(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240606BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240606BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240606BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/302 101R
H01L21/31 C
C23C16/458
(21)【出願番号】P 2023515572
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2022026285
(87)【国際公開番号】W WO2024004147
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 充
(72)【発明者】
【氏名】竹林 央史
(72)【発明者】
【氏名】和氣 隼也
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-49685(JP,A)
【文献】特開2019-117861(JP,A)
【文献】登録実用新案第3182120(JP,U)
【文献】特開2020-57786(JP,A)
【文献】特開2009-158829(JP,A)
【文献】米国特許第6024631(US,A)
【文献】特開平9-129615(JP,A)
【文献】特表2019-514208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0115194(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ載置面を備えた半導体製造装置用部材であって、
前記ウエハ載置面に開口する複数のガス流出通路と、
前記半導体製造装置用部材の内部に設けられ、前記複数のガス流出通路に連通するガス共通通路と、
前記半導体製造装置用部材のうち前記ウエハ載置面とは反対側の面から前記ガス共通通路に連通し、前記ガス共通通路に連通する前記ガス流出通路の数よりも少ない数のガス流入通路と、
を備え、
前記複数のガス流出通路のうち前記ガス流入通路に近いものは、前記ガス流入通路から遠いものに比べてガス通過抵抗が大き
く、
前記ガス通過抵抗は、前記ガス流出通路に設けられた螺旋部の長さによって調整されているか、前記ガス流出通路に設けられた多孔質部の長さ又は密度によって調整されている、
半導体製造装置用部材。
【請求項2】
請求項
1に記載の半導体製造装置用部材であって、
上面に前記ウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性のベースプレートと、
を備え、
前記ガス共通通路及び前記ガス流入通路は、前記ベースプレートに設けられ、
前記ガス流出通路は、前記ガス共通通路から前記ウエハ載置面に至るように前記ベースプレート及び前記セラミックプレートに設けられている、
半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記ベースプレートは、冷媒流路を有し、
前記ガス共通通路は、前記ベースプレートのうち前記冷媒流路の下方に設けられ、
前記ガス通過抵抗は、前記ガス流出通路のうち前記ガス共通通路から前記ベースプレートの上面に至るまでの部分で調整されている、
請求項
2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
ウエハ載置面を備えた半導体製造装置用部材であって、
前記ウエハ載置面に開口する複数のガス流出通路と、
前記半導体製造装置用部材の内部に設けられ、前記複数のガス流出通路に連通するガス共通通路と、
前記半導体製造装置用部材のうち前記ウエハ載置面とは反対側の面から前記ガス共通通路に連通し、前記ガス共通通路に連通する前記ガス流出通路の数よりも少ない数のガス流入通路と、
上面に前記ウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性のベースプレートと、
を備え、
前記複数のガス流出通路のうち前記ガス流入通路に近いものは、前記ガス流入通路から遠いものに比べてガス通過抵抗が大きく、
前記ガス共通通路及び前記ガス流入通路は、前記ベースプレートに設けられ、
前記ガス流出通路は、前記ガス共通通路から前記ウエハ載置面に至るように前記ベースプレート及び前記セラミックプレートに設けられ、
前記ベースプレートは、前記ベースプレートを上下方向に貫通するベースプレート貫通穴内に絶縁スリーブを有し、
前記絶縁スリーブは、前記ガス共通通路の一部を構成する第1連通穴と、前記第1連通穴から前記絶縁スリーブの上面に至るように設けられ、前記ガス流出通路の一部を構成する第2連通穴と、を有し、
前記ガス通過抵抗は、前記絶縁スリーブの前記第2連通穴で調整されている、
半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記ガス通過抵抗は、前記ガス流出通路に設けられた螺旋部の長さ又は断面積によって調整されているか、前記ガス流出通路に設けられた多孔質部の長さ又は密度によって調整されている、
請求項4に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項6】
前記絶縁スリーブは、分離不能な1つの部材である、
請求項
4又は5に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項7】
前記絶縁スリーブの前記第1連通穴は、平面視で前記第2連通穴を中心として少なくとも3つの方向に放射状に設けられている、
請求項
4又は5に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項8】
前記絶縁スリーブの外径は、前記ガス共通通路の幅よりも小さい、
請求項
4又は5に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項9】
前記セラミックプレートと前記ベースプレートとは、導電性接合層によって接合され、
前記絶縁スリーブは、前記導電性接合層に挿入されている、
請求項
4又は5に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項10】
前記絶縁スリーブの上面は、上部樹脂接着層を介して前記セラミックプレートと接着され、前記絶縁スリーブの下部は、下部樹脂接着層又はシール材を介して前記ベースプレートに取り付けられている、
請求項
4又は5に記載の半導体製造装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上面にウエハ載置面を有する電極内蔵のセラミックプレートと、セラミックプレートの下面に接合された金属製のベースプレートとを備えた静電チャックが知られている。特許文献1では、こうした静電チャックにおいて、セラミックプレートの内部にウエハ載置面と平行に設けられたガス共通通路と、ガス共通通路からウエハ載置面に至る複数のガス流出通路と、ベースプレートを上下方向に貫通してガス共通通路に連通する1つのガス流入通路とを備えたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1では、ガス共通通路に連通する複数のガス流出通路のうちガス流入通路に近いものほどガス流量が多くなることがあった。一般に、静電チャックにウエハを載置してウエハを処理する際、予めウエハの裏面側の空間にガス流出通路を介して熱伝導ガス(例えばヘリウムガス)を充填しておく。しかしながら、ウエハの裏面側の空間に熱伝導ガスが充填される前の段階では、ガス流出通路ごとにガス流量が異なっていると、セラミックプレートとウエハとの熱交換がウエハの場所ごとに異なってしまい、ウエハに温度ムラが生じて不具合が生じることがある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ガス共通通路に連通する複数のガス流出通路から流出するガスの流量に差が生じないようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の半導体製造装置用部材は、
ウエハ載置面を備えた半導体製造装置用部材であって、
前記ウエハ載置面に開口する複数のガス流出通路と、
前記半導体製造装置用部材の内部に設けられ、前記複数のガス流出通路に連通するガス共通通路と、
前記半導体製造装置用部材のうち前記ウエハ載置面とは反対側の面から前記ガス共通通路に連通し、前記ガス共通通路に連通する前記ガス流出通路の数よりも少ない数のガス流入通路と、
を備え、
前記複数のガス流出通路のうち前記ガス流入通路に近いものは、前記ガス流入通路から遠いものに比べてガス通過抵抗が大きい、
ものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、ガス流入通路に導入されたガスは、ガス共通通路を通ってそのガス共通通路に複数設けられたガス流出通路に分配され、ガス流出通路を通ってウエハ載置面に流出する。ガス流入通路の数はガス流出通路の数よりも少ないため、ガス流入通路に外部から接続するガス導入管の数を少なくすることができる。また、複数のガス流出通路のうちガス流入通路に近いものは、ガス流入通路から遠いものに比べてガス通過抵抗が大きい。そのため、ガス共通通路に連通する複数のガス流出通路から流出するガスの流量に大きな差が生じない。したがって、ウエハに温度ムラが生じて不具合が生じるのを抑制することができる。
【0008】
[2]本発明の半導体製造装置用部材(前記[1]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記ガス通過抵抗は、前記ガス流出通路に設けられた螺旋部の長さ又は断面積によって調整されているか、前記ガス流出通路に設けられた多孔質部の長さ又は密度によって調整されていてもよい。こうすれば、ガス通過抵抗の調整を比較的簡単な構成で実現することができる。
【0009】
[3]本発明の半導体製造装置用部材(前記[1]又は[2]に記載の半導体製造装置用部材)は、上面に前記ウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性のベースプレートと、を備えていてもよく、前記ガス共通通路及び前記ガス流入通路は、前記ベースプレートに設けられていてもよく、前記ガス流出通路は、前記ガス共通通路から前記ウエハ載置面に至るように前記ベースプレート及び前記セラミックプレートに設けられていてもよい。
【0010】
[4]本発明の半導体製造装置用部材(前記[3]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記ベースプレートは、冷媒流路を有していてもよく、前記ガス共通通路は、前記ベースプレートのうち前記冷媒流路の下方に設けられていてもよく、前記ガス通過抵抗は、前記ガス流出通路のうち前記ガス共通通路から前記ベースプレートの上面に至るまでの部分で調整されていてもよい。こうすれば、ガス共通通路からベースプレートの上面に至るまでの部分は比較的長いため、その長い部分を利用してガス通過抵抗を比較的容易に調整することができる。
【0011】
[5]本発明の半導体製造装置用部材(前記[3]又は[4]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記ベースプレートは、前記ベースプレートを上下方向に貫通するベースプレート貫通穴内に絶縁スリーブを有していてもよく、前記絶縁スリーブは、前記ガス共通通路の一部を構成する第1連通穴と、前記第1連通穴から前記絶縁スリーブの上面に至るように設けられ、前記ガス流出通路の一部を構成する第2連通穴と、を有していてもよく、前記ガス通過抵抗は、前記絶縁スリーブの前記第2連通穴で調整されていてもよい。こうすれば、セラミックプレートやベースプレートとは別体の絶縁スリーブによってガス通過抵抗を調整することができる。また、半導体製造装置用部材の使用に伴ってガス流出通路の一部である絶縁スリーブの第2連通穴が劣化した場合、絶縁スリーブをベースプレートの下面側から取り外し、新たな絶縁スリーブを取り付けることができる。したがって、放電防止のメンテナンスを容易に実施することができる。
【0012】
[6]本発明の半導体製造装置用部材(前記[5]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記絶縁スリーブは、分離不能な1つの部材であってもよい。こうすれば、絶縁スリーブが複数の部材で構成されている場合に比べて、交換作業が簡易になる。
【0013】
[7]本発明の半導体製造装置用部材(前記[5]又は[6]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記絶縁スリーブの前記第1連通穴は、平面視で前記第2連通穴を中心として少なくとも3つの方向に放射状に設けられていてもよい。こうすれば、ベースプレート貫通穴に絶縁スリーブを挿入したときに、絶縁スリーブの回転位置によらず、ガス共通通路を流れてきたガスをガス流出通路へ送出することができる。
【0014】
[8]本発明の半導体製造装置用部材(前記[5]~[7]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記絶縁スリーブの外径は、前記ガス共通通路の幅よりも小さくてもよい。こうすれば、ガス共通通路の上流側から流れてきたガスの一部は、絶縁スリーブの外側を通ってガス共通通路の下流側へと進むことができる。
【0015】
[9]本発明の半導体製造装置用部材(前記[5]~[8]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記セラミックプレートと前記ベースプレートとは、導電性接合層によって接合されていてもよく、前記絶縁スリーブは、前記導電性接合層に挿入されていてもよい。こうすれば、ガス流出通路のうち導電性接合層を通過する部分も絶縁スリーブによって覆われるため、その部分で放電が起こるのを防止することができる。
【0016】
[10]本発明の半導体製造装置用部材(前記[5]~[9]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記絶縁スリーブの上面は、上部樹脂接着層を介して前記セラミックプレートと接着されていてもよく、前記絶縁スリーブの下部は、下部樹脂接着層又はシール材を介して前記ベースプレートに取り付けられていてもよい。こうすれば、絶縁スリーブの上面側の絶縁性を確保することができるし、ガスが絶縁スリーブの外周から外部へ漏出するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図5】ガス共通通路54を通る水平面でウエハ載置台10を切断した切断面を上から見たときの断面図。
【
図7】ガス流入通路52、ガス共通通路54及びガス流出通路56の概略説明図。
【
図10】絶縁スリーブ160の
説明図(斜視図及び縦断面図)。
【
図11】第1連通穴264を備えた絶縁スリーブ60の説明図。
【
図12】第1連通穴364を備えた絶縁スリーブ60の説明図。
【
図13】絶縁スリーブ60の下部にシールリング39を配置した例の説明図。
【
図14】絶縁スリーブ60の外径とガス共通通路54の幅とがほぼ一致している例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。
図1はウエハ載置台10の平面図、
図2は
図1のA-A断面図、
図3は
図2の部分拡大図(一点鎖線の枠内の拡大図)、
図4は絶縁スリーブ60の斜視図、
図5はガス共通通路54を通る水平面でウエハ載置台10を切断した切断面を上から見たときの断面図、
図6は
図5の部分拡大図(一点鎖線の枠内の拡大図)、
図7はガス流入通路52、ガス共通通路54及びガス流出通路56の概略説明図である。なお、本明細書において、「上」「下」は、絶対的な位置関係を表すものではなく、相対的な位置関係を表すものである。そのため、ウエハ載置台10の向きによって「上」「下」は「下」「上」になったり「左」「右」になったり「前」「後」になったりする。
【0019】
ウエハ載置台10は、本発明の半導体製造装置用部材の一例であり、
図2に示すように、セラミックプレート20と、ベースプレート30と、導電性接合層40と、ガス共通通路54と、ガス流入通路52と、ガス流出通路56と、絶縁スリーブ60とを備えている。
【0020】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20の上面は、ウエハWを載置するウエハ載置面21となっている。セラミックプレート20は、ウエハ載置面21から近い順に、静電電極22及びヒータ電極23を内蔵している。セラミックプレート20のウエハ載置面21には、
図1に示すように、外縁に沿って環状のシールバンド21aが形成され、シールバンド21aの内側の全面に複数の円形小突起21bが形成されている。シールバンド21a及び円形小突起21bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。ウエハ載置面21のうちシールバンド21aや円形小突起21bの設けられていない部分を、基準面21cと称する。セラミックプレート20は、ガス流出通路56の一部を構成するガス噴出穴26を有している。ガス噴出穴26は、セラミックプレート20と同心円上に複数(ここでは6つ)設けられている。ガス噴出穴26は、ウエハ載置面21のうち基準面21cに開口している。
【0021】
静電電極22は、平面状のメッシュ電極であり、図示しない給電部材を介して外部の直流電源に接続されている。給電部材は、導電性接合層40及びベースプレート30と電気的に絶縁されている。静電電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面及び円形小突起21bの上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面21への吸着固定が解除される。
【0022】
ヒータ電極23は、平面視でセラミックプレート20の全体にわたって一端から他端まで一筆書きの要領で配線された抵抗発熱体である。ヒータ電極23の一端と他端には、図示しない給電部材を介してヒータ電源が接続されている。給電部材は、導電性接合層40及びベースプレート30と電気的に絶縁されている。ヒータ電極23は、通電されると発熱してウエハ載置面21、ひいてはウエハWを加熱する。
【0023】
ベースプレート30は、導電率及び熱伝導率の良好な円板(セラミックプレート20と同じ直径かそれよりも大きな直径の円板)である。本実施形態では、ベースプレート30は、第1層30aと第2層30bと第3層30cとを、導電性接合層30d,30eで接合したものである。
【0024】
ベースプレート30の内部には、冷媒が循環する冷媒流路32が形成されている。冷媒流路32は、第1層30aの下面に設けられた凹溝である冷媒流路溝34と、その冷媒流路溝34の下部開口を塞ぐ導電性接合層30dとで構成されている。冷媒流路32を流れる冷媒は、液体が好ましく、電気絶縁性であることが好ましい。電気絶縁性の液体としては、例えばフッ素系不活性液体などが挙げられる。冷媒流路32は、平面視でベースプレート30の全体にわたって一端(入口)から他端(出口)まで一筆書きの要領で形成されている。冷媒流路32の一端及び他端には、図示しない外部冷媒装置の供給口及び回収口がそれぞれ接続される。外部冷媒装置の供給口から冷媒流路32の一端に供給された冷媒は、冷媒流路32を通過したあと冷媒流路32の他端から外部冷媒装置の回収口に戻り、温度調整されたあと再び供給口から冷媒流路32の一端に供給される。ベースプレート30は、高周波(RF)電源に接続され、RF電極としても用いられる。
【0025】
ベースプレート30の材料は、例えば、金属材料や金属とセラミックとの複合材料などが挙げられる。金属材料としては、Al、Ti、Mo又はそれらの合金などが挙げられる。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(MMC)やセラミックマトリックス複合材料(CMC)などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料(SiSiCTiともいう)、SiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料、Al2O3とTiCとの複合材料などが挙げられる。ベースプレート30の材料としては、セラミックプレート20の材料と熱膨張係数の近いものを選択するのが好ましい。ベースプレート30のうち、第1層30a、第2層30b及び第3層30cを上述した金属材料や金属とセラミックとの複合材料で作製し、導電性接合層30d,30eを後述する導電性接合層40と同様の材料で作製してもよい。
【0026】
導電性接合層40は、例えば金属接合層であり、セラミックプレート20の下面とベースプレート30の上面とを接合している。導電性接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0027】
ガス共通通路54は、ベースプレート30の内部に、ウエハ載置面21と平行に(つまり水平方向に)設けられている。なお、「平行」とは、完全に平行な場合のほか、完全に平行でなくても許容される誤差(例えば公差)の範囲内であれば平行とみなす。ガス共通通路54は、
図2に示すように、ベースプレート30の第2層30bと第3層30cとの間に設けられた通路であり、冷媒流路32の下方に設けられている。ガス共通通路54の上下方向の高さは、導電性接合層30eの上下方向の高さ(厚さ)を包含している。ガス共通通路54は、
図5に示すように、平面視でC字状(円弧状)に形成され、一端から他端に向かって複数(ここでは6つ)のスリーブ挿通部54aを有している。スリーブ挿通部54aは、平面視でガス共通通路54が円弧状に膨らんだ部分であり、その内径は絶縁スリーブ60の外径よりも大きい。そのため、スリーブ挿通部54aの円弧状の壁と絶縁スリーブ60との間には、ガスが通過可能なスペースが形成されている。複数のスリーブ挿通部54aは、ガス共通通路54に沿ってほぼ等間隔に設けられている。複数の絶縁スリーブ60は、ウエハ載置台10の外形をなす円の同心円上にほぼ等間隔に設けられている。
【0028】
ガス流出通路56は、ガス共通通路54からウエハ載置面21の基準面21cに至るように、1つのガス共通通路54に対して複数(ここでは6つ)設けられている。
【0029】
ガス流入通路52は、ベースプレート30の下面(ウエハ載置台10のうちウエハ載置面21とは反対側の面)からガス共通通路54の一端に至るように設けられている。ガス流入通路52は、ガス共通通路54に連通するガス流出通路56の数よりも少ない数、ここでは1つ設けられている。
【0030】
絶縁スリーブ60は、
図3に示すように、ベースプレート30を上下方向に貫通するベースプレート貫通穴31に配置されている。絶縁スリーブ60は、電気絶縁性材料(例えばセラミックプレート20と同じ材料)で作製されている。ベースプレート貫通穴31は、冷媒流路32を貫通しないように設けられている。絶縁スリーブ60は、
図4に示すように、分離不能な1つの円柱体であり、ガス共通通路54の一部を構成する第1連通穴64と、ガス流出通路56の一部を構成する第2連通穴66とを有している。第1連通穴64は、水平方向に沿って設けられている。本実施形態では、第1連通穴64は、
図6に示すように、平面視したときに第2連通穴66を中心として等角度(又はほぼ等角度)ごとに3つの方向に放射状に形成されている。第1連通穴64は、絶縁スリーブ60の中心から半径外方向に向かって拡径していることが好ましい。第2連通穴66は、
図3に示すように、絶縁スリーブ60の中心軸に沿って複数の第1連通穴64の交点から絶縁スリーブ60の上面に至るように設けられている。第2連通穴66は、セラミックプレート20のガス噴出穴26と共にガス流出通路56を構成する。第2連通穴66は、螺旋部67を有する。絶縁スリーブ60の上部は、
図3に示すように、導電性接合層40を上下方向に貫通する接合層貫通穴41に挿入され、絶縁性の樹脂接着層28を介してセラミックプレート20と接着されている。ベースプレート貫通穴31の下部は、他の部分よりも径が大きい大径部31dとなっている。絶縁スリーブ60の下部は、絶縁スリーブ60とベースプレート貫通穴31の大径部31dとの間に充填された樹脂接着層38により接着固定されている。
【0031】
図7は、C字状のガス共通通路54の中心線に沿ってウエハ載置台10を上下方向に切断した断面図を平面に広げた様子を表す。
図7は、ガス流入通路52、ガス共通通路54及びガス流出通路56の接続関係を示す説明図であるため、これらと関係のない構成要素は省略した。複数の絶縁スリーブ60の螺旋部67の長さは、ガス流入通路52に近いもの(つまり上流のもの)ほど長く、ガス流入通路52から遠いもの(つまり下流のもの)ほど短くなっている。これにより、複数の絶縁スリーブ60のガス通過抵抗は、ガス流入通路52に近いものほど大きく、ガス流入通路52から遠いものほど小さくなっている。螺旋部67の長さは、螺旋部67の巻き数としてもよい。このように、ガス通過抵抗は、ガス流出通路56のうちガス共通通路54からベースプレート30の上面に至るまでの部分、すなわち第2連通穴66で調整されている。各絶縁スリーブ60の螺旋部67の長さは、ガス流入通路52にガスを導入したときに各ガス噴出穴26から噴出するガスの流量が同じ(又はほぼ同じ)になるように設定されている。
【0032】
次に、ウエハ載置台10の製造方法の一例について
図8に基づいて説明する。
図8はウエハ載置台10の製造工程図である。ここでは、ベースプレート30をMMCで作製する場合を例示する。まず、静電電極22及びヒータ電極23を内蔵するセラミックプレート20を準備する(
図8A)。例えば、静電電極22及びヒータ電極23を内蔵するセラミック粉末の成形体を作製し、その成形体をホットプレス焼成することにより、セラミックプレート20を得る。続いて、そのセラミックプレート20にガス噴出穴26を形成する(
図8B)。
【0033】
これと並行して、MMC製の第1層~第3層30a~30cを準備する(
図8C)。そして、マシニング加工により、第1層~第3層30a~30cに、適宜、溝や穴を形成する(
図8D)。具体的には、第1層30aの下面に冷媒流路溝34を形成する。それと共に、第1層30aに、第1層30aを上下方向に貫通する第1層貫通穴31aを形成する。また、第2層30bに、第2層30bを上下方向に貫通する第2層貫通穴31bを形成し、第3層30cに、第3層30cを上下方向に貫通する段差付きの第3層貫通穴31cを形成する。第1層貫通穴31a~第3層貫通穴31cは、ベースプレート貫通穴31を構成するものである。また、第2層30bの下面と第3層30cの上面には、最終的にガス共通通路54となる凹溝(図示せず)を形成する。例えばセラミックプレート20がアルミナ製の場合、第1層~第3層30a~30cはSiSiCTi製かAlSiC製であることが好ましい。アルミナの熱膨張係数とSiSiCTiやAlSiCの熱膨張係数とは、概ね同じにすることができるからである。
【0034】
SiSiCTi製の層(円板部材)は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の円板部材を得る。
【0035】
続いて、第3層30cと第2層30bとの間に金属接合材82を配置し、第2層30bと第1層30aとの間に金属接合材81を配置し、第1層30aとセラミックプレート20との間に金属接合材80を配置する(
図8E)。金属接合材80,81,82には、第1層貫通穴31a~第3層貫通穴31cと対向する位置に予め貫通穴を設けておく。また、金属接合材81には、ガス共通通路54を形成する位置に予め貫通穴(長穴)を設けておく。続いて、これらを積層して積層体とし、金属接合材80,81,82の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、第1層30a~第3層30cは金属接合材81,82が変化した導電性接合層30d,30eによって接合されてベースプレート30になり、セラミックプレート20とベースプレート30とは金属接合材80が変化した導電性接合層40によって接合される(
図8F)。また、第1層貫通穴31a~第3層貫通穴31cが繋がってベースプレート貫通穴31になる。金属接合材80,81,82としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。
【0036】
続いて、ベースプレート貫通穴31の底面に露出しているセラミックプレート20に接着材としての樹脂ペーストを塗布し、ベースプレート貫通穴31に絶縁スリーブ60を挿入してセラミックプレート20に接着し、最後に絶縁スリーブ60の下部の周囲を樹脂ペーストでシールする。その結果、絶縁スリーブ60の上部は樹脂接着層28を介してセラミックプレート20に接着され、絶縁スリーブ60の下部は樹脂接着層38によりシールされる。こうすることにより、ウエハ載置台10が得られる(
図8G)。
【0037】
次に、絶縁スリーブ60の作製方法の一例について説明する。こうした絶縁スリーブ60は、WO2020/217406の「3次元焼成体の製法」に準じて作製することができる。
【0038】
まず、絶縁スリーブ成形体を作製する。絶縁スリーブ成形体は、焼成後に絶縁スリーブ60となるものである。絶縁スリーブ成形体の寸法は、焼成時に焼き締まることを考慮して、絶縁スリーブ60の寸法に基づいて決定される。絶縁スリーブ成形体は、成形型を用いて作製される。成形型は、コップ状(有底筒状)の本体の内部に中子を有するものである。成形型のうち中子を除いた内部空間(成形用空間)の形状は、絶縁スリーブ成形体と同じ形状になっている。
【0039】
成形型は、周知の3Dプリンタによって作製される。3Dプリンタは、ヘッド部から硬化前流動物をステージに向かって吐出して硬化前層状物を形成し、その硬化前層状物を硬化させるという一連の操作を繰り返す。3Dプリンタは、硬化前流動物として、成形型のうち最終的に必要な部位を構成する材料であるモデル材と、成形型のうちモデル材を支える基礎部分であって最終的に除去される部位を構成するサポート材とを備えている。モデル材としては、所定の洗浄液(水、有機溶剤、酸、アルカリ溶液など)に不溶な材料(例えばパラフィンロウなどのワックス)を使用し、サポート材としては、所定の洗浄液に可溶な材料(例えばヒドロキシ化ワックス)を使用する。3Dプリンタは、成形型の下から上へ所定間隔ごとに水平方向に層状にスライスしたスライスデータを用いて構造物を造形する。スライスデータは、CADデータを加工することにより作製される。スライスデータの中には、モデル材とサポート材とが混在したスライスデータもあれば、モデル材のみのスライスデータもある。3Dプリンタで造形された構造物は、洗浄液に浸漬して硬化後のサポート材を溶かして除去することにより、硬化後のモデル材のみからなる物体すなわち成形型が得られる。
【0040】
絶縁スリーブ成形体は、この成形型を用いてモールドキャスト成形により作製する。具体的には、成形型の成形用空間に、セラミック粉体、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むセラミックスラリーを注入し、ゲル化剤を化学反応させてセラミックスラリーをゲル化させることにより、成形型の内部に絶縁スリーブ成形体を作製する。その後、内部に絶縁スリーブ成形体が作製された成形型の成形型のみを溶融除去あるいは燃焼除去することにより、絶縁スリーブ成形体を得る。最後にその絶縁スリーブ成形体を焼成し、焼成体の外形寸法を整えることにより、絶縁スリーブ60を得る。
【0041】
次に、こうして構成されたウエハ載置台10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内にウエハ載置台10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置面21に載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の静電電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面や円形小突起21bの上面)に吸着固定する。また、ヒータ電極23に通電してセラミックプレート20を発熱させ、ウエハWを所定温度に加熱する。更に、ガス流入通路52には、図示しないガスボンベからバックサイドガスが導入される。バックサイドガスとしては、熱伝導ガス(例えばHeガス等)を用いる。ガス流入通路52に導入されたバックサイドガスは、ガス共通通路54を通って複数のガス流出通路56に分配されてウエハWの裏面とウエハ載置面21の基準面21cとの間の空間(ウエハWの裏面とウエハ載置面21のシールバンド21a、円形小突起21b及び基準面21cとで囲まれた空間)に充填され封入される。このバックサイドガスの存在により、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が効率よく行われる。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極とウエハ載置台10のベースプレート30との間にRF電圧を印加させてプラズマを発生させる。ウエハWの表面は、発生したプラズマによって処理される。ベースプレート30の冷媒流路32には、適時、冷媒が循環される。
【0042】
ガス流入通路52に流入した熱伝導ガスは、
図6に示すように、ガス共通通路54のスリーブ挿通部54aの上流側から絶縁スリーブ60に至ると、その一部は、絶縁スリーブ60の第1連通穴64に流入する。第1連通穴64に流入したガスの一部は、第2連通穴66及びガス噴出穴26(つまりガス流出通路56)を経てウエハWの裏面の空間に供給され、残りは、別の第1連通穴64を通過してガス共通通路54のうち絶縁スリーブ60の下流側に流れる。また、絶縁スリーブ60の第1連通穴64に流入しなかったガスは、絶縁スリーブ60とガス共通通路54のスリーブ挿通部54aとの隙間を通って絶縁スリーブ60の下流側に流れる。
【0043】
バックサイドガスがウエハWの裏面とウエハ載置面21の基準面21cとの間の空間に充填される前の段階では、バックサイドガスがその空間に徐々に溜まっていく。その段階で、ガス流出通路56ごとにガス流量が異なっていると、セラミックプレート20とウエハWとの熱交換がウエハWの場所ごとに異なってしまう。しかし、本実施形態では、複数のガス流出通路56はガス流量が同じかほぼ同じになるようにガス通過抵抗が調整されているため、セラミックプレート20とウエハWとの熱交換がウエハWの場所ごとに異なる事態が生じにくい。
【0044】
以上詳述したウエハ載置台10では、ガス流入通路52に導入されたガスは、ガス共通通路54を通ってそのガス共通通路54に複数設けられたガス流出通路56に分配され、ガス流出通路56を通ってウエハ載置面21に流出する。ガス流入通路52の数はガス流出通路56の数よりも少ないため、ガス流入通路52に外部から接続するガス導入管の数を少なくすることができる。また、複数のガス流出通路56のうちガス流入通路52に近いものは、ガス流入通路52から遠いものに比べてガス通過抵抗が大きい。そのため、ガスがウエハWの裏面とウエハ載置面21の基準面21cとの間の空間に充填される前の段階において、ガス共通通路54に連通する複数のガス流出通路56から流出するガスの流量に大きな差が生じない。したがって、その段階でウエハWに温度ムラが生じて不具合が生じるのを抑制することができる。
【0045】
また、ガス通過抵抗は、ガス流出通路56に設けられた螺旋部67の長さによって調整されている。そのため、ガス通過抵抗の調整を比較的簡単な構成で実現することができる。
【0046】
また、ガス通過抵抗は、ガス流出通路56のうちガス共通通路54からベースプレート30の上面に至るまでの部分で調整されている。ガス共通通路54からベースプレート30の上面に至るまでの部分は比較的長いため、その長い部分を利用してガス通過抵抗を比較的容易に調整することができる。
【0047】
また、セラミックプレート20やベースプレート30とは別体の絶縁スリーブ60によってガス通過抵抗を調整している。そのため、ウエハ載置台10の使用に伴ってガス流出通路56の一部である絶縁スリーブ60の第2連通穴66が劣化した場合、絶縁スリーブ60をベースプレート30の下面側から取り外し、新たな絶縁スリーブ60を取り付けることができる。したがって、放電防止のメンテナンスを容易に実施することができる。
【0048】
また、絶縁スリーブ60は、分離不能な1つの円柱体であるため、絶縁スリーブが複数の部材で構成されている場合に比べて、交換作業が簡易になる。
【0049】
また、絶縁スリーブ60の第1連通穴64は、平面視で第2連通穴66を中心として3つの方向に放射状に設けられている。そのため、ベースプレート貫通穴31に絶縁スリーブ60を挿入したときに、絶縁スリーブ60の回転位置によらず、ガス共通通路54の上流側から流れてきたガスを第2連通穴66(ガス流出通路56)へ送出することができる(
図6)。
【0050】
また、絶縁スリーブ60の外径は、ガス共通通路54のスリーブ挿通部54aの幅よりも小さい。そのため、ガス共通通路54の上流側から流れてきたガスの一部は、絶縁スリーブ60の外側(絶縁スリーブ60とスリーブ挿通部54aとの間)を通ってガス共通通路54の下流側へと進むことができる(
図6)。
【0051】
また、セラミックプレート20とベースプレート30とは、導電性接合層40によって接合され、絶縁スリーブ60は、その導電性接合層40に挿入されている。これにより、ガス流出通路56のうち導電性接合層40を通過する部分も絶縁スリーブ60によって覆われるため、その部分で放電が起こるのを防止することができる。
【0052】
また、絶縁スリーブ60の上面は、樹脂接着層28を介してセラミックプレート20と接着され、絶縁スリーブ60の下部は、樹脂接着層38を介してベースプレート30に取り付けられている。そのため、絶縁スリーブ60の上面側の絶縁性を確保することができるし、ガスが絶縁スリーブ60の外周から外部へ漏出するのを防止することができる。
【0053】
また、ガス流入通路52は、1つのガス共通通路54に対して1つ設けられている。そのため、ベースプレート30に設けるガス流入通路52の数を極力少なくすることができる。
【0054】
また、絶縁スリーブ60の第1連通穴64の高さは、ガス共通通路54の高さを包含している。そのため、絶縁スリーブ60をベースプレート貫通穴31に挿入したときに絶縁スリーブ60の第1連通穴64がベースプレート30のガス共通通路54に対して上下方向にずれてガス共通通路54の断面を狭めてしまうおそれが少ない。
【0055】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0056】
上述した実施形態では、ガス共通通路54の一端にガス流入通路52を接続したが、特にこれに限定されない。例えば、
図9に示すように、平面視でC字状のガス共通通路154の中央からウエハ載置台10の中心に向かって水平方向に延びるガス補助通路153を形成し、そのガス補助通路153の端部に、ベースプレート30の下面から上下方向に延びるガス流入通路152を接続してもよい。この場合、ガス共通通路154の両端のそれぞれにスリーブ挿通部54a及び絶縁スリーブ60が設けられる。ガス流入通路152に導入されたガスは、ガス補助通路153からガス共通通路54に至ると、時計方向と反時計方向の二手に分かれて流れていく(
図9の矢印参照)。複数の絶縁スリーブ60のうちガス流入通路152に近いもの(つまり上流のもの)は、ガス流入通路152から遠いもの(つまり下流のもの)に比べて、第2連通穴のガス通過抵抗が大きくなっている。したがって、
図9においても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏する。なお、
図9では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。
【0057】
上述した実施形態では、絶縁スリーブ60は分離不能な一つの部材としたが、特にこれに限定されない。例えば、絶縁スリーブ60の代わりに、
図10に示すように、互いに独立した下部円柱体161と上部円柱体162とを備えた絶縁スリーブ160を用いてもよい。
図10Aは絶縁スリーブ160の斜視図、
図10Bはその縦断面図である。下部円柱体161及び上部円柱体162は、電気絶縁性材料(例えばセラミックプレート20と同じ材料)で作製されている。下部円柱体161は、中実の円柱体である。下部円柱体161の上面と上部円柱体162の下面との間には、隙間が形成されている。この隙間は、ガス共通通路54の一部を構成する第1連通穴161aである。上部円柱体162は、第2連通穴162aを有している。第2連通穴162aは、ガス噴出穴26に連通し、ガス噴出穴26と共にガス流出通路56を構成する。第2連通穴162aは、上部円柱体162の下面から上方の所定の高さまでの区間(大径の収納部)に多孔質円柱体162bを備えている。収納部の高さは、多孔質円柱体162bの高さと同じである。多孔質円柱体162bは、収納部に圧入され、上下方向にガスが流通可能となっている。多孔質円柱体162bは、電気絶縁性材料(例えばセラミックプレート20と同じ材料)で作製されている。こうした絶縁スリーブ160は、ガス共通通路54に複数設けられるが、ガス流入通路52に近いもの(上流のもの)ほど収納部及び多孔質円柱体162bの上下方向の長さが長く(つまりガス流通抵抗が大きく)、ガス流入通路52から遠いもの(下流のもの)ほど収納部及び多孔質円柱体162bの上下方向の長さが短く(つまりガス流通抵抗が小さく)なっている。こうした絶縁スリーブ160を用いた場合でも、上述した実施形態と同様の効果を奏する。但し、絶縁スリーブ160は2つの独立した部材で構成されているため、絶縁スリーブ60に比べて、交換作業がやや煩雑になる。なお、多孔質円柱体162bの上下方向の長さによってガス通過抵抗を調整する代わりに、多孔質円柱体162bの密度によってガス通過抵抗を調整してもよい。しかし、調整しやすさを考慮すると、多孔質円柱体162bの上下方向の長さによって調整するのが好ましい。
【0058】
上述した実施形態では、絶縁スリーブ60の第2連通穴66に設けられた螺旋部67の長さでガス通過抵抗を調節するようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、螺旋部67の通路断面積(例えば穴径)でガス通過抵抗を調節してもよい。あるいは、絶縁スリーブ60の第2連通穴66について螺旋部67を廃止して直線状に形成し、第1連通穴64と第2連通穴66との交点にニードルバルブを取り付け、ニードルバルブのねじ込み量によって第1連通穴64から第2連通穴66へ向かう通路断面積を調整してガス通過抵抗を調整してもよい。但し、断面積は僅かの違いでガス通過抵抗が大きく変化するため、製造時の作業性を考慮すると、断面積ではなく長さでガス通過抵抗を調節するのが好ましい。
【0059】
上述した実施形態では、絶縁スリーブ60の第1連通穴64を、平面視で第2連通穴66を中心として3方向に放射状に設けたが、4方向以上に放射状に設けてもよい。
図11は、平面視で第2連通穴66を中心として第1連通穴264を4方向に放射状に設けた例の説明図である。ここでは、4つの第1連通穴264は等角度(ほぼ等角度)ごとに設けられている。このようにしても、絶縁スリーブ60をベースプレート貫通穴31に取り付ける際に、第1連通穴
264の向きを考慮する必要がない。あるいは、
図12に示すように、平面視で第2連通穴66と交差する直線状の第1連通穴364を設けてもよい。その場合、絶縁スリーブ60をベースプレート貫通穴31に取り付ける際に、直線状の第1連通穴364の向きをガス共通通路54の向きに合わせる作業が必要になる。なお、
図11及び
図12では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。
【0060】
上述した実施形態では、絶縁スリーブ60の下部を樹脂接着層38によりベースプレート貫通穴31の大径部31dに接着してシールしたが、特にこれに限定されない。例えば、
図13に示すように、絶縁スリーブ60とベースプレート貫通穴31の大径部31dとの間にシールリング39を配置して、ガスが絶縁スリーブ60の外周から外部へ漏出するのを防止してもよい。シールリング39は、金属製でもよいし、樹脂製でもよい。なお、
図13では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。
【0061】
上述した実施形態では、ガス共通通路54のスリーブ挿通部54aと絶縁スリーブ60との間にガスが通過可能な隙間を設けたが、特にこれに限定されない。例えば、ガス共通通路54にスリーブ挿通部54aを形成せず、絶縁スリーブ60の外径をガス共通通路54の幅よりも小さくなるようにしてもよい。このようにしても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏する。あるいは、
図14に示すように、円弧状に膨らんだスリーブ挿通部54aを省略し、絶縁スリーブ60の外径をガス共通通路54の幅と一致(あるいはほぼ一致)させてもよい。なお、
図14では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。この場合、ガスは絶縁スリーブ60の外側を通ってガス共通通路54の下流側へと進むことはできないが、それ以外は上述した実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0062】
上述した実施形態では、ガス流出通路56の一部を構成する第2連通穴66に螺旋部67を設けたが、螺旋部67の代わりにジグザグ部を設けて、そのジグザグ部の長さ等でガス通路抵抗を調整してもよい。
【0063】
上述した実施形態では、ガス流出通路56のうちベースプレート30内の第2連通穴66でガス通過抵抗を調整したが、特にこれに限定されない。例えば、ガス流出通路56のうちセラミックプレート20内のガス噴出穴26でガス通過抵抗を調整してもよい。
【0064】
上述した実施形態では、ガス共通通路54をベースプレート30に設けたが、ガス共通路をセラミックプレート20に設けてもよい。その場合、ガス通過抵抗は、ガス共通通路からウエハ載置面に至るまでの通路で調整される。
【0065】
上述した実施形態では、ガス流入通路52の数は、ガス共通通路54に対して1つとしたが、ガス共通通路54に設けられているガス流出通路56の数よりも少ない数であればよい。例えば、ガス共通通路54に対してガス流入通路52の数が2つある場合、複数のガス流出通路56がガス流入通路52に近いか遠いかを判断するにあたっては、ガス流出通路56から近い方のガス流入通路52までの距離を用いて判断すればよい。
【0066】
上述した実施形態では、ガス共通通路54は、平面視でC字状としたが、特にこれに限定されない。例えば、平面視で渦巻き状としてもよい。また、平面視でC字状のガス共通通路54を複数の同心円に沿って複数設けてもよい。
【0067】
上述した実施形態では、セラミックプレート20に静電電極22及びヒータ電極23を内蔵したが、特にこれに限定されない。例えば、セラミックプレート20に静電電極22及びヒータ電極23のいずれか一方のみを内蔵してもよい。あるいは、ヒータ電極23を厚さ方向に二段又はそれ以上となるように内蔵してもよい。
【0068】
上述した実施形態において、ウエハ載置台10を貫通するリフトピン穴を設けてもよい。リフトピン穴は、ウエハ載置面21に対してウエハWを上下させるリフトピンを挿通するための穴である。リフトピン穴は、ウエハWを例えば3本のリフトピンで支持する場合には3箇所に設けられる。
【0069】
上述した実施形態では、セラミックプレート20はセラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製したが、そのときの成形体は、テープ成形体を複数枚積層して作製してもよいし、モールドキャスト法によって作製してもよいし、セラミック粉末を押し固めることによって作製してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の半導体製造装置用部材は、例えばウエハをプラズマなどで処理する分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 ウエハ載置台、20 セラミックプレート、21 ウエハ載置面、21a シールバンド、21b 円形小突起、21c 基準面、22 静電電極、23 ヒータ電極、26 ガス噴出穴、28 樹脂接着層、30 ベースプレート、30a 第1層、30b 第2層、30c 第3層、30d,30e 導電性接合層、31 ベースプレート貫通穴、31a 第1層貫通穴、31b 第2層貫通穴、31c 第3層貫通穴、31d 大径部、32 冷媒流路、34 冷媒流路溝、38 樹脂接着層、39 シールリング、40 導電性接合層、41 接合層貫通穴、52 ガス流入通路、54 ガス共通通路、54a スリーブ挿通部、56 ガス流出通路、60 絶縁スリーブ、64 第1連通穴、66 第2連通穴、67 螺旋部、80,81,82 金属接合材、152 ガス流入通路、153 ガス補助通路、154 ガス共通通路、160 絶縁スリーブ、161 下部円柱体、161a 第1連通穴、162 上部円柱体、162a 第2連通穴、162b 多孔質円柱体、264,364 第1連通穴。