(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】冷凍パン生地を用いたパンの製造システム
(51)【国際特許分類】
A21D 6/00 20060101AFI20240607BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20240607BHJP
A21D 8/02 20060101ALI20240607BHJP
A21D 10/02 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
A21D6/00
A21D13/00
A21D8/02
A21D10/02
(21)【出願番号】P 2023121684
(22)【出願日】2023-07-26
【審査請求日】2023-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503067502
【氏名又は名称】株式会社福盛ドゥ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福盛 幸一
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-085207(JP,A)
【文献】特開2023-145876(JP,A)
【文献】特開平2-163031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍パン生地を用いる食パン系の製造方法であって、
発酵が停止および進まない所定の温度以下でパン生地を混合し捏ねるパン生地捏ね工程と、
前記パン生地を所定の発酵温度で発酵する発酵工程と、
前記発酵工程後に、前記パン生地を所定の重量に分割し、所定数の分割パン生地を得る分割工程と、
前記分割工程後に、分割パン生地を、所定の温度範囲で、分割パン生地の中心部の温度が-12℃以上-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間急速冷却する第一急速冷却工程と、
前記第一急速冷却工程後に、前記分割パン生地の中心部の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように、前記分割パン生地を解凍する解凍工程と、
前記解凍工程後に、解凍された分割パン生地を成型し、成型パン生地を得る成型工程と、
前記成型工程後に、成型パン生地を、所定の温度範囲で、成型パン生地の中心部の温度が-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間急速冷却する第二急速冷却工程と、
前記第二急速冷却した成型パン生地を、-12℃以下の冷凍温度で所定期間保存する第一保存工程と、
を少なくとも含む、
冷凍パン生地を用いる食パン系の製造方法。
【請求項2】
前記冷凍保存した成型パン生地を食パン用型に入れあるいは食パン用型に入れることなく、前記冷凍温度よりも高い-2℃から2℃の範囲の温度および相対湿度60%以下で所定期間少なくとも保存する第二保存工程と、
前記第二保存工程の後で、少なくとも3段階の温度、相対湿度60%以下および期間を設定してホイロ発酵を行う多段式ホイロ発酵工程と、
前記多段式ホイロ発酵工程の後で、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成工程と、
をさらに含む、
請求項1に記載の冷凍パン生地を用いる食パン系の製造方法。
【請求項3】
冷凍パン生地を用いるフランスパン系の製造方法であって、
発酵が停止および進まない所定の温度以下でパン生地を混合し捏ねるパン生地捏ね工程と、
前記パン生地を所定の発酵温度で発酵する発酵工程と、
前記発酵工程後に、前記パン生地を所定の重量に分割し、所定数の分割パン生地を得る分割工程と、
前記分割工程後に、分割パン生地を、所定の温度範囲で、分割パン生地の中心部の温度が-12℃以上-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間急速冷却する第一急速冷却工程と、
前記第一急速冷却工程後に、前記分割パン生地の中心部の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように、前記分割パン生地を解凍する解凍工程と、
前記解凍工程後に、解凍された分割パン生地を成型し、成型パン生地を得る成型工程と、
前記成型工程後に、成型パン生地を、所定の温度範囲で、成型パン生地の中心部の温度が-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間急速冷却する第二急速冷却工程と、
前記第二急速冷却した成型パン生地を、-12℃以下の冷凍温度で所定期間保存する第一保存工程と、
を少なくとも含む、
冷凍パン生地を用いるフランスパン系の製造方法。
【請求項4】
前記冷凍保存した成型パン生地を、前記冷凍温度よりも高い-2℃から2℃の範囲の温度および相対湿度60%以下で所定期間少なくとも保存する第二保存工程と、
前記第二保存工程の後で、少なくとも3段階の温度、相対湿度60%以下および期間を設定してホイロ発酵を行う多段式ホイロ発酵工程と、
前記多段式ホイロ発酵工程の後で、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成工程と、
をさらに含む、
請求項3に記載の冷凍パン生地を用いるフランスパン系の製造方法。
【請求項5】
冷凍パン生地玉を用いた食事パンの製造方法であって、
発酵が停止および進まない所定の温度以下でパン生地を混合し捏ねるパン生地捏ね工程と、
前記パン生地を所定の発酵温度で発酵する発酵工程と、
前記発酵工程後に、前記パン生地を所定の重量に分割し、所定数の分割パン生地玉を得る分割工程と、
前記分割工程後に、分割パン生地玉を、所定の温度範囲で、パン生地の中心部の温度が-5℃以下になるように急速冷却する急速冷却工程と、
前記急速冷却した分割パン生地玉を、-12℃以下の冷凍温度で所定期間保存する第一保存工程と、
前記冷凍保存した分割パン生地玉を、前記冷凍温度よりも高い-2℃から2℃の範囲の温度および相対湿度60%以下で所定期間少なくとも保存する第二保存工程と、
前記第二保存工程の後で、前記分割パン生地玉の中心部の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように、前記分割パン生地玉を解凍する解凍工程と、
前記解凍工程後に、解凍された分割パン生地玉を成型し、成型パン生地を得る成型工程と、
前記成型パン生地において、所定温度と相対湿度60%以下のホイロ発酵を行うホイロ発酵工程、または少なくとも3段階の温度、相対湿度60%以下および期間を設定してホイロ発酵を行う多段式ホイロ発酵工程と、
前記ホイロ発酵工程あるいは多段式ホイロ発酵工程の後で、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成工程と、
を含む、
冷凍パン生地玉を用いた食事パンの製造方法。
【請求項6】
冷凍パン生地を用いる食パン系の製造システムであって、
発酵が停止および進まない所定の温度以下でパン生地を混合し捏ねる捏ね装置と、
パン生地を所定の発酵温度で発酵する発酵装置と、
前記発酵後に、前記パン生地を所定の重量に分割した分割パン生地を、所定の温度範囲で、分割パン生地の中心部の温度が-12℃以上-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間急速冷却する第一急速冷却装置と、
前記第一急速冷却した後に、前記分割パン生地の中心部の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように、前記分割パン生地を解凍し、解凍された分割パン生地を成型した成型パン生地を、所定の温度範囲で、成型パン生地の中心部の温度が-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間急速冷却する第二急速冷却装置と、
前記第二急速冷却した成型パン生地を、-12℃以下の冷凍温度で所定期間保存する第一保存装置と、
前記冷凍保存した成型パン生地を食パン用型に入れあるいは食パン用型に入れることなく、前記冷凍温度よりも高い-2℃から2℃の範囲の温度および相対湿度60%以下で所定期間少なくとも保存する第二保存装置と、
前記第二保存された後で、少なくとも3段階の温度、相対湿度60%以下および期間を設定してホイロ発酵を行う多段式ホイロ発酵装置と、
前記多段式ホイロ発酵の後で、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成装置と、
を備える、
冷凍パン生地を用いる食パン系の製造システム。
【請求項7】
発酵が停止および進まない所定の温度以下でパン生地を混合し捏ねる捏ね装置と、
パン生地を所定の発酵温度で発酵する発酵装置と、
前記発酵工程後に、前記パン生地を所定の重量に分割し、分割した分割パン生地を、所定の温度範囲で、分割パン生地の中心部の温度が-12℃以上-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間急速冷却する第一急速冷却装置と、
前記第一急速冷却した後に、前記分割パン生地の中心部の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように、前記分割パン生地を解凍し、解凍された分割パン生地を成型し、成型された成型パン生地を、所定の温度範囲で、成型パン生地の中心部の温度が-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間急速冷却する第二急速冷却装置と、
前記第二急速冷却した成型パン生地を、-12℃以下の冷凍温度で所定期間保存する第一保存装置と、
前記冷凍保存した成型パン生地を、前記冷凍温度よりも高い-2℃から2℃の範囲の温度および相対湿度60%以下で所定期間少なくとも保存する第二保存装置と、
前記第二保存された後で、少なくとも3段階の温度、相対湿度60%以下および期間を設定してホイロ発酵を行う多段式ホイロ発酵装置と、
前記多段式ホイロ発酵の後で、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成装置と、
を備える、
冷凍パン生地を用いるフランスパン系の製造システム。
【請求項8】
冷凍パン生地玉を用いた食事パンの製造システムであって、
発酵が停止および進まない所定の温度以下でパン生地を混合し捏ねる捏ね装置と、
前記パン生地を所定の発酵温度で発酵する発酵装置と、
前記発酵後に、前記パン生地を所定の重量に分割して得た所定数の分割パン生地玉を、
所定の温度範囲で、パン生地の中心部の温度が-5℃以下になるように急速冷却する急速冷却装置と、
前記急速冷却した分割パン生地玉を、-12℃以下の冷凍温度で所定期間保存する第一保存装置と、
前記冷凍保存した分割パン生地玉を、前記冷凍温度よりも高い-2℃から2℃の範囲の温度および相対湿度60%以下で所定期間少なくとも保存する第二保存装置と、
前記分割パン生地玉の中心部の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように、前記分割パン生地玉を解凍した後で、解凍された分割パン生地玉を成型し、成型パン生地を得る成型装置と、
前記成型パン生地において、所定温度と相対湿度60%以下のホイロ発酵を行うホイロ発酵装置、または少なくとも3段階の温度、相対湿度60%以下および期間を設定してホイロ発酵を行う多段式ホイロ発酵装置と、
前記ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成装置と、
を備える、
冷凍パン生地玉を用いた食事パンの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍パン生地を用いたパンの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、長期保存に耐える製パン用冷凍生地の製造方法を開示している。この方法は、中種を作り、0℃から10℃で4-24時間発酵させた後、本捏配合物を加えて本捏する工程を有する。別の方法としては、中種を作り、0℃から10℃で4-24時間発酵させた後、本捏配合物を加えて本捏し、完全に凍結(例えば、-20℃)させた後、冷凍生地保護剤粉末(小麦粉、コーンフラワー、デンプン、グリセリン脂肪酸エステル、アスコルビン酸)をこの凍結生地に表面に付着させ、再度、冷凍保存する工程を有する。特許文献1では、イーストの冷凍耐性が弱い点、グルテン蛋白が凍結によって変性する点が課題であった。0℃より低温では発酵が十分に進まず、10℃より高温では発酵が進みすぎる点、4時間未満では発酵が十分に進まず、24時間を超えると発酵が進みすぎる点も記載されている。中種配合物をミキサーで混捏し、乾燥を防止した状態で10℃の冷蔵庫中で10時間発酵させる。中種に本ごね配合物を加え、十分グルテンがディベロップするまでミキシングし20℃の生地を作り、分割(分割重量230g)、丸めた後、生地温度が-20℃で凍結保存した。この生地を一旦室温で1時間解凍した後、30℃、80%のホイロで最後発酵後常法により焼成して白パンを製造した。12週間貯蔵後も焼成できた。
【0003】
特許文献2は、湯種生地と中種生地を別々に作成し、パン生地を本捏ね工程で作成するパン生地の製造方法である。
【0004】
特許文献3は、ストレート法でのもっちりとした弾力のある食感を有し、常温保存下あるいは冷蔵保存下における老化耐性を有する、中種法によるパン類を製造する方法である。製造方法は、小麦粉、生イースト又はインスタントドライイースト、並びに水分を含有する液体材料を含む材料を混捏し、中種生地を調製する混捏工程、及び前記中種生地を発酵させ、中種を調製する発酵工程を含む。
【0005】
特許文献4は、焼成する前のパンやドーナツなどの生地を、保管し、発酵させるためのドウコンディショナーを開示している。
【0006】
特許文献5は、食品の冷凍ムラを抑制することが可能な食品冷凍装置を開示している。
【0007】
特許文献6は、解凍時間の短縮で必要なときに必要な量を解凍し、解凍ロスを解消する冷凍及び解凍機を開示している。
【0008】
特許文献7は、クロワッサン、デニッシュ、バターロールなどの小サイズのパンの製造方法であって、小麦粉、砂糖、食塩、油脂、イースト、生地改良剤、水を含むパン原料をミキシングした生地を分割し、-20℃の冷凍庫で120分冷却(生地中心温度0℃)し、生地を3つ折り2回した後、-5℃で一夜冷却後、更に3つ折りに1回すること、その後、成型、急冷(-35℃、20分)、冷蔵(-1℃から-7℃、5日間)、室温放置(20分)、ホイロ(温度35℃、湿度70%から75%、60分)及び焼成、さらに-20℃で冷凍保存することを行うこと(実施例1、2及び比較例1)が記載されている。しかしながら生地改良剤として酒石酸モノグリセライドエステルとアスコルビン酸の化学合成物を使用しなければならない。
そして、食事パンについては開示されていない。
【0009】
特許文献8は、分割または成形後のパン生地を15~28℃の温度で10~40分間休ませてから冷蔵または冷凍することを特徴とする冷蔵または冷凍パン生地の製造方法を開示する。特許文献8の実施例3では、バターロールについて、冷蔵後に成型し、次いでホイロ発酵(35℃、50分)後に焼成することが開示されている。分割あるいは成型後にパン生地を休ませると、発酵がすすんでしまう。焼成特許文献7と同様に食事パンについての言及は一切ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平4-59859号公報
【文献】特許第6807187号
【文献】特開2022-50138号公報
【文献】特開2022-83783号公報
【文献】特開2022-154085号公報
【文献】特開2022-80810号公報
【文献】特開平2-163031号公報
【文献】特開平6-205636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術に対し、本開示では、食事パンにおける冷凍保存を可能とし、さらに化学合成物を使用しないパン生地の組成においても有効である冷凍パン生地を用いた食事パンの製造方法と製造システムを提供する。
【0012】
第一に、発酵後分割処理したパン生地に対し、速やかに急速冷却を行い、次いで成型モルダーで処理できる程度にパン生地の状態を戻し(柔らかくし)、それから成型モルダーで処理してパン生地からガス抜きをし、所定の形状に成型し、冷凍保存することができる、冷凍パン生地を用いた食事パンの製造方法と製造システムを提供する。
第二に、発酵後分割処理したパン生地に対し、速やかに急速冷却を行い、次いで成型モルダーで処理できる程度にパン生地の状態を戻し(柔らかくし)、それから成型モルダーで処理してパン生地からガス抜きをし、所定の形状に成型し、急速冷却してから冷凍保存することができる、冷凍パン生地を用いた食事パンの製造方法と製造システムを提供する。
第三に、上記第一、第二において、焼成タイミングに合わせて、冷凍保存されたパン生地に対し冷蔵・解凍をし、ホイロ発酵を行うことができる、冷凍パン生地を用いた食事パンの製造方法と製造システムを提供する。
【0013】
第四に、発酵後分割処理したパン生地(玉)に対し、速やかに急速冷却を行い、冷凍保存し、冷凍保存された冷凍パン生地(玉)に対し冷蔵・解凍をし、成型後にホイロ発酵を行うことができる、冷凍パン生地を用いた食事パンの製造方法と製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
食事パンは、例えば、フランスパンあるいはハード系パン、食パン系などである。
食パン系は、例えば、一般的な食パン、ハードトースト、全粒粉食パン、湯種食パン、ぶどう食パンを含む。
フランスパン系は、例えば、一般的なフランスパン、セーグル、カンパニューを含む。
パン生地(玉)は、食事パン用のパン生地(玉)である。
【0015】
(食パン系)
冷凍パン生地を用いる食パン系の製造方法は、
発酵が停止および進まない所定の温度以下(例えば24℃以下)でパン生地を混合し捏ねるパン生地捏ね工程と、
前記パン生地を所定の発酵温度(例えば、捏ね工程の温度よりも高く、1℃から2℃高い温度、室温)で発酵(例えば、40~60分、発酵時間はイースト量に依存する)する発酵工程と、
前記発酵工程後に、前記パン生地を所定の重量(サイズ)に分割し、所定数の分割パン生地を得る分割工程と、
前記分割工程後に、分割パン生地を、所定の温度範囲(例えば、-37℃から-28℃の範囲のうちの任意の一定温度、好ましくは-30℃の任意の一定温度)で、分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-10℃以上-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間(例えば、15分から60分で急速冷却)急速冷却する第一急速冷却工程と、
前記第一急速冷却工程後に、前記分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように(例えば10分から30分以内で)、前記分割パン生地を解凍する解凍工程(例えば、外気による自然解凍、冷蔵装置、恒温槽などによる強制解凍を含む)と、
前記解凍工程後に、解凍された分割パン生地からガス抜きをして所定の成型をし、成型パン生地を得る成型工程と、
前記成型工程後に、成型パン生地を、所定の温度範囲(例えば、-37℃から-28℃の範囲のうちの任意の一定温度、好ましくは-36℃から-30℃の範囲の内の任意の一定冷却温度)で、成型パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-5℃以下、-10℃以下、好ましくは12℃以下になるように、所定時間(例えば、15分から60分で急速冷却)急速冷却する第二急速冷却工程と、
前記第二急速冷却した成型パン生地を、冷凍温度(例えば、-12℃以下、-20℃以下、-25℃以下)で所定期間(例えば、1日以上60日以内、10日以上60日以内、20日以上60日以内、30日以上90日以内)保存する第一保存工程と、
前記冷凍保存した成型パン生地を食パン用型に入れあるいは食パン用型に入れることなく、前記冷凍温度よりも高い所定温度(例えば、第一段階温度(-20℃以上-12℃以下)および/または第二段階温度(-2℃から2℃、約0℃など)、所定湿度(例えば、保存室内の雰囲気湿度として相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)で所定期間(例えば、12時間から60時間)保存する第二保存工程(「冷凍・冷蔵・解凍工程」と称することがある。)と、
前記第二保存工程の後で、少なくとも3段階の温度、湿度(例えば、ホイロ室内の雰囲気湿度として相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)および期間を設定してホイロ発酵(最終発酵)を行う多段式ホイロ発酵工程(例えば、5℃から38℃の間で3ステップ以上での発酵工程)と、
前記多段式ホイロ発酵工程の後で、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成工程と、
を含んでいてもよい。
【0016】
前記第二保存工程は、前記多段式ホイロ発酵工程の前日または2日以上前(例えば、12時間以上60時間前)に実行されてもよい。前記第二保存工程および前記多段式ホイロ発酵工程は、前記焼成工程に合わせて同日に実行されてもよい。
【0017】
前記食パンの製造方法の多段式ホイロ発酵工程は、
解凍温度(例えば、5℃~10℃)、所定の湿度(例えば、相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)および所定時間(例えば、40~120分)で解凍する解凍工程と
第一温度(例えば、15℃~25℃)、所定の湿度(例えば、相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)および所定時間(例えば、40~120分)で処理する第一ホイロ工程と
第二温度(例えば、25℃~30℃)、所定の湿度(例えば、相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)および所定時間(例えば、40~120分)で処理する第二ホイロ工程と
第三温度(例えば、38℃)、所定の湿度(例えば、相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)および所定時間(例えば、40~120分)で処理する第三ホイロ工程と、を含んでいてもよい。
前記第二保存工程と、前記多段式ホイロ発酵工程は、所定の湿度(例えば、相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)で実行されてもよい。
【0018】
保存室内あるいはホイロ室内の雰囲気湿度として相対湿度が設定され、装置の設定湿度として50%以下から0%に設定されていてもよい。
【0019】
パン生地捏ね工程は、各成分の計量、混合、捏ねなどの各種工程を含んでいてもよい。
【0020】
(フランスパン)
冷凍パン生地を用いるフランスパン系の製造方法は、
発酵が停止および進まない所定の温度以下(例えば24℃以下)でパン生地を混合し捏ねるパン生地捏ね工程と、
前記パン生地を所定の発酵温度(例えば、捏ね工程の温度よりも高く、1℃から2℃高い温度、室温)で発酵(例えば、40~120分、発酵時間はイースト量に依存する)する発酵工程と、
前記発酵工程後に、前記パン生地を所定の重量(サイズ)に分割し、所定数の分割パン生地を得る分割工程と、
前記分割工程後に、分割パン生地を、所定の温度範囲(例えば、-37℃から-28℃の範囲のうちの任意の一定温度、好ましくは-30℃の任意の一定温度)で、分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-10℃以上-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間(例えば、15分から60分で急速冷却)急速冷却する第一急速冷却工程と、
前記第一急速冷却工程後に、前記分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように(例えば10分から30分以内で)、前記分割パン生地を解凍する解凍工程(例えば、外気による自然解凍、冷蔵装置あるいは恒温槽による強制解凍を含む)と、
前記解凍工程後に、解凍された分割パン生地からガス抜きをして所定の成型をし、成型パン生地を得る成型工程と、
前記成型工程後に、成型パン生地を、所定の温度範囲(例えば、-37℃から-28℃の範囲のうちの任意の一定温度、好ましくは-36℃から-30℃の範囲の内の任意の一定冷却温度)で、成型パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-5℃以下、-10℃以下、好ましくは12℃以下になるように、所定時間急速冷却(例えば、15分から60分で急速冷却)する第二急速冷却工程と、
前記第二急速冷却した成型パン生地を、冷凍温度(例えば、-12℃以下、-20℃以下、-25℃以下)で所定期間(例えば、1日以上30日以内、40日以内、50日以内、60日以内)保存する第一保存工程と、
前記冷凍保存した成型パン生地を、前記冷凍温度よりも高い所定温度(例えば、第一段階温度(-20℃以上-12℃以下)および/または第二段階温度(-2℃から2℃、約0℃など)、所定湿度(例えば、保存室内の雰囲気湿度として相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)で所定期間(例えば、12時間から60時間)保存する第二保存工程(「冷凍・冷蔵・解凍工程」と称することがある。)と、
前記第二保存工程の後で、少なくとも3段階の温度、湿度(例えば、相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)および期間を設定してホイロ発酵(最終発酵)を行う多段式ホイロ発酵工程(例えば、5℃から38℃の間で3ステップ以上での発酵工程)と、
前記多段式ホイロ発酵工程の後で、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成工程と、
を含んでいてもよい。
【0021】
保存室内あるいはホイロ室内の雰囲気湿度として相対湿度が設定され、装置の設定湿度として50%以下から0%に設定されていてもよい。
【0022】
パン生地捏ね工程は、各成分の計量、混合、捏ねなどの各種工程を含んでいてもよい。
【0023】
前記第二保存工程は、前記多段式ホイロ発酵工程の前日または2日以上前(例えば、12時間以上60時間前)に実行されてもよい。前記第二保存工程および前記多段式ホイロ発酵工程は、前記焼成工程に合わせて同日に実行されてもよい。
【0024】
前記フランスパン系の製造方法の多段式ホイロ発酵工程は、
解凍温度(例えば、5℃~10℃)、所定の湿度(例えば、相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)および所定時間(例えば、40~120分)で解凍する解凍工程と
第一温度(例えば、15℃~25℃)、所定の湿度(例えば、相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)および所定時間(例えば、40~120分)で処理する第一ホイロ工程と
第二温度(例えば、25℃~30℃)、所定の湿度(例えば、相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)および所定時間(例えば、40~120分)で処理する第二ホイロ工程と、を含んでいてもよい。
前記第二保存工程と、前記多段式ホイロ発酵工程は、所定の湿度(例えば、相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)で実行されてもよい。
【0025】
前記第一、第二急速冷却工程において、分割パン生地または成型パン生地の中心部温度は、接触式のデジタル温度計などで測定されてもよい。過去データによって中心部温度が所定温度(例えば5℃以下-1℃以上)になる冷却にかかる時間を設定し、冷却時間を設定してもよい。
2以上の分割パン生地あるいは成型パン生地のすべての中心温度を測定してもよく、予め設定された測定サンプル数(1つ以上5つ以下など)に対応して測定してもよい。
【0026】
分割工程の前に、最終発酵前の発酵させた後で分割し、分割パン生地を急速冷却し、次いで、成型するために解凍し、その後に成形を行う。成型後に二度目の急速冷却し、冷凍保存する、あるいは、成型後に冷凍保存する。
分割パン生地および成型パン生地を、ゆっくり冷却するとイーストの作用により不均一な気泡やなし肌を生じる原因になるので好ましくない。
【0027】
パン生地捏ね工程と分割工程との間の前記発酵工程で、所定期間(例えば、25℃で40分から60分)で発酵を実行する。
【0028】
分割後に発酵が進むことを抑制すべく、分割後速やかに急速冷却することでイーストの作用を制限し、成型におけるガス抜きを好適に行うことができる。成型後に長期間の冷凍保存が可能となり、焼成するタイミングに合わせて、第二保存工程の冷凍・冷蔵・解凍と最終のホイロ発酵を多段階的に行う。ホイロ発酵後のパンの発酵具合の不揃いを生じる原因を抑制できる。
第二保存工程と、ホイロ発酵工程において、相対湿度を60%以下好ましくは50%以下にすることで、パン生地表面に付着する水滴の発生を抑制できる。
【0029】
(第三の冷凍パン生地(玉)を用いた食事パンの製造方法)
冷凍パン生地玉を用いた食事パンの製造方法は、
発酵が停止および進まない所定の温度以下(例えば24℃以下)でパン生地を混合し捏ねるパン生地捏ね工程と、
前記パン生地を所定の発酵温度(例えば、捏ね工程の温度よりも高く、1℃から2℃高い温度、室温)で発酵(例えば、40~120分、発酵時間はイースト量に依存する)する発酵工程と、
前記発酵工程後に、前記パン生地を所定の重量(サイズ)に分割し、所定数の分割パン生地玉を得る分割工程と、
前記分割工程後に、分割パン生地玉を、所定の温度範囲(例えば、-37℃から-28℃の範囲のうちの任意の一定冷却温度、好ましくは-36℃から-30℃の範囲の内の任意の一定冷却温度)で、分割パン生地玉の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-5℃以下、好ましくは-10℃以下(-15℃以上-10℃以下)になるように急速冷却(例えば、15分から50分で急速冷却)する急速冷却工程と、
前記急速冷却した分割パン生地玉を、冷凍温度(例えば、-12℃以下、-20℃以下、-25℃以下)で所定期間(例えば、1日以上90日以内)保存する第一保存工程と、
前記冷凍保存した分割パン生地玉を、前記冷凍温度よりも高い所定温度(第一段階温度(-20℃以上-12℃以下)および/または第二段階温度(-2℃から2℃、約0℃など)、所定湿度(例えば、保存室内の雰囲気湿度として相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)で、所定期間(例えば、12時間から60時間)保存する第二保存工程(「冷凍・冷蔵・解凍工程」と称することがある。)と、
前記第二保存工程の後で、前記分割パン生地玉の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように(例えば10分から30分以内で)、前記分割パン生地玉を解凍する解凍工程(例えば、外気による自然解凍、冷蔵装置、恒温槽などによる強制解凍を含む)と、
前記解凍工程後に、解凍された分割パン生地玉を成型し、成型パン生地を得る成型工程と、
前記成型パン生地において、ホイロ発酵(最終発酵)を行うホイロ発酵工程、または少なくとも3段階の温度、湿度(例えば、ホイロ室内の相対湿度60%以下、55%以下、50%以下)および期間を設定してホイロ発酵(最終発酵)を行う多段式ホイロ発酵工程と、
前記ホイロ発酵工程あるいは多段式ホイロ発酵工程の後で、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成工程と、
を含んでいてもよい。
【0030】
冷凍パン生地玉を用いた食事パンの製造方法において、前記第二保存工程は、前記多段式ホイロ発酵工程の前日または2日以上前(例えば、12時間以上60時間前)に実行されてもよい。前記第二保存工程、解凍工程、成型工程および前記多段式ホイロ発酵工程は、前記焼成工程に合わせて同日に実行されてもよい。
【0031】
保存室内あるいはホイロ室内の雰囲気湿度として相対湿度が設定され、装置の設定湿度として50%以下から0%に設定されていてもよい。
【0032】
上記の食事パンにおける冷凍パン生地玉の製造方法によれば、従来の冷凍パン生地玉の冷凍保存から解凍、成型、ホイロ発酵と大きく異なる。従来の方法では、-20℃以下での冷凍保存状態から、解凍において、一晩かけて25℃まで温度を上昇させ(発酵が進んでしまう)、朝の作業から成型し、ホイロ発酵し、焼成する流れであった。これに対し本発明では、冷凍パン生地玉を、-12℃以下から約0℃での保存状態とし(つまり発酵を停止あるいは遅くさせている)、朝作業から常温解凍(例えば、30分程度)し、成型し、ホイロ発酵し、焼成する流れである。つまり、本発明では、解凍において発酵を停止あるいは進めないようにしており、ホイロ発酵後の発酵状態のムラなどの問題を生じないようにできる。
【0033】
(冷凍パンを用いた食パン系の製造方法に適したシステム)
冷凍パン生地を用いる食パン系の製造システムは、
発酵が停止および進まない所定の温度以下(例えば24℃以下)でパン生地を混合し捏ねる捏ね装置(ブレンダー)と、
前記パン生地を所定の発酵温度(例えば、捏ね工程の温度よりも高く、1℃から2℃高い温度、室温)で発酵(例えば、40~60分)する発酵装置と、
前記発酵後に、前記パン生地を所定の重量(サイズ)に分割し、所定数の分割パン生地を得る分割器具あるいは分割装置と、
前記分割した分割パン生地を、所定の温度範囲(例えば、-37℃から-28℃の範囲のうちの任意の一定温度、好ましくは-30℃の任意の一定温度)で、分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-10℃以上-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間(例えば、15分から60分で急速冷却)急速冷却する第一急速冷却装置と、
前記第一急速冷却した後に、前記分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように、前記分割パン生地を解凍する解凍装置あるいは器具と、
前記解凍された分割パン生地からガス抜きをして所定の成型をし、成型パン生地を得る成型器具あるいは成型装置(成型モルダー)と、
前記成型された成型パン生地を、所定の温度範囲(例えば、-37℃から-28℃の範囲のうちの任意の一定温度、好ましくは-36℃から-30℃の範囲の内の任意の一定冷却温度)で、成型パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-5℃以下、-10℃以下、好ましくは12℃以下になるように、所定時間急速冷却(例えば、15分から60分で急速冷却)する第二急速冷却装置と、
前記第二急速冷却した成型パン生地を、冷凍温度(例えば、-12℃以下、-20℃以下、-25℃以下)で所定期間(例えば、1日以上60日以内)保存する第一保存装置と、
前記冷凍保存した成型パン生地を食パン用型に入れあるいは食パン用型に入れることなく、前記冷凍温度よりも高い所定温度(第一段階温度(-20℃以上-12℃以下)および/または第二段階温度(-2℃から2℃、約0℃など)、所定湿度(例えば、保存室内の雰囲気湿度として相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)で所定期間(例えば、12時間から60時間)保存する第二保存装置と、
前記第二保存された後で、少なくとも3段階の温度、湿度(例えば、相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)および期間を設定してホイロ発酵(最終発酵)を行う多段式ホイロ発酵装置(例えば、5℃から38℃の間で3ステップ以上での発酵する発酵装置)と、
前記多段式ホイロ発酵の後で、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成装置と、
を備えていてもよい。
前記第二保存装置と前記多段式ホイロ発酵装置は、同じ装置(例えば、ドウコンディショナー)で構成されていてもよい。
前記第一、第二保存装置と前記多段式ホイロ発酵装置は、同じ装置(例えば、ドウコンディショナー)で構成されていてもよい。
【0034】
(冷凍パンを用いたフランスパン系の製造方法に適したシステム)
冷凍パン生地を用いるフランスパン系の製造システムは、
発酵が停止および進まない所定の温度以下(例えば24℃以下)でパン生地を混合し捏ねる捏ね装置(ブレンダー)と、
前記パン生地を所定の発酵温度(例えば、捏ね工程の温度よりも高く、1℃から2℃高い温度、室温)で発酵(例えば、40~120分)する発酵装置と、
前記発酵後に、前記パン生地を所定の重量(サイズ)に分割し、所定数の分割パン生地を得る分割器具あるいは分割装置と、
前記分割した分割パン生地を、所定の温度範囲(例えば、-37℃から-28℃の範囲のうちの任意の一定温度、好ましくは-30℃の任意の一定温度)で、分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-10℃以上-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間(例えば、15分から60分で急速冷却)急速冷却する第一急速冷却装置と、
前記第一急速冷却した後に、前記分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように、前記分割パン生地を解凍する解凍装置と、
前記解凍された分割パン生地からガス抜きをして所定の成型をし、成型パン生地を得る成型器具あるいは成型装置(成型モルダー)と、
前記成型された成型パン生地を、所定の温度範囲(例えば、-37℃から-28℃の範囲のうちの任意の一定温度、好ましくは-36℃から-30℃の範囲の内の任意の一定冷却温度)で、成型パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-5℃以下、-10℃以下、好ましくは12℃以下になるように、所定時間急速冷却(例えば、15分から60分で急速冷却)する第二急速冷却装置と、
前記第二急速冷却した成型パン生地を、冷凍温度(例えば、-12℃以下、-20℃以下、-25℃以下)で所定期間(例えば、1日以上30日以内、40日以内)保存する第一保存装置と、
前記冷凍保存した成型パン生地を、前記冷凍温度よりも高い所定温度(第一段階温度(-20℃以上-12℃以下)および/または第二段階温度(-2℃から2℃、約0℃など)、所定湿度(例えば、保存室内の雰囲気湿度として相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)で所定期間(例えば、12時間から60時間)保存する第二保存装置と、
前記第二保存された後で、少なくとも3段階の温度、湿度(例えば、相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%)および期間を設定してホイロ発酵(最終発酵)を行う多段式ホイロ発酵装置(例えば、5℃から38℃の間で3ステップ以上での発酵装置)と、
前記多段式ホイロ発酵の後で、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成装置と、
を備えていてもよい。
前記第二保存装置と前記多段式ホイロ発酵装置は、同じ装置(例えば、ドウコンディショナー)で構成されていてもよい。
前記第一、第二保存装置と前記多段式ホイロ発酵装置は、同じ装置(例えば、ドウコンディショナー)で構成されていてもよい。
【0035】
前記第一、第二急速冷却装置は、例えば、ブラストフリーザーであってもよい。
前記第一保存装置、第二保存装置は、例えば、フリーザーリターダー、ドウコンディショナー、冷凍庫、冷凍装置であってもよい。
前記解凍装置は、例えば、冷蔵庫、恒温槽、ドウコンディショナーであってもよい。
前記発酵装置は、例えば、ドウコンディショナーであってもよい。
前記製造システムは、パンチに使用されるパンチ装置あるいは手動捏ねに使用される器具とを備えていてもよい。
【0036】
(冷凍パン生地(玉)を用いた食事パンの製造方法に適したシステム)
冷凍パン生地玉を用いた食事パンの製造システムは、
発酵が停止および進まない所定の温度以下(例えば24℃以下)でパン生地を混合し捏ねる捏ね装置(ブレンダー)と、
前記パン生地を所定の発酵温度(例えば、捏ね工程の温度よりも高く、1℃から2℃高い温度、室温)で発酵(例えば、40~120分、発酵時間はイースト量に依存する)する発酵装置と、
前記発酵後に、前記パン生地を所定の重量(サイズ)に分割し、所定数の分割パン生地玉を得る分割器具あるいは分割装置と、
前記分割後に、分割パン生地玉を、所定の温度範囲(例えば、-37℃から-28℃の範囲のうちの任意の一定冷却温度、好ましくは-36℃から-30℃の範囲の内の任意の一定冷却温度)で、分割パン生地玉の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-10℃以下(-15℃以上-10℃以下)で急速冷却(例えば、15分から50分で急速冷却)する急速冷却装置と、
前記急速冷却した分割パン生地玉を、冷凍温度(例えば、-12℃以下、-20℃以下、-25℃以下)で所定期間(例えば、1日以上90日以内)保存する第一保存装置と、
前記冷凍保存した分割パン生地玉を、前記冷凍温度よりも高い所定温度(第一段階温度(-20℃以上-12℃以下)および/または第二段階温度(-2℃から2℃、約0℃など)、所定湿度(例えば、保存室内の雰囲気湿度として相対湿度60%以下、55%以下、好ましくは50%以下)で所定期間(例えば、12時間から60時間)保存する第二保存装置と、
前記第二保存された後で、前記分割パン生地玉の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように(例えば10分から30分以内で)、前記分割パン生地玉を解凍する解凍装置あるいは器具と、
前記解凍後に、解凍された分割パン生地玉を成型し、成型パン生地を得る成型装置(例えば、成型モルダー)と、
前記成型パン生地において、所定温度と相対湿度60%以下のホイロ発酵(最終発酵)を行うホイロ発酵装置、または少なくとも3段階の温度、湿度(例えば、ホイロ室内の相対湿度60%以下、55%以下、50%以下)および期間を設定してホイロ発酵(最終発酵)を行う多段式ホイロ発酵装置と、
前記ホイロ発酵あるいは多段式ホイロ発酵の後で、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成装置と、
を備えていてもよい。
前記第二保存装置と前記多段式ホイロ発酵装置は、同じ装置(例えば、ドウコンディショナー)で構成されていてもよい。
前記第一、第二保存装置と前記多段式ホイロ発酵装置は、同じ装置(例えば、ドウコンディショナー)で構成されていてもよい。
【0037】
上記冷凍パン生地(玉)を用いた食事パンの製造方法およびシステム、冷凍パン生地玉を用いた食事パンの製造方法およびシステム、冷凍パン生地を用いるフランスパン系の製造方法およびシステムは、前記捏ね工程から焼成工程までは、同じ場所(店舗、工場など)で行われてよく、前記捏ね工程から前記第一保存工程までと、前記第二保存工程から前記焼成工程が、別の場所で行われていてもよい。この場合に第一保存工程の一部が輸送手段(車両、船舶、航空機など)の中で行われてよい。
【0038】
(作用効果)
(1)最終ホイロ発酵と焼成開始時間を自在にコントロールすることができる。
(2)発酵分割後に、速やかに急速冷却することで、発酵速度を抑制することができる。
(3)発酵分割後に、速やかに急速冷却することで、発酵速度を抑制し(イーストの働きを遅くし)、パン生地からガス抜き処理をし、所定の形状に成型することができる。従来のように分割したパン生地をそのまま成型モルダーでガス抜き処理をした場合、分割後にも発酵がすすんでしまい、ガス抜きを十分にできない不具合がある。ホイロ発酵後のパン生地の状態で顕著に品質の差(ガス膨張による不揃いなど)が表れる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1A】実施形態1の製造工程を説明する図である。
【
図1B】実施形態2の製造工程を説明する図である。
【
図2】冷凍・冷蔵・解凍工程と多段式ホイロ発酵工程(食パン)を説明する図である。
【
図3】冷凍・冷蔵・解凍工程と多段式ホイロ発酵工程(フランスパン)を説明する図である。
【
図4A】実施例のホイロ発酵後のパン生地の天面の状態を示す図である。
【
図4B】比較定のホイロ発酵後のパン生地の天面の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。
【0041】
(実施形態1)
食事パンは、食パン系とフランスパン系を含む。
食パン系は、例えば、一般的な食パン、ハードトースト、全粒粉食パン、湯種食パン、ぶどう食パンを含む。
フランスパン系は、例えば、一般的なフランスパン、セーグル、カンパニューを含む。
【0042】
冷凍パン生地あるいはパン生地組成物は、以下の成分と配合量(kg、重量%)であってもよい。一例を以下に示すが、これに制限されず、他の材料が配合されてもよく、配合量も変更されてもよい。
【0043】
(A)食パンの例
(A1)強力粉 100
(A2)上白糖 3
(A3)食塩 2
(A4)イースト 1.8~2.2
(または冷凍用生イースト:3.6-4.4)
(A5)果汁酵素 0.15~0.2
(A6)脱脂粉乳 4
(A7)トレハロース 5
(A8)バター 6
(A9)(吸)水 68
【0044】
(A)食パンの別例
(A1)強力粉 100
(A2)上白糖 8
(A3)食塩 2
(A4)イースト 1.8~2
(または冷凍用生イースト:3.6-4)
(A5)果汁酵素 0.15~0.2
(A6)ベーカリクリーム 10
(A7)油脂 6
(A8)(吸)水 67
【0045】
(B)ハードトーストの例
(B1)強力粉 60
(B2)準強力粉(リスドオル(日清製粉製)) 40
(B3)上白糖 3
(B4)食塩 2.1
(B5)イースト 1.8~2.2
(または冷凍用生イースト:3.6-4)
(B6)果汁酵素 0.15~0.2
(B7)脱脂粉乳 0.2
(B8)有塩バター 2
(B9)製パン安定剤(BBJ(ルサッフル製)) 0.2
(B10)(吸)水 67
【0046】
(B)ハードトーストの別例
(B1)強力粉 60
(B2)準強力粉(リスドオル(日清製粉製)) 40
(B3)グラニュー糖 2
(B4)食塩 2
(B5)イースト 1.2~2
(または冷凍用生イースト:2.4-4)
(B6)モルト 0.3
(B7)製パン安定剤(BBJ(ルサッフル製)) 0.2
(B8)(吸)水 67
【0047】
(C)全粒粉食パンの例
(C1)強力粉 80
(C2)全粒粉 20
(C3)砂糖 6
(C4)食塩 2
(C5)イースト 1.8~2
(または冷凍用生イースト:3.6-4)
(C6)果汁酵素 0.15~0.2
(C7)脱脂粉乳 3
(C8)油脂 6
(C9)(吸)水 68
【0048】
(D)湯種食パンの例
(D1)強力粉 85
(D2)アルファ米粉 15
(D3)上白糖 7
(D4)食塩 2
(D5)イースト 1.8~2
(または冷凍用生イースト:3.6-4)
(D6)果汁酵素 0.15~0.2
(D7)脱脂粉乳 4
(D8)トレハロース 3
(D9)バター 6
(D10)(吸)水 68
【0049】
(E)ぶどう食パンの例
(E1)強力粉 85
(E2)アルファ米粉 15
(E3)上白糖 10
(E4)トレハロース 5
(E5)イースト 2
(または冷凍用生イースト:4)
(E6)果汁酵素 0.15~0.2
(E7)脱脂粉乳 4
(E8)レーズン 30
(E9)(吸)水 68
【0050】
(F)フランスパンの例
(F1)フランスパン専用粉 100
またはフランスパン専用粉:70と準強力粉:30
(F2)食塩 2.2
(F3)イースト 0.6~1.8
(または冷凍用生イースト:1.2-3.6)
(F4)果汁酵素 0.15~0.2
(F5)エキダネ ルバンナチュレール 20
(F6)コーンパウダー 0.2
(F7)小麦胚芽(ハイギー) 0.2
(F8)(吸)水 65-68
【0051】
(F)フランスパンの別例
(F1)フランスパン専用粉 70
(F2)準強力粉 30
(F3)食塩 2.2
(F3)イースト 1~1.5
(または冷凍用生イースト:2-3)
(F4)モルト 0.3
(F5)製パン安定剤(BBJ(ルサッフル製)) 0.1~0.2
(F6)エキダネ ルバンナチュレール 20
(F7)(吸)水 65
【0052】
(G)セーグルの例
(G1)フランスパン専用粉 40
またはフランスパン専用粉:30と準強力粉:10
(G2)ライ麦粉 60
(G3)食塩 2.2
(G4)イースト 0.6~2
(または冷凍用生イースト:1.2-4)
(G5)エキダネ ルバンナチュレール 40
(G8)(吸)水 40
【0053】
(H)カンパニューの例
(H1)フランスパン専用粉 80
またはフランスパン専用粉:30と準強力粉:50
(H2)ライ麦粉 20
(H3)食塩 2.2
(H4)イースト 0.6~1.8
(または冷凍用生イースト:1.2-3.6)
(H5)製パン安定剤(BBJ(ルサッフル製)) 0.1~0.2
(H6)エキダネ ルバンナチュレール 40
(H7)コーンパウダー 0.2
(H8)小麦胚芽(ハイギー) 0.2
(H9)(吸)水 30
【0054】
「イースト」は、例えば、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイースト、普通用イースト、冷凍用イーストなどが挙げられる。冷凍用イーストを使用することで、<5℃までイースト菌の働きを制限することができ(つまり、5℃未満で長期保存が可能となる)、普通用イーストを使用することで<0℃までイースト菌の動きを制限できる(つまり、0℃未満で保存が可能となる)。ドライイーストを使用すると、生イーストよりも使用量を減らすことができる。
「小麦粉」は、例えば、強力粉、準強力粉(リスドオル(日清製粉製))、中力粉、薄力粉などが挙げられる。
「製パン安定剤」は、例えば、乳化剤、ビタミンC、BBJ(ルサッフル製)などが挙げられる。
「水」は、例えば、純水、精製水、水道水、天然水、アルカリイオン水などが挙げられる。
「果汁酵素」は、例えば、大麦エキスとアセロラエキスを含む構成であってもよい。
「エキダネ ルバンナチュレール」は、自家製の天然酵母である。
【0055】
図1において冷凍パン生地を用いる食パン系の製造方法を説明する。
(S1)捏ね工程
すべての成分を捏ねる。例えば、ミキサー(捏ね装置に相当する。)を用いて、24℃でL10M6(低速10分高速6分)などの装置設定で混合および捏ねる。捏ね条件は、配合成分、重量によっても異なる。ミキサーへの投入の順序などは特に制限されない。
【0056】
(S2)発酵工程
捏ね工程で得られた生地を所定の発酵温度と発酵期間(例えば、25℃で40分から70分)で発酵する。発酵は、発酵装置、ドウコンディショナーを用いて実現してもよい。
(S3)分割工程
発酵工程後の生地を所定の量に分割する。分割する量は、最終のパンの形状、サイズによって決定される。分割は、手作業、パンチング装置で実現してもよい。
【0057】
(S4)第一急速冷却工程
分割パン生地を、所定の温度範囲(例えば、-37℃から-28℃の範囲のうちの任意の一定温度、好ましくは-30℃の任意の一定温度)で、分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-12℃以上-5℃以下の範囲の任意の温度になるように、所定時間(例えば、15分から60分で急速冷却)急速冷却する。急速冷却によりイーストの働きを抑制し発酵の進みを遅らせる(好ましくは停止する)。
【0058】
(S5)解凍工程
第一急速冷却工程後に、冷却分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように、分割パン生地を解凍する。解凍工程は、例えば、外気による自然解凍、冷蔵装置による強制解凍を含む。常温常湿下(例えば、15℃~25℃、相対湿度50~80%)で、パン生地の中心部温度が所定温度(例えば、8℃~10℃)になるまで温度制御してもよい。室内あるいは恒温恒湿庫で実行されてもよい。解凍工程は、例えば、10分から30分である。解凍の程度の目安は、成型装置(例えば、成型モルダー)で処理できるくらいパン生地が柔らかくなることである。
【0059】
(S6)成型工程
解凍工程後に、解凍された分割パン生地からガス抜きを行い、所定の成型をし、成型パン生地を得る。最終のパンの形状、サイズに合わせて成型する。成型は、手作業、成型装置(成型モルダー)で実現してもよい。成型モルダーは、パン生地を板状に伸ばし、板状したものをさらに生地を丸めて成型することができる装置である。
【0060】
(S7)第二急速冷却工程
成型工程後に、成型パン生地を、所定の温度範囲(例えば、-37℃から-28℃の範囲のうちの任意の一定温度、好ましくは-36℃から-30℃の範囲の内の任意の一定冷却温度)で、成型パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-12℃以下の温度になるように、急速冷却(例えば、15分から60分で急速冷却)する。
【0061】
(S8)第一保存工程
第二急速冷却した成型パン生地を、冷凍温度(例えば、-15℃以下、-20℃以下、-25℃以下)で所定期間(例えば、1日以上60日以内)保存する。
【0062】
(S9)第二保存工程
冷凍保存した成型パン生地を食パン用型に入れあるいは食パン用型に入れることなく、所定温度および所定湿度で所定期間保存する。
図2に示すように、例えば、冷凍温度よりも高い所定温度として、第一段階温度(-12℃以下)、相対湿度55%以下、48時間~96時間の保存をし、次いで第二段階温度(例えば、0℃)、相対湿度55%以下、12時間の保存をする。
【0063】
(S10)多段式ホイロ発酵工程
第二保存工程の後で、少なくとも3段階の温度、湿度(室内の相対湿度60%以下、55%以下、50%以下)および期間を設定してホイロ発酵(最終発酵)を行う。多段式ホイロ発酵装置は、例えばリターダー、ドウコンディショナーなどを用いて、解凍から段階的に温度を上げて、ホイロ発酵をコントロールする工程である。
【0064】
図2に、冷凍・冷蔵・解凍工程と多段式ホイロ発酵工程の一例を示す。
焼成工程日から3日前で、12℃以下で48時間の冷凍保存と、その後に温度0℃、湿度50%以下で12時間の冷蔵・一次解凍と、その後に段階的ホイロ工程(完全解凍、第一ホイロ、第二ホイロ、第三ホイロ工程)を焼成当日の朝5時から開始し、9時に焼成する一例を示す。
第二保存工程(冷凍):温度-12℃以下、48時間(12時間から48時間でもよい。この工程は第一保存工程の一部として兼ねていてもよく、省略されもよい。)
第二保存工程(冷蔵、一次解凍):温度0℃、相対湿度50%以下の装置設定で12時間
完全解凍工程:温度10℃、相対湿度50%、1時間
第一ホイロ工程:温度20℃、相対湿度50%、1時間
第二ホイロ工程:温度30℃、相対湿度50%、1時間
第三ホイロ工程:温度38℃、相対湿度50%、1時間
【0065】
(S11)焼成工程
多段式ホイロ発酵工程の後で、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する。焼成温度、焼成時間は適宜設定される。例えば、オーブン(焼成装置に相当する。)で190℃~220℃で20分~30分で焼成する。焼成の条件は、パンの種類に応じて設定される。
【0066】
(フランスパン系)
冷凍パン生地を用いるフランスパン系の製造方法は、食パン系の製造方法と同じである点は省略し、異なる点を説明する。
図3にフランスパンの冷凍・冷蔵・解凍工程と多段式ホイロ発酵工程の一例を示す。
焼成工程日から3日前で、12℃以下で48時間の冷凍保存と、その後に温度0℃、湿度50%以下で12時間の冷蔵・一次解凍と、その後に段階的ホイロ工程(完全解凍、第一ホイロ、第二ホイロ、第三ホイロ工程)を焼成当日の朝5時から開始し、9時に焼成する一例を示す。
第二保存工程(冷凍):温度-12℃以下、48時間(12時間から48時間でもよい。この工程は第一保存工程の一部として兼ねていてもよく、省略されもよい。)
第二保存工程(冷蔵、一次解凍):温度0℃、相対湿度50%以下の装置設定で12時間
完全解凍工程:温度10℃、相対湿度50%、1時間
第一ホイロ工程:温度20℃、相対湿度50%、1時間
第二ホイロ工程:温度30℃、相対湿度50%、1時間
【0067】
(実施形態2:冷凍パン生地玉)
図1Bに、冷凍パン生地(玉)を用いた食事パンの製造方法のフローを示す。
(S21)捏ね工程は、上記S1と同様である。
(S22)発酵工程は、上記S2と同様である。
(S23)分割工程は、上記S3と同様である。
(S24)第一急速冷却工程は、上記S4と同様である。
【0068】
(S25)第一保存工程
第一急速冷却した分割パン生地玉を、冷凍温度(例えば、-15℃以下、-20℃以下、-25℃以下)で所定期間(例えば、1日以上60日以内)保存する。
【0069】
(S26)第二保存工程
冷凍保存した成型パン生地玉を、所定温度および所定湿度で所定期間保存する。例えば、0℃、相対湿度55%以下、12時間の保存をする。あるいは、上記S10と同様に二段階の温度で保存してもよい。
【0070】
(S27)解凍工程
第二保存工程後に、分割パン生地玉の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように、分割パン生地玉を解凍する。解凍工程は、例えば、外気による自然解凍で、解凍工程は、例えば、10分から30分である。解凍の程度の目安は、成型装置(例えば、成型モルダー)で処理できるくらいパン生地が柔らかくなることである。
【0071】
(S28)成型工程
解凍工程後に、解凍された分割パン生地玉からガス抜きを行い、所定の成型をし、成型パン生地を得る。最終のパンの形状、サイズに合わせて成型する。成型は、手作業、成型装置(成型モルダー)で実現してもよい。成型モルダーは、パン生地を板状に伸ばし、板状したものをさらに生地を丸めて成型することができる装置である。フランスパンであれば、フランスパンの形状に成型する。
【0072】
(S29)多段式ホイロ発酵工程/ホイロ発酵工程
成型後で、少なくとも3段階の温度、湿度(室内の相対湿度60%以下、55%以下、50%以下)および期間を設定してホイロ発酵(最終発酵)を行う。多段式ホイロ発酵装置は、例えばリターダー、ドウコンディショナーなどを用いて、解凍から段階的に温度を上げて、ホイロ発酵をコントロールする工程である。また、多段階ホイロではなく、最終発酵温度と相対湿度60%以下で発酵をしてもよい。食パン系とフランスパン系に応じて発酵手順を選択する。
【0073】
(S30)焼成工程は、上記S11の焼成工程と同様である。
【0074】
(実施例)
実施形態1の製造方法で、上記食パンの成分で実施した。
図4Aに、ホイロ発酵工程後の食パンの天面の状態を示す。4つの分割パン生地からなる山なりの形状の高さが揃っており、成型時にガス抜けが良好に行われたことが分かる。焼成後のパンの天面形状も高さが揃っており、パン切断面の気泡も均一であった。
図4Bに、比較例として、分割工程後に第一急速冷却をせずに成型し、冷凍し、ホイロ発酵させた天面の状態を示す。両サイドの膨張が大きく山なりの形状の高さが揃っていなかった。これは、成型時にガス抜けが悪いためである。焼成後のパン切断面の気泡も大きいものが目立ち均一でなかった。
【要約】
【課題】食事パンにおける冷凍保存を可能とし、さらに化学合成物を使用しないパン生地の組成においても有効である冷凍パン生地を用いた食事パンの製造方法と製造システムを提供する。
【解決手段】冷凍パン生地を用いる食パン系の製造方法は、発酵工程後に、パン生地を所定の重量に分割する分割工程と、分割パン生地を所定時間急速冷却する第一急速冷却工程と、分割パン生地の中心部の温度が8℃以上10℃以下の範囲の任意の温度になるように、分割パン生地を解凍する解凍工程と、解凍された分割パン生地を成型し、成型パン生地を得る成型工程と、成型パン生地を所定時間急速冷却する第二急速冷却工程と、急速冷却した成型パン生地を、冷凍温度で所定期間保存する第一保存工程と、冷凍保存した成型パン生地を所定期間保存する第二保存工程と、前記第二保存工程の後で、少なくとも3段階の温度および期間を設定してホイロ発酵を行う多段式ホイロ発酵工程と、ホイロ発酵後のパン生地を焼成する焼成工程とを含む。
【選択図】
図1A