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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】化粧ケアシステム
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20240607BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240607BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20240607BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240607BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20240607BHJP
   A45D 34/04 20060101ALN20240607BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/31
A61K8/898
A61K8/92
A61Q1/04
A45D34/04 515A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019504727
(86)(22)【出願日】2017-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 US2017043749
(87)【国際公開番号】W WO2018022632
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2019-03-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】15/223,951
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロサリオ-メレンデス, ロセリン
(72)【発明者】
【氏名】ペルナ, ギセラ
(72)【発明者】
【氏名】デステノ, スーザン アシュレー
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス, マルセル
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】齊藤 真由美
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-103885(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0196464(US,A1)
【文献】特開2005-29575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99, A61Q 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 以下の(a)から(h):
(a) 2-10重量%の少なくとも1種のジメチコンクロスポリマー
(b) 5-60重量%の25℃で300cSt超かつ1200cSt未満の粘度を有するジメチコン
(c) 2-35重量%のナイロン611/ジメチコンコポリマー
(d) 0.1-30重量%のトリメチルシロキシシリケート
(e) 5%―50重量%の少なくとも1種の揮発性溶媒
(f) 任意選択的に、C30-45 ALKYLDIMETHYLSILYL POLYPROPYLSILSESQUIOXANE(アルキルジメチルシリル ポリプロピルシルセスキオキサン)
(g) 任意選択的に、少なくとも1種の着色剤
(h) 任意選択的に、少なくとも1種のフィラー
を含む少なくとも1種の組成物であって、少なくとも1種のジメチコンクロスポリマー(a)ジメチコン(b)重量比は1:1-1:5であり;重量は組成物の総重量に対するものである組成物;及び
(2) アプリケーター
を含む化粧ケアシステム。
【請求項2】
組成物が、組成物の総重量に対して6-15重量%の量で存在する、25℃で300cSt超かつ1200cSt未満の粘度を有するジメチコンを含む、請求項1に記載のケアシステム。
【請求項3】
組成物が、組成物の総重量に対して10-25重量%存在するトリメチルシロキシシリケートを含む、請求項1に記載のケアシステム。
【請求項4】
組成物が、組成物の総重量に対して10-35重量%存在する少なくとも1種の揮発性溶媒を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のケアシステム。
【請求項5】
組成物が、炭化水素油、シリコーン油及びこれらの混合物から選択される揮発性溶媒を含む、請求項4に記載のケアシステム。
【請求項6】
組成物が、少なくとも1種の着色剤を組成物の総重量に対して0.5-7.5重量%の量でさらに含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のケアシステム。
【請求項7】
組成物が、C30-45 ALKYLDIMETHYLSILYL POLYPROPYLSILSESQUIOXANE(アルキルジメチルシリル ポリプロピルシルセスキオキサン)を組成物の総重量に対して0.01-30重量%の量でさらに含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のケアシステム。
【請求項8】
組成物が、少なくとも1種のフィラーを組成物の総重量に対して0.05-30重量%の量でさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のケアシステム。
【請求項9】
アプリケーターが、2つの対向面を有するアプリケーターヘッドを備え、アプリケーターヘッドが、
(a) 少なくとも1つのハウジングを有する第1の部分と、
(b) ヒンジによって第1の部分に接続され、第1の部分のハウジングに少なくとも部分的にかつしっかりと係合している第2の部分と
を含み、
第1の部分と第2の部分が双方ともアプリケーターヘッドの前記面のそれぞれからアクセス可能である、
請求項1から8のいずれか一項に記載のケアシステム。
【請求項10】
アプリケーターが、2つの対向面を有するアプリケーターヘッドを備え、アプリケーターヘッドが、
(a) 少なくとも1つのハウジングを有する第1の部分と、
(b) ヒンジによって第1の部分に接続され、第1の部分のハウジングに少なくとも部分的に係合しており、かつ、アプリケーター部材とは別のリザーバーを必要とせずに初回使用時の化粧製品装着を可能にするように、塗布される製品を収容する第2の部分と
を含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載のケアシステム。
【請求項11】
請求項9に記載のアプリケーターを使用して、メーキャップするのに又はケラチン表面を保護するのに十分な量で請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物をケラチン表面に塗布することを含む、メーキャップ又はケラチン表面保護の方法。
【請求項12】
請求項10に記載のアプリケーターを使用して、メーキャップするのに又はケラチン表面を保護するのに十分な量で請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物をケラチン表面に塗布することを含む、メーキャップ又はケラチン表面保護の方法。
【請求項13】
(1)
(a) 2-10重量%の少なくとも1種のジメチコンクロスポリマー
(b) 5-60重量%の25℃で300cSt超かつ1200cSt未満の粘度を有するジメチコン
(c) 2-35重量%のナイロン611/ジメチコンコポリマー
(d) 0.1-30重量%のトリメチルシロキシシリケート
(e) 5%-50重量%の少なくとも1種の揮発性溶媒
(f) 任意選択的に、C30-45 ALKYLDIMETHYLSILYL POLYPROPYLSILSESQUIOXANE(アルキルジメチルシリル ポリプロピルシルセスキオキサン)
(g) 任意選択的に、少なくとも1種の着色剤、及び
(h) 任意選択的に、少なくとも1種のフィラー
を含む少なくとも一種の組成物であって、少なくとも1種のジメチコンクロスポリマー(a)ジメチコン(b)重量比は1:1-1:5であり;重量は組成物の総重量に対するものである組成物と、
(2) アプリケーター
とを含む、化粧ケアキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、全内容が参照により本明細書に援用される、2016年7月29日に出願の米国仮出願第15/223951号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、(1)少なくとも1種のシリコーンエラストマー、少なくとも1種の不揮発性油、少なくとも1種のシリコーン樹脂、少なくとも1種の揮発性溶媒、少なくとも1種のポリオルガノシロキサンコポリマーと、(2)アプリケーターとを含む化粧ケアシステムに関する。さらに本発明は、メーキャップするため及び又はケラチン基質の外観を向上させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
メーキャップするか又は使用者の皮膚の外観を向上させるために使用される化粧品組成物は通常、持ちの良さ、耐移り性及び快適さなどの様々な特性を付与できることが要求される。しかし、これらの特性を同時に発揮することができる化粧品の配合はいくつかの課題を提起し得る。例えば、シリコーン樹脂など、持ちの良さを付与することが知られている伝統的な成分を使用する化粧品組成物は非常に乾燥している。さらに、それらは使用中に不快感及び剥離を引き起こす。これらの問題を克服するために、シリコーン油などの油が一般的に使用されている。化粧品におけるシリコーン油の利用は一般的であるが、その使用に関連する欠点としては、てかりやすく、しかもベタつくことであり、これは最終製品にとって必ずしも望ましい効果ではない。
【0004】
化粧製品の持ち及び快適さに関連するさらなる課題は、最終製品をケラチン基質に塗布するために使用されるアプリケーターの構造に関する。例えば、剛毛及び/又は植毛で完全に覆われているアプリケーターは通常、非常に重く、かつ、むらのある化粧品の付着をもたらす。このような塗布は、魅力的でないだけでなく、望ましくない、最終製品のつけ心地の不快さにも関係する。
【0005】
したがって、本発明の目的は、化粧製品が均一に広がり、肌に密着して塗ることが可能になるであろう、組成物とアプリケーターのシステムを提供することである。正確で均一な塗布は視覚的に美しいだけでなく、化粧品の粘着性を低減し、化粧品の優れた快適さ及び持ちの良さに寄与するであろうことが理解される。
【0006】
驚くべきことに、シリコーン樹脂、ポリオルガノシロキサンコポリマー及び揮発性溶媒に加えて、シリコーンクロスポリマー(エラストマー)とシリコーンオイル(流体)を特定の比で組み合わせることは、ケラチン基質に塗布された場合に、べたつかない感触、耐移り性、持ちの良さ、最小限若しくは皆無の剥離、又は優れた快適さによって特徴付けられる組成物を提供することが発見された。また、本発明の組成物はマットである。
【0007】
さらに、2つの対向面及び部分的な植毛を有する本発明のアプリケーターの使用は、本発明の組成物の正確かつ非常に魅力的な塗布をもたらすことが観察されている。この本発明の組成物及びアプリケーターの独特のシステムは、その持ちが良くて快適な、非粘着性のつけ心地に寄与する本発明の製品の薄い分布を可能にする。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、以下の(1)及び(2)を含む化粧ケアシステムに関する。
(1) 以下の(a)から(h)を含む少なくとも1種の組成物:
(a) 約1-約30重量%の少なくとも1種のシリコーンエラストマー
(b) 約2-約30重量%の少なくとも1種の不揮発性油
(c) 約2-約35重量%のポリオルガノシロキサンコポリマー
(d) 約5-約30重量%の少なくとも1種のシリコーン樹脂
(e) 約5%-約50%の少なくとも1種の揮発性物質
(f) 任意選択的に、少なくとも1種のワックス
(g) 任意選択的に、少なくとも1種の着色剤
(h) 任意選択的に、少なくとも1種のフィラー
(2) アプリケーター
【0009】
好ましくは、本発明の組成物は、持ちが良く、耐移り性であり、同時に優れた快適さ、粘着性がない感触及びマットな外観を提供する無水組成物である。
【0010】
本発明の組成物の別の実施態様によると、シリコーンエラストマー(a)の少なくとも1種の不揮発性油(b)に対する重量比は、約1:0.02以上、かつ、約1:10以下であり(例えば1:0.02-1:10)、例えば約1:1-約1:6、約1:1-約1:5など、これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含み、重量は組成物の総重量に対するものである。全ての数値は、固形分(活性成分)の重量パーセントである。
【0011】
好ましい実施態様によれば、組成物は、少なくとも1種の着色剤、少なくとも1種のワックス、少なくとも1種のフィラー、及び少なくとも1種の添加剤をさらに含有する。
【0012】
本発明の好ましい態様によれば、アプリケーターは、2つの対向面を有するアプリケーターヘッドを備え、このアプリケーターヘッドは、
a) 少なくとも1つのハウジングを有する第1の部分と、
b) ヒンジによって第1の部分に接続され、第1の部分のハウジングに少なくとも部分的にかつしっかりと係合している第2の部分
とを含み、
第1の部分と第2の部分は双方ともアプリケーターヘッドの前記面のそれぞれからアクセス可能である。
【0013】
本発明は、
1) 上記の少なくとも1種の組成物;及び
2) アプリケーター
を含む化粧ケアシステムに関し、ここで、アプリケーターは2つの対向面を有するアプリケーターヘッドを含み、アプリケーターヘッドは、
a) 少なくとも1つのハウジングを有する第1の部分、及び
b) ヒンジによって第1の部分に接続され、第1の部分のハウジングに少なくとも部分的に係合しており、かつ、アプリケーター部材とは別のリザーバーを必要とせずに初回使用時の化粧製品装着を可能にするように、塗布される製品を収容する第2の部分
とを含む。
【0014】
本発明によると、本発明の組成物は、口紅、ライナー、ファンデーション、マスカラ、アイシャドー、スキンケア組成物、日焼け止め剤、皮膚忌避剤、消臭剤、ネイル組成物などの液体組成物に関連するが、これらに限定されない。
【0015】
本発明の別の実施態様は、内容全体が参照により本明細書に援用される米国特許第8945525号などに記載されている、少なくとも1種以上のフェニル基を有する不揮発性溶媒を含まない、又は実質的に含まない、又は欠いている組成物に関する。
【0016】
本発明はまた、(1)上記の少なくとも1種の組成物と、(2)アプリケーターとを含むネイルケアシステムのためのキットにも関する。
【0017】
別の実施態様では、本発明は、上に開示の組成物をアプリケーターで皮膚に塗布することを含む、皮膚をメーキャップする方法である。
【0018】
別の実施態様によると、本発明は、前述のカラーコート組成物、トップコート組成物及び少なくとも1つのアプリケーターを含む、化粧品組成物のシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による収納及び塗布装置の一例を示す。
図2】本発明によるアプリケーター部材の一例を概略的に示す。
図3図2のIIIに沿った、図2のアプリケーター部材の正面図を示す。
図4図2のIVに沿った、図2及び3のアプリケーター部材の側面図を示す。
図5】オープン形状にある図2のアプリケーター部材の本体を示す図である。
図6図5のVIに沿った、図5のアプリケーター部材の本体の上面図を示す。
図7図6のVIIに沿った、図5及び6のアプリケーター部材の本体の側面図を示す。
図8図6のVIII-VIIIでの断面図である。
図9図6のIX-IXでの断面図である。
図10図3のX-Xでの断面図である。
図11】本発明によるアプリケーター部材の変形実施態様様の斜視図を概略的に示す。
図12図11のXIIに沿った、図11のアプリケーター部材の正面図を示す。
図13図11のXIIIに沿った、図11及び12のアプリケーター部材の側面図を示す。
図14図12のXIV-XIVでの断面図である。
図15】オープン形状にある図11のアプリケーター部材の本体を示す図である。
図16図15のXVIに沿った上面図である。
図17図16のXVIIに沿った側面図である。
図18】オープン形状にあるアプリケーター部材の本体の変形実施態様を概略的に示す図である。
図19】組み立て後の、図18のアプリケーター部材の正面図を概略的かつ部分的に示す図である。
図20-27】本発明によるアプリケーター部材の変形実施態様の概略斜視図である。
図28】アプリケーター部材の別の変形例の正面図を示す。
図29】アプリケーター部材の別の変形例の側面図を示す。
図30】オープン形状にある図29のアプリケーター部材を示す図である。
図31】本発明によるアプリケーター部材の変形実施態様の概略斜視図である。
図32図31のXXXII-XXXIIに沿った縦断面図である。
図33図31のXXXIII-XXXIIIでの断面図である。
図34】オープン形状にある図31のアプリケーター部材の本体を示す図である。
図35図34のXXXVに沿った、アプリケーター部材の底面図を示す。
図36-67】本発明によるアプリケーター部材の変形例を断面図で示す。
図68】本発明に従って製造されたマスカラアプリケーターの斜視図を概略的に示す。
図69図68のLXIX-LXIXでの、アプリケーターの断面図である。
図70】アプリケーター部材の変形例の斜視図を示す。
図71図70のアプリケーターの断面図である。
図72】アプリケーター部材の変形例の正面図を示す。
図73図72のアプリケーターの側面図である。
図74図74は、ヒンジの変形実施態様を示す。
図75】試験したアプリケーターの例を以下に示す。A - 中央部に2つの開口部があり、全体が植毛で覆われている卵形のアプリケーター。B - 全体が植毛で覆われている円錐形のアプリケーター。C - 全体が植毛で覆われている、折れ曲がった円錐形のアプリケーター。D - 全体が植毛で覆われている三角形のアプリケーター。E - 全体が植毛で覆われている、折れ曲がった三角形のアプリケーター。F - 本発明のアプリケーター。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によれば、用語「無水」は、いかなる水も含まない組成物、すなわち存在し得る水が結晶化水又は出発物質の吸着水のみから来る組成物を指す。いずれの場合も、無水組成物は、組成物の総重量に対して5重量%未満、好ましくは1重量%未満、さらにより好ましくは0.5重量%未満の水を含有する。
【0021】
本明細書で使用する場合、「少なくとも1」という表現は1又は複数を意味し、したがって個々の構成要素だけでなく混合物/組み合わせも含む。
【0022】
操作実施例以外、又は他に指示がある場合を除き、成分の量及び/又は反応条件を表す全ての数字は、全ての場合において、指示されている数字の10%から15%以内を意味する用語「約」によって修飾されていると理解されるものとする(例えば、「約10%」は9%-11%を意味し、「約2%」は1.8%-2.2%を意味する)。
【0023】
本明細書で使用する「塗膜形成体」又は「塗膜形成剤」又は「塗膜形成ポリマー」又は「塗膜形成樹脂」は、それが塗布される基材上に塗膜を残すポリマー又は樹脂を意味し、例えば、溶媒を添加した後、塗膜形成体は基材上で蒸発し、吸収され、かつ/又は消散している。
【0024】
本明細書で使用する「耐移り性」とは、例えば飲食時に、ガラス、衣服又は皮膚などの他の物質との接触によって容易に除去されないという、組成物が示す品質を指す。耐移り性は、これを評価するための、当該技術分野において既知の任意の方法によって評価することができる。例えば、組成物の耐移り性は「キス」テストにより評価することができる。「キス」テストは、毛髪、皮膚又は唇など、ヒトのケラチン物質への組成物の塗布と、続いて一定時間、例えば塗布後2分間経過後に物質、例えば紙のシートを毛髪、皮膚又は唇にこすり付けることを含み得る。同様に、組成物の耐移り性は、組成物の毛髪、皮膚又は唇への塗布後一定時間が経過した後に衣服を着たときの、個人の毛髪、皮膚又は唇から襟への移りなど、着用者から他の任意の基材に移った製品の量によって評価することができる。その後、基材(例えば襟又は紙)に移った組成物の量を評価し、比較することができる。例えば、製品の大部分が着用者の毛髪、皮膚又は唇に残っている場合、組成物は耐移り性であり得る。さらに、移った量は、市販の組成物などの他の組成物によって移った量と比較することができる。本発明の好ましい実施態様では、毛髪、皮膚又は唇から基材に組成物が殆ど又は全く移らない。
【0025】
本明細書で使用する「持ちの良い」組成物とは、長期間経過後に、肉眼で見て、色が塗布時と同じ又は実質的に同じままである組成物を指す。長持ちの特性は、このような特性を評価するための、当該技術分野において既知の任意の方法によって評価することができる。例えば、持ちの良さは、ヒトの毛髪、皮膚又は唇への組成物の塗布と長期間経過後の組成物の色の評価とを含むテストによって評価することができる。例えば、組成物の色は、毛髪、皮膚又は唇への塗布直後に評価することができ、その後一定時間後にこれらの特性を再評価及び比較することができる。さらに、これらの特性は、市販の組成物などの他の組成物で評価することができる。口唇用組成物の場合、「持ちの良い」とは通常、組成物を少なくとも約4時間-約24時間まで唇に塗ったままにしてから、食事した後でさえも濃い色を保持することを意味する。
【0026】
「液体」又は「液体化粧製品」又は「液体口紅」又は「液体組成物」とは、一定の体積を有し、底を覆うように流動し、それが満たす容器の部分の形状を呈し、わずかに圧縮可能である組成物を意味する(General chemistry, Fourth Edition 2005, p.434に開示のとおり)。
【0027】
本明細書で使用する「粘着性(tackiness)」とは、2つの物質間の付着力(adhesion)を指す。例えば、2つの物質間の粘着性が大きければ大きいほど、その物質間の付着力は強くなる。「粘着性」を定量化するためには、2つの物質に関連する、IUPACによって定義されている「付着仕事(work of adhesion)」を決定することが有用である。付着仕事は一般的に、2つの物質を分離するのに必要な仕事の量を測定する。したがって、2つの物質に関連する付着仕事が大きいほど、2つの物質間の付着力が大きくなり、これは2つの物質間の粘着性が大きいことを意味する。
【0028】
付着仕事、ひいては粘着性は、付着力を測定するために一般的に使用される許容可能な技術及び方法、並びにこれまでに記載されているものに沿って定量化することができる。
【0029】
本明細書で使用する「置換されている」とは、少なくとも1つの置換基を含むことを意味する。置換基の非限定的な例には、酸素原子及び窒素原子などの原子、並びにアミン基、エーテル基、アルコキシ基、アシルオキシアルキル基、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、カルボン酸基、アミン基、アシルアミノ基、アミド基、ハロゲン含有基、エステル基、チオール基、硫酸基、チオ硫酸基、シロキサン基及びポリシロキサン基などの官能基が含まれる。置換基(単数又は複数)は、さらに置換されていてもよい。
【0030】
「含む(comprising)」とは、最終結果に影響を及ぼさない他の工程及び/又は成分を追加することができることを意味する。本発明の製品、組成物、方法及びプロセスは、本明細書に記載の本発明の全ての本質的な要素及び限定事項、並びに本明細書に記載のさらなる又は任意選択の成分、構成要素、工程又は限定事項を含み得る。
【0031】
本明細書で使用する「~を含まない(free)」又は「~を本質的に含まない(substantially free)」又は「~を欠いている(devoid of)」は、特定の成分が組成物中に存在しないことが好ましいものの、その量が本発明のコンディショニング組成物の有利な特性の少なくとも1つ、好ましくは大部分に実質的に影響を与えないという条件で、本発明の組成物中に非常に少量含まれることが可能であることを意味する。したがって、例えば「フェニル化溶媒を含まない」とは、不揮発性溶媒が好ましくは省かれる(すなわち0重量%)が、組成物全体の総重量を基準として約0.25重量%未満、典型的には約0.1重量%未満、典型的には約0.05%未満の量で組成物中に存在し得ることを意味する。
【0032】
本明細書で使用する場合、提供する全ての範囲は、所与の範囲内のあらゆる特定範囲、及び所与の範囲間の部分範囲の組み合わせを包含することを意味する。したがって、1-5の範囲は、具体的には1、2、3、4及び5のみならず、2-5、3-5、2-3、2-4、1-4等の部分範囲をも包含する。
【0033】
本明細書で使用する場合、比率の範囲は、所与の範囲内のあらゆる特定の比率、及び所与の範囲間の部分範囲の組み合わせを包含することを意味する。
【0034】
本発明の組成物及び方法は、本明細書に記載の本発明の本質的な要素及び限定事項、並びに本明細書に記載の、又はそうでなければ有用な、さらなる若しくは任意選択の成分、構成要素若しくは限定事項を含むか、これらからなるか又は本質的にこれらからなり得る。
【0035】
アプリケーター
本発明によれば、ケラチン表面に化粧品組成物を塗布するためのアプリケーターが提供される。アプリケーターは好ましくは、全内容が参照により本明細書に援用される国際公開第2016046355号(PCT/EP2015/072069)に開示されているものである。
【0036】
本発明は、ヒトのケラチン物質、特に皮膚、唇又は睫毛及び/又は眉毛への化粧製品の塗布に関する。
【0037】
本発明の好ましい態様によれば、アプリケーターは、2つの対向面を有するアプリケーターヘッドを備え、このアプリケーターヘッドは、
少なくとも1つのハウジングを有する第1の部分と、
ヒンジによって第1の部分に接続され、第1の部分のハウジングに少なくとも部分的にかつしっかりと係合している第2の部分
とを含み、
第1の部分と第2の部分は双方ともアプリケーターヘッドの前記面のそれぞれからアクセス可能である。
【0038】
「しっかりと係合している」とは、本発明によるアプリケーターにおいて、アプリケーターヘッドの第2の部分が第1の部分のハウジングに係合したままであり、第1の部分のハウジングに対して容易に動かせないことを理解されたい。係合を維持するために、例えばユーザーによって又はアプリケーターヘッドが挿入されるリザーバーのカラーによって加えられる外力は必要とされない。
【0039】
アプリケーターヘッドは、平坦な全体形状を有することができ、前記面は主面に相当し得る。
【0040】
本発明は、第1及び第2の部分上に異なる表面状態及び/又は異なる材料を有するアプリケーター部材を製造するための新しい可能性を提供する。本発明は特に、必要に応じて一方の部分のみを植毛すること、又は双方の部分を異なるように植毛することを非常に容易に可能にする。このような、部分のうちの一方に限定される部分植毛はまた、アプリケーターに魅力的な外観を与える。
【0041】
「双方ともアプリケーターヘッドの前記面のそれぞれからアクセス可能である」という表現は、前記面の各面には、第1及び第2の部分が少なくとも表面に存在し、かつ/又は貫通開口部を介してアクセス可能であることを意味すると理解される。これにより、前記面のうちの一方から化粧製品を塗布する間に、ヒトのケラチン物質が、必要に応じて第1及び第2の部分のうちの少なくとも一方と接触するように、さらにより好ましくは、ユーザーが望むなら、双方と接触するようにアプリケーター部材を製造することができる。
【0042】
アプリケーター部材の長さの少なくとも一部に沿って、前記面のそれぞれの面上には双方の部分が見えるようにすることが可能であり、変形例では、アプリケーター部材の長さの少なくとも一部に沿って、前記面の一方の面上には一方の部分のみが見える。これは例えば、第1の部分が、スパイクを有する第2の部分の上部が係合されるスロットの形態のハウジングを有し、第2の部分は上部の底部に肩部を画定する下部を備えている場合と、第1の部分がこの肩部の端から後退している場合に当てはまる。
【0043】
アプリケーター部材の本体は、熱可塑性材料を成形することによって一体に製造することができる。
【0044】
好ましくは、第1の部分のハウジングは貫通ハウジングであり、それによって、アプリケーターヘッドの前記面のそれぞれから第2の部分へのアクセスを可能にする。
【0045】
第2の部分は、塗布される製品を収容することができる。したがってそれは、前記面の少なくとも一方の上に、塗布される化粧製品を収容する空洞を備え得る。空洞は好ましくは、アプリケーター上に存在する、隣接する剛毛間又は歯の間に形成される空間とは異なる。この製品は、例えば半固体の、ルージュ又はリップグロス、ファンデーション、マスカラ又はアイシャドータイプであり、アプリケーター部材の使用中にケラチン物質と直接接触する。
【0046】
空洞内に収容される製品は、多孔質構造の含浸なしに、流し込み(poured)又は圧縮された製品の塊の形態であり得る。変形例では、製品の塊が多孔質構造に含浸する。
【0047】
したがって、変形例では、第2の部分は、前記面の少なくとも一方に、初回使用前に化粧製品で含浸され得、又は、変形例では初回使用時に該製品で含浸され得る多孔質材を含む。
【0048】
所望であれば、取り上げる必要なく中に製品を収容するアプリケーター部材を製造する可能性は、装置の嵩を減らし、それをより使いやすくすることを可能にする。
【0049】
変形例では、ユーザーは、製品のリザーバーを利用し、アプリケーター部材はアプリケーターに付いており、例えば使用されていないときにこの容器を閉じるように設計されている。
【0050】
上述のヒンジは好ましくは、アプリケーターヘッドの遠位端から離れたアプリケーター部材上に配置される。ヒンジは好ましくは、フィルムヒンジであるか、又は2本の可撓性ストランドを含む。ヒンジは、アプリケーター部材の本体と共に熱可塑性材料から成形することができる。
【0051】
第1の部分と第2の部分の少なくとも一方、好ましくは第1の部分は、少なくとも部分的に、さらにより好ましくは全体に植毛される。植毛用剛毛は、アプリケーター部材上の化粧製品のより良好な保持を可能にし、手入れする面積全体に化粧製品を広げることをより容易にする。好ましくは、第1及び第2の部分の他方、特に第2の部分は植毛されていない。これにより、所望であれば、アプリケーター部材上に集まる化粧製品の量を制限することが可能になる。
【0052】
この他の部分は、リザーバーを形成する空洞なしで製造することができる。
【0053】
例えば皮膚若しくは唇にマッサージ作用を及ぼすために、又は睫毛若しくは眉毛を分散させるために、この他の部分に1つ以上のレリーフをつくることができる。
【0054】
変形例では、この他の部分は少なくとも部分的に植毛されているが、特に繊維の量、繊維の大きさ及び/又は繊維の物理的特性、例えば繊維の剛性に関して、第1の部分の植毛は第2の部分の植毛と異なり得る。
【0055】
2種の異なる植毛は、化粧製品の塗布中に異なる効果をもたらすことを可能にし得る。さらに、繊維に例えば異なる色を使用することによって、魅力的な審美的効果を得ることができる。
【0056】
第1及び第2の部分のうちの少なくとも一方、好ましくは第2の部分は、特に規則的な配置で、例えばスパイク、ボス、隆起、溝又は空洞の形態の突出又は陥凹したレリーフを有し得る。有利には、第1の部分は植毛され、第2の部分は、例えばスパイクの形態の、陥凹した又は突出したレリーフを含む。スパイクの存在は、製品の睫毛及び/又は眉毛への塗布中にそれらを分散させることを可能にし得る。
【0057】
第1の部分は植毛コーティングを、第2の部分はスパイク(特に1列以上の長手方向に延在するスパイク)を有することができる(又はその逆)。
【0058】
突出したレリーフはまた、化粧製品の塗布中に皮膚又は唇にマッサージ効果をもたらすことを可能にするように製造することができる。陥凹したレリーフは、アプリケーター部材上への製品の蓄積を促進し、その自律性を高めることができる。
【0059】
アプリケーター部材を水平状態で側面から見たときに、第2の部分は、第1の部分から上方及び/又は下方に突出することができる。それは滑らかで、第1の部分から上方及び下方に突出する全体形状を有することができ、例えば第1の部分の厚さより大きい直径を有するボールの形態である。「側面図」という表現は、前記面の正中面に垂直な図を意味し、この正中面はアプリケーターヘッドの平坦化面に実質的に垂直である。
【0060】
第2の部分は、レリーフ又は印刷の形態の模様又は刻印を有することができる。
【0061】
第2の部分は、第1の部分のハウジング全体を占めてもよい。変形例では、第2の部分は、第1の部分のハウジングの一部のみを占め、第1の部分と第2の部分は、製品を中に集めるための相互間のスペースを画定する。このスペースは例えば、アプリケーター部材が製品を収容する容器に浸されたときに、製品で満たされる。
【0062】
第2の部分は、第1の部分の対応するハウジング内に完全に係合していてもよい。
【0063】
端部で合流し、かつ、中で第2の部分が係合するハウジングを互いに画定する2本のアームを用いて、第1の部分を製造してもよい。
【0064】
前記面のうちの一方を正面から見たとき、第1の部分は、第2の部分の周り全体に延びることができる。第1の部分は、第2の部分全体に植毛コーティングを有することができる。
【0065】
アプリケーターヘッドは、正面図で、その自由端の方向に縮小する幅を有することができる。
【0066】
第2の部分の2本のアームは、遠位自由端の方向に互いに向かって収束してもよい。
【0067】
アプリケーターヘッドは、側面図で、遠位自由端の方向に比較的少ししか変化しない厚さ、特にその長さの90%に沿って所与の位置における厚さから25%未満だけ変化する厚さを有し得る。
【0068】
第2の部分の輪郭は、断面でも正面から見たときにも丸みを帯びていてもよい。
【0069】
第2の部分は、第1の部分のハウジングに、全体ではなく部分的に係合していてもよく、例えば第2の部分の固定タブは第1の部分のハウジングに係合している。次に、第1部分は、第2部分を少なくとも部分的に、さらにより好ましくは完全に取り囲む。
【0070】
第2の部分は貫通開口部を含むことができ、それを通って第1の部分がアクセス可能である。前記面のうちの一方が正面から見られるとき、第2の部分の可視表面は、第1の部分の可視表面を少なくとも部分的に、さらにより好ましくは完全に取り囲み得る。前記面のうちの他方が正面から見られるとき、第1の部分の可視表面は、第2の部分の可視表面を少なくとも部分的に、さらにより好ましくは完全に取り囲み得る。
【0071】
好ましくは、第1の部分は、可撓性材料、特にエラストマーから作られる。
【0072】
第1及び第2の部分は好ましくは、熱可塑性材料で成形された単一の部分を形成する。
【0073】
好ましくは、アプリケーターヘッドは、アプリケーター部材の据付又は把持端部片に取り付けられている。端部片は、上述のヒンジによって互いに接続された2つの半端部片から好ましくは形成される。好ましくは、このヒンジは、アプリケーターヘッドから離れた端部片の端部に配置される。2つの半端部片は、例えばアプリケーターステムに取り付けられるように機能する、完全な端部片を形成するために一緒にフラップすることができる。
【0074】
アプリケーター部材は、2つの半端部片によって形成された実質的に回転柱の形態の端部片を含むことができ、各半端部片は、対応する部分の方向に広がるフレア状の移行部によって前記部分の1つに取り付けることができる。
【0075】
アプリケーター部材の一部は、特に異なる材料で、アプリケーターの残りの部分にオーバーモールドすることができる。
【0076】
アプリケーターヘッドは、その長手方向軸線が端部片のそれと一直線の状態で延在し得る。変形例では、アプリケーターヘッドの長手方向軸線は、端部片の長手方向軸線とゼロ以外の角度を形成する。
【0077】
第1及び第2の部分は、スナップ固定又は圧入によって、容易に分解可能又は不可能になるように、使用配置で一緒に固定することができる。第2の部分は、その周囲に突出したレリーフを備えていてもよく、前記突出したレリーフは第1の部分上の陥凹したレリーフと協働する(又はその逆)。変形例では、2つの半端部片又は第1及び第2の部分は、第1及び第2の部分を使用配置に保つことを可能にする、他の協働するレリーフを備える。
【0078】
第1の部分は固定フックを備えてもよく、かつ/又は第2の部分は固定タブを備えてもよく、固定フックは第2の部分の貫通開口部の中又は下に挿入され、固定タブは、第1の部分のハウジングに係合し、第2の部分を第1の部分の上に折り重ねた状態に保つために固定フックに係合する。好ましくは、固定タブは、第2の部分の第1の部分上への折り畳みの際にスナップ固定によって固定フックと係合する歯を有する。
【0079】
好ましくは、固定フック及び固定タブのうちの一方、特に固定タブは、一方の主面の表面と同一平面上にある。
【0080】
さらなる変形例では、第1の部分と第2の部分は互いに固定されず、折重ねられるのみである。その後、例えばアプリケーター部材の端部片をステムの凹部内に導入することによって第1の部分と第2の部分を保持し、端部片を例えば凹部内にぴったりと嵌合させるか又はステムを端部片によってクリンプし、その結果2つの半端部片、それに伴い第1の部分と第2の部分の押圧が共に保持される。
【0081】
いずれにせよ、第2の部分は第1の部分のハウジングにしっかりと係合したままである。
【0082】
したがって本発明の別の態様によれば、本発明のさらなる目的は、2つの対向面を有するアプリケーターヘッドを含む、化粧製品をヒトのケラチン物質に塗布するためのアプリケーター部材であって、アプリケーターヘッドは、
- 少なくとも1つのハウジングを有する第1の部分と、
- ヒンジによって第1の部分に接続され、第1の部分のハウジングに少なくとも部分的に係合しており、かつ、アプリケーター部材とは別のリザーバーを必要とせずに初回使用時の化粧製品装着を可能にするように、塗布される製品を収容する第2の部分
とを含む。
【0083】
好ましくは、本発明のこの第2の態様によれば、第1及び第2の部分は双方とも、上に記載のアプリケーター部材に関して、アプリケーターヘッドの主面のそれぞれからアクセス可能である。
【0084】
本発明の第3の第2の態様によれば、本発明の主題は、化粧製品を唇に塗布するためのアプリケーター部材であって、以下を有するアプリケーターヘッド:
- 少なくとも1つのハウジングを有する第1の部分と、
- ヒンジによって第1の部分に接続され、第1の部分のハウジングに少なくとも部分的に係合している第2の部分であって、第2の部分がスパイクを備え、第1の部分が植毛コーティングを備える第2の部分
を含むアプリケーター部材である。
【0085】
アプリケーターヘッドは、ハウジングが開口する面を有し、植毛コーティングは、例えばハウジングの開口部の周囲全体又はハウジングに沿って、その片面又は両面に延在する。
【0086】
本発明のさらなる主題は、その態様の別のものによれば、製品をヒトのケラチン物質に塗布するための装置であって、
ステム、
ステムの端部に固定されている、上に記載の第1又は第2の態様に従う、本発明のアプリケーター部材
を備える装置である。
【0087】
アプリケーター部材の端部片は好ましくは、ステムの端部の開口凹部に挿入される。
【0088】
好ましくは、装置は塗布される化粧製品を収容する容器を備える。この容器は拭き取り部材を含み得る。
【0089】
装置は、唇を含む皮膚への製品の塗布に役立ち得る。変形例では、装置は、睫毛及び/又は眉毛への製品の塗布のために構成されている。
【0090】
容器は、ケラチン基質に塗布されるメーキャップ又はメア製品、特にファンデーション、アイシャドー、コンシーラー製品、肌色補正剤、口紅若しくはリップグロス、又は睫毛及び/若しくは眉毛に塗布される製品、特にマスカラを収容することができる。
【0091】
本発明のさらなる主題は、その態様の別のものによれば、本発明に従うアプリケーター部材の製造方法であって、以下の工程:
- アプリケーター部材の本体を開いた状態で成形する工程であって、アプリケーター部材が
少なくとも1つのハウジングを有する第1の部分と、
ヒンジによって第1の部分に接続され、第2の部分が第1の部分の上に折り畳まれた後にハウジングに係合するように意図されている第2の部分
とを含む、成形する工程
- 第1の部分と第2の部分の一方、好ましくは第1の部分に接着剤を塗布する工程
- 植毛用剛毛を接着剤に当てる工程
- 第2の部分が第1の部分のハウジングに少なくとも部分的に係合されるように、第2の部分を第1の部分の上に折り畳む工程
を含む、方法である。
【0092】
好ましくは、アプリケーター部材の本体は、それらの遠位端でそれぞれ第1及び第2の部分に取り付けられ、ヒンジによってそれらの近位端で互いに接続される2つの半端部片を備える。
【0093】
第2の部分は、スナップ固定又は圧入によって第1の部分に固定することができる。変形例では、第2の部分と第1の部分とが互いに折り畳まれるだけで、追加の手段、例えば端部が挿入されるステムによってこの状態に保たれる。
【0094】
本発明のさらなる主題は、本発明の従う装置を製造する方法であって、例えば端部片をステムの端部で開口ハウジングに挿入することにより、上に記載したようなアプリケーター部材をステムに固定する工程を含む、方法。
【0095】
図1に示す収納及び塗布装置は、塗布される製品Pを収容する容器10と、この容器に収容されている製品を取り出して塗布するためのアプリケーターとを備えている。
【0096】
アプリケーター3は、長手方向軸線Xの端部の一方5にアプリケーターヘッド9を備えるアプリケーター部材8を有する、ステム4を含む。図2-4に見られるように、アプリケーターヘッド9は、第1の部分15と、第1の部分15に係合する第2の部分17とを含み、これら2つの部分はヒンジ34によって相互に接続されている。
【0097】
図示の例では、ステム4の軸線Xは直線的であるが、変形例では湾曲していることもある。
【0098】
図示されているように、容器10は、その上部にネック21を備えることができる。このネック21には、拭き取り部材24が係合している。
【0099】
図1に示すように、ステム4の他端6には、容器10を気密に閉鎖するためのキャップも形成する把持要素13が設けられている。
【0100】
ステム4の遠位端5は、アプリケーター部材8の取付端部片30を受ける凹部を有する。
【0101】
アプリケーターヘッド9は、長手方向軸線Tに沿って延剤し、端部片30に取り付けられている。端部片30は、互いに接触し、ヒンジ34によって相互に接続されている2つの半端部片30a及び30bによって形成されている。
【0102】
2つの半端部片30a及び30bはそれぞれ、第1の部分15、第2の部分17に接続されている。端部片30は、任意の手段によって、特に接着剤結合、圧入、ステープリング、ネジ固定、クランピング、クリンピング又はスナップ固定によってステム4内に保持することができる。
【0103】
好ましくは、2つの半端部片30a及び30はそれぞれ、平坦面31a及び31bを有し、これらはその全表面積にわたって相互に接触する。変形例では、これらの面は、例えばスナップ固定によって協働する1つ以上のレリーフを備える。
【0104】
したがって、半端部片30a又は30bの一方が他方の半端部片を受けるための凹状のレリーフ75を備える可能性が図18に示されている。
【0105】
端部片30は好ましくは、ステム内に取り付ける場合には回転柱の形態である。端部片は、特にそれが把持のために直接役立つように意図されているときには、異なる方法で実現することができる。
【0106】
ヒンジ34は好ましくは、第1及び第2の部分15及び17から離れている2つの半端部片30a及び30bの端部36a及び36bに配置されている。これにより、図5から図7に示すように、2つの部分15及び17と2つの半端部片30a及び30bとがオープン形状に一体で成形され、第2の部分17と、端部片30の長手方向軸線Zに垂直なヒンジ34の軸線Yを中心に回転する半端部片30bとによって組み立てられることが可能になる。
【0107】
アプリケーターヘッド9は、図4の平面に垂直な平面Mで全体的に平らにすることができ、2つの対向する主面18及び19を画定する。アプリケーターヘッド9は好ましくは、端部片30の最大幅Dよりも大きい最大幅Lを有する。
【0108】
図1に示すように、第1の部分15には植毛することができ、図2に示すように、第2の部分17は複数のリブ27などのレリーフを含むことができる。リブ27は、好ましくは長手方向軸線Tに対して斜めに延在し、長手方向軸線Tと角度βを形成する。
【0109】
アプリケーターヘッド9の長手方向軸線Tは、端部片30の長手方向軸線Zと好ましくは45°未満、さらにより好ましくは10°から45°の角度αを好ましくは形成する。
【0110】
図5-7に示すように、第1及び第2の部分15及び17はそれぞれ、結合した部分の方向に広がる、対応する中間部分43a又は43bによってそれぞれの半端部片30a又は30bに取り付けることができる。好ましくは、中間部分43a及び43bは、それらが上下に折り畳まれたときにアプリケーター部材8がその端部片30とアプリケーターヘッド9との間に延在する部分に不連続性を有しないように、対称である。
【0111】
ヒンジ34は好ましくは、図5-7に示すようにフィルムヒンジである。
【0112】
当該の例では、第1の部分15は、それらの端部で合流し、第2の部分17を受けるためのハウジング40、特に貫通ハウジングとの間を互いに画定する2つのアーム48を備える。好ましくは、図3のように、アプリケーター部材を正面から見たときに、第1の部分15は第2の部分17を取り囲む。
【0113】
図示されるように、ハウジング40及び第2の部分17は、例えばほぼ卵形の輪郭を有する。
【0114】
第2の部分17は、ハウジング40を完全に占める。
【0115】
アプリケーターヘッド9は、図4及び7に示すように、その自由端に向かってわずかに狭くなり得る。
【0116】
特に図8及び9に見られるように、第1及び第2の部分15及び17は、中間部分43a及び43bの厚さd及びdよりも大きいぞれぞれの厚さe及びeを有することができる。
【0117】
アプリケーターヘッドの全厚さeは、図10に見られるように、その最大幅L未満であり得る。
【0118】
図8に見られるように、第2の部分17は、ほぼ長方形の断面を有し、その周縁47にリブ50を備えることができる。
【0119】
図9から分かるように、第1の部分15の各アーム48は、対応する溝53を備え得る。
【0120】
図10に示されるように、アプリケーター8を閉位置にi維持するために、リブ50は、第2の部分17を第1の部分15の上に折り畳む間に溝53内にスナップ固定される。
【0121】
これは必ずしもそうである必要はなく、特に第1の部分15は、第2の部分17の溝にスナップ固定されるリブを含んでもよく、又は第1の部分15及び第2の部分15及び17は、スナップ固定のためのレリーフを持たなくてもよい。
【0122】
図11から17は、本発明の変形実施態様を示しており、主に第2の部分17の形状及び大きさが図1から10に関して説明したものとは異なっている。
【0123】
図11図13に見られるように、第2の部分17は、アプリケーターヘッド9において第1の部分15と第2の部分17との間に空間60が残るようにハウジング40を部分的にのみ占めることができる。
【0124】
第2の部分17は、特に正面から見て円形の輪郭を有する突出したレリーフ65、特にボスを有することができ、それによって皮膚又は唇にマッサージ作用を及ぼすことが可能になる。
【0125】
2つの部分8a及び8bは、アプリケーター部材8をステム4の凹部に挿入することによって、所定の位置に保たれ得る。その後、2つの半端部片30a及び30bを、相互に締め付ける。
【0126】
図18及び19は、第2の部分17の形状により図1から10の例とは異なる変形実施態様を示している。
【0127】
第2の部分17は空洞70を備えるが、これは貫通空洞ではなく、化粧製品Pを収容し、したがって化粧製品Pはアプリケーター部材の片側からしかアクセスできない。
【0128】
化粧製品Pは、例えばアイシャドー、ファンデーション、ルージュ若しくはリップグロスタイプ又はマスカラである。
【0129】
半端部片30a及び30bの一方は、他方より幅広であってもよい。例えば、半端部片30bを受けるために、陥凹したレリーフ75が半端部片30aに沿って延在する。
【0130】
図20-27に示す変形例では、第2の部分17は、様々な形状の突出した又は陥凹したレリーフ、特に、図23、25及び26に示すようにボス65、図20及び27に示すように斜め又は横方向の隆起27、図24に示すように長手方向の溝72、図21及び22に示すように空洞74又は図25に示すようにスパイク16を備える。
【0131】
正面から見た場合、植毛される長さの大部分に沿ったアプリケーターヘッドの輪郭は、図24及び25に示すようにほぼ楕円形、図26及び27に示すように長方形であってもよく、図22及び23に示すように丸みで接続された平行な側端を有してもよく、又は図20及び21に示すように丸みで接続された外向きに凸状の縁を有してもよい。
【0132】
図28の変形例では、第2の部分17は、使用中にユーザーが方向を確認する助けとなる装飾的なロゴ又は文字を表すレリーフ80又は刻印を有する。
【0133】
この図の例では、端部片は、ユーザーによって直接握られる。
【0134】
なお、端部片30は、把持部材として機能し、遮蔽要素(covering element)に挿入され得る。この実施態様は、特にファンデーションを塗布することを可能にする。
【0135】
図29及び30の変形例では、第2の部分17は、例えばボールの形の膨らみ83の形をしており、これは、側面視でハウジング40の両側から突出するように、第1の部分15よって囲まれたハウジング40の中に収容される。この膨らみ83は、ケラチン物質をマッサージするのを可能にする。
【0136】
図31から35は、本発明の変形実施態様を示しており、主に2つの部分の形状及びこれらを固定する方法が図1から10に関して説明したものと異なっている。
【0137】
第1及び第2の部分15及び17は、同様の寸法を有しており、折り畳み位置では互いに接触する。
【0138】
第2の部分17は、図33に見られる貫通開口部88と、ハウジング40に係合される固定タブ90とを備える。固定タブ90は、歯100を有する。
【0139】
第1の部分15は、アプリケーター部材が折り畳み位置にあるときに、それが面19から目に見えてアクセス可能なままであるように、第2の部分17の貫通開口部88の中又は下に配置されている固定フック95を備える。図33に示すように、固定タブ90、特に歯100と、フック95とは、互いに係合するようになる。
【0140】
この例では、第1及び第2の部分15及び17は、折り畳まれた位置で、アプリケーターヘッド9内の空き空間110を画定する。
【0141】
図示されるように、固定タブ90は好ましくは、面8と同一平面上にあり、その結果、アプリケーター部材が使用されるとき、その端部とケラチン物質が接触することができる。
【0142】
図31から35に示すように、アプリケーター部材は、ステムに挿入するための端部ストッパーとして機能するフランジ120を備えることができ、このフランジは、中間部分43a及び43bと半端部片30a及び30bの間に形成される。
【0143】
図36から59は、アプリケーターヘッドの第1の部分15及び第2の部分17の構成の様々な例を断面図で示している。
【0144】
これらの図において、第1の部分と第2の部分の間の残留すきまは、明確性のために誇張されていたかもしれない。
【0145】
図36の例では、アプリケーターヘッドは、平坦化平面Mに沿って平坦化された全体形状を有する。図示のように、第2の部分17は、例えば砂時計の全体形状の断面を有し、これは第1の部分15のハウジング40内の相補的形状によって維持される。アプリケーター部分は、平坦化平面Mに垂直であり得る対称平面Sに対して対称的な形状を有し得る。
【0146】
図37の例では、アプリケーターヘッドは、断面がアーモンドの全体形状をしている。アプリケーターヘッドの対向面18及び19の各第2の部分によって占められる範囲は異なっていてもよい。例えば図示の例では、第2の部分17によって占められる面18の部分は面19のそれよりも小さく、部分17はその底部の方がより幅広である。第2の部分17によって画定される塗布面の部分は、面19の側面上よりも面18の側面上で小さい曲率半径を有することができる。図37では、アプリケーターヘッドは対称面Sに対して対称的な形状を有しているが、図示されていない変形例では、アプリケーターヘッドはその長さの中央でそれと交差する正中面に対して対称的な形状を有する。
【0147】
図36の例のように、第2の部分は、面18と19の間でその断面が狭くなり、これによって第2の部分がハウジング40内の所定の位置に保たれる。第2の部分が最も狭くなる平面は、図示のように、第1の部分15が最も広い平面と合致してもよい。図37の例では、アプリケーターヘッドは、その厚みの中央でそれと交差する面に対して非対称である断面を有する。
【0148】
図38の例では、アプリケーターヘッドは、多角形の全体形状、より具体的には、当該例のように、正方形の形状を有する断面を有する。第2の部分17を受けるハウジング40は、例えばほぼ四分円の形の凸接面を有する2本のアーム48の間に画定されてもよい。アプリケーターヘッドが多角形の全体形状を有する断面を有する場合、図示されるように、アプリケーターヘッドはその厚みの中央で交差する正中面に対して対称であってもよい。図示されていない変形例では、アプリケーターヘッドは、不規則な多角形の形状の断面を有する。
【0149】
図39の例では、アプリケーターヘッドは、卵形、例えば楕円形の全体形状を有する断面を有する。断面の長軸は、アプリケーターヘッドの厚みの中央でアプリケーターヘッドと交差する正中面Mに含まれていてもよい。アプリケーター部分は、正中面Mに垂直の対称平面Sに対して対称的な全体形状を有し得る。
【0150】
図40の例では、アプリケーターヘッドは、断面が円形の全体形状を有し、この図から分かるように、第2の部分17が占める面18又は19それぞれの表面の面積は、その面に応じて異なる。したがって、図示の例では、第2の部分は、面18の狭い中央ストリップと、面19の実質的に全面を占め、面19の残りはアーム48の下部48iによって画定されている。
【0151】
図41の例では、アプリケーターヘッドは、例えば図示のように4つのローブを有する、マルチローブの全体形状の断面を有する。第2の部分17を受けるハウジング40は、左右のローブを構成するアーム48の間に画定される。アプリケーターヘッドは、その厚みの中央でそれと交差する正中面Mに対して、及び直交面Sに対して対称でわる形状を有することができる。
【0152】
図42の変形実施態様は、第1の部分15上の植毛繊維215のコーティングの存在のために、また、面18及び19それぞれの上の第2の部分17上のスパイク217の存在のために、図36のものとは異なっており、アプリケーターは、特に睫毛及び眉毛をメーキャップするためのものである。スパイク217の数、並びにそれらの配置及び/又は形状は、面18と面19の間で異なってもよく、例えば図42に示すように、面18上のスパイク217の数は、面19上のスパイクの数よりも少ない。
【0153】
図43の例示的実施態様は、本質的に第1の部分15のアーム48の対向面上の植毛215のコーティングの存在と、面18及び19上の第2の部分17上のスパイク217の存在とによって、図37のものとは異なる。
【0154】
図の断面の上側に対応する面18の上では、スパイク217は、例えば平面Sに対して実質的に平行に全て位置合わせされているが、面19上ではスパイク217は実質的に半径方向に向けられている。
【0155】
図42及び43に示すように、植毛コーティング218でスパイク217を覆うことも可能である。
【0156】
図44及び図45の例示的実施態様についても同様であり、これらは、それぞれ図38及び図39のものとは、植毛コーティング215、スパイク217、及び植毛コーティング218の存在によって、異なっている。図示されていない変形例では、植毛コーティング218は、存在しない。
【0157】
図46及び図47の例示的実施態様についても同様である。これらの図では、植毛コーティング218は、スパイク217だけでなく、特に図47に示すように、スパイク間又はスパイクと第1の部分15の間に延在する第2の部分17の外側部分も覆うことができるのが分かる。マルチローブの第2の部分17の存在下では、スパイク217は、例えば対応する各ローブ部分上で実質的に半径方向に向けられている。第2の部分17のローブのうちの1つと第1の部分15の2つのローブとの間に形成された溝の存在は、製品がまとまることとアプリケーターの自律性を高めることとを可能にする。
【0158】
図48から図53の例は、第2の部分17上に植毛コーティング218がないことにより、図42から47のものとは異なる。
【0159】
図54から図59の例は、第1の部分15及び第2の部分17上に植毛コーティング215及び218が存在することにより、図36から図41のものとは異なる。
【0160】
図示の例では、第2の部分17の植毛コーティング218は、ハウジング40内で、第1の部分15に面する第2の部分17の表面に及んでいない。図示されていない変形例では、コーティング218がこれらの表面に達し、第1の部分と第2の部分のアセンブリは、前記表面に及ぶ植毛コーティングを隠すことを可能にし、それによって面18及び面19それぞれのきれいな輪郭を得ることを可能にする。
【0161】
第1の部分に及ぶ植毛コーティング215についても同様である。このコーティングは、ハウジング40に及んでもよく、第2の部分が所定の位置にあるとき、第2の部分によって部分的に隠れることもある。
【0162】
第1の部分15及び第2の部分17の植毛コーティング215及び218は、例えば長さ及び/又は直径、使用される材料及び/又は色の点で異なる植毛繊維でできている。
【0163】
アプリケーター部材の別の例示的実施態様を図68及び図69に示す。この例では、第1の部分は第2の部分17を受けるハウジング40を画定する2つのアーム48を備え、第2の部分17は、面18の側面にスパイク217を有する一方、アプリケーター部材の背面に相当する面19の側面には全くスパイクを有しない。スパイク217は、例えば1列以上のスパイクの列に、例えば2列又は3列の長手方向に延びる列に配置される。アプリケーターヘッドは、面18の側面が凹面である湾曲した全体形状を有し得る。特に図68に見られるように、第1の部分15は、面18の側面の第2の部分17の周囲全体に広がる植毛コーティング215を備え得る。第2の部分17は、図69に見られるように、スナップ固定によって第2の部分17が第1の部分15内に確実に保持されるように広がる上部17sを有する。
【0164】
図70及び図71の例示的実施態様は、図68及び図69のものとかなり近い。ただし、面19はアプリケーター部材の大部分にわたり第2の部分17によって画定されおり、第1の部分15は、アプリケーター部材の端部の面19の側面にしか見えない、第2の部分17が存在しない遠位部分15dである。
【0165】
図71に見られるように、第2の部分17は、第1の部分に係合するその長さの部分に沿って、第1の部分の長さ以上の長さに沿って延在し得る。
【0166】
第2の部分は、アプリケーター部材8の最大幅の平面に位置する肩部245を有してもよい。
【0167】
図72及び図73の例では、第1の部分15は、面18の側面にスパイク219を有し、これらのスパイクは図72では見えており、また第1の部分15の周囲にもあり、第2の部分17にはそのようなスパイクはない。第2の部分17は、植毛コーティングを備えていてもいなくてもよい。
【0168】
第1の部分15は、アプリケーター部材を正面から見たときにアプリケーター部材の遠位端の方向に収束する2本のアームを有し、これらのアームは、互いの間に、例えば図72に示すような小滴の全体形状であるハウジング40を形成する。
【0169】
第1の部分15の周囲に延在するスパイク219はそれぞれ、その長手方向軸が、アプリケーター部材の厚みの実質的に中央でアプリケーター部材と交差する正中面Mに含まれ得る。他のスパイク219は、図示のように、この平面Mに対して実施雨滴に垂直に向けることができる。
【0170】
無論、本発明の範囲から逸脱しない、スパイク配置の他の例もあり得る。
【0171】
図74に示すように、ヒンジは、それぞれその近位端からある距離を置いて部分15及び17に取り付けられている2本の可撓性ストランド234を用いて実現することができる。ストランドは、成形形状において、上面図において一種のフレームを形成する。
【0172】
本発明は、例示した例に限定されない。
【0173】
特に、図示した様々な例の特徴は、図示していない変形例の一部として組み合わされ得る。
【0174】
例えば、一般的な方法で2つの部分を植毛することができ、これらの植毛は異なっており;アプリケーターの片側と他の側とで異なる効果を有するように、2つの部分の一方は、片側にある特定のタイプのレリーフと他方の側に異なるタイプのレリーフとを備え得る。
【0175】
組成物
[シロキシシリケート樹脂]
本発明の化粧品組成物は、例えば米国特許第5505937号、米国特許第5911974号、米国特許第5965112号、米国特許第5985298号、米国特許第6074654号、米国特許第6780422号、米国特許第6908621号(これらの開示内容は参照により本明細書に援用される)に記載されている少なくとも1種のシリコーン樹脂を含む。
【0176】
本発明によれば、化粧品組成物はシロキシシリケート樹脂を含有してもよい。本発明によるシロキシシリケートの非限定的な例の1つは、トリメチルシロキシシリケートであり、これは以下の式:
[(CHSiO](SiO4/2
(式中、x及びyは、例えば50から80の範囲であり得る)
によって表すことができる。このようなシロキシシリケートは、ゼネラル・エレクトリック社、ダウコーニング社、ワッカー社、ミリケン社、シリテック社、グラントインダストリー社、モメンティブ社、及び信越シリコーン社から商品名MQレジン(登録商標)で市販されている。
【0177】
本発明の別の実施態様によれば、組成物は、少なくとも1種のポリプロピルシルセスキオキサンフィルム形成樹脂を含め、シルセスキオキサン樹脂を含有してもよい。
【0178】
シルセスキオキサン樹脂は、シリコーン樹脂の特定の形態である。シリコーン樹脂の学名は、「MDTQ」の名で知られており、これによりシリコーン樹脂は、ポリマーを構成する様々なモノマーシロキサン単位によって記述される。「MDTQ」の各文字は、異なる種類の単位を表す。フィルム形成樹脂が主に三官能性単位(またはT単位)からなる場合、それは一般にシルセスキオキサン樹脂と呼ばれ、例えば、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2006/0292096号に記載されている。
【0179】
本発明で使用することができるシルセスキオキサン樹脂の例は、一般式R SiO(4-n)/2の平均シロキサン単位を有すシルセスキオキサンホモポリマー及び/又はコポリマーであるアルキルシルセスキオキサン樹脂であり、式中、各R1は、R1の80モル%超がC3-C10のアルキル基であるプロピル基であり、nは、1.0から1.4の値であり、コポリマーの60モル%超がRSiO3/2単位を含む。各R1はプロピル基であるため、これらのポリマーはポリプロピルシルセスキオキサン樹脂又は「t-プロピル」シルセスキオキサン樹脂と呼ばれる。これらの樹脂及びその製法は、例えば米国特許第8586013号、米国特許出願公開第2012/0301415号、同第2007/0093619号、同第2006/0292096号(これらの全ては参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0180】
本発明における使用に適したポリプロピルシルセスキオキサン樹脂の非限定的な例は、ダウコーニング社からDow Corning 670 Fluid又はDow Corning 680 Fluidとして市販されている。これらのダウコーニング樹脂は、一般式RSiO(4-n)/2を有し、式中、Rは、水素原子及び、3個の炭素原子を含む一価の炭化水素基から独立に選択され、ここでRの80モル%超がプロピル基であり、nは1.0から1.4の値であり、コポリマーの60モル%超がRSiO3/2単位を含み、かつ、0.2-10重量%、例えば1-4重量%、好ましくは5-10重量%、より好ましくは6-8重量%のヒドロキシル又はアルコキシ含有量を有する。好ましくは、ポリプロピルシルセスキオキサン樹脂は、約5000-約30000の分子量及び約-5℃-約5℃のTgを有する。
【0181】
本発明の別の実施態様は、少なくとも1種のシロキシシリケート樹脂、少なくとも1種のシルセスキオキサン樹脂及び/又はこれらの混合物を含有する組成物を例示している。
【0182】
少なくとも1種のシリコーン樹脂は一般に、本発明の化粧品組成物中に約5-約30重量%、例えば約10-約25重量%、例えば約15-約20重量%の量で存在する(全ての重量は組成物全体の重量を基準とする)。
【0183】
[ポリオルガノシロキサンコポリマー]
本発明の化粧品組成物はまた、少なくとも1種のポリオルガノシロキサン含有ポリマーも含む。本明細書で有用なポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、1-約1000個のオルガノシロキサン単位からなる少なくとも1種のポリオルガノシロキサン基をその鎖に又はグラフトの形態で含有する少なくとも1つの部分を有し、かつ、少なくとも2つの基が水素相互作用を確立する能力があるポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)である。ポリオルガノシロキサン含有ポリマーの非限定的な例は、例えば米国特許第8945525号(その開示は参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0184】
本発明の組成物において使用され得るさらなるポリオルガノシロキサン含有ポリマーには、文献US5874069、US5919441、US6051216及びUS5981680に記載のものが含まれ、これらの全内容は参照により本明細書に援用される。
【0185】
本発明における使用のための好ましいポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、式(III):
及び式(IV)
から選択される少なくとも1つの部分を含有し、
式中、
(a) R、R、R及びRは、同じか又は異なっており、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シロキサン鎖、及びフェニルからなる群より選択することができ;
(b) Xは、1-30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキレンであり;
(c) Yは、1-40個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキレンからなる基から選択され;
(d) mは、1から700の数であり;
(e) nは、1から500の数である。
【0186】
本明細書で有用な、特に好ましいポリオルガノシロキサン含有ポリマーは、ダウコーニング社から商品名DC 8178(登録商標)及びDC 8179(登録商標)で市販されており、これらはナイロン611/ジメチコンコポリマーのINCI名でも知られている。
【0187】
少なくとも1種のポリオルガノシロキサン含有ポリマーは一般に、本発明の化粧品組成物中に約2-約35重量%、例えば約5-約30重量%、例えば約7%-約20重量%の量で存在する(全ての重量は組成物全体の重量を基準とする)。
【0188】
[シリコーンエラストマー(シリコーンクロスポリマー)]
本発明による組成物はまた、少なくともシリコーンエラストマーを含む。
【0189】
好ましい実施態様では、組成物は、非乳化型シリコーンエラストマーを含む。
【0190】
非乳化型シリコーン(silicon)エラストマーは、ゲル又は粉末の形態であり得る。
【0191】
「オルガノポリシロキサンエラストマー」又は「シリコーン(silicon)エラストマー」又は「シリコーンクロスポリマー」は、組成物を増粘し、クッション性(海綿状)効果を加えて、最終製品の塗布を向上させる。また、それは塗布後に非常に柔らかい感触及びつや消し効果を提供し、これはスキン製品に特に有利である。
【0192】
「非乳化型」という用語は、親水性鎖、特にポリオキシアルキレン(特にポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレン)又はポリグリセリル単位を含まないオルガノポリシロキサンエラストマー定義する。したがって本発明の特定の一実施態様によれば、組成物は、ポリオキシアルキレン単位及びポリグリセリル単位を含まないオルガノポリシロキサンエラストマーを含む。
【0193】
非乳化型エラストマーは、米国特許第8637057号(この開示は参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0194】
本発明において特に有用な非乳化型エラストマーには、信越社からKSG-6、KSG-15、KSG-16、KSG-18、KSG-41、KSG-42、KSG-43及びKSG-44の名称で、ダウコーニング社からDC 9040、DC 9041、DC 9509、DC 9505及びDC 9506の名称で、また、ゼネラル・エレクトリック社からSFE 839の名称で販売されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0195】
ある実施態様では、オルガノポリシロキサンエラストマー粒子は、少なくとも1種の炭化水素系油及び/又は1種のシリコーン油に含まれるエラストマーオルガノポリシロキサンから形成されたゲルの形態で運ばれる。これらのゲルにおいて、オルガノポリシロキサン粒子は通常、非球状粒子である。
【0196】
本発明において特に有用なシリコーンエラストマーの非限定的な例は、約150-約700mm2/s、約200-約650mm2/s、及び約300-約600mm2/sの粘度値を有するジメチコンクロスポリマーゲル(溶媒中のジメチコンクロスポリマーのブレンド)である。
【0197】
本発明で特に有用なものは、これまでに開示された定義のとおり、揮発性溶媒、例えばシリコーン油、炭化水素油及びこれらの混合物中の高分子量シリコーンエラストマーのブレンドであり得る。
【0198】
本発明において適用可能なシリコーンエラストマーゲルの具体的であるが非限定的な例は、ダウコーニング社から供給されている、DC EL-8040 ID(INCI名:イソドデカン(及び)ジメチコンクロスポリマー)及びDC EL-9140 DM (INCI名:ジメチコン(及び)ジメチコンクロスポリマー)である。
【0199】
シリコーンエラストマー及びその合成の非限定的な例は、例えば米国特許第8637057号及び米国特許出願公開第2015/0174048号(これらの全ては参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0200】
本発明の組成物中に存在するこのシリコーンエラストマーは通常、前記組成物の総重量に対して1-30重量パーセント、より好ましくは約1.5-約20重量パーセント、最も好ましくは2-10重量パーセントの範囲の活性物質(乾燥物)の含有量である。
【0201】
[揮発性溶媒]
本発明の組成物は、少なくとも一種の揮発性溶媒を含有する。
【0202】
「揮発性溶媒」という表現は、室温及び大気圧で1時間未満で皮膚又は唇との接触時に蒸発することができる任意の非水性媒体を意味する。
【0203】
適切な揮発性溶媒には、例えば、8-16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素油及びそれらの混合物などの揮発性炭化水素系油、特にC-C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカンなどの分岐C16アルカン、並びに、例えばアイソパー又はペリメチルの商品名で販売されている油、イソヘキシル又はイソデシルネオペンタノエートなどのC-C16分岐エステル、アルコール及びこれらの混合物が含まれる。好ましくは、揮発性炭化水素系油は、少なくとも40℃の引火点を有する。
【0204】
揮発性炭化水素系油の例には以下の表1に示すものが含まれるが、これらに限定されない。
【0205】
揮発性溶媒はまた、直鎖状又は環状であり得、室温で6cSt以下の粘度を有し、2-7個のケイ素原子を有し、任意選択的に1-10個の炭素原子のアルキル又はアルコキシ基で置換されている揮発性シリコーン油からも選択することができる。
【0206】
適切な揮発性シリコーン油の例には以下の表2に示すものが含まれるが、これらに限定されない。
【0207】
少なくとも1種の揮発性溶媒は一般に、本発明の化粧品組成物中に約5-約50重量%、例えば約10-約45重量%、例えば約15-約40重量%の量で存在する(全ての重量は組成物全体の重量を基準とする)。
【0208】
非揮発性溶媒
本発明の組成物はまた、少なくとも一種の非揮発性溶媒(油)も含有する。
【0209】
油の揮発性は、米国特許第6338839号(その内容は参照により本明細書に援用される)に記載されているように、蒸発速度を用いて決定することができる。
【0210】
不揮発性油には、低粘度油(約5-約10センチポアズの粘度を有する)及び高粘度油(約100-約10000センチポアズの粘度を有する)、並びにこれらの混合物が含まれる。ワックスとは対照的に、油は室温で液体である。
【0211】
本発明の特定の実施態様によれば、油は、シリコーン油及び/又は炭化水素油である高粘度油である。「高粘度」とは、25℃で100cSt超、特に250cSt超の粘度を有する油を意味する。最も具体的には、不揮発性油は、シリコーン油から選択される。そのような油は、例えば米国特許出願公開第2011/0293550号及び同第2004/0126350号(双方とも参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0212】
適切な不揮発性シリコーン油の非限定的な例には、室温で液体又はペースト状である直鎖状又は環状シリコーン鎖を有するポリメチルシロキサン(PDMS)、特に、シクロヘキサシロキサンなどのシクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコン);ペンダントであるか又はシリコーン鎖の末端にあるアルキル又はアルコキシ基を含み、これらの基が2-24個の炭素原子を含むポリジメチルシロキサン(CTFA名「ジメチコン」);ポリジエチルシロキサン;及び25℃で約300cPsから25℃で約1500cPsの粘度を有するジメチコン流体が含まれる。特に有用なジメチコン流体は、25℃で約350cPsから25℃で約1000cPsの粘度を有する。
【0213】
本発明に適した高粘度シリコーン油の具体例にはダウコーニング社のXiameter(登録商標)シリコーン流体が含まれるが、これに限定されない。
【0214】
少なくとも1種の不揮発性シリコーン油は、本発明の組成物の総重量を基準にして約4-約25重量%、典型的には約6-約20重量%の範囲(これらの範囲内の全ての範囲及び部分範囲を含む)の量で本発明の組成物中に存在する。
【0215】
驚くべきことに、本発明の組成物中に、少なくとも1種のシリコーンエラストマー、好ましくは少なくとも1種のジメチコンクロスポリマーと、25℃で350cSt以上の粘度を有する少なくとも1種の不揮発性シリコーン流体とを、約1:0.02以上かつ約1:10以下のシリコーンエラストマー対不揮発性シリコーン流体の重量比(例えば1:0.02-1:10)(これらの間の全ての範囲及び部分範囲、例えば約1:1-約1:6及び約1:1-約1:5を含み、また、重量は本発明の組成物の総重量に対する)で組み合わせることにより、持ちが良く、耐移り性、非粘着性で、剥離が抑えられ、快適性に優れることを特徴とする化粧品が得られることが見出された。
【0216】
他の実施態様によれば、本発明は、本発明の組成物に、少なくとも1種のシリコーンエラストマー、好ましくは少なくとも1種のジメチコンクロスポリマーと、25℃で350cSt以上の粘度を有する少なくとも1種の不揮発性シリコーン流体とを、約1:0.02以上かつ約1:10以下のシリコーンエラストマー対不揮発性シリコーン流体の重量比(例えば1:0.02-1:10)(これらの間の全ての範囲及び部分範囲、例えば約1:1-約1:6及び約1:1-約1:5を含める)で組み入れて、持ちが良く、耐移り性、非粘着性で、剥離が抑えられ、快適性に優れることを特徴とする化粧品が得ることを含む、組成物の粘着性、耐移り性及び/又は持ちの良い特性を改善する方法に関する。
【0217】
本発明の組成物は、皮膚、特に唇をメーキャップするための組成物として有用である。
【0218】
ワックス(任意選択)
本発明の化粧品組成物は、任意選択的に少なくとも1種のワックスを含有してもよい。
【0219】
本発明のために、ワックスは、室温(25℃)で固体であり、可逆的な固体/液体状態変化を有し(すなわち物質の状態が温度に基づいて変化し得る)、45℃超、好ましくは55℃超、より好ましくは約65℃-約120℃の融点を有し、固体状態で異方性結晶組織を有する親油性脂肪化合物である。ワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えばメトラーによりDSC 30の名称で販売されている熱量計を使用して測定することができる。例えばミクロクリスタリンワックスなど、石油由来のワックスの場合、融点は、ドロップASTM法、D-127に従って測定することができる。
【0220】
ワックスは、化粧品及び皮膚病学において一般的に使用されているものである。ワックスは天然由来のもの、例えばミツロウ、カルナウバロウ、カンデリラロウ、オーリクリー(ouricoury)ロウ、モクロウ、コルク繊維ロウ又はサトウキビロウ、パラフィンワックス、モンタンロウ、ミクロクリスタリンワックス、ラノリンワックス、モンタンワックス、オゾケライト及び、例えば水素添加ホホバ油などの水素添加油であってもよい。
【0221】
ワックスはまた合成起源のもの、例えばエチレンの重合から誘導されるポリエチレンワックス、フィッシャー-トロプシュ合成により得られるワックス、及び40℃で固体の脂肪酸及びグリセリドのエステルであり得る。
【0222】
合成由来のワックスは、天然由来のワックスよりも均一で再現性が高いので好ましい。さらにワックスは、好ましくはシリコーンワックスではない。
【0223】
特定のワックスには、ポリエチレンワックス、例えばPerformalene 500-L Polyethylene(New Phase Technology)の名称で販売されている製品及びポリメチレンワックス、例えばCirebelle 303(Sasol)の名称で販売されている製品が含まれる。
【0224】
本発明の化粧品組成物は、少なくとも30個の炭素を有するアルキル単位で置換された少なくとも1種のポリプロピルシルセスキオキサンワックスを含有してもよい。
【0225】
ポリプロピルシルセスキオキサンワックスは一般に、国際公開第2005/100444号及び米国特許第8586013号に開示されており、これらの全内容は参照により本明細書に援用される。
【0226】
但し、全てのポリプロピルシルセスキオキサンワックスが安定な着色化粧用エマルジョン製品を生成するわけではないことに注意すべきである。より具体的には、少なくとも30個の炭素を有するアルキル単位で置換されたポリプロピルシルセスキオキサンワックスのみが安定であることが見出されている。
【0227】
本発明における使用に特に好ましいポリプロピルシルセスキオキサンワックスは、商品名SW-8005 C30 Resin Waxでダウコーニング社から市販されているC30-45 ALKYLDIMETHYLSILYL POLYPROPYLSILSESQUIOXANEである。
【0228】
本組成物中に存在する場合、少なくとも1種のワックスは、約0.01-約30重量%、約0.02-約25重量%、典型的には約0.03-15重量%、好ましくは約0.05-約5重量%の範囲(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含み、また、全ての重量は組成物全体の重量を基準とする)の量で存在する。
【0229】
顔料
本発明の化粧品組成物はまた、顔料又は染料など、少なくとも1種の化粧品的に許容される着色剤を含有してもよい。適切な顔料の例には無機顔料、有機顔料、レーキ、真珠光沢顔料、虹色顔料又は光学的可変顔料及びその混合物が含まれるが、これらに限定されない。顔料は、無機又は有機、白色又は着色粒子を意味すると解されるものとする。前記顔料は、本発明の範囲内で任意選択的に表面処理されてもよいが、シリコーン、ペルフルオロ化合物、レシチン及びアミノ酸等の処理に限定されない。
【0230】
本発明において有用な無機顔料の代表的な例には、カラーインデックスで参照符号CI 77,891でコード化されているルチル形又はアナタース形二酸化チタン;参照符号CI 77,499,77,492及び77,491でコード化されている黒、黄、赤及び褐色の酸化鉄;マンガンバイオレット(CI 77,742);ウルトラマリンブルー(CI 77,007);酸化クロム(CI 77,288);クロム水和物(CI 77,289);及びフェリックブルー(CI 77,510)、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0231】
本発明において有用な有機顔料及びレーキの代表的な例にはD&Cレッド No.19(CI 45,170)、D&Cレッド No.9(CI 15,585)、D&Cレッド No.21(CI 45,380)、D&Cオレンジ No.4(CI 15,510)、D&Cオレンジ No.5(CI 45,370)、D&Cレッド No.27(CI 45,410)、D&Cレッド No.13(CI 15,630)、D&Cレッド No.7(CI 15,850)、D&Cレッド No.6(CI 15,850)、D&Cイエロー No.5(CI 19,140)、D&Cレッド No.36(CI 12,085)、D&Cオレンジ No.10(CI 45,425)、D&Cイエロー No.6(CI 15,985)、D&Cレッド No.30(CI 73,360)、D&Cレッド No.3(CI 45,430)及びコチニールカルミンをベースとする染料又はレーキ(CI 75,570)、並びにその混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0232】
本発明において有用な真珠光沢顔料の代表例には、例えば酸化チタンでコーティングされた雲母、二酸化チタンでコーティングされた雲母、オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化チタンなどの白色真珠光沢顔料;例えば酸化鉄を有するチタン雲母、フェリックブルーを有するチタン雲母、酸化クロム及び同類のもの、上記の種類の有機顔料を有するチタン雲母などの着色真珠光沢顔料;並びにオキシ塩化ビスマスをベースとするもの、並びにこれらの混合物からなる群より選択されるものが含まれる。
【0233】
本発明の組成物に使用される着色剤の正確な量及び種類は化粧品組成物の色、強度及び用途に依存し、結果として、化粧品処方の分野の当業者によって決定されるであろう。とはいえ、本発明における使用のための着色剤の1つの好ましい量は、組成物の重量を基準にして、約0.5%-約15%、典型的には約1.5%-約12%、最も典型的には約2%-約10%である。
【0234】
フィラー
本発明の組成物中で使用され得るフィラーには、例えば、シリカ粉末;タルク;ポリアミド粒子、特にAtochem社からOrgasolの名称で販売されているもの;ポリエチレン粉末;ダウコーニング社によりPolytrapの名称で販売されているエチレングリコールジメタクリレート/ラウリルメタクリレートコポリマーをベースとするものなど、アクリルコポリマーをベースとするミクロスフェア;中空ミクロスフィアなどの膨張粉末、特にKemanord Plast社によりExpancelの名称で、又はマツモト社によりMicropearl F 80 EDの名称で販売されているミクロスフィア;National Starch社によりDry-Floの名称で販売されている、コハク酸オクテニル無水物で架橋されたデンプンの粉末などの架橋若しくは非架橋コーンスターチ、小麦デンプン又は米デンプンといった天然有機材料の粉末;東芝シリコーン社によりTospearlの名称で販売されているもののようなシリコーン樹脂マイクロビーズ;粘土(ベントン、ラポナイト、サポナイト等);及びこれらの混合物が含まれる。
【0235】
これらのフィラーは、本発明の組成物中に、約0.1-約50重量%、例えば0.5-約30重量%、例えば約1-約20重量%の量で存在する(全ての重量は組成物全体の重量を基準とする)。
【0236】
本発明によれば、疎水性シリカエーロゲルが特に有用である。
【0237】
シリカエーロゲルは、シリカゲルの液体成分を空気で置き換えることによって(乾燥によって)得られる多孔質材料である。それは一般に、液体媒体中でゾル-ゲル法によって合成され、その後、通常超臨界流体の抽出によって乾燥され、最も一般的に使用されるものは超臨界C0である。この種の乾燥は、孔及び材料の収縮を回避することを可能にする。ゾル-ゲル法及び種々の乾燥法は、Brinker CJ.,及びScherer G.W.,Sol-Gel Science:New York:Academic Press,1990に詳しく記載されている。シリカエーロゲルは一般に、米国特許第9320689号に開示されており、この全内容は参照により本明細書に援用される。
【0238】
本発明で使用することができる疎水性シリカエーロゲルとして挙げることができる例には、ダウコーニング社によってVM-2260(INCI名:シリカシリレート)の名称で販売されているエアロゲルが含まれ、この粒子は、約1000ミクロンの平均サイズ及び600-800m/gの範囲の質量単位当たりの比表面積を有する。
【0239】
AEROGEL TLD 201、AEROGEL OGD 201、AEROGEL TLD 203、ENOVA(登録商標) AEROGEL MT 1100、ENOVA AEROGEL MT 1200のリファレンスでCabot社によって販売されているエアロゲルもまた挙げることができる。
【0240】
ダウコーニング社によりVM-2270 (INCI名:シリカシリレート)の名称で販売されているエアロゲルが特に使用され、この粒子は、5-15μの範囲の平均サイズ及び600-800m/gの範囲の質量単位当たりの比表面積を有する。
【0241】
シリカエーロゲル粒子は、本発明の組成物中で、0.1-約8重量%、好ましくは0.25-6重量%、さらにより好ましくは0.5-4重量%(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含み、全ての重量は組成物の全重量に基づく)で使用することができる。
【0242】
添加剤
本発明の組成物は、少なくとも1種の化粧品的又は皮膚科学的に許容される添加剤、例えば追加の増粘剤、追加の塗膜形成体、可塑剤、酸化防止剤、エッセンシャルオイル、植物抽出物、芳香剤、保存料、フレグランス、ペースト状脂肪物質、中和剤及びポリマー、並びに化粧品活性剤及び/又は皮膚科学的活性剤、例えば皮膚軟化剤、保湿剤、ビタミン、必須脂肪酸及び医薬品等をさらに含み得る。
【0243】
本発明によれば添加剤は、約0.02%-約2%、好ましくは約0.1%-約1.5%、さらにより好ましくは約0.3%-約1%配合される。
【実施例
【0244】
本発明は、以下の実施例からよりよく理解されるであろう。これらの実施例は、特許請求の範囲で規定された本発明の範囲について、非制限的かつ説明的であることのみを意図している。
【0245】
本発明の組成物の調製方法
顔料、イソドデカン及びMQ樹脂の混合物を粉砕して顔料ペーストを作製した。ペーストがヘグマンゲージ試験(ASTM D1210-05)に合格するまで、Disconti Millを使用してブレンドを加工した。その後、残った成分にペーストの粉砕を加えた。均質な液体組成物が得られるまで、混合物を80℃に加熱し、攪拌した。その後、本発明の組成物を室温まで冷却し、所望の容器及び/又はアプリケーターに移した。
【0246】
本発明の組成物の評価:方法及び試験結果
本発明の組成物を、コントロール及び比較組成物との比較で、粘着性及び剥離について試験した。試験製品は、それぞれ5回試験した。試験方法を以下に記載する。
【0247】
タック試験
3ミルのドローダウンバー及び自動ドローダウン装置(Automatic Drawdown Machine)を使用して、各処方の塗膜をコントラストカードの上に付着させた。塗膜を室温(25℃)で一晩乾燥させ、ボールプローブを備えたテクスチャーアナライザーを用いて分析した。10秒間350gの力を加えた後、タック力(tack force)を測定した。その後、粘着性の値を試験製品のつけ心地の良さと相関させた。粘着性が100gr/力より高い値を有する試料は、非常に不快なつけ心地であると考えられた。50-100gr/力のタック値は中程度のつけ心地を示し、50gr/力未満の値を有するものは、つけ心地が良いと考えらえた。
【0248】
剥離試験
さらに、試料を耐剥離性について試験した。3ミルのドローダウンバーを使用して、試験した全ての組成物の試料をセラバンド(登録商標)の中強度の抵抗運動バンド(7x5cm)の表面に付着させた。試料を室温(25℃)で4時間乾燥させ、その後それらを30cmの長さに引張した。各試料について引張を10回繰り返した。引張プロセス中、乾燥試料の剥離が観察され、試験製品の持ちの良さと相関していた。試料の剥離の程度を定義するために、次の4段階評価尺度を用いた:0-剥離なし(非常に持ちが良い)、1-少ない剥離(持ちが良い)、2-中程度の剥離(中程度/許容可能な持ち)、3-多量の剥離(持ちが悪い)。
【0249】
表1 - DC 8040シリコーンエラストマー(18%活性)含有口唇用組成物
DC 8040シリコーンエラストマーと1000cStのジメチコンとを含有する液状口唇用製品の本発明組成物を以下の表1の例によって示すが、これらに限定されるものではない。
【0250】
18%の活性成分を含有するシリコーンエラストマーのジメチコンオイルに対する比率の最も高い本発明の組成物が最も粘着性が低く、非常に優れた快適性を示し、中程度の剥離(これは持ちが良いと考えられることを意味する)を有することが観察された。同じシリコーンエラストマーのジメチコン流体に対する比率がより低い本発明の配合物は、粘着性の増加(快適性の低下)及び剥離の改善(持ちの改善)によって特徴付けられた。ジメチコンオイルを含まないコントロール試料の粘着性は非常に高く(これはつけ心地が非常に悪かったことを意味する)、フレーク状態は全く示されなかった。
【0251】
表2 - DC 9140 DM シリコーンエラストマー(14%活性)含有口唇用組成物
DC 9140 DMシリコーンエラストマーと1000cStのジメチコンとを含有する液状口唇用組成物の本発明組成物を以下の表2の例によって示すが、これらに限定されるものではない。
【0252】
表2に示される結果のとおり、シリコーンエラストマー(14%の活性成分含有)のジメチコンオイルに対する最も高い比率を有する本発明の試料は、最も低い粘着性によって特徴付けられ、非常に優れた快適性を提供した。これらの試料は剥離しなかったが、これはそれらが非常に優れた持ちの良さを証明していることを意味する。同じシリコーンエラストマーのジメチコンに対する比が最も低い本発明の配合物は、粘着性と剥離の双方が増した。コントロール試料の粘着性が非常に高く、かつ、剥離はなかった。それは、ジメチコンが存在しないことによって、持ちは改善されたと思われるものの、つけ心地の悪さを有意に増大させたことを示している。
【0253】
上記の表に示された結果によると、ジメチコンオイルが存在しないことはタックを有意に増加させた。さらに、シリコーンエラストマーブレンド中の活性成分の濃度の低下と高粘度を有するジメチコンオイルの増加が、粘着性の低下を引き起こした。提供した実施例のように、シリコーンエラストマー活性成分のジメチコンオイルに対する比が約1:0.05-約1:5である本発明の口唇用液状組成物は、つけ心地が非常に快適で、剥離も最小限であるか又は全くない(持ちが良い)と考えられた。
【0254】
本発明のアプリケーターと組み合わせた本発明の組成物の独自の有効性を決定するために、本発明のシステムをコントロールアプリケーターと本発明の組成物とのシステムと比較して試験した。本発明のアプリケーターの使用によって送達された本発明組成物の付着物の厚さ及び均一性を、コントロールアプリケーターA、B、C、D、E(上記のとおり)によって提供される本発明の組成物の製品分布と比較した。
【0255】
試験は、以下に記載のとおり、in vitro及びin vivo法で行われた。
【0256】
in vivo評価は、以下の記載のとおりに行われた。
1. 化学天秤を使用して、ポリウレタン基材(白色バイオスキンプレート、レギュラー;サイズ3cmx6cm)を秤量した。
2. 各試験アプリケーターを使用して、バイオスキンの白色の表面が均一に覆われるまで、本発明の液状口唇用組成物をバイオスキン基材上に塗布した。試験したアプリケーターと本発明の組成物との各組み合わせについて、2つの試料を調製した。
3. 各バイオスキン試料に塗布した口唇用組成物の量を決定するために、処理したバイオスキンの重量を測定し、次に未処理のバイオスキン基材の重量を引いた、口紅で処理したバイオスキンの重量を差し引くことによって、塗布した口唇用製品の量を計算した。
4. その後、周囲条件(25℃、相対湿度35%)で試料を5時間乾燥させ、残りの製品の量を上記の手順に従って計算した。
【0257】
【0258】
【0259】
上記の結果のとおり、本発明のアプリケーター(F)は、コントロールと比較して、最少量の本発明の製品を送達した。これは、製品の塗布直後及び周囲条件での5時間の乾燥後に観察された。前述のとおり、製品の量が少ないほど、処理した基材表面上の塗膜が薄くなる。それは、つけた製品の粘着性の低下と経時的な剥離に関係している。
【0260】
以下の記載のとおりに、in vivo評価を行った。
1. 中型の唇を有する4名のパネリストが試験に参加した。パネリストらはそれぞれ、評価試料を2回試験した。パネリストらは、自身の口唇用製品塗布テクニックに従って、自身の唇に口紅を塗るように指示された。試験は3日間にわたって実施され、試料は参加者間でランダム化した。
2. 塗布した製品の量を決定するために、試験アプリケーターと本発明の組成物とを備えた容器を、製品塗布の前後に秤量した。塗布した製品の量は、容器の初期重量と塗布後の重量との差を計算することによって決定された。
【0261】
【0262】
表5に示した結果は、本発明のアプリケーターを使用することにより、最少量の本発明の組成物を塗布することが可能になったことを示している。これらの結果は、in vitro研究と相関する。消費者のフィードバックによると、本発明の組成物と本発明のアプリケーターとのシステムで処理した唇の感触は、非常に快適でベタつかなかったということである。また、塗りは非常に均一で美的であった。
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