(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】水中調査装置
(51)【国際特許分類】
B63C 11/48 20060101AFI20240607BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
B63C11/48 D
B63C11/00 B
(21)【出願番号】P 2020070588
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-03-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和02年01月29に海と産業革新コンベンション(うみコン2020)にて展示
(73)【特許権者】
【識別番号】000129390
【氏名又は名称】株式会社キュー・アイ
(74)【代理人】
【識別番号】100091410
【氏名又は名称】澁谷 啓朗
(72)【発明者】
【氏名】豊島 雄樹
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/010060(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0017180(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0251199(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0301168(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0193206(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/48
B63C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中調査装置であって、
断面三角形状の支持体と、
前記支持体の上側に配置されたカメラと、
前記支持体の左下側及び右下側のそれぞれに配置された電源装置と、
前記支持体の左右両側面部の前側にそれぞれ配置された、外側に向かって斜め上方を向いている左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタと、
前記支持体の底部後側に配置された、上下方向を向いている底部スラスタと、を備え、
前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタは前記底部スラスタよりも前側に配置され
、
前記水中調査装置の前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタが配置された箇所の内側には底部で開口する前側空所が形成されていて、
前記前側空所は、前記カメラを収容する上側筒状ケースと、前記電源装置を収容する左下側及び右下側の下側筒状ケースと、の内側に形成され、
前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタはそれぞれ、前記上側筒状ケースと、前記下側筒状ケースと、の間を臨むように配置されている、ことを特徴とする水中調査装置。
【請求項2】
水中調査装置であって、
断面三角形状の支持体と、
前記支持体の上側に配置されたカメラと、
前記支持体の左下側及び右下側のそれぞれに配置された電源装置と、
前記支持体の左右両側面部の前側にそれぞれ配置された、外側に向かって斜め上方を向いている左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタと、
前記支持体の底部後側に配置された、上下方向を向いている底部スラスタと、を備え、
前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタは前記底部スラスタよりも前側に配置されていて、
前記水中調査装置の前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタが配置された箇所の内側には底部で開口する前側空所が形成され
、
前記前側空所の天井部には断面逆三角形状の傾斜スラスタ用整流部材が取り付けられている、ことを特徴とする水中調査装置。
【請求項3】
水中調査装置であって、
断面三角形状の支持体と、
前記支持体の上側に配置されたカメラと、
前記支持体の左下側及び右下側のそれぞれに配置された電源装置と、
前記支持体の左右両側面部の前側にそれぞれ配置された、外側に向かって斜め上方を向いている左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタと、
前記支持体の底部後側に配置された、上下方向を向いている底部スラスタと、を備え、
前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタは前記底部スラスタよりも前側に配置され、
前記水中調査装置の前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタが配置された箇所の内側には底部で開口する前側空所が形成されていて、
前記前側空所は、前記カメラを収容する上側筒状ケースと、前記電源装置を収容する左下側及び右下側の下側筒状ケースと、の内側に形成され
、
前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタはそれぞれ、前記上側筒状ケースと、前記下側筒状ケースと、の間を臨むように配置され
、
前記前側空所の天井部には断面逆三角形状の傾斜スラスタ用整流部材が取り付けられている、ことを特徴とする水中調査装置。
【請求項4】
水中調査装置であって、
断面三角形状の支持体と、
前記支持体の上側に配置されたカメラと、
前記支持体の左下側及び右下側のそれぞれに配置された電源装置と、
前記支持体の左右両側面部の前側にそれぞれ配置された、外側に向かって斜め上方を向いている左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタと、
前記支持体の底部後側に配置された、上下方向を向いている底部スラスタと、を備え、
前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタは前記底部スラスタよりも前側に配置されていて、
前記水中調査装置の後側には後側空所が形成され、前記底部スラスタの上方の前記後側空所の天井部には断面逆三角形状の底部スラスタ用整流部材が取り付けられている、ことを特徴とする水中調査装置。
【請求項5】
水中調査装置であって、
断面三角形状の支持体と、
前記支持体の上側に配置されたカメラと、
前記支持体の左下側及び右下側のそれぞれに配置された電源装置と、
前記支持体の左右両側面部の前側にそれぞれ配置された、外側に向かって斜め上方を向いている左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタと、
前記支持体の底部後側に配置された、上下方向を向いている底部スラスタと、を備え、
前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタは前記底部スラスタよりも前側に配置されていて、
前記水中調査装置の前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタが配置された箇所の内側には底部で開口する前側空所が形成され、
前記水中調査装置の後側には後側空所が形成され、前記底部スラスタの上方の前記後側空所の天井部には断面逆三角形状の底部スラスタ用整流部材が取り付けられている、
ことを特徴とする水中調査装置。
【請求項6】
前記水中調査装置の後側には後側空所が形成され、前記底部スラスタの上方の前記後側空所の天井部には断面逆三角形状の底部スラスタ用整流部材が取り付けられている、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の水中調査装置。
【請求項7】
前記支持体の後面部には一対の後部スラスタが設けられている、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の水中調査装置。
【請求項8】
水中調査装置であって、
断面三角形状の支持体と、
前記支持体の上側に配置され、この支持体の後側まで延びる軽量部材と、
前記支持体の左下側及び右下側のそれぞれに配置され、この支持体の後側まで延びる重量部材と、
前記支持体の左右両側面部の前側にそれぞれ配置された、外側に向かって斜め上方を向いている左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタと、
前記支持体の底部後側に配置された、上下方向を向いている底部スラスタと、を備え、
前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタは前記底部スラスタよりも前側に配置されていて、
前記水中調査装置の前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタが配置された箇所の内側には底部で開口する前側空所が形成され、
前記前側空所は、前記軽量部材と、前記重量部材と、の内側に形成され、
前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタはそれぞれ、前記軽量部材と、前記重量部材と、の間を臨むように配置されている、ことを特徴とする水中調査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラを搭載して水中を移動し、水中内を撮影して水中の調査や観測を行う水中調査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
潜水し、水中を移動して水中内を撮影する水中調査装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された水中調査装置は、船体に、テレビ・カメラや水中スティル・カメラを搭載し、左舷水平推進機及び右舷水平推進機を配置し、左舷垂直推進機及び右舷垂直推進機を設けたものであり、左舷水平推進機、右舷水平推進機、左舷垂直推進機及び右舷垂直推進機を駆動して水中を移動し、テレビ・カメラや水中スティル・カメラで水中内を撮影するものである。このような水中調査装置を用いることにより、作業員が潜水することなしに水中内の構造物などの状態を効率的に把握することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような水中調査装置は、カメラなどの搭載物と推進機との配置位置が水中での装置の姿勢制御のしやすさや小型化などを考慮して定められていないので、調査対象の精度の良い撮影を得ることが難しいし、狭い場所での調査能力や省電力化の観点でも問題を有している。
【0005】
そこで本発明は、水中での姿勢制御に優れ、しかも小型化に適した水中調査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するための本発明の水中調査装置は、水中調査装置であって、例えば断面三角形状の支持体と、前記支持体の上側に配置されたカメラと、前記支持体の左下側及び右下側のそれぞれに配置されたバッテリ等の電源装置と、前記支持体の左右両側面部の前側にそれぞれ配置された、外側に向かって斜め上方を向いている左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタと、前記支持体の底部又は底面部後側に配置された、上下方向を向いている底部スラスタと、を備え、前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタは前記底部スラスタよりも前側に配置されているものである。断面三角形状の支持体は前方投影面積が小さく水流抵抗が小さいので少ない電力で大きな速度を得ることができる。また、小型化に適し、狭い場所での移動性にも優れている。さらに、重量の大きなバッテリ等の電源装置を支持体の左下側及び右下側のそれぞれに配置しているので水中調査装置の安定度は高い。左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタと底部スラスタとを前後方向の位置をずらして配置しているので、優れた姿勢制御が可能となり、精度の高い撮影調査機能を確保できる。しかも、左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタを支持体の側面部に又は側面部に沿って配置し、底部スラスタを支持体の底部又は底面部に若しくは底部又は底面部に沿って配置しているので、スラスタの配置により水中調査装置が大型化してしまうということがない。左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタはそれぞれ、斜め方向の推進力を発生させる。底部スラスタは上下方向の推進力を発生させる。カメラの映像又は画像は、例えば水上又は地上の調査用機械に送られる。電源装置は、例えば水中調査装置のスラスタ等の各部又は部品に電力を供給する。
【0007】
水中調査装置の左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタが配置された箇所の内側には底部で開口する前側空所が形成されていることが好ましい。前側空所の形成により十分な推進力を発生させる水の流れを確保できる。より具体的には、前側空所を、カメラを収容する上側筒状ケースと、電源装置を収容する左下側及び右下側の下側筒状ケースと、の間に形成し、左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタそれぞれを上側筒状ケースと、下側筒状ケースと、の間を臨むように配置できる。ここでは、スラスタの配置による水中調査装置の大型化を避けながら、スラスタによるスムーズな水のながれを確保できる。また、前側空所の天井部に断面逆三角形状の傾斜スラスタ用整流部材を取り付けておくことができる。これにより左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタで、よりスムーズな水の流れを発生させることができる。水中調査装置の後側には後側空所が形成されている。底部スラスタの上方の後側空所の天井部にも断面逆三角形状の底部スラスタ用整流部材を取り付けておけば、底部スラスタによる水の流れをよりスムーズなものとすることができる。
【0008】
支持体の後面部に又は後面部に沿って一対の後部スラスタを設ければ、スラスタの配置により水中調査装置が大型化してしまうということがない。この一対の後部スラスタは、例えば内側に向かって、ハの字状に広がる方向を向くように配置することができる。後部スラスタを後側空所を臨むように配置すればスムーズな水の流れを確保できる。
【0009】
本発明の具体例では、スラスタの配置態様の特殊性により、5つという少ない個数のスラスタで精度の高い姿勢制御が達成されることとなる。
【0010】
本発明の水中調査装置は、水中調査装置であって、例えば断面三角形状の支持体と、前記支持体の上側に配置され、この支持体の前側から後側まで延びる軽量部材(例えばカメラ収容軽量部材若しくは円柱状、角柱状、筒状、断面円形、断面角形又は断面多角形の軽量部材)と、前記支持体の左下側及び右下側のそれぞれに配置され、この支持体の前側から後側まで延びる重量部材(例えばバッテリ等の電源装置収容重量部材若しくは円柱状、角柱状、筒状、断面円形、断面角形又は断面多角形の重量部材)と、前記支持体の左右両側面部の前側にそれぞれ配置された、外側に向かって斜め上方を向いている左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタと、前記支持体の底部後側に配置された、上下方向を向いている底部スラスタと、を備え、前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタは前記底部スラスタよりも前側に配置されていて、前記水中調査装置の前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタが配置された箇所の内側には底部で開口する前側空所が形成され、前記前側空所は、前記軽量部材と、前記重量部材と、の内側に形成され、前記左傾斜スラスタ及び右傾斜スラスタはそれぞれ、前記軽量部材と、前記重量部材と、の間を臨むように配置されているものとして構成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、調査対象を効率的に撮影することが可能な小型の水中調査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】水中調査装置の底面側から見た斜視図である。
【
図3】水中調査装置の後方側から見た斜視図である。
【
図4】パネル及び前側カバーを外した場合の水中調査装置の斜視図である。
【
図5】パネル及び前側カバーを外した場合の水中調査装置の底面側から見た斜視図である。
【
図6】傾斜スラスタにより発生する水の流れを示す図である。
【
図7】底部スラスタにより発生する水の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、特に
図1、
図2、
図3及び
図4を参照して本発明に係る水中調査装置の構造の概略を説明する。
【0014】
水中調査装置1は断面三角形状の支持体3を有し、この支持体3の内側上部に、テレビカメラを前側に備えた円筒状のアクリル製制御部ケース5(軽量部材)が配置され、支持体3の内側の幅方向両下側にバッテリを収容した円筒状のバッテリケース7(重量部材)が取り付けられている。支持体3は、フレーム9と、このフレーム9に取り付けられたパネル11、13、15と、フレーム9に取り付けられた一対の前側カバー17と、を備えている。フレーム9の前面の幅方向両側にはそれぞれ、調査対象にラインを表示するためのラインレーザマーカ19、照明用LEDライト21及び調査対象との距離を計測する超音波距離センサ23が設けられている。また、水中調査装置1はスラスタ25、27、29を備えている。
【0015】
次に、特に
図1、
図2、
図3及び
図4を参照して水中調査装置1のフレーム9、パネル11、13、15及び前側カバー17の構成を説明する。
【0016】
フレーム9は、底部中央に四角形状又は台形状の凹部33を有する三角形状の厚肉の前側枠部35と、下側中央に窓37を有する三角形状の比較的厚肉の中央枠部39と、外縁に内側に突出する縁部41を有する三角形状の薄肉の後側プレート部43と、を有していて、前側枠部35と中央枠部39は幅方向両側でそれぞれ、連結用突出部45を有する傾斜スラスタブラケット47により連結され、後側プレート部43と前側枠部35とは4本の棒状のガード部材49により接続されている。また、前側枠部35の前面(フレーム9の前面)にはテレビカメラ又は制御部ケース5の前端部を保護するための一対のU字状のガード部51を有するガードが取り付けられている。なお、符号52は下側のガード部材49それぞれに取り外し可能に取り付けられたおもり部材である。
【0017】
パネル11は、前側にスラスタ窓53を有し、後側に3つの流路用窓55、57、59が形成された長方形状部及び内側湾曲部からなるプレート体であり、フレーム9の両側の側面部から底縁部に掛けての個所に取り付けられている。パネル13は断面円弧状のプレート体でありフレーム9の上面部に取り付けられている。また、パネル15は正方形状の縁状プレート体又は枠状プレート体であり、内側がスラスタ窓61を形成してフレーム9の底面部の後方、すなわち中央枠部39の底部及び後側プレート部43の縁部41の内端側底部に取り付けられている。
【0018】
前側カバー17は、レーザマーカ孔63、照明孔65及びセンサ孔67を有し、前側枠部35の前面の幅方向両側に取り付けられてフレーム9の前面の幅方向両側を覆っている。
【0019】
次に、特に
図2、
図3、
図4及び
図5を参照してテレビカメラを備えた制御部ケース5、バッテリケース7、ラインレーザマーカ19、照明用LEDライト21及び超音波距離センサ23の取り付け態様について説明する。
【0020】
円筒状の透明の制御部ケース5(前端部12には半球状のカバーが取り付けられている)は、前端部に前方を撮影する直視テレビカメラ67及び下方を撮影する直下テレビカメラ69を収容し、前端部よりも後方にジャイロセンサ、加速度センサ、水深センサ及び温度センサなどが搭載された制御基板を収容しているが、前端部が前側枠部35から突出した状態で、前側枠部35の上側に設けられた支持孔部及び中央枠部39の上側に設けられた支持孔部に通されて後側プレート部43の手前まで延びている。後側プレート部43の上側には引き出し孔71が設けられていて、制御部ケース5から延びる信号ケーブル73がこの引き出し孔71を通って外側に引き出されて地上又は水上のモニタを有するコントロール装置に接続されている。フレーム9の幅方向両下側にそれぞれ配置されている円筒状のバッテリケース7は、前側枠部35の幅方向両下側に設けられた支持孔部及び中央枠部39の幅方向両下側に設けられた支持孔部に通されて中央枠部39と後側プレート部43との中間位置まで延びている。また、照明用LEDライト21は前側枠部35の前面に直接取り付けられているが、ラインレーザマーカ19及び超音波距離センサ23は取り付けプレート75上に搭載されていて、この取り付けプレート75はそれぞれ、バッテリケース7の前端開口を塞ぐように前側枠部35の前面の幅方向両下側に取り外し可能に固定されている。ラインレーザマーカ19、照明用LEDライト21及び超音波距離センサ23はそれぞれ、前側カバー17のレーザマーカ孔63、照明孔65及びセンサ孔67内に位置して前方を向いている。なお、水中調査装置1内の配線の表示は省略している。
【0021】
次に、特に
図2、
図3及び
図4を参照してスラスタ25、27、29の取り付け態様を説明する。
【0022】
スラスタ25は、パネル11のスラスタ窓53に嵌められている傾斜スラスタブラケット47に、外側に向かって斜め上方を向くように取り付けられて配置された左右一対の傾斜スラスタであり、この傾斜スラスタ25はそれぞれ、前側枠部35及び中央枠部39間で制御部ケース5(上側筒状ケース)とバッテリケース7(下側筒状ケース)との間に位置している。左右の傾斜スラスタ25はそれぞれ、前側枠部35と中央枠部39との間で、制御部ケース5及び一対のバッテリケース7の内側に形成されている、底部開口の前側空所77から水中調査装置1の外側に向かう傾斜外向き水流又は水中調査装置1の外側から空所77に向かう傾斜内向き水流を生じさせ、これらの水流により斜め下側を向いた又は斜め上側を向いた推進力を発生させる。なお、
図5に示されているように、前側枠部35及び央枠部39間の前側空所77の天井部(制御部ケース5の外周面下側)には、上面79が制御部ケース5の外周面の曲率と同じ曲率で湾曲する断面三角形状の整流部材81が取り付けられている。
【0023】
スラスタ27は、中央枠部39の底部と後側プレート部43の底部との間に取り付けられている底部スラスタブラケット83に上下方向を向くように取り付けられた底部スラスタであり、中央枠部39と後側プレート部43との間でパネル15のスラスタ窓61を臨むように配置されている。底部スラスタ27は、中央枠部39と後側プレート部43との間で、制御部ケース5の下側に形成されている後側空所85から水中調査装置1の下方に向かう垂直下向き水流(この水流は例えば流路用窓55から吸い込まれる)又は水中調査装置1の下側から後側空所85に向かう垂直上向き水流(この水流は例えば流路用窓55から吐き出される)を生じさせ、これらの水流により垂直上向き又は垂直下向きの推進力を発生させる。なお、
図5に示されているように、中央枠部39及び後側プレート部43間の後側空所85の天井部(制御部ケース5の外周面下側)には、上面87が制御部ケース5の外周面の曲率と同じ曲率で湾曲する断面三角形状の整流部材89が取り付けられている。底部スラスタ27は支持体3の底部後方に配置され、傾斜スラスタ25よりも後方に位置している。
【0024】
スラスタ29は、後側プレート部43に一体的に形成された一対の後部スラスタブラケット91内に水平方向後方を向くように取り付けられた一対の後部スラスタであり、内側に向かってハの字状に広がる方向を向くように配置されている。後部スラスタ29は底部スラスタ25よりも例えば後方に配置されている。後部スラスタ29はそれぞれ、後側空所85から水中調査装置1の斜め後方に向かう水平外向き水流(この水流は例えば流路用窓57から吸い込まれる)又は水中調査装置1の斜め後方から後側空所85に向かう水平内向き水流(この水流は例えば流路用窓57から吐き出される)を生じさせ、これらの水流により水平内向き又は水平外向きの推進力を発生させる。
【0025】
次に、水中調査装置1の姿勢制御機能について説明する。
【0026】
まず、水中調査装置1は支持体3又は全体的な形状が断面三角形状に形成され小型化されている。しかも、最も重量の大きいバッテリを収容したバッテリケース7を下側部の左右両側又は下側部の左右両側角部に配置し、比較的重量の小さいテレビカメラ及び制御基盤(制御部品)を収容した制御部ケース5を上側部又は上側角部に配置したので、水中調査装置1の水中での姿勢安定度は大きい。したがって、姿勢が乱れた場合の復元力が強い。また、傾斜スラスタ25及び底部スラスタ27は浮上及び潜航機能を有するが、傾斜スラスタ25の駆動方向(浮上方向又は潜航方向)と底部スラスタ27の駆動方向(浮上方向又は潜航方向)とを反対にしたり、傾斜スラスタ25の駆動力と底部スラスタ27の駆動力とが異なる大きさとなるようにしたりして水中調査装置1のピッチ軸制御を行うことができる。あるいは、一対の傾斜スラスタ25の一方の駆動方向と他方の駆動方向を反対にしたり、一方の傾斜スラスタ25の駆動力と他方の傾斜スラスタ25の駆動力を異なる大きさとなるようにしたりして水中調査装置1のロール軸制御を行うことができる。さらに、一対の後部スラスタ29の一方の駆動方向と他方の駆動方向を反対にしたり、一方の後部スラスタ29の駆動力と他方の後部スラスタ29の駆動力を異なる大きさとなるようにしたりして水中調査装置1のヨー軸制御を行うことができる。そして、例えば、一対の傾斜スラスタ25の一方を吐き出し駆動し、他方を吸い込み駆動させて逆方向の推進力を生じさせることにより、水中調査装置1の前側に横方向の駆動力が発生し、水中調査装置1は水平方向に横移動できる。ここで、一対の後部スラスタ29の一方を吐き出し駆動し、他方を吸い込み駆動させて逆方向の推進力を生じさせることにより、先端部(船首)の水平方向での向きを一定にして水中調査装置1を横移動させることができる。船首の上下方向の向きを一定にする制御は底部スラスタ27の駆動によって行う。また、一対の傾斜スラスタ25を同じ方向に駆動させて同じ向きの推進力を生じさせることにより、水中調査装置1の前側に上方向又は下方向の駆動力が発生し、水中調査装置1は垂直方向に上下動できる。ここで、底部スラスタ27を駆動させることにより、船首の垂直方向での向きを一定にして水中調査装置1を上下移動させることができる。船首の水平方向の向きを一定にする制御は後部スラスタ29の駆動によって行う。
【0027】
次に、
図6を参照して水中調査装置1の整流部材81の機能を説明する。
【0028】
一対の傾斜スラスタ25を例えば同時に作動させると、吸い込んだ水が前側枠部35と中央枠部39との間で衝突したり、吐き出す水が制御部ケース5に衝突してりして乱流が生じ、スムーズな水の流れを確保できないおそれがある。そこで、前側枠部35と中央枠部39との間の前側空所77で制御部ケース5の下面(前側空所77の天井部)に沿うように断面三角形状の整流部材81を配置しておけば、
図6に示すように、傾斜スラスタ25を通る水の流れがスムーズとなる。なお、前側空所77内には、前側枠部35の凹部33を介してマニュピュレータや測定装置などを取り付けることができる。
【0029】
次に、
図7を参照して水中調査装置1の整流部材89の機能を説明する。
【0030】
底部スラスタ27を作動させると、両側の流路用窓55から吸い込んだ水が中央枠部39と後側プレート部43との間で衝突したり、吸い上げた水が制御部ケース5に衝突したりして乱流が生じ、スムーズな水の流れを確保できないおそれがある。そこで、中央枠部39と後側プレート部43との間の後側空所85で制御部ケース5の下面(後側空所85の天井部)に沿うように断面三角形状の整流部材89を配置しておけば、
図7に示すように、底部スラスタ27を通る水の流れがスムーズとなる。なお、整流部材81と整流部材89は同じ形状及び大きさのものであるが、
図7の仮想線で示すように、整流部材89を大きな高さのものとしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 水中調査装置
3 支持体
5 制御部ケース
7 バッテリケース
25 傾斜スラスタ
27 底部スラスタ
29 後部スラスタ