(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】コヒーレント分散型音響センシングの信号対雑音(SNR)を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20240606BHJP
G01D 5/353 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G01H9/00 E
G01D5/353 B
(21)【出願番号】P 2023535007
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2021064751
(87)【国際公開番号】W WO2022140483
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-08
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ホ、 ジュンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ティン
(72)【発明者】
【氏名】村上 修司
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03339819(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0370950(US,A1)
【文献】特開2020-106306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 9/00
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント分散型音響センシング(DAS)システムの信号対雑音(SNR)を向上させる方法であって、
インタロゲータによって、質問光を生成し、該質問光を光センシングファイバに送ることであって、前記光センシングファイバが、1つまたは複数のファイバマイクロホンを含み、個々のマイクロホンが、前記光センシングファイ
バを周囲に巻き付けた音響信号コレクタ(ファイバコイル)を含むことと、
コヒーレント検出器によって、前記光センシングファイバに送られた前記質問光から生じる後方散乱光を検出することと、
コヒーレント検出器によって、検出された後方散乱光を示す信号を生成および出力することと、
信号処理装置によって、検出された後方散乱光を示す前記出力された信号を分析し、前記光センシングファイ
バに沿った位置に関連し、該位置における前記光センシングファイバの振動および音響環境を示す歪み信号を決定することと、を含み、
前記分析することは、前記光センシングファイ
バに沿った位置間の位相変化を決定するために使用される、前記光センシングファイ
バに沿った
複数の位置のペアに対する出力信号の複素積(ビート積)を決定する方法。
【請求項2】
前記位置のペアは、ファイバマイクロホンの一部である位置である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分析することは、前記光センシングファイ
バに沿った複数の位置のペアついての出力信号の複素積を決定することであり、前記複素積が、前記複数の位置のペアの各々の間の位相変化を決定するために使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の位置のペアは、ファイバマイクロホンの一部である位置である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の位置のペアの一部は、ファイバマイクロホンの一部である位置であり、前記複数の位置のペアの他のものは、ファイバマイクロホンの一部ではない、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ビートタップが前記複数のペアから選択され、前記ビートタップは、所与の長さのファイバコイルに対して最大の信号対雑音を示す、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
ビートタップは、所与の長さのファイバコイルに対して最大の信号対雑音を示すファイバマイクロホンの一部である前記複数のペアから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のペアの各々は差動ペアを含み、前記ペアの一方の要素がファイバマイクロホンの一部であり、前記ペアの他方の要素が前記ファイバマイクロホンの外側にある、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記ファイバコイルに沿った前記マイクロホンの端部からの距離aを有する前記ファイバマイクロホ
ンの内側の開始点は、ビートタップを前記マイクロホンのファイバコイル長に設定することによって決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のペアの個々の要素は、前記センシングファイバに沿って選択的に再配置され、
選択的に再配置された複数のペアに基づいて、SNRの新しい決定が行われる、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、コヒーレント分散型音響センシング(DAS)に関する。より詳細には、本開示は、コヒーレントDASの信号対雑音(SNR)を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者であれば理解できるように、DASシステムは、光センシングファイバのレイリー散乱効果を利用して、ファイバの歪みの変化を検出する。後方散乱光を用いたコヒーレント分散型音響センシング(CO-DAS)は、ファイバに沿った任意の位置でファイバの歪みに対して実質的な線形の応答を同時に示す。この特性は、環境から音響信号を回復するために使用され、これにより、DASは、光センシングファイバの音響環境を感知し、その環境における音響イベントを「聞く」ことができる。
【0003】
しかしながら、空気を介した光センシングファイバの音響刺激は、特に、音響源が光センシングファイバから離れた場所にある場合には、非常に弱い。刺激レベルを高めるために、音響感応材料に巻き付けられたファイバコイルが使用されることがあるが、SNRが制限されているため、検出距離と振幅レベルに限界があり、信号の変動が性能にさらに影響を及ぼす。したがって、信号変動に対する耐性を高めつつ、空気を介した音響刺激に対する光センシングファイバの感度を向上させる方法は、当技術分野における大きな進歩となる。
【発明の概要】
【0004】
当技術分野における進歩は、差動位相を利用して、DASセンシングファイバの2つの位置間の位相変化を検出し、2つの位置間の中間ファイバ位置における振動/音響活動/環境を確認するDAS方法を対象とする本開示の態様に従ってなされる。
【0005】
さらに、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、音響感応材料で巻かれたファイバのセグメント(「音響信号コレクタ」)を含むファイバコイルを使用することができる。この材料は、環境音響信号に応答し、その結果、ファイバに歪みが加えられる。
【0006】
さらに、本開示の態様によるファイバコイル、システム、方法、および構造は、ファイバコイルの両端の間の測定された位相差を使用するのではなく、ファイバコイルの一端からファイバコイルの他端(コイルの左側からコイルの右側)まで(さらに延長可能)、収集されたすべてのサンプルを使用する。ファイバコイルの一部または全部をカバーする2つのサンプルは、位相差を決定するためにペア(「差動ペア」)として使用され、全てのペアからの結果が平均化されて、従来技術の方法と比較して、ノイズレベルが低く、より安定した信号を示す1つの出力を形成する。
【0007】
動作上、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、複数の差動ペアを使用して、各ペアの位相差を決定し、次いで、それらの結果を加算して1つの単一の出力を生成する。各ペアは、ファイバコイルの一部または全部をカバーする(ファイバコイルの一部または全部に関連付けられている)。
【0008】
この合成は、有利には、位相調整後、またはDCが除去された位相出力後の複素領域のいずれかで行われ、完全に同期された位相を有して出力を向上させる。ペア間のファイバ距離(「ビートゲージ」)、開始点および終了点などの適応パラメータ調整を使用して、出力を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示のより完全な理解は、添付図面を参照することによって実現され得る。
【0010】
【
図1(A)】例示的な従来技術のDAS構成の概略図である。
【0011】
【
図1(B)】本開示の態様による例示的なコヒーレントDAS構成の概略図である。
【0012】
【
図1(C)】本開示の態様による例示的なDAS構成の概略図である。
【0013】
【
図2】本開示の態様によるDAS構成における光センシングファイバのマイクロホン部上でのビートを示す図である。
【0014】
【
図3】本開示の態様によるDAS構成における光センシングファイバのマイクロホン部内のビートペアを示す図である。
【0015】
【
図4】本開示の態様によるDAS構成におけるすべてのビートサンプルが光センシングファイバのマイクロホン部内にあるときの、SNR対ビートタップを示すプロットである。
【0016】
【
図5】本開示の態様によるDAS構成におけるマイクロホンファイバの側面の包含を示す図である。
【0017】
【
図6(A)】本開示の態様によるマイクロホンファイバの内側および外側の両方に及ぶビートペアと、SNR傾向とを示す図であって、1からnまでのalからの変化を示す図である。
【
図6(B)】本開示の態様によるマイクロホンファイバの内側および外側の両方に及ぶビートペアと、SNR傾向とを示す図であって、正規化SNRを示すプロットである。
【0018】
【
図7(A)】本開示の態様によるマイクロホンの外側で使用可能な部分を示す図であって、(q+a)>=nを示す図である。
【
図7(B)】本開示の態様によるマイクロホンの外側で使用可能な部分を示す図であって、(q+a)<nを示す図である。
【0019】
【
図8】本開示の態様による、q=20、w=100のときの
図7のSNR対ビートタップのプロットである。
【0020】
【
図9】本開示の態様による、q個の位置の空間平均化を示す図である。
【0021】
例示的な実施形態は、図面および詳細な説明によってより完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は様々な形態で実施することができ、図面および詳細な説明に記載された特定のまたは例示的な実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0023】
さらに、本明細書に記載されているすべての実施例および条件付き用語は、本開示の原理および技術を促進するために発明者によって寄与された概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためだけのものであることを意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0024】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を記載する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物と、将来開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発された要素との両方を含むことが意図されている。
【0025】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図が、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことは、当業者には理解されるであろう。
【0026】
本明細書で特に明記しない限り、図面を構成する図は、縮尺通りに描かれていない。
【0027】
いくつかの追加の背景として、近年、分散型振動センシング(DVS)や分散型音響センシング(DAS)を含む分散型光ファイバセンシング(DFOS)システムが、インフラストラクチャ監視、侵入検出、および地震検出を含むがこれらに限定されない多くの用途で広く受け入れられていることに改めて留意する。DASおよびDVSでは、後方レイリー散乱効果を用いてファイバの歪みの変化を検出し、ファイバ自体が後続の分析のために光センシング信号をインタロゲータに戻す伝送媒体として機能する。
【0028】
図1(A)は、インタロゲータ/コヒーレント受信機/検出/分析システムを使用する従来技術のDFOS/DVS/DASシステムの簡略化した概略図を示す。動作上、このようなシステムは、光Tx信号を生成して光センシングファイバに印加し、その結果、反射/散乱した光信号が受信機/分析システムに戻され、受信機/分析システムは、反射/散乱され、その後に受信された信号を受信/検出/分析する。信号が分析され、ファイバの長さに沿って遭遇する環境条件を示す出力が生成される。
【0029】
図1(C)は、センシングファイバと光通信するコヒーレントDASインタロゲータを含む分散型音響センシング(DAS)構成を示し、センシングファイバの長さに沿った様々な位置に形成されたファイバマイクロホンとして動作する複数のファイバセンシングコイルを有することが示されている。本明細書で使用される場合、ファイバマイクロホンは、音響信号コレクタ(環境内の音響信号に敏感な形状を有し、環境音響信号に遭遇したときに、その表面で対応する動きをする材料)と、この信号コレクタに巻き付けられたファイバコイルとを使用する。当業者には容易に理解され、認識されるように、センシングファイバのマイクロホン部のファイバコイルによって感知された音響信号は、リアルタイムの環境音響活動を測定するために、記憶され、再生され、分析され得る。
【0030】
当業者であれば理解し、認識するように、コヒーレントDASでは、センシングファイバの長さに沿った2つの検出位置間の位相差の変化は、2つの位置間のセンシングファイバの歪みの変化を示し、これはさらに感知した環境音響/振動信号を示す。当業者であれば容易に理解できるように、これはコヒーレントDAS信号検出の原理である。位相差は、通常、当技術分野で「ビート」として知られている2つのサンプルの内積を用いて決定されることに留意されたい。2つのサンプルを構成する2つの位置間の距離は、「ビートゲージ」と呼ばれ、または、サンプルの数を使用して距離を表す場合は、「ビートタップ」と呼ばれる。
【0031】
図2は、マイクロホンmを含む、本開示の態様によるDAS構成における光センシングファイバのマイクロホン部上のビートを示す。この図にはさらに、パルスまたはフレームサイクルtにおける、位置iからのサンプル(単一パルスからの後方散乱信号または特定の符号化系列からの復号信号のいずれか)である
【数1】
が示されている。
【数2】
は、
【数3】
を用いたビート積であり、ここで
【数4】
は、サンプル
【数5】
の複素共役であり、Tはビートタップである。
【0032】
本開示の態様による一実施形態では、ビート積
【数6】
は、まず、短期平均位相
【数7】
はすべてのiについて互いに調整されるように、
【数8】
に回転され、次いで、
【数9】
を加算して、時間tにおいて単一の出力を生成する。
【0033】
【数10】
となるように、各位置
【数11】
の複素信号をその時間平均
【数12】
の共役で回転させる例示的な位相調整方法が、本出願人によって以前に説明されている。一実施形態では、
【数13】
の位相が最初に抽出され、tにわたってアンラップされた後、DCが除去されて、i=0,l,...,n-1についての結果が平均化されて、出力を得る。
【0034】
なお、
【数14】
は、ペアがマイクロホンを含むセンシングファイバの少なくとも一部分を含む限り、すなわち、マイクロホンの一部分またはマイクロホン全体のいずれかを「覆う」限り、マイクロホン部の内側または外側でもよいことに留意されたい。有利には、センシングファイバの長さの開始点
【数15】
および終了点
【数16】
のセンシングファイバ位置、およびビートタップTは、全て、実行時、ユーザ、または、より優れた性能を実現するために自動的に構成可能である。
【0035】
マイクロホンは、侵入検出などの他のDAS機能と並行して動作する。このため、マイクロホンのビートタップと他の機能とを別々に設定することができる。
ビートタップおよび平均化
【0036】
図1に示すファイバマイクロホン構成では、音響信号コレクタが環境音響信号に線形に応答し、ファイバに通常の歪みを加えると仮定する。s(t)を時間tにおける環境音響信号とすると、s(t)によって引き起こされる光信号/sの位相変化は、マイクロホンmを含むファイバスパン全体で
【数17】
となり、ここで、h
mは定数である。さらに、このファイバスパンにわたってM
m個のサンプルがあり、隣接する2つのサンプルごとに位相差の変化が
【数18】
になると仮定する(議論を単純化するために、偏波スイッチングや位相ドリフトなどのゆっくりと変化する光学効果は考慮しない)。例示的なビートペアAとBが、マイクロホンファイバスパン内の7タップにわたる場合、ビート積からの位相変化は、
【数19】
になる。
【0037】
ノイズを考慮し、さらに複素信号の振幅が一定であると仮定すると(実際のシステムにおける振幅変動は後述する)、処理後の位相は、
【数20】
となり、ここでn
A(t)およびn
B(t)は、ビートペアのノイズである。分散
【数21】
のファイバに沿ったガウスのノイズであると仮定すると、信号対雑音(SNR)は次式で定義される。
【数22】
【0038】
一実施形態では、
図3に例示的に示すように、ビートペアはマイクロホン部内にある。この図を参照すると、選択されたビートタップはTであり、サンプル数は(n+1)であり、ビートペア数は(n-T+1)である。複素信号
【数23】
は、まず同じ平均化方向に調整され、次いで合計されて1つの出力を生成することができる。
【0039】
偏波ダイバーシティを合成する処理は、従来技術の方法を使用して達成することができることに留意されたい。あるいは、各ビート要素からの位相は、各DCが除去された後に平均化される。平均化では、T≦(n-1)/2のとき、サンプル0およびnを除いて、各サンプルが2回使用される。これらのビート結果の合計では、各サンプルは、2σ2ではなく、(2σ)2としてノイズの分散に寄与する。T>(n-1)/2の場合、各サンプルは1回使用され、全ノイズの分散にσ2として寄与する。
【0040】
図4は、全てのビートサンプルがマイクロホン部内にある場合のSNR対ビートタップと、様々な数のビートタップについてのn=101の場合の計算されたSNRとを示すプロットである。所与のnに対して最適な設定があることが確認できるので、実際のシステムでは、サンプルの数が与えられると、最適なビートタップを計算し、最もSNRが高くなるように設定することができる。
【0041】
なお、マイクロホン部から出るセンシングファイバの一部分も、この平均化の目的のために使用できることに留意されたい。場合によっては、対象となる周波数帯域では、ファイバが静かであるか、感知された信号が空間的に互いに打ち消し合うため、サンプルはノイズのみと見做すことができ、マイクロホンの内部として扱うことができる。
【0042】
ここで
図5を参照すると、固定ビートタップを使用することを考え、図の左側に示されているファイバ部をマイクロホンに使用する。マイクロホン部の外側の測定値が測定部の内側の測定値以上である場合、ビートゲージをマイクロホンのファイバ長に設定することができる。例示的な100サンプルのマイクロホンスパンの場合、
図6(A)に示すようにファイバ内の開始点「a」をa+1に変更すると、
図6(B)に示される計算されたSNR曲線が得られ、それから最適パラメータaを見つけることができる。
【0043】
使用可能な外側の長さ(例えば、q個のサンプル)がマイクロホンの長さ(n個のサンプルを有する)よりも短く、どのサンプルも2回使用されていない場合、以下の手順を使用して最適なビートタップと平均化パラメータを得ることに留意されたい。
【0044】
まず、外側の長さが無制限であると仮定して、
図6(a)に例示するように最適な開始点aを決定する。
【0045】
(q+a)≧nの場合、
図7(a)に例示的に示すように、nをビートタップとして使用し、aを開始点として使用し、それ以外の場合、次のステップを使用する。
【0046】
(q+a)~nの範囲のビートタップについて、
図7(b)に例示的に示するように、平均SNRを計算する。設定されたビートタップとして、最も高いSNRのタップ番号を使用する。
【0047】
例えば、n=100、q=20のSNR曲線が示されている。最適なビートタップをこの曲線から選択することができる。
【0048】
なお、センシングファイバのマイクロホン部から外れた場合には、他の方法を適用することができる。センシングファイバのマイクロホン部の外側の各位置について、上記の方法を使用してパラメータ(ビートタップおよび開始点)を計算する。次に、マイクロホン部の前後(両側)のセンシングファイバの部分に使用されるサンプルについて、マイクロホン内の長さが大きいペアを使用し、もう一方を無視する。
マイクロホン外部の選択
【0049】
マイクロホン部の外側のセンシングファイバの部分で発生する対象の音響帯域内の任意の信号は、それを横切るすべてのビートペアの最終出力に追加されるため、上記の平均化方法では回避する必要がある。
【0050】
マイクロホン外信号を回避するための1つの解決策は、DAS振動検出機能を使用することである。マイクロホンに関連する音響再生/分析機能は、ほとんどの場合、他のDAS機能、特に振動検出機能と並行して動作することに留意されたい。振動出力を使用して、マイクロホン部の外側のセンシングファイバ位置から空間平均を取得し、それらを予め設定された閾値と比較することで、使用可能な位置の数を決定することができる。
ある期間Taの平均値が閾値よりも低い場合、セクション全体をマイクロホン信号の平均化に使用することができる。なお、閾値とTaは両方とも適応可能であり、空間平均化は、
図9に例示的に示されるように、qごと(q=1~n、またはq=3,6,9,...,nなどのより大きなブロックごとに)、
【数24】
を計算することができることに留意されたい。ここで、
【数25】
は相対位置iにおける振動である。
【0051】
あるいは、システムは、振動出力と同様の方法であるが、ビートと位相調整の後に、瞬時平均信号(instant averaged signal)を使用してもよい。マイクロホン外サンプルの選択は、ユーザインターフェースや分析ソフトウェアなどの上位レイヤーによってパラメータとして設定することもできる。
信号の変動および歪みの処理
【0052】
動作中、DASシステムは、レイリー効果による信号変動と、センシングファイバの長さに沿った信号損失を示す。どちらの場合も、ノイズの分散は一定で、信号レベルだけが変化していると考えることができる。最適な平均SNRを確認するための解決策は、各ビートペアの時間平均平方根電力を重みとして使用し、この重みを対応するビート結果に適用することによって行われる。複素信号の平均化では、この処理の方程式は、次のように表される。
【数26】
【0053】
この時点で、いくつかの具体例を使用して本開示を提示したが、当業者は本教示がそのように限定されないことを認識するのであろう。したがって、本開示は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。