(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】増風機構付き垂直軸風車構造
(51)【国際特許分類】
F03D 3/04 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
F03D3/04 Z
(21)【出願番号】P 2022178724
(22)【出願日】2022-11-08
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2022086751
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝重
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第20207363(DE,U1)
【文献】仏国特許発明第00433696(FR,A)
【文献】特開2017-120050(JP,A)
【文献】特開2021-161963(JP,A)
【文献】特開2013-147978(JP,A)
【文献】特開2003-049760(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0169354(US,A1)
【文献】特開2005-220893(JP,A)
【文献】米国特許第05375968(US,A)
【文献】特開2005-240786(JP,A)
【文献】特開2011-012584(JP,A)
【文献】特開昭51-041150(JP,A)
【文献】特開2001-207947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
F03B 1/00-11/08
F03B 13/00-13/26;17/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面が複数の支柱のみで形成されて全方向からの通風が可能な構造であり且つ上下中心付近に支持部を有する外枠体と、上下端が外枠体の支持部に対して回転自在に支持された垂直回転軸の周囲に複数の直線翼式の揚力ブレードを放射方向に延びる水平フレームで取付けた垂直軸風車と、水平方向に貫通する概略角筒形状で内部に垂直軸風車を収納する増風機構と、を備えた増風機構付き垂直軸風車構造であって、
前記外枠体の上下の支持部には、中心に貫通孔を有する軸受固定部がそれぞれ一体的に取付けられ、垂直回転軸の上下端部は該軸受固定部の貫通孔内に挿入された状態でベアリングにより回転自在に支持され、
前記増風機構の上面部及び下面部には円形の開口部が形成され、該開口部が前記軸受固定部の外側にベアリングにより回転自在に支持され、
前記増風機構の側面部は、風が流入する側の前端間の間隔は狭く且つ流出する側の後端間の間隔は広く、断面が全体としてハの字形状をしており、その後端にそれぞれ外側に曲折されたフランジが形成されており、
前記増風機構の最外端であるフランジの円弧軌跡が外枠体の内接円より大きく、増風機構が外枠体内で回転する際に支柱以外の部分ではフランジが外枠体の外に出ることを特徴とする増風機構付き垂直軸風車構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は増風機構付き垂直軸風車構造に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電用の風車形式としては、水平軸の先端にプロペラ式の揚力ブレードを取付けた水平軸風車と、垂直軸に直線翼式の揚力ブレードを取付けた垂直軸風車とがある。いずれも揚力ブレードに生じる揚力の回転方向成分を回転力として高速回転することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、同じ揚力式風車であっても、プロペラ式の水平軸風車が360度の全回転範囲において回転トルクを発生させるのに対して、直線翼式の揚力ブレードを回転させる垂直軸風車は、風上側からの風が最初に当たる約90度の角度範囲でしか揚力ブレードに有効な回転トルクが発生しない。それ以外の角度範囲では揚力ブレードと風向との角度が適切でなくなり、揚力ブレードに有効な回転トルクが発生しない。そのため従来より垂直軸風車のパワー係数を向上させるための新たな構造の提案が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような従来の要請に応じてなされたものであり、垂直軸風車のパワー係数を向上させることができる新たな構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の技術的側面によれば、側面が複数の支柱のみで形成されて全方向からの通風が可能な構造であり且つ上下中心付近に支持部を有する外枠体と、上下端が外枠体の支持部に対して回転自在に支持された垂直回転軸の周囲に複数の直線翼式の揚力ブレードを放射方向に延びる水平フレームで取付けた垂直軸風車と、水平方向に貫通する概略角筒形状で内部に垂直軸風車を収納する増風機構と、を備えた増風機構付き垂直軸風車構造であって、前記増風機構の側面部は、風が流入する側の前端間の間隔は狭く且つ流出する側の後端間の間隔は広く、断面が全体としてハの字形状をしており、その後端にそれぞれ外側に曲折されたフランジが形成されており、上面部及び下面部には、垂直回転軸が貫通する円形の開口部が形成されており、該開口部が外枠体の支持部に対して回転自在に支持されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の技術的側面によれば、増風機構の側面部の前端が若干外側に開いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の技術的側面によれば、垂直軸風車に増風機構を設けたため、増風機構の内側を通過する風が側面部の後方で二次元的に巻き込まれ、また側面部の外側を通過する風もフランジと衝突することにより側面部の後方において二次元的に拡散しながら巻き込まれる。そのため、垂直軸風車の後方に低圧部が形成されて、増風機構の前端から多くの風を増風機構内に引き込んで、垂直軸風車をより高速回転させることができ、垂直軸風車のパワー係数を向上させることができる。
【0009】
また増風機構が垂直回転軸でなく、外枠体の支持部に対して回転自在に支持されているため、増風機構の荷重が垂直回転軸に加わらず、垂直回転軸の回転部の摩耗を抑制できると共に、増風機構の支持剛性が向上する。
【0010】
本発明の第2の技術的側面によれば、側面部の前端が若干外側に開いているため、多くの風を増風機構内に引き込んで、垂直軸風車をより一層高速回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】増風機構付き垂直軸風車構造を示す全体斜視図。
【
図2】増風機構に収納された垂直軸風車を示す斜視図。
【
図5】垂直回転軸と増風機構の外枠体に対する回転支持構造を示す拡大断面図。
【
図7】風向変化により増風機構が回転した状態を示す
図6相当の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図8は本発明の好適な実施形態を示す図である。
【0013】
本実施形態に係る風車構造は外枠体1を有している。外枠体1は全体として各辺が金属フレームにて形成された直方体で、側面は4本の支柱2のみで形成されている。従って、この外枠体1は水平方向で全方向からの風(空気流)が通過可能である。外枠体1の上下には中央部に四角形の支持部3が形成されている。上側の支持部3の中心には円孔4が形成されている。
【0014】
外枠体1の上下の支持部3には、それぞれ軸受固定部5、6が溶接により一体的に取付けられている。軸受固定部5、6は先端に向けて径が小さくなる多段円柱形状で、その中心には貫通孔23が形成されている。
【0015】
この貫通孔23内には垂直回転軸7が挿入され、その底面がベアリング8により軸受固定部6に対して回転自在に支持されていると共に、上下端部の側面がベアリング9により軸受固定部5、6に対して回転自在に支持されている。下側の軸受固定部6には一方へ解放された空間10が形成されており、そこに露出する垂直回転軸7の下端にプーリー11が固定されている。このプーリー11には図示せぬタイミングベルトが掛けられ、垂直回転軸7の回転力を発電機に伝達できるようになっている。
【0016】
垂直回転軸7には4本の水平フレーム12により揚力ブレード13が取付けられ、これら垂直回転軸7、水平フレーム12、揚力ブレード13により垂直軸風車14が構成されている。揚力ブレード13は直線翼式で、風Aを受けることにより、揚力ブレード13に揚力が生じ、その回転方向成分により垂直軸風車14が回転方向R(
図6参照)へ回転するようになっている。
【0017】
プロペラ式の水平軸風車が360度の全回転範囲において回転トルクが得られるのに対して、垂直軸風車14は、揚力ブレード13のうち、風Aを最初に受ける約90度の角度範囲T(
図6参照)でしか回転力トルクが生じない。これは揚力ブレード13の風Aに対する角度がこの角度範囲Tのみで揚力を発生させるのに適した状態となるためである。それ以外の範囲では、風Aに対する揚力ブレード13の角度が不適となり、また風Aの流れにも乱れが生じるため、有効な揚力が生じない。このように垂直軸風車14には得られる回転トルクが水平軸風車に比べて小さいという短所がある。
【0018】
この実施形態では、その短所を補うため、垂直軸風車14を増風機構15の中に収納して回転力を向上させている。増風機構15は水平方向に貫通する概略角筒形状で、風Aが流入する側の前端間の間隔は狭く且つ流出する側の後端間の間隔は広く、側面部16の断面は全体としてハの字形状をしている。側面部16の前端17は若干外側に開いており、後端にはそれぞれ外側に曲折されたフランジ18が形成されている。したがって、増風機構15の風の流れ方向(主軸)にみた幅は流入側の開口部から主軸に沿って前端17で漸減したのちに側面部16で漸増して反対側の開口部に到る。
【0019】
上面部19と下面部20はそれぞれ水平で、垂直回転軸7が貫通する円形の開口部21が形成されている。そしてその開口部21が外枠体1の支持部3に固定された軸受固定部5、6の外側にベアリング22を介して回転自在に支持されている。
【0020】
外枠体1内の増風機構15はなるべく大サイズ化するために、増風機構15の最外端であるフランジ18の円弧軌跡が外枠体1の内接円より大きくなるように設計され、増風機構15が外枠体1内で回転する際に支柱2以外の部分ではフランジ18が外枠体1の外に出るようになっている。
【0021】
増風機構15は側面部16の断面が全体としてハの字形状をしているため、前端17側は必ず風Aの向きに対してまっすぐに向いた状態となる。風Aの向きが変わっても、それに応じて増風機構15が全体的に回転して、前端17は風Aの向きに対して常にまっすぐ対向する(
図7参照)。そして前端17の間から風Aを増風機構15内に引き込む。
【0022】
増風機構15内に導入された風Aは、増風機構15の内側を通過する際に、垂直軸風車14の揚力ブレード13に当たり、垂直軸風車14を所定の回転方向Rに回転させる。増風機構15の内側で、垂直軸風車14を回転させた後の風Aは、増風機構15の後方で二次元的に巻き込まれる。
【0023】
また増風機構15の内側に導入されず、その側面部16の外側を通過する風Bはフランジ18と衝突することにより、側面部16の後方へ向けて二次元的に拡散しながら巻き込まれることとなる。このように内外両方の風A、Bの巻き込みにより増風機構15の後方において非常に強い渦が形成され、それにより垂直軸風車14の後方に低圧部Lが形成される。
【0024】
この低圧部Lにより主軸方向の圧力勾配が高まり、増風機構15の前端17から多くの風Aを垂直軸風車14へ引き込んで回転させることができるため、より高速で回転することになり、垂直軸風車14のパワー係数を向上させることができる。増風機構15の前端17が若干外側に開いているため、更に多くの風Aが増風機構15内に引き込まれて、垂直軸風車14をより一層勢いよく回転させることができる。
【0025】
増風機構15は風Aの向きに応じて、垂直軸風車14と同心で回転するが、その増風機構15が垂直回転軸7でなく、外枠体1の支持部3における軸受固定部5、6に対して回転自在に支持されているため、増風機構15の荷重が垂直回転軸7に加わらず、垂直回転軸7の回転部の摩耗を抑制できると共に、増風機構15の支持剛性が向上する。
【符号の説明】
【0026】
1 外枠体
2 支柱
3 支持部
7 垂直回転軸
12 水平フレーム
13 揚力ブレード
14 垂直軸風車
15 増風機構
16 側面部
17 前端
18 フランジ
21 開口部
A 内側の風
B 外側の風
T 回転力発生範囲
R 回転方向
L 低圧部