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特許7499425見守り支援システム、装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】見守り支援システム、装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20240606BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023572592
(86)(22)【出願日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2023013218
【審査請求日】2023-11-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596074085
【氏名又は名称】株式会社IC
(73)【特許権者】
【識別番号】515353110
【氏名又は名称】株式会社フィート
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】有光 哲彦
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-167878(JP,A)
【文献】特開2011-237865(JP,A)
【文献】特開2003-256957(JP,A)
【文献】特開2006-72443(JP,A)
【文献】特開2019-139260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/02,25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
見守り対象者の居住空間に設けられた複数のセンサにおいて検出された時系列センサ情報を取得する、センサ情報取得部と、
前記時系列センサ情報に基づいて前記センサ毎に特徴量を生成する、特徴量生成部と、
前記特徴量に基づいて、前記センサ毎の情報検出頻度を示す検出頻度情報を生成する、検出頻度情報生成部と、
前記検出頻度情報に対して複数の因子に基づいて因子分析を行い、各前記因子に対する因子負荷量と因子得点を生成する、因子分析部と、
2以上の前記因子に係る前記因子得点の時間的変化の組み合わせに基づいて、前記見守り対象者の状態遷移に関する予測情報を生成する、予測情報生成部と、を備える見守り支援システム。
【請求項2】
前記特徴量は、時間領域特徴量と周波数領域特徴量を含む、請求項1に記載の見守り支援システム。
【請求項3】
前記検出頻度情報生成部は、正規化した前記特徴量に対してクラスタリング処理を行い、前記検出頻度情報を生成する、請求項1に記載の見守り支援システム。
【請求項4】
前記因子は、前記見守り対象者の清潔性に関する因子である清潔因子、前記見守り対象者の運動性に関する因子である運動因子、及び、前記見守り対象者の食事に関する因子である食事因子を含む、請求項1に記載の見守り支援システム。
【請求項5】
前記因子は、さらに、前記見守り対象者の睡眠に関する因子である睡眠因子を含む、請求項に記載の見守り支援システム。
【請求項6】
前記組み合わせは、前記見守り対象者の清潔性に関する因子である清潔因子と前記見守り対象者の運動性に関する因子である運動因子の組み合わせ、前記運動因子と前記見守り対象者の食事に関する因子である食事因子の組み合わせ、前記食事因子と前記清潔因子の組み合わせを含む、請求項に記載の見守り支援システム。
【請求項7】
2以上の前記因子に係る前記因子得点の時間的変化に基づいて、異常検出を行う、異常検出部をさらに備える、請求項1に記載の見守り支援システム。
【請求項8】
各前記因子に基づいて前記見守り対象者の健康状態を推定する、状態推定部をさらに備える、請求項1に記載の見守り支援システム。
【請求項9】
前記検出頻度情報を各前記センサに対応する前記居住空間の間取りに対応させて提示する、センサ情報提示部をさらに備える、請求項1に記載の見守り支援システム。
【請求項10】
見守り対象者の居住空間に設けられた複数のセンサにおいて検出された時系列センサ情報を取得する、センサ情報取得部と、
前記時系列センサ情報に基づいて前記センサ毎に特徴量を生成する、特徴量生成部と、
前記特徴量に基づいて、前記センサ毎の情報検出頻度を示す検出頻度情報を生成する、検出頻度情報生成部と、
前記検出頻度情報に対して複数の因子に基づいて因子分析を行い、各前記因子に対する因子負荷量と因子得点を生成する、因子分析部と、
2以上の前記因子に係る前記因子得点の時間的変化の組み合わせに基づいて、見守り対象者の状態遷移に関する予測情報を生成する、予測情報生成部と、を備える見守り支援装置。
【請求項11】
見守り対象者の居住空間に設けられた複数のセンサにおいて検出された時系列センサ情報を取得する、センサ情報取得ステップと、
前記時系列センサ情報に基づいて前記センサ毎に特徴量を生成する、特徴量生成ステップと、
前記特徴量に基づいて、前記センサ毎の情報検出頻度を示す検出頻度情報を生成する、検出頻度情報生成ステップと、
前記検出頻度情報に対して複数の因子に基づいて因子分析を行い、各前記因子に対する因子負荷量と因子得点を生成する、因子分析ステップと、
2以上の前記因子に係る前記因子得点の時間的変化の組み合わせに基づいて、見守り対象者の状態遷移に関する予測情報を生成する、予測情報生成ステップと、を備える見守り支援方法。
【請求項12】
見守り対象者の居住空間に設けられた複数のセンサにおいて検出された時系列センサ情報を取得する、センサ情報取得ステップと、
前記時系列センサ情報に基づいて前記センサ毎に特徴量を生成する、特徴量生成ステップと、
前記特徴量に基づいて、前記センサ毎の情報検出頻度を示す検出頻度情報を生成する、検出頻度情報生成ステップと、
前記検出頻度情報に対して複数の因子に基づいて因子分析を行い、各前記因子に対する因子負荷量と因子得点を生成する、因子分析ステップと、
2以上の前記因子に係る前記因子得点の時間的変化の組み合わせに基づいて、見守り対象者の状態遷移に関する予測情報を生成する、予測情報生成ステップと、を備える見守り支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、システム、特に、高齢者等の見守りを支援するシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢社会の到来に伴い、高齢者や要介護者等の生活を遠隔地等から見守ることを支援するシステムに関するニーズが増しており、従前より様々な見守り支援システムが提案されている。例えば、特許文献1には、住居空間内に設けられたセンサの検出値を介して見守り対象者の生活状況を見守るシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-173732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従前の多くのシステム(例えば、特許文献1)では、センサを介して見守り対象者の現在の状態を特定し、当該状態が所定の条件を満たす場合に、見守り者に対して所定の通知を行うというものであった。
【0005】
しかしながら、このような構成では、何が起きるか見通しが立たないため、見守りを行う者は、常に見守り支援システムを確認可能な状態を維持する必要があり、見守り負担は大きかった。
【0006】
本発明は、上述の技術的背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、見守り者の見守り負担を低減することが可能なシステム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の技術的課題は、以下の構成を有する見守り支援システム等により解決することができる。
【0008】
すなわち、本発明に係る見守り支援システムは、見守り対象者の居住空間に設けられた1又は複数のセンサにおいて検出された時系列センサ情報を取得する、センサ情報取得部と、前記時系列センサ情報に基づいて特徴量を生成する、特徴量生成部と、所定の因子を用いて前記特徴量に基づいて因子分析を行う、因子分析部と、前記因子分析結果に基づいて、前記因子の時間的変化を特定する、時間変化特定部と、前記時間的変化に基づいて、見守り対象者の状態遷移に関する予測情報を生成する、予測情報生成部と、を備えている。
【0009】
このような構成によれば、見守り対象者の居住空間に設けられたセンサにおいて検出された時系列センサ情報から得られる特徴量の背景にある因子の変化から見守り対象者の状態遷移に関する予測情報を生成することができる。見守り者は、この予測情報に基づいて見守り対象者の状態に関して一定の見通しを立てることができるので、見守り負担が軽減される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、見守り者の見守り負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、見守り支援システムの全体構成図である。
図2図2は、情報処理装置のハードウェア構成図である。
図3図3は、サーバ装置のハードウェア構成図である。
図4図4は、センサ装置をキッチンに配置された冷蔵庫に取り付ける例について示した説明図である。
図5図5は、センサ装置を寝室に取り付ける例について示した説明図である。
図6図6は、センサ装置を廊下の手すりに取り付ける例について示した説明図である。
図7図7は、センサ装置を洋室に置かれた肘掛け椅子に取り付ける例について示した説明図である。
図8図8は、センサ装置を寝室に取り付ける場合の他の例について示した説明図である。
図9図9は、センサ装置を部屋の移動に用いる扉に取り付ける例について示した説明図である。
図10図10は、学習処理を実行するときのサーバ装置の機能ブロック図である。
図11図11は、見守り支援動作を行うときのサーバ装置の機能ブロック図である。
図12図12は、センサ装置を対応付ける処理を行う際に情報処理装置に表示される画面の一例である。
図13図13は、部屋と見守り対象者の状態との関係性を示す説明図である。
図14図14は、学習処理に関するゼネラルフローチャートである。
図15図15は、前処理の詳細フローチャート(その1)である。
図16図16は、見守り処理に関するゼネラルフローチャートである。
図17図17は、前処理の詳細フローチャート(その2)である。
図18図18は、活動量の表示例を示す説明図である。
図19図19は、活動量に関する他の表示例を示す説明図である。
図20図20は、因子分析処理の詳細フローチャートである。
図21図21は、因子遷移の組み合わせに関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
(1.第1の実施形態)
第1の実施形態として、本発明を高齢者や要介護者等の見守り支援システム100に対して適用した例について説明する。なお、本実施形態においては、便宜上、見守り支援システム100を利用して見守る側の者を見守り者、見守り支援システム100により見守られる側の者を見守り対象者と称する。
【0014】
(1.1 見守り支援システムの構成)
図1は、本実施形態に係る見守り支援システム100の全体構成図である。同図から明らかな通り、見守り支援システム100は、複数のセンサ装置10(センサ装置1(10-1)、センサ装置2(10-2)、・・・、センサ装置N(10-N))と、情報処理装置20と、サーバ装置30を含み、これらの装置は互いにインターネット等のネットワークを介して接続されている。なお、本ネットワークの構成は例示である。また、サーバ装置30はクラウド上に実装されてもよい。
【0015】
センサ装置10は、後述するように、見守り対象者の居住空間の各部屋に対応して配置されている。センサ装置10は、見守り対象者をセンシングするためのセンサと、ROM、RAM等であってプログラムや各種のデータを記憶する記憶部と、CPU等の制御部と、外部装置との情報の授受を行うための通信ユニットを含む通信部と、を含む。センサ装置10のセンサにおいて検出された情報は、ネットワークを介して他の装置、例えば、サーバ装置30へと送信される。
【0016】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置20のハードウェア構成図である。同図から明らかな通り、情報処理装置20は、記憶部21と、制御部22と、通信部23と、操作入力部25と、オーディオ出力部26と、表示出力部27と、I/O部28とを備え、それらは互いにバス等を介して接続されている。
【0017】
記憶部21は、ROM/RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶部であり、後述の動作を実行する各種のプログラム又はデータを記憶している。制御部22は、CPU等の制御装置であり、プログラムを実行して後述の各種の動作を実現する。通信部23は、ネットワークを介して外部装置との間の情報の授受を行うための通信ユニットである。操作入力部25は、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力装置を介して検出された入力情報を制御部22へと提供する。オーディオ出力部26は、制御部22による制御に応じて、接続されたスピーカ等の出力装置へと音声出力を行う。表示出力部27は、制御部22による制御に応じて、ディスプレイ等の表示出力装置へと画像情報の出力を行う。I/O部28は、外部装置との間において入出力処理を行う。
【0018】
情報処理装置20は、センサ装置20又はサーバ装置30との間で情報の授受を行う。情報処理装置20を操作することで、見守り者やシステム導入者は後述の各種の設定処理を行うことができる。また、情報処理装置20を介して見守り者に対して後述の各種情報の提示を行うことができる。
【0019】
図3は、本実施形態に係るサーバ装置30のハードウェア構成図である。同図から明らかな通り、サーバ装置30は、記憶部31と、制御部32と、通信部33と、操作入力部35と、オーディオ出力部36と、表示出力部37と、I/O部38とを備え、それらは互いにバス等を介して接続されている。
【0020】
記憶部31は、ROM/RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶部であり、後述の動作を実行する各種のプログラム又はデータを記憶している。制御部32は、CPU、GPU等の制御装置であり、プログラムを実行して後述の各種の動作を実現する。通信部33は、ネットワークを介して外部装置との間の情報の授受を行うための通信ユニットである。操作入力部35は、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力装置を介して検出された入力情報を制御部32へと提供する。オーディオ出力部36は、制御部32による制御に応じて、接続されたスピーカ等の出力装置へと音声出力を行う。表示出力部37は、制御部32による制御に応じて、ディスプレイ等の表示出力装置へと画像情報の出力を行う。I/O部38は、外部装置との間において入出力処理を行う。
【0021】
サーバ装置30は、センサ装置10又は情報処理装置20との間で情報の授受を行い、後述の種々の処理を実行する。
【0022】
センサ装置10は、見守り対象者の居住空間内の様々な箇所に取り付けられる。例えば、部屋の床や壁、手すり、家電又は家具等である。
【0023】
図4は、センサ装置10をキッチンに配置された冷蔵庫11に取り付ける例について示した説明図である。同図から明らかな通り、冷蔵庫11は、上下2段の構成を有し、上段には2つの両開き扉111が配置され、下段には引き出し式の格納庫113が配置されている。同図(A)は、閉扉時の冷蔵庫の全体構成を示している。同図(B)は、上段の両開き扉111の開閉に関する説明図である。同図(C)は、下段の格納庫113の開閉に関する説明図である。
【0024】
同図(A)から明らかな通り、両開き扉111の各扉には、センサ装置10のセンサとして加速度センサ110が備えられている。また、下段の格納庫113にも、センサ装置10のセンサとして加速度センサ(不図示)が備えられている。
【0025】
同図(B)から明らかな通り、両開き扉111の各扉には加速度センサ110が備えられている。この加速度センサ110において得られる時系列信号より、扉の開閉を検出することができる。また、扉の内側に飲料等の容器が格納されると扉が重くなる。同図(B)の左右の図から明らかな通り、この重量の変化は加速度センサ110における検出値の変化として検出することができることから、扉の内側に配置された容器の有無や内容量も間接的に検出される。
【0026】
同図(C)から明らかな通り、格納庫113は加速度センサ(不図示)を備えており、この加速度センサにおいて得られる時系列信号により、格納庫113の開閉を検出することができる。また、格納庫113に飲料等の容器が格納されると格納庫113の重量が大きくなる。同図(C)の左右の図から明らかな通り、この重量の変化は加速度センサにおける検出値の変化として検出することができることから、格納庫113内の容器の有無や内容量も間接的に検出される。
【0027】
図5は、センサ装置10を寝室に取り付ける例について示した説明図である。同図(A)は配置構成例を示す図であり、同図(B)は集音例に関する説明図である。同図(A)から明らかな通り、寝室のベッド122の周辺には、センサ装置10のセンサとして、左右一対のマイクロホン、すなわち、マイクロホン121(L)とマイクロホン121(R)が配置されている。これらのマイクロホンがベッド122に寝ている見守り対象者から発生する音を時系列で収集する。例えば、同図(B)に示される通り、見守り対象者の呼吸音や咳をその集音により得られた音圧波形から検出することができる。なお、検出にあたっては、ビームフォーミングによる目的エリア(ベッド122周辺)の集音や、目的音以外のノイズ除去等の公知の種々の信号処理を行ってもよい。
【0028】
図6は、センサ装置10を廊下の手すりに取り付ける例について示した説明図である。同図(A)に示される通り、棒状の手すり131には、センサ装置10のセンサとして、ひずみセンサ132が備えられている。このひずみセンサ132から得られる時系列信号から手すりに加えられる荷重やねじりモーメント等を検出することができる。これらを検出することにより対象者の状態、例えば、手や足腰が不自由か否か等を検出することができる。
【0029】
また、複数の手すりに対してそれぞれひずみセンサを設けてもよい。同図(B)においては、3つの手すり131(131-1、131-2、131-3)が連続して配置され、各手すり131にはそれぞれひずみセンサ132(132-1、132-2、132-3)が取り付けられている。このような複数のセンサを備える構成によれば、各ひずみセンサ132で荷重やねじりモーメントが検出可能なばかりでなく、各ひずみセンサ132から得られた時系列信号を統合的に解析することで、手すりにつかまりながら移動する見守り対象者の移動速度を算出することもできる。
【0030】
図7は、センサ装置10を洋室に置かれた肘掛け椅子に取り付ける例について示した説明図である。同図(A)に示される通り、肘掛け椅子15の左右の肘掛けには、センサ装置10のセンサとして一対のひずみセンサ151(151(L)、151(R))が取り付けられている。この一対のひずみセンサ151において検出される荷重、振動、ひずみ等の時系列信号から種々の情報を検出することができる。
【0031】
同図(B)は、一対のひずみセンサ151で検出される信号の例である。このような信号から、検出される荷重の大きさやタイミング、左右差等から、見守り対象者の利き手、脚力、姿勢、呼吸等を推定することができる。
【0032】
同図(C)は、一対のひずみセンサ151において検出される信号の他の例である。このような周期的な信号から見守り対象者の呼吸等の状態を推定することができる。
【0033】
図8は、センサ装置10を寝室に取り付ける場合の他の例について示した説明図である。同図の例にあっては、ベッド162の4つの足の裏には、センサ装置10のセンサとしてそれぞれひずみセンサ163が配置されている。このひずみセンサ163から得られる時系列信号から、例えば、見守り対象者のベッド162上での状態を推定することができる。また、ベッド162から所定距離離れた位置には、センサ装置10のセンサとして距離センサ161が配置されている。この距離センサ161から得られる時系列信号から、例えば、見守り対象者の挙動を検出することができる。
【0034】
図9は、センサ装置10を部屋の移動に用いる扉に取り付ける例について示した説明図である。同図から明らかな通り、扉171は、ノブを回転させて押し引きすることにより開閉可能に構成され、扉171及びノブには加速度センサ172、173が取り付けられている。この加速度センサ172から得られる時系列信号からドアの開閉の有無、開閉速度等を検出することができる。なお、これらを通じて部屋の移動やその部屋で行われる行動の頻度等を算出することもできる。
【0035】
以上、センサ装置10のセンサの取り付け例について説明したが、いずれも単なる例示であって、本発明はこのような構成に限定されない。従って、見守り対象者の生活状態を検出するために、どのようなセンサを用いてもよいし、取り付け箇所も様々に変形可能である。
【0036】
図10は、後述の学習処理を実行するときのサーバ装置30の機能ブロック図である。同図から明らかな通り、サーバ装置30は、センサ装置10にて検出された時系列のセンサデータをその記憶部31から読み出して取得する学習用センサデータ取得部301を複数備えている。
【0037】
学習用センサデータ取得部301にて取得された時系列センサデータは、センサの種類に応じて、周波数領域へと変換され又はそのまま時間領域のデータとして特徴量生成処理部305へと供される。すなわち、学習用センサデータ取得部301にて取得された一部の時系列データは、スペクトログラム変換部302へと提供されて周波数領域へと変換され、一方、その他の時系列データは時間領域の信号としてそのまま特徴量生成処理部305へと供される。
【0038】
スペクトログラム変換部302は、時系列センサデータが入力されると、所定の単位で時系列センタデータをスペクトログラムへと変換して前処理部303へと出力する。前処理部303は、スペクトログラム変換部302から提供された周波数領域信号に対して所定の前処理を施し、前処理後の信号をセンサ毎に特徴量生成処理部305へと提供する。
【0039】
特徴量生成処理部305は、周波数領域信号又は時間領域信号に基づいて、センサ毎に最適な特徴量生成処理を行う。本実施形態においては、周波数領域信号の特徴量として、例えば、メル周波数ケプストラム係数を含むMFCC特徴量や、ディープラーニング等により生成された所定の学習済モデルの出力等を採用することができる。また、時間領域の特徴量として、例えば、過渡特性(その傾き等を含む)や、ディープラーニング等により生成された所定の学習済モデルの出力等を採用することができる。なお、周波数領域信号として、そのままスペクトログラムを採用してもよい。
【0040】
特徴量生成処理部305の出力、すなわち、生成された各特徴量は、正規化処理部306へと提供される。正規化処理部306は、各特徴量を得点化する等して正規化する。これにより、各特徴量を同一の特徴量空間において取り扱うことができるようになる。
【0041】
特徴量生成処理部305は、学習処理部307へと特徴量を提供する。また、このとき、学習用パラメータ取得部308は、学習処理部307へと学習に必要な種々のパラメータを提供する。
【0042】
学習処理部307は、提供された各特徴量とパラメータに基づいて学習処理を行う。この学習処理は、例えば、クラスタリングモデルをトレーニングする処理である。本実施形態においては、クラスタリングアルゴリズムとして、例えば、DBSCAN(Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise)を採用するものの、他のクラスタリングアルゴリズムを用いてもよい。また、他の分類アルゴリズムを採用してもよい。
【0043】
学習処理部307にて生成された学習済モデルは定義情報提供部309へと提供される。定義情報提供部309は、所定のアルゴリズム又はユーザからの設定入力に応じて、出力に対する所定の定義処理を行う。この定義処理とは、クラスタリングモデルの出力ノードがどのセンサのアクティビティに対応するかを出力挙動に応じて定義付ける処理である。
【0044】
記憶処理部310は、学習処理部307にて生成された学習済モデルと、定義情報提供部309にて生成された定義情報を記憶部31へと記憶する処理を行う。
【0045】
図11は、見守り支援動作を行うときのサーバ装置30の機能ブロック図である。同図から明らかな通り、センサデータ取得部321から正規化処理部326までの構成(センサデータ取得部321、スペクトログラム変換部322、前処理部323、特徴量生成処理部325、正規化処理部326)は、学習処理に係る構成(学習用センサデータ取得部301、スペクトログラム変換部302、前処理部303、特徴量生成処理部305、正規化処理部306)と略同一であるので詳細な説明は省略する。なお、取り扱うデータが学習段階においては学習用センサデータであったのに対し、同図の例にあっては、センサ装置10にて新たに取得されてサーバ装置30へと提供されたセンサデータである点において相違する。
【0046】
正規化処理部326において正規化された特徴量は、活動量生成部327へと提供される。活動量生成部327は、提供された各特徴量に基づいてセンサ毎の活動量(アクティビティ)を算出し、出力処理部335へと提供する。出力処理部335は、活動量を見守り者に対して提示するための処理を行う。なお、活動量は、クラスタリング処理の結果から算出してもよい。
【0047】
また、正規化処理部326において正規化された特徴量は、クラスタリング処理部328へも提供される。クラスタリング処理部328は、学習処理により生成された学習済モデルに対して正規化された各特徴量を入力してクラスタリングする処理を行う。このクラスタリング処理結果は、出力処理部335へと提供される。出力処理部335は、クラスタリング処理の結果を、見守り者に対して提示するための処理を行う。
【0048】
クラスタリング処理部328において生成されたクラスタリング結果は、因子分析処理部329へと提供される。因子分析処理部329は、クラスタリング処理結果に基づいて所定の因子について因子分析処理を行い、因子分析処理結果として因子負荷量、因子得点及び因子得点の平均値等を算出する。
【0049】
状態推定部331は、因子分析処理の結果に基づいて、見守り対象者の状態を推定し、推定結果を出力処理部335へと出力する。出力処理部335は、提供された情報を見守り者に対して提示するための処理を行う。
【0050】
また、状態遷移推定部332は、因子分析結果に基づいて、見守り対象者の状態遷移を推定する処理を行い、異常検出部333へとその結果を提供する。異常検出部333は、状態遷移の程度から異常検出を行い、その結果を出力処理部335へと提供する。出力処理部335は、状態遷移に関する情報と異常に関する情報を見守り者に対して提示するための処理を行う。
【0051】
(1.2 見守り支援システムの動作)
次に、見守り支援システム100の動作について説明する。見守り支援システム100を適切に動作させるため、見守り者又は見守り支援システム100の導入者は、事前に、居住空間へとセンサ装置10を設置すると共に、見守り支援システム100上でセンサ装置10と居住空間の間取りとを対応付ける処理を行う。また、見守り者は、事前に、所定の学習データに基づいて、学習処理を行う。
【0052】
(1.2.1 居住空間へのセンサの設置と事前設定)
見守り者等の設定者は、まず、見守り対象者の居住空間に種々のセンサ装置10を種々の態様で設置する(図4図9参照)。これにより、見守り対象者の挙動をセンサ装置10のセンサを通じて取得することができる。
【0053】
その後、設定者は、情報処理装置20等を介して、居住空間の部屋や間取りに関する設定を行った後、設置した各センサ装置10を居住空間の部屋や特定の場所等と対応付ける処理を行う。この処理結果は、サーバ装置30に記憶される。
【0054】
図12は、センサ装置10を対応付ける処理を行う際に情報処理装置20に表示される画面の一例である。同図から明らかな通り、玄関ドアにセンサ装置10を設定した場合、設定者は、画面上の「玄関」を選択して玄関ドアに取り付けたセンサ装置10の識別情報を紐付ける処理を行う。同様に、洗面化粧台にセンサ装置10を取り付けた場合、設定者は、画面上の「洗面化粧台」を選択して洗面化粧台に取り付けたセンサ装置10の識別情報を紐付ける。また、バルコニーにセンサ装置10を取り付けた場合、設定者は、画面上の「バルコニー」を選択してバルコニーに取り付けたセンサ装置10の識別情報を紐付ける。
【0055】
ここで、各部屋には、所定の見守り対象者の状態に関するラベルが付与されている。本実施形態において状態ラベルは清潔、運動、食事の3つの状態に関連するものとされる。なお、これらの状態に加えて、睡眠に関する状態を考慮してもよい。
【0056】
図13は、部屋と見守り対象者の状態との関係性を示す説明図である。同図から明らかな通り、「玄関」、「リビング」、「和室」、「廊下」は、それぞれ「外出」、「くつろぎ」、「睡眠」、「移動」を主な目的とする空間であり、いずれも人間の運動性に関する事柄であることから、これらの部屋等には運動状態を表すラベルが付与される。同様に、「ダイニング」、「キッチン」、「トイレ」は、それぞれ「食事」、「調理」、「排泄」を主目的とする空間であり、いずれも食事に関連する事柄であることから、これらの部屋等には食事状態を表すラベルが付与される。また、「洗面化粧台」、「バス(浴室)」、「洋室」、「バルコニー」は、それぞれ「身だしなみ」、「清潔」、「衣類」、「洗濯・栽培」を目的とする空間であり、いずれも人間の清潔性に関する事柄であることから、これらの部屋等には清潔状態を表すラベルが付与される。
【0057】
このように、各部屋等に見守り対象者の状態に関連するラベルが付与されていることで、各部屋に配置されたセンサ挙動からラベルを介して見守り対象者の状態を推測することができる。なお、提示処理の詳細については後述する。
【0058】
(1.2.2 学習処理)
次に、見守り支援システム100で用いられるクラスタリングモデルの事前学習処理について説明する。
【0059】
図14は、サーバ装置30において行われる学習処理に関するゼネラルフローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、学習用センサデータ取得部301は、それぞれ記憶部31から学習用の時系列センサデータを読み出して取得する処理を行う(S11)。学習用の時系列センサデータは、各センサにおいて取得された過去のデータであってもよい。
【0060】
取得処理の後、スペクトログラム変換部302は、一部の学習用センサデータに対してスペクトログラムへの変換処理を行う(S12)。これにより、一部の時系列センサデータが周波数領域へと変換される。
【0061】
スペクトログラム変換処理の後、前処理部303は、スペクトログラムへの変換処理が成された信号に対して所定の前処理を行う(S13)。
【0062】
図15は、前処理の詳細フローチャート(その1)である。同図から明らかな通り、処理が開始すると、前処理部303は、スペクトログラムに対して周波数帯域を所定の範囲に限定する処理を行う(S131)。次に、前処理部303は、所定の周波数帯域のスペクトログラムを正規化する処理を行う(S132)。前処理部303は、この正規化処理がなされたスペクトログラムの所定の周波数とパワーをマスクする処理を行う(S133、S135)。その後、前処理は終了する。
【0063】
このような前処理を行うことにより、想定範囲の周波数領域信号のみを後述の特徴量生成処理へと供することができる。
【0064】
図14に戻り、前処理の後、特徴量生成処理部305は、前処理後の周波数領域信号及び、時間領域のセンサデータに基づき、センサ毎に最適な特徴量を生成する処理を行う(S15)。特徴量として様々な対象を採用することができる。例えば、マイクロホンから取得されたオーディオ信号であればメル周波数ケプストラム係数を含むMFCC特徴量を特徴量としてもよい。また、ディープラーニングにより生成された学習済モデルの予測結果を特徴量としてもよい。さらに、時間領域信号であれば過渡特性の傾き等を特徴量としてもよい。
【0065】
特徴量生成処理の後、正規化処理部306は、各特徴量を得点化する等して正規化する処理を行う(S16)。これにより、各特徴量を同一の特徴量空間において取り扱うことができるようになる。
【0066】
特徴量の正規化処理の後、学習用パラメータ取得部308は、記憶部31から学習に要するパラメータを取得する処理を行う(S17)。
【0067】
このパラメータ取得後、学習処理部307は、正規化された特徴量とパラメータに基づいて、所定のモデルを所定のアルゴリズムでトレーニングする学習処理を行う(S18)。
【0068】
この学習処理は、例えば、クラスタリングモデルをトレーニングする処理であってもよい。本実施形態においては、クラスタリングアルゴリズムとして、DBSCAN(Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise)を採用するものの、他のクラスタリングアルゴリズムを用いてもよい。また、他の分類アルゴリズムを採用してもよい。なお、学習処理を初期パラメータを変更する等して複数回行い、最も好適な学習済モデルを最終的な学習済モデルとする構成を採用してもよい。
【0069】
学習処理の後、定義情報提供部309は、学習済モデルに対して所定の定義を提供する処理を行う(S19)。定義情報提供部309は、設定者からの入力に応じて定義情報を提供してもよいし、所定の条件に基づいて自動的に定義情報を提供してもよい。ここで、本実施形態において、定義情報は、クラスタリングモデルの出力ノードがどのセンサのアクティビティに対応するかを定義づける情報である。
【0070】
定義処理の後、記憶処理部310は、学習済モデルを記憶部31へと記憶する処理を行い(S21)、学習処理は終了する。
【0071】
なお、学習用のデータセットが複数ある場合には、上述の学習処理を繰り返してもよい。
【0072】
(1.2.3 見守りシステムの動作)
次に、見守り支援システム100の動作について説明する。
【0073】
図16は、見守り処理を行う際のサーバ装置30の動作に関するゼネラルフローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、センサデータ取得部321は、センサ装置10において検出され記憶部31に記憶されたセンサデータをそれぞれ取得する処理を行う(S31)。
【0074】
センサデータの取得処理の後、スペクトログラム変換部322は、一部のセンサデータに対してスペクトログラムへの変換処理を行う(S32)。これにより、一部の時系列センサデータが周波数領域へと変換される。
【0075】
このような構成によれば、センサ検出情報を時間領域又は周波数領域の特徴量に変換することができ、多角的な解析を行うことができる。
【0076】
スペクトログラム変換処理の後、前処理部323は、スペクトログラムへの変換処理が成された信号に対して所定の前処理を行う(S33)。
【0077】
図17は、前処理の詳細フローチャート(その2)である。同図から明らかな通り、処理が開始すると、前処理部323は、スペクトログラムに対して周波数帯域を所定の範囲に限定する処理を行う(S331)。次に、前処理部323は、所定の周波数帯域のスペクトログラムを正規化する処理を行う(S332)。前処理部323は、この正規化処理がなされたスペクトログラムの所定の周波数とパワーをマスクする処理を行う(S333、S335)。その後、前処理は終了する。
【0078】
このような前処理を行うことにより、想定範囲の周波数領域信号のみを後述の特徴量生成処理へと供することができる。
【0079】
図16に戻り、前処理の後、特徴量生成処理部325は、前処理後の周波数領域信号及び、時間領域のセンサデータに基づき、センサ毎に最適な特徴量を生成する処理を行う(S35)。特徴量として様々な対象を採用することができる。例えば、マイクロホンから取得されたオーディオ信号であればメル周波数ケプストラム係数を含むMFCC特徴量を特徴量としてもよい。また、ディープラーニングにより生成された学習済モデルの予測結果を特徴量としてもよい。さらに、時間領域信号であれば過渡特性の傾き等を特徴量としてもよい。
【0080】
特徴量生成処理の後、正規化処理部326は、各特徴量を得点化する等して正規化する処理を行う(S36)。これにより、各特徴量を同一の特徴量空間において取り扱うことができるようになる。
【0081】
特徴量の正規化処理の後、正規化処理された特徴量は、活動量生成部327と、クラスタリング処理部328へと供される。
【0082】
活動量生成部327は、正規化された特徴量に基づいて、各センサ装置10の活動量を生成する処理を行う(S37)。活動量(又はアクティビティ)とは、各センサにおいてどれだけ頻繁に情報検出がされているかを示す指標であり、本実施形態においては、例えば、正規化された特徴量の単位時間あたりの発生頻度等である。
【0083】
活動量の生成処理の後、出力処理部335は、各センサに関する活動量を出力する処理を行う(S38)。ここで、出力処理は、見守り者に対して情報を提示する処理であり、例えば、情報処理装置20と結合されているディスプレイへと提示する情報を情報処理装置20へと送信する処理である。この処理の後、処理は終了する。
【0084】
図18は、ディスプレイ上への活動量の表示例を示す説明図である。同図(A)は、基本的な表示例であり、同図(B)はさらに追加的な機能に基づく表示例である。
【0085】
同図(A)では、例として、2022年4月1日の各部屋又はセンサ装置10におけるセンサ活動量の大きさが、各部屋又はセンサ装置10に対して配置された円の直径の大きさにより表現されている。同図から明らかな通り、情報処理装置20のディスプレイに表示される画像は、センサ装置10が配置される見守り対象者の居住空間の平面図(又は間取り)を含んでいる。上述の通り、各センサ装置10は、事前設定により各部屋と紐づけられている。そのため、各部屋でのセンサの活動量が円によって表現され、これを通じて見守り対象者の状態を把握することができる。
【0086】
このような構成によれば、居住空間の間取りに対応してセンサの活動量を提示することを通じて、見守り対象者の状態を推定することができる。
【0087】
なお、活動量の提示方法はこのような態様に限定されない。従って、様々な態様で提示することができる。例えば、ある日付のセンサ活動量と他の日付のセンサ活動量の差分を提示する等、他の時間区間におけるセンサ活動量との相対的関係性を表示してもよい。
【0088】
同図(B)は、センサ活動量の相対的関係性の表示例を示す説明図である。同図の例にあっては、2022年4月1日のセンサ活動量を表す円と、2022年4月10日のセンサ活動量を表す円が、平面図上に重畳的に描写されている。
【0089】
このような構成によれば、各部屋における円の直径の差分等から直ちに活動量の変化を捉えることができ、これにより、より見守り対象者の状態を的確に把握することができる。
【0090】
また、活動量は必ずしも部屋の間取りと共に表示する必要はない。例えば、他の様々な方法で表示することができる。
【0091】
図19は、センサ活動量に関する他の表示例を示す説明図である。同図(A)は、各センサ装置10におけるセンサ活動量を色付きの3次元の棒グラフで表示する例であり、同図(B)は、各センサ装置10におけるセンサ活動量を色付きの円グラフで表示する例であり、同図(C)は、各センサ装置10におけるセンサ活動量を魚形状のイラストの大きさ、位置及び色を用いて表示する例である。同図(A)によれば、立体的に各部屋又はセンサ装置10におけるセンサ活動量を把握することができる。同図(B)によれば、各部屋又はセンサ装置10におけるセンサ活動量の相対的な関係性を把握することができる。同図(C)によれば、エンターテインメント性を以て各部屋又はセンサ装置10におけるセンサ活動量を把握することができる。
【0092】
図16に戻り、クラスタリング処理部328は、学習処理により生成した学習済モデルを用いて、正規化された特徴量をクラスタリングする処理を行う(S39)。クラスタリングアルゴリズムは本実施形態においてはDBSCANである。なお、クラスタリングモデルには、上述の通り、定義処理がなされている。そのため、クラスタリング処理結果から、どのセンサ装置10において情報検出が行われているかを的確に把握することができる。
【0093】
このような構成によれば、クラスタリングを通じて、センサや環境等によるノイズの影響等を低減することができる。
【0094】
クラスタリング処理の後、出力処理部335は、クラスタリング処理結果を出力する処理を行う(S40)。ここで、出力処理は、見守り者に対して情報を提示する処理であり、例えば、情報処理装置20と結合されているディスプレイへと提示する情報を情報処理装置20へと送信する処理である。この処理の後、処理は終了する。
【0095】
なお、クラスタリング処理結果に対して活動量生成処理を行ってもよい。すなわち、クラスタリング処理結果に相当する各出力に対して、単位時間あたりの発生頻度等を算出してもよい。
【0096】
クラスタリング処理後に戻り、因子分析処理部329は、クラスタリング処理結果に対して因子分析処理を行う(S41)。
【0097】
図20は、因子分析処理の詳細フローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、因子分析処理部329は、因子分析に用いるデータ、すなわち、正規化した特徴量のクラスタリング処理結果に対して前処理を実行する(S411)。前処理は、本実施形態においては、クラスタリング処理結果、例えば、各出力ノードの出力を単位時間あたりの検出頻度等の観点で複数の段階に分類して離散値とする処理である。複数の段階は例えば7段階であってもよい。
【0098】
前処理を行った後、因子分析処理部329は、前処理後のクラスタリング処理結果に対して、所定の因子との間でそれぞれ因子負荷量を生成する処理を行う(S412)。ここで、本実施形態において、因子は、見守り対象者の運動性に関する因子である運動因子と、見守り対象者の食事に関する因子である食事因子と、見守り対象者の清潔性に関する因子である清潔因子とを含んでいる。
【0099】
このような構成によれば、清潔、運動及び食事の観点から見守り対象者の状態を評価することができる。これにより、高齢者等の状態を適切に評価することができる。
【0100】
なお、因子はこのような3つに限定されず、さらに、睡眠に関する因子である睡眠因子を含んでもよい。
【0101】
因子負荷量の生成の後、因子分析処理部329は、因子負荷量に基づいて因子得点の生成処理を行う(S413)。また、この因子得点の生成処理の後、因子分析処理部329は、因子得点の所定時間区間の平均値を算出する処理を行う(S415)。所定時間区間とは、例えば、一日である。この平均値生成処理の後、因子分析処理は終了する。
【0102】
図16に戻り、因子分析処理の後、状態推定部331は、因子分析結果に基づいて見守り対象者の状態を推定する処理を行う。本実施形態においては、生成した各因子の平均因子得点と以下の評価式を用いて健康状態(Ha)を生成することにより状態推定が行われる。なお、本実施形態において、推定の語は予測等の他の語と置換することができる。
【0103】
【数1】
【0104】
ここで、α、β、γは所定の係数であり、(清潔)は清潔因子の平均因子得点、(運動)は運動因子の平均因子得点、(食事)は食事因子の平均因子得点を表している。Cは所定の定数である。
【0105】
なお、評価式は、このような形式に限定されない。従って、例えば、自然対数eを用いて以下のように設定してもよい。
【0106】
【数2】
【0107】
なお、因子数が4つの場合にも同様の手法で健康状態を生成することができる。すなわち、因子が睡眠因子を含んで4つの場合、以下の評価式から健康状態(H)を評価してもよい。
【0108】
【数3】
【0109】
ただし、δは所定の係数であり、(睡眠)は睡眠因子の平均因子得点である。
【0110】
なお、この場合も同様に、自然対数eを用いて以下のように設定することもできる。
【0111】
【数4】
【0112】
このような構成によれば、時系列のセンサ信号から得られる特徴量の背景にある因子に基づいて健康状態を推定することができる。
【0113】
状態推定処理の後、出力処理部335は、生成した健康状態を出力する処理を行う(S43)。ここで、出力処理は、見守り者に対して情報を提示する処理であり、例えば、情報処理装置20と結合されているディスプレイへと提示する情報を情報処理装置20へと送信する処理である。この処理の後、処理は終了する。
【0114】
因子分析処理後、状態遷移推定部332は、因子分析処理の結果に基づいて、時間方向の状態遷移を推定する処理を行う(S45)。より詳細には、状態遷移推定部332は、本実施形態においては、所定の因子の遷移の組み合わせ、すなわち、運動因子の遷移と清潔因子の遷移の組み合わせ、食事因子の遷移と運動因子の遷移の組み合わせ、清潔因子の遷移と食事因子の遷移の組み合わせ、から傾向を特定することで、状態遷移を推定する。なお、本実施形態では、運動因子と清潔因子の組み合わせを快活性と称し、食事因子と運動因子の組み合わせを活動性と称し、清潔因子と食事因子の組み合わせを認知性と称する。
【0115】
このような構成によれば、多次元的な評価により予測情報を生成することができる。また、清潔、運動及び食事の観点から見守り対象者の状態を評価することができ、高齢者等の状態を適切に評価することができる。
【0116】
図21は、因子遷移の組み合わせに関する説明図である。同図(A)は快活性に関する概念図、同図(B)は活動性に関する概念図、同図(C)は認知性に関する概念図である。
【0117】
同図(A)から明らかな通り、運動性と清潔性に関する平均因子得点を時系列で評価することで快活性に関する傾向を把握することができる。このベクトルの傾向により、将来の状態遷移を推定することができる。例えば、運動性と清潔性に関する因子がいずれもが向上しているものと判断される場合、将来的に快活性が向上していく傾向にあることが特定される。
【0118】
同図(B)から明らかな通り、食事と運動性に関する平均因子得点を時系列で評価することで活動性に関する傾向を把握することができる。このベクトルの傾向により、将来の状態遷移を推定することができる。例えば、食事と運動性に関する因子がいずれもが向上しているものと判断される場合、将来的に活動性が向上していく傾向にあることが特定される。
【0119】
同図(C)から明らかな通り、清潔性と食事に関する平均因子得点を時系列で評価することで認知性に関する傾向を把握することができる。このベクトルの傾向により、将来の状態遷移を推定することができる。例えば、清潔性と食事に関する因子がいずれもが向上しているものと判断される場合、将来的に認知性が向上していく傾向にあることが特定される。
【0120】
なお、本実施形態においては、2つの因子遷移を組み合わせて状態遷移を予測するものとして説明したが、本発明はそのような構成に限定されない。従って、1つの因子の遷移から状態遷移を予測してもよいし、3つ以上の因子を組み合わせて状態遷移を予測するものとしてもよい。
【0121】
図16に戻り、状態遷移推定処理の後、異常検出部333は、各因子の変化の程度が所定の閾値を超えるか否かに応じて異常検出処理を行う(S46)。例えば、図21において平均因子得点の遷移を表すベクトルの大きさが所定の閾値を超えるか否かにより異常検出を行ってもよい。なお、以上検出の判定方法については様々手法を用いることができる。要するに遷移ベクトルの変化の程度を捉えることができればよいので、ベクトルの差分や、傾き等から異常検出を行ってもよいし、それらの特徴を総合的に判断して異常検出を行ってもよい。また、快活性、活動性及び認知性のいずれか1つにおいて異常検出された場合に異常と判定してもよいし、3つの要素のうちの2つ以上において異常が見られた場合に異常と判定してもよい。
【0122】
異常検出処理の後、出力処理部335は、状態遷移の推定と異常の有無を出力する処理を行う(S47)。ここで、出力処理は、見守り者に対して情報を提示する処理であり、例えば、情報処理装置20と結合されているディスプレイへと提示する情報を情報処理装置20へと送信する処理である。この処理の後、処理は終了する。
【0123】
以上の構成によれば、見守り対象者の居住空間に設けられたセンサにおいて検出された時系列センサ情報から得られる特徴量の背景にある因子の変化から見守り対象者の状態遷移に関する予測情報を生成することができる。見守り者は、この予測情報に基づいて見守り対象者の状態に関して一定の見通しを立てることができるので、見守り負担が軽減される。
【0124】
(2.変形例)
本発明は、様々に変形して実施することができる。
【0125】
上述の実施形態においては、見守り者に対して、見守り対象者の状態又は状態遷移の予測情報を提供する構成について説明したが、本発明はそのような構成に限定されない。従って、見守り支援システム100がさらに見守り対象者の居住空間内に設けられる所定の提示手段を備え、この提示手段を通じて見守り対象者に対して様々な提示、例えば、自身の状態に関する気付きを与える提示又は状態の改善を促す提示を行ってもよい。
【0126】
より詳細には、サーバ装置30が上述の状態又は状態遷移の予測情報を生成した後、状態に関する気付きを与えるための情報又は状態の改善を促す情報を生成し、それらの情報を提示手段へと送信し、提示手段を通じて見守り対象者に対して提示を行ってもよい。
【0127】
提示手段は、見守り対象者の居住空間に設置され見守り対象者の五感に対して所定の刺激を与える手段であり、例えば、スピーカ(聴覚的刺激)、ディスプレイ(視覚的刺激)、LED等の光源(視覚的刺激)、振動ユニット(触覚的刺激)等である。なお、提示手段は、センサ装置10と一体に設けられてもよい。状態に関する気付きを与えるための情報とは、例えば、見守り対象者の現在状態を示す音(又は機能音)、画像(又は動画像)、発光パターン、振動パターン等の情報である。状態の改善を促す情報とは、例えば、見守り対象者の呈する状態や症状の改善を促す情報であり、例えば、時間感覚が失われている場合には時間感覚を取り戻させたり又は時間に関する気付きを促すための音(又は機能音)、画像(又は動画像)、発光パターン、振動パターン等である。
【0128】
上述の実施形態において、見守り者への各種の提示は、最終的に情報処理装置20と結合されるディスプレイにおいてなされるものとして説明したが、本発明はそのような構成に限定されない。視覚的な提示でなく、他の五感に対して提示を行う手段、例えば、情報処理装置20に備えられたスピーカや振動装置等のデバイスを通じて、音や振動による提示を行ってもよい。
【0129】
上述の実施形態においては、異常検出を行った場合に、単に見守り者に提示するものとして説明したが、医療機関等のサーバ等の外部の装置に直接又は間接に通知を行うよう構成してもよい。
【0130】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記の実施形態は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、ネットワークシステム等を製造、使用等する産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0132】
10 センサ装置
20 情報処理装置
30 サーバ装置
100 見守り支援システム
【要約】
見守り対象者の居住空間に設けられた1又は複数のセンサにおいて検出された時系列センサ情報を取得する、センサ情報取得部と、前記時系列センサ情報に基づいて特徴量を生成する、特徴量生成部と、所定の因子を用いて前記特徴量に基づいて因子分析を行う、因子分析部と、前記因子分析結果に基づいて、前記因子の時間的変化を特定する、時間変化特定部と、前記時間的変化に基づいて、見守り対象者の状態遷移に関する予測情報を生成する、予測情報生成部と、を備える見守り支援システムが提供される。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21