(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】充填ロッドのローリングユニット及びローリング方法
(51)【国際特許分類】
A24C 5/47 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
A24C5/47
(21)【出願番号】P 2023539454
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2021028971
(87)【国際公開番号】W WO2023012937
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹保 仁
(72)【発明者】
【氏名】杉中 哲士
(72)【発明者】
【氏名】大野 一佳
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-508046(JP,A)
【文献】特表2019-518446(JP,A)
【文献】特開2006-238850(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146528(WO,A1)
【文献】米国特許第4596257(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24C 1/00- 5/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
香味原料を充填した充填ロッドを含む複数のロッドを同軸に並べて配置した連続体を形成し、前記連続体を転動させ、当該転動の際に前記連続体にチップペーパを巻き付けることで、前記連続体を接続して香味吸引物品の中間品を形成する、充填ロッドのローリングユニットであって、
前記チップペーパ及び前記連続体を保持する外周面を有し、前記チップペーパ及び前記連続体を前記外周面の周方向に搬送するローリングドラムと、
前記ローリングドラムの前記外周面に対向する転動面を有し、前記転動面と前記ローリングドラムの前記外周面との間に転動間隙を形成し、前記ローリングドラムの回転に伴い、前記転動間隙において前記連続体を挟み込みつつ転動させて、前記チップペーパを前記連続体に巻き付けるローリングブロックと
を備え、
前記ローリングブロックは、前記転動面に複数のブロック側サクション孔が開口され、前記各ブロック側サクション孔を介して前記転動間隙を吸引する、充填ロッドのローリングユニット。
【請求項2】
前記各ブロック側サクション孔は、前記転動面の前記充填ロッドが位置付けられる領域に開口される、請求項1に記載の充填ロッドのローリングユニット。
【請求項3】
前記各ブロック側サクション孔は、前記転動面の前記充填ロッド以外の前記ロッドが位置付けられる領域に開口される、請求項2に記載の充填ロッドのローリングユニット。
【請求項4】
香味原料を充填した充填ロッドを含む複数のロッドを同軸に並べて配置した連続体を形成し、前記連続体を転動させ、当該転動の際に前記連続体にチップペーパを巻き付けることで、前記連続体を接続して香味吸引物品の中間品を形成する、充填ロッドのローリング方法であって、
前記チップペーパ及び前記連続体を保持する外周面を有するローリングドラムを用い、前記チップペーパ及び前記連続体を前記外周面の周方向に搬送する搬送ステップと、
前記ローリングドラムの前記外周面に対向する転動面を有するとともに、前記転動面と前記ローリングドラムの前記外周面との間に転動間隙を形成するローリングブロックを用い、前記ローリングドラムの回転に伴い、前記転動間隙において前記連続体を挟み込みつつ転動させて、前記チップペーパを前記連続体に巻き付けるローリングステップと
を含み、
前記ローリングステップでは、前記ローリングブロックの前記転動面に開口された複数のブロック側サクション孔を介して、前記転動間隙を吸引するサクションプロセスを行う、充填ロッドのローリング方法。
【請求項5】
前記サクションプロセスでは、前記転動面の前記充填ロッドが位置付けられる領域に開口された前記各ブロック側サクション孔を介して、前記転動間隙を吸引する、請求項4に記載の充填ロッドのローリング方法。
【請求項6】
前記サクションプロセスでは、前記転動面の前記充填ロッド以外の前記ロッドが位置付けられる領域に開口された前記各ブロック側サクション孔を介して、前記転動間隙を吸引する、請求項5に記載の充填ロッドのローリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填ロッドのローリングユニット及びローリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、たばこロッドのフィルタアタッチメントに用いるローリングユニットが開示されている。ローリングユニットは、同軸に並べて配置したたばこロッドとフィルタロッドとを含む連続体を転動させ、この転動の際に連続体にチップペーパを巻き付けることで、連続体を接続して喫煙物品の中間品を形成する。ローリングユニットは、ローリングドラムとローリングブロックとを備えている。
【0003】
ローリングドラムは、チップペーパ及び連続体を保持する外周面を有し、チップペーパ及び連続体を外周面の周方向に搬送する。ローリングブロックは、ローリングドラムの外周面に対向する転動面を有し、転動面とローリングドラムの外周面との間に転動間隙を形成し、ローリングドラムの回転に伴い、転動間隙において連続体を挟み込みつつ転動させて、チップペーパを連続体に巻き付ける。
【0004】
チップペーパ及び連続体がローリングドラムの外周面に保持されて搬送される際、連続体の周方向の一部はチップペーパに糊で予め貼り付けられている。連続体は、転動間隙において挟み込まれて転動する際、ローリングブロックの転動面に接触することにより、転動面と、連続体が部分的に貼り付けられたチップペーパとの間に摩擦力が作用する。この摩擦力の作用により、チップペーパが連続体の周方向の全域に亘って巻き付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たばこ原料を充填したたばこロッドは、広義において、香味原料(たばこ原料を含まない場合もあり得る)を充填した充填ロッドと定義される。この場合、充填ロッドを切断して得られる充填部が非燃焼加熱型の香味吸引物品を構成。香味吸引物品を使用するために用いるデバイスのヒータは、例えば充填部に差し込まれることにより充填部を加熱し、香味成分のエアロゾルを発生させる。この場合、充填部において、ヒータの体積に比して香味原料の充填量が多いと、充填部に対するヒータの挿入抵抗が大きくなり、ヒータを挿入し難くなって吸引時の操作性が悪化する。また、ヒータの挿入抵抗によってヒータの折損を招くこともある。
【0007】
さらに、充填部において、ヒータの体積に比して香味原料の充填量が多いと、ヒータの挿入によって、充填部における香味原料が過密となり、充填部における通気性が悪化し、喫味が損なわれるおそれもある。これらの不具合を解消するために、充填ロッドに充填する香味原料の充填量を従来よりも低減する場合がある。また、香味吸引物品のコスト上の事情を考慮して、香味原料の充填量を低減する場合もある。
【0008】
充填ロッドは、巻上機により、香味原料を充填物に成形されつつ、充填物を巻紙により連続的に包み込まれる。香味原料の充填量を低減すると、充填ロッドにおける香味原料の充填密度が低下する。このため、充填ロッドの硬さが低下し、すなわち、充填ロッドが軟化する。充填ロッドが軟化することにより、転動間隙において挟み込まれて転動する際に生じる充填ロッドの反力が低下し、換言すると、充填ロッドが弾性変形し難くなる。このため、転動間隙を連続体が転動する際に、転動面と、連続体が部分的に貼り付けられたチップペーパとの密着性が低下し、転動面とチップペーパとの間に作用する摩擦力が低下する。
【0009】
転動面とチップペーパとの間の摩擦力が低下すると、転動間隙においては、充填ロッドの転がり抵抗が低下する。このため、チップペーパに部分的に貼り付けられた充填ロッドがチップペーパに対してスリップし、チップペーパが連続体の周方向の全域に亘って適正に巻き付けられない。この結果、完成した中間品のチップペーパに皴が生じたり、完成した中間品の充填ロッドとフィルタロッドなどの隣接するロッドとの境界部分のチップペーパに段差が生じたりするなどし、中間品及び喫煙物品の品質が低下する。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、香味原料の充填量を低減した場合であっても、中間品及び喫煙物品の品質を確保することができる、充填ロッドのローリングユニット及びローリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様に係る充填ロッドのローリングユニットは、香味原料を充填した充填ロッドを含む複数のロッドを同軸に並べて配置した連続体を形成し、この連続体を転動させ、当該転動の際に連続体にチップペーパを巻き付けることで、連続体を接続して香味吸引物品の中間品を形成し、このローリングユニットは、チップペーパ及び連続体を保持する外周面を有し、チップペーパ及び連続体を外周面の周方向に搬送するローリングドラムと、ローリングドラムの外周面に対向する転動面を有し、転動面とローリングドラムの外周面との間に転動間隙を形成し、ローリングドラムの回転に伴い、転動間隙において連続体を挟み込みつつ転動させて、チップペーパを連続体に巻き付けるローリングブロックとを備え、ローリングブロックは、転動面に複数のブロック側サクション孔が開口され、各ブロック側サクション孔を介して転動間隙を吸引する。
【0012】
一態様に係る充填ロッドのローリング方法は、香味原料を充填した充填ロッドを含む複数のロッドを同軸に並べて配置した連続体を形成し、この連続体を転動させ、当該転動の際に連続体にチップペーパを巻き付けることで、連続体を接続して香味吸引物品の中間品を形成する、充填ロッドのローリング方法であって、このローリング方法は、チップペーパ及び連続体を保持する外周面を有するローリングドラムを用い、チップペーパ及び連続体を外周面の周方向に搬送する搬送ステップと、ローリングドラムの外周面に対向する転動面を有するとともに、転動面とローリングドラムの外周面との間に転動間隙を形成するローリングブロックを用い、ローリングドラムの回転に伴い、転動間隙において連続体を挟み込みつつ転動させて、チップペーパを連続体に巻き付けるローリングステップとを含み、ローリングステップでは、ローリングブロックの転動面に開口された複数のブロック側サクション孔を介して、転動間隙を吸引するサクションプロセスを行う。
【発明の効果】
【0013】
前述した充填ロッドのローリングユニット及びローリング方法によれば、香味原料の充填量を低減した場合であっても、中間品及び喫煙物品の品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】フィルタアタッチメント処理の概略を示す模式図である。
【
図3】ローリングブロックの転動面と転動面に接触する連続体との位置関係を示す平面図である。
【
図5】充填ロッドのフィルタアタッチメントに用いるローリング方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、充填ロッドTRにフィルタロッドFRを接続するフィルタアタッチメント処理の概略的な模式図を示す。フィルタアタッチメント処理は、先ず、(a)に示すように、香味吸引物品C(以下、単に物品Cともいう)の充填部Tの2倍の長さを有する充填ロッドDTRを用意する。次に、(b)に示すように、充填ロッドDTRの長手方向中央を切断して充填ロッドTRに2等分する。また、物品Cのフィルタ部Fの2倍の長さを有するフィルタロッドFRを用意し、2本の充填ロッドTRの間にフィルタロッドFRを配置する。
【0016】
次に、(c)に示すように、各充填ロッドTRとフィルタロッドFRとを同軸に並べて突き合わせて配置した連続体Aを形成する。次に、(d)に示すように、各充填ロッドTRとフィルタロッドFRとの各突き合わせ部分を含む連続体Aの外周面にチップペーパPを巻き付けて糊で貼り付ける。これにより、(e)に示すように、2本の充填ロッドTRと1本のフィルタロッドFRとをチップペーパPで接続して一体化した中間品Bが形成される。
【0017】
次に、(f)に示すように、チップペーパPの上から中間品Bの長手方向中央を切断し、最終的に2本の物品Cが形成される。このフィルタアタッチメント処理は、一連のドラム列を構成する各ドラムの外周面において、充填ロッドDTR、充填ロッドTR、フィルタロッドFR、チップペーパP、連続体A、中間品Bを搬送しながら受け渡すことにより行われる。
【0018】
充填ロッドTRの充填物を構成する香味原料は、例えば、刻みたばこ、たばこシートを細断した物、或いは、たばこシートをギャザー状に折り畳んだ物である。また、香味原料は、たばこを含まないパルプから形成されたシートに香料を添加した物、非たばこ植物から形成されたシートを細断した物、或いは、これらのシートをギャザー状に折り畳んだ物であっても良い。
【0019】
図2は、実施形態に係るローリングユニット1の概略図を示す。ローリングユニット1は、連続体Aを転動させ、この転動の際に連続体AにチップペーパPを巻き付ける(
図1の(d)の状態)。これにより、チップペーパPによって連続体Aが接続されて一体化され、物品Cの中間品Bが形成される(
図1の(e)の状態)。ローリングユニット1は、ローリングドラム2、ローリングブロック4、及びキッキングレール6を備えている。
【0020】
ローリングドラム2は、チップペーパP及び連続体Aを保持する外周面2aを有し、連続体Aと平行に延設される回転軸2bを中心として実線矢印で示す方向に回転する。これにより、連続体Aを外周面2aの破線矢印で示す周方向に搬送する。詳しくは、ローリングドラム2の外周面2aには、多数のドラム側サクション孔8が形成されている。各ドラム側サクション孔8は、回転軸2bに平行に延設される孔であり、外周面2aの周方向に等間隔に設けられ、図示しないサクション源に連通されている。
【0021】
外周面2aに沿って形成される各ドラム側サクション孔8の任意の数毎、例えば図示するように3つ毎のドラム側サクション孔8の開口には、ザグリ加工を施したポケット10が形成されている。チップペーパPは、各ドラム側サクション孔8からの吸引よって、外周面2aに貼り付いた状態で保持されて、外周面2aの周方向に搬送される。なお、外周面2aへのチップペーパPの貼り付きは、チップペーパPに帯電する静電気を伴っていても良い。
【0022】
連続体Aは、ポケット10が形成されたドラム側サクション孔8からの吸引によって、ポケット10に収まった状態で外周面2aに保持されて、外周面2aの周方向に搬送される。また、チップペーパP及び連続体Aがローリングドラム2の外周面2aに保持されて搬送される際、連続体Aの周方向の一部はチップペーパPに糊で予め貼り付けられている。
【0023】
ローリングブロック4は、ローリングドラム2の外周面2aに対向する湾曲した転動面4aを備えている。転動面4aとローリングドラム2の外周面2aとの間には、転動間隙12が形成される。ローリングブロック4は、ローリングドラム2の回転に伴い、転動間隙12において、連続体Aを挟み込みつつ転動させて、チップペーパPを連続体Aの周方向の全域に亘って巻き付ける。
【0024】
詳しくは、キッキングレール6は、連続体Aの搬送方向における転動間隙12の入口に設けられ、転動面4aからローリングドラム2の外周面2aに向けて突出している。搬送される連続体Aにキッキングレール6が接触することにより、連続体Aは、ポケット10から一時的に離脱し、転動間隙12において転動を開始する。
【0025】
転動間隙12の入口において転動を開始した連続体Aは、ローリングドラム2の回転に伴い、転動間隙12において、転動面4aと、ポケット10が形成されないドラム側サクション孔8が形成された外周面2aとの間に挟まれつつ転動する。この際、外周面2aに保持されるとともに連続体Aが部分的に貼り付けられたチップペーパPは、連続体Aにおける各充填ロッドTRとフィルタロッドFRとの突き合わせ部の周方向の全域に亘って巻き付けられる。チップペーパPは、その両端縁に塗布された糊を介して互いに重ね合わされることにより接着され、中間品Bが形成される。
【0026】
中間品Bは、転動間隙12の出口において再びポケット10に吸着されて、外周面2aの搬送方向に搬送されてローリングドラム2から移送され、次工程において、
図1の(f)に示すように、チップペーパPの上から中間品Bの長手方向中央において切断され、最終的に2本の物品Cが製造される。
【0027】
ここで、本実施形態のローリングブロック4には、転動面4aに多数のブロック側サクション孔14が開口され、各ブロック側サクション孔14を介して転動間隙12が吸引される。各ブロック側サクション孔14は、例えば丸孔であり、ローリングブロック4の内部に形成されたサクションチャンバ16を介してサクション源に連通されている。
【0028】
図3は、ローリングブロック4の転動面4aと転動面4aに接触する連続体Aとの位置関係を平面図で示す。各ブロック側サクション孔14は、転動面4aの各充填ロッドTRが位置付けられる領域S1に開口されている。サクション源からサクションチャンバ16、各ブロック側サクション孔14を順に介して各充填ロッドTRに付与される吸引力は、サクション源で設定される吸引圧力により決定する。サクション源の吸引圧力は、転動間隙12における各充填ロッドTRの転がり抵抗が適正な値となり、且つ連続体Aに対するチップペーパPの巻き付けが適正に行われる値に設定される。
【0029】
図4は、
図3の別形態を平面図で示す。
図4の場合、各ブロック側サクション孔14は、転動面4aの各充填ロッドTRが位置付けられる領域S1に加えて、転動面4aのフィルタロッドFRが位置付けられる領域S2にも開口されている。サクション源の吸引圧力は、転動間隙12における各充填ロッドTR及びフィルタロッドFRの転がり抵抗が適正な値となり、且つ連続体Aに対するチップペーパPの巻き付けが適正に行われる値に設定される。
【0030】
図5は、充填ロッドTRのフィルタアタッチメントに用いるローリング方法を説明するフローチャートを示す。ローリングユニット1を用いた充填ロッドTRのローリングが開始されると、ステップS1において、ローリングドラム2が回転軸2bを中心として回転することにより、チップペーパP及び連続体Aをローリングドラム2の外周面2aの周方向に搬送する(搬送ステップ)。
【0031】
また、ステップS2において、ローリングドラム2の回転に伴い、転動間隙12において連続体Aを挟み込みつつ転動させて、連続体Aが部分的に貼り付けられたチップペーパPを連続体Aの周方向の全域に亘って巻き付ける(ローリングステップ)。ローリングステップでは、プロセスP1において、ローリングブロック4の転動面4aに開口された各ブロック側サクション孔14を介して転動間隙12を吸引する(サクションプロセス)。
【0032】
詳しくは、サクションプロセスでは、転動面4aの各充填ロッドTRが位置付けられる領域S1に開口された各ブロック側サクション孔14を介して、転動間隙12を吸引する。一方、
図4に示した形態の場合、サクションプロセスでは、転動面4aの各充填ロッドTRが位置付けられる領域S1と、転動面4aのフィルタロッドFRが位置付けられる領域S2とにそれぞれ開口された各ブロック側サクション孔14を介して、転動間隙12を吸引する。
【0033】
なお、上記ローリング方法は、説明の便宜上、ステップS1、S2、及びプロセスP1に分けて説明したが、連続体Aのローリングが開始されてから終了するまで、ステップS1、S2、及びプロセスP1は同じタイミングで行われる。
【0034】
以上のように、本実施形態の充填ロッドTRのローリングユニット及びローリング方法においては、ローリングブロック4の転動面4aに複数のブロック側サクション孔14が開口され、ローリングステップのサクションプロセスにおいて、ブロック側サクション孔14を介して転動間隙12を吸引する。
【0035】
香味原料の充填量を従来よりも低減した場合、充填ロッドTRの軟化によって、充填ロッドTRの反力が低下し、転動面4aと、連続体Aが部分的に貼り付けられたチップペーパPとの間に作用する摩擦力が低下する。より具体的には、充填ロッドTRの硬さが70%未満になると、充填ロッドTRの製造が困難となるため、充填ロッドの硬さは70%以上、より好ましくは75%以上とする必要があることが判明している。
【0036】
なお、充填ロッドの硬さは、測定装置(型番:DD60A densimeter(Heinr. Borgwaldt GmbH社製))を用いて測定される。測定装置はプッシャーを備え、プッシャーを降下距離dで降下させて充填ロッドTRに負荷をかける。負荷がかけられる前の充填ロッドTRの直径をDsとし、負荷を所定時間かけた後の充填ロッドTRの直径をDdとしたとき、プッシャーの降下距離dはDs-Ddの式で算出され、充填物Bの硬さは(Dd/Ds)×100の式で算出される。
【0037】
充填ロッドの硬さが70%未満であると、転動面4aとチップペーパPとの間の摩擦力が低下し、さらに転動間隙12における充填ロッドTRの転がり抵抗が低下し、充填ロッドTRがチップペーパPに対してスリップし、チップペーパPが充填ロッドTRの周方向の全域に亘って適正に巻き付けられない。この結果、完成した中間品Bのチップペーパに皴が生じたり、完成した中間品Bの充填ロッドTRとフィルタロッドFRとの境界に段差が生じたりするなどし、中間品B及び物品Cの品質が低下する。
【0038】
一方、本実施形態においては、転動面4aとチップペーパPとの間に作用する摩擦力の低下分が各ブロック側サクション孔14を介した吸引力によって補われる。これにより、香味原料の充填量を従来よりも低減した場合であっても、転動間隙12において、転動面4aと連続体Aが部分的に貼り付けられたチップペーパPとの密着性を高めることができるため、充填ロッドTRに対するチップペーパPの巻き付けを周方向の全域に亘って適正に行うことが可能である。
【0039】
従って、中間品BのチップペーパPに生じる皴や段差を防止することができる。すなわち、香味原料の充填量及び充填密度に左右されることなく、また、充填ロッドTRの硬さに左右されることなく、中間品B及び物品Cの品質を確保することができる。より具体的には、各ブロック側サクション孔14は、
図3に示したように、転動面4aの充填ロッドTRが位置付けられる領域S1に開口される。
【0040】
この場合、サクションプロセスでは、領域S1に開口された各ブロック側サクション孔14を介して、転動間隙12を吸引する。これにより、充填ロッドTRにサクション源からの吸引力をさらに効果的に付与することができる。従って、転動面4aとチップペーパPとの間に作用する摩擦力の低下分を各ブロック側サクション孔14を介した吸引力によってさらに効果的に補うことができる。
【0041】
一方、物品Cを構成するフィルタ部Fの濾過性能を考慮して、フィルタロッドFRにおいて不織布シートなどフィルタ材料の充填量を低減することがある。この場合には、充填ロッドTRの場合と同様に、フィルタロッドFRの充填密度が低下することにより、フィルタロッドFRが軟化する。フィルタロッドFRの軟化により、転動間隙12において挟み込まれて転動する際に生じるフィルタロッドFRの反力が低下し、転動面4aとチップペーパPとの間に作用する摩擦力が低下する。
【0042】
転動面4aとチップペーパPとの間の摩擦力が低下することにより、フィルタロッドFRに対するチップペーパPの巻き付けが適正に行われ難くなる。この結果、中間品BのチップペーパPに皴や段差が生じ、中間品B及び物品Cの品質が低下する。そこで、フィルタロッドFRが軟化する場合には、
図4に示したように、転動面4aの充填ロッドTRが位置付けられる領域S1のみならず、転動面4aのフィルタロッドFRが位置付けられる領域S2にも各ブロック側サクション孔14を形成する。
【0043】
この場合、サクションプロセスでは、領域S1及び領域S2に開口された各ブロック側サクション孔14を介して、転動間隙12を吸引する。これにより、充填ロッドTR及びフィルタロッドFRの双方の位置において、転動面4aとチップペーパPとの間に作用する摩擦力の低下分を各ブロック側サクション孔14を介した吸引力によって補うことができる。従って、香味原料の充填量を低減した場合のみならず、フィルタ原料の充填量を低減した場合であっても、中間品B及び物品Cの品質を確保することができる。
【0044】
以上で実施形態についての説明を終えるが、上記実施形態は、限定的ではなく、趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。例えば、各ブロック側サクション孔14は、丸孔以外の形状であっても良く、領域S1、S2における孔数や孔の大きさは変更が可能である。また、領域S1、S2において各ブロック側サクション孔14を介して付与する吸引力を異ならしめる機構を設けても良い。これにより、充填ロッドTRとフィルタロッドFRとに硬さの差に応じた吸引力の付与が可能となる。
【0045】
また、実施形態において、連続体Aは、2本の充填ロッドTRの間に1本のフィルタロッドFRを配置して形成されるが、これに限らず、充填ロッドTRを含む複数のロッドを同軸に並べて配置して形成する場合に実施形態のローリングユニット及びローリング方法を適用することができる。例えば、連続体Aは、2本のフィルタロッドFRの間に1本の充填ロッドTRを配置して形成しても良い。
【0046】
また、連続体Aは、充填ロッドTR以外のロッドとして、フィルタロッドFRとは異なるロッド、例えば紙管を備えていても良い。また、充填ロッドTRに紙管を隣接配置した連続体Aから中間品Bを形成した後、この中間品BにフィルタロッドFRを隣接配置した連続体Aを形成し、この連続体Aから新たな中間品Bを形成するなど、段階的に異なる中間品Bを形成する際に、実施形態のローリングユニット及びローリング方法を適用しても良い。
【0047】
また、実施形態のローリングユニット及びローリング方法は、非燃焼加熱型の香味吸引物品Cの中間品Bの製造に限らず、燃焼型の香味吸引物品の中間品Bの製造にも適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ローリングユニット
2 ローリングドラム
2a 外周面
4 ローリングブロック
4a 転動面
12 転動間隙
14 ブロック側サクション孔
A 連続体
B 中間品
C 喫煙物品
P チップペーパ
TR 充填ロッド
FR フィルタロッド(充填ロッド以外のロッド)
S1 転動面の充填ロッドが位置付けられる領域
S2 転動面のフィルタロッド(充填ロッド以外のロッド)が位置付けられる領域