(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】床材および床構造
(51)【国際特許分類】
E04F 15/06 20060101AFI20240607BHJP
E04G 5/08 20060101ALI20240607BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20240607BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
E04F15/06
E04G5/08 P
E04F15/02 101B
E04F15/02 101G
E04B5/02 J
(21)【出願番号】P 2020176871
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】592018629
【氏名又は名称】三進金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】須濱 芳晴
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206833(JP,A)
【文献】実開昭63-119738(JP,U)
【文献】実開昭53-078019(JP,U)
【文献】特開2016-206426(JP,A)
【文献】特開平09-296601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
E04G 5/08
E04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の長孔が設けられた踏板における各長孔の外周縁部にリブが裏面側に突出するように形成された床材であって、
前記長孔を閉塞するための孔蓋を備え、
前記踏板は、前記長孔が中間部に形成されず両端部にのみ形成され、
前記孔蓋はその裏面側に下方突出状に設けられた嵌合部と、嵌合部の下端に設けられた掛止爪とを備え、
前記孔蓋は、その嵌合部が前記長孔に嵌合して前記掛止爪が前記リブにスナップフィットで掛止することによって、前記長孔に取付可能に構成されていることを特徴とする床材。
【請求項2】
前記リブが、前記長孔の長辺部に対応して配置され、かつ差込孔が設けられた長辺リブと、短辺部に対応して配置される短辺リブとを備え、
前記掛止爪が、長辺部に対応して設けられる長辺側掛止爪と、短辺部に対応して設けられる短辺側掛止爪とを備え、
前記長辺側掛止爪が前記長辺リブの差込孔に差し込まれて掛止されるとともに、前記短辺側掛止爪が前記短辺リブの下端に掛止されることによって、前記孔蓋が前記長孔に取り付けられている請求項1に記載の床材。
【請求項3】
前記孔蓋に開口部が設けられ、その開口部にキャップが取り付けられている請求項1または2に記載の床材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載された床材が複数並んで敷設されて構成されていることを特徴とする床構造。
【請求項5】
前記床材を梁材に固定するための固定金具を備え、
前記固定金具は、前記長孔にそれぞれ挿通可能な第1金具、第2金具およびボルトを備え、
前記第1金具が前記床材に係合しつつ、前記第1金具および前記第2金具が前記梁材を挟持する態様に前記ボルトによって連結固定されることにより、前記床材が前記梁材に固定される一方、
前記固定金具は、前記床材を前記梁材に固定した状態において、前記踏板の表面よりも低位に配置されている請求項4に記載の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、踏板に複数の長孔が形成された金属製等の床材およびその床材を用いた床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工場、実験室、倉庫等において、所定の高さにフロア(床)、通路、ステップ(踏み段)等の床構造を形成するような場合、踏板に多数の長孔が形成された格子状の金属製グレーチング材等の床材を、多数並べて敷設して形成する場合がある(特許文献1)。
【0003】
このような床材は、長孔の外周縁部裏面側にリブを形成しているため、そのリブによって所定の強度を確保できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のグレーチング材等の床材においては、踏板に多数の長孔が形成されているため、施工後に、長孔が目立って十分な意匠性を確保することが困難になるおそれがあるという課題があった。さらに踏板(歩行面)に多数の孔が存在しているため、歩行者は踏板を踏み込む際に多少違和感を覚える場合があり、良好な歩行感を得ることが困難であるという課題があった。
【0006】
一方、床材施工後に長孔を閉塞して、踏板全域をフラット面(平坦面)に仕上げれば、意匠性を向上できるとともに、十分な歩行感を得ることは可能である。しかしながら、グレーチング材等の床材における長孔は、数限りなく多数形成されており、全ての長孔を閉塞するとなると、作業者にとって多大な労力が必要であり、踏板全域をフラット面に仕上げることは困難であるという新たな課題が発生する。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、踏板を孔が無いまたはほとんど孔が無いフラット面に簡単かつ効率良く仕上げることができて、意匠性および歩行感に優れた床材および床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0009】
[1]複数の長孔が設けられた踏板における各長孔の外周縁部にリブが裏面側に突出するように形成された床材であって、
前記長孔を閉塞するための孔蓋を備え、
前記踏板は、前記長孔が中間部に形成されず両端部にのみ形成され、
前記孔蓋はその裏面側に下方突出状に設けられた嵌合部と、嵌合部の下端に設けられた掛止爪とを備え、
前記孔蓋は、その嵌合部が前記長孔に嵌合して前記掛止爪が前記リブにスナップフィットで掛止することによって、前記長孔に取付可能に構成されていることを特徴とする床材。
【0010】
[2]前記リブが、前記長孔の長辺部に対応して配置され、かつ差込孔が設けられた長辺リブと、短辺部に対応して配置される短辺リブとを備え、
前記掛止爪が、長辺部に対応して設けられる長辺側掛止爪と、短辺部に対応して設けられる短辺側掛止爪とを備え、
前記長辺側掛止爪が前記長辺リブの差込孔に差し込まれて掛止されるとともに、前記短辺側掛止爪が前記短辺リブの下端に掛止されることによって、前記孔蓋が前記長孔に取り付けられている前項1に記載の床材。
【0011】
[3]前記孔蓋に開口部が設けられ、その開口部にキャップが取り付けられている前項1または2に記載の床材。
【0012】
[4]前項1~3のいずれか1項に記載された床材が複数並んで敷設されて構成されていることを特徴とする床構造。
【0013】
[5]前記床材を梁材に固定するための固定金具を備え、
前記固定金具は、前記長孔にそれぞれ挿通可能な第1金具、第2金具およびボルトを備え、
前記第1金具が前記床材に係合しつつ、前記第1金具および前記第2金具が前記梁材を挟持する態様に前記ボルトによって連結固定されることにより、前記床材が前記梁材に固定される一方、
前記固定金具は、前記床材を前記梁材に固定した状態において、前記踏板の表面よりも低位に配置されている前項4に記載の床構造。
【発明の効果】
【0014】
発明[1]の床材によれば、長孔が踏板の両端部にのみ形成されるとともに、長孔に装着可能は孔蓋を備えているため、両端部の長孔のみに孔蓋を装着すれば、踏板を、孔が無いフルフラット面またはほとんど孔が無いフラット面に形成することができる。こうして長孔を隠蔽することによって、意匠性を向上できるとともに、歩行者は違和感なく踏板上を歩行できて、良好な歩行感を得ることができる。さらに本発明において長孔は、踏板の両端部にのみ形成されているだけであるから、全域にわたって長孔が形成されたグレーチング材等の床材に比べて、長孔を孔蓋によって閉塞する際に、孔蓋の取付数を著しく減少させることができ、孔蓋の取付作業を効率良く簡単に行うことができ、ひいては踏板を効率良く簡単に、孔の無いフラット面に仕上げることができる。
【0015】
発明[2]の床材によれば、孔蓋の掛止片を、長孔のリブの所定位置に掛止するようにしているため、孔蓋を長孔により確実に取り付けることができる。
【0016】
発明[3]の床材によれば、孔蓋の開口部にキャップを取り付けるものであるため、キャップに、蓄光性や耐滑り性等の性能を付与することによって、より一層機能性および意匠性を向上させることができる。
【0017】
発明[4]の床構造によれば、上記発明の床材を用いて構成するものであるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【0018】
発明[5]の床構造によれば、上記発明の床材を梁材に固定する固定金具が、踏板の上面(表面)よりも低位に配置されるため、固定金具を取り付けた位置に対応する長孔に対しても、孔蓋を確実に取り付けることができる。さらに固定金具の構成部材は踏板の長孔に挿通可能であるため、床材を梁材に固定するに際して、踏板上面からの一方向からのみの作業で行えるため、施工性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1Aはこの発明の実施形態である床材を示す斜視図である。
【
図1B】
図1Bは実施形態の床材の端部を分解して示す斜視図である。
【
図3】
図3は実施形態の床材を分解して示す断面図である。
【
図5】
図5は実施形態の床材に適用された孔蓋を示す斜視図である。
【
図9】
図9は実施形態を用いて構築された床構造を示す斜視図である。
【
図10A】
図10Aは実施形態における床材の梁材に対する固定構造を説明するための斜視図である。
【
図11】
図11はこの発明の変形例である床材を示す断面図である。
【
図12】
図12は変形例の床材に適用された孔蓋を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1Aはこの発明の実施形態である床材を示す斜視図、
図1Bは実施形態の床材の端部を分解して示す斜視図、
図2は実施形態の床材を示す断面図、
図3は実施形態の床材を示す分解断面図、
図4は
図2のD4-D4線断面図である。
【0021】
これらの図に示すように本実施形態において、床材1は、踏板10の幅方向の両端縁(両側端縁)にリップ部15付きフランジを有する鋼板製のリップ溝型材(床材本体)16によって構成されている。
【0022】
板状の踏板10における長さ方向の両端部には、踏板10の幅方向に延びる長円形状ないし長楕円形状(笹の葉形状)の複数の長孔11が長さ方向に沿って並列配置(横列配置)に設けられている。
【0023】
なお踏板10は、その長さ方向の両端部にのみ長孔11が形成されており、長さ方向の中間部には、長孔等の孔が一切形成されていない。換言すると本実施形態の床材1は、中間孔無し型の床材または中間フラット型の床材である。
【0024】
踏板10における長孔11の周縁部には裏面側に突出するリブ12a,12bが一体に形成されている。リブ12a,12bは、長孔11の両側部(長辺部)に対応して設けられる長辺リブ12aと、長孔11の両端部(短辺部)に対応して設けられる平面視円弧状の短辺リブ12bとを備えている。長辺リブ12aおよび短辺リブ12bは連続して形成されており、長辺リブ12aは、短辺リブ12bに比べて裏面側への突出寸法が小さく設定されている。
【0025】
両側の長辺リブ12aには、長辺方向に延びるスリット状の3つの差込孔13が、長辺方向に縦列配置にそれぞれ形成されている。
【0026】
以上の構成の床材1が
図9に示すように、梁材2上に複数並列に配置された状態に敷設されるとともに、各床材1が後述の固定金具3によって梁材2に固定されて、基本的な床構造が形成されている。
【0027】
ここで、本実施形態における床材1の梁材2に対する固定構造について説明する。
図10A~
図10Eに示すように床材1は固定金具3を介して梁材2に固定される。
【0028】
まず床材1における長孔11の長さ方向(長手方向)の開口寸法は「P1」であり、長孔11の幅方向(短手方向)の開口寸法は「P2」であり、差込孔13の幅方向(高さ方向)の開口寸法は「P3」である。なお床材1の長辺リブ12a,12a間において対向し合う差込孔13,13は長孔11の長さ方向に位置をずらせて形成されている。
【0029】
梁材2は、ウエブ20のフランジ21を有するH形鋼材ないしI形鋼材で構成され、フランジ1上に本実施形態の床材1が設置される。
【0030】
固定金具3は、床材1に係合される上金具(第1金具)30と、梁材2に係合される下金具(第2金具)40と、上金具30および下金具40を連結するボルト50とを備えている。
【0031】
上金具30は、両端部が床材1の差込孔13に差し込まれる長円形の差込板31と、下金具40の側面に接して上金具30に対する下金具40の姿勢を規制するとともに、下端が梁材2に当接して差込板31と下金具40の間隔を規制する規制板32とを有し、差込板31と規制板32とがネック部36を介して一体に形成されている。
【0032】
差込板31の中央にボルト50の頭部を嵌合させる円形凹部33がハーフパンチ加工によって形成され、この円形凹部33の中心部にボルト挿入孔34aが穿設されている。また、差込板31の両端の円弧部分には、上面視において右側の領域につぶし加工によって板厚が減じられた薄肉部35が形成されている。
【0033】
規制板32は側面視形状が略長方形であり、差込板31の直線部分の縁から直角に屈曲するネック部36を介して差込板31と一体に形成されている。規制板32は、上端のネック部36の両脇部分が下金具40側に折り曲げられて下金具40の上限位置を規制するストッパー37が形成され、下端の中央部がストッパー37と同じ方向に折り曲げられて当て板38が形成されている。当て板38の規制板32からの突出寸法は、床材1の長孔11における幅方向の開口寸法P2を超えず、かつ差込板31のボルト挿入孔34aの軸心上にボルト挿入孔34bが形成できる寸法に設定されている。また規制板32は当て板38の片側の下端が鋸歯状に切り欠かれて刻み目39が形成されている。規制板32の刻み目39の先端(下端)は当て板38の下面とほぼ同じ高さに設定されており、規制板32の刻み目39の無い側は下方部が切除されている。
【0034】
上金具30の上面視において、差込板31の長さ方向の寸法は「Q1」であり、幅方向(短手方向)の寸法は「Q2」である。規制板32の長さ方向の寸法は「Q3」であり、差込板31の長さ方向の寸法「Q1」よりも大きくなっている。また規制板32は差込板31の幅方向(短手方向)から板厚分が張り出しているので、上金具30の幅方向(短手方向)の寸法Q4は、差込板31の幅方向の寸法Q2よりも大きくなっている。従って上金具30の上面寸法は、長さ方向Q3×幅方向Q4である。
【0035】
上金具30は、板厚Q5の金属板を所定の輪郭に切り抜いて、差込板31、ストッパー37および当て板38を曲げ加工して作製されたものであり、差込板31の薄肉部35の厚みは板厚Q5よりも薄くなっている。
【0036】
下金具40は、平行に配置された上辺部41とこの上辺部41よりも短い下辺部42とが基端側で結合し、側面視においてコ字状に形成された部材であり、上辺部41と下辺部42との間に梁材2のフランジ21が挿入される挿入用空間48が形成されている。上辺部41には、長さ方向に沿ってボルト50に螺合する2個のねじ孔43a,43bが形成されている。2個のねじ孔43a,43bのうち、一方のねじ孔43bは、上辺部41の長さ方向のほぼ中央に形成され、他方のねじ孔43aは、基端側に寄った位置に形成されている。
【0037】
下金具40はウエブ44の両端からフランジ45が立ち上がる断面U字状の金属製チャンネル材を、そのウエブ44が外側に位置しフランジ45が内側に位置するようにコ字状に曲げて作製したものであり、2個のねじ孔43a,43bはウエブ44に形成されている。また下辺部42の先端部においてフランジ45の上端は、鋸歯状に切り欠かれて刻み目47が形成されている。刻み目47は下辺部42の突起に相当するものである。
【0038】
下金具40の上面視において、長さ方向の寸法が「R1」であり、幅方向(短手方向)の寸法が「R2」である。上辺部41は下辺部42よりも長いので、上辺部41の長さ方向の寸法は下金具40の長さ方向の寸法「R1」に等しくなっている。
【0039】
固定金具3は、上金具30の差込板31のボルト挿入孔34aに挿入したボルト50にスプリング51を装着し、ストッパー37と当て板38との間に下金具40の上辺部41を配置し規制板32に下金具40の側面を当接させた状態に組み付け、ボルト50を下金具40のねじ孔43a,43bのいずれか一方に螺合し、さらに当て板38のボルト挿入孔34bに挿入することによって組み立てられ、上金具30の当て板38は下金具40の上辺部41の下側に入り込んでいる。なお螺合させる下金具40のねじ孔43a,43bは、下金具40の梁材2のフランジ21を挟み込めるように踏板10の長孔11とフランジ21の位置関係に応じて適宜選択すれば良い。この組立状態において、上金具30と下金具40とは、スプリング51の弾性復元力によって上金具30の差込板31と下金具40とが平行になる組付姿勢を保持している。
【0040】
組み立てた固定金具3の上面視において、長さ方向の寸法は下金具40の長さ方向の寸法R1と等しく、幅方向の寸法は上金具30の幅方向の寸法Q4と等しくなっている。
【0041】
固定金具3の各部の寸法は、床材1および梁材2の各部の寸法に対して以下の大小関係となるように設定されている。
【0042】
固定金具3の長さ方向の寸法R1は、床材1の踏板10の長孔11の長さ方向の開口寸法P1よりも小さく、幅方向の開口寸法P2よりも大きく設定されている。固定金具3の幅方向の寸法Q4は長孔11の幅方向の開口寸法P2よりも小さく設定されている。また固定金具3の差込板31の長さ方向の寸法Q1は長孔11の幅方向の開口寸法P2よりも大きく設定され、差込板31の板厚Q5は長辺リブ12aの差込孔13の幅方向(短手方向)の開口寸法P3よりも小さく設定されている。
【0043】
また上金具30の高さは、床材1の差込孔13から床材1の底面までの垂直距離に対応するように規制板32の高さが設定されている。
【0044】
また固定金具3は、上金具30の当て板38が下金具40の上辺部41の下に接触している状態において、当て板38の下面から下辺部42の刻み目47の先端までの垂直距離R3は梁材2のフランジ21を挿入できる寸法に設定されている。
【0045】
この構成の固定金具3を用いて、以下の手順で床材1を梁材2に固定するものである。
【0046】
すなわち、梁材2の長さ方向と床材1の長さ方向とが交わる態様で、梁材2上に床材1を架け渡すように載置する。固定金具3は上金具30、下金具40、ボルト50およびスプリング51を上記のように組み立てておく。このとき、ボルト50を適宜締め込んで、上金具30の差込板31から下金具40の挿入用空間48までの距離が床材1の差込孔13のから梁材2のフランジ21までの距離とほぼ等しくなるように調整しておく。
【0047】
次に
図10Aに示すように、固定金具3の長さ方向を床材1の踏板10の長孔11の長さ方向に沿わせ、固定金具3を踏板10の上面側から長孔11に差し入れる。固定金具3の平面寸法Q3×Q4は長孔11の開口寸法P1×P2よりも小さいので、固定金具3全体を長孔11に難なく差し入れることができる。
【0048】
続いて
図10C~
図10Eに示すように、差し入れた固定金具3を踏板10と平行な平面内で右廻りで90°回転させる。回転方向は差込板31の薄肉部35から長辺リブ12aの差込孔13に近付く方向とする。この固定金具3の回転により長孔11の長さ方向と固定金具3の長さ方向とが直交し、上金具30の差込板31の両端部が対向する長辺リブ12aの差込孔13に差し込まれ、下金具40の挿入用空間48に梁材2のフランジ21が挿入されて、フランジ21が規制板32および下金具40の上辺部41と、下金具40の下辺部42とで挟まれる。上金具30と下金具40とはスプリング51によって平行姿勢が保たれているので、フランジ21を挿入用空間48に円滑に挿入することができる。このとき、下金具40の先端側を僅かに上げて傾斜させてフランジ21を挿入しても良い。この段階ではボルト50を締め込んでおらず、差込板31は差込孔13に遊挿された状態であるから、下金具40を傾斜させることができる。ただし、下金具40の傾斜角度はストッパー37で規制されている。
【0049】
対向する差込孔13は、固定金具3の回転方向に合わせて位置をずらして設けられ、かつ差込板31は薄肉部35から差込孔13に挿入されるので、差込板31は円滑に挿入することができる。差込板31の長さ方向の寸法Q1は、長孔11の幅方向の開口寸法P2、すなわち対向する長辺リブ12a間の距離よりも大きいので、差込板31の両端部は、対向する差込孔13に貫通した状態に配置される。また固定金具3を90°回転させると差込板31が差込孔13の端部に当接して90°を超える回転が阻止される。
【0050】
また、上金具30の高さは床材1の差込孔13から床材1の底面までの距離に対応するように設定されているので、上記の固定金具3の回転に伴って規制板32の刻み目39が梁材2のフランジ上に載り、規制板32は梁材2に干渉しない。
【0051】
次にボルト50を締めて上金具30と下金具40とを近接させる。上金具30の差込板31の両端部は差込孔13に挿入されて上下方向に拘束されているので、下金具40が持ち上げられて下辺部42の刻み目47が梁材2のフランジ21の裏面に食い込み、フランジ21は規制板32と下辺部42に挟み付けられる。このとき、上金具30の規制板32の刻み目39が梁材2に当接して上金具30と下金具40との距離が規制されているので、ボルト50の締め過ぎによる差込孔13の破損が防止される。さらに規制板32の下端の一部に設けられた刻み目39がフランジ21に食い込んで強く挟み付けることができる。そして、床材1は差込孔13で固定金具3の上金具30の差込板31と強く係合し、梁材2はフランジ21で下金具40と強く係合し、床材1は梁材2上に固定される。
【0052】
この固定構造においては、固定金具3が踏板10の長孔11から差込可能な寸法に設定されており、固定金具3全体を踏板10の上面よりも低い位置に配置して床材1に係合することができる。このため、床材1を固定金具3によって梁材2に固定した状態において、踏板10の上面から固定金具3が突出することがなく、踏板10の平坦性を損なわない。
【0053】
また固定金具3を床材1および梁材2に係合する作業は、固定金具3を踏板10の長孔11から差し入れる作業と、固定金具3を回転させる作業と、ボルト50を締結する作業となる。これらの作業は全て踏板10の上面側から行える作業であり、優れた作業性を確保することができる。
【0054】
このように固定金具3を用いて
図9に示すように多数の床材1を梁材2上に並列配置に固定するものである。
【0055】
一方、本実施形態の床構造においては、床材1に長孔11を被覆するようにして取り付けられる孔蓋6を備えている。
【0056】
図1~
図8に示すように本実施形態において孔蓋6は合成樹脂の一体成形品によって構成されている。孔蓋6は、床材1の長孔11に対応する長円形状ないし長楕円形状(笹の葉形状)のカバー部61と、カバー部61の下面側(裏面側)に下方に突出するように一体に形成された嵌合部62a,62bと、嵌合部62a,62bの外周面に外側に突出するように一体に形成された掛止爪63a,63bとを備えている。
【0057】
カバー部61は、その外周形状が長孔11の外周形状に対応して形成されており、床材1の長孔周縁部全域を覆って配置できるように構成されている。
【0058】
嵌合部62a,62bは、カバー部61における長辺部に対応して設けられる長辺側嵌合部62aと、短辺部に対応して設けられる短辺側嵌合部62bとを備えている。
【0059】
短辺側嵌合部62bは、カバー部61の長さ方向の両端部にそれぞれ設けられ、かつ円弧状の短辺部から長辺部の両端部にかけて連続して設けられる平面視U字状に形成されている。
【0060】
長辺側嵌合部62aは、カバー部61の両側縁部における両端部の短辺側嵌合部62b間にそれぞれ2本ずつ設けられ、かつ下方に延びる細板状に形成されている。
【0061】
各長辺側嵌合部62aの下端外面には、外側に突出するように長辺側掛止爪63aが一体に形成されている。さらに短辺側嵌合部62bの下端外面における短辺部中央に対応する位置には、外側に突出するように短辺側掛止片63bが形成されるとともに、長辺部の端部に対応する位置には、外側に突出するように長辺側掛止爪63aが一体に形成されている。
【0062】
長辺側掛止爪63aは、長辺リブ12aの差込孔13に対応する位置に配置されるとともに、短辺側掛止爪63bは、短辺リブ12bの下端位置に対応する位置に配置されている。
【0063】
また孔蓋6のカバー部61には、長さ方向に並んで配置され、かつカバー部61を貫通する3つの円形の開口部65が形成されている。なお本実施形態において、開口部65は必ずしも貫通孔によって構成する必要はなく、開口部65を、後述のキャップ7を取付可能な凹部によって構成することも可能である。
【0064】
また本実施形態において、孔蓋6の開口部65には、円形のキャップ7が着脱自在に取り付けられている。本実施形態において、キャップ7は例えば、合成樹脂や合成ゴムの成形品によって構成されており、開口部65に取り付けた状態では、キャップ7の上面が孔蓋6の上面よりも少し上方に突出するように設定されている。
【0065】
以上の構成の孔蓋6を床材1の長孔11に取り付ける場合には
図1~
図4に示すように、孔蓋6を長孔11に押し込むだけで良い。そうすると孔蓋6の掛止爪63a,63bが内側に弾性変形しつつ嵌合部62a,62bが長孔11のリブ12a,12b内に嵌め込まれていき、長辺側掛止片63aが長辺リブ12aの差込孔13に達したところで長辺側掛止片63aが外側に弾性復帰して差込孔13に掛止するとともに、短辺側掛止片63bが短辺リブ12bの下端に達したところで短辺側掛止片63bが外側に弾性復帰して短辺リブ12bの下端に掛止する。こうして掛止片63a,63bがスナップフィットによってリブ12a,12bの所定箇所に掛止して、孔蓋6が長孔11に抜け止め状態に取り付けられる。この取付状態では、孔蓋6のカバー部61が長孔11の全域を覆うように配置される。
【0066】
なおキャップ7は、孔蓋6に予め取り付けておけば良いが、場合によっては、孔蓋6を長孔11に取り付けた後、キャップ7を孔蓋6に取り付けるようにしても良い。
【0067】
本実施形態の床材1は、その踏板10の中間部には孔等が形成されず両端部にのみ長孔11が形成された中間孔無しタイプによって構成するとともに、長孔11に装着可能な孔蓋6を備えているため、両端部の長孔11のみに孔蓋6を装着すれば、踏板10の全域を、孔が無いフルフラット面に形成することができる。このように長孔11を全て隠蔽できるため、意匠性を向上できるとともに、踏板10に孔がないため、歩行者は違和感なく踏板10上を歩行できて、良好な歩行感を得ることができる。
【0068】
また本実施形態において長孔11は、踏板10の両端部にのみ形成されているだけであるから、全域にわたって長孔が形成されたグレーチング材等の床材に比べて、長孔11を全て孔蓋6によって閉塞する際に、孔蓋6の取付数を著しく減少させることができる。従って、孔蓋6の取付作業を効率良く簡単に行うことができ、ひいては踏板全域を効率良く簡単に、孔の無いフラット面に仕上げることができる。
【0069】
なお本実施形態において、床材1における踏板10の端部に形成される長孔11の数は特に限定されるものではないが、好ましくは一方の端部に長孔11が1~10個程度形成されるのが良く、より好ましくは2~6個程度形成されるのが良い。
【0070】
また本実施形態においては、床材1を梁材2に固定するための固定金具3として、上記
図10A~
図10Eに示すように、床材1の上面から上方に突出しないものを用いているため、固定金具3を取り付けた位置に対応する長孔11に対しても、孔蓋6を確実に取り付けることができ、踏板全域を孔の無いフラット面に確実に仕上げることができる。
【0071】
また本実施形態においては、既述した通り、床材1を梁材2に固定金具3を介して固定する作業は、全て踏板10の上面側(表面側)からの一方向からのみで行える一方向施工作業であるため、施工性をより一層向上できて、施工作業をより一層効率良く行うことができる。
【0072】
また本実施形態においては、孔蓋6として、異なる色彩の複数種類の孔蓋6を採用することによって、より多彩に色付けすることができ、意匠性等を一層向上させることができる。
【0073】
また本実施形態においては、孔蓋6にキャップ7を装着できるように構成しているため、キャップ7として、孔蓋6とは異なる材質のものを採用することによって、より一層多機能化を図ることができる。例えばキャップ7に蓄光性を付与することによって、キャップ7を光らせて、意匠性をより一層高めることができるとともに、キャップ7に高摩擦性(耐滑り性)を付与することによって、安全性をより一層向上させることができる。
【0074】
またキャップ7として、異なる色彩の複数種類のキャップ7を採用することによって、より一層多彩に色付けすることができ、意匠性をより一層向上させることができる。
【0075】
なお本実施形態においては、床材1の全ての長孔11を孔蓋6によって閉塞する場合を例に挙げて説明しているが、それだけに限られず、本発明においては一部の長孔11を孔蓋6によって閉塞せず、開放状態のまま配置しておいても良い。この場合であっても、長孔11の数を著しく削減できるため、長孔数が多い従来の床材に比べて、良好な意匠性や歩行感を確保することができる。
【0076】
図11および
図12はこの発明の変形例である床材1を示す図である。両図に示すようにこの床材1は、長孔11に取り付けられる孔蓋6として金属製のものが採用されている。
【0077】
この孔蓋6は、所定形状の金属板を折り曲げ加工されて形成されており、カバー部61と、カバー部61における長さ方向の両端部に下方に折り曲げられて形成された両端の嵌合部62と、一端側の嵌合部62の一領域が外側に切り起こされて形成された掛止片63と、他端側の嵌合部62の下端部に外方に折り曲げられて形成された係合片64とを一体に備えている。
【0078】
この構成の孔蓋6が、上記と同様の構成の床材1(床材本体16)の長孔11に取り付けられる。すなわち
図11の想像線(二点鎖線)に示すように、孔蓋6の他端側の嵌合部62を長孔11内に挿入して、その他端側の嵌合部62の係合片64を長孔11の他端側の短辺リブ12bの下端に係合する。その係合状態で、孔蓋6の一端側を長孔11内に押し込むと同図実線に示すように、掛止片63が内側に弾性変形しつつ一端側の嵌合部62が長孔11内に挿入されていき、掛止片63が一端側の短辺リブ12bに達したところで掛止片63が外側に弾性復帰して、一端側の短辺リブ12bの下端に掛止する。こうして他端側の係合片64が他端側の短辺リブ12bに係合しつつ、一端側の掛止片63がスナップフィットにより他端側の短辺リブ12bに掛止して、孔蓋6が長孔11に抜け止め状態に取り付けられる。
【0079】
この変形例の床材1において、他の構成は上記実施形態の床材の構成と実質的に同様ある。
【0080】
この変形例の床材1においても、上記実施形態の床材1と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
この発明の床構造は、工場、実験室、倉庫等において、所定の高さ等にフロア、通路、ステップ等を形成する際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1:床材
10;踏板
11:長孔
12a:長辺リブ
12b:短辺リブ
13:差込孔
2:梁材
3:固定金具
30:上金具(第1金具)
40;下金具(第2金具)
50;ボルト
6:孔蓋
62:嵌合部
62a:長辺側嵌合部
62b:短辺側嵌合部
63:掛止片
63a:長辺側掛止爪
63b:短辺側掛止爪
65:開口部
7:キャップ