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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240607BHJP
   F25B 41/35 20210101ALI20240607BHJP
   F25B 41/31 20210101ALI20240607BHJP
【FI】
F16K31/04 K
F25B41/35
F25B41/31
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020047604
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148182
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】竹田 剛
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-89870(JP,A)
【文献】特開2013-224708(JP,A)
【文献】特開平9-217853(JP,A)
【文献】特開2012-172839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
F25B 41/35
F25B 41/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室及び弁座部を構成する弁本体と、前記弁座部と軸線方向で接離して弁ポートの開度を変更する弁体と、回転軸を進退駆動させる駆動部と、前記弁体と前記回転軸とに亘る弁ホルダと、弁閉方向に弁体を付勢する弁ばねと、を備えた電動弁であって、
前記弁体及び前記回転軸の少なくとも一方は、前記弁ホルダに回転自在に挿通される軸部を有し、前記軸部と前記弁ホルダとの間に転がり軸受を備え、
前記転がり軸受と、前記軸部及び前記弁ホルダの少なくとも一方と、の間には、径方向の隙間が設けられており、前記軸部と前記弁ホルダとは、前記径方向に相対変位可能に接続され、
前記転がり軸受は、前記軸部及び前記弁ホルダの少なくとも一方に対し、前記軸線方向に移動可能な隙間を介して設けられ
前記軸部と前記弁ホルダとは、前記軸線方向に移動可能な前記隙間を介して前記軸線方向に相対変位可能に接続されていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記軸部は、前記弁体のロッド軸であることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記軸部は、前記回転軸の先端部であることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項4】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~3のいずれか1項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムなどに使用する電動弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステッピングモータなどの回転駆動部によってロータ軸などの回転軸を回転駆動し、この回転軸の回転運動をねじ送り機構によって直線運動に変換し、弁を開閉する電動弁が利用されている(例えば、特許文献1,2等を参照)。この種の電動弁では、弁体の供回りと、弁体の弁座部への過度の押付けと、を抑制して、弁の着座による耐久性を向上させるために、弁体とねじ送り機構との間に、軸受と、弁ばねと、が内蔵された弁ホルダが設けられている。このような弁ホルダに内蔵される軸受には、転がり軸受と、滑り軸受の2種類があるが、転がり軸受の方が、回転負荷が小さく、回転駆動部の必要な出力が小さくて済む高効率な電動弁となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6472637号公報
【文献】中国実用新案登録第208519284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に開示されたような従来の電動弁にあっては、弁漏れを低減させるために、弁体と弁座とが同軸上に位置した状態で着座させる必要があるが、部品製造時における部品の寸法公差、組立時における組立公差などに起因する寸法誤差のばらつきにより、図11に示すように、弁体95と弁座96(弁ポート97)の芯ずれが生じて弁漏れの可能性を排除することが困難であるという問題があった。すなわち、特許文献1の構造では、図11に示すように、弁軸91の先端とバネ受け92とは、弁ばね93の荷重を受けて互いに当接しており、さらに弁ばね93の下端は、弁ガイド94に固着された弁体95と直接当接しているので、弁体95が着座した時に弁体95の軸心L´と弁座部96の弁ポート97の軸心Lとのずれを補正しにくく、弁漏れが生じやすい。また、特許文献2の構造では、転がり軸受がねじ軸と弁体の収容溝との間に、径方向のわずかな隙間で収容され、径方向の自由度が殆ど無いため、弁体の軸心を弁座の軸心に合わせるように補正することができないため、弁漏れが生じやすい。
【0005】
本発明の目的は、高効率化を図りつつ、弁漏れを抑制することができる電動弁及び冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、弁室及び弁座部を構成する弁本体と、前記弁座部と軸線方向で接離して弁ポートの開度を変更する弁体と、回転軸を進退駆動させる駆動部と、前記弁体と前記回転軸とに亘る弁ホルダと、弁閉方向に弁体を付勢する弁ばねと、を備えた電動弁であって、前記弁体及び前記回転軸の少なくとも一方は、前記弁ホルダに回転自在に挿通される軸部を有し、前記軸部と前記弁ホルダとの間に転がり軸受を備え、前記転がり軸受と、前記軸部及び前記弁ホルダの少なくとも一方と、の間には、径方向の隙間が設けられており、前記軸部と前記弁ホルダとは、前記径方向に相対変位可能に接続され、前記転がり軸受は、前記軸部及び前記弁ホルダの少なくとも一方に対し、前記軸線方向に移動可能な隙間を介して設けられていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、弁体又は回転軸の軸部と弁ホルダとを相対回転可能に接続する軸受に転がり軸受を用いるので、高効率とすることができる。さらに、転がり軸受と、軸部及び弁ホルダの少なくとも一方と、の間には、径方向の隙間が設けられており、軸部と弁ホルダとは、径方向に相対変位可能に接続されているので、弁体が弁座部に着座する際、軸部と弁ホルダとは隙間の範囲内だけ径方向に相対変位し、弁座部に対して同軸上に弁体を着座させることができ、弁漏れを低減させることができる。
【0008】
この際、記軸部と前記弁ホルダとは、前記軸線方向に移動可能な前記隙間を介して前記軸線方向に相対変位可能に接続されていることが好ましい。
【0009】
以上のような構成では、弁閉時に、弁ばねの収縮により弁体へ適切な押し付け荷重を与えるため、回転軸は弁体を着座位置よりもさらに下降させようとするが、弁体が弁座部に着座する際、軸部と弁ホルダとが、軸線方向に相対変位することによって、軸部と弁ホルダが軸線方向の隙間分自由となるため、弁体に力が加わらない。これにより、回転軸の軸線と弁座(弁口)の軸線とがずれていても、軸部と弁ホルダとが、大きな摺動抵抗なしに径方向及び軸線方向に相対変位することが可能になるため、弁座部に対して同軸上に弁体を着座させることができ、弁漏れを低減させることができる。
【0010】
また、前記軸部は、前記弁体のロッド軸であることが好ましい。また、前記軸部は、前記回転軸の先端部であることが好ましい。
【0011】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、前記いずれかの電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。
【0012】
このような本発明によれば、上記したように、本発明の電動弁は、高効率化を図りつつ、弁漏れを抑制することができるので、運転時に、省エネであり、且つ、不具合が生じ難い冷凍サイクルシステムとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動弁および冷凍サイクルシステムによれば、高効率化を図りつつ、弁漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
図2】前記電動弁の弁開時における要部を示す縦断面図である。
図3】前記電動弁の弁体と弁座との当接時における要部を示す縦断面図である。
図4】前記電動弁の着座時における要部を示す縦断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る電動弁の要部を示す縦断面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る電動弁の弁開時における要部を示す縦断面図である。
図7】前記第3実施形態の電動弁の弁体と弁座との当接時における要部を示す縦断面図である。
図8】前記第3実施形態の前記電動弁の着座時における要部を示す縦断面図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る電動弁の要部を示す縦断面図である。
図10】本発明の冷凍サイクルシステムの一例を示す図である。
図11】従来の電動弁の要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施形態に係る電動弁を図1図4に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の電動弁10は、弁本体1と、弁体2と、弁ホルダ6と、駆動部としてのステッピングモータ3と、を備えている。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1の図面における上下に対応する。
【0016】
弁本体1は、筒状の弁ハウジング部材1Aと、弁ハウジング部材1Aの上端開口部に固定される支持部材5と、を有している。
【0017】
弁ハウジング部材1Aは、その内部に略円筒状の弁室1Cが形成され、側面側から弁室1Cに連通する第1の継手管11が取り付けられている。また、弁ハウジング部材1Aには、底面側から略円筒状の弁座部材15が挿入され、ろう付けにより固定される弁座部材15によって弁座部13が構成されている。弁座部13には、弁口である弁ポート14が形成されている。さらに、弁ハウジング部材1Aの底面側には、弁座部材15の内側面の下端部となだらかに連続するように、第2の継手管12が、弁ハウジング部材1Aの底部にろう付けにより固定されている。第1の継手管11から流体としての冷媒が流入した場合には、弁室1Cを介して弁ポート14を通過した冷媒が第2の継手管12から流出される。また、第2の継手管12から冷媒が流入した場合には、弁ポート14を介して弁室1Cを通過した冷媒が第1の継手管11から流出される。
【0018】
支持部材5は、弁ハウジング部材1Aの上端開口部に固定金具41を介して溶接固定されている。この支持部材5の上側の中心には、弁ポート14等の軸線Lと同軸に形成された雌ねじ部5aが設けられており、下方に雌ねじ部5aの外周よりも径の大きな円筒状のガイド孔5cが形成されている。
【0019】
弁体2は、下側先端にニードル部21が設けられた軸部としてのロッド軸22を有している。ロッド軸22は、上部の縮径部22aと下部の拡径部22bとから成り、その上端部には、フランジ部23が形成されている。ロッド軸22の外周面側には、転がり軸受8(後述)が配設され、ロッド軸22の上端部が拡大されたフランジ部23によって転がり軸受8が抜け止めされている。
【0020】
ステッピングモータ3は、キャン4と、キャン4内に設けられたマグネットロータ31と、ロータ軸32と、不図示のステータコイルと、ステッピングモータ3の回転ストッパ機構7と、を有している。
【0021】
キャン4は、弁ハウジング1Aの上端に溶接などによって気密に固定され、支持部材5、後述するマグネットロータ31及び回転ストッパ機構7を収納している。マグネットロータ31は、その外周部が多極に着磁されており、その中心にロータ軸32が固定されている。ロータ軸32は、その下端部が、弁ホルダ6及び転がり軸受8を介して、弁体2のロッド軸22と連結されている。また、ロータ軸32は、その中間部の上側表面に雄ねじ部32aが形成されている。この雄ねじ部32aは、支持部材5の雌ねじ部5aに螺合され、これらの雄ねじ部32a及び雌ねじ部5aによって、駆動部のねじ送り機構16が構成されている。ねじ送り機構16は、ステッピングモータ3の回転運動をロータ軸32直線運動に変換し、これにより弁体2が軸線L方向に進退駆動されるようになっている。ステータコイルは、キャン4の外周に配設されており、このステータコイルにパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ31が回転されてロータ軸32が回転するようになっている。
【0022】
ステッピングモータ3の回転ストッパ機構7は、キャン4の天井部にガイド支持体7Aが固定され、ガイド支持体7Aには、キャン4の天井部の中心から軸心に沿って垂下された円筒状のガイド76と、ガイド76の外周に固定された螺旋ガイド77と、螺旋ガイド77にガイドされて回転かつ上下動可能な可動スライダ78と、を備えている。可動スライダ78には、径方向外側に突出した爪部78aが設けられ、マグネットロータ31には、上方に延びて爪部78aと当接する延長部31aが設けられ、マグネットロータ31が回転すると、延長部31aが爪部78aを押すことで、可動スライダ78が螺旋ガイド77に倣って回転かつ上下するようになっている。また、円筒状のガイド76内部にはロータ軸32の上部をガイドする筒部材7Bが嵌合されている。
【0023】
螺旋ガイド77には、マグネットロータ31の最上端位置を規定する上端ストッパ77aと、マグネットロータ31の最下端位置を規定する下端ストッパ77bと、が形成されている。マグネットロータ31の正回転に伴って下降した可動スライダ78が下端ストッパ77bに当接すると、この当接した位置で可動スライダ78が回転不能となり、これによりマグネットロータ31の回転が規制され、弁体2の下降も停止される。一方、マグネットロータ31の逆回転に伴って上昇した可動スライダ78が上端ストッパ77aに当接すると、この当接した位置で可動スライダ78が回転不能となり、これによりマグネットロータ31の回転が規制され、弁体2の上昇も停止される。
【0024】
図2に示すように、弁ホルダ6は、筒状のホルダ本体61の上面部中央に、ロータ軸32の下側先端部を挿通させる挿通孔61aを有し、ロータ軸32の下側先端部と相対回転可能に係合されている。また、ロータ軸32の下側先端部には、鍔部32bが設けられており、ホルダ本体61内から抜けないようになっている。ロータ軸32の鍔部32bの下面には弁ばね9の上端が当接されている。転がり軸受8は、弁体2のロッド軸22の縮径部22aの外周面側に配設されるリング状の第1部材81と、複数個の転動部材としての鋼球8aを介して接続されるリング状の第2部材82と、を有したベアリングによって構成されている。この転がり軸受8は、第2部材82が弁ばね9で付勢され、第2部材82の下端部がホルダ本体61の下端部(圧入部材63)に当接するようになっている。弁ホルダ6は、ホルダ本体61の下面中央に挿通孔61bを有し、弁体2のロッド軸22の拡径部22bが挿通孔61bに挿通されている。また、挿通孔61bには、図1に示すように、リング状の圧入部材63が圧入され、この圧入部材63によって弁ホルダ6からの弁体2及び転がり軸受8の抜け止めがされている。なお、ここでは、ホルダ本体61の下端部を圧入部材63を圧入したものを例示したが、これに代わりホルダ本体61の下端部にリング状の部材(止め輪等)を溶接や、かしめ等で固定してもよく、転がり軸受8の抜け止めが可能な構造であればこれらに限らない。
【0025】
さらに、転がり軸受8内側の第1部材81と、弁体2におけるロッド軸22の縮径部22aとの間には、ロッド軸22の径方向の隙間C1が設けられている。また、転がり軸受8の下側面と、弁体2におけるロッド軸22の拡径部22bとの間には、軸線方向Lの隙間C2が設けられている。
【0026】
図2に示すように、弁開時においては、弁体2の軸線L´の位置は、例えば、弁座部13の軸線Lの位置よりも左側にずれている。着座状態にするために、ステッピングモータ3の駆動によって弁体2が下降し、図3に示すように、ニードル部21が弁座部13に当接したときは、まだ弁体2の軸線L´は弁座部13(弁ポート14)の軸線Lの位置よりも左側にずれた状態で、ニードル部21の左側が弁座部13の左側に片当たりしている。この時、弁体2の弁座13との当接部には矢印のような力(径方向には右方向の力、軸線L方向には上方向の力)が働く。さらにロータ軸32が下降すると、弁体2は弁ホルダ6に対し相対的に軸線L方向で隙間C2を縮めるように上側に変位しながら、径方向のずれを正すように、径方向の隙間C1がある右側に変位し、回転ストッパ機構7が働いた着座時においては、図4に示すように、弁体2は、弁開時と比較して弁ホルダ6に対して相対的に右上に移動し、弁体2と弁ポート14とが同軸上に位置することで、ニードル部21は弁ポート14の上端開口部(弁座部13)の全周に着座する。
【0027】
以上の本実施形態によれば、弁体2のロッド軸22と弁ホルダ6とを相対回転可能に接続する軸受に転がり軸受8を用いるので、弁閉時における弁体2の供回りを抑制でき、弁体2と弁座13との間の摺動抵抗による回転負荷が小さくなるため、高効率な作動とすることができる。さらに、転がり軸受8と、弁体2のロッド軸22と、の間には、径方向の隙間C1が設けられており、ロッド軸22と弁ホルダ6とは、径方向に相対変位可能に接続されているので、弁体2が弁座部13に着座する際、ロッド軸22と弁ホルダ6のホルダ本体61とは隙間C1の範囲内だけ径方向に相対変位し、弁座部13に対して同軸上に弁体2を着座させることができ、弁漏れを低減させることができる。
【0028】
また、転がり軸受8と、弁体2のロッド軸22と、の間には、軸線L方向に隙間C2が設けられているので、弁体2が弁座と当接後にロータ軸32がさらに下降するとき、弁体2が着座部13に着座する際、ロッド軸22と弁ホルダ6とが、軸線L方向に相対変位することによって、ロッド軸22のフランジ部23の下面と転がり軸受8の第1部材81の上面が離れて、弁体2が軸線L方向の隙間分だけ自由となるため、ロータ軸32の軸線L´と弁ポート14の軸線Lとがずれていても、ロッド軸22と弁ホルダ6とが、径方向及び軸線L方向に相対変位することによって、弁座部13に対して同軸上に弁体2を着座させることができ、弁漏れを低減させることができる。 なお、軸線L´が、軸線Lに対して図示とは逆の右側に傾斜している場合は、弁体2は、弁体2が着座部13に着座する際、隙間C1,C2がある左上の位置に変位する。
【0029】
次に、図5に基づき、本発明の第2実施形態に係る電動弁について説明する。本実施形態の電動弁は、第1実施形態の電動弁10と同様に、弁本体1と、弁体2と、弁ホルダ6と、駆動部としてのステッピングモータ3と、を備えている。本実施形態の電動弁では、弁ホルダ6の一部構成が第1実施形態の電動弁10と相違している。以下、相違点について詳しく説明する。
【0030】
本実施形態の電動弁では、ロータ軸32の下端部に鍔部32bがなく、弁ホルダ6のホルダ本体61の上側の挿通孔61aもなく、ロータ軸32の下端部と、ホルダ本体61の上面の中心部とが一体的に連結され、ホルダ本体61の円筒内部の天井面に弁ばね9の上端 が当接している点が第1実施形態の電動弁10と相違している。なお、ロータ軸32とホルダ本体61とは、一体的に連結されたものに限らず、別体で形成されて適宜な取り付け手段によって取り付けられていてもよい。
【0031】
以上の本実施形態の電動弁においても、弁体2の軸心と弁座部13の軸線とのずれに対する補正については第1実施形態と同様な効果が得られる。これに加え、弁ホルダ6においては、ロータ軸32の下端部と弁ホルダ6のホルダ本体61とが一体的に形成されているので、第1実施形態の電動弁10よりも、構成の簡易化を図ることができる。
【0032】
次に、図6図8に基づき、本発明の第3実施形態に係る電動弁について説明する。本実施形態の電動弁は、第1実施形態の電動弁10と同様に、弁本体1と、弁体2と、弁ホルダ6と、駆動部としてのステッピングモータ3と、を備えている。本実施形態の電動弁では、弁体2、弁ホルダ6、ロータ軸32の構成が第1実施形態の電動弁10と相違している。以下、相違点について詳しく説明する。
【0033】
本実施形態の電動弁において、図6に示すように、転がり軸受8は、ホルダ本体61内において、軸部としてのロータ軸32の下側先端部における下側鍔部32bと上側鍔部32dとの間の縮径部32cの外周部に、第1部材81が取り付けられている。また、転がり軸受8の第2部材82とホルダ本体61の内側面との間に、ロータ軸32の径方向の隙間C1が設けられている。さらに、ホルダ本体61の内側面中間部には、リング状の突出部64が設けられており、この突出部64と転がり軸受8の下面との間には、軸線L方向の隙間C2が設けられている。また、突出部64の下面には弁ばね9の上端が当接している。
【0034】
図6に示すように、弁開時においては、ロータ軸32の軸線L´の位置は、例えば、弁座部13の軸線Lの位置よりも左側にずれている。着座状態にするために、ステッピングモータ3の駆動によって弁体2が下降し、図7に示すように、ニードル部21が弁座部13に当接したときは、まだ弁体2の軸線L´は弁座部13(弁ポート14)の軸線Lの位置よりも左側にずれた状態で、ニードル部21の左側が弁座部13の左側に片当たりしている。この時、弁体2の弁座13との当接部には矢印のような力(径方向には右方向の力、軸線L方向には上方向の力)が働くとともに、弁ホルダ6には矢印のような径方向に右側の力が働く。さらにロータ軸32が下降すると、弁体2と弁ばね9によって軸線L方向に支持されたホルダ本体61の天井面と転がり軸受8の第2部材82の上端面とが離れ、ロータ軸32及び転がり軸受8に対し相対的に弁体2及び弁ホルダ6が径方向の右方向に、軸線L方向の上方向に移動することで、ホルダ本体61が、軸線L方向で隙間C2を縮めるように上側に変位しながら、弁体2の軸線L´と弁座13の軸線Lの径方向のずれが無くなるように、径方向の隙間C2がある右側に変位し、回転ストッパ機構7が働いた着座時においては、図8に示すように、ロータ軸32の下端部は、弁開時と比較して弁ホルダ6に対して相対的に左下に移動し、弁体2と弁ポート14とが同軸上に位置している。
【0035】
以上の本実施形態によれば、ロータ軸32と弁ホルダ6とを相対回転可能に接続する軸受に転がり軸受8を用いるので、弁閉時における弁体2の供回りを抑制でき、弁体2と弁座13との間の摺動抵抗による回転負荷が小さくなるため、高効率な作動とすることができる。さらに、転がり軸受8と、ロータ軸32の縮径部32cと、の間には、径方向の隙間C1が設けられており、ロータ軸32と弁ホルダ6とは、径方向に相対変位可能に接続されているので、弁体2が着座部13に着座する際、ロータ軸32と弁ホルダ6のホルダ本体61とは隙間C1の範囲内だけ径方向に相対変位し、弁座部13に対して同軸上に弁体2を着座させることができ、弁漏れを低減させることができる。
【0036】
また、弁体2と弁座部13との当接後、さらにロータ軸32が下降して、弁体2が弁座部13に着座する際、ロータ軸32の軸線L´と弁ポート14の軸線Lとがずれていても、ロータ軸32と弁ホルダ6とが、径方向及び軸線L方向に相対変位することによって、弁座部13に対して同軸上に弁体2を着座させることができ、ニードル部21が弁ポート14の上部開口端(弁座部13)の全周に当接して弁漏れを低減させることができる。なお、軸線L´が、軸線Lに対して図示とは逆の右側にずれている場合は、ロータ軸32は、弁体2が着座部13に着座する際、隙間C1,C2がある右下の位置に変位する。なお、図6図8の実施形態では、転がり軸受8の第1部材81とロータ軸32との取付状態として、第1部材81とロータ軸32の下側鍔部32b及び上側鍔部32dとの間において、ロータ軸32の軸線L´方向に隙間を設けたものを例示したが、転がり軸受8の第1部材81とロータ軸32の下側鍔部32b及び上側鍔部32dとの間に軸線L´方向に隙間が無くとも、ホルダ本体61の突出部64と転がり軸受8の下面との間には、軸線L方向の隙間が設けられていることから、上述の効果が得られることは自明である。
【0037】
次に、図9に基づき、本発明の第3実施形態に係る電動弁について説明する。本実施形態の電動弁は、第1実施形態の電動弁10と同様に、弁本体1と、弁体2と、弁ホルダ6と、駆動部としてのステッピングモータ3と、を備えている。本実施形態の電動弁では、弁ホルダ6の一部構成が第1実施形態の電動弁10と相違している。以下、相違点について詳しく説明する。
【0038】
本実施形態の電動弁では、ロータ軸32の下端部に鍔部32bがなく、弁ホルダ6のホルダ本体61の上側の挿通孔61aもなく、ロータ軸32の下端部と、ホルダ本体61の上面の中心部とが一体的に形成されており、さらに、弁体2のロッド軸22の下側の大部分が、ホルダ本体61の外部に位置して設けられている。転がり軸受8は、その第2部材82がホルダ本体61の内側に固定されている。弁ばね9は、弁体2のニードル部21とロッド軸22の途中に挿通したリング状のばね受部材2aとの間に圧縮状態で設けられ、ばね受2aに対して弁体2が下向きに付勢されている。弁体2のロッド軸22は、転がり軸受8の第1部材81に挿通され、弁体2は軸線方向Lに沿って変位可能に支持されている。さらに、ロッド軸22の径方向の隙間C1は、ロッド軸22と転がり軸受8の第1部材81との間に設けられている。また、ロッド軸22の軸線L方向の隙間C2は、転がり軸受8の下面とばね受2aの上面との間に設けられている。なお、ばね受部材2aは、弁体2と別部材とせずに、一体的に形成してもよい。
【0039】
以上の本実施形態の電動弁においても、弁体2の軸心と弁座部13の軸線のずれに対する補正については第1実施形態と同様な効果が得られる。これに加え、弁ホルダ6においては、第2実施形態の電動弁と同様、ロータ軸32の下端部と弁ホルダ6のホルダ本体61とが一体的に形成されていることで、第1実施形態の電動弁10よりも、この部分の構成の簡易化を図ることができる。
【0040】
次に、本発明の冷凍サイクルシステムを図8に基づいて説明する。図8は、本発明の冷凍サイクルシステムの一例を示す図である。図8において、符号100は前記各実施形態の電動弁10を用いた膨張弁であり、200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。電動弁100、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、および圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
【0041】
冷凍サイクルの流路は、流路切換弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、図8に実線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された液冷媒は膨張弁100を介して室内熱交換器300に流入され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
【0042】
一方、暖房運転時には、図8に破線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室内熱交換器300、膨張弁100、室外熱交換器200、流路切換弁400、そして、圧縮機500の順に循環され、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外熱交換器200が蒸発器として機能する。膨張弁100は、冷房運転時に室外熱交換器200から流入する液冷媒、または暖房運転時に室内熱交換器300から流入する液冷媒を、それぞれ減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御する。なお、図7においては、冷房運転時に室外熱交換器200から液冷媒が膨張弁100の第1の継手管101に流入し、暖房運転時には、室内熱交換器300からの液冷媒が膨張弁100の第2の継手管102に流入するように冷凍サイクルに膨張弁100を設けているが、これに限らず、冷房運転時に室外熱交換器200からの液冷媒が膨張弁100の第2の継手管102に流入し、暖房運転時には室内熱交換器300からの液冷媒が膨張弁100の第1の継手管101に流入するように膨張弁100を冷凍サイクルに設けてもよい。
【0043】
以上の本発明の冷凍サイクルシステムによれば、上記したように、本実施形態の電動弁10は、高効率化を図りつつ、弁漏れを抑制することができるので、運転時に、省エネであり、且つ、不具合が生じ難い冷凍サイクルシステムとすることができる。
【0044】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態を第1~3実施形態に基づいて詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0045】
例えば、上記した第1~3実施形態では、電動弁10を、冷凍サイクルシステムの膨張弁として使用したが、これに限定されず、例えば、ビル用のマルチエアコン等の室内機側の絞り装置等、他のシステムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 電動弁
C1,C2 隙間
1 弁本体
1A 弁ハウジング部材
1C 弁室
2 弁体
2a ばね受部材
21 ニードル部
22 ロッド軸(軸部)
3 ステッピングモータ(駆動部)
6 弁ホルダ
61 ホルダ本体
62 ばね受
8 転がり軸受
81 第1部材
82 第2部材
8a 鋼球(転動部材)
9 弁ばね
13 弁座部
14 弁ポート
32 ロータ軸(回転軸、軸部)
100 膨張弁
200 室外熱交換器(凝縮器、蒸発器)
300 室内熱交換器(凝縮器、蒸発器)
400 流路切換弁
500 圧縮機
図1
図2
図3
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図5
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図11