(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】優れた線形性特性を有するニューロモルフィックシナプス素子およびその動作方法
(51)【国際特許分類】
H10B 41/30 20230101AFI20240607BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240607BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20240607BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20240607BHJP
G06N 3/02 20060101ALI20240607BHJP
G06G 7/60 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
H10B41/30
H01L29/78 371
G06N3/02
G06G7/60
(21)【出願番号】P 2022022299
(22)【出願日】2022-02-16
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0023887
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0148400
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514260642
【氏名又は名称】コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジィ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ヤンギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミョンス
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/135839(WO,A1)
【文献】特開2005-294565(JP,A)
【文献】特開2013-114729(JP,A)
【文献】特開平08-316347(JP,A)
【文献】特表2021-507519(JP,A)
【文献】特開2007-042802(JP,A)
【文献】特表2020-515027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 41/30
H01L 21/336
H01L 29/788
H01L 29/792
G06N 3/02
G06G 7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されるチャネル領域、
前記チャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜領域、
前記ゲート絶縁膜領域上に形成されるフローティングゲート領域、
前記フローティングゲート領域上に形成される電荷伝達層領域、および
前記電荷伝達層領域上に形成されたまま、基準電位以上の値の電位が印加されることに応答して前記フローティングゲート領域との電位差を生成し、前記電位差を利用して、電荷伝達層領域を介して前記フローティングゲート領域に保存された少なくとも1つの電荷を放出させ、電荷伝達層領域を介して前記少なくとも1つの電荷を搬入させて加重値更新動作を実現するコントロールゲート領域
を含
み、
前記電荷伝達層領域はシリコン窒化膜であり、
前記シリコン窒化膜は、前記フローティングゲート領域及び前記コントロールゲート領域と接する、ニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項2】
前記コントロールゲート領域は、
前記フローティングゲート領域に保存された前記少なくとも1つの電荷を放出させて加重値弱化(Depression)現象を実現し、前記フローティングゲート領域に前記少なくとも1つの電荷を搬入させて加重値強化(Potentiation)現象を実現することを特徴とする、請求項1に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項3】
前記コントロールゲート領域は、
前記フローティングゲート領域との電位差によって前記少なくとも1つの電荷が前記電荷伝達層領域によるエネルギー障壁を通過することに応答して前記ニューロモルフィックシナプス素子に含まれるソース領域とドレイン領域との間のコンダクタンスが変化する方式により、前記加重値弱化現象および前記加重値強化現象を実現することを特徴とする、請求項2に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項4】
前記コントロールゲート領域の面積または前記電荷伝達層領域の面積は、
前記フローティングゲート領域の面積よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項5】
前記コントロールゲート領域は、
金属、2種または3種金属合金、n+多結晶シリコン、p+多結晶シリコン、またはシリサイドのうちの少なくとも1つの物質で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項6】
前記フローティングゲート領域は、
前記チャネル領域の構造によって、平面型ゲート(planar-gate)構造、マルチゲート(multiple-gate)構造、および全面ゲート(gate-all-around)構造を含む突出型ゲート構造または埋立型ゲート構造のうちのいずれか1つの構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項7】
前記フローティングゲート領域は、
FinFET、トライゲート(Tri-gate)MOSFET、パイゲート(Π-gate)MOSFET、オメガゲート(Ω-gate)MOSFET、ゲートオールアラウンド(gate-all-around)MOSFET、Bulk-finFET、またはバルクゲートオールアラウンド(Bulk gate-all-around)MOSFETのうちのいずれか1つで使用される前記突出型ゲート構造を有することを特徴とする、請求項
6に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項8】
前記フローティングゲート領域は、
埋込みゲート(Buried gate)MOSFET、リセスゲート(Recessed gate)MOSFET、Sphere-shaped recessed gate MOSFET、Saddle-finFET、グルーブゲート(Groove gate)MOSFET、またはVグルーブゲート(V-groove gate)MOSFETのうちの少なくとも1つで使用される前記埋立型ゲート構造を有することを特徴とする、請求項
6に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項9】
前記フローティングゲート領域は、
金属、2種または3種金属合金、n+多結晶シリコン、p+多結晶シリコン、またはシリサイドのうちの少なくとも1つの物質で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項10】
前記ゲート絶縁膜領域は、
シリコン酸化物(SiO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、ハフニウム酸化ジルコニウム(HZO)、またはハフニウム酸窒化(HfON)のうちの少なくとも1つで形成されることを特徴とする、請求項1に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項11】
前記ニューロモルフィックシナプス素子が水平型トランジスタで実現される場合には前記チャネル領域の左右両側に形成され、前記ニューロモルフィックシナプス素子が垂直型トランジスタで実現される場合には前記チャネル領域の上下両端に形成される、ソース領域およびドレイン領域
をさらに含む、請求項1に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項12】
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、
n型シリコン、p型シリコン、または金属シリサイドのうちのいずれか1つで形成されることを特徴とする、請求項
11に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項13】
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、
前記n型シリコンまたは前記p型シリコンで形成される場合、拡散(Diffusion)、固相拡散(Solid-phase diffusion)、エピタキシャル成長(Epitaxial growth)、選択的エピタキシャル成長、イオン注入(Ion implantation)、または後続熱処理のうちの少なくとも1つの方式に基づいて形成されることを特徴とする、請求項
12に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項14】
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、
前記金属シリサイドで形成される場合、不純物偏析(Dopant segregation)を利用して接合が改善されることを特徴とする、請求項
12に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項15】
前記チャネル領域、前記ソース領域および前記ドレイン領域は、
同じ物質で形成されることを特徴とする、請求項
11に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項16】
前記チャネル領域、前記ソース領域および前記ドレイン領域は、
シリコン(Silicon)、ゲルマニウム(Germanium)、シリコンゲルマニウム(Silicon-germanium)、歪みシリコン(Strained silicon)、歪みゲルマニウム(Strained germanium)、歪みシリコンゲルマニウム(Strained silicon-germanium)、およびSOI(Silicon on insulator)、またはIII-V族半導体物質のうちの少なくとも1つで形成されることを特徴とする、請求項
15に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項17】
前記チャネル領域は、
プレーナ(Planar)構造、フィン(fin)構造、ナノシート(Nanosheet)構造、ナノワイヤ(Nanowire)構造を含む突出型チャネル構造または埋立型チャネル構造のうちのいずれか1つの構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項18】
前記チャネル領域は、
FinFET、トライゲート(Tri-gate)MOSFET、パイゲート(Π-gate)MOSFET、オメガゲート(Ω-gate)MOSFET、ゲートオールアラウンド(gate-all-around)MOSFET、Bulk-finFET、またはバルクゲートオールアラウンド(Bulk gate-all-around)MOSFETのうちのいずれか1つで使用される前記突出型チャネル構造を有することを特徴とする、請求項
17に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項19】
前記チャネル領域は、
埋込みゲート(Buried gate)MOSFET、リセスゲート(Recessed gate)MOSFET、Sphere-shaped recessed gate MOSFET、Saddle-finFET、グルーブゲート(Groove gate)MOSFET、またはVグルーブゲート(V-groove gate)MOSFETのうちの少なくとも1つで使用される前記埋立型チャネル構造を有することを特徴とする、請求項
17に記載のニューロモルフィックシナプス素子。
【請求項20】
基板上に形成されるチャネル領域、前記チャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜領域、前記ゲート絶縁膜領域上に形成されるフローティングゲート領域、前記フローティングゲート領域上に形成される電荷伝達層領域、および前記電荷伝達層領域上に形成されるコントロールゲート領域を含
み、前記電荷伝達層領域はシリコン窒化膜であり、前記シリコン窒化膜は、前記フローティングゲート領域及び前記コントロールゲート領域と接するニューロモルフィックシナプス素子の動作方法であって、
基準電位以上の値の電位が印加されることに応答して前記フローティングゲート領域との電位差を生成する段階、および
前記電位差を利用して加重値更新動作を実行する段階
を含み、
前記加重値更新動作を実行する段階は、
電荷伝達層領域を介して前記フローティングゲート領域に保存された前記少なくとも1つの電荷を放出させて加重値弱化(Depression)現象を実現する段階、および
電荷伝達層領域を介して前記フローティングゲート領域に前記少なくとも1つの電荷を搬入させて加重値強化(Potentiation)現象を実現する段階を含むことを特徴とする、ニューロモルフィックシナプス素子の動作方法。
【請求項21】
基板上に形成されるチャネル領域、
前記チャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜領域、
前記ゲート絶縁膜領域上に形成されるフローティングゲート領域、
前記フローティングゲート領域上に形成される電荷伝達層領域、および
前記電荷伝達層領域上に形成されたまま、基準電位以上の値の電位が印加されることに応答して前記フローティングゲート領域との電位差を生成し、前記電位差を利用して、電荷伝達層領域を介して前記フローティングゲート領域に保存された少なくとも1つの電荷を放出させ、電荷伝達層領域を介して前記少なくとも1つの電荷を搬入させて加重値更新動作を実現するコントロールゲート領域
を含み、
前記電荷伝達層領域はシリコン窒化膜であり、
前記シリコン窒化膜は、前記フローティングゲート領域及び前記コントロールゲート領域と接し、
前記加重値更新動作のための電荷の移動が前記コントロールゲート領域と前記フローティングゲート領域との間で起こることを特徴とする、ニューロモルフィックシナプス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の実施形態は、電界効果トランジスタ基盤のニューロモルフィックシナプス素子に関し、優れた線形性(Linearity)特性を有するニューロモルフィックシナプス素子およびその動作方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
ビッグデータ時代の到来にともない、膨大な量のデータの演算、処理、および記憶に対する需要が爆発的に増加している。コンピュータシステムにおいて従来から使用されているフォン・ノイマン(von Neumann)構造は、データを処理して演算する中央処理装置(Central processing unit)と処理および演算が完了したデータを記憶するメモリ(Memory)とを分離した構造であるが、ビッグデータ時代のデータの増加により、中央処理装置とメモリとのデータ交換過程においてボトルネック現象とエネルギー消費は必ず解決しなければならない問題として浮上している。
【0003】
このような従来のコンピュータシステムの問題に対する解決策として、人間の脳を模倣したシステムを実現しようとする動きが活発しており、これをニューロモルフィック(Neuromorphic)コンピューティングと呼ぶ。ニューロモルフィックコンピューティングのうちのディープニューラルネットワーク(Deep neural network)は、従来のフォン・ノイマンコンピュータとは異なり、並列的に連結した特定の加重値を有するシナプスと、これを次のシナプスに受け渡すニューロンを必要とし、これに基づいて演算を実行することによって正確かつ迅速な学習および推論を効率的なエネルギー消耗によって実行することができる。
【0004】
このようなディープニューラルネットワークは、そのほとんどがソフトウェアを利用してデータを処理する方式で研究が進められてきた。しかし、真正な超低電力ニューロモルフィックコンピュータを実現するためには、これに適したハードウェアが必要不可欠に存在しなければならず、素子段階から並列演算が可能である上にエネルギー効率性を有するシナプスおよびニューロン素子の確保が必須となっている。
【0005】
ディープニューラルネットワークを実現するための理想的なシナプス素子のためには、等しいパルス電圧を印加することによってチャネル伝導性(Conductance)値が変わるアナログ加重値更新(Weight update)特性、加重値更新がパルスの個数によって線形的に強化(Potentiation)および弱化(Depression)する特性、強化および弱化特性の対称性、更新された加重値を電源供給と関係なく記憶する不揮発性(Non-volatile)、何回も加重値更新しても特性が変わることのない優れた耐久性(Endurance)などが必要となる。
【0006】
2端子基盤のRRAM(Resistive random-access memory)、PcRAM(Phase-change random access memory)、メモリスタ(Memristor)などの素子は、電圧パルスが印加されることによって電流が通電するチャネル自体の抵抗を変化させて記憶するようにすることで人間の神経系と同じようにアナログ的加重値を変更する原理を有しており、低電力駆動と集積化が可能であるという点においてシナプス素子として多くの注目を集めた。
【0007】
しかし、このような素子は、素子特性の上、電流が流れるチャネルの可変抵抗特性が急激に変わるため加重値変化の線形性が低く、耐久性(Endurance)が良くない。これだけでなく、2端子基盤のシナプス素子の場合は、全体的なシステム構成のためにアレイ形態で製作するときに、追加の選択素子(Selector device)および副次的な回路要素が必要になるという致命的な短所がある。
【0008】
このような問題に対する解決として、近年、3端子以上のトランジスタ基盤のシナプス素子に関して活発に研究がなされている。トランジスタ基盤のシナプス素子の場合、並列的な書き込みおよび読み出し動作が可能であり、追加の選択素子が必要ないという長所がある。特に、フローティングゲートメモリ(Floating gate memory)素子の場合、3端子素子でありながらも商業的に成熟した技術であるため、シナプス素子として大きく注目を集めた。しかし、低い線形性、低い対称性、高い動作電圧が問題となり、シナプス素子として使用することができずにいる。
【0009】
以下の実施形態は、従来のフローティングゲートメモリの高い技術的成熟度はそのまま使用しながらも、フローティングゲートメモリの限界である低い線形性特性と高い動作電圧の両方を解決することができる構造を提案することを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一実施形態は、従来のフローティングゲートメモリの優れた技術成熟度はそのまま使用しながらもフローティングゲートメモリ基盤のシナプスの限界として指摘されていた低い線形性、低い対称性、高い動作電圧特性を克服するために、従来のフローティングゲートメモリのゲートスタックに基づいて一部構造を変化させた、電界効果トランジスタ基盤のニューロモルフィックシナプス素子およびその動作方法を提案する。
【0011】
ただし、本発明が解決しようとする技術的課題が上述した課題に限定されてはならず、本発明の技術的思想および領域から逸脱しない範囲で多様に拡張されてよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態によると、ニューロモルフィックシナプス素子は、基板上に形成されるチャネル領域、前記チャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜領域、前記ゲート絶縁膜領域上に形成されるフローティングゲート領域、前記フローティングゲート領域上に形成される電荷伝達層領域、および前記電荷伝達層領域上に形成されたまま、基準電位以上の値の電位が印加されることに応答して前記フローティングゲート領域との電位差を生成し、前記電位差を利用して前記フローティングゲート領域に保存された少なくとも1つの電荷を放出させるか前記少なくとも1つの電荷を搬入させて加重値更新動作を実現するコントロールゲート領域を含む。
【0013】
一側によると、前記コントロールゲート領域は、前記フローティングゲート領域に保存された前記少なくとも1つの電荷を放出させて加重値弱化(Depression)現象を実現し、前記フローティングゲート領域に前記少なくとも1つの電荷を搬入させて加重値強化(Potentiation)現象を実現することを特徴としてよい。
【0014】
他の一側によると、前記コントロールゲート領域は、前記フローティングゲート領域との電位差によって前記少なくとも1つの電荷が前記電荷伝達層領域によるエネルギー障壁を通過することに応答して前記ニューロモルフィックシナプス素子に含まれるソース領域とドレイン領域との間のコンダクタンスが変化する方式によって、前記加重値弱化現象および前記加重値強化現象を実現することを特徴としてよい。
【0015】
また他の一側によると、前記コントロールゲート領域の面積または前記電荷伝達層領域の面積は、前記フローティングゲート領域の面積よりも小さいことを特徴としてよい。
【0016】
また他の一側によると、前記コントロールゲート領域は、金属、2種または3種金属合金、n+多結晶シリコン、p+多結晶シリコン、またはシリサイドのうちの少なくとも1つの物質で形成されることを特徴としてよい。
【0017】
また他の一側によると、前記電荷伝達層領域は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、III-V族化合物、2-D物質、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化膜(Nitride)、酸窒化ケイ素(SiON)、シリコン酸化物(SiO2)、固体酸化膜(Oxide)、酸化アルミニウム(Al2O3)、IGZO、酸化ハフニウム(HfO2)、電荷伝達物質、半導体物質、または固体電解質物質のうちの少なくとも1つの物質で形成されることを特徴としてよい。
【0018】
また他の一側によると、前記フローティングゲート領域は、前記チャネル領域の構造によって平面型ゲート(planar-gate)構造、マルチゲート(multiple-gate)構造、および全面ゲート(gate-all-around)構造を含む突出型ゲート構造または埋立型ゲート構造のうちのいずれか1つの構造を有することを特徴としてよい。
【0019】
また他の一側によると、前記フローティングゲート領域は、FinFET、トライゲート(Tri-gate)MOSFET、パイゲート(Π-gate)MOSFET、オメガゲート(Ω-gate)MOSFET、ゲートオールアラウンド(gate-all-around)MOSFET、Bulk-finFET、またはバルクゲートオールアラウンド(Bulk gate-all-around)MOSFETのうちのいずれか1つで使用される前記突出型ゲート構造を有することを特徴としてよい。
【0020】
またの一側によると、前記フローティングゲート領域は、埋込みゲート(Buried gate)MOSFET、リセスゲート(Recessed gate)MOSFET、Sphere-shaped recessed gate MOSFET、Saddle-finFET、グルーブゲート(Groove gate)MOSFET、またはV-グルーブゲート(V-groove gate)MOSFETのうちの少なくとも1つで使用される前記埋立型ゲート構造を有することを特徴としてよい。
【0021】
また他の一側によると、前記フローティングゲート領域は、金属、2種、または3種金属合金、n+多結晶シリコン、p+多結晶シリコン、またはシリサイドのうちの少なくとも1つの物質で形成されることを特徴としてよい。
【0022】
また他の一側によると、前記ゲート絶縁膜領域は、シリコン酸化物(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ハフニウム酸化ジルコニウム(HZO)、またはハフニウム酸窒化(HfON)のうちの少なくとも1つで形成されることを特徴としてよい。
【0023】
また他の一側によると、前記ニューロモルフィックシナプス素子は、前記ニューロモルフィックシナプス素子が水平型トランジスタで実現される場合には前記チャネル領域の左右両側に形成され、前記ニューロモルフィックシナプス素子が垂直型トランジスタで実現される場合には前記チャネル領域の上下両端に形成されるソース領域およびドレイン領域をさらに含んでよい。
【0024】
また他の一側によると、前記ソース領域および前記ドレイン領域は、n型シリコン、p型シリコン、または金属シリサイドのうちのいずれか1つで形成されることを特徴としてよい。
【0025】
また他の一側によると、前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記n型シリコンまたは前記p型シリコンで形成される場合、拡散(Diffusion)、固相拡散(Solid-phase diffusion)、エピタキシャル成長(Epitaxial growth)、選択的エピタキシャル成長、イオン注入(Ion implantation)、または後続熱処理のうちの少なくとも1つの方式に基づいて形成されることを特徴としてよい。
【0026】
また他の一側によると、前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記金属シリサイドで形成される場合、不純物偏析(Dopant segregation)を利用して接合が改善されることを特徴としてよい。
【0027】
また他の一側によると、前記チャネル領域、前記ソース領域および前記ドレイン領域は、同じ物質で形成されることを特徴としてよい。
【0028】
また他の一側によると、前記チャネル領域、前記ソース領域および前記ドレイン領域は、シリコン(Silicon)、ゲルマニウム(Germanium)、シリコンゲルマニウム(Silicon-germanium)、歪みシリコン(Strained silicon)、歪みゲルマニウム(Strained germanium)、歪みシリコンゲルマニウム(Strained silicon-germanium)、およびSOI(Silicon on insulator)またはIII-V族半導体物質のうちの少なくとも1つで形成されることを特徴としてよい。
【0029】
また他の一側によると、前記チャネル領域は、プレーナ(Planar)構造、フィン(fin)構造、ナノシート(Nanosheet)構造、ナノワイヤ(Nanowire)構造を含む突出型チャネル構造または埋立型チャネル構造のうちのいずれか1つの構造を有することを特徴としてよい。
【0030】
また他の一側によると、前記チャネル領域は、FinFET、トライゲート(Tri-gate)MOSFET、パイゲート(Π-gate)MOSFET、オメガゲート(Ω-gate)MOSFET、ゲートオールアラウンド(gate-all-around)MOSFET、Bulk-finFET、またはバルクゲートオールアラウンド(Bulk gate-all-around)MOSFETのうちのいずれか1つで使用される前記突出型チャネル構造を有することを特徴としてよい。
【0031】
また他の一側によると、前記チャネル領域は、埋込みゲート(Buried gate)MOSFET、リセスゲート(Recessed gate)MOSFET、Sphere-shaped recessed gate MOSFET、Saddle-finFET、グルーブゲート(Groove gate)MOSFET、またはVグルーブゲート(V-groove gate)MOSFETのうちの少なくとも1つで使用される前記埋立型チャネル構造を有することを特徴としてよい。
【0032】
一実施形態によると、基板上に形成されるチャネル領域、前記チャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜領域、前記ゲート絶縁膜領域上に形成されるフローティングゲート領域、前記フローティングゲート領域上に形成される電荷伝達層領域、および前記電荷伝達層領域上に形成されるコントロールゲート領域を含むニューロモルフィックシナプス素子の動作方法は、基準電位以上の値の電位が印加されることに応答して前記フローティングゲート領域との電位差を生成する段階、および前記電位差を利用して加重値更新動作を実行する段階を含み、前記加重値更新動作を実行する段階は、前記フローティングゲート領域に保存された前記少なくとも1つの電荷を放出させて加重値弱化(Depression)現象を実現する段階、または前記フローティングゲート領域に前記少なくとも1つの電荷を搬入させて加重値強化(Potentiation)現象を実現する段階のうちのいずれか1つの段階を含むことを特徴とする。
【0033】
一実施形態によると、ニューロモルフィックシナプス素子の製造方法は、基板上に形成されるチャネル領域、前記チャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜領域、および前記ゲート絶縁膜領域上に形成されるフローティングゲート領域を含むトランジスタ構造体を準備する段階、前記トランジスタ構造体のうちの前記フローティングゲート領域上に電荷伝達層領域を形成する段階、および前記電荷伝達層領域上にコントロールゲート領域を形成する段階を含む。
【0034】
一実施形態によると、ニューロモルフィックシナプス素子は、基板上に形成されるチャネル領域、前記チャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜領域、前記ゲート絶縁膜領域上に形成されるフローティングゲート領域、前記フローティングゲート領域上に形成される電荷伝達層領域、および前記電荷伝達層領域上に形成されたまま、基準電位以上の値の電位が印加されることに応答して前記フローティングゲート領域との電位差を生成し、前記電位差を利用して前記フローティングゲート領域に保存された少なくとも1つの電荷を放出させるか前記少なくとも1つの電荷を搬入させて加重値更新動作を実現するコントロールゲート領域を含み、前記加重値更新動作のための電荷の移動が前記コントロールゲート領域と前記フローティングゲート領域との間で起こることを特徴としてよい。
【発明の効果】
【0035】
一実施形態は、従来のフローティングゲートメモリのゲートスタックに基づいて一部構造を変化させた、電界効果トランジスタ基盤のニューロモルフィックシナプス素子およびその動作方法を提案することにより、フローティングゲートメモリの長所である高い技術成熟度を活用すると同時に、高い線形性、高い対称性、および低い動作電圧を実現することができる。
【0036】
ただし、本発明の効果が上述した効果に限定されてはならず、本発明の技術的思想および領域から逸脱しない範囲で多様に拡張されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】一実施形態における、ニューロモルフィックシナプス素子を示した斜視図である。
【
図2】
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子を示した平面図である。
【
図3】
図2に示したI-I’ラインに沿ってニューロモルフィックシナプス素子を切断した断面を示した断面図である。
【
図4】
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子に含まれるチャネル領域およびフローティングゲート領域が有する構造を説明するために多様な突出型ゲートFET構造を示した斜視図である。
【
図5】
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子に含まれるチャネル領域およびフローティングゲート領域が有する構造を説明するために多様な埋立型ゲートFET構造を示した断面図である。
【
図6】
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子の動作方法を示したフローチャートである。
【
図7】
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子のコントロールゲート電圧V
Gに対するドレイン電流I
Dを直接測定したグラフである。
【
図8】
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子のシナプス特性の測定環境を簡略に表現した図である。
【
図9】
図8のシナプス特性の測定環境下で測定された加重値強化および加重値弱化特性を示したグラフである。
【
図10】
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子の製造方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。しかし、本発明が実施形態によって制限あるいは限定されてはならない。なお、各図面に提示された同一の参照符号は、同一の部材を示す。
【0039】
また、本明細書で使用する用語(Terminology)は、本発明の好ましい実施形態を適切に表現するために使用した用語であり、これは、視聴者、運用者の意図、または本発明が属する分野の慣例などによって異なってよい。したがって、本用語の定義は、本明細書の全般にわたる内容に基づいて下されなければならない。例えば、本明細書において特別に言及しない限り、単数型は複数型も含む。また、本明細書で使用する「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、記載された構成要素、段階、動作、および/または素子が1つ以上の他の構成要素、段階、動作、および/または素子の存在または追加を排除しない。
【0040】
また、本発明の多様な実施例は互いに異なるが、相互排他的である必要はないことが理解されなければならない。例えば、ここに記載されている特定の形状、構造、および特性は、一実施形態と関連して本発明の技術的思想および範囲を逸脱しないと同時に、他の実施例によって実現されてもよい。また、提示されたそれぞれの実施例の範囲内において個別構成要素の位置、配置、または構成は、本発明の技術的思想および範囲を逸脱せずに変更されてもよいことが理解されなければならない。
【0041】
以下、一実施形態に係るニューロモルフィックシナプス素子は、電界効果トランジスタである3端子フローティングゲートメモリとして実現され、加重値更新動作時に加重値強化(Potentiation)および加重値弱化(Depression)特性で高い線形性および対称性を示し、加重値強化および弱化グラフがギリシア文字の「Λ(Lambda)」のように見えることから「Λ-synapse」と命名されてよい。
【0042】
図1は、実施形態における、ニューロモルフィックシナプス素子を示した斜視図であり、
図2は、
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子を示した平面図であり、
図3は、
図2に示したI-I’ラインに沿ってニューロモルフィックシナプス素子を切断した断面を示した断面図であり、
図4は、
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子に含まれるチャネル領域およびフローティングゲート領域が有する構造を説明するために多様な突出型ゲートFET構造を示した斜視図であり、
図5は、
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子に含まれるチャネル領域およびフローティングゲート領域が有する構造を説明するために多様な埋立型ゲートFET構造を示した断面図である。
【0043】
一実施形態に係るニューロモルフィックシナプス素子は、従来のMOSFETのゲート上に電荷伝達層領域とコントロールゲート領域が配置される構造であって、現業で使用される多様なMOSFETが下部に位置する構造を有してよい。一例として、ニューロモルフィックシナプス素子は、
図1~3に示した平板MOSFETの他にも、
図4および
図5に示した突出型構造または埋立型構造のMOSFET上に電荷伝達層領域とコントロールゲート領域が配置される構造を有してよい。
【0044】
図1~3を参照すると、一実施形態に係るニューロモルフィックシナプス素子100は、基板105上に形成されるチャネル領域110、チャネル領域110の左右両側に形成されるソース領域111およびドレイン領域112、チャネル領域110上に形成されるゲート絶縁膜領域120、ゲート絶縁膜領域120上に形成されるフローティングゲート領域130、フローティングゲート領域130上に形成される電荷伝達層領域140、および電荷伝達層領域140上に形成されるコントロールゲート領域150を含んでよい。
【0045】
基板105は、シリコン(Silicon)、ゲルマニウム(Germanium)、シリコンゲルマニウム(Silicon-germanium)、歪みシリコン(Strained silicon)、歪みゲルマニウム(Strained germanium)、歪みシリコンゲルマニウム(Strained silicon-germanium)、SOI(Silicon on insulator)、またはIII-V族半導体物質のうちの少なくとも1つで形成されてよい。
【0046】
チャネル領域110は、プレーナ(Planar)構造、フィン(fin)構造、ナノシート(Nanosheet)構造、ナノワイヤ(Nanowire)構造を含む突出型チャネル構造または埋立型チャネル構造のうちのいずれか1つの構造を有してよい。
【0047】
例えば、チャネル領域110は、FinFET、トライゲート(Tri-gate)MOSFET、パイゲート(Π-gate)MOSFET、オメガゲート(Ω-gate)MOSFET、ゲートオールアラウンド(gate-all-around)MOSFET、Bulk-finFET、またはバルクゲートオールアラウンド(Bulk gate-all-around)MOSFETのうちのいずれか1つで使用される突出型チャネル構造を有してよい。より具体的な例として、チャネル領域110は、
図4に示すように、チャネルの縦横比(高さ/幅)が0.5以下のナノシート構造、チャネルの縦横比が0.5以上のナノワイヤ構造、マルチナノワイヤ(Multi-nanowire)構造などの突出型チャネル構造を有するように形成されてよい。
【0048】
他の例として、チャネル領域110は、
図5に示すように、前記チャネル領域は、埋込みゲート(Buried gate)MOSFET、リセスゲート(Recessed gate)MOSFET、Sphere-shaped recessed gate MOSFET、Saddle-finFET、グルーブゲート(Groove gate)MOSFET、またはVグルーブゲート(V-groove gate)MOSFETのうちの少なくとも1つで使用される埋立型チャネル構造を有するように形成されてよい。
【0049】
ソース領域111およびドレイン領域112は、ニューロモルフィックシナプス素子100が図面のように水平型トランジスタで実現されることでチャネル領域110の左右両側に形成されると説明したが、これに制限あるいは限定されてはならず、ニューロモルフィックシナプス素子100が垂直型トランジスタで実現される場合は、チャネル領域110の上下両端に形成されてよい。
【0050】
このとき、ソース領域111およびドレイン領域112は、n型シリコン、p型シリコン、または金属シリサイドのうちのいずれか1つで形成されてよい。一例として、ソース領域111およびドレイン領域がn型シリコンまたはp型シリコンで形成される場合、拡散(Diffusion)、固相拡散(Solid-phase diffusion)、エピタキシャル成長(Epitaxial growth)、選択的エピタキシャル成長、イオン注入(Ion implantation)、または後続熱処理のうちの少なくとも1つの方式に基づいて形成されてよい。ソース領域111およびドレイン領域がタングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、セリウム(Ce)、白金(Pt)、鉛(Pb)、またはイリジウム(Ir)のような金属シリサイドで形成される場合、不純物偏析(Dopant segregation)を利用して接合が改善されてよい。
【0051】
このようなソース領域111およびドレイン領域112は、チャネル領域110と同じ物質で形成されてよい。一例として、チャネル領域110、ソース領域111およびドレイン領域112は、シリコン(Silicon)、ゲルマニウム(Germanium)、シリコンゲルマニウム(Silicon-germanium)、歪みシリコン(Strained silicon)、歪みゲルマニウム(Strained germanium)、歪みシリコンゲルマニウム(Strained silicon-germanium)、およびSOI(Silicon on insulator)、またはIII-V族半導体物質のうちの少なくとも1つで形成されてよい。しかし、これに制限あるいは限定されてはならず、チャネル領域110、ソース領域111およびドレイン領域112はそれぞれ、互いに異なる物質で形成されてもよい。
【0052】
ゲート絶縁膜領域120は、フローティングゲート領域130およびチャネル領域110を絶縁させる構成要素であって、メモリ特性を示さない任意の絶縁物質で形成されてよい。一例として、ゲート絶縁膜領域120は、シリコン酸化物(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ハフニウム酸化ジルコニウム(HZO)、またはハフニウム酸窒化(HfON)のうちの少なくとも1つで形成されてよい。
【0053】
フローティングゲート領域130は、金属、2種または3種金属合金、n+多結晶シリコン、p+多結晶シリコン、またはシリサイドのうちの少なくとも1つの物質で形成されてよく、コントロールゲート領域150およびチャネル領域110の間に位置することから内部ゲート(Internal gate)と命名されてよい。ここで、シリサイドは、例えば、タングステンシリサイド(WSi2)、チタンシリサイド(TiSi2)、コバルトシリサイド(CoSi or CoSi2)、ニッケルシリサイド(NiSi or NiSi2)などを含んでよい。
【0054】
このようなフローティングゲート領域130は、チャネル領域110の構造によっては、平面型ゲート(planar-gate)構造をはじめ、
図4に示したマルチゲート(multiple-gate)構造および全面ゲート(gate-all-around)構造を含む突出型ゲート構造、または
図5に示した埋立型ゲート構造のうちのいずれか1つの構造を有してよい。
【0055】
例えば、フローティングゲート領域130は、FinFET、トライゲート(Tri-gate)MOSFET、パイゲート(Π-gate)MOSFET、オメガゲート(Ω-gate)MOSFET、ゲートオールアラウンド(gate-all-around)MOSFET、Bulk-finFET、またはバルクゲートオールアラウンド(Bulk gate-all-around)MOSFETのうちのいずれか1つで使用される突出型ゲート構造を有してよい。
【0056】
他の例として、フローティングゲート領域130は、埋込みゲート(Buried gate)MOSFET、リセスゲート(Recessed gate)MOSFET、Sphere-shaped recessed gate MOSFET、Saddle-finFET、グルーブゲート(Groove gate)MOSFET、またはVグルーブゲート(V-groove gate)MOSFETのうちの少なくとも1つで使用される前記埋立型ゲート構造を有してよい。
【0057】
電荷伝達層領域140は、フローティングゲート領域130とコントロールゲート領域150を絶縁させる構成要素であって、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、III-V族化合物、2-D物質(Carbon nanotube、MoS2、およびグラフェンのうちの少なくとも1つ)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化膜(Nitride)、酸窒化ケイ素(SiON)、シリコン酸化物(SiO2)、固体酸化膜(Oxide)、酸化アルミニウム(Al2O3)、IGZO、酸化ハフニウム(HfO2)、電荷伝達物質、半導体物質(SrTiO3、SrZrO3、NiO、TiO2、HfOx、AlOx、NiOx、TiOx、TaOx、TaN、CuxO、CuOx、TiN、TaN、WOx、SiNx、VO2、IrO2、ZrOx、ZnO、NbOx、IGZO、HZO、HfON)、または固体電解質物質(硫化物系素材[Li10GeP2S12、Li9.54、Si1.74P1.44S11.7Cl0.3、argyrodite、LPS(lithium phosphorus sulfide)、LPS+LiCl]酸化物系素材[perovskite、NASICON(Na1+xZr2SixP3-xO12、0<x<3)、LISICON(Li2+2xZn1-xGeO4)、LiPON(LixPOyNz)、garnet]イオン伝導性ポリマ[PEO(polyethylene oxide)、PEG(polyethylene glycol)、PEGDMA(polyethylene glycol dimethacrylate)、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PEEK(polyether ether ketone)、nafion(C7HF13O5S・C2F4)])のうちの少なくとも1つの物質で形成されてよい。すなわち、電荷伝達層領域140は、上述された物質のうちから1つの物質が選択された単一物質で構成されてもよいし、上述された物質が混合されて構成されてもよい。
【0058】
コントロールゲート領域150は、基準電位以上の値の電位が印加されることに応答してフローティングゲート領域130との電位差を生成し、電位差を利用してフローティングゲート領域130に保存された少なくとも1つの電荷を放出させるかフローティングゲート領域130に少なくとも1つの電荷を搬入させて加重値更新動作を実行してよい。
【0059】
すなわち、コントロールゲート領域150は、フローティングゲート領域130との電位差によって少なくとも1つの電荷が電荷伝達層領域140によるエネルギー障壁を通過することに応答してソース領域111とドレイン領域112との間のコンダクタンスが変化する方式により、フローティングゲート領域130に保存された少なくとも1つの電荷を放出させて加重値弱化(Depression)現象を実現することができ、フローティングゲート領域130に少なくとも1つの電荷を搬入させて加重値強化(Potentiation)現象を実現してよい。例えば、コントロールゲート領域150に正の電圧が印加される場合、コントロールフローティングゲート領域130に少なくとも1つの電荷が搬入されることによってソース領域111とドレイン領域112との間のコンダクタンスが上昇して加重値強化現象が発生してよい。他の例として、コントロールゲート領域150に負の電圧が印加される場合、コントロールフローティングゲート領域130に保存された少なくとも1つの電荷が放出されることによってソース領域111とドレイン領域112との間のコンダクタンスが減少して加重値弱化現象が発生してよい。
【0060】
このとき、電荷伝達層領域140は、コントロールゲート領域150に電位が印加されることに応答し、両端のゲートの電位差によってフローティングゲート領域130に転移電流を流すようになる。このために、コントロールゲート領域150は、電荷伝達層領域140を通じてフローティングゲート領域130と隣接して形成されてよい。
【0061】
このようなコントロールゲート領域150は、金属、2種または3種金属合金、n+多結晶シリコン、p+多結晶シリコン、またはシリサイド(タングステンシリサイド(WSi2)、チタンシリサイド(TiSi2)、コバルトシリサイド(CoSi or CoSi2)、またはニッケルシリサイド(NiSi or NiSi2)など)のうちの少なくとも1つの物質で形成されてよい。
【0062】
特に、コントロールゲート領域150の面積または電荷伝達層領域140の面積は、フローティングゲート領域130の面積よりも小さくてよい。したがって、コントロールゲート領域150または電荷伝達層領域140がフローティングゲート領域130に触れる面積は、フローティングゲート領域130の全体面積よりも小さくてよい。しかし、これに制限あるいは限定されてはならず、コントロールゲート領域150または電荷伝達層領域140は、フローティングゲート領域130に触れる面積がフローティングゲート領域130の全体の面積よりも小さいという条件を満たす前提の元で、それぞれの面積がフローティングゲート領域130の面積と同じであっても大きくてもよい。
【0063】
以上で説明したように、一実施形態において、チャネル領域110、ソース領域111およびドレイン領域112はすべて、基板105上に形成されてよい。例えば、チャネル領域110は、ナノワイヤ(nanowire)構造で形成されてよい。この場合、
図3に示すように、ゲート絶縁膜領域120、フローティングゲート領域130、電荷伝達層領域140、およびコントロールゲート領域150は、チャネル領域110の一部分を順に囲むように形成されてよく、チャネル領域110の残りの部分と基板105の間には空間が存在してよい。言い換えれば、チャネル領域110は、構成要素120、130、140、150によって支持され、基板105上に橋脚(Bridge)のように浮かぶようになってよい。
【0064】
図6は、
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子の動作方法を示したフローチャートである。以下で説明する動作方法は、
図1~3を参照しながら説明したニューロモルフィックシナプス素子100(より正確には、コントロールゲート領域150)が主体となって実行されてよい。
【0065】
図6を参照すると、段階610で、ニューロモルフィックシナプス素子100は、基準電位以上の値の電位が印加されることに応答してフローティングゲート領域130との電位差を生成してよい。
【0066】
したがって、段階620で、ニューロモルフィックシナプス素子100は、電位差を利用して加重値更新動作を実行してよい。より詳細には、段階620で、ニューロモルフィックシナプス素子100は、フローティングゲート領域130に保存された少なくとも1つの電荷を放出させて加重値弱化現象を実現するか、フローティングゲート領域130に少なくとも1つの電荷を搬入させて加重値強化現象を実現してよい。すなわち、段階620で、ニューロモルフィックシナプス素子100は、フローティングゲート領域130との電位差によって少なくとも1つの電荷が電荷伝達層領域140によるエネルギー障壁を通過することに応答してソース領域111とドレイン領域112との間のコンダクタンスが変化する方式により、フローティングゲート領域130に保存された少なくとも1つの電荷を放出させて加重値弱化現象を実現してよく、フローティングゲート領域130に少なくとも1つの電荷を搬入させる加重値強化現象を実現してよい。
【0067】
図7は、
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子のコントロールゲート電圧V
Gに対するドレイン電流I
Dを直接測定したグラフである。
【0068】
図7を参照すると、コントロールゲート領域150に基準電圧以上の値の電位が印加された場合、グラフは、反時計回りの履歴曲線(Hysteresis)を示すようになる。すなわち、コントロールゲート領域150に正の電圧が印加される場合にはニューロモルフィックシナプス素子100の閾値電圧V
Tが左に移動し、負の電圧が印加される場合には閾値電圧が右側に移動してよい。
【0069】
このように反時計回りの履歴曲線を示すことは、時計回りの履歴曲線を特徴とする従来のフローティングゲートメモリとは正反対の特性となる。その理由は、従来のフローティングゲートメモリの場合は、ゲート絶縁膜領域が電荷伝達の役割をすることによってフローティングゲート領域とチャネル領域との間で電荷移動がなされる反面、ニューロモルフィックシナプス素子100では、電荷伝達層領域140がフローティングゲート領域130の上に配置されることによってフローティングゲート領域130とコントロールゲート領域150との間で電荷移動がなされるためである。例えば、コントロールゲート領域150に正の電圧が印加される場合、コントロールゲート領域150からチャネル領域110への方向に電場が発生されることにより、従来のフローティングゲートメモリでは電子がチャネル領域からフローティングゲート領域に移動してフローティングゲート領域に電子が蓄積される反面、ニューロモルフィックシナプス素子100では、電子がフローティングゲート領域130からコントロールゲート領域150に移動し、むしろフローティングゲート領域130から電子が抜けるようになる。すなわち、電荷伝達を担当する物質の位置が異なるため、ニューロモルフィックシナプス素子100は従来のフローティングゲートメモリとは正反対の履歴曲線特性を示すようになるのである。
【0070】
図8は、
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子のシナプス特性の測定環境を簡略に表現した図である。
【0071】
図8を参照すると、コントロールゲート領域150には、加重値更新のための電位、電圧パルスが印加されてよい。例えば、コントロールゲート領域150に正の電圧が印加される場合、コントロールフローティングゲート領域130に少なくとも1つの電荷が搬入されることによってソース領域111とドレイン領域112との間のコンダクタンスが上昇して加重値強化現象が発生してよく、コントロールゲート領域150に負の電圧が印加される場合、コントロールフローティングゲート領域130に保存された少なくとも1つの電荷が放出されることによってソース領域111とドレイン領域112との間のコンダクタンスが減少して加重値弱化現象が発生してよい。
【0072】
図9は、
図8のシナプス特性の測定環境下で測定された加重値強化および加重値弱化特性を示したグラフである。
【0073】
図9は、電荷伝達層140としてシリコン窒化膜(Silicon Nitride)5nmを使用して得た加重値強化および加重値弱化特性のグラフであり、分析結果、線形性および対称性が極めて優秀であり、強化-弱化特性の開形が「Λ(Lambda)」形状と類似することを確認することができる。これに加え、従来には11V以上として知られているフローティングゲートメモリの動作電圧に比べて極めて低い、7.5V以下の電圧で素子が動作することを確認することができる。
【0074】
一実施形態に係るニューロモルフィックシナプス素子100は、従来のフローティングゲートメモリに比べてシナプス特性および動作電圧の最適化が容易であるという長所がある。その理由は、電荷伝達物質を、全体シナプス素子のスイッチング特性を犠牲にせずに簡単に変えることができるためである。上述で指摘したように、
図9に示した優れたシナプス特性の結果は、シリコン窒化膜を電荷伝達層140として使用して得たものである。一実施形態に係るニューロモルフィックシナプス素子100の場合、ゲート絶縁膜領域120と電荷伝達層領域140が分離している。したがって、電荷伝達層領域140としてシリコン窒化膜などの物質を使用しても全体素子のスイッチング特性は劣化しない。この反面、従来のフローティングゲートメモリでは、電荷伝達物質がチャネルと接するゲート絶縁膜領域であるため、チャネル領域との界面特性が良くない物質(例えば、シリコン窒化膜など)を電荷伝達物質として使用すれば、全体素子のスイッチング特性が犠牲になる。全体素子のスイッチング特性が犠牲になる場合、シナプスアレイ動作のために追加の選択素子が必要になるという短所が発生する。すなわち、一実施形態に係るニューロモルフィックシナプス素子100は、シナプス特性および動作電圧の最適化が容易であり、
図9に示したような優れたシナプス特性は、このようなニューロモルフィックシナプス素子100の利点に基づいて確保された結果である。
【0075】
図10は、
図1に示したニューロモルフィックシナプス素子の製造方法を示したフローチャートである。以下、製造方法を実行する主体は、自動化および機械化された製造システムであってよく、製造方法が実行された結果、製造完了することは、
図1~3を参照しながら説明した構造のニューロモルフィックシナプス素子100であってよい。これよりに、ニューロモルフィックシナプス素子100に含まれる構成要素(チャネル領域110、ソース領域111およびドレイン領域112、ゲート絶縁膜領域120、フローティングゲート領域130、電荷伝達層領域140、およびコントロールゲート領域150)それぞれは、
図1~3を参照しながら説明した構造および組成物質で構成されてよい。
【0076】
図10を参照すると、一実施形態に係る製造システムは、段階1010で、基板上に形成されるチャネル領域110、チャネル領域110上に形成されるゲート絶縁膜領域120、およびゲート絶縁膜領域120上に形成されるフローティングゲート領域130を含むトランジスタ構造体を準備してよい。
【0077】
次に、段階1020で、製造システムは、トランジスタ構造体のうちのフローティングゲート領域130上に電荷伝達層領域140を形成してよい。
【0078】
この後、段階1030で、製造システムは、電荷伝達層領域140上にコントロールゲート領域150を形成してよい。
【0079】
以上で説明したニューロモルフィックシナプス素子100は、多様な装置およびシステムに適用されてよい。一例として、ニューロモルフィックシナプス素子100は、携帯電話、スマートフォン、PDA、PMP、デジタルカメラ、カムコーダ、PC、サーバコンピュータ、ワークステーション、ノート型PC、デジタルTV、セットトップボックス、音楽再生機、ポータブルゲームコンソール、ナビゲーション機器、ウェアラブル機器、IoT機器、VR機器、AR機器などのような多様な電子機器に有益に利用することができる。
【0080】
以上のように、実施形態を、限定された実施形態および図面に基づいて説明したが、当業者であれば、上述した記載から多様な修正および変形が可能であろう。例えば、説明された技術が、説明された方法とは異なる順序で実行されたり、かつ/あるいは、説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が、説明された方法とは異なる形態で結合されたりまたは組み合わされたり、他の構成要素または均等物によって対置されたり置換されたとしても、適切な結果を達成することができる。
【0081】
したがって、異なる実施形態であっても、特許請求の範囲と均等なものであれば、添付される特許請求の範囲に属する。
【符号の説明】
【0082】
100:シナプス素子
105:基板
110:チャネル領域
111:ソース領域
112:ドレイン領域
120:絶縁膜領域
130:ゲート領域
140:伝達層領域
150:コントロールゲート領域