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特許7499423巻き線支持体周りにフィラメントを巻くためのプロセスおよびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】巻き線支持体周りにフィラメントを巻くためのプロセスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/32 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
B29C70/32
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023554883
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2022055838
(87)【国際公開番号】W WO2022189406
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】LU102629
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521525527
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・ニュー・エナジーズ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ヨングブルート
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ベイエンス
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0147756(US,A1)
【文献】米国特許第04750960(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0184188(US,A1)
【文献】特開昭62-263027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム形長手端部(14)を備えたほぼ円筒形を有し、転動軸(8)を有する巻き線支持体(6)周りにフィラメントを巻くためのプロセスであって、前記巻き線支持体(6)は基部(18)に固定された保持デバイス(4)によって保持され、
(i)前記巻き線支持体(6)に向けて少なくとも1つの供給デバイス(22)によりフィラメント(24)を供給することと、
(ii)前記巻き線支持体(6)のピッチ軸(10)周りで前記基部(18)に対して前記巻き線支持体(6)を回転させることと、
(iiiA)前記基部(18)に対して前記巻き線支持体(6)のヨー軸(12)周りで前記少なくとも1つの供給デバイス(22)を無制限に回転させること、および/または
(iiiB)前記基部(18)に対して前記巻き線支持体(6)の前記ヨー軸(12)周りで前記巻き線支持体(6)を無制限に回転させることと、
(iv)前記巻き線支持体の前記転動軸(8)周りで前記基部(18)に対して前記巻き線支持体(6)を無制限に回転させること
とからなる同期して起こるステップを含む、プロセス。
【請求項2】
他のステップと同期して、前記基部(18)に対して前記巻き線支持体(6)の前記ピッチ軸(10)に沿って前記巻き線支持体(6)および/または前記少なくとも1つの供給デバイス(22)を平行移動することからなるステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
他のステップと同期して、前記基部(18)に対して前記巻き線支持体(6)の前記ヨー軸(12)に沿って前記巻き線支持体(6)および/または前記少なくとも1つの供給デバイス(22)を平行移動することからなるステップをさらに含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
他のステップと同期して、反対方向に前記巻き線支持体(6)の前記転動軸(8)に沿って前記少なくとも1つの供給デバイス(22)および/または前記巻き線支持体(6)を平行移動することからなるステップをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
他のステップと同期して、前記巻き線支持体(6)に対して前記少なくとも1つの供給デバイス(22)を移動させる、または前記少なくとも1つの供給デバイス(22)に対して前記巻き線支持体(6)を移動させることからなるステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(iiiA)中に、前記少なくとも1つの供給デバイス(22)はフィラメント材料アンワインダおよび/またはフィラメント樹脂含浸システムによって前記フィラメント(24)が供給され、前記プロセスが、他のステップと同期して、前記巻き線支持体(6)のヨー軸(12)周りで前記フィラメント材料アンワインダおよび/または前記フィラメント樹脂含浸システムを回転させることからなるステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップ(iiiA)は、前記基部(18)に対して前記巻き線支持体(6)の前記ヨー軸(12)周りで前記少なくとも1つの供給デバイス(22)を回転させること、および前記基部(18)に対して前記巻き線支持体の前記転動軸周りで前記巻き線支持体(6)を回転させることからなり、これらの2つの回転は反対方向で起こる、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記フィラメント(24)は、複数の供給デバイスにより前記巻き線支持体(6)に供給される、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の巻き線支持体(6)周りにフィラメント(24)を巻くためのプロセスを含む、圧力容器を製造するためのプロセス。
【請求項10】
ドーム形長手端部を備えたほぼ円筒形を有し、転動軸(8)を有する巻き線支持体(6)上にフィラメント(24)を巻くためのシステム(2)であって、システム(2)は、
基部(18)と、
前記巻き線支持体(6)が前記巻き線支持体(6)のピッチ軸(10)に対して前記基部(18)に対し回転可能であるように、前記巻き線支持体(6)を保持するように構成されたフレーム(20)を備えた、前記基部(18)に接続された保持デバイス(4)と、
前記フレーム(20)に向けてフィラメント(24)を供給するように配置された少なくとも1つの供給デバイス(22)とを備え、
前記少なくとも1つの供給デバイス(22)が前記巻き線支持体(6)のヨー軸(12)周りで前記基部(18)に対して回転するように構成されていることを特徴とする、システム(2)。
【請求項11】
ドーム形長手端部(14)を備えたほぼ円筒形を有し、転動軸(8)を有する巻き線支持体(6)上にフィラメント(24)を巻くためのシステム(2')であって、システム(2')は、
基部(18)と、
前記巻き線支持体(6)が前記巻き線支持体(6)のピッチ軸(10)に対して前記基部(18)に対し回転可能であるように、前記巻き線支持体(6)を保持するように構成されたフレーム(20)を備えた、前記基部(18)に接続された保持デバイス(4)と、
前記フレーム(20)に向けてフィラメント(24)を供給するように配置された少なくとも1つの供給デバイス(22)とを備え、
前記フレーム(20)が前記巻き線支持体(6)のヨー軸(12)周りで前記基部(18)に対して無制限に回転するように構成されていることを特徴とする、システム(2')。
【請求項12】
前記フレーム(20)および前記少なくとも1つの供給デバイス(22)は、他に対して相対動作で移動することが可能であるように構成されている、請求項10または11に記載のシステム(2、2')。
【請求項13】
前記巻き線支持体(6)および/または前記少なくとも1つの供給デバイス(22)は、前記基部(18)に対して前記巻き線支持体(6)の前記ピッチ軸(10)に沿って平行移動するように構成されている、請求項10から12のいずれか一項に記載のシステム(2、2')。
【請求項14】
前記巻き線支持体(6)および/または前記少なくとも1つの供給デバイス(22)は、前記基部(18)に対して前記巻き線支持体(6)の前記ヨー軸(12)に沿って平行移動するように構成されている、請求項10から13のいずれか一項に記載のシステム(2、2')。
【請求項15】
前記巻き線支持体(6)および/または前記少なくとも1つの供給デバイス(22)は、前記基部(18)に対して前記巻き線支持体(6)の前記転動軸(8)に沿って平行移動するように構成されている、請求項10から14のいずれか一項に記載のシステム(2、2')。
【請求項16】
前記フレーム(20)はさらに、前記巻き線支持体(6)の前記転動軸(8)周りで無制限に回転するように構成されている、請求項10から15のいずれか一項に記載のシステム(2、2')。
【請求項17】
同期して、前記保持デバイス(4)の移動、前記少なくとも1つの供給デバイス(22)の前記移動、および前記少なくとも1つの供給デバイス(22)によって加えられ前記フィラメント(24)の巻き取り速度を命令するように構成された、前記保持デバイス(4)および前記少なくとも1つの供給デバイス(22)の両方に共通するコマンドデバイス(28)を備えた、請求項10から16のいずれか一項に記載のシステム(2、2')。
【請求項18】
前記保持デバイス(4)は、連接アーム(16)を備えている、請求項10から17のいずれか一項に記載のシステム(2、2')。
【請求項19】
複数の供給デバイスを備えた、請求項10から18のいずれか一項に記載のシステム(2、2')。
【請求項20】
プロセッサによって実行される場合に、前記プロセッサに請求項1から8のいずれか一項に記載の前記プロセスを行わせる命令を含む、非一時的コンピュータ読取可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用高圧容器に関する。より詳細には、本発明は、巻き線支持体周りにフィラメントを巻くためのプロセス、および巻き線支持体周りにフィラメントを巻くためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用高圧容器は普通、ドーム形長手縁部を備えたほぼ円筒形を有し、軽量で製造するのが安価であるように選択された材料などのプラスチック材料、または他の材料で作られたマンドレルの形のブラダのような中空容器を備えている。この容器は、圧力を受けた気体、例えば、電力源などの別の機能のために圧力容器を備えた車両によって使用されるような二水素を保管することを意図している。圧力を受けた気体は、容器の内側表面に強い負担を加え、これによって容器の完全性が損なわれ、特に二水素のような燃焼気体で有害な漏洩を引き起こすことがある。
【0003】
容器の機械的性状を改善するために、容器周り全てに強化繊維、例えば、カーボンファイバで作られたフィラメントを巻き、これにより、巻き線支持体を形成することが知られている。フィラメントは、巻きを容易にし、巻き線支持体の外表面の各片が覆われることを確実にするように、樹脂内に埋め込まれる。この巻き動作は必要であるが、かなり長い時間をとり、圧力容器の製造時間を過度に長くしないように、この動作の持続時間をできるだけ少なくすることが望ましい。米国特許第3333778号明細書は、巻きシステム、および前記巻きシステムによって実施される巻きプロセスを開示している。
【0004】
この文献は、巻き線支持体周りにフィラメントを巻くためのいくらか急速プロセスを提案しているが、さらなる改善の余地がある。実際、このシステムを使用して、フィラメント供給速度は巻きプロセス中に大きく変化し、巻き線支持体の長手端部周りにフィラメントを置いている場合には明らかに遅くなっている。これは、時間の損失、したがって、かなり長い巻きプロセスにつながる。したがって、巻きシステムの製造性は最適ではなく、巻きプロセスは時間最適化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第3333778号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記を鑑みて、全ての知られている巻きパターンを可能にして高圧容器の製造費用および速度を最適化しながら、巻き動作の持続時間を短くする必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明により、ドーム形長手端部を備えたほぼ円筒形を有し、転動軸を有する巻き線支持体周りにフィラメントを巻くためのプロセスが提供され、巻き線支持体は基部に固定された保持デバイスによって保持され、プロセスは、
(i)巻き線支持体に向けて少なくとも1つの供給デバイスによりフィラメントを供給することと、
(ii)巻き線支持体のピッチ軸周りで基部に対して巻き線支持体を回転させることと、
(iiiA)基部に対して巻き線支持体のヨー軸周りで少なくとも1つの供給デバイスを無制限に回転させること、および/または
(iiiB)基部に対して巻き線支持体のヨー軸周りで巻き線支持体を無制限に回転させることと、
(iv)巻き線支持体の転動軸周りで基部に対して巻き線支持体を無制限に回転させることと
からなる同期して起こるステップを含む。
【0008】
少なくとも1つの供給デバイスおよび巻き線支持体の移動に対してより多くの自由度を可能にすることによって、巻きプロセスの速度を上げることが可能である。実際、互いに対してこれらの要素の移動を同期して構成することによって、巻き線支持体に少なくとも1つの供給デバイスによって供給されるフィラメントの進路およびペースを最適化することが可能である。このようにして、フィラメント供給速度は、前に引用した従来技術の文献におけるものより一定である。フィラメントが、供給速度が従来技術では減少しなければならない巻き線支持体の領域内にある場合、巻き線経路に影響を与えることなく供給速度のあまり重要ではない減速を必要とする方法で、ここでは、巻き線支持体、およびステップ(iiiB)の場合少なくとも1つの供給デバイスを移動させることが可能であり、したがって、巻き動作の持続時間を減少させる。すなわち、プロセスは、少なくとも1つの供給デバイスから供給するフィラメントのより一定の速度を有することを可能にして、巻き動作の持続時間を減少させる。
【0009】
「フィラメント」という表現によって、複合材料を形成するように、液体マトリックスを含浸させたことが好ましい連続繊維くず、好ましくはカーボンファイバ、グラスファイバまたはアラミドファイバを意味している。使用されるマトリックスのタイプによって、2つの主なファミリーの複合材料がある。熱硬化性複合材および熱可塑性複合材は、マトリックスとして熱硬化性樹脂または熱可塑性ポリマーで形成されている。
【0010】
熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂を形成するために、硬化状態(例えば、熱、UV、または他の放射線、または単に互いに接触することなどにより)への露出の際に反応する、反応性熱硬化性前駆体を形成する2つ以上の反応性成分を混合することによって形成される。熱硬化性マトリックスは、高い性能複合材を産出するために十分に硬化させなければならない。硬化されると、熱硬化性樹脂は固体であり、樹脂がこれ以上流れることができないので、さらに処理または再形成することができない。熱硬化性樹脂の例としては、不飽和ポリエステル、エポキシ、ビニルエステル、ポリウレア、イソシアヌレート、およびポリウレタン樹脂が挙げられる。粘着性があるようにしたが、まだ柔らかであるように部分的にのみ硬化させた、反応性樹脂を含浸させた繊維で作られた熱硬化性プリプレグを製造することが可能である。プリプレグは、保管し、その後、プリプレグの硬化および強固を完了させるために樹脂を加熱するまたはUVに曝すことによって圧力を受けてさらに処理することができる。
【0011】
熱可塑性ポリマーは、それぞれ温度を上げるまたは下げることによって、固体状態(または非流動可能状態)から液体状態(または流動可能状態)までおよび逆に通過することができる。半結晶ポリマーの場合、熱可塑材の温度を下げることにより、結晶の形成および熱可塑材の固化を駆動する。逆に、半結晶ポリマーをその融点より上に加熱することにより、結晶を溶融し、熱可塑材が流れることができる。半結晶熱可塑材の例として、PEEK、PEKK、PEKKEKなどのポリエーテルケトン、PA6、PA66、PA10、PA12などのポリアミド、PE、PPなどのポリオレフィンなどが挙げられる。非結晶質熱可塑材は、結晶を形成せず、融点を有していない。非結晶質熱可塑材は、材料温度がそのガラス遷移温度より下または上であるかどうかによって、固化または流動可能になる。非結晶質熱可塑材の例として、PEI、PSU、PES、PC、PS、TPUなどが挙げられる。半結晶および非結晶質熱可塑材は両方とも、したがって、その融点またはガラス遷移温度の上に加熱することによって再成形することができ、それに応じて温度を下げることによってその新しい形状に凍結させることができる。物理的観点から厳密に正しくないとしても、単純化するため、半結晶および非結晶質熱可塑材は両方とも液体状態で、本明細書では、「熱可塑性メルト」と呼ばれる。
【0012】
有利には、プロセスはさらに、他のステップと同期して、基部に対して巻き線支持体のピッチ軸に沿って巻き線支持体および/または少なくとも1つの供給デバイスを平行移動することからなるステップを含む。
【0013】
有利には、プロセスはさらに、他のステップと同期して、基部に対して巻き線支持体のヨー軸に沿って巻き線支持体および/または少なくとも1つの供給デバイスを平行移動することからなるステップを含む。
【0014】
有利には、プロセスはさらに、他のステップと同期して、反対方向に巻き線支持体の転動軸に沿って少なくとも1つの供給デバイスおよび/または巻き線支持体を平行移動することからなるステップを含む。
【0015】
巻き線支持体の移動に提供されたこれらの自由度は全て、巻き線支持体に少なくとも1つの供給デバイスによって供給されるフィラメントの進路およびペースをさらに最適化することを可能にし、したがって、巻きプロセス持続時間がさらに減少する。
【0016】
有利には、プロセスはさらに、他のステップと同期して、巻き線支持体に対して少なくとも1つの供給デバイスを移動させる、または少なくとも1つの供給デバイスに対して巻き線支持体を移動させることからなるステップを含む。
【0017】
空間内の移動は、巻き線支持体のより短いドーム形長手端部周りで包む場合、および典型的にはより多くのフィラメントを巻き取る、巻き線支持体の中心円筒部周りを包む場合に巻き線支持体近くに移動する場合に、巻き線支持体および少なくとも1つの供給デバイスを相対的に移動させることによって、フィラメント上に誘導される瞬間的応力および歪みが最小限に抑えられるように、フィラメントの配置経路と調整される。
【0018】
これはまた、本発明のいくつかの他の改良を可能にし、例えば、その塗布中に巻き線支持体でフィラメントを引っ張ることによってフィラメント塗布速度の変化のより良い補償、供給デバイスを巻き線支持体にできるだけ近くに配置する可能性での増加した配置精度、および空間内のフィラメントのより安定した位置決めを構成することができる。少なくとも1つの供給デバイスが巻き線支持体に対してより近くに配置されるほど、フィラメント巻きのより高い精度が可能である。増加した正確さ、精度および安定性は、プロセスの再現性を改良する。
【0019】
有利には、少なくとも1つの供給デバイスはフィラメント材料アンワインダおよび/またはフィラメント樹脂含浸システムによってフィラメントが供給され、ステップ(iiiA)はさらに、巻き線支持体のヨー軸周りでフィラメント材料アンワインダおよび/またはフィラメント樹脂含浸システムを回転させることを含む。
【0020】
これにより、巻き線支持体に対する少なくとも1つの供給デバイスの捩じれのないフィラメント供給を得ることが可能になる。
【0021】
有利には、ステップ(iiiA)は、基部に対して巻き線支持体のヨー軸周りで少なくとも1つの供給デバイスを回転させること、および基部に対して巻き線支持体の転動軸周りで巻き線支持体を回転させることからなり、これらの2つの回転は反対方向で起こる。
【0022】
反対方向に起こるこれらの2つの回転は、少なくとも1つの供給デバイスに対する巻き線支持体の回転速度を増加させる少なくとも1つの供給デバイスに対する巻き線支持体の逆動作を生成する。この逆動作は、フィラメントが巻き線支持体周りで円形フープの形で巻かれる、または中度または高度螺旋巻き線パターンにしたがう場合に達成可能である。
【0023】
有利には、フィラメントは、複数の供給デバイス、好ましくは2つの供給デバイスにより巻き線支持体に供給される。
【0024】
1つまたは複数の追加の供給デバイスは、巻き速度を増大させることが可能である。2つの供給デバイスの場合、巻き速度は最大2がかけられ、巻きプロセスはそれほど複雑化されず、実施するのを容易にする。
【0025】
また、本発明による、圧力容器を製造するためのプロセスが提供され、プロセスは、上に提示したように、巻き線支持体周りにフィラメントを巻くためのプロセスを含む。
【0026】
また、本発明による、ドーム形長手端部を備えたほぼ円筒形を有し、転動軸を有する巻き線支持体上にフィラメントを巻くためのシステムが提供され、システムは、基部と、巻き線支持体が巻き線支持体のピッチ軸に対して基部に対し回転可能であるように、巻き線支持体を保持するように構成されたフレームを備えた、基部に接続された保持デバイスと、フレームに向けてフィラメントを供給するように配置された少なくとも1つの供給デバイスとを備え、システムは、少なくとも1つの供給デバイスが巻き線支持体のヨー軸周りで基部に対して回転するように構成されていることを特徴とする。
【0027】
このシステムは、ステップ(iiiA)が起こる場合に、上に記載したように巻きプロセスの実施を可能にする。
【0028】
また、本発明による、ドーム形長手端部を備えたほぼ円筒形を有し、転動軸を有する巻き線支持体上にフィラメントを巻くためのシステムが提供され、システムは、基部と、巻き線支持体が巻き線支持体のピッチ軸に対して基部に対し回転可能であるように、巻き線支持体を保持するように構成されたフレームを備えた、基部に接続された保持デバイスと、フレームに向けてフィラメントを供給するように配置された少なくとも1つの供給デバイスとを備え、システムは、フレームが巻き線支持体のヨー軸周りで基部に対して無制限に回転するように構成されていることを特徴とする。
【0029】
このシステムは、ステップ(iiiB)が起こる場合に、上に記載したように巻きプロセスの実施を可能にする。
【0030】
「無制限に回転する」という表現により、複数のフル回転が可能であることを意味している。言及したようなシステムの内容では、フレームが巻き線支持体のヨー軸周りで基部に対する複数のフル回転を行うことができることを意味する。すなわち、フレームの回転スパンは360°より高いことを意味する。
【0031】
有利には、フレームおよび少なくとも1つの供給デバイスは、他に対して相対動作で移動することが可能であるように構成されている。
【0032】
これは、非球状円筒形巻き線支持体を巻く場合に、瞬間フィラメント巻き取りを減少させることを可能にする。
【0033】
有利には、巻き線支持体および/または少なくとも1つの供給デバイスは、基部に対して巻き線支持体のピッチ軸に沿って平行移動するように構成されている。
【0034】
有利には、巻き線支持体および/または少なくとも1つの供給デバイスは、基部に対して巻き線支持体のヨー軸に沿って平行移動するように構成されている。
【0035】
有利には、巻き線支持体および/または少なくとも1つの供給デバイスは、基部に対して巻き線支持体の転動軸に沿って平行移動するように構成されている。
【0036】
巻き線支持体の移動に提供されたこれらの自由度は全て、巻き線支持体に少なくとも1つの供給デバイスによって供給されるフィラメントの進路およびペースをさらに最適化することを可能にし、したがって、巻きプロセス持続時間がさらに減少する。
【0037】
有利には、フレームはさらに、巻き線支持体の転動軸周りで無制限に回転するように構成されている。
【0038】
したがって、無駄である、フレーム上のフィラメントの堆積を防ぐようにフレームを移動させ、したがって、巻き線支持体を巻く際に費やされなかったフィラメントの損失および時間損失を表すことが可能である。
【0039】
有利には、システムは、同期して、保持デバイスの移動、少なくとも1つの供給デバイスの移動、および少なくとも1つの供給デバイスによって加えられるフィラメントの巻き取り速度を命令するように構成された、保持デバイスおよび少なくとも1つの供給デバイスの両方に共通するコマンドデバイスを備えている。
【0040】
システムの要素の全てのコマンドはしたがって、巻きプロセスのステップのより容易な同期を可能にする、唯一のコマンドデバイスによって集中される。
【0041】
有利には、保持デバイスは、連接アーム、好ましくは6軸ロボット、デカルト座標ロボットまたは選択的適合性連接ロボットアームロボットを備えている。
【0042】
これらのタイプのロボット連接アームは、命令するのが容易でありながら、巻き線支持体に必要な自由度を提供するのに便利である。
【0043】
有利には、システムは、複数の供給デバイス、好ましくは2つの供給デバイスを備えている。
【0044】
1つまたは複数の追加の供給デバイスは、巻き速度を増大させることが可能である。2つの供給デバイスの場合、巻き速度は最大2がかけられ、巻きプロセスはそれほど複雑化されず、実施するのを容易にする。
【0045】
また、本発明により、プロセッサによって実行される場合に、プロセッサに上に提示したようにプロセスを行わせる命令を含む、非一時的コンピュータ読取可能媒体が提供される。
【0046】
他の特性および利点は、例示的であり非限定的な例として与えられた以下の説明を読み、添付の図面で明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の第1の実施形態による、巻き線支持体上でフィラメントを巻くためのシステムの三次元図である。
図2図1のシステムによって行われる、本発明による巻きプロセスによって認められる異なる巻きパターンを示す図である。
図3図1のシステムによって行われる、本発明による巻きプロセスによって認められる異なる巻きパターンを示す図である。
図4図1のシステムによって行われる、本発明による巻きプロセスによって認められる異なる巻きパターンを示す図である。
図5図1のシステムによって行われる、本発明による巻きプロセスによって認められる異なる巻きパターンを示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態による、巻き線支持体上でフィラメントを巻くためのシステムの三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、本発明の第1の実施形態による、巻き線支持体上でフィラメントを巻くためのシステム2を示している。以下の説明では、このシステム2は「巻きシステム」と呼ばれる。
【0049】
巻きシステム2は、本発明により、巻きプロセスを行うことによって巻かれる巻き線支持体6を保持するように構成された保持デバイス4を備えている。巻き線支持体6は、車両用高圧容器の一部を形成することを意図している。「高圧容器」という表現によって、最大350バールの内圧に耐えることが可能な圧力を受けた気体を保管することを意図した圧力容器を意味する。このように、巻き線支持体6はマンドレルの形のブラダであってもよい。巻き線支持体6は、巻き線支持体6の長手軸を画定するほぼ円筒形を有する。
【0050】
巻き線支持体6の重心によって形成される原点を考慮することによって、例えば、マニュアル“Aerodynamics" by Clancy, L.J., Pitman Publishing Limited (1975), ISBN 0-273-01120-0, Section 16.6で定義された航空機の主軸の名前を参照することによって、3つの軸、すなわち、転動軸8、ピッチ軸10およびヨー軸12を備えた三次元座標システムを定義することができる。転動軸8は、長手軸と同一線上であり、巻き線支持体6の重心を通過することが好ましい。ヨー軸12は垂直であり、巻き線支持体6の重心を通過する。ピッチ軸10は、転動軸8に垂直であり、巻き線支持体6の重心を通過する。巻き線支持体6の重心、転動軸8、ピッチ軸10およびヨー軸12が図1に示されている。
【0051】
巻き線支持体6は、円筒形を有する中心部、および転動軸8に対して中心部の対向側に配置された2つのドーム形長手端部14を有する。巻き線支持体6は、ドーム形長手端部14の少なくとも1つに配置された少なくとも1つのボスを備えている。巻き線支持体6は、ドーム形長手端部14の両方に配置された2つのボスを備えていることが好ましい。
【0052】
保持デバイス4は、巻きシステム2の基部18に接続された連接アーム16を備えている。連接アーム16は、基部18に対する巻き線支持体6の移動に対する高い自由度を可能にするように構成されている。ここでは、連接アーム16は、6軸ロボット、デカルト座標ロボット、またはしばしばSCARAロボットと呼ばれる選択的適合性連接ロボットアームロボットによって形成されるが、あらゆる他の適切な手段とこれらのタイプのロボットを交換することが可能である。
【0053】
保持デバイス4は、連接アーム16の先端に取り付けられたフレーム20を備えている。フレーム20は、フレーム20の形状内で巻き線支持体6を収納するような寸法をしているほぼ「U」字の形を有する。巻き線支持体6は、巻き線支持体6の1つまたは複数のボスを締め付けることによって、フレーム20によって保持される。
【0054】
フレーム20は、巻き線支持体6が巻き線支持体6のピッチ軸10に対して基部18に対して回転可能であるように、巻き線支持体6を保持するように構成されている。フレーム20は、それぞれ、巻き線支持体6の転動軸8、ピッチ軸10およびヨー軸12と同一線上である転動軸、ピッチ軸およびヨー軸を有する。
【0055】
フレーム20はさらに、ヨー軸12に対して連接アーム16に対し回転し、連接アーム16に対して転動軸8に沿って平行移動するように構成されている。
【0056】
巻きシステム2は、フレーム20および巻き線支持体6に向けてフィラメント24を供給するように配置された少なくとも1つの供給デバイス22を備えている。フィラメント24は、巻き線支持体6周りで全て巻かれるようにバンドとして成形された樹脂内に埋め込まれた強化繊維で作られている。ここでは、巻きシステム2は1つの供給デバイスを備えているが、本発明の変形形態によると、より多くの供給デバイスが設けられていてもよく、2つの供給デバイスが、巻き速度を二倍にするために、巻き線支持体のヨー軸12に対して互いから反対の位置に配置されていてもよい。
【0057】
供給デバイス22は、フィラメント24がこれを通して巻き線支持体6の方向に通過する巻き目を備えている。フィラメント24は、供給ステーション26によって連続して提供され、基部16に接続され、フィラメント材料アンワインダ(図示せず)を備え、および/またはフィラメント樹脂含浸システム(図示せず)はインライン含浸の場合に設けなければならない。
【0058】
供給デバイス22は、巻き中に巻き線支持体6に供給されるフィラメント24の量を加速または減速するように構成されたアクチュエータおよびブレーキを備えている。供給ステーション26はまた、このようなアクチュエータおよびブレーキを備えていてもよい。
【0059】
巻きシステム2は、同期して、保持デバイス4の移動、供給デバイス22の移動、および供給デバイス22によって加えられるフィラメント24の巻き取り速度を命令するように構成された、保持デバイス4および供給デバイス22の両方に共通するコマンドデバイス28を備えている。
【0060】
コマンドデバイス28は、(i)巻き線支持体6に向けて供給デバイス22によりフィラメント24を供給することと、(ii)巻き線支持体6のピッチ軸10周りで基部18に対して巻き線支持体6を回転させることと、(iiiA)基部(18)に対して巻き線支持体6のヨー軸12周りで供給デバイス22を無制限に回転させること、および/または(iiiB)基部18に対して巻き線支持体6のヨー軸12周りで巻き線支持体6を無制限に回転させることと、(iv)巻き線支持体6の転動軸8周りで基部18に対して巻き線支持体6を無制限に回転させることとからなる、コマンドデバイス28により同期して起こるステップを含む巻きプロセスを実施するのに適している。
【0061】
プロセスは、厳しい極性巻きパターンを可能にせず、普通の極性巻きタイプの技術にしたがう。巻きプロセスは、異なるタイプの巻きパターンを可能にする。
【0062】
図2は、フィラメント24が低角度螺旋巻きにより巻き線支持体6周りに巻かれる、巻きプロセスの第1の実施を示している。フィラメント24は、巻き線支持体6の転動軸8に対して、20°より低い角度で置かれる。巻き線支持体6の転動軸8、ピッチ軸10およびヨー軸12は固定され、巻き線支持体6の重心は、巻きプロセス中にその位置で安定して保持される。供給デバイス22は、巻き線支持体6がそのピッチ軸10周りで傾斜している間に、ヨー軸12周りで巻き線支持体6に対して回転される。巻き線支持体6の高さ位置は、供給デバイス22に対して巻き線支持体6の相対速度を増加させるように、反対方向に巻き線支持体6および供給デバイス22の両方によってヨー軸12に沿った平行移動により巻きプロセス中に補償される。巻き線支持体6はまた、互いにより近くにまたは互いに対して遠くにして、供給デバイス22に楕円形経路を与えるために、供給デバイス22に対してそのピッチ軸10に沿って平行移動される。フレーム20は、フレーム20上のフィラメント24のあらゆる堆積を防ぐために、供給デバイス22の対向位置に保持される。回転および平行移動はまた、巻き線支持体6の1つまたは複数のボス上にフィラメント24を置くことを防ぐように適応される。
【0063】
図3は、中間角度螺旋状巻きにより、巻き線支持体6周りにフィラメント24が巻かれる巻きプロセスの第2の実施を示している。フィラメント24は、巻き線支持体6の転動軸8に対して、20°と55°の間に含まれる角度で置かれる。供給デバイス22は、巻き線支持体6が角度パターンを分配するようにそれぞれそのピッチ軸10周りで上および下に傾斜しながら、ヨー軸12周りで巻き線支持体6に対して回転される。巻き線支持体6はまた、供給デバイス22に対してそのピッチ軸10に沿って平行移動される。フレーム20は、フレーム20上のフィラメント24のあらゆる堆積を防ぐために、供給デバイス22の対向位置に保持される。回転および平行移動はまた、巻き線支持体6の1つまたは複数のボス上にフィラメント24を置くことを防ぐように適応される。
【0064】
図4は、フィラメント24が高角度螺旋状巻きにより、巻き線支持体6周りに巻かれる巻きプロセスの第3の実施を示している。フィラメント24は、巻き線支持体6の転動軸8に対して、55°と85°の間に含まれる角度で置かれる。供給デバイス22は、巻き線支持体6が角度パターンを分配するようにヨー軸12に沿って上および下に移動しながら、ヨー軸12周りで巻き線支持体6に対して回転される。巻き線支持体6はまた、互いにより近くにまたは互いに対して遠くにして、供給デバイス22に楕円形経路を与えるために、供給デバイス22に対してそのピッチ軸10に沿って平行移動される。フレーム20は、フレーム20上のフィラメント24のあらゆる堆積を防ぐために、供給デバイス22の対向位置に保持される。回転および平行移動はまた、巻き線支持体6の1つまたは複数のボス上にフィラメント24を置くことを防ぐように適応される。
【0065】
図5は、フィラメント24が円形フープ巻きにより、巻き線支持体6周りに巻かれる巻きプロセスの第4の実施を示している。フィラメント24は、巻き線支持体6の転動軸8に対して、85°より高い角度で置かれる。供給デバイス22は、巻き線支持体6が角度パターンを分配するようにヨー軸12に沿って上および下に移動しながら、ヨー軸12周りで巻き線支持体6に対して回転される。巻き線支持体6は、逆回転を作り出して、巻きプロセスを加速するように、供給デバイス22の回転中にその転動軸8周りで回転されてもよい。フレーム20は、フレーム20上のフィラメント24のあらゆる堆積を防ぐために、供給デバイス22の対向位置に保持される。
【0066】
選択したパターンによって、プロセスの前に挙げたステップ全てを行わなければならないわけではない。すなわち、パターンの判断は、巻き線支持体6、フレーム20および供給デバイス22の異なる移動を選択およびパラメータ化することによって行われる。
【0067】
図6は、本発明の第2の実施形態による、巻き線支持体上でフィラメントを巻くための巻きシステム2'を示している。供給デバイス22がそのヨー軸周りで回転するように構成されていない点において、第1の実施形態の巻きシステムと異なる。代わりに、巻き線支持体6は、基部18に対して、保持デバイス4のおかげで、そのヨー軸12周りで回転するように構成されている。このように、巻き線支持体6と供給デバイス22の間の相対的移動は同じままである。したがって、巻きシステム2'は、第1の実施形態の巻きシステムで前に記載したのと同じ巻きプロセスの実施を可能にする。第1の実施形態の供給システムの他の特性全ては、巻きシステム2'に置き換え可能である。
【0068】
上記実施形態は、例示的ものであり、限定的実施形態ではない。明らかに、本発明の多くの変形形態および変更形態が、その発明概念を逸脱することなく、上記教示を鑑みて可能である。したがって、本発明は、特に記載したもの以外で実施してもよいことを理解すべきである。
【符号の説明】
【0069】
2、2' 巻きシステム
4 保持デバイス
6 巻き線支持体
8 巻き線支持体の転動軸
10 巻き線支持体のピッチ軸
12 巻き線支持体のヨー軸
14 巻き線支持体のドーム形端部
16 連接アーム
18 基部
20 フレーム
22 供給デバイス
24 フィラメント
26 供給ステーション
28 コマンドデバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6