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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】ランプユニット、車両用灯具システム
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/64 20180101AFI20240607BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240607BHJP
   F21S 41/145 20180101ALI20240607BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20240607BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20240607BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20240607BHJP
   F21V 9/14 20060101ALI20240607BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20240607BHJP
   F21W 102/14 20180101ALN20240607BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240607BHJP
【FI】
F21S41/64
G02F1/13 505
F21S41/145
F21S41/151
F21S41/153
F21S41/20
F21V9/14
F21V9/40 400
F21W102:14
F21Y115:10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020049106
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021150182
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】岩本 宜久
(72)【発明者】
【氏名】片野 邦彦
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013697(JP,A)
【文献】特開2007-102246(JP,A)
【文献】特開2009-003106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/64
G02F 1/13
F21S 41/145
F21S 41/151
F21S 41/153
F21S 41/20
F21V 9/14
F21V 9/40
F21W 102/14
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具システムに用いられるランプユニットであって、
光源と、
前記光源によって生成される光を集光する集光部材と、
前記集光部材により集光される光の焦点位置に対応して配置される液晶素子と、
前記液晶素子の光入射側に配置される第1入射側偏光板と、
前記第1入射側偏光板と前記液晶素子の間に配置される第2入射側偏光板と、
前記第2入射側偏光板と前記液晶素子の間に配置される第3入射側偏光板と、
前記液晶素子の光出射側に配置される第1出射側偏光板と、
を含み、
前記第1入射側偏光板は、透過軸と反射軸を有しており、当該透過軸に沿った偏光を透過させて当該反射軸に沿った偏光を反射する透過反射型偏光板であり、
前記第2入射側偏光板は、吸収軸に沿った光成分を吸収する吸収型偏光板であり、
前記第3入射側偏光板は、透過軸と反射軸を有しており当該透過軸に沿った偏光を透過させて当該反射軸に沿った偏光を反射する透過反射型偏光板である、
ランプユニット。
【請求項2】
前記第1出射側偏光板は、透過軸と反射軸を有しており当該透過軸に沿った偏光を透過させて当該反射軸に沿った偏光を反射する透過反射型偏光板である、
請求項1に記載のランプユニット。
【請求項3】
前記第2入射側偏光板の前記吸収軸と前記第1入射側偏光板の前記反射軸とが略平行である、
請求項1又は2に記載のランプユニット。
【請求項4】
前記第3入射側偏光板の前記反射軸と前記第2入射側偏光板の前記吸収軸とが略平行である、
請求項1に記載のランプユニット。
【請求項5】
前記第1出射側偏光板と前記液晶素子の間に配置される第2出射側偏光板を更に含み、
前記第2出射側偏光板は、吸収軸に沿った光成分を吸収する吸収型偏光板である、
請求項1~4の何れか1項に記載のランプユニット。
【請求項6】
前記第2出射側偏光板の前記吸収軸と前記第1出射側偏光板の前記反射軸とが略平行である、
請求項5に記載のランプユニット。
【請求項7】
前記第2出射側偏光板と前記液晶素子の間に配置される第3出射側偏光板を更に含み、
前記第3出射側偏光板は、透過軸と反射軸を有しており、当該透過軸に沿った偏光を透過させて当該反射軸に沿った偏光を反射する透過反射型偏光板である、
請求項5又は6に記載のランプユニット。
【請求項8】
前記第3出射側偏光板の前記反射軸と前記第2出射側偏光板の前記吸収軸とが略平行である、
請求項に記載のランプユニット。
【請求項9】
車両用灯具システムに用いられるランプユニットであって、
光源と、
前記光源によって生成される光を集光する集光部材と、
前記集光部材により集光される光の焦点位置に対応して配置される液晶素子と、
前記液晶素子の光入射側に配置される第1入射側偏光板と、
前記第1入射側偏光板と前記液晶素子の間に配置される第2入射側偏光板と、
前記液晶素子の光出射側に配置される第1出射側偏光板と、
を含み、
前記第1入射側偏光板は、透過軸と反射軸を有しており、当該透過軸に沿った偏光を透過させて当該反射軸に沿った偏光を反射する透過反射型偏光板であり、
前記第2入射側偏光板は、吸収軸に沿った光成分を吸収する吸収型偏光板であり、
前記液晶素子の電圧印加時における液晶層の略中央における液晶分子の配向方向は、前記第1入射側偏光板の反射軸及び前記第2入射側偏光板の吸収軸に対して略45°の方向である、
ランプユニット。
【請求項10】
前記第2入射側偏光板と前記液晶素子の間に配置される視角補償板を更に含む、
請求項9に記載のランプユニット。
【請求項11】
前記第1入射側偏光板の前記反射軸と前記第2入射側偏光板の前記吸収軸とが略平行であり、
前記視角補償板の遅相軸は、前記第1入射側偏光板の前記吸収軸及び前記第2入射側偏光板の前記吸収軸に対して略直交する方向である、
請求項10に記載のランプユニット。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載のランプユニットと、当該ランプユニットを制御する
制御部を含む、車両用灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺(例えば前方)へ光照射を行うためのランプユニットおよび車両用灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-204711号公報(特許文献1)には、LED等の光源から出射して広角に入射する光を偏光分離素子によって2つの偏光に分離し、一方の偏光を液晶素子へ入射させてその透過光を投影レンズにより車両周辺(例えば前方)へ照射させる車両用灯具システムが記載されている。この車両用灯具システムでは、例えばカメラによって撮影された前方車両の位置に応じて減光範囲を設定した配光パターンに対応する画像を液晶素子によって生成することで、車両前方へ選択的な光照射を行うことができる。車両に用いられることから耐熱性などを考慮し、偏光分離素子としては、周期的に配置された金属細線を有するワイヤーグリッド型偏光板や屈折率の異なる2つの物質からなる薄膜を交互に積層した多層膜を有する多層膜偏光分離素子などが好適に用いられる。
【0003】
ところで、一般にワイヤーグリッド型偏光板や多層膜偏光分離板は広角に入射する光に対する偏光分離特性が低い傾向にあり、いわゆる光抜けが生じ得る。このため、上記構成の車両用灯具システムにおいては、多層膜偏光分離板等での光抜けに起因して配光パターンのコントラストが低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-204711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、液晶素子を用いた車両用灯具システム等において配光パターンのコントラストを向上させることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1]本発明に係る一態様のランプユニットは、
車両用灯具システムに用いられるランプユニットであって、
光源と、
前記光源によって生成される光を集光する集光部材と、
前記集光部材により集光される光の焦点位置に対応して配置される液晶素子と、
前記液晶素子の光入射側に配置される第1入射側偏光板と、
前記第1入射側偏光板と前記液晶素子の間に配置される第2入射側偏光板と、
前記第2入射側偏光板と前記液晶素子の間に配置される第3入射側偏光板と、
前記液晶素子の光出射側に配置される第1出射側偏光板と、
を含み、
前記第1入射側偏光板は、透過軸と反射軸を有しており、当該透過軸に沿った偏光を透過させて当該反射軸に沿った偏光を反射する透過反射型偏光板であり、
前記第2入射側偏光板は、吸収軸に沿った光成分を吸収する吸収型偏光板であ
前記第3入射側偏光板は、透過軸と反射軸を有しており当該透過軸に沿った偏光を透過させて当該反射軸に沿った偏光を反射する透過反射型偏光板である、
ランプユニットである。
2]本発明に係る一態様の車両用灯具システムは、上記のランプユニットと、当該ランプユニットを制御する制御部を含む、車両用灯具システムである。
【0007】
上記構成によれば、液晶素子を用いたランプユニット並びに車両用灯具システムにおいて配光パターンのコントラストを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(A)は、透過率特性の測定系を説明するための模式図である。図1(B)は、透過率の測定結果例を示すグラフである。
図2図2(A)は、一対の多層膜偏光分離素子または一対の染料系吸収型偏光板の間に液晶素子と視角補償板を配置した場合における各々の光学軸の位置関係について説明するための図である。図2(B)は、各素子等を図2(A)に示すように配置して測定対象物とし、図1(A)に示す測定系で測定した場合の透過率の測定結果例を示すグラフである。
図3図3は、第1実施形態の車両用灯具システムの構成を示す図である。
図4図4は、第1実施形態の車両用灯具システムのランプユニットにおける各光学要素の光学軸の位置関係について説明するための図である。
図5図5は、第2実施形態の車両用灯具システムにおけるランプユニットの構成を示す図である。
図6図6は、第3実施形態の車両用灯具システムにおけるランプユニットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
始めに、多層膜偏光分離素子および染料系吸収型偏光板の特性について説明する。図1(A)は、透過率特性の測定系を説明するための模式図である。図示の測定系を用いて、一対の多層膜偏光分離素子、一対の染料系吸収型偏光板のそれぞれの吸収軸を直交配置(クロスニコル配置)にした場合の透過率の極角依存性を求める。なお、「多層膜偏光分離素子」とは上記の通り屈折率の異なる2つの物質からなる薄膜を交互に積層した多層膜を有する偏光分離素子である。また、「染料系吸収型偏光板」とは二色性染料をポリビニルアルコール系などの樹脂フィルムに吸着配向することにより製造される偏光板であり、吸収軸に沿った偏光方向の偏光(光成分)を吸収することにより偏光方向を決定するものである。
【0010】
図1(A)に示すように、例えば一対の多層膜偏光分離素子または一対の染料系吸収型偏光板からなる測定対象物100を用意し、それぞれの吸収軸を0°-180°方位、90°-270°方位に揃うように配置する。そして、測定対象物100の裏面側に光源101を配置するとともに表面側に受光器102を配置する。光源101からは略平行光が受光器102に向かって照射されるようにする。測定対象物100の表面、裏面に対する法線方向を基準とした光源101および受光器102の傾斜角度である極角θを設定し、0°方位を基準として反時計回りに方位角φを設定する。そして、方位角φを固定し、極角θを変化させて測定対象物100の透過率を測定する。
【0011】
図1(B)は、透過率の測定結果例を示すグラフである。図1(B)において、横軸が極角θを示し、縦軸が透過率を示している(後述する図2(B)においても同様)。図示の測定結果例は、各々一般的に入手できる一対の多層膜偏光分離素子および一対の染料系吸収型偏光板を用いて、方位角φを45°に固定し、極角θを±60°の範囲で変化させて透過率を測定したものである。図示のように、一対の多層膜偏光分離素子においては極角θの絶対値が大きくなるにしたがって透過率が著しく大きくなる。一方、一対の染料系吸収型偏光板においては極角θの絶対値が大きくなるにしたがって透過率が大きくなる傾向は同じであるがその透過率の値自体は小さい。上記した一対の多層膜偏光分離素子に比べ、極角±20°以上では透過率が2倍以上の差になっており、特に差異が顕著である。これらの特性から、染料系吸収型偏光板を用いることで、広角に入射する光に対しても光抜けを抑制できることが分かる。
【0012】
図2(A)は、一対の多層膜偏光分離素子または一対の染料系吸収型偏光板の間に液晶素子と視角補償板を配置した場合における各々の光学軸の位置関係について説明するための図である。また、図2(B)は、各素子等を図2(A)に示すように配置して測定対象物とし、図1(A)に示す測定系で測定した場合の透過率の測定結果例を示すグラフである。図2(A)に示す測定対象物は、光源101側(奥側)に配置されるものから順に、光源側偏光板(裏側偏光板)201、視角補償板202、液晶素子203、投影側偏光板(表側偏光板)204を備える。光源側偏光板201および投影側偏光板204として、多層膜偏光分離素子または染料系吸収型偏光板を用いる。
【0013】
光源側偏光板201は、その吸収軸a1が図中において右上がり45°の方位となるように配置されている。投影側偏光板204は、その吸収軸a4が図中において左上がり45°の方位となるように配置されている。つまり、光源側偏光板201と投影側偏光板204は、互いの吸収軸a1、a4が略直交する配置(クロスニコル配置)とされている。視角補償板202は、負の二軸光学異方性位相差板であり、光源側偏光板201と液晶素子203との間において、その面内遅相軸a2が図中において左上がり45°の方位となるように配置されている。液晶素子203は、例えば一軸配向処理の施された垂直配向型液晶層を備えるものであり、電圧印加時における液晶層の略中央における液晶分子の配向方向a3(平面視したもの)が光源側偏光板201と投影側偏光板204の各吸収軸a1、a4のいずれに対しても略45°の方向となるように図中において下向き方位に配置されている。
【0014】
図2(B)に示す測定結果例は、各々一般的に入手できる一対の多層膜偏光分離素子および一対の染料系吸収型偏光板などを用いて、透過率特性を測定した結果例である、ここでは、方位角φが光源側偏光板201の吸収軸a1または投影側偏光板204の吸収軸a4のいずれかに対して略45°をなすように設定し、極角θを±60°の範囲で可変に設定した。また、比較例として視角補償板202を省いた場合についても測定した。図示のように、光源側偏光板201および投影側偏光板204として一対の多層膜偏光分離素子を用いた場合と、光源側偏光板201および投影側偏光板204として一対の染料系吸収型偏光板を用いた場合のいずれにおいても、視角補償板202を用いた場合のほうが用いない場合よりも透過率が低い傾向を示し、極角θが大きい場合でも光抜けが抑制される。ただし、多層膜偏光分離素子を用いる場合よりも染料系吸収型偏光板を用いる場合のほうが透過率が格段に低くなっており、特に極角±20°以上では差異が2倍以上と顕著である。すなわち、極角θが大きい場合でも光抜けが大幅に抑制されることが分かる。
【0015】
なお、上記した各検討では、透過反射型偏光板の一種である多層膜偏光分離素子と吸収型偏光板の一種である染料系吸収型偏光板について比較を行ったが、多層膜偏光分離素子に代えて透過反射型偏光板の一種であるワイヤーグリッド偏光板を用いた場合や、染料系吸収型偏光板に代えて吸収型偏光板の一種である色素吸収型偏光板に置き換えた場合でも同様の結果となる。
【0016】
上記の知見に基づくと、透過率特性(光抜け抑制)の観点からは染料系吸収型偏光板や色素吸収型偏光板といった吸収型偏光板のほうが優れているといえる。他方で、上記の通り、車両に用いるという観点からは、多層膜偏光分離素子やワイヤーグリッド偏光板といった無機系材料からなる透過反射型偏光板のほうが耐熱性などの信頼性の面で優れているといえる。そこで、本願発明者らは、染料系吸収型偏光板等と多層膜偏光分離素子等をその配置順などに配慮しながら組み合わせて用いることで両者の長所を活用し得るという着想に至った。以下に、この着想に基づくランプユニットおよび車両用灯具システムの実施形態を詳細に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態の車両用灯具システムの構成を示す図である。図示の車両用灯具システムは、光源1、リフレクタ2、偏光ビームスプリッタ3、リフレクタ4、λ/2位相差板5、第1入射側偏光板6a、第2入射側偏光板6b、第1出射側偏光板6c、視角補償板7、液晶素子8、投影レンズ9、制御部10、カメラ11を含んで構成されている。なお、本実施形態では、光源1、リフレクタ2、偏光ビームスプリッタ3、リフレクタ4、λ/2位相差板5、第1入射側偏光板6a、第2入射側偏光板6b、第1出射側偏光板6c、視角補償板7、液晶素子8および投影レンズ9を含んでランプユニット50が構成されている。また、本実施形態ではリフレクタ2、4および偏光ビームスプリッタ3が「集光部材」に対応する。
【0018】
光源1は、例えば青色光を放出する発光素子(LED)に黄色蛍光体を組み合わせて構成された白色光LEDを含んで構成されている。光源1は、例えば、マトリクス状あるいはライン状に配列された複数の白色光LEDを備える。本実施形態では、光源1は、出射する光がリフレクタ2へ入射するように配置されている。
【0019】
リフレクタ2は、光源1から出射する光を偏光ビームスプリッタ3の存在する方向へ反射させる。
【0020】
偏光ビームスプリッタ3は、入射する光のうち特定方向の偏光を透過させるとともに、それ以外の方向の偏光を反射させるものである。このような偏光ビームスプリッタ3としては、例えば多層膜偏光分離素子やワイヤーグリッド偏光板などを用いることができる。
【0021】
リフレクタ4は、偏光ビームスプリッタ3を透過した偏光を液晶素子8の存在する方向へ反射させて所定の焦点位置に集光させる。
【0022】
リフレクタ2、4および偏光ビームスプリッタ3は、第1入射側偏光板6aに対して広角、例えば第1入射側偏光板6aの法線方向を0°として±20°以上の範囲を含む光を入射させるようにすることが光利用効率の観点から好ましい。
【0023】
λ/2位相差板5は、リフレクタ4により反射された偏光の偏光方向を90°回転させて出射させる。
【0024】
第1入射側偏光板6aは、上記した透過反射型偏光板(多層膜偏光分離素子またはワイヤーグリッド偏光板)からなり、偏光ビームスプリッタ3やリフレクタ4により反射された偏光が入射する位置であって液晶素子8の光入射側に配置されている。
【0025】
第2入射側偏光板6bは、上記した吸収型偏光板(染料系吸収型偏光板または色素吸収型偏光板)からなり、第1入射側偏光板6aと液晶素子8との間に配置されている。
【0026】
第1出射側偏光板6bは、上記した透過反射型偏光板(多層膜偏光分離素子またはワイヤーグリッド偏光板)からなり、液晶素子8を透過した偏光が入射する位置、すなわち液晶素子8の光出射側に配置されている。
【0027】
視角補償板7は、例えば、負の二軸光学異方性位相差板であり、第2入射側偏光板6bと液晶素子8との間に配置されている。
【0028】
液晶素子8は、例えば、それぞれ個別に制御可能な複数の画素領域(光制御領域)を有しており、制御部10の制御信号に応じて各画素領域の液晶層における液晶分子の配向状態が可変に制御される。それにより、光照射範囲と減光範囲に対応した明暗や色相を有する画像が形成される。本実施形態の液晶素子8としては、例えば、一軸配向処理がなされており電圧無印加時に液晶層の液晶分子が略垂直に配向するものが用いられている。液晶素子8は、偏光ビームスプリッタ3やリフレクタ4により集光される光の焦点位置に対応して配置されている。
【0029】
投影レンズ9は、第1入射側偏光板6a、第2入射側偏光板6b、液晶素子8、第1出射側偏光板6cによって形成される画像(光照射範囲と減光範囲に対応した明暗ないし色相を有する像)をヘッドライト用配光になるように広げて自車両の前方へ投影するものであり、例えば反転投影型のプロジェクターレンズが用いられる。投影レンズ9の開口数NAについては、投影レンズ9の中心軸に対して最も傾斜して入射する光が中心軸となす角度をθとすると、NA=sinθと表せる。
【0030】
制御部10は、自車両の前方空間を撮影するカメラ11によって得られる画像に基づいて画像処理を行うことによって、前方空間に存在する前方車両や歩行者等(対象体)の位置を検出し、検出された前方車両等の位置を減光範囲(非照射範囲)とし、それ以外の領域を光照射範囲とした配光パターンを設定し、この配光パターンに対応した像を形成するための制御信号を生成して液晶素子8へ供給する。
【0031】
図4は、第1実施形態の車両用灯具システムのランプユニットにおける各光学要素の光学軸の位置関係について説明するための図である。ランプユニット50は、光源1によって生成される光が入射する側から順に、第1入射側偏光板6a、第2入射側偏光板6b、視角補償板7、液晶素子8、第1出射側偏光板6cの順で配置されている。
【0032】
第1入射側偏光板6aは、互いに略直交する透過軸と吸収軸(反射軸)を有しており、そのうちの吸収軸A1が図中において右上がり45°の方位となるように配置されている。また、第2入射側偏光板6bは、その吸収軸A2が図中において右上がり45°の方位となるように配置されている。すなわち、第1入射側偏光板6aと第2入射側偏光板6bは互いの吸収軸A1、A2が略平行となるように配置されている。また、第1出射側偏光板6cは、互いに略直交する透過軸と吸収軸(反射軸)を有しており、そのうちの吸収軸A5が図中において左上がり45°の方位となるように配置されている。つまり、第1入射側偏光板6aおよび第2入射側偏光板6bと第1出射側偏光板6cは、各吸収軸A1、A2と吸収軸A5とが略直交する配置(クロスニコル配置)とされている。
【0033】
なお、本明細書において「略平行」とは必ずしも幾何学における厳密な平行をいうものではなく、製造時の誤差等を反映した範囲(例えば0°±5°以内の範囲)で2つの軸の方向が揃っていることをいい、「略直交」とは必ずしも幾何学における厳密な直交をいうものではなく、製造時の誤差等を反映した範囲(例えば90°±5°以内の範囲)で2つの軸の方向が交差していることをいう。
【0034】
視角補償板7は、第2入射側偏光板6bと液晶素子8との間において、その面内遅相軸A3が図中において左上がり45°の方位となるように配置されている。液晶素子8は、上記の通り一軸配向処理の施された垂直配向型液晶層を備えるものであり、電圧印加時における液晶層の略中央における液晶分子の配向方向A4(平面視したもの)が第1入射側偏光板6a、第2入射側偏光板6bと第1出射側偏光板6cの各吸収軸A1、A2、A5のいずれに対しても略45°の方向となるように図中において下向き方位に配置されている。
【0035】
上記のような構成を有する第1実施形態のランプユニット50並びに車両用灯具システムでは、第1入射側偏光板6aの透過軸に平行な振動を有する光以外は光源1側(リフレクタ2およびリフレクタ4の側)へ反射して戻り、透過軸に平行な振動を有して広角に入射した光は透過して第2入射側偏光板6bへ入射する。第1入射側偏光板6aと第2入射側偏光板6bは、各々の吸収軸A1、A2が略平行に配置されていることから、第2入射側偏光板6bにおける光吸収はわずかである。つまり、第1入射側偏光板6aを介さずに直接に第2入射側偏光板6bへ光を入射させた場合に比べると、第2入射側偏光板6bへ入射する光の光量が抑制されるので、第2入射側偏光板6bの熱による損傷を防ぐことができる。そして、第2入射側偏光板6bとして吸収型偏光板を用いているので、上記の通り広角に入射する光に対して光抜けをより抑制することが可能となるので、車両前方に照射される光の配光パターンにおけるコントラストを向上させることができる。
【0036】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態の車両用灯具システムにおけるランプユニットの構成を示す図である。なお、車両用灯具システムの全体構成は第1実施形態と同様であるのでここでは説明を省略する(図3参照)。図5に示す第2実施形態のランプユニット50aは、基本的に第1実施形態のランプユニット50と共通の構成を備えており、さらに第2出射側偏光板6dを追加された点が相違している。図5では、共通の構成については同一符号を付しており、それらについては説明を省略する。
【0037】
第2実施形態のランプユニット50aにおいて、第2出射側偏光板6dは、第1出射側偏光板6cと液晶素子8の間に配置されている。この第2出射側偏光板6dは、第2入射側偏光板6bと同様に吸収型偏光板(染料系吸収型偏光板または色素吸収型偏光板)からなり、その吸収軸A6が第1出射側偏光板6cの吸収軸A5と略平行に配置されている。
【0038】
このように第2出射側偏光板6dを設けたことで、第1実施形態に比べて以下の効果がさらに追加される。具体的には、第1出射側偏光板6cにおいて透過軸に平行な振動を有する光以外は液晶素子8側へ反射し、広角に入射した光は反射されないがその光量は第2出射側偏光板6dへ直接に入射させた場合に比べて抑制されていることから、第2出射側偏光板6dでの光吸収はわずかであり、熱による損傷を回避することができる。また、広角に入射する光に対して第2出射側偏光板6dによる光抜けの抑制効果が得られることから、液晶素子8を暗状態に対応するように駆動した場合における第1出射側偏光板6cからの光抜けが抑制される。それにより、車両前方に照射される光の配光パターンにおけるコントラストをより向上させることができる。
【0039】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態の車両用灯具システムにおけるランプユニットの構成を示す図である。なお、車両用灯具システムの全体構成は第1実施形態と同様であるのでここでは説明を省略する(図3参照)。図6に示す第3実施形態のランプユニット50bは、基本的に第2実施形態のランプユニット50aと共通の構成を備えており、さらに第3入射側偏光板6eと第3出射側偏光板6fを追加された点が相違している。図6では、共通の構成については同一符号を付しており、それらについては説明を省略する。
【0040】
第3実施形態のランプユニット50bにおいて、第3入射側偏光板6eは、第2入射側偏光板6bと視角補償板7の間に配置されている。この第3入射側偏光板6eは、第1入射側偏光板6aと同様に透過反射型偏光板(多層膜偏光分離素子またはワイヤーグリッド偏光板)からなり、互いに略直交する透過軸と吸収軸(反射軸)を有しており、そのうちの吸収軸A7が第1入射側偏光板6aおよび第2入射側偏光板6bの各吸収軸A1、A2と略平行に配置されている。また、第3出射側偏光板6fは、第2出射側偏光板6dと液晶素子8の間に配置されている。この第3出射側偏光板6fは、第1出射側偏光板6cと同様に透過反射型偏光板(多層膜偏光分離素子またはワイヤーグリッド偏光板)からなり、互いに略直交する透過軸と吸収軸(反射軸)を有しており、そのうちの吸収軸A8が第1出射側偏光板6cおよび第2出射側偏光板6dの各吸収軸A5、A6と略平行に配置されている。
【0041】
このように、入射側、出射側それぞれにおいて、透過反射型偏光板(多層膜偏光分離素子またはワイヤーグリッド偏光板)を一対にしてそれらの間に吸収型偏光板(染料系吸収型偏光板または色素吸収型偏光板)を配置した構成とすることにより、第2実施形態に比べて、さらに光源1、第2入射側偏光板6b、第2出射側偏光板6dなどの熱による損傷を抑制できる効果が得られる。具体的には、例えば第1出射側偏光板6c側から外光が入射したとしても、第1出射側偏光板6cにより外光のうち半分である第1成分(第1偏光)の光は反射される。また、残り半分である第2成分(第2偏光)の光は透過するが液晶素子8を暗状態に対応するように駆動している場合には第3入射側偏光板6eにて第2成分の光も反射させるので、光源1側へは到達しない。従って、焦点位置である光源1の熱による損傷を回避することができるとともに、吸収型偏光板である染料系吸収型偏光板または色素吸収型偏光板からなる第2入射側偏光板6bや第2出射側偏光板6dなどの熱による損傷や劣化を抑制することができる。
【0042】
なお、本発明は上記した各実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、各偏光板などの光学軸の配置は上記した内容に限定されない。例えば、第2入射側偏光板6bの吸収軸を第1入射側偏光板6a(または第3入射側偏光板6e)の吸収軸と平行ではない配置(例えば、数°ずらした配置)とすることで、出射光の色調を光源1から出射される光と異なる色調に変えることができる。第2出射側偏光板6dと第1出射側偏光板6c、第3出射側偏光板6fにおいても同様である。また、色素吸収型偏光板を用いる場合において、色調がニュートラルではないもの、例えばバイオレットや青などの色調を有する色素吸収型偏光板を用いることによっても出射光の色調を光源1から出射される光と異なる色調に変えることができる。これらによれば、車両前方に照射される光の配光パターンにおける色調を可変に設定することができる。
【0043】
また、上記した各実施形態では、光源1により生成された光が各リフレクタ2、4、偏光ビームスプリッタ3およびλ/2位相差板5を経由して第1入射側偏光板6a側から液晶素子8に入射する構成のランプユニット50等を想定していたが、光源1から液晶素子8へ至る光路はこれに限定されない。例えば、光源1により生成されて出射してレンズ等により集光された光が直接的に第1入射側偏光板6a側から液晶素子8に入射するような構成としてもよい。
【0044】
また、上記した各実施形態では、車両の前方へ所望の配光パターンによる光照射を行う車両用灯具システムについて例示したが、光照射を行う対象領域は車両前方に限定されず、車両周辺の任意の領域を対象とすることができる。
【符号の説明】
【0045】
1:光源、2:リフレクタ、3:偏光ビームスプリッタ、4:リフレクタ、5:λ/2位相差板、6a:第1入射側偏光板、6b:第2入射側偏光板、6c:第1出射側偏光板、6d:第2出射側偏光板、6e:第3入射側偏光板、6f:第3出射側偏光板、7:視角補償板、8:液晶素子、9:投影レンズ、10:制御部、11:カメラ、50、50a、50b:ランプユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6