(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】積層シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/085 20060101AFI20240606BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B32B15/085 A
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2023177570
(22)【出願日】2023-10-13
【審査請求日】2023-10-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用:令和5年7月4日株式会社三洋(東京営業所)に積層シートの説明を行うとともに、同13日にサンプルを出荷。令和5年7月12日株式会社三洋(三川本社)に積層シートの説明を行うとともに、同19日に縫製テスト用積層シートを出荷。令和5年8月7日中村被服株式会社に積層シートの説明を行うとともに、令和5年9月14日に縫製テスト用積層シートを出荷。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591012392
【氏名又は名称】日本マタイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154335
【氏名又は名称】小松 秀彦
(74)【代理人】
【識別番号】100198605
【氏名又は名称】岡地 優司
(72)【発明者】
【氏名】近澤 将弥
(72)【発明者】
【氏名】菊池 貴之
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 常民
(72)【発明者】
【氏名】竹下 渉
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-142401(JP,A)
【文献】国際公開第2023/106097(WO,A1)
【文献】特開2023-070874(JP,A)
【文献】実開昭63-053731(JP,U)
【文献】特開平10-329284(JP,A)
【文献】特開2019-181771(JP,A)
【文献】特開2002-173181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/085
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状
低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む層上に、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む層
を積層
し、さらに、このLDPEを含む層上にアンカーコート(AC)剤
を塗布
したアルミニウム蒸着
ポリエチレンテレフタレート層
を積層
した表面層を有する積層シート
の製造方法であって、
AC剤は、
エーテル系であり、乾燥塗布量
を0.118g/m
2以上
とし、グラビアロールを用いて塗布
することを特徴とする積層シート
の製造方法。
【請求項2】
前記表面層は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む層と高密度ポリエチレン(HDPE)のフラットヤーンからなる織物層とを積層した基材層に積層
する請求項
1に記載の積層シート
の製造方法。
【請求項3】
前記積層シート
は保冷容器用である請求項1または2に記載の積層シートの製造方法。
【請求項4】
前記積層シートは保冷容器用であり、この保冷容器は保冷カバーまたは保冷ボックスである請求項
1または2に記載の
積層シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む層上にアンカーコート(AC)剤が塗布されたアルミニウム蒸着フィルムが積層されている表面層を有する積層シートおよびこれを用いる保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
保冷カバーや保冷ボックス等の保冷容器に用いられる積層シートとして、表面層にアルミニウム蒸着フィルムが使用されたシートが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この表面層としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む層上に、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む層が積層され、さらに、このLDPEを含む層上、つまり最表面にアルミニウム蒸着フィルムが積層された層構成のものが知られている。
【0004】
また、そのような構成の表面層において、LDPEを含む層とアルミニウム蒸着フィルムとの密着性を良くするために、LDPEを含む層上にアンカーコート(AC)剤による塗布層を形成し、この塗布層を介してアルミニウム蒸着フィルムを積層することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の層構成の表面層を基材層に積層した積層シートを、保冷カバー等の保冷用容器製品に用いるために、重ね合わせて縫製した際に、
図3に示す積層シート50のように、表面層51上のアルミニウム蒸着フィルム52が、LDPEを含む層53から部分的に剥離して浮き上がることがあった。
図4に、実際に浮きが発生した部分を撮影した写真を示す。
【0007】
本発明は、この浮きが発生しない表面層を有する積層シートおよびこれを用いる保冷容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1> 直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む層上に、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む層を積層し、さらに、このLDPEを含む層上にアンカーコート(AC)剤を塗布したアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート層を積層した表面層を有する積層シートの製造方法であって、AC剤は、エーテル系であり、乾燥塗布量を0.118g/m2以上とし、グラビアロールを用いて塗布することを特徴とする積層シートの製造方法である。
【0010】
<2> 前記表面層は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む層と高密度ポリエチレン(HDPE)のフラットヤーンからなる織物層とを積層した基材層に積層する<1>に記載の積層シートの製造方法である。
【0011】
<3> 前記積層シートは保冷容器用である<1>または<2>に記載の積層シートの製造方法である。
【0012】
<4> 前記積層シートは保冷容器用であり、この保冷容器は保冷カバーまたは保冷ボックスである<1>または<2>に記載の積層シートの製造方法である。
【0013】
なお、本明細書において、「低密度ポリエチレン」は、この名において当業者に認識されているポリエチレンを意味し、具体的には、JIS K6922-2の附属書4-2に準拠して測定された密度が0.910g/cm3以上0.930g/cm3未満のポリエチレンである。
【0014】
また、本明細書において、「表面層」とは、積層シートの表面側に配置され、最終工程にて基材層に積層される層を意味する。一方、「基材層」とは、表面層以外の層を意味し、単層であっても複数層を有していてもよいものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層シートは、アルミニウム蒸着層に塗布するAC剤の乾燥塗布量を0.118g/m2以上とし、グラビアロールを用いて塗布したので、得られた積層シートの表面層においてアルミニウム蒸着フィルムの浮き発生を防ぐことが可能となる。
【0016】
本発明の保冷容器は、本発明の積層シートを用いるので、アルミニウム蒸着フィルムの浮き発生を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の積層シートの層構成の一例を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、浮き発生の有無の評価用サンプルの縫製方法を説明する図である。
【
図3】
図3は、従来の浮きが発生した積層シートの概略図を示す図である。
【
図4】
図4は、従来の積層シートの浮きが発生した部分を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の積層シートは、保冷容器を構成する断熱シートとして用いられ、表面層と、基材層とからなる。
【0019】
表面層は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む層上に、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む層が積層され、さらに、このLDPEを含む層上にアルミニウム蒸着層が積層されている。
【0020】
LLDPEは、シートに柔軟性を付与するために用いられ、これを含む層は透明なフィルムからなることが好ましい。
【0021】
アルミニウム蒸着層は、アルミニウムやその蒸着方法に、特に制限はないが、蒸着するフィルムとしては、光沢を増し見映えをより良くできることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことが好ましい。
【0022】
このアルミニウム蒸着層の裏面には、LDPEを含む層との密着性を向上させるためにアンカーコート(AC)剤が塗布される。このAC剤の塗布量は、乾燥塗布量が0.118g/m2以上であることが必要である。乾燥塗布量が0.118g/m2未満であると、LDPEを含む層との密着性が十分でなく、積層シート製造後に、保冷容器製品用に縫製等の加工をした際に、LDPEを含む層から部分的に剥離して浮き上がる、いわゆる浮きが発生し易くなる。一方、乾燥塗布量の上限は0.20g/m2程度である。前述した下限値であれば概ね所望の効果が得られるところ、AC剤のハンドリング等を考慮すると、この程度に塗布すれば十分なためである。
【0023】
AC剤は、蒸着アルミの密着に用いられる成分であれば特に制限はないが、たとえば、エーテル系、エステル系のものが好適に挙げられ、両者においても、エーテル系が、浮きの発生防止効果に極めて優れるため好ましい。なお、AC剤は、塗布後に適宜エージング処理をしてもよい。
【0024】
AC剤は、グラビアロールによりアルミニウム蒸着層に塗布する。たとえば金属ロール(ボウズロール)等、平坦なロールで塗布した場合、AC剤がアルミニウム蒸着層に均一に馴染まずに、上述した加工時に浮きが発生し易くなる。つまり、グラビアロールにおいては、その表面に形成される凹凸が、AC剤を層内に均一に馴染ませることに寄与し得る。なお、グラビアロールの種類として、格子型、ピラミッド型、斜線型等のタイプがあるが、AC剤は粘度が低く、ドクターブレードとセルで計量することから、通常は格子型を用いる。
【0025】
ここで、上述した乾燥塗布量をDとし、グラビアロールのセル容積をV、AC剤が塗布する層に実際に供給された割合、つまり転写率をX、固形分をN、AC剤の比重を1とした場合に、次のように表すことができる。
D=V×X/100×N/100
【0026】
そのため、Vが6.0ml、固形分2.8質量%、転写率31.25%、AC剤の比重が1の場合は、乾燥塗布量を次のように求めることができる。
D=6.0×0.028×0.3125=0.0525g/m2
【0027】
一方、基材層は、単層であっても二層以上を有していてもよいが、柔軟性の向上を図れるとともに、層間に織物層を介す等の強度を向上させる加工が可能となることから、二層以上を有することが好ましく、通常は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む層と高密度ポリエチレン(HDPE)のフラットヤーンからなる織物層が積層されている。
【0028】
なお、各層は、主成分をなす樹脂以外は、層形成のために必要または好ましい添加剤等を除いては、含んでいないことが好ましい。
【0029】
次に、本発明の好ましい層構成の一例を説明する。
図1は、その一例を概略的に示す断面図である。
図1に示す積層シート1は、表面層2が、最表面から、アルミニウムが蒸着されたフィルムにアンカーコート剤が塗布されたアルミニウム蒸着PET(AC-VMPET)層3、LDPEフィルムからなるLDPE層4、LLDPEフィルムからなるLLDPE層5が、この順に積層されている。基材層7は、最裏面から、第1のLDPE層8、フラットヤーンクロスの織物層9、第2のLDPE層10、発泡ポリエチレン(発泡PE)層11、第3のLDPE層12が、この順に積層されている。
【0030】
表面層2を構成するLLDPE層5は着色剤を添加せず透明なフィルムとする一方、基材層7を構成する三層のLDPE層は着色剤を含んでもよい。
【0031】
第1のLDPE層8と第2のLDPE層10の間に介在する織物層9は、通常、高密度ポリエチレン(HDPE、密度0.942g/cm3以上のポリエチレン)のフラットヤーンであり、シートの強度およびその耐久性を向上させるため、これを縦横に1インチあたり10本以上打ち込むことが好ましい。
【0032】
各LDPE層の厚さは、シートの強度および耐久性を良好とする観点から、裏面の第1のLDPE層8から順に、第1のLDPE層>第2のLDPE層>第3のLDPE層=表面層のLDPE層となるように、内面側の層ほど若干ずつ薄く形成することが好ましい。具体的な厚さの範囲としては、第1のLDPE層8が30μm~50μm、第2のLDPE層10と、第3のLDPE層12および表面層のLDPE層4とでは、いずれも20μm~30μmで、その範囲内で第2のLDPE層10の方が5μmほど厚いことが好ましい。
【0033】
最表面層のAC-VMPET層3は、LDPEからなる各層の半分以下の厚さがあればよい。厚すぎるとシートの耐傷性に影響を及ぼすことがある。
【0034】
また、LLPDE層5の厚さは、第3のLDPE層12および表面層のLDPE層4の4倍程度、つまり80μm~200μm程度、発泡PE層11の厚さは、第2のLDPE層10の40倍程度、つまり800μm~1.2mm程度が好ましい。
【0035】
なお、
図1の積層シート1は、本発明の好ましい一例を示したものであり、表面層が本発明で規定する層構成であれば、これに限らず、適宜異なる層構成としてもよい。
【0036】
また、本発明の積層シートを製造する際には、表面層と、基材層を、それぞれ別々にラミネートした後、両者をラミネートするが、表面層のアルミニウム蒸着層に、AC剤を塗布する際にグラビアロールを用いていれば、一般に用いられるラミネート加工機およびラミネート方法等を適宜選択すればよく、特に制限は無い。
【0037】
以上説明した本発明の積層シートは、上述したように、保冷容器に用いられ、保冷カバーや保冷ボックスに好適に用いることができる。また、これに限らず、たとえば自動車用遮光カーテン等の断熱性が要求される様々な用途に好適に用いることができる。
【0038】
なお、本発明の保冷容器は、通常とり得る態様において、本発明の積層シートを用いていれば、どのような構成であってもよく、特に制限は無い。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0040】
(実施例1)
[積層シートの作製]
常法により、表面層と基材層とを、それぞれ別々にラミネートした後、両者をラミネートして、
図1に示した層構成の本発明(実施例)の積層シートを作製した。その際に、AC剤として、エステル系AC剤RL-1(東洋インキ社製)を使用し、グラビアロールを用いて表面層のアルミニウム蒸着フィルムに塗布してAC-VMPET層3を形成した。
また、グラビアロールとしては、格子型形状であって線数220、深度35μm、1m
2あたりのセル容積が10mlのものを用いた。
なお、積層シートの各層の厚さや添加剤の配合量等は下記の通りである。なお、記載された以外の添加剤等は、含まれていないか、含まれていても物性に影響を及ぼさない程度の微量なものである。
(1)表面層(最表面から)
(a)AC-VMPET層 厚さ12μm
(b)表面層のLDPE層 厚さ20μm、乾燥塗布量0.118g/m
2(転写率32%、固形分濃度3.70質量%)
(c)LLDPE層 厚さ80μm
(2)基材層(最裏面から)
(a)第1のLDPE層 厚さ30μm
(b)織物層 HDPEクロス、打ち込み本数10×10、950デニール
(c)第2のLDPE層 厚さ25μm
(d)発泡PE層 厚さ1mm
(e)第3のLDPE層 厚さ20μm
【0041】
[浮き発生の有無の評価]
得られた積層シートをエージング処理した後、2枚の積層シート(保冷原反)を重ね合わせ、
図2に示すように、約50mm間隔で斜め縫いを行って実施例1のサンプルを得た。このサンプル3個(n=3)の表面層において、AC-VMPET層3のLDPE層4からの浮き上がり、つまり浮きの発生箇所を目視により観察し、0~4の五段階にて相対的な官能評価を行った。具体的には、全く浮きの発生が観られない場合は0と評価し、相対的に浮きの発生頻度が多く観られるほど1、2、3…と大きな数の評価とし、相対的に最も浮き発生頻度が高く剥離状態が多く観られると判断された場合に4と評価した。結果を表1に示す。
【0042】
(比較例1)
実施例1において、AC剤の乾燥塗布量を0.038g/m2(固形分濃度1.20質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にサンプルを縫製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
(実施例2)
実施例1において、AC剤の乾燥塗布量を0.192g/m2(固形分濃度6.00質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にサンプルを縫製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
(実施例3)
実施例1において、AC剤をエーテル系AC剤LX470EL(DICグラフィックス社製)に変えた以外は、実施例1と同様にサンプルを縫製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
(実施例4)
実施例3において、AC剤の乾燥塗布量を0.192g/m2(固形分濃度6.00質量%)に変えた以外は、実施例3と同様にサンプルを縫製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
(実施例5)
実施例3において、AC剤を塗布するグラビアロールの格子型形状を、線数250、深度17μm、1m2あたりのセル容積が6.5mlのものに代え、かつその乾燥塗布量を0.184g/m2(固形分濃度9.00質量%)に変えた以外は、実施例3と同様にサンプルを縫製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
(比較例2)
実施例1において、AC剤を、グラビアロールの代わりに、表面に凹凸の無い金属ロール(「ボウズロール」とも称する。)を用いてアルミニウム蒸着フィルムに塗布し、かつ、AC剤の固形分濃度を2.40質量%、つまり塗布量を2/3にした以外は、実施例1と同様にサンプルを縫製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
(比較例3)
実施例1において、AC剤を、グラビアロールの代わりに、ボウズロールを用いてアルミニウム蒸着フィルムに塗布した以外は、実施例2と同様にサンプルを縫製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
(比較例4)
実施例2において、AC剤を、グラビアロールの代わりに、ボウズロールを用いてアルミニウム蒸着フィルムに塗布した以外は、実施例3と同様にサンプルを縫製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(比較例5)
実施例4において、AC剤を、グラビアロールの代わりに、ボウズロールを用いてアルミニウム蒸着フィルムに塗布した以外は、実施例5と同様にサンプルを縫製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
表1の結果から、乾燥塗布量0.118g/m2以上のAC剤を、アルミニウム蒸着フィルムに、グラビアロールを用いて塗布した実施例1~5のサンプルでは、アルミニウム蒸着フィルムの浮きが全く観られないか、極めて微小に発生し得るに留まり、アルミニウム蒸着フィルムのLDPE層からの浮きが防止できていた。
【0053】
一方、乾燥塗布量が0.118g/m2よりも少ないか、表面に凹凸の無いボウズロールを用いてAC剤を塗布した比較例1~5のサンプルでは、浮きの発生が目立ち、頻繁に発生した例もあった。
【0054】
このことから、AC剤を、0.118g/m2以上の乾燥塗布量で、グラビアロールを用いて塗布することにより、AC剤がアルミ蒸着フィルムに均一かつ十分な量に分布し、表面層のLDPE層との密着性が向上して、アルミ蒸着フィルムの剥離、つまり浮き上がりが防げるようになると推測される。
【0055】
また、AC剤としては、エーテル系のAC剤を用いた場合に、浮きの発生を完全に防ぐことができたため、好ましいことが判った。この理由は、必ずしも明らかでないが、エーテル系のAC剤の方が、エステル系よりも塗布される基材における柔軟性が、良好であることが起因していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、保冷カバーや保冷ボックス等の保冷容器など断熱性の要求される用途において適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 積層シート
2 表面層
3 AC-VMPET層
4 LDPE層
5 LLDPE層
7 基材層
8 第1のLDPE層
9 織物層
10 第2のLDPE層
11 発泡PE層
12 第3のLDPE層
【要約】
【課題】アルミニウム蒸着フィルムの浮きが発生しない表面層を有する積層シートおよびこれを用いる保冷容器を提供する。
【解決手段】本発明の積層シート1は、表面層2が、最表面から、アンカーコート剤が塗布されたアルミニウム蒸着PET(AC-VMPET)層3、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムからなるLDPE層4、直鎖状短鎖分子ポリエチレン(LLDPE)フィルムからなるLLDPE層5が、この順に積層されている。AC剤の塗布量は、乾燥塗布量が0.118g/m
2以上であり、グラビアロールを用いて塗布される。表面層2には、基材層7が積層される。
【選択図】
図1