘッダを表す断面図、
図5は、入口ヘッダを表す
図4のV-V断面図、
図6は、入口ヘッダのプラグ取付孔を表す断面図である。なお、以下では、入口ヘッダ22について説明するが、出口ヘッダ23もほぼ同様の構成である。
【0053】
図4および
図5に示すように、入口ヘッダ22は、水平方向に沿う円筒管形状をなし、ダクトケーシング13に固定される。入口ヘッダ22は、排ガス通路14に面する側に伝熱管24の端部に連結される。この場合、入口ヘッダ22は、長手方向に直交する水平方向に沿って取付孔41が形成され、伝熱管24の端部が取付孔41に挿入されて固定される。このとき、伝熱管24は、一端部が入口ヘッダ22の取付孔41に対して拡管部42により連結される。
【0054】
すなわち、ヘッダ22は、取付孔41の内周面にリング形状をなす溝部が形成される。伝熱管24は、端部の外径が取付孔41の内径より若干小さい。伝熱管24は、端部が取付孔41に挿入される。そして、図示しない拡管用工具を伝熱管24に挿入し、加圧部を取付孔41に挿入された伝熱管24の端部の内側に位置させる。ここで、加圧部により伝熱管24の端部を拡径させることで、伝熱管24の端部の一部が膨出して取付孔41の溝部に入り込み、拡管部42が形成される。
【0055】
また、入口ヘッダ22は、排ガス通路14に面しない側に作業孔43が形成され、作業孔43にヘッダプラグ44が着脱自在に取付けられる。作業孔43およびヘッダプラグ44は、入口ヘッダ22における長手方向に間隔を空けて複数設けられる。作業孔43およびヘッダプラグ44は、伝熱管24の端部を止栓する止栓作業時に使用される。そのため、複数の作業孔43およびヘッダプラグ44は、入口ヘッダ22に連結される複数の伝熱管24の端部に対して、入口ヘッダ22の径方向に対向して設けられる。
【0056】
図6に示すように、入口ヘッダ22は、排ガス通路14に面しない側に入口ヘッダ22の径方向に沿って貫通するように作業孔43が形成される。作業孔43は、内周部に雌ねじ部43aが形成される。雌ねじ部43aは、ねじ山が螺旋形状をなす平行ねじである。また、入口ヘッダ22は、外周部側に作業孔43(雌ねじ部43a)に連続して凹部43bが設けられる。凹部43bは、リング形状をなし、内径が作業孔43の内径より大きい。凹部43bは、円環形状をなす平面部がシール面になることから、入口ヘッダ22において高精度の機械加工が施される。
【0057】
ヘッダプラグ44は、ヘッダプラグ本体44aと、フランジ部44bと、雄ねじ部44cとを有する。ヘッダプラグ本体44aは、例えば、六角形状をなす。フランジ部44bは、ヘッダプラグ本体44aと一体に設けられ、外径が44aの外径より大きい。雄ねじ部44cは、ヘッダプラグ本体44aおよびフランジ部44bと一体に設けられ、外径が44aの外径とほぼ同様である。雄ねじ部44cは、ねじ山が螺旋形状をなす平行ねじである。雄ねじ部44cは、作業孔43の雌ねじ部43aに螺合可能である。
【0058】
なお、作業孔43の雌ねじ部43aとヘッダプラグ44の雄ねじ部44cは、平行ねじである。テーパねじは、ねじの中心軸に対して、隣り合うねじの山頂と山頂を結んだ線に角度がついている。そのため、テーパねじは、ねじの外周が先端に向けて徐々に細くなる。一方、平行ねじは、ねじの中心軸に対して、隣り合うねじの山頂と山頂を結んだ線が平行である。平行ねじは、ねじの外周が先端に向けて同じである。そのため、平行ネジを採用することで、雄ねじと雌ねじが互いに螺合する位置で面によりシールすることができ、テーパねじに比べてシール性を高めることができる。また、ヘッダプラグ44の雄ねじ部44cがテーパねじある場合、入口ヘッダ22の外面とヘッダプラグ44との間に隙間が発生し、入口ヘッダ22の外面が腐食するリスクがある。
【0059】
ヘッダプラグ44は、雄ねじ部44cが作業孔43の雌ねじ部43aに螺合することで取付けられ、作業孔43を閉塞して止水する。このとき、ヘッダプラグ44と作業孔43との間にメタルガスケット(シール部材)45が装着される。メタルガスケット45は、円環形状をなし、入口ヘッダ22の凹部43bに装着される。ヘッダプラグ44の雄ねじ部44cを作業孔43の雌ねじ部43aに螺合させていくと、ヘッダプラグ44のフランジ部44bがメタルガスケット45に接触し、メタルガスケット45を凹部43bの平面部(シール面)に押圧する。なお、ヘッダプラグ44のフランジ部44bをなくし、ヘッダプラグ本体44aがメタルガスケット45に接触してもよい。すると、ヘッダプラグ44のフランジ部44bとメタルガスケット45と凹部43bとが所定の圧力をもって密着する。そのため、ヘッダプラグ44のフランジ部44bとメタルガスケット45と凹部43bとの間に面摩擦が作用し、作業孔43を止水することができると共に、ヘッダプラグ44の弛み止めがなされる。
【0060】
[止栓治具]
図7は、本実施形態の止栓治具が装着された入口ヘッダを表す断面図、
図8は、止栓治具におけるヘッダプラグを表す断面図、
図9は、止栓治具における止栓プラグを表す断面図である。
【0061】
伝熱管24は、排ガスGが接触するため、長期の使用により腐食して損傷し、熱媒体の漏洩が発生することがある。そのため、熱交換器11の運転を停止した定期検査時に、伝熱管24のリーク検査を実施し、リークがある伝熱管24に対して止栓作業を実施し、リークがある伝熱管24を使用不能とする。
【0062】
図7に示すように、伝熱管用止栓治具50は、ダクトケーシング13の外側から作業孔43および伝熱管24の端部を閉塞するものである。伝熱管用止栓治具50は、止栓プラグ51と、ヘッダプラグ52と、連結軸53と、リーク防止蓋54とを備える。
【0063】
止栓プラグ51は、伝熱管24の端部に嵌入して閉止可能である。ヘッダプラグ52は、作業孔43に嵌入して閉止可能である。連結軸53は、一端部に止栓プラグ51が連結され、他端部側にヘッダプラグ52が軸方向に沿って移動自在に支持される。この場合、ヘッダプラグ52と連結軸53は、互いにねじ係合することで軸方向に沿って相対移動自在である。リーク防止蓋54は、入口ヘッダ22の外側からヘッダプラグ52に螺合する。
【0064】
図7から
図9に示すように、止栓プラグ51は、止栓プラグ本体61と、固定部62とを有する。止栓プラグ本体61は、円錐台形状をなし、シリコンゴムにより形成されることが好ましい。但し、止栓プラグ本体61は、シリコンゴムに限定されるものではなく、シール性を有する材料により形成されていればよい。止栓プラグ本体61は、連結軸53の一端部が貫通する貫通孔63が形成される。固定部62は、止栓プラグ本体61の外径が小さくなった先端部側に配置される。固定部62は、外径が止栓プラグ本体61の外径より小さく、例えば、六角ナットを適用することが好ましい。固定部62は、止栓プラグ本体61の貫通孔63を貫通した連結軸53の一端部が螺合することで固定される。
【0065】
ヘッダプラグ52は、ヘッダプラグ本体71と、フランジ部72と、雄ねじ部73と、第1雌ねじ部74と、第2雌ねじ部75を有する。ヘッダプラグ本体71は、例えば、六角形状をなす。フランジ部72は、ヘッダプラグ本体71と一体に設けられ、外径がヘッダプラグ本体71の外径より大きい。雄ねじ部73は、ヘッダプラグ本体71およびフランジ部72と一体に設けられ、外径がヘッダプラグ本体71の外径とほぼ同様である。雄ねじ部73は、ねじ山が螺旋形状をなす平行ねじである。雄ねじ部73は、入口ヘッダ22の作業孔43の雌ねじ部43aに螺合可能である。
【0066】
また、ヘッダプラグ52は、円筒形状をなし、内周部に第1雌ねじ部74と、第2雌ねじ部75とを有する。第1雌ねじ部74は、ヘッダプラグ52における先端部側に形成され、第2雌ねじ部75は、ヘッダプラグ52における基端部側に形成される。第2雌ねじ部75は、内径が第1雌ねじ部74の内径より大きい。第1雌ねじ部74と第2雌ねじ部75は、ねじ山が螺旋形状をなす平行ねじである。第1雌ねじ部74は、連結軸53の他端部が螺合する。第1雌ねじ部74と第2雌ねじ部75は、連通する。そして、ヘッダプラグ52は、第1雌ねじ部74と第2雌ねじ部75との段部にシール面として機能する平面部76が形成される。平面部76は、円環形状をなす。
【0067】
連結軸53は、ねじ軸81と、プラグ押え82と、係止部83を有する。ねじ軸81は、所定長さ(少なくとも、入口ヘッダ22の内径より長い長さ)を有し、円柱軸の外周部にねじが形成されて構成される。ねじ軸81は、ねじ山が螺旋形状をなす平行ねじである。ねじ軸81は、他端部がヘッダプラグ52の第1雌ねじ部74に螺合する。プラグ押え82は、ねじ軸81の一端部側に固定される。プラグ押え82は、ねじ軸81の一端部から所定長さだけ他端部側に移行した位置に固定される。プラグ押え82は、円板形状をなし、外径が止栓プラグ本体61の外径とほぼ同様である。
【0068】
連結軸53は、一端部が止栓プラグ51における止栓プラグ本体61の貫通孔63を貫通し、固定部62に螺合する。このとき、プラグ押え82は、固定部62と共に止栓プラグ本体61を軸方向に挟持する。つまり、プラグ押え82は、連結軸53に対する止栓プラグ本体61の軸方向の移動を規制する。
【0069】
係止部83は、ねじ軸81の他端部側に固定される。係止部83は、ねじ軸81の他端部から所定長さだけ延出して設けられる。係止部83は、例えば、四角柱形状をなす。図示しない工具が係止して連結軸53を回転可能である。
【0070】
リーク防止蓋54は、蓋本体91と、雄ねじ部92と、空間部93とを有する。蓋本体91は、例えば、六角形状をなす。雄ねじ部92は、蓋本体91と一体に設けられ、外径が蓋本体91の外径より小さい。雄ねじ部92は、ねじ山が螺旋形状をなす平行ねじである。雄ねじ部92は、ヘッダプラグ52における第2雌ねじ部75に螺合可能である。空間部93は、雄ねじ部92の先端部側に開口するように設けられる。つまり、雄ねじ部92が円筒形状をなすことで、空間部93が形成される。空間部93は、ヘッダプラグ52を貫通した連結軸53の他端部(係止部83)との接触を阻止する。
【0071】
図7に示すように、伝熱管用止栓治具50は、入口ヘッダ22に装着された状態で、止栓プラグ51が伝熱管24の端部に嵌入して閉塞し、ヘッダプラグ52が入口ヘッダ22の作業孔43に螺合して閉塞する。このとき、止栓プラグ51とヘッダプラグ52が連結軸53により連結されることで、伝熱管24の端部からの止栓プラグ51の抜けが阻止される。
【0072】
また、ヘッダプラグ52と入口ヘッダ22の凹部43bとの間にメタルガスケット(シール部材)45が装着されている。ヘッダプラグ52のフランジ部72とメタルガスケット45と凹部43bとが所定の圧力をもって密着する。そのため、ヘッダプラグ52のフランジ部72とメタルガスケット45と凹部43bとの間に面摩擦が作用し、ヘッダプラグ52の弛み止めがなされる。なお、ヘッダプラグ52のフランジ部72をなくし、ヘッダプラグ本体71がメタルガスケット45に接触してもよい。さらに、また、リーク防止蓋54がヘッダプラグ52の第2雌ねじ部75に螺合し、先端面がヘッダプラグ52における第1雌ねじ部74と第2雌ねじ部75との間の平面部76に押圧して密着することで、作業孔43を止水することができる。
【0073】
[伝熱管の止栓方法]
図10から
図12は、伝熱管の止栓方法を表す断面図、
図13は、止栓治具が装着された入口ヘッダを表す断面図である。
【0074】
図10に示すように、まず、伝熱管用止栓治具50を入口ヘッダ22に装着する。すなわち、連結軸53の先端部に止栓プラグ51が装着され、基端部にヘッダプラグ52が装着されて状態で、入口ヘッダ22の外側から連結軸53により作業孔43を通して止栓プラグ51を入口ヘッダ22の内部に挿入する。そして、ヘッダプラグ52を作業孔43に適合させ、ヘッダプラグ52を回転させることで作業孔43に螺合させる。
【0075】
次に、止栓プラグ51を伝熱管24の端部に嵌入させる。すなわち、ヘッダプラグ52は、作業孔43に螺合することで、入口ヘッダ22に取付けられている。この状態で、図示しない工具を連結軸53の係止部83に係止し、ヘッダプラグ52に対して連結軸53を回転することで、連結軸53と共に止栓プラグ51を前進させ、
図11に示すように、止栓プラグ51を伝熱管24の端部に嵌入させる。ここで、連結軸53を予め設定された所定の荷重まで回転させることで、止栓プラグ51が所定の圧力で伝熱管24の端部に嵌入することとなり、伝熱管24の端部の閉塞(シール)が可能となる。
【0076】
図12に示すように、最後に、ヘッダプラグ52にリーク防止蓋54を装着する。すなわち、リーク防止蓋54をヘッダプラグ52に適合させ、リーク防止蓋54を回転することで、リーク防止蓋54をヘッダプラグ52に密着させる。リーク防止蓋54がヘッダプラグ52に密着することで、作業孔43からの水の漏洩が抑制される。
【0077】
図13に示すように、伝熱管用止栓治具50を入口ヘッダ22に装着して伝熱管24の端部を止栓するとき、対象となる伝熱管24の端部に対向するヘッダプラグ44のみを取外して実施することとなる。すなわち、対象となる伝熱管24の端部に対向するヘッダプラグ44に対して、隣接するヘッダプラグ44を取外す必要がなく、作業が容易になると共に、作業時間も短縮される。
【0078】
[伝熱管の漏洩検出方法]
図14は、伝熱管の漏洩検出方法を表すフローチャート、
図15および
図16は、伝熱管の漏洩検出方法を説明するための概略図である。
【0079】
図14および
図15に示すように、ステップS11にて、熱交換器11にて、リーク検査を実施するバンドル12に対して、入口ヘッダ22と出口ヘッダ23と複数の伝熱管24の内部にある水を排出する。ステップS12にて、入口ヘッダ22に装着されている全てのヘッダプラグ44を取外すと共に、出口ヘッダ23に装着されている全てのヘッダプラグ44を取外す。ステップS13にて、ヘッダプラグ44を取外した入口ヘッダ22の作業孔43および出口ヘッダ23の作業孔43に対して伝熱管用止栓治具50を装着する。すなわち、伝熱管用止栓治具50を各ヘッダ22,23に装着し、止栓プラグ51により伝熱管24の一端部および他端部を閉止すると共に、ヘッダプラグ52およびリーク防止蓋54により作業孔43を閉止する。また、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23に設けられているノズル35,36も閉止する。
【0080】
熱交換器11は、複数の伝熱管24を有しており、伝熱管用止栓治具50の止栓プラグ51により全ての伝熱管24の一端部および他端部を閉止し、ヘッダプラグ52およびリーク防止蓋54により全ての作業孔43を閉止することで、複数の伝熱管24が個別に閉塞状態に維持される。
図14および
図16に示すように、ステップS14にて、この状態から、複数の伝熱管24のうちの1つの伝熱管24に対して、出口ヘッダ23に装着された伝熱管用止栓治具50の止栓プラグ51による伝熱管24端部の閉止を解除する。すなわち、出口ヘッダ23に装着された伝熱管用止栓治具50にて、ヘッダプラグ52からリーク防止蓋54を取外し、連結軸53を逆回転して止栓プラグ51を伝熱管24の端部から抜き取る。そして、リーク防止蓋54を再度ヘッダプラグ52へ取り付ける。このとき、リーク防止蓋54の先端面は、平面部76を押圧して密着し、ステップS15の処理時に、加圧空気が雌ねじ部74から漏洩するのを抑制する。
【0081】
ステップS15にて、ノズル36に加圧用配管37を連結し、出口ヘッダ23を通して1つの伝熱管24に加圧空気を供給して加圧する。そして、加圧用配管37に設けられた圧力計38により1つの伝熱管24の内部の圧力を計測し続ける。ステップS16にて、圧力計38の計測結果に基づいて、伝熱管24の内部の圧力が低下したか否かを判定する。ここで、伝熱管24の内部の圧力が低下していないと判定(No)すると、ステップS17にて、伝熱管24にリーク(漏洩)がないと判定する。一方、伝熱管24の内部の圧力が低下したと判定(Yes)すると、ステップS18にて、伝熱管24にリーク(漏洩)があると判定する。リーク判定の終了後、ステップS19にて、出口ヘッダ23からの伝熱管24への加圧空気の供給を停止し、再び、出口ヘッダ23に装着された伝熱管用止栓治具50を作動し、止栓プラグ51により伝熱管24端部を閉止する。
【0082】
1つの伝熱管24に対するリーク検査が完了すると、別の伝熱管24に対して同様の方法によりリーク検査を実施する。
【0083】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る伝熱管用止栓治具は、ダクトケーシング13の外側から作業孔43および伝熱管24の端部を閉塞する伝熱管用止栓治具50であって、伝熱管24の端部に嵌入して閉止可能な止栓プラグ51と、作業孔43に嵌入して閉止可能なヘッダプラグ52と、一端部に止栓プラグ51が連結されて他端部側にヘッダプラグ52が軸方向に沿って移動自在に支持される連結軸53とを備える。
【0084】
第1の態様に係る伝熱管用止栓治具によれば、作業孔43にヘッダプラグ52を嵌入して閉止した後、ヘッダプラグ52に対して連結軸53を移動することで、止栓プラグ51を移動して伝熱管24の端部に嵌入して閉止することができる。そのため、止栓プラグ51を装着する伝熱管24の端部に対向する作業孔43だけが作業の対象となり、隣接する作業孔43からヘッダプラグ44を取外す必要がない。また、止栓プラグ51を伝熱管24の端部に溶接する作業が不要となく、溶接不良が発生することもない。その結果、伝熱管の止栓作業を容易として作業時間を短縮することができ、止栓作業の作業性の向上を図ることができる。
【0085】
第2の態様に係る伝熱管用止栓治具は、第1の態様に係る伝熱管用止栓治具であって、さらに、ヘッダプラグ52と連結軸53は、互いにねじ係合することで軸方向に沿って相対移動自在である。これにより、ヘッダプラグ52に対して連結軸53を回転するだけで、連結軸53と共に止栓プラグ51を容易に移動することができる。
【0086】
第3の態様に係る伝熱管用止栓治具は、第1の態様または第2の態様に係る伝熱管用止栓治具であって、さらに、止栓プラグ51は、円錐台形状をなして連結軸53の一端部が貫通するシリコンゴム製の止栓プラグ本体61と、外径が止栓プラグ本体61の外径より小さくて止栓プラグ本体61を貫通した連結軸53の一端部に固定される固定部62とを有し、連結軸53は、ねじ軸81と、ねじ軸81の一端部側に固定されて固定部62と共に止栓プラグ本体61を挟持するプラグ押え82とを有する。これにより、連結軸53と共に止栓プラグ51を移動することで、止栓プラグ51により適切に伝熱管24の端部を閉止することができる。
【0087】
第4の態様に係る伝熱管用止栓治具は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る伝熱管用止栓治具であって、さらに、ヘッダプラグ52は、ヘッダプラグ本体71と、ヘッダプラグ本体71の先端部に設けられて作業孔43の内周部に設けられた雌ねじ部43aに螺合する雄ねじ部73とを有する。これにより、ヘッダプラグ52を回転するだけで、容易に作業孔43を閉塞することができる。
【0088】
第5の態様に係る伝熱管用止栓治具は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係る伝熱管用止栓治具であって、さらに、ヘッダプラグ52は、雄ねじ部73が平行ねじであり、ヘッダ22,23の外面にメタルガスケット(シール部材)45を介して接触するフランジ部72を有する。これにより、ヘッダプラグ52を回転して作業孔43に装着するだけで、メタルガスケットにより作業孔43を閉塞して止水することができる。
【0089】
第6の態様に係る伝熱管用止栓治具は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る伝熱管用止栓治具であって、さらに、ヘッダプラグ52は、円筒形状をなし、連結軸53の他端部が螺合する第1雌ねじ部74と、第1雌ねじ部74より大径の第2雌ねじ部75を有し、ヘッダ22,23の外側からヘッダプラグ52の第2雌ねじ部75に螺合するリーク防止蓋54が設けられる。これにより、リーク防止蓋54をヘッダプラグ52に装着することで、ヘッダプラグ52と連結軸53とのねじ係合部から水の漏洩を抑制することができる。
【0090】
第7の態様に係る伝熱管用止栓治具は、第6の態様に係る伝熱管用止栓治具であって、さらに、リーク防止蓋54は、ヘッダプラグ52を貫通した連結軸53の他端部との接触を阻止する空間部93が設けられる。これにより、リーク防止蓋54とヘッダプラグ52の干渉を抑制することができる。
【0091】
第8の態様に係る熱交換器は、伝熱管用止栓治具50が装着される。これにより、伝熱管の止栓作業を容易として作業時間を短縮することができ、止栓作業の作業性の向上を図ることができる。
【0092】
第9の態様に係る排煙処理装置は、排ガスGの熱の一部を回収する熱回収装置101と、熱回収後の排ガスGに含まれるばいじんを除去する電気集塵装置102と、集塵後の排ガスGに含まれる硫黄酸化物を除去する脱硫装置104と、脱硫後の排ガスGを再加熱する再加熱装置105とを備え、熱交換器11が熱回収装置101と再加熱装置105の少なくともいずれか一方に適用される。これにより、伝熱管の止栓作業を容易として作業時間を短縮することができ、止栓作業の作業性の向上を図ることができる。
【0093】
第10の態様に係る伝熱管の漏洩検出方法は、伝熱管用止栓治具50のヘッダプラグ52により作業孔43を閉止したままで止栓プラグ51を伝熱管24の端部から抜き取るステップと、ヘッダ22,23および伝熱管24を密閉状態として加圧するステップと、ヘッダ22,23および伝熱管24の空間部の圧力低下の有無を検出するステップとを有する。これにより、伝熱管の止栓作業を容易として作業時間を短縮することができ、止栓作業の作業性の向上を図ることができる。
【0094】
なお、上述した実施形態にて、熱交換器11は、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23が水平方向に沿って配置され、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23に対して、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23の長手方向に交差する水平方向に沿って配置される複数の伝熱管24の端部がそれぞれ連結される。但し、熱交換器11は、このような構成に限定されるものではない。熱交換器11は、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23が鉛直方向に沿って配置され、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23に対して、水平方向に沿って配置される複数の伝熱管24の端部がそれぞれ連結される構成であってもよい。また、熱交換器11は、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23が水平方向に沿って配置され、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23に対して、鉛直方向に沿って配置される複数の伝熱管24の上端部がそれぞれ連結される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
11 熱交換器
12 バンドル
13 ダクトケーシング
14 排ガス通路
21 ケーシング
22 入口ヘッダ
23 出口ヘッダ
24 伝熱管
31,33 連結フランジ
32,34 フランジ接手
35,36 ノズル
41 取付孔
42 拡管部
43 作業孔
44 ヘッダプラグ
44a (ヘッダプラグ本体)
44b フランジ部
44c 雄ねじ部
45 メタルガスケット(シール部材)
50 伝熱管用止栓治具
51 止栓プラグ
52 ヘッダプラグ
53 連結軸
54 リーク防止蓋
61 止栓プラグ本体
62 固定部
63 貫通孔
71 ヘッダプラグ本体
72 フランジ部
73 雄ねじ部
74 第1雌ねじ部
75 第2雌ねじ部
76 平面部
81 ねじ軸
82 プラグ押え
83 係止部
91 蓋本体
92 雄ねじ部
93 空間部
100 排煙処理装置
101 熱回収装置
102 電気集塵装置
103 送風装置
104 脱硫装置
105 再加熱装置
106 送風装置
111 ボイラ
112 煙突
121a,121b,121c,121d,121e,121f,121g 排ガス通路
122 開閉弁
123 ミストエリミネータ
131 循環ポンプ
132 ヒータ
133 ドレンタンク
134 開閉弁
L11 第1熱媒体循環ライン
L12 第2熱媒体循環ライン
L13 蒸気ライン
L14 蒸気ドレンライン
L21,L23 第1接続ライン
L22,L24 第2接続ライン
L31 熱媒体供給ライン
L32 熱媒体排出ライン
G 排ガス
【要約】
【課題】伝熱管用止栓治具および熱交換器、排煙処理装置、伝熱管の漏洩検出方法において、止栓作業の作業性の向上を図る。
【解決手段】ダクトケーシングの外側から作業孔および伝熱管の端部を閉塞する伝熱管用止栓治具であって、伝熱管の端部に嵌入して閉止可能な止栓プラグと、作業孔に嵌入して閉止可能なヘッダプラグと、一端部に止栓プラグが連結されて他端部側にヘッダプラグが軸方向に沿って移動自在に支持される連結軸と、を備える。
【選択図】
図7