IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カテラの特許一覧

<>
  • 特許-気泡除去機構 図1
  • 特許-気泡除去機構 図2
  • 特許-気泡除去機構 図3
  • 特許-気泡除去機構 図4
  • 特許-気泡除去機構 図5
  • 特許-気泡除去機構 図6
  • 特許-気泡除去機構 図7
  • 特許-気泡除去機構 図8
  • 特許-気泡除去機構 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】気泡除去機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/36 20060101AFI20240607BHJP
   A61M 39/22 20060101ALI20240607BHJP
   A61M 39/24 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
A61M5/36
A61M39/22 100
A61M39/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023105236
(22)【出願日】2023-06-27
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】502265817
【氏名又は名称】株式会社カテラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩孝
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0374615(US,A1)
【文献】国際公開第2012/126744(WO,A1)
【文献】特開2012-055592(JP,A)
【文献】特開2010-029381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/36
A61M 39/22
A61M 39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の器具接続端部と中継接続端部との間に延びる注入路と、
前記第1の器具接続端部と前記中継接続端部との間の前記注入路上に設けられた流れ方向切り換え部と、
一端に第2の器具接続端部を有し且つ他端が前記流れ方向切り換え部を介して前記注入路に接続されている分岐路と、
第1の三方活栓口、第2の三方活栓口及び第3の三方活栓口を有し、該第1の三方活栓口に前記中継接続端部が接続されており、前記第1の三方活栓口と前記第2の三方活栓口とを連通させる第1の状態と、前記第1の三方活栓口と前記第3の三方活栓口とを連通させる第2の状態とを切り換え可能となっている第1の三方活栓と、
一端が前記第1の三方活栓の前記第2の三方活栓口に接続され、他端が前記分岐路に接続されている灌流路と、
を備え、前記流れ方向切り換え部が、前記分岐路から前記注入路の前記第1の器具接続端部へ向かう方向の流れを許容するときには前記中継接続端部から前記第1の器具接続端部へ向かう方向の流れを防止し、前記第1の器具接続端部から前記中継接続端部へ向かう方向の流れを許容するときには前記注入路から前記分岐路へ向かう方向の流れを防止するように構成されており、前記注入路において前記第1の器具接続端部から前記中継接続端部へ向けて流体を流通させるときに前記第1の三方活栓を前記第1の状態に切り換えることにより前記注入路内の流体を前記灌流路を介して前記分岐路に灌流させることができるようになっていることを特徴とする気泡除去機構。
【請求項2】
前記流れ方向切り換え部が三方チェック弁によって構成されている、請求項1に記載の気泡除去機構。
【請求項3】
前記流れ方向切り換え部が、前記注入路と前記分岐路の前記他端との間に設けられ且つ前記分岐路から前記注入路へ向かう方向の流れのみを許容する第1の一方弁と、前記注入路において前記第1の一方弁よりも前記中継接続端部に近い側に設けられ且つ前記第1の器具接続端部から前記中継接続端部へ向かう方向の流れのみを許容する第2の一方弁とによって構成されている、請求項1に記載の気泡除去機構。
【請求項4】
前記流れ方向切り換え部が、第4の三方活栓口、第5の三方活栓口及び第6の三方活栓口を有し且つ前記第4の三方活栓口と前記第5三方活栓口とを連通させる第3の状態と前記第4の三方活栓口と前記第6の三方活栓口とを連通させる第4の状態とを切り換え可能な第2の三方活栓によって構成されており、前記第5の三方活栓口が前記分岐路の前記他端に接続され、前記第4の三方活栓口及び前記第6の三方活栓口が前記注入路において前記流れ方向切り換え部よりも前記第1の器具接続端部側の流路部分及び前記中継端部側の流路部分にそれぞれ接続されている、請求項1に記載の気泡除去機構。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の気泡除去機構と、
前記第1の器具接続端部に接続された加圧シリンジと、
前記第2の器具接続端部に接続された薬剤シリンジと、
前記第1の三方活栓の前記第3の三方活栓口に接続されるカテーテルと、
を備えることを特徴とする薬剤加圧注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカテーテルやカテーテル注入回路などに注入する液体に混入する空気・気泡を除去するための気泡除去機構に関する。
【0002】
カテーテル内に生理食塩水や薬剤などの液体を注入する場合、空気を含んだまま注入されると人体に危険を及ぼすため、準備段階に、液体中や流路内に存在する空気・気泡などの除去、いわゆる空気抜き、を行うのが一般的である。
【0003】
特許文献1には、三方活栓本体と三方活栓本体に対して回動するストップコックとを備え、a方向活栓、b方向活栓及びc方向活栓の連通状態の切り換えが可能となっており、三方活栓本体の中心部にa方向、b方向及びc方向と直角方向のd方向に一方弁がさらに設けられた三方活栓が開示されている。特許文献1に開示されている三方活栓では、三方活栓本体の中心部に一方弁を設けることによって、この一方弁の先端をシリンジ接続口とし、3-WAYであったコックを4-WAYコックと同様に動作させ、従前ストップコックを使用して単独ルートにより行われていたヘパ生理食塩水の注入,エア抜き,およびその他の薬液の注入を、一方弁の先端に設けたシリンジ接続口を利用して行えるようにしている。
【0004】
特許文献2には、収容空間とシリンジからの注入剤が流入される流入ポートと患者側に連なる流出ポートとを有するボディと、主流路を有し、ボディの収容空間内に第1回動位置と第2回動位置との間で回動可能に収容される栓部材とを備えた三方活栓において、栓部材がさらにエア抜き通路を有し、エア抜き通路の上流端が、栓部材の周面において主通路の開口端から周方向に離れた位置で開口し、下流端が外部に連なり、流入ポートは、栓部材が第1回動位置にある時に、主通路と遮断されてエア抜き通路の上流端に連なり、栓部材が第2回動位置にある時に、主通路を介して流出ポートに連なるようにした三方活栓が開示されている。特許文献2に開示されている三方活栓では、栓部材が第1回動位置にある時に、シリンジから注入剤を流入ポート及びエア抜き通路を経て漏出させることにより、流入ポートのエアを排出させ、この後で、栓部材を第2回動位置に切り替えてシリンジからの注入剤を流入ポート、主通路、流出ポートを経て患者へ注入し、これにより、エア抜きができるようにしている。
【0005】
特許文献3には、液体が送り込まれるチューブと、チューブの長手方向の一端側に設けられ、液体が充填された器具に接続される第1接続部と、チューブの長手方向の他端側に設けられる第2接続部と、気体を透過して気体を排出口から排出し液体を不透過とするフィルタ部材を有し且つ第2接続部に接続されるエア抜き用キャップ部材とを備える液体注入用チューブユニットが開示されている。この液体注入用チューブユニットでは、第1接続部に接続された器具からチューブ内に生理食塩水のような液体を送り込むときに、液体中に存在する空気がエア抜き用キャップのフィルタを透過して外部に排出され、液体はエア抜き用キャップの内部に貯留され、これにより、エア抜きができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-100212号公報
【文献】特開2016-137030号公報
【文献】特開2020-192058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1及び特許文献2に記載の発明は、カテーテルやエクステンションチューブのような注入経路に造影剤のような薬剤を充填する際に注入経路内のエアを抜くためのものであり、薬剤シリンジの薬剤等に直接混入している空気・気泡や、装着時に薬剤に混入する空気・気泡を除去するためのものではない。このため、薬剤に混入した空気や気泡を除去しようとすると、薬剤ごと排出する必要があり、薬剤が外部に漏れ出る危険性がある上に、薬剤が無駄になってしまう。
【0008】
また、特許文献3に記載の発明では、気体のみを透過するフィルタ部材が用いられている。したがって、チューブユニット内の薬剤に含まれる気泡を除去するためには、薬剤ごとにその薬剤に適したフィルタ部材を用意する必要が生じ、取り扱いが煩雑となる恐れがある。
【0009】
よって、本発明の目的は、従来技術に存する課題を解消して、簡易な構成で、薬剤が外部に漏れることなく、薬剤の種類に応じて構成を変えるも必要なく、薬剤等の液体中に含まれる気泡・空気を直接的に除去できる気泡・空気除去手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的に鑑み、本発明は、第1の態様として、第1の器具接続端部と中継接続端部との間に延びる注入路と、前記第1の器具接続端部と前記中継接続端部との間の前記注入路上に設けられた流れ方向切り換え部と、一端に第2の器具接続端部を有し且つ他端が前記流れ方向切り換え部を介して前記注入路に接続されている分岐路と、第1の三方活栓口、第2の三方活栓口及び第3の三方活栓口を有し、該第1の三方活栓口に前記中継接続端部が接続されており、前記第1の三方活栓口と前記第2の三方活栓口とを連通させる第1の状態と、前記第1の三方活栓口と前記第3の三方活栓口とを連通させる第2の状態とを切り換え可能となっている第1の三方活栓と、一端が前記第1の三方活栓の前記第2の三方活栓口に接続され、他端が前記分岐路に接続されている灌流路とを備え、前記流れ方向切り換え部が、前記分岐路から前記注入路の前記第1の器具接続端部へ向かう方向の流れを許容するときには前記中継接続端部から前記第1の器具接続端部へ向かう方向の流れを防止し、前記第1の器具接続端部から前記中継接続端部へ向かう方向の流れを許容するときには前記注入路から前記分岐路へ向かう方向の流れを防止するように構成されており、前記注入路において前記第1の器具接続端部から前記中継接続端部へ向けて流体を流通させるときに前記第1の三方活栓を前記第1の状態に切り換えることにより前記注入路内の流体を前記灌流路を介して前記分岐路に灌流させることができるようになっている気泡除去機構を提供する。
【0011】
上記気泡除去機構の一つの実施形態として、前記流れ方向切り換え部が三方チェック弁によって構成されているようにすることができる。
【0012】
また、上記気泡除去機構の他の実施形態として、前記流れ方向切り換え部が、前記注入路と前記分岐路の前記他端との間に設けられ且つ前記分岐路から前記注入路へ向かう方向の流れのみを許容する第1の一方弁と、前記注入路において前記第1の一方弁よりも前記中継接続端部の近い側に設けられ且つ前記第1の器具接続端部から前記中継接続端部へ向かう方向の流れのみを許容する第2の一方弁とによって構成されているようにすることもできる。
【0013】
さらに、上記気泡所機構の別の実施形態として、前記流れ方向切り換え部が、第4の三方活栓口、第5の三方活栓口及び第6の三方活栓口を有し且つ前記第4の三方活栓口と前記第5三方活栓口とを連通させる第3の状態と前記第4の三方活栓口と前記第6の三方活栓口とを連通させる第4の状態とを切り換え可能な第2の三方活栓によって構成されており、前記第5の三方活栓口が前記分岐路の前記他端に接続され、前記第4の三方活栓口及び前記第6の三方活栓口が前記注入路において前記流れ方向切り換え部よりも前記第1の器具接続端部側の流路部分及び前記中継端部側の流路部分にそれぞれ接続されているようにしてもよい。
【0014】
また、本発明は、第2の態様として、上述の気泡除去機構と、前記第1の器具接続端部に接続された加圧シリンジと、前記第2の器具接続端部に接続された薬剤シリンジと、前記第1の三方活栓の前記第3の三方活栓口に接続されるカテーテルとを備える薬剤加圧注入システムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の気泡除去機構によれば、エア抜きのためのシリンジを別に必要とせず、作製が容易で、取り扱いに優れ、一度装着したら術前だけでなく術中にも薬剤に含まれる気泡除去にそのまま使用できる。また、薬剤が外部に漏れず、気泡を除去した薬剤を再利用することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による気泡除去機構を備えた薬剤加圧注入システムの組立分解図である。
図2】組み立てた状態の図1に示されている薬剤加圧注入システムの横断面図である。
図3】流れ方向切り換え部を三方チェック弁によって構成した第1の実施形態による気泡除去機構の横断面図であり、(a)は第1の弁片が通常位置にある状態、(b)は流れ方向切り換え口側が第1の器具接続流路側に対して陽圧になっているときの第1の弁片の位置、(c)は第1の器具接続流路側が流れ方向切り換え口側に対して陽圧になっているときの第1の弁片の位置を示しており、図中の矢印は第1の弁片が各位置にあるときの生理食塩水又は薬剤の流れの向きを表している。
図4図1及び図2に示されている薬剤加圧注入システムにおける薬剤の流れを説明するための説明図であり、(a)は薬剤を加圧シリンジに吸入する場合の流れを示しており、(b)は薬剤を灌流路に灌流させる場合の流れを示している。
図5】流れ方向切り換え部が第1の一方弁と第2の一方弁とによって構成された第2の実施形態による気泡除去機構の横断面図である。
図6】流れ方向切り換え部が第2の三方活栓によって構成された第3の実施形態による気泡除去機構の横断面図であり、(a)は薬剤が加圧シリンジに吸入されるときの各三方活栓の状態を示しており、(b)は薬剤が灌流路を灌流するときの各三方活栓の状態を示している。
図7図1及び図2に示されている薬剤加圧注入システムの使用方法を説明するための説明図であり、(a)は生理食塩水でカテーテルをプラミングする場合を示しており、(b)は薬剤をカテーテルに吐出する場合を示している。
図8】第1の三方活栓の第3の三方活栓口に別の三方活栓を接続した薬剤加圧注入システムの変形形態を示す全体構成図である。
図9】分岐路として十字コネクタを使用した薬剤加圧注入システムの他の変形形態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明による気泡除去機構及びこれを備える薬剤加圧注入システムを説明する。
【0018】
最初に、図1及び図2を参照して、本発明による気泡除去機構及びこれを備えた薬剤加圧注入システムの全体構成を説明する。図1は第1の実施形態による気泡除去機構12を備えた薬剤加圧注入システム33の組立分解図であり、図2図1に示されている薬剤加圧注入システム33が組み立てられた状態における横断面図を示している。気泡除去機構12は、第1の器具接続端部3と中継接続端部18との間に延び且つ中間部に流れ方向切り換え部を有した注入路1と、流れ方向切り換え部に接続されている分岐路2と、注入路1の中継接続端部18に接続されている第1の三方活栓5と、第1の三方活栓5と分岐路2とを接続する灌流路11とを備える。第1の器具接続端部3には、加圧シリンジ13のような医療器具が接続される。注入路1、分岐路2及び灌流路11は略筒形状を有しており、内部に流路が形成されている。
【0019】
第1の三方活栓5は、本体50と、コック51と、回転体52とを有している。第1の三方活栓5の本体50は、第1の三方活栓口6と、第2の三方活栓口7と、第3の三方活栓口21とを有しており、第1の三方活栓口6が中継接続端部18に接続されている。本体50は、内部に収容空間が形成されており、図2に示されているように、回転体52が本体50の収容空間内に回動可能に収容されている。回転体52は、コック51と連動して収容空間内で回動するように構成されている。また、回転体52内には略T字型流路60が形成されている。
【0020】
第1の三方活栓5では、コック51が回動されると、回転体52がコックと連動して本体50の収容空間内で回動し、回転体52のT字型流路60の3個の出口が、3個の三法活栓口のうちの1箇所、2箇所、又は3箇所に連通する位置で停止するようになっており、3個の三法活栓口の連通状態が、少なくとも、第1の三方活栓口6と第2の三方活栓口7とを連通させる第1の状態と、第1の三方活栓口6と第3の三方活栓口21とを連通させる第2の状態との間で切り換えられるようになっている。
【0021】
図2に示されているように、注入路1は、中間部に設けられた流れ方向切り換え部と、第1の器具接続端部3と流れ方向切り換え部との間に延びる第1の器具接続流路31と、第1の三方活栓5の第1の三方活栓口6に接続される中継接続端部18と流れ方向切り換え部との間に延びる第1の三方活栓接続流路32とを含んでいる。上述したように、流れ方向切り換え部には、分岐路2が接続されており、注入路1と分岐路2とが流れ方向切り換え部を介して接続されている。流れ方向切り換え部は、分岐路2から注入路1(詳細には、第1の器具接続流路31)の第1の器具接続端部3へ向かう方向の流れを許容するときには、中継接続端部18から第1の器具接続端部3へ向かう方向(すなわち第1の三方活栓接続流路32から第1の器具接続流路31へ向う方向)の流れを防止し、第1の器具接続端部3から中継接続端部18へ向かう方向(すなわち第1の器具接続流路31から第1の三方活栓接続流路32へ向う方向)の流れを許容するときには、注入路1(詳細には、第1の器具接続流路31)から分岐路2へ向かう方向の流れを防止するように構成されている。
【0022】
図1及び図2に示されている薬剤加圧注入システム33で用いられている第1の実施形態による気泡除去機構12では、流れ方向切り換え部が第1の器具接続流路31と第1の三方活栓接続流路32との間に設けられた三方チェック弁8によって構成されている。三方チェック弁8は、弁ハウジング内に形成された第1の弁室53と、第1の弁室53に収容される第1の弁片57と、弁ハウジングに形成され且つ第1の弁室53に連通する流れ方向切り換え口10とを有しており、第1の弁室53には、第1の器具接続流路31と第1の三方活栓接続流路32とが連通している。このような三方チェック弁8の第1の弁室53を介して、流れ方向切り換え口10と第1の器具接続流路31とが連通可能になっていると共に、第1の器具接続流路31と第1の三方活栓接続流路32とが連通可能となっており、三方チェック弁8の第1の弁片57の状態により、流れ方向切り換え口10から第1の器具接続流路31へ向かう流れを許容する場合と、第1の器具接続流路31から第1の三方活栓接続流路32へ向かう流れを許容する場合とが切り換えられる。
【0023】
詳細には、第1の弁片57は、板状で弾性を有しており、通常時には、図3(a)に示されているように、第1の三方活栓接続流路32において第1の弁室53側の端部に設けられた中央突起出口上に留置され、流れ方向切り換え口10から延びる流路の第1の弁室53への開口の周囲に設けられた弁座へ向けて付勢されており、流れ方向切り換え口10から第1の弁室53への流れ及び第1の三方活栓接続流路32から第1の弁室53への流れを阻止している。
【0024】
流れ方向切り換え口10側が第1の器具接続流路31に連通する第1の弁室53側に対して陽圧になる場合(例えば薬剤シリンジ14の押出操作時)、又は第1の器具接続流路31に連通する第1の弁室53側が流れ方向切り換え口10側に対して陰圧になる場合(例えば加圧シリンジ13の吸引操作時)には、図3(b)に示されているように、第1の弁片57の中央部が第1の三方活栓接続流路32の中央突起出口を塞いだ状態で、第1の弁片57の両端が流体の圧力で押し下げられ、流れ方向切り換え口10から第1の弁室53への流体の流入が許容される一方、第1の弁室53から第1の三方活栓接続流路32への流体の流入は阻止される。すなわち、この状態では、三方チェック弁8は、流れ方向切り換え口10から第1の弁室53を介して第1の器具接続流路31へ向かう流体の流れを許容すると共に、第1の三方活栓接続流路32から第1の器具接続流路31へ向かう流体の流れを阻止する。
【0025】
一方、第1の器具接続流路31に連通する第1の弁室53側が流れ方向切り換え口10側に対して陽圧になる場合(例えば加圧シリンジ13の押出操作時)には、図3(c)に示されているように、第1の弁片57の周縁部が弁座に押し付けられた状態で、第1の弁片57の中央部が流れ方向切り換え口10側へ押し上げられ、流れ方向切り換え口10側から第1の弁室53への流体の流入を阻止する一方、第1の弁室53から第1の三方活栓接続流路32への流体の流入を許容する。すなわち、この状態では、三方チェック弁8は、流れ方向切り換え口10から第1の器具接続流路31へ向かう流体の流れを阻止すると共に、第1の器具接続流路31から第1の弁室53を介して第1の三方活栓接続流路32へ向かう流体の流れを許容する。
【0026】
分岐路2は、図2に示されているように、一端に設けられた第2の器具接続端部4と他端に設けられた注入路接続端部15との間に延び、その中間部に、灌流路接続口16が設けられており、第2の器具接続端部4と注入路接続端部15と灌流路接続口16とが相互に連通している。注入路接続端部15は流れ方向切り換え口10に接続されている。
【0027】
灌流路11は、一端に設けられ且つ第2の三方活栓口7に接続される第2の三方活栓口接続端部19と他端に設けられ且つ灌流路接続口16に接続される分岐路接続端部17との間に延びており、第2の三方活栓口接続端部19と分岐路接続端部17とが連通している。
【0028】
このように、注入路1の流れ方向切り換え口10には分岐路2の注入路接続端部15が接続され、第1の三方活栓5の第1の三方活栓口6には注入路1の中継接続端部18が接続され、第1の三方活栓5の第2の三方活栓口7には灌流路11の第2の三方活栓口接続端部19が接続され、分岐路2の灌流路接続口16には灌流路11の分岐路接続端部17が接続されてそれぞれ連通、又は連通可能になっている。したがって、分岐路2と灌流路11とが連通し、分岐路2と注入路1の第1の器具接続流路31及び第1の三方活栓接続流路32とが三方チェック弁8(詳細には、その第1の弁室53)を介して連通可能になっていると共に、注入路1の第1の三方活栓接続流路32と灌流路11とが第1の三方活栓5を介して連通可能になっている。
【0029】
本発明による気泡除去機構は、様々な医療器具に適用することができるが、薬剤加圧注入シリンジを使用してカテーテルに薬剤を注入するための薬剤加圧注入システム33に適用されることが好適である。図1及び図2には、第1の実施形態による気泡除去機構12を備えた薬剤加圧注入システム33が示されている。図1及び図2に示されている薬剤加圧注入システム33は、気泡除去機構12と、第1のプランジャ29を有した加圧シリンジ13と、第2のプランジャ30を有した薬剤シリンジ14と、加圧シリンジ13により薬剤を圧入されるカテーテル34とを備えている。
【0030】
薬剤加圧注入システム33では、気泡除去機構12は、分岐路2が概略鉛直方向に延び且つ注入路1の鉛直方向上側に位置するように配置される。また、注入路1の第1の器具接続端部3に加圧シリンジ13が接続され、分岐路2の第2の器具接続端部4に概略鉛直方向に延びるように薬剤シリンジ14が接続され、注入路1の中継接続端部18に接続された第1の三方活栓5の第3の三方活栓口21にはカテーテル34が接続される。このような構成にすることにより、薬剤シリンジ14から加圧シリンジ13に薬剤を吸入した後に、加圧シリンジ13からカテーテル34に薬剤を圧入、噴射することができる。
【0031】
加圧シリンジ13と薬剤シリンジ14は、気泡の有無の確認のために、各シリンジに収納される薬剤に含まれる気泡を観測できる程度に透明な素材によって形成されていることが好ましい。医療器具として、加圧シリンジ13を用いるときは、薬剤をより多く収納できて弱い力で高圧で噴射させるために、高い圧力(例えば30気圧)に耐えられる耐圧仕様で細長い形状のシリンジを使用することが好ましい。加圧シリンジ13の第1のプランジャ29は、図示されていない加圧機構によって駆動され、所望の圧力で吸引・吐出を行えるようにしてもよい。
【0032】
次に、図4を参照して、薬剤加圧注入システム33に気泡除去機構12が使用されている場合に、気泡除去機構12を用いて薬剤に含まれる気泡を除去するときの流れの経路の切り換え方法と各状態における流れの向きを説明する。薬剤に含まれる気泡を除去するときには、上述したように、分岐路2が概略鉛直方向に延び且つ注入路1よりも鉛直方向上側に位置するように、気泡除去機構12が配置される。
【0033】
図4(a)は、薬剤シリンジ14の薬剤を分岐路2に流入させ、さらに注入路1に流入させて加圧シリンジ13に吸入させる場合の流れを示している。加圧シリンジ13による吸引操作を行うと、加圧シリンジ13に接続される第1の器具接続流路31及びこれに連通する第1の弁室53が流れ方向切り換え口10側に対して陰圧になり、三方チェック弁8が図3(b)に示されている状態になる。したがって、加圧シリンジ13の吸引操作により、薬剤シリンジ14から分岐路2に流入した薬剤は、流れ方向切り換え口10から、図3(b)の状態になった三方チェック弁8を介して第1の器具接続流路31に流入し、第1の器具接続端部3に接続された加圧シリンジ13に収納される。
【0034】
図4(b)は、薬剤を灌流路11に灌流させる場合の流れを示している。図4(b)に示されているように、薬剤を灌流路11に灌流させるときには、第1の三方活栓5のコック51を操作して本体50内において回転体52のT字型流路60を回動させ、第1の三方活栓口6と第2の三方活栓口7とを連通させる第1の状態に第1の三方活栓5の連通状態を変化させる。この状態で加圧シリンジ13による押出操作を行うと、加圧シリンジ13に収納された薬剤が第1の器具接続流路31へ吐出されて、第1の器具接続流路31及びこれに連通する第1の弁室53が流れ方向切り換え口10側に対して陽圧になり、三方チェック弁8が図3(c)に示されている状態になる。したがって、加圧シリンジ13の押出操作により、加圧シリンジ13に収納された薬剤は、第1の器具接続流路31から、図3(c)の状態になった三方チェック弁8を介して第1の三方活栓接続流路32への流入が許容される。第1の器具接続流路31へ吐出された薬剤は三方チェック弁8を介して第1の三方活栓接続流路32へ流入し、第1の状態になっている第1の三方活栓5により連通された第1の三方活栓口6と第2の三方活栓口7を通過して灌流路11に流入する。灌流路11に流入した薬剤は、分岐路接続端部17が接続される灌流路接続口16を経て分岐路2に灌流される。
【0035】
分岐路2は概略鉛直方向にのびているので、薬剤に含まれる気泡は鉛直方向上方に向かって浮上し、分岐路2に接続され且つ鉛直方向に延びるように配置された薬剤シリンジ14内に回収される。気泡は浮力により薬剤シリンジ14の上方に移動するので、薬剤シリンジ14から加圧シリンジ13への薬剤の吸入時には気泡が分岐路2の鉛直方向下側に位置する注入路1に移動することが防止される。このようにして、薬剤を外部に漏らすことなく、注入路1内の薬剤に含まれる気泡が除去され、灌流された薬剤も再度加圧シリンジ13への充填に使用することが可能となる。また、フィルタを用いていないので、薬剤の種類に応じて構成を変える必要もない。
【0036】
図1及び図2に示されている薬剤加圧注入システム33に使用されている第1の実施形態による気泡除去機構12では、流れ方向切り換え部を三方チェック弁8によって構成している。しかしながら、流れ方向切り換え部は、分岐路2から注入路1(詳細には、第1の器具接続流路31)の第1の器具接続端部3へ向かう方向の流れを許容するときには、中継接続端部18から第1の器具接続端部3へ向かう方向(すなわち第1の三方活栓接続流路32から第1の器具接続流路31へ向う方向)の流れを防止し、第1の器具接続端部3から中継接続端部18へ向かう方向(すなわち第1の器具接続流路31から第1の三方活栓接続流路32へ向う方向)の流れを許容するときには、注入路1(詳細には、第1の器具接続流路31)から分岐路2へ向かう方向の流れを防止することができればよく、図1及び図2に示されている実施形態の構成すなわち三方チェック弁8に限定されるものではない。
【0037】
例えば、流れ方向切り換え部を二つの一方弁によって構成することもできる。図5に示されている第2の実施形態による気泡除去機構では、流れ方向切り換え部が第1の一方弁9と第2の一方弁56とによって構成されている。第1の一方弁9は、注入路1と分岐路2の注入路接続端部15の間に設けられており、分岐路2から注入路1へ向かう方向の流れのみを許容するようになっている。第2の一方弁56は、注入路1において第1の一方弁9よりも中継接続端部18に近い側に設けられており、第1の器具接続端部3から中継接続端部18へ向かう方向の流れのみを許容するようになっている。
【0038】
第1の一方弁9の第2の弁室54に設けられた板状の第2の弁片58は、流れ方向切り換え口10から延びる流路の第2の弁室54への開口の周囲に設けられた弁座に向けて弾性体により付勢されており、通常時には、流れ方向切り換え口10から、第1の器具接続流路31に連通する第2の弁室54への流体の流入を阻止している。第2の一方弁56の第3の弁室55に設けられた板状の第3の弁片59は第2の弁室54と第3の弁室55との間に延びる連通孔の第2の弁室への開口の周囲に設けられた弁座に向けて弾性体により付勢され、通常には、第1の器具接続流路31に連通する第2の弁室54から第1の三方活栓接続流路32に連通する第3の弁室55への流体の流入を阻止している。
【0039】
加圧シリンジ13による吸引操作を行うと、加圧シリンジ13に接続される第1の器具接続流路31及びこれに連通する第2の弁室54の側が流れ方向切り換え口10側と第1の三方活栓接続流路32及びこれに連通する第3の弁室55の側に対して陰圧になり、第2の弁片58が弁座から離間すると共に第3の弁片59が弁座に押し付けられる。この結果、中継接続端部18から第1の三方活栓接続流路32及び第3の弁室55を経て第2の弁室54へ向かう方向の流れが阻止され、分岐路2から注入路1へ向かう方向の流れのみが許容される。一方、加圧シリンジ13による押出操作を行うと、加圧シリンジ13に収納された薬剤が第1の器具接続流路31へ吐出されて、第1の器具接続流路31及びこれに連通する第2の弁室54の側が流れ方向切り換え口10側と第1の三方活栓接続流路32及びこれと連通する第3の弁室55の側に対して陽圧なり、第2の弁片58が弁座に押し付けられると共に第3の弁片59が弁座から離間する。この結果、第1の器具接続端部3から第1の器具接続流路31及び第2の弁室54を経て分岐路2へ向かう方向の流れが阻止され、第1の器具接続端部3から第1の器具接続流路31、第2の弁室54、第3の弁室55及び第1の三方活栓接続流路32を経て中継接続端部18へ向かう方向の流れのみが許容される。
【0040】
加圧シリンジ13の吸引操作と押出操作に伴う第2の実施形態による気泡除去機構の流れ方向切り換え部(すなわち、第1の一方弁9及び第2の一方弁56)における流れ経路の切り換えは、第1の実施形態による気泡除去機構12の流れ方向切り換え部(すなわち、三方チェック弁8)における流れの経路の切り換えと同様である。したがって、第2の気泡除去機構を用いて気泡を除去するときの第1の三方活栓5の操作による流れの経路の切り換え方法及び流れの向きは、第1の気泡除去機構を用いて気泡を除去するときと同じであり、第2の実施形態による気泡除去機構を用いた気泡除去のための操作は、ここでは説明を省略する。
【0041】
また、流れ方向切り換え部は三方活栓によって構成することもできる。図6(a)及び図6(b)に示されている第3の実施形態による気泡除去機構では、流れ方向切り換え部が第2の三方活栓20によって構成されている。第2の三方活栓20は、第4の三方活栓口22と、第5の三方活栓口23と、第6の三方活栓口24とを有しており、3個の三方活栓口の連通状態が、少なくとも、第4の三方活栓口22と第5の三方活栓口23とを連通させる第4の状態と、第4の三方活栓口22と第6の三方活栓口24とを連通させる第5の状態との間で切り換えられるようになっている。第5の三方活栓口23には、分岐路2の注入路接続端部15が接続される。また、第4の三方活栓口22が、注入路1の第1の器具接続流路31及び第1の器具接続端部3として機能し、第6の三方活栓口24が、注入路1の第1の三方活栓接続流路32及び中継接続端部18として機能している。すなわち、第3の実施形態による気泡除去機構の第2の三方活栓20では、第2の三方活栓20が注入路1の各部を構成している。
【0042】
第2の三方活栓20は第1の三方活栓5と同様の構造であり、コックが回動されると、本体内部の回転体の略T字型流路が連動して回動し、T字型流路の3個の出口が、3個の三法活栓口のうちの1箇所、2箇所、又は3箇所に連通する位置で停止するようになっており、3個の三法活栓口の連通状態が、上述したように、少なくとも、第4の三方活栓口22と第5の三方活栓口23とを連通させる第4の状態と、第4の三方活栓口22と第6の三方活栓口24とを連通させる第5の状態との間で切り換えられるようになっている。第1の実施形態による気泡除去機構12の注入路1において図3(b)に示されている矢印の向きの流れを生じさせる状態が、第3の実施形態による気泡除去機構の第2の三方活栓20の第4の状態、すなわち図6(a)に示された矢印の向きの流れを生じさせる状態に相当し、第1の実施形態による気泡除去機構12の注入路1において図3(c)に示されている矢印の向きの流れを生じさせる状態が、第3の実施形態による気泡除去機構の第2の三方活栓20の第5の状態、すなわち図6(b)に示された矢印の向きの流れを生じさせる状態に相当する。加圧シリンジ13の吸引操作時と押出操作時において、それぞれ、図6(a)と図6(b)に示されているように第2の三方活栓20の状態を切り換えれば、第3の実施形態による気泡除去機構の流れ方向切り換え部は、第1の実施形態による気泡除去機構12の流れ方向切り換え部と同様に機能する。したがって、加圧シリンジ13の吸引操作時と押出操作時において、それぞれ、図6(a)と図6(b)に示されているように第2の三方活栓20の状態を切り換えれば、第3の気泡除去機構を用いて気泡を除去するときの第1の三方活栓5の操作による流れの経路の切り換え方法及び流れの向きは、第1の気泡除去機構を用いて気泡を除去するときと同じであり、第3の実施形態による気泡除去機構を用いた気泡除去のための操作は、ここでは説明を省略する。
【0043】
次に、薬剤加圧注入システム33の使用方法を説明する。
【0044】
(ステップS1)
初めに、図1に示される薬剤加圧注入システム33の構成要素を、図2に示されているように、それぞれ対応する接続機構に応じて接続する。この段階では、薬剤加圧注入システム33の各流路は空気で満たされているので、まず生理食塩水などでプラミングを行う。プライミングを行うときには、吐出口が下向きになるように、生理食塩水を充填した薬剤シリンジ14を第2の器具接続端部4に接続する。このとき、薬剤シリンジ14は概略鉛直方向に延びるように配置される。加圧シリンジ13の第1のプランジャ29は加圧シリンジ13内の薬剤が吐出された状態となる位置に移動されている。最初に、分岐路2と注入路1の第1の器具接続流路31のプラミングを行う。薬剤シリンジ14の押出操作又は加圧シリンジ13の吸引操作を行うことにより、流れ方向切り換え部である三方チェック弁8は図3(b)の状態になり、薬剤シリンジ14から流出した生理食塩水は分岐路2を通り注入路1の流れ方向切り換え口10から三方チェック弁8を通過して第1の器具接続流路31に流入し、さらに加圧シリンジ13に収納されて、分岐路2、注入路1の流れ方向切り換え口10と第1の器具接続流路31のプラミングが完了する。
【0045】
次に、注入路1の第1の三方活栓接続流路32、第1の三方活栓5、及びカテーテル34のプラミングを行う。図7(a)にプラミング時の流路の状態が示される。第1の三方活栓5のコック51を回動させて第1の三方活栓口6と第3の三方活栓口21とを連通させる第2の状態にしてから加圧シリンジ13の押出操作を行うと、三方チェック弁8が図3(c)の状態になり、押し出された生理食塩水が加圧シリンジ13から吐出されて第1の器具接続流路31を通って第1の三方活栓接続流路32に流入し、連通する第1の三方活栓口6と第3の三方活栓口21とを通過してカテーテル34に流入して生理食塩水により空気は押し出され、注入路1の第1の三方活栓接続流路32、第1の三方活栓5、及びカテーテル34のプラミングが完了する。
【0046】
各流路がプラミングされたら次に、図4(a)に示すように、薬剤を加圧シリンジ13に収納する。
【0047】
(ステップS2)
生理食塩水を充填した薬剤シリンジ14に代えて薬剤を充填した薬剤シリンジ14を第2の器具接続端部4に装着し、再度、加圧シリンジ13の第1のプランジャ29を引いて吸引操作を行うと、第1の器具接続流路31及びこれに連通する第1の弁室53の側が分岐路2及びこれに連通する流れ方向切り換え口10の側に対して陰圧となって三方チェック弁8が図3(b)の状態になり、薬剤が三方チェック弁8から第1の器具接続流路31を通り加圧シリンジ13に収納される。薬剤シリンジ14の脱着の際に気泡が混入しやすいので、加圧シリンジ13に収納した薬剤に気泡が含まれていないかを観測する。
【0048】
ステップ2で気泡が観測された場合、観測された気泡がカテーテルに入ると人体に危険を及ぼす可能性があるので、気泡除去機構12の灌流路を用いて、図4(b)に示すように、気泡除去を行う。
【0049】
(ステップS3)
加圧シリンジ13内の薬剤に気泡が観測されたら、まず、第1の三方活栓5を第1の状態にして第1の三方活栓口6と第2の三方活栓口7とを連通させる。次に、加圧シリンジ13の第1のプランジャ29の押出操作を行って、加圧シリンジ13から第1の器具接続流路31に薬剤を吐出させる。第1の器具接続流路31及びこれに連通する第1の弁室53の側が流れ方向切り換え口10の側に対して陽圧になって、三方チェック弁8が図3(c)の状態になり、薬剤が第1の三方活栓接続流路32へ流入する。流入した薬剤は第1の状態で連通した第1の三方活栓口6と第2の三方活栓口7とを通過して灌流路11に流入し、灌流路接続口16を経て分岐路2に灌流する。分岐路2は概略鉛直方向に延びるように配置されているので、薬剤と共に分岐路2に灌流した気泡は浮力で分岐路2の鉛直方向上方へ浮上し、下向きに接続された薬剤シリンジ14に回収されて、薬剤シリンジ14の上部へさらに移動する。したがって、分岐路2よりも鉛直方向下側に配置される注入路1に気泡が混入することが防止される。
【0050】
(ステップS4)
加圧シリンジ13に収納された薬剤に気泡が観測されなくなるまでステップS2とステップ3とを繰り返し実行する。加圧シリンジ13に収納された薬剤に気泡が観測されなくなったら繰り返しを終了する。
【0051】
加圧シリンジ13に収納された薬剤に気泡が観測されなくなったら、カテーテル34に薬剤を吐出する。図7(b)に、薬剤をカテーテルに吐出する場合の流路の状態が示されている。
【0052】
(ステップS5)
まず、第1の三方活栓5のコック51を回動して第2の状態にし、第1の三方活栓口6と第3の三方活栓口21とを連通させる。加圧シリンジ13の第1のプランジャ29を押すことにより押出操作を行って、加圧シリンジ13から第1の器具接続流路31に薬剤を吐出させる。第1の器具接続流路31が流れ方向切り換え口10側に対して陽圧になって、三方チェック弁8が図3(c)の状態になり、薬剤が第1の三方活栓接続流路32へ流入する。流入した薬剤は、第1の三方活栓5が第2の状態のときに連通する第1の三方活栓口6と第3の三方活栓口21とを経由してカテーテル34内へ吐出される。
【0053】
必要な場合は、ステップ3において薬剤シリンジ14に回収された気泡(空気)を薬剤シリンジ14より排出するようにしてもよい。
【0054】
(ステップS6)
排出は、薬剤シリンジ14を第2の器具接続端部4より外し、薬剤シリンジ14の吐出口を鉛直方向上向きにした状態でその上部に溜まった空気のみを押し出せばよい。その後、再度、吐出口を鉛直方向下側に向けて薬剤シリンジ14を第2の器具接続端部4に接続する。また、薬剤シリンジ14を取り外さずに分岐路2をその鉛直方向上側になるように配置して、カテーテル34を第3の三方活栓口21に装着しない状態で、第1の三方活栓5を第2の三方活栓口7と第3の三方活栓口21が連通するように切り換えて灌流路11を経由して第3の三方活栓口21から排出してもよい。術中に加圧シリンジ13の薬剤に気泡を観測した時は、適宜ステップS4を実行して、気泡抜きを行う。
【0055】
以上、図示された実施形態を参照して、本発明による気泡除去機構及びこれを備えた薬剤加圧注入システムを説明したが、本発明は図示されている実施形態に限定されるものではない。例えば、薬剤加圧注入システム33は、図8に示されている一つの変形形態の薬剤加圧注入システムのように、第1の三方活栓5とカテーテル34との間に、第1の三方活栓5と同様に構成され且つ第7の三方活栓口26と第8の三方活栓口27と第9の三方活栓口28とを有した第3の三方活栓25を設け、第8の三方活栓口27に点滴ライン35等を接続し、第9の三方活栓口28にカテーテル34を接続し、第7の三方活栓口26を第1の三方活栓5の第3の三方活栓口21に接続するようにしてもよい。このような構成では、点滴ライン35に空気や気泡が混入したときには、第1の三方活栓5のコック51を操作して第2の三方活栓口7と第3の三方活栓口21とを連通させる状態に切り換え、かつ、第3の三方活栓25のコック61を操作して第7の三方活栓口26と第8の三方活栓口27とを連通させる状態に切り換えた状態で、第2の器具接続端部4に接続された薬剤シリンジ14の吸引操作を行うことによって、空気や気泡が混入した点滴ライン35の薬剤を灌流路11を経て分岐路2に灌流させ、薬剤シリンジ14に回収させ、空気や気泡を除去すればよい。
【0056】
また、図9に示されている他の変形形態の薬剤加圧注入システムのように、分岐路2として、第2の器具接続端部4、注入路接続端部15、灌流路接続口16に加えて、ライン接続端部62を有した十字コネクタを分岐路2として使用し、ライン接続端部62に点滴ライン35等の外部ラインを接続し、第1の三方活栓5の第3の三方活栓口21に一方活栓(開閉コック)を介してカテーテル34を接続するようにしてもよい。図8に示されている変形形態では、点滴ライン35がカテーテル34に対して気泡除去機構1の下流側に接続されるので、空気や気泡が混入した点滴ライン35の薬剤を灌流路11に灌流させるためには、第1の三方活栓5と第3の三方活栓25の二つの三方活栓を操作する必要がある。一方、図9に示されている変形形態では、十字コネクタという特殊な部品が必要となる。しかしながら、点滴ライン35がカテーテル34に対して気泡除去機構1の上流側に接続されるので、図1に示されている薬剤加圧注入システムと同じように、第1の三方活栓5を操作するだけで、空気や気泡が混入した点滴ライン35の薬剤を灌流路11に灌流させることができ、より簡便に点滴ラインなどの外部ラインに混入した空気や気泡を除去することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 注入路
2 分岐路
3 第1の器具接続端部
4 第2の器具接続端部
5 第1の三方活栓
6 第1の三方活栓口
7 第2の三方活栓口
8 三方チェック弁
9 第1の一方弁
11 灌流路
12 気泡除去機構
13 加圧シリンジ
14 薬剤シリンジ
18 中継接続端部
20 第2の三方活栓
21 第3の三方活栓口
22 第4の三方活栓口
23 第5の三方活栓口
24 第6の三方活栓口
33 薬剤加圧注入システム
34 カテーテル
56 第2の一方弁
【要約】      (修正有)
【課題】簡易な構成で、薬剤が外部に漏れることなく、薬剤の種類に応じて構成を変える必要もなく、液体中に含まれる気泡や空気を除去できる気泡・空気除去手段を提供する。
【解決手段】気泡除去機構12は、第1の器具接続端部3と中継接続端部18との間に延びる注入路1と、注入路上に設けられた流れ方向切り換え部と、一端に第2の器具接続端部4を有し且つ他端が流れ方向切り換え部を介して注入路1に接続されている分岐路2と、第1の三方活栓口6、第2の三方活栓口7及び第3の三方活栓口21を有し、第1の三方活栓口に中継接続端部が接続されており、第1の三方活栓口と第2の三方活栓口とを連通させる第1の状態と、第1の三方活栓口と第3の三方活栓口とを連通させる第2の状態とを切り換え可能となっている第1の三方活栓5と、一端が第1の三方活栓5の第2の三方活栓口7に接続され、他端が分岐路2に接続されている灌流路11とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9