IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社TBMの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびこれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/02 20060101AFI20240606BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240606BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20240606BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240606BHJP
   C08K 5/24 20060101ALI20240606BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20240606BHJP
   C08K 5/3472 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C08L23/02
C08L23/04
C08L23/10
C08K3/26
C08K5/24
C08K5/3492
C08K5/3472
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023217944
(22)【出願日】2023-12-25
【審査請求日】2024-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311018921
【氏名又は名称】株式会社TBM
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 憲史
(72)【発明者】
【氏名】川野 哲聖
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/007882(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101993104(CN,A)
【文献】特開2021-006612(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129560(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103601986(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、
無機粉末と、
金属不活性化剤と、
を含み、
前記無機粉末が、鉄鋼スラグおよび/またはカーバイドスラグを原料とする炭酸カルシウム粉末であり、
前記金属不活性化剤が、メラミン、3-サリチルアミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、1,2-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイル]ヒドラジン、N,N’-ジフェニルオキサミド、N-サリチル-N’-サリチルヒドラジン、N,N’-ビス(サリチル)ヒドラジン、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジン、ビス(ベンジリデン)オキサリルジヒドラジド、オキサニリド、イソフタロイルジヒドラジド、セバコイルビスフェニルヒドラジド、N,N’-ジアセチルアジポイルジヒドラジド、N,N’-ビス(サリチロイル)オキシリルジヒドラジド、およびN,N’-ビス(サリチロイル)チオプロピオニルジヒドラジドからなる群から選ばれる1種以上の化合物を含み、
前記無機粉末の含有量が50質量%以上90質量%以下であり、
前記無機粉末中のマンガン元素の量が0.001質量%以上0.500質量%以下であり、かつ前記無機粉末中の鉄元素の量が0.01質量%以上1.00質量%以下であり、
前記金属不活性化剤の含有量が0.2質量%以上1.0質量%以下である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂および/またはポリエチレン系樹脂を含む、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭酸カルシウム粉末のJIS M-8511に準じて空気透過法により測定される平均粒子径が、0.7μm以上10.0μm以下である、
請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記金属不活性化剤が、メラミン、3-サリチルアミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、および1,2-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイル]ヒドラジンからなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、
請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記金属不活性化剤が、メラミンである、
請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、
成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、およびこれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭酸カルシウム粉末等の無機粉末を熱可塑性樹脂に高充填した樹脂組成物が知られている(例えば特許文献1)。このような樹脂組成物は、熱収縮量が小さく、かつ耐衝撃性に優れる、という利点がある。近年、当該樹脂組成物の特性を活かし、さらに広い用途に展開することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-77472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、樹脂組成物を加工する際には、その用途に合わせて延伸処理や、各種成形処理を行う。したがって、樹脂組成物には優れた加工性が求められる。ここで近年、環境への取り組みから、鉄鋼スラグやカーバイドスラグ等のカルシウムを含有する廃棄物や該廃棄物から抽出したカルシウムと、温室効果の原因となる二酸化炭素とを反応させて、無機粉末(炭酸カルシウム)を調製することが行われている。本発明者らが検討を行ったところ、このようなスラグを原料とする無機粉末、特に鉄やマンガンを含む無機粉末を上記樹脂組成物に用いた場合に、得られる樹脂組成物の加工性、特に伸びや引張強度が低くなりやすいことが明らかとなった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものである。具体的には、マンガンや鉄を含む無機粉末を含むにも拘わらず、高い伸びや引張強度を有し、加工性に優れる樹脂組成物、およびこれを含む成形品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、熱可塑性樹脂と、マンガン元素および鉄元素を一定量含む無機粉末と、金属不活性化剤と、を組み合わせることで、樹脂組成物の伸びや引張強度が格段に向上し、その加工性が高まることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の一態様は、下記の樹脂組成物を提供する。
[1]ポリオレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、無機粉末と、金属不活性化剤と、を含み、前記無機粉末の含有量が50質量%以上90質量%以下であり、前記無機粉末中のマンガン元素の量が0.001質量%以上0.500質量%以下であり、かつ前記無機粉末中の鉄元素の量が0.01質量%以上1.00質量%以下であり、前記金属不活性化剤の含有量が0.2質量%以上1.0質量%以下である、樹脂組成物。
[2]前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂および/またはポリエチレン系樹脂を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記無機粉末が、炭酸カルシウム粉末である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記炭酸カルシウム粉末が、鉄鋼スラグおよび/またはカーバイドスラグを原料とする炭酸カルシウム粉末である、[3]に記載の樹脂組成物。
[5]前記炭酸カルシウム粉末のJIS M-8511に準じて空気透過法により測定される平均粒子径が、0.7μm以上10.0μm以下である、[3]または[4]に記載の樹脂組成物。
[6]前記金属不活性化剤が、メラミン、3-サリチルアミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、1,2-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイル]ヒドラジン、N,N’-ジフェニルオキサミド、N-サリチル-N’-サリチルヒドラジン、N,N’-ビス(サリチル)ヒドラジン、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジン、ビス(ベンジリデン)オキサリルジヒドラジド、オキサニリド、イソフタロイルジヒドラジド、セバコイルビスフェニルヒドラジド、N,N’-ジアセチルアジポイルジヒドラジド、N,N’-ビス(サリチロイル)オキシリルジヒドラジド、およびN,N’-ビス(サリチロイル)チオプロピオニルジヒドラジドからなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記金属不活性化剤が、メラミン、3-サリチルアミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、および1,2-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイル]ヒドラジンからなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、[6]に記載の樹脂組成物。
[8]前記金属不活性化剤が、メラミンである、[7]に記載の樹脂組成物。
【0008】
本発明の一態様は、下記の成形品を提供する。
[9]前記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マンガンや鉄を含む無機粉末を含むにも拘わらず、高い伸びや引張強度を有し、加工性に優れる樹脂組成物、およびこれを含む成形品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は当該実施形態に限定されない。また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
1.樹脂組成物
本実施形態の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、無機粉末と、金属不活性化剤と、を含む。上記無機粉末中のマンガン元素の量は0.001質量%以上0.500質量%以下であり、かつ鉄元素の量は0.01質量%以上1.00質量%以下である。上述のように、無機粉末がマンガン元素や鉄元素を含む場合には、樹脂組成物の加工性が低くなりやすいという課題がある。これに対し、樹脂組成物が当該無機粉末や熱可塑性樹脂とともに、金属不活性化剤を一定量含むと、後述の実施例で実証するように、樹脂組成物の伸びや引張強度が格段に良好になり、加工性が非常に良好になる。以下、樹脂組成物中の各成分、および樹脂組成物の製造方法等について説明する。
【0012】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を含んでいればよく、ポリオレフィン系樹脂のみを含んでいてもよく、ポリオレフィン系樹脂およびその他の樹脂を含んでいてもよい。ただし、熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むことが好ましい。より具体的には、熱可塑性樹脂中のポリオレフィン系樹脂の量が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン由来の構成単位を主成分とする樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂を構成する全ての構成単位に対する、オレフィン由来の構成単位の量が50質量%以上である樹脂である。ポリオレフィン系樹脂は、一種のオレフィンの単独重合体であってもよく、二種以上のオレフィンの共重合体であってもよく、一種以上のオレフィンと、一種以上の他のモノマー(オレフィン以外のモノマー)との共重合体であってもよい。なお、ポリオレフィン系樹脂中のオレフィン由来の構成単位の量は、75質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0014】
上記オレフィンの例には、エチレンや、炭素数3~10のα-オレフィンが含まれ、その具体例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、4-メチルペンテン-1、3-メチル-1-ヘキセン、および1-オクテン等が含まれる。ポリオレフィン系樹脂は、これら由来の構成単位を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0015】
上記他のモノマーは、本実施形態の目的および効果を損なわないものであれば特に制限されない。他のモノマーの例には、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、エチリデンノルボルネン(ENB)、ノルボルナジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン等のジエン系モノマー;無水マレイン酸変性オレフィン等の酸(または酸無水物)変性オレフィン;(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリレート;等が含まれる。ポリオレフィン系樹脂は、これら由来の構成単位を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0016】
上記ポリオレフィン系樹脂は特に、ポリプロピレン系樹脂および/またはポリエチレン系樹脂が好ましい。なお、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂は、バージン樹脂であってもよく、再生樹脂であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0017】
本明細書において、「ポリプロピレン系樹脂」とは、プロピレン由来の構成単位が50質量%以上である樹脂をいい、プロピレン単独重合体や、プロピレンと他のモノマーとの共重合体(プロピレン共重合体)をいう。プロピレン単独重合体には、アイソタクティック、シンジオタクティック、アタクチック、ヘミアイソタクチックおよび種々の立体規則性を示す直鎖または分枝状ポリプロピレン等のいずれもが包含される。なお、プロピレンの立体規則性は13C-NMR等によって特定可能である。また上記プロピレン共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。また、プロピレン共重合体は、プロピレンと他のモノマーとの二元共重合体であってもよく、プロピレンと二種以上の他のモノマーとの多元共重合体であってもよい。好ましい共重合成分(他のモノマー)の例には、エチレンや炭素数が4以上のα-オレフィン、テトラフロロエチレン、酢酸ビニル等が含まれる。本実施形態では、ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体、または他のモノマー由来の構成単位を5質量%未満含むプロピレン共重合体が好ましい。
【0018】
一方、本明細書において、「ポリエチレン系樹脂」とは、エチレン由来の構成単位が50質量%以上である樹脂をいい、エチレン単独重合体や、エチレンと他のモノマーとの共重合体(エチレン共重合体)をいう。エチレン単独重合体の例には、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が含まれる。また、エチレン共重合体は、エチレンと他のモノマーとの二元共重合体であってもよく、エチレンと二種以上の他のモノマーとの多元共重合体であってもよい。好ましい共重合成分(他のモノマー)の例には、酢酸ビニル、炭素数が3以上のα-オレフィンが含まれる。本実施形態では、ポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体、または他のモノマー由来の構成単位を5質量%未満含むエチレン共重合体が好ましい。
【0019】
また、熱可塑性樹脂は、上述のように、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂をさらに含んでもよい。ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂の例には、ポリ(メタ)アクリル酸(エステル)、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、石油炭化水素樹脂、クマロンインデン樹脂等の熱可塑性樹脂;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・エチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、フッ素系エラストマー等のエラストマー;が含まれる。
【0020】
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、10質量%以上49.8質量%以下が好ましく、15質量%以上45質量%以下がより好ましく、18質量%以上43質量%以下がより好ましい。また、熱可塑性樹脂の量と、後述の無機粉末との含有質量比は50:50~10:90となる範囲が好ましく、45:55~15:85がより好ましい。熱可塑性樹脂の量が当該範囲であると、樹脂組成物の熱収縮量が小さく、かつ耐衝撃性が良好になるだけでなく、その加工性もさらに良好になりやすい。
【0021】
(無機粉末)
無機粉末は、無機物質からなる粉末であり、かつマンガン元素の量が0.001質量%以上0.500質量%以下であり、かつ鉄元素の量が0.01質量%以上1.00質量%以下であるものであればよい。無機粉末中のマンガン元素の量および鉄元素の量は、ICP発光分析装置等により特定可能である。なお、上記マンガンおよび鉄は、無機粉末中に、単体で含まれていてもよく、酸化物や硫化物、窒化物、硫化物等、他の元素との化合物として含まれていてもよい。
【0022】
無機物質の種類は、樹脂組成物の用途に応じてその種類は選択される。当該無機物質の例には、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、亜鉛、ケイ素、バリウム、モリブデン、ナトリウム、カリウムの炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酸化物、もしくはこれらの水和物が含まれる。また、無機物質の例には、無機系炭素化合物も含まれる。無機物質の具体例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー(例えばタルクやカオリン等)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、ウォラストナイト、ドロマイト、黒鉛等が含まれる。これらは合成のものであっても天然鉱物を原料とするものであってもよい。無機粉末は、これらを一種のみ、または二種以上含んでいてもよい。
【0023】
また、無機粉末の形状は特に制限されず、粒子状、フレーク状、顆粒状、繊維状等のいずれであってもよい。また、粒子状の場合、一般的に合成法により得られるような球形のものであってもよく、採集した天然鉱物を粉砕にかけることで得られるような不定形状のものであってもよい。
【0024】
無機粉末の好ましい例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウムの粉末が含まれ、特に炭酸カルシウム粉末が好ましい。炭酸カルシウムは、合成法により調製されたもの、いわゆる軽質炭酸カルシウムであってもよい。一方で、石灰石等のCaCOを主成分とする天然原料を機械的に粉砕分級して得られる、いわゆる重質炭酸カルシウムであってもよい。さらに、軽質炭酸カルシウムおよび重質炭酸カルシウムを組み合わせたものであってもよい。
【0025】
本実施形態では、上記炭酸カルシウム粉末が、コンクリートスラッジ、鉄鋼スラグ、カーバイドスラグ、廃コンクリート、石炭灰、バイオマス灰、焼却灰、廃石膏、アルカリ排水等を原料とする粉末であることが好ましく、鉄鋼スラグおよび/またはカーバイドスラグを原料とする粉末であることがより好ましい。これらを原料とする炭酸カルシウム粉末では、上述の量のマンガン元素や鉄元素を含むことが多い。
【0026】
また、当該炭酸カルシウム粉末は、化石燃料(産業排気ガス)由来の炭素を含むことが環境配慮という観点でさらに好ましい。炭酸カルシウム粉末が化石燃料由来の炭素を含むか否かは、炭素の同位体の特定によって、容易に行うことができる。具体的には、炭酸カルシウム粉末の下記式で表される炭素同位体の基準値からの偏差(以下、「δ13C値」とも称する)によって特定可能である。
【数1】
上記式における(13C/12C)基準は、0.011であり、(13C/12C)試料は、炭酸カルシウム粉末中の12Cの量に対する、13Cの量である。これらは、公知の方法で測定可能である。
【0027】
一般的に、石炭由来のδ13C値は、-30%~-20%であり、メタンは-20%以下である。一方、大気中の二酸化炭素のδ13C値は-10%~-7%程度である。したがって、上記δ13C値が-10%未満である場合に、化石燃料(産業排気ガス)由来の炭素を含むといえ、上記炭酸カルシウム粉末のδ13C値は、-10%未満であることが好ましい。
【0028】
ここで、上記無機粉末は表面改質されたものであってもよく、表面改質されていないものであってもよい。無機粉末の分散性という観点では、表面改質されたものであることが好ましい。無機粉末の表面改質方法の例には、プラズマ処理等による物理的な改質方法や、カップリング剤や界面活性剤等による化学的な改質方法が含まれる。化学的な改質方法に使用可能なカップリング剤の例には、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等が含まれる。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性および両性の何れのものも用いることができ、その例には高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩等が含まれる。
【0029】
また、無機粉末の平均粒子径は、特に制限されず、成形品の形状や厚さ等により適宜選択されるが、例えば0.7μm以上10.0μm以下が好ましく、0.7μm以上6.0μm以下がより好ましく、1.0μm以上4.0μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書における無機粉末の平均粒子径は、JIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した値をいう。測定機器の一例として、島津製作所製の比表面積測定装置SS-100型が挙げられる。無機粉末の平均粒子径が10.0μm以下であると、樹脂組成物から得られる成形品から無機粉末が脱落し難くなる。なお、無機粉末はその粒径分布において、粒子径が45μm以上である粒子を含有しないことが好ましい。他方で、上記平均粒子径が0.7μm以上であると、熱可塑性樹脂と混練する際の粘度が所望の範囲に収まりやすい。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物中の無機粉末の量は、樹脂組成物の総量に対して50質量%以上90質量%以下であればよく、55質量部以上85質量部以下がより好ましく、57質量部以上82質量部以下がより好ましい。また、上述のように、熱可塑性樹脂および無機粉末の含有質量比が50:50~10:90となる範囲であることが好ましい。無機粉末の量が当該範囲であると、樹脂組成物の熱収縮量が小さく、かつ耐衝撃性が良好になるだけでなく、その加工性もさらに良好になりやすい。
【0031】
(金属不活性剤)
金属不活性剤は、上記無機粉末が含むマンガン元素および鉄元素と相互作用し、これらを不活性化することが可能な化合物であればよい。金属不活性化剤の具体例には、メラミン、3-サリチルアミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、1,2-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイル]ヒドラジン、N,N’-ジフェニルオキサミド、N-サリチル-N’-サリチルヒドラジン、N,N’-ビス(サリチル)ヒドラジン、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジン、ビス(ベンジリデン)オキサリルジヒドラジド、オキサニリド、イソフタロイルジヒドラジド、セバコイルビスフェニルヒドラジド、N,N’-ジアセチルアジポイルジヒドラジド、N,N’-ビス(サリチロイル)オキシリルジヒドラジド、およびN,N’-ビス(サリチロイル)チオプロピオニルジヒドラジド等が含まれる。樹脂組成物は、金属不活性化剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0032】
上記の中でも、メラミン、3-サリチルアミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、および1,2-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイル]ヒドラジンが好ましく、特にメラミンが好ましい。金属不活性化剤がメラミンである場合、後述の実施例に示すように、樹脂組成物の伸びや引張強度が格段に高まりやすい。その理由はメラミンが無機粉末中のマンガン元素や鉄元素を不活性化するだけでなく、メラミン(金属不活性化剤)が、熱可塑性樹脂や無機粉末と相互作用するためである、と考えられる。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物中の金属不活性化剤の量は、樹脂組成物の総量に対して0.2質量%以上1.0質量%以下であればよく、0.2質量部以上0.8質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上0.6質量部以下がより好ましい。金属不活性化剤の量が0.2質量%以上であると、金属不活性化剤の添加効果が得られやすくなる。一方で、金属不活性化剤の量が過度に多くなると、樹脂組成物の伸びや引張強度が低下する傾向があるが、1.0質量%以下であれば、良好な伸びや引張強度が得られやすい。
【0034】
(その他の成分)
樹脂組成物は、本実施形態の目的および効果を損なわない範囲で、上記以外の成分をさらに含んでいてもよい。上記以外の成分の例には、滑剤、可塑剤、色材、酸化防止剤、難燃剤、発泡剤、流動調整剤等が含まれる。
【0035】
滑剤の例には、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、複合型ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸系滑剤;脂肪族アルコール系滑剤;ステアロアミド、オキシステアロアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、リシノールアミド、ベヘンアミド、メチロールアミド、メチレンビスステアロアミド、メチレンビスステアロベヘンアミド、高級脂肪酸のビスアミド酸、複合型アミド等の脂肪族アマイド系滑剤;ステアリン酸-n-ブチル、ヒドロキシステアリン酸メチル、多価アルコール脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル、エステル系ワックス等の脂肪族エステル系滑剤;脂肪酸金属石鹸系滑剤、例えばジンクステアレートやステアリン酸マグネシウム等が含まれる。
【0036】
可塑剤の例には、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチル・トリエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジ-2-メトキシエチル、酒石酸ジブチル、o-ベンゾイル安息香酸エステル、ジアセチン、エポキシ化大豆油等が含まれる。樹脂組成物は、これらを一種単独で、または二種以上含んでいてもよい。
【0037】
色材は、公知の有機顔料または無機顔料あるいは染料の何れであってもよい。色材の具体例には、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオオサジン系、ペリノン系、キノフタロン系、ペリレン系顔料等の有機顔料;群青、チタンイエロー、酸化クロム等の無機顔料;が含まれる。樹脂組成物は、これらを一種単独で、または二種以上含んでいてもよい。
【0038】
酸化防止剤の例には、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ペンタエリスリトール系酸化防止剤が含まれる。樹脂組成物は、これらを一種単独で、または二種以上含んでいてもよい。リン系、より具体的には亜リン酸エステル、リン酸エステル等のリン系酸化防止安定剤が好ましく用いられる。亜リン酸エステルの例には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が含まれる。
【0039】
リン酸エステルの例には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2-エチルフェニルジフェニルホスフェート等が含まれる。
【0040】
フェノール系の酸化防止剤の例には、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネイト、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネイトジエチルエステル、およびテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等が含まれる。
【0041】
難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン系難燃剤や、あるいはリン系難燃剤や金属水和物等の非リン系ハロゲン系難燃剤を用いることができる。樹脂組成物は、これらを一種単独で、または二種以上含んでいてもよい。
【0042】
ハロゲン系難燃剤の例には、ハロゲン化ビスフェニルアルカン、ハロゲン化ビスフェニルエーテル、ハロゲン化ビスフェニルチオエーテル、ハロゲン化ビスフェニルスルフォン等のハロゲン化ビスフェノール系化合物、臭素化ビスフェノールA、臭素化ビスフェノールS、塩素化ビスフェノールA、塩素化ビスフェノールS等のビスフェノール-ビス(アルキルエーテル)系化合物等が含まれる。リン系難燃剤の例には、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、リン酸トリアリールイソプロピル化物、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート、芳香族縮合リン酸エステル等が含まれる。金属水和物の例には、アルミニウム三水和物、二水酸化マグネシウムまたはこれらの組み合わせが含まれる。
【0043】
また、上記難燃剤と難燃助剤とを組み合わせてもよい。難燃助剤の例には、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモンや、その他の公知の難燃助剤が含まれる。
【0044】
発泡剤は、溶融混練機内で溶融状態にされている組成物に混合、または圧入することで、気泡を発生させることが可能な化合物であれば特に制限されない。発泡剤の例には、固体から気体に相変化して気泡を発生させるもの、液体から気体に相変化して気泡を発生させるもの、または気体そのもの等が含まれる。
【0045】
発泡剤の例には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;クロロジフルオロメタン、ジフロオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、パーフルオロシクロブタン等のハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、チッ素、空気等の無機ガス;水等が含まれる。
【0046】
発泡剤は、キャリアレジンと共に発泡剤の有効成分を含むものであってもよい。キャリアレジンとしては、結晶性プロピレン等の結晶性オレフィン樹脂等が挙げられる。また、有効成分としては、炭酸水素塩等が挙げられる。これらのうち、炭酸水素塩が好ましい。結晶性ポリプロピレン樹脂をキャリアレジンとし、炭酸水素塩を熱分解型発泡剤として含む発泡剤コンセントレートであることが好ましい。
【0047】
流動性調整剤としても、公知のものを使用することができる。流動性調整剤の例には、ジアルキルパーオキサイド等の過酸化物、例えば1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン等が含まれる。使用する熱可塑性樹脂の種類によっては、これら過酸化物は架橋剤としても作用させることができる。特に上記熱可塑性樹脂(ポリオレフィン系樹脂)がジエン由来の構成単位を有する場合には、当該過酸化物によって、上記ジエンを架橋させてもよい。
【0048】
帯電防止剤の例には、ラウリルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミド;アルコールアミン系化合物を始めとする水酸基含有化合物等が含まれる。特に、アルコールアミン類、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が好ましい。2種以上の帯電防止剤を併用することもできる。これら帯電防止剤は、ケイ酸カルシウムや炭酸カルシウム等に担持されていてもよい。なお、脂肪酸ジエタノールアミドのアシル基の炭素数の範囲としては8以上22以下が、十分な帯電防止効果を発揮するという観点で好ましい。
【0049】
(樹脂組成物の形状)
本実施形態の樹脂組成物の形状は特に制限されず、粒子状やペレット状、塊状等、任意の形状とすることができる。樹脂組成物がペレット状である場合、ペレットの形状は特に限定されず、円柱状、球形、楕円球状等のいずれの形状であってもよい。また、そのサイズも特に制限されず、形状に応じて適宜選択される。例えば、球形のペレットの場合、直径1~10mmとしてもよい。楕円球状のペレットの場合、長径を1~10mm程度とし、アスペクト比を0.1~1.0程度とすることができる。円柱状のペレットの場合は、直径を1~10mm程度とし、高さを1~10mm程度とすることができる。
【0050】
(樹脂組成物の製造方法)
上記樹脂組成物の製造方法は特に制限されない。上述の熱可塑性樹脂、無機粉末、金属不活性化剤、および必要に応じその他の成分を十分に混合可能であればよく、例えば溶融混錬によって調製可能である。このとき、全ての成分を混合してから溶融混錬してもよく、一部の成分のみを先に溶融混錬し、残りの成分を後から混錬してもよい。溶融混錬を行うための装置は特に制限されず、一般的な押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いることができる、特に均一な組成の樹脂組成物を得るという観点では、二軸混練機で混練することが好ましい。
【0051】
2.成形品
本実施形態は、上述の樹脂組成物の成形品も提供する。上述の樹脂組成物の成形方法は特に制限されず、その用途に応じて適宜選択される。上述の樹脂組成物は、加工性や引張強度が加工性に優れるため、いずれの方法においても、所望の形状に成形することができる。
【0052】
上記樹脂組成物の加工方法の例には、インフレーション成形法、押出成形法、射出成形法、発泡射出成形法、射出圧縮成形法、ブロー成形法、プレス成形法、カレンダー成形法、真空成形法等が含まれる。また、樹脂組成物から得られる成形品の形状や用途は特に制限されず、その例には、フィルム、シート、容器体(食品容器等)、日用品、自動車用部品、電気電子部品、各種消耗品等が含まれる。
【実施例
【0053】
本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0054】
[材料]
各実施例および比較例には、以下の成分を使用した。
【0055】
(無機粉末)
・GCC(備北粉化工業社製重炭酸カルシウム粉末(表面処理なし)、平均粒子径:2.2μm、Mn量:<0.001質量%、Fe量:0.005質量%)
・CCU1(鉄鋼スラグを原料とする炭酸カルシウム粉末、平均粒子径:3.5μm、Mn量:0.1質量%、Fe量:0.5質量%)
・CCU2(カーバイドスラグを原料とする炭酸カルシウム粉末、平均粒子径:4.0μm、Mn量:0.005質量%、Fe量:0.1質量%)
【0056】
(熱可塑性樹脂)
・PP1(ホモポリプロピレン、プライムポリマー社製、E111G)
・PP2(再生ポリプロピレン)
【0057】
(金属不活性化剤)
・CDA-1(3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、ADEKA社製、アデカスタブ CDA-1)
・CDA-6S(N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、ADEKA社製、アデカスタブ CDA-6S)
・CDA-10(N,N’-ビス(サリチル)ヒドラジン、ADEKA社製、アデカスタブ CDA-10)
・ZS-27(メラミン、ADEKA社製、アデカスタブ ZS-27)
・ZS-90(ADEKA社製、アデカスタブ ZS-90)
・ZS-91(ADEKA社製、アデカスタブ ZS-91)
・MD1024(N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジン、BASF社製、Irganox MD1024)
【0058】
(その他)
・滑剤(ステアリン酸、花王社製)
・帯電防止剤(リチウム塩、丸菱油化工業社製)
・酸化防止剤1(フェノール系酸化防止剤、ADEKA社製)
・酸化防止剤2(ホスファイト系酸化防止剤、ADEKA社製)
【0059】
[参考例1、2、比較例1、2および実施例1~13の樹脂組成物および成形品の製造]
表1に示す組成比で炭酸カルシウム粉末、熱可塑性樹脂、金属不活性化剤、およびその他の成分をパーカー社製同方向回転二軸混錬押出機HK-25D(φ25mm、L/D=41)に投入し、シリンダー温度230℃でストランド押出した。その後、冷却、カットすることでペレット化した。当該ペレットを、東洋精機製作所社製、Tダイ押出成形装置(φ20mm、L/D=25))に投入し、240℃で押出してシートを得た。このとき、引き取り方向に延伸倍率、1倍(延伸なし)、2倍、3倍、および4倍としたシートをそれぞれ作製した。延伸条件はそれぞれ、キャスト温度70℃、延伸温度は100℃とした。
【0060】
[実施例14~19の樹脂組成物および成形品の製造]
実施例8~13で作製したペレットをマスターバッチとし、これらのペレット80質量部と、熱可塑性樹脂(PP1)20質量部とを混合し、東洋精機製作所社製、Tダイ押出成形装置(φ20mm、L/D=25))に投入し、240℃で押出してシートを得た。このとき、引き取り方向に延伸倍率、1倍(延伸なし)、2倍、3倍、および4倍としたシートをそれぞれ作製した。延伸条件はそれぞれ、キャスト温度70℃、延伸温度は100℃とした。
【0061】
[評価]
上述の各樹脂組成物から作製したシートについて、以下の方法で、伸び、引張特性、延伸性、および延伸シートの引張特性を評価した。
【0062】
・伸びおよび引張強度の測定
上記実施例、比較例、および参考例で作製した延伸倍率1倍(延伸なし)のシートから、JIS K7161-2:2014に準拠してダンベル状の試験片を作製した。当該試験片について、JIS K7161-2:2014に準拠して、23℃、50%RHの条件下で、オートグラフAG-100kNXplus(島津製作所社製)を用いて、破断点伸びおよび引張強度を測定した。試験速度は50mm/分とした。結果を表1および表2に示す。
【0063】
・延伸性
上記実施例、比較例、および参考例で作製した延伸シートの外観から、各樹脂組成物の延伸性を以下の基準で評価した。△以上が実用上問題ない範囲である。結果を表1および表2に示す。
○:延伸ムラがなく、厚みや密度のバラつきが5%以内である
△:延伸ムラがなく、厚みや密度のバラつきが10%以内である
×:延伸ムラがある、あるいは延伸時に破膜する、あるいは厚みや密度のバラつきが10%を超える
【0064】
・延伸シートの伸びおよび引張強度の測定
上記実施例、比較例、および参考例で作製した延伸倍率3倍のシートから、JIS K7161-2:2014に準拠してダンベル状の試験片を作製した。そして、上記と同様に伸びおよび引張強度を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
[考察]
上記表1および表2に示すように、無機粉末中にマンガン元素や鉄元素を含み、かつ金属不活性化剤を含まない場合(比較例1および2)には、無機粉末中にマンガン元素および鉄元素をほとんど含まない場合(参考例1、2)と比較して、いずれも伸びや引張特性が低かった。
【0068】
これに対し、金属不活性化剤を樹脂組成物の総量に対して0.01質量%以上1.00質量%以下添加することで、樹脂組成物の伸びや引張特性が格段に向上した(実施例1~19)。また特に、金属不活性化剤としてZS-27(メラミン)を添加した場合には、無機粉末中にマンガン元素および鉄元素をほとんど含まない場合(参考例1、2)よりさらに良好な加工性を有していた(例えば実施例4,10~13、16~19)。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の樹脂組成物によれば、マンガンや鉄を含む無機粉末を含むにも拘わらず、高い伸びや引張強度を有し、加工性に優れる樹脂組成物、およびこれを含む成形品が得られる。したがって、鉄鋼スラグやカーバイドスラグ等を原料とする無機粉末を使用することが可能であり、各種工業製品の製造分野において有用である。
【要約】
【課題】マンガンや鉄を含む無機粉末を含むにも拘わらず、高い伸びや引張強度を有し、加工性に優れる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】上記課題を解決する樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、無機粉末と、金属不活性化剤と、を含み、前記無機粉末の含有量が50質量%以上90質量%以下であり、前記無機粉末中のマンガン元素の量が0.001質量%以上0.500質量%以下であり、かつ前記無機粉末中の鉄元素の量が0.01質量%以上1.00質量%以下であり、前記金属不活性化剤の含有量が0.2質量%以上1.0質量%以下である。
【選択図】なし