IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 並木精密宝石株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ロボットハンド 図1
  • 特許-ロボットハンド 図2
  • 特許-ロボットハンド 図3
  • 特許-ロボットハンド 図4
  • 特許-ロボットハンド 図5
  • 特許-ロボットハンド 図6
  • 特許-ロボットハンド 図7
  • 特許-ロボットハンド 図8
  • 特許-ロボットハンド 図9
  • 特許-ロボットハンド 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240607BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20240607BHJP
   B25J 15/10 20060101ALN20240607BHJP
【FI】
B25J19/00 F
B25J15/08 J
B25J15/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021546550
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2020031075
(87)【国際公開番号】W WO2021054016
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2019170933
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020010688
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古川 武志
(72)【発明者】
【氏名】安部 貴大
(72)【発明者】
【氏名】小林 保幸
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 全弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 一也
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-010091(JP,U)
【文献】特開平09-029674(JP,A)
【文献】国際公開第2008/123271(WO,A1)
【文献】実開平05-033977(JP,U)
【文献】実開昭62-088586(JP,U)
【文献】実開昭61-068896(JP,U)
【文献】特開平04-110711(JP,A)
【文献】特開2008-178968(JP,A)
【文献】特開2015-168037(JP,A)
【文献】実開昭63-169290(JP,U)
【文献】特開2009-005431(JP,A)
【文献】国際公開第2006/001146(WO,A1)
【文献】特開平05-169390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースユニットに支持された指部と、該指部を運動させる駆動源とを具備したロボットハンドにおいて、
前記指部における2つの節部を互いに回動可能にしている回転軸があり、
前記回転軸は中空円筒形状をしており、
前記2つの節部の各々には、前記回転軸の中空部分につながる空間が形成されており、
前記駆動源につながるハーネスが、一方の前記空間から前記中空部分を通って他方の前記空間に通されており、
前記ハーネスの一部は予め巻き回した形状に成形されており、前記回転軸の中空円筒内に前記ハーネスの前記巻き回した状態の部分が配置されており、
前記ハーネスは、複数本のケーブルが並んだものを一組としたものであり、
前記ハーネスを構成する前記複数本のケーブルは、前記中空円筒内において、前記回転軸の軸方向に沿って縦並びになるように配置されており、
前記節部の前記空間において、前記複数本のケーブルは、前記縦並びに対して横並びになるように配置されており、
少なくとも前記縦並びから前記横並びに変わる付近では、前記複数本のケーブルにおける各ケーブル同士は互いに接合されていないことを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記指部は三以上有り、
前記三以上の前記指部の各々は、内外転運動と前記内外転運動に交差する方向の屈伸運動とを含む二以上の自由度を有しており、
前記駆動源は、前記三以上の前記指部の各々において、前記内外転運動と前記屈伸運動毎に設けられていることを特徴とする請求項記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記三以上の前記指部の各々は、角度90度以上の前記内外転運動と、前記屈伸運動とを含む二以上の自由度を有しており、
互いに異なる方向を向くことができる少なくとも二つの前記指部が含まれていることを特徴とする請求項記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
指部を屈曲させてワークを把持及び操作することが可能なロボットハンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のロボットハンドにおいて、駆動源への電源供給や信号を伝送するためのハーネスの一般的な配置方法としては、指の屈曲時に断線しないように、指の伸展時にある程度のたるみを持つように配置する。また、特に関節部分では、ハーネスの損傷を防止するために関節軸の軸柱に余長を持って巻き回すかたちでハーネスを配置する場合がある。更に、ロボットハンド全体を小型化するとともに、ハーネスの露出を無くして断線を防止するために、関節軸付近に弾性体を配置するなどして、ハーネスがこの弾性体に沿って可動するようにした構成などが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、同一の製造ライン上で、人とロボットが協働して作業を行うシステムの開発と実用化が進んでいる(例えば、特許文献2参照)。このようなシステムに用いられる協働ロボットには、省スペース性や、設置容易性等の観点より、小型・軽量であることと、一つのロボットハンドにより、多種多様なタスクをこなせるように、器用な指部の動きが求められる。このような要求に対して、本出願人は、小型・軽量であるとともに、広い可動域を持ち、器用で多彩な動作を行えるロボットハンドをすでに提案している(例えば、特願2018-190909号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-178968号公報
【文献】特開2017-039170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型であることに加え、広い可動域を持ち、器用で多彩な動作を行えるロボットハンドを、協働ロボットに適用する上では、ハーネスの断線の抑制など、耐久性との両立が重要となる。しかし、ハーネスについて従来の配置方法では、「ロボットハンドの小型化」と「ハーネスの断線に着目した高耐久性」の両立に限界があった。指部を小型化していくと、必然的にハーネスの配設スペースが制限され、ハーネスが「屈曲半径が小さくなる」、「ストレスを受けやすくなる」といったことにつながるためである。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、広い可動域を持ち、多彩な動作を行えるロボットハンドにあっても、「小型化」と「高耐久性」の両立を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための一手段は、ベースユニットと、これに支持された指部と、指部を運動させる駆動源とを具備したロボットハンドにおいて、駆動源につながるハーネスを、関節の回転軸の周回り以外の位置で巻き回した状態で配置して構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、「小型化」と「高耐久性」を両立したロボットハンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るロボットハンドの一例を示す図であって、(a)指部を全て伸展した状態正面図、(b)同右側面図である。
図2】同ロボットハンドについて、(a)指部を屈曲等の動作をした状態の正面図、(b)同右側面図である。
図3】同ロボットハンドについて、ベースユニットと指部の一部を示した模式図である。
図4】同ロボットハンドについて、ハーネスの巻き回し部分の状態を示すイメージ図である。
図5】同ロボットハンドについて、指部の一部の関節構造とハーネスの配置状態を説明する図である。
図6】同ロボットハンドについて、ガイド部品とハーネスの配置状態を説明する図である。
図7】同ロボットハンドについて、ベースユニット内でのハーネスの配置状態を説明する図である。
図8】同ロボットハンドについて、ハーネスの巻き回し部分の状態の他例を示すイメージ図である。
図9】同ロボットハンドについて、指部の一部の関節構造とハーネスの配置状態の他例を説明する図である。
図10】同ロボットハンドについて、指部の一部の関節構造とハーネスの配置状態の他例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態のロボットハンドは、ベースユニットと、これに支持された指部と、指部を運動させる駆動源とを具備したロボットハンドにおいて、駆動源につながるハーネスを、関節の回転軸の周回り以外の位置で巻き回した状態で配置して構成したことを基本的な特徴の一つとしている。
この構成によれば、ハーネスを関節の回転軸の外周回りに巻いて配線処理する場合よりも、ハーネスが回転軸に巻き付かないように処理したり、ハーネスの屈曲半径を大きくして処理できるので、ハーネスがストレスを受けにくくすることができる。これにより、「小型化」と「高耐久性」を両立できる。
【0011】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、ハーネスの巻き回し回数の具体的な態様を、一回転よりも多く三回転よりも少ないこととした。
この構成によれば、ハーネスを巻き回して配置する場所のスペースを最小限に抑えながら、ロボットハンドの指部の動作に伴うハーネスへのストレスを十分に軽減できる。
【0012】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、前記回転軸の近傍に位置する少なくとも一部が閉じられた空間内で、前記ハーネスを巻き回した状態で配置したことにある。
この構成によれば、ハーネスの巻き回し部分が外部の物体に引っ掛かるようなことを防止しつつ、回転軸の近傍且つ小スペースの中で効率良く、ハーネスの巻き回し部分を収容することができる。
【0013】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、前記回転軸は中空円筒形状をしており、前記ハーネスの巻き回していない部分を、前記回転軸の中空円筒内を通していることにある。
この構成によれば、ハーネスがストレスを受けやすい回転軸付近で、効率良くハーネスを通しながら、ストレスを軽減するハーネスの巻き回し部分を配置できる。
【0014】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、ハーネスのガイド部品を前記回転軸の近傍に固定配置した。そして、前記ガイド部品には前記回転軸の外径サイズよりも大きい径サイズの円筒形状部があり、前記ハーネスは、前記ガイド部品の前記円筒形状部の周回りに、余裕を持って巻き回されていることにある。
この構成によれば、ハーネスを屈曲半径を大きくして巻き回せるとともに、巻き回し部分の配置状態を規制できるので、巻き回し部分が外部の物体に引っ掛かるようなことを防止できる。
【0015】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、前記ベースユニットの内部に形成されている空間内で、前記ハーネスを巻き回した状態で配置していることにある。
この構成によれば、指部が接続されているベースユニット内で比較的広いスペースを確保しやすので、指部を運動させる駆動源のハーネスを比較的大きな曲率半径で巻き回した状態で配置できる。
【0016】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、前記回転軸は中空円筒形状をしており、前記ハーネスの一部は予め巻き回した形状に成形されており、前記回転軸の中空円筒内に前記ハーネスの前記巻き回した状態の部分が配置されていることにある。
この構成によれば、限られた小スペースの中で効率良く、ハーネスの巻き回し部分を収容することができる。
【0017】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、ロボットハンドとしての具体的な態様を、前記指部は三以上有り、前記三以上の前記指部の各々は、内外転運動と前記内外転運動に交差する方向の屈伸運動とを含む二以上の自由度を有しており、前記駆動源は、前記三以上の前記指部の各々において、前記内外転運動と前記屈伸運動毎に設けられているものとした。
この構成によれば、高い運動能力によって、器用で多彩な動作を行えるロボットハンドとすることができる。
【0018】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、ロボットハンドとしての更に具体的な態様を、前記三以上の前記指部の各々は、角度90度以上の前記内外転運動と、前記屈伸運動とを含む二以上の自由度を有しており、互いに異なる方向を向くことができる少なくとも二つの前記指部が含まれているものとした。
この構成によれば、指部の広い可動範囲と運動形態によって、より器用で多彩な動作を行えるロボットハンドとすることができる。
【0019】
次に、上記特徴を有する具体的な実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
まず、図1図2を用いて、本実施例のロボットハンドH の全体的な構成を説明する。
図1及び 図2 は、本実施例のロボットハンドH を示している。図1は、ロボットハンドHの指部が全て伸展している状態であり、(a)の正面図に対して、(b)は右側面図を示している。図2は、ロボットハンドHの指部が屈曲等の動作をさせた状態であり、(a)の正面図に対して、(b)は右側面図を示している。
【0021】
このロボットハンドHは、ベースユニット10と、ベースユニット10に支持された第一~第三の指部20,30,40とで構成されている。また、ベースユニット10又は指部20,30,40は、各指部を屈伸運動及び内外転運動させる複数のサーボモータを駆動源として具備している。
【0022】
ここで、屈伸運動とは、各指部の関節部分を屈曲させたり伸展させたりする運動である。また、内外転運動とは、前記屈伸運動に対し略直交する方向の運動であって、各指部を、その指元側を支点にして、隣接する指部に近づけるように回動させたり、隣接する指部から遠ざけるように回動させたりする運動である。
【0023】
第一の指部20は、複数の節部を、関節毎に対応するように内在する駆動源の動力によって屈伸運動させる。また、ベースユニット10に支持された駆動源51の動力によって角度180度以上の範囲で内外転運動することができる。
【0024】
第二の指部30は、複数の節部を、単一の駆動源53の動力をリンク機構により指元側から順次に屈伸運動させる。また、ベースユニット10に支持された駆動源52の動力によって角度90度以上120度以下の範囲で内外転運動することができる。
【0025】
第三の指部40は、複数の節部を、単一の駆動源55の動力をリンク機構により指元側から順次に屈伸運動させる。また、ベースユニット10に支持された駆動源54の動力によって角度90度以上120度以下の範囲で内外転運動することができる。
【0026】
各駆動源は、回転角や回転速度等が適宜に制御されるようにした電動のサーボモータであり、内蔵するモータの回転力を、歯車及びクラッチ機構等を介して出力軸に伝達するように構成される。駆動源であるサーボモータには、電力供給や信号を伝送するためのハーネスがつながっている。
【0027】
ロボットハンドHは、各関節の回転軸の周回り以外の位置でハーネスを巻き回した状態で配置することで、第一~第三の指部20,30,40が、屈伸運動や内外転運動を繰り返す際に、ハーネスが受けるストレスを軽減している。
【0028】
以下では、図3図7を用いて、ロボットハンドHにおける、ハーネスの配置形態について具体的に説明する。
【0029】
まず、ハーネスを巻き回した状態で配置しているエリア等について図3で説明する。
図3は、ハーネスの配置を説明するためにベースユニット10と第一の指部20を模式的に示した図である。(a)は、第一の指部20を伸展した状態を示し、(b)は、第一の指部20を屈曲した状態を示している。
【0030】
第一の指部20は、節部21,22,23,24、関節25,26,27,28、関節毎に対応するように内在するサーボモータである駆動源56,57,58がある。また、ベースユニット10には第一の指部20を内外転運動させる駆動源51が備わる。
【0031】
駆動源51は、関節25の回転軸25aを支軸として、節部21を内外転運動させる。関節26,27,28に対して、駆動源56,57,58が各々対応して、回転軸26a,27a,28aを支軸として、節部22,23,24を回動させることにより第一の指部20を屈伸運動させる。
【0032】
各駆動源には、電源供給や信号通信のためのハーネスが接続されている。節部24のある指先側から見て駆動源58,57,56,51には、各々ハーネス58h,57h,56h,51hがつながっている。駆動源58につながるハーネス58hは分岐基板(図示しない)を介して、駆動源57につながるハーネス57hに電気的に接続され、配線上、一組のハーネスとしてまとめられている。同様に、各駆動源のハーネスは、指先側からベースユニット側に向かって一組のハーネスで配線されている。
【0033】
特に指部を屈曲させる場合に、各ハーネスへの負担を軽減するために、A1,A2,A3,A4で示すエリアにおいて、基本的に一回転よりも多く三回転よりも少ないかたちでハーネスを巻き回している。ハーネスの巻き回し量は、一回転以下或いは三回転以上であっても一定の効果があるが、一回転よりも多く巻き回すことで、ハーネスへのストレスの軽減効果が格段に高くなる。一方、巻き回しの回数を大きく増やしたとしてもストレス低減の効果の上がり幅は小さく、配置にスペースが大きくなる。そこで、一回転よりも多く三回転よりも少ない巻き回し数とすることで、ハーネスを巻き回して配置する場所のスペースを最小限に抑えながら、ロボットハンドの指部の動作に伴うハーネスへのストレスを十分に軽減できる。
【0034】
次に、指部の屈伸運動時におけるハーネスの巻き回し部分の基本的な作用効果について、図4で説明する。
【0035】
図4は、ハーネスの巻き回し部分の状態を示すイメージ図である。
図4(a)は、指部20の伸展時における状態を示している。
図4(b)は、指部20の屈曲時における状態を示している。
【0036】
図4(a)において、Dsは略円形に巻き回された部分の径寸法を示している。また、Lsは、隣り合う巻き回し部分間での距離を示している。
【0037】
図4(b)において、Dkは略円形に巻き回された部分の径寸法を示している。また、Lkは、隣り合う巻き回し部分間での距離を示している。
【0038】
指部の屈曲時の径寸法Dkは、伸展時の径寸法Dsよりも小さい(Dk<Ds)。
また、屈曲時の距離Lkは、伸展時の距離Ls以上となる(Ls≦Lk)。
【0039】
すなわち、指部の屈伸運動において、ハーネスの巻き回し部分の径寸法が変動することと、必要に応じて巻き回し部分の軸方向の距離が変動することにより、ハーネスにかかるストレスを軽減する。
【0040】
次に、エリアA1,A2におけるハーネスの巻き回しの態様を、関節部分の構造を示す図5を主に用いて説明する。
【0041】
エリアA1では駆動源58につながるハーネス58hを巻き回している。〔図5(a)〕
エリアA2では駆動源57につながるハーネス57hを巻き回している。
【0042】
図5(a)は、関節27の内部構造を示している。関節27の回転軸27aは中空円筒形状をしている。回転軸27aの外周部に位置する軸受23bを介して節部23と節部22とが互いに回動可能な状態となっている。
【0043】
節部23と節部22の各々には、回転軸27aの中空部分につながる空間23s,22sが形成されている。ハーネス58hは、空間23sから回転軸27aの中空部分と空間22sを通って、関節26側に引き回されている。
【0044】
ハーネス58hは、空間23sにおける回転軸27aの中空部分に近い位置と、空間22sにおける回転軸27aの中空部分に近い位置で合わせて2回転ほど巻き回されている。
【0045】
指部20が関節27で屈曲するとき、空間23s,22s内におけるハーネス58hの巻き回し部分の径寸法が小さくなり、ハーネス58hにかかるストレスを軽減する。
【0046】
エリアA2のある関節26では、エリアA1の関節27でハーネス58h通したのと同様に、ハーネス57hを配置しており、指部20が関節26で屈曲するとき、ハーネス57hにかかるストレスを軽減する。
【0047】
上述したように、ハーネス58hは電気的な経路としては、ハーネス57hにまとめられているので、通常、エリアA2ではハーネス57hのみ配置して、ベースユニット側に引き回すかたちにすればよい。しかし、例えば図5(b)に示したように、まとめずに、ハーネス57h及びハーネス58hの両方を配置することも可能である。
【0048】
このとき、ハーネス57h及びハーネス58hは、空間22sにおける回転軸26aの中空部分に近い位置と、空間21sにおける回転軸26aの中空部分に近い位置で巻き回されている。指部が関節26で屈曲するとき、空間22s,21s内における、ハーネス57h及びハーネス58hの巻き回し部分の径寸法が小さくなり、ハーネス57h及びハーネス58hにかかるストレスを軽減する。そして、ハーネス57hは、ハーネス58hとともに、空間21sを通り、ベースユニット側に引き回される。
【0049】
次に、エリアA3におけるハーネスの引き回しの態様を、図6を主に用いて説明する。
【0050】
関節25の近傍に位置するエリアA3では、駆動源56につながるハーネス56hを、ガイド部品61に巻き回して配置している。ガイド部品61は、節部21と一体に固定されている。近傍の位置関係にある関節25とガイド部品61との距離は、基本的にはできる限り近い位置に配置する前提において、最大でも関節25と隣り合う関節26との間の距離を超えない程度とする。
【0051】
図6に示すように、ガイド部品61には、円筒形状部61aと、円筒形状部61aの軸方向両側に位置するサポート部61bが形成されている。
【0052】
円筒形状部61aは、回転軸25aよりも大きい径サイズで形成されている。そして、ハーネス56hは、円筒形状部61aに余裕を持って巻き回されている。また、サポート部61bによって、ハーネス56hが、円筒形状部61aの軸方向に位置ずれすることを防止できる。尚、円筒形状部61aの表面は、摺動性に優れるテープ材が貼り付ける等してハーネス56hとの摩擦を低減すると効果的である。
【0053】
指部が関節25で内外転動作するとき、ガイド部品61におけるハーネス56hの巻き回し部分の径寸法が変動して、ハーネス56hにかかるストレスを軽減する。
【0054】
ハーネス56hの駆動源56側に対する一方は、ガイド部品61に巻き回された後、ベースユニット10内に引き回されている。
【0055】
以上、指部20において内外転動作するための関節25周りであるエリアA3においてガイド部品61を使用する形態ついて説明したが、指部30,40において、内外転動作するための関節周りでも同様の構成とすることができる。あるいは、内外転動作以外にかかわる他の関節の近傍にガイド部品を配置してハーネスを配置することもできる。動作時にハーネスの巻き回し部分が他部品と接触して問題を生じるおそれなどが無い場合には、ガイド部品を用いずにハーネスを巻き回した状態で配置してもよい。
【0056】
次に、エリアA4におけるハーネスの引き回しの態様を、図7を主に用いて説明する。
【0057】
ベースユニット10の内部であるエリアA4には、比較的広い空間内に指部20からのハーネス56hが引き込まれており、図7に示すように巻き回された状態で配置されている。尚、空間の内壁の一部に、ハーネスとの摩擦を低減するための摺動性に優れるテープ材を貼り付けてもよい。
【0058】
ベースユニット10の内部には、第二の指部30,第三の指部40からのハーネスも余裕を持って引き込まれている。この第二の指部30,第三の指部40からのハーネスも巻き回して配置してもよい。
【0059】
指部20,30,40が、屈伸運動或いは内外転運動を行う時、ベースユニット10の内部におけるハーネスの巻き回し部分においても径寸法が変動して、各ハーネスにかかるストレスを全体として軽減する。
【0060】
本願発明者は、本実施例による形態により、断線に至らないための耐久性が少なくとも3倍以上向上することを確認している。
【0061】

機構部分が見える図1及び図2のロボットハンドHの第一~三の指部20,30,40に対して、動作の妨げにならないカバー部品(図示しない)を取り付けた状態とする。このカバー部品により、一部にハーネスが露出する部分も外部に接触しないように保護することできる。
【実施例2】
【0062】
次に、エリアA1におけるハーネスの巻き回しの他例を、主に図8~10を用いて説明する。
【0063】
本実施例では、駆動源58(図3参照)につながるハーネスとして、図8に示すハーネス58wを用いる。ハーネス58wは、並んだ3本のケーブルを一組としたものである。また、ハーネス58wは、一部に二回転ほど巻き回した状態となっている部分があり、外部から何ら力を加えていない状態においても、この巻き回した状態が維持されるように形成されている。尚、ハーネス58wの3本の並んだケーブルを一組とした形態は、各ケーブル同士は互いに接合されておらず分離可能なものであってもよいし、例えば、ケーブルの被覆同士を接合して一体の帯状にしたものであってもよい。
【0064】
図9は、関節27(図3参照)の内部構造を示している。関節27の回転軸27aは中空円筒形状をしている。回転軸27aの外周部に位置する軸受23bを介して節部23と節部22とが互いに回動可能な状態となっている。ハーネス58wの巻き回し形成された殆どの部分は、回転軸27aの中空部分に収められている。外部から何ら力を加えていない状態におけるハーネス58wの巻き回した部分の外径doは、回転軸27aの中空部分の内径Diよりも小さい。指部20が関節27で屈曲するとき、ハーネス58wの巻き回し部分が関節27の軸方向に伸びながら全体の径寸法が小さくなることで、ハーネス58wにかかるストレスを軽減する。
【0065】
図9では、ハーネス58wの節部23、22内の配線を、ハーネス58wを構成する3本のケーブル(58w1、58w2、58w3)が、巻き回し部分と同様に縦並び(図9の図示上で上から58w1、58w2、58w3)で空間23s,22sに配線したが、図10に示したように、空間23s,22sにおいて横並びとなるように配置してもよい。この場合、指部の幅方向に対する空間23s,22sの距離寸法23d,22dをより小さくできるので、指部の幅を抑えることが可能となる。尚、このとき使用するハーネス58wは、縦並びから横並びに変わる付近で、ハーネス58wを構成する各ケーブルに必要以上の負荷をかけないために、各ケーブル同士が互いに接合されていないものを適用する。
【0066】
尚、図示しないが、空間22sを通って駆動源57(図3参照)の方に向かって配線されたハーネス58wは、同じ指部にある各駆動源につながる各ハーネスと、複数の分岐基板を介してベースユニット側に向かって電気的に接続される。また、本実施例では、エリアA1におけるハーネスの状態を説明したが、エリアA2においても、並んだ3本のケーブルを一組としたハーネスを用いて、本実施例と同様の形態を適用することができる。
【0067】
本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
H:ロボットハンド
10:ベースユニット
20:第一の指部
21,22,23,24:節部
25,26,27,28:関節
30:第二の指部
40:第三の指部
51,52,53,54,55,56,57,58:駆動源
51h,56h,57h,58h:ハーネス
58w:ハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10