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特許7499592クライオポンプシステム、クライオポンプシステムの制御装置および再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】クライオポンプシステム、クライオポンプシステムの制御装置および再生方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/08 20060101AFI20240607BHJP
   F04B 37/16 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
F04B37/08
F04B37/16 A
F04B37/16 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020056300
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021156199
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】五反田 修平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 走
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-237293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/08
F04B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各クライオポンプが、当該クライオポンプを共通のラフポンプに接続するラフバルブと、当該クライオポンプ内の圧力を測定する圧力センサと、を備える複数のクライオポンプと、
前記複数のクライオポンプの各々について、
前記ラフポンプによって当該クライオポンプを第1基準圧力まで減圧して真空保持するように、当該クライオポンプの圧力センサによる測定圧力に基づいて当該クライオポンプのラフバルブを制御するとともに、
当該クライオポンプを真空保持している間に、当該クライオポンプの圧力センサの測定圧力に基づいて当該クライオポンプに前記第1基準圧力のもとで第1昇圧レートテストを実行するように構成されているコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記複数のクライオポンプのうちあるクライオポンプを真空保持している間に他の一つのクライオポンプを前記第1基準圧力まで減圧するように、前記あるクライオポンプの圧力センサの測定圧力に基づいて前記他の一つのクライオポンプのラフバルブを開くように構成され、
前記コントローラは、前記複数のクライオポンプのすべてが前記第1昇圧レートテストに合格した場合に、前記複数のクライオポンプを前記第1基準圧力より低い第2基準圧力までさらに減圧するように構成され
前記第1基準圧力は、600~50Paの範囲から選択され、前記第2基準圧力は、100~10Paの範囲から選択されることを特徴とするクライオポンプシステム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記あるクライオポンプの圧力センサの測定圧力を前記第1基準圧力と比較し、前記測定圧力が前記第1基準圧力を下回る場合、前記他の一つのクライオポンプのラフバルブを開くように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記複数のクライオポンプが前記ラフポンプを使用する順番を定める第1順番待ちリストを備え、前記第1順番待ちリストに従って前記あるクライオポンプを選択し、前記他の一つのクライオポンプとして前記第1順番待ちリストにおける前記あるクライオポンプの次のクライオポンプを選択するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のクライオポンプシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1順番待ちリストを前記複数のクライオポンプの昇温完了の順に基づいて決定するように構成され、
各クライオポンプは、当該クライオポンプ内の温度を測定する温度センサを備え、前記コントローラは、当該クライオポンプの温度センサによる測定温度を再生温度と比較し、前記測定温度が前記再生温度を超える場合、当該クライオポンプを昇温完了と判定するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のクライオポンプシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記複数のクライオポンプが前記ラフポンプを使用する順番を定め、前記第1順番待ちリストと異なる第2順番待ちリストを備え、
前記第2順番待ちリストに従って前記複数のクライオポンプのうち一のクライオポンプを選択し、選択されたクライオポンプを前記第2基準圧力まで減圧して真空保持し、前記第2基準圧力より低い第3基準圧力までさらに減圧するように、前記選択されたクライオポンプの圧力センサによる測定圧力に基づいて前記選択されたクライオポンプのラフバルブを制御するとともに、
前記選択されたクライオポンプを真空保持している間に、前記第2順番待ちリストにおける前記選択されたクライオポンプの次のクライオポンプを前記第2基準圧力まで減圧するように、前記選択されたクライオポンプの圧力センサの測定圧力に基づいて前記次のクライオポンプのラフバルブを開くように構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載のクライオポンプシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記第2順番待ちリストを前記複数のクライオポンプの前回の再生完了の順に基づいて決定することを特徴とする請求項5に記載のクライオポンプシステム。
【請求項7】
クライオポンプシステムの制御装置であって、前記クライオポンプシステムは、共通のラフポンプに接続される複数のクライオポンプを備え、前記制御装置は、
前記ラフポンプによって前記複数のクライオポンプを順番に第1基準圧力まで減圧し、前記第1基準圧力まで減圧されたクライオポンプを真空保持し、前記真空保持の間に、前記減圧されたクライオポンプに前記第1基準圧力のもとで第1昇圧レートテストを実行するように構成されたコントローラを備え、
前記コントローラは、前記複数のクライオポンプのうちあるクライオポンプを真空保持している間に、他の一つのクライオポンプを前記第1基準圧力まで減圧するように構成され、
前記コントローラは、前記複数のクライオポンプのすべてが前記第1昇圧レートテストに合格した場合に、前記ラフポンプによって前記複数のクライオポンプを前記第1基準圧力より低い第2基準圧力までさらに減圧するように構成され
前記第1基準圧力は、600~50Paの範囲から選択され、前記第2基準圧力は、100~10Paの範囲から選択されることを特徴とする制御装置。
【請求項8】
クライオポンプシステムの再生方法であって、前記クライオポンプシステムは、共通のラフポンプに接続される複数のクライオポンプを備え、前記再生方法は、
前記ラフポンプによって前記複数のクライオポンプを順番に第1基準圧力まで減圧することと、
前記第1基準圧力まで減圧されたクライオポンプを真空保持することと、
前記真空保持の間に、前記減圧されたクライオポンプに前記第1基準圧力のもとで第1昇圧レートテストを実行することと、を備え、
前記第1基準圧力まで減圧することは、前記複数のクライオポンプのうちあるクライオポンプを真空保持している間に、他の一つのクライオポンプを前記第1基準圧力まで減圧することを備え、
前記再生方法はさらに、
前記複数のクライオポンプのすべてが前記第1昇圧レートテストに合格した場合に、前記ラフポンプによって前記複数のクライオポンプを前記第1基準圧力より低い第2基準圧力までさらに減圧することを備え
前記第1基準圧力は、600~50Paの範囲から選択され、前記第2基準圧力は、100~10Paの範囲から選択されることを特徴とする再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライオポンプシステム、クライオポンプシステムの制御装置および再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クライオポンプは、極低温に冷却されたクライオパネルに気体分子を凝縮または吸着により捕捉して排気する真空ポンプである。クライオポンプは半導体回路製造プロセス等に要求される清浄な真空環境を実現するために一般に利用される。クライオポンプはいわゆる気体溜め込み式の真空ポンプであるから、捕捉した気体を外部に定期的に排出する再生を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-60853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、クライオポンプシステムの再生時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様によると、クライオポンプシステムは、各クライオポンプが、当該クライオポンプを共通のラフポンプに接続するラフバルブと、当該クライオポンプ内の圧力を測定する圧力センサと、を備える複数のクライオポンプと、複数のクライオポンプの各々について、ラフポンプによって当該クライオポンプを第1基準圧力まで減圧して真空保持し、第1基準圧力より低い第2基準圧力までさらに減圧するように、当該クライオポンプの圧力センサによる測定圧力に基づいて当該クライオポンプのラフバルブを制御するコントローラと、を備える。コントローラは、複数のクライオポンプのうちあるクライオポンプを真空保持している間に他の一つのクライオポンプを第1基準圧力まで減圧するように、あるクライオポンプの圧力センサの測定圧力に基づいて他の一つのクライオポンプのラフバルブを開くように構成されている。
【0006】
本発明のある態様によると、クライオポンプシステムの制御装置が提供される。クライオポンプシステムは、共通のラフポンプに接続される複数のクライオポンプを備える。制御装置は、ラフポンプによって複数のクライオポンプを順番に第1基準圧力まで減圧し、第1基準圧力まで減圧されたクライオポンプを真空保持し、ラフポンプによって複数のクライオポンプを第1基準圧力より低い第2基準圧力までさらに減圧するように構成されたコントローラを備える。コントローラは、複数のクライオポンプのうちあるクライオポンプを真空保持している間に、他の一つのクライオポンプを第1基準圧力まで減圧するように構成されている。
【0007】
本発明のある態様によると、クライオポンプシステムの再生方法が提供される。クライオポンプシステムは、ラフポンプに接続される複数のクライオポンプを備える。再生方法は、ラフポンプによって複数のクライオポンプを順番に第1基準圧力まで減圧することと、第1基準圧力まで減圧されたクライオポンプを真空保持することと、ラフポンプによって複数のクライオポンプを第1基準圧力より低い第2基準圧力までさらに減圧することと、を備える。第1基準圧力まで減圧することは、複数のクライオポンプのうちあるクライオポンプを真空保持している間に、他の一つのクライオポンプを第1基準圧力まで減圧することを備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クライオポンプシステムの再生時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るクライオポンプシステムを概略的に示す図である。
図2図1に示されるクライオポンプシステムのクライオポンプを概略的に示す図である。
図3】実施の形態に係るクライオポンプシステムの再生方法を説明するためのフローチャートである。
図4】実施の形態に係る順番待ちリストの一例を示す図である。
図5図3に示される第1減圧工程の一例を示すフローチャートである。
図6図3に示される第2減圧工程の一例を示すフローチャートである。
図7図7(a)から図7(d)は、クライオポンプをラフポンプで減圧するときの圧力の時間変化を示すグラフである。
図8図8(a)から図8(c)は、クライオポンプをラフポンプで減圧するときの圧力の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1は、実施の形態に係るクライオポンプシステムを概略的に示す図である。図2は、図1に示されるクライオポンプシステムのクライオポンプを概略的に示す図である。
【0013】
クライオポンプシステム100は、複数のクライオポンプ10と、これらクライオポンプ10を制御するコントローラ20と、を備える。クライオポンプ10は、例えばイオン注入装置、スパッタリング装置、蒸着装置、またはその他の真空プロセス装置の真空チャンバに取り付けられて、真空チャンバ内部の真空度を所望の真空プロセスに要求されるレベルまで高めるために使用される。例えば10-5Pa乃至10-8Pa程度の高い真空度が真空チャンバに実現される。コントローラ20は、複数のクライオポンプ10とは別体の制御装置として構成される。あるいは、各クライオポンプ10にコントローラが一体に設けられ、これら複数のコントローラの組み合わせとしてコントローラ20が構成されてもよい。
【0014】
図1に示される例では、クライオポンプシステム100は、4台のクライオポンプ10で構成されるが、クライオポンプ10の数はとくに限定されない。これら複数のクライオポンプは、それぞれ別個の真空チャンバに設置されてもよいし、ひとつの同じ真空チャンバに設置されてもよい。
【0015】
図2に示されるように、クライオポンプ10は、圧縮機12と、冷凍機14と、クライオポンプ容器16と、クライオパネル18とを備える。また、クライオポンプ10は、圧力センサ22と、ラフバルブ24と、パージバルブ26と、ベントバルブ28とを備え、これらはクライオポンプ容器16に設置されている。
【0016】
圧縮機12は、冷媒ガスを冷凍機14から回収し、回収した冷媒ガスを昇圧して、再び冷媒ガスを冷凍機14に供給するよう構成されている。冷凍機14は、膨張機またはコールドヘッドとも称され、圧縮機12とともに極低温冷凍機を構成する。圧縮機12と冷凍機14との間の冷媒ガスの循環が冷凍機14内での冷媒ガスの適切な圧力変動と容積変動の組み合わせをもって行われることにより、寒冷を発生する熱力学的サイクルが構成され、冷凍機14の冷却ステージが所望の極低温に冷却される。それにより、冷凍機14の冷却ステージに熱的に結合されたクライオパネル18を目標冷却温度(例えば10K~20K)に冷却することができる。冷媒ガスは、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。理解のために、冷媒ガスの流れる方向を図2に矢印で示す。極低温冷凍機は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機であるが、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの極低温冷凍機であってもよい。
【0017】
クライオポンプ容器16は、クライオポンプ10の真空排気運転中に真空を保持し、周囲環境の圧力(例えば大気圧)に耐えるように設計された真空容器である。クライオポンプ容器16は、吸気口17を有するクライオパネル収容部16aと、冷凍機収容部16bとを有する。クライオパネル収容部16aは、吸気口17が開放され、その反対側が閉塞されたドーム状の形状を有し、この内部にクライオパネル18が冷凍機14の冷却ステージとともに収容される。冷凍機収容部16bは、円筒状の形状を有し、その一端が冷凍機14の室温部に固定され、他端がクライオパネル収容部16aに接続され、内部に冷凍機14が挿入されている。吸気口17は、ゲートバルブ(図示せず)を介して真空プロセス装置の真空チャンバに接続される。クライオポンプ10の吸気口17から進入する気体はクライオパネル18に凝縮または吸着により捕捉される。クライオパネル18の配置や形状などクライオポンプ10の構成は、種々の公知の構成を適宜採用することができるので、ここでは詳述しない。
【0018】
コントローラ20は、クライオポンプ10の真空排気運転においては、クライオパネル18の冷却温度に基づいて、冷凍機14を制御してもよい。クライオポンプ容器16内には、クライオパネル18の温度を測定する温度センサ23が設けられていてもよく、コントローラ20は、クライオパネル18の測定温度を示す温度センサ出力信号を受信するよう温度センサ23と接続されていてもよい。
【0019】
また、コントローラ20は、クライオポンプ10の再生運転においては、クライオポンプ容器16内の圧力に基づいて(または、必要に応じて、クライオパネル18の温度およびクライオポンプ容器16内の圧力に基づいて)、冷凍機14、ラフバルブ24、パージバルブ26、ベントバルブ28を制御してもよい。コントローラ20は、クライオポンプ容器16内の測定圧力を示す圧力センサ出力信号を受信するよう圧力センサ22と接続されていてもよい。ラフバルブ24、パージバルブ26、ベントバルブ28はそれぞれ、コントローラ20から入力される指令信号に従って開閉される。
【0020】
詳細は後述するが、コントローラ20は、複数のクライオポンプ10の各々について、ラフポンプ32によって当該クライオポンプ10を第1基準圧力まで減圧して真空保持し、第1基準圧力より低い第2基準圧力までさらに減圧するように、当該クライオポンプ10の圧力センサ22による測定圧力に基づいて当該クライオポンプ10のラフバルブ24を制御するように構成されている。コントローラ20は、複数のクライオポンプ10のうちあるクライオポンプ10を真空保持している間に他の一つのクライオポンプ10を第1基準圧力まで減圧するように、あるクライオポンプ10の圧力センサ22の測定圧力に基づいて他の一つのクライオポンプ10のラフバルブ24を開くように構成されている。コントローラ20は、あるクライオポンプ10の圧力センサ22の測定圧力を第1基準圧力と比較し、測定圧力が第1基準圧力を下回る場合、他の一つのクライオポンプ10のラフバルブ24を開くように構成されている。
【0021】
コントローラ20の内部構成は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0022】
たとえば、コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)、マイコンなどのプロセッサ(ハードウェア)と、プロセッサ(ハードウェア)が実行するソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。そうしたハードウェアプロセッサは、たとえば、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブルロジックデバイスで構成してもよいし、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)のような制御回路であってもよい。ソフトウェアプログラムは、クライオポンプ10の再生をコントローラ20に実行させるためのコンピュータプログラムであってもよい。
【0023】
圧力センサ22は、クライオポンプ容器16内の圧力を測定し、圧力センサ出力信号を生成する。圧力センサ22は、クライオポンプ容器16、例えば冷凍機収容部16bに取り付けられている。圧力センサ22は、真空(例えばクライオポンプ10の動作開始圧力である1~10Pa)と大気圧の両方を含む広い計測範囲を有する。少なくとも再生処理中に生じ得る圧力範囲を計測範囲に含むことが望ましい。この実施形態では、圧力センサ22として、大気圧ピラニゲージ(大気圧を測定可能なピラニ真空計)が使用される。あるいは、圧力センサ22は、例えばクリスタルゲージ、または気体とセンサとの相互作用に基づいて圧力を間接的に測定するその他の圧力センサであってもよい。
【0024】
図1および図2を参照すると、ラフバルブ24は、クライオポンプ容器16、例えば冷凍機収容部16bに取り付けられている。また、クライオポンプシステム100は、ラフ排気ライン30を備える。ラフ排気ライン30は、複数のクライオポンプが使用する共通のラフポンプ32と、各クライオポンプ10のラフバルブ24から共通のラフポンプ32へと合流するラフ配管34とを備える。ラフバルブ24は、ラフ配管34によりラフポンプ32に接続される。ラフポンプ32は、クライオポンプ10をその動作開始圧力まで真空引きをするための真空ポンプである。コントローラ20の制御によりラフバルブ24が開放されるときクライオポンプ容器16がラフポンプ32に連通され、ラフバルブ24が閉鎖されるときクライオポンプ容器16がラフポンプ32から遮断される。ラフバルブ24を開きかつラフポンプ32を動作させることにより、クライオポンプ10を減圧することができる。
【0025】
パージバルブ26は、クライオポンプ容器16、例えばクライオパネル収容部16aに取り付けられている。パージバルブ26は、クライオポンプ10の外部に設置されたパージガス供給装置(図示せず)に接続される。コントローラ20の制御によりパージバルブ26が開放されるときパージガスがクライオポンプ容器16に供給され、パージバルブ26が閉鎖されるときクライオポンプ容器16へのパージガス供給が遮断される。パージガスは例えば窒素ガス、またはその他の乾燥したガスであってもよく、パージガスの温度は、たとえば室温に調整され、または室温より高温に加熱されていてもよい。パージバルブ26を開きパージガスをクライオポンプ容器16に導入することにより、クライオポンプ10を昇圧することができる。また、クライオポンプ10を極低温から室温またはそれより高い温度に昇温することができる。
【0026】
ベントバルブ28は、クライオポンプ容器16、例えば冷凍機収容部16bに取り付けられている。ベントバルブ28は、制御により開閉可能であるとともに、クライオポンプ容器16の内外の差圧によって機械的に開きうる。ベントバルブ28は、例えば常閉型の制御弁であり、いわゆる安全弁としても機能するよう構成されている。クライオポンプ10の外部環境は通常大気圧であるから、ベントバルブ28は、クライオポンプ容器16内の圧力が大気圧またはそれよりいくらか高い圧力に達するとき制御によりまたは機械的に開かれ、クライオポンプ10の内部から外部に流体を排出し、内部の圧力を解放することができる。
【0027】
図3は、実施の形態に係るクライオポンプシステムの再生方法を説明するためのフローチャートである。再生方法は、昇温工程(S10)、排出工程(S20)、及びクールダウン工程(S30)を含み、コントローラ20による制御のもとで複数のクライオポンプ10に並行して行われる。なお、クライオポンプシステム100のすべてのクライオポンプ10が同時に再生されることは必須ではなく、コントローラ20は、一部のクライオポンプ10は真空排気運転を続けながら、残りのクライオポンプ10を再生するように構成されてもよい。
【0028】
昇温工程(S10)においては、パージバルブ26を通じてクライオポンプ容器16に供給されるパージガス、またはその他の加熱手段によって、クライオポンプ10は、極低温から室温またはそれより高い再生温度に昇温される(例えば約290Kないし約300K)。同時に、クライオポンプ10に捕捉されている気体が再び気化され、また、パージガスが供給されるので、クライオポンプ容器16内の圧力は、大気圧またはそれよりいくらか高い圧力に向けて増加する。昇温工程においては、供給されたパージガスおよび加熱により再気化した気体がクライオポンプ容器16からベントバルブ28を通じて外部に排出されうる。昇温工程においては通例、ラフバルブ24は閉じている。
【0029】
昇温工程においては、各クライオポンプ10について、コントローラ20は、当該クライオポンプ10の温度センサ23による測定温度を再生温度と比較し、測定温度が再生温度を超える場合、当該クライオポンプ10を昇温完了と判定するように構成されている。測定温度が再生温度を下回る場合、コントローラ20は、昇温工程を継続する。コントローラ20は、測定温度が再生温度を超えるとき直ちに昇温工程を終了し排出工程を開始してもよい。それに代えて、コントローラ20は、いわゆる延長パージ(すなわち測定温度が再生温度を超えてからもパージガスの供給を一定時間続けること)を経て昇温工程から排出工程に移行してもよい。昇温工程が終了するとき、クライオポンプ容器16内の圧力は、大気圧またはそれよりいくらか高い圧力となる。
【0030】
排出工程(S20)においては、複数段階の減圧工程により、各クライオポンプ10は段階的に減圧される。排出工程は、例えば第1減圧工程(S21)、第2減圧工程(S22)、第3減圧工程(S23)を含み、これら減圧工程は、コントローラ20によってクライオポンプ10ごとに順番に実行される。減圧はラフバルブ24を通じてラフポンプ32により行われる。排出工程においては、パージガスが供給されるときを除いて、ベントバルブ28は通例閉じている。
【0031】
第1減圧工程では、クライオポンプ容器16が大気圧から第1基準圧力まで減圧され、第1基準圧力のもとで第1昇圧レートテストが実行される。第1減圧工程では、いわゆるラフアンドパージ(すなわちラフバルブ24を通じたクライオポンプ容器16の真空引きとパージバルブ26を通じたパージガスの供給を1回以上交互に行うこと)が行われてもよい。第1昇圧レートテストに合格するまで第1減圧工程は継続される。第1昇圧レートテストに合格すると、クライオポンプ10は第2減圧工程に移行する。
【0032】
第2減圧工程では、クライオポンプ容器16が第1基準圧力から第2基準圧力まで減圧され、第2基準圧力のもとで第2昇圧レートテストが実行される。第2昇圧レートテストに合格するまで第2減圧工程は継続される。第2昇圧レートテストに合格すると、クライオポンプ10は第3減圧工程に移行する。同様にして、第3減圧工程では、クライオポンプ容器16が第2基準圧力から第3基準圧力まで減圧され、第3基準圧力のもとで第3昇圧レートテストが実行される。第3昇圧レートテストに合格するまで第3減圧工程は継続される。第3昇圧レートテストに合格すると、クライオポンプ10はクールダウン工程に移行する。第2減圧工程および第3減圧工程では、パージバルブ26は閉鎖され、もはやパージガスは供給されなくてもよい。
【0033】
なお、知られているように、昇圧レート(Rate of Rise;RoR)テストにおいては、クライオポンプ容器16を真空保持し所定時間を経過するときの基準圧力からの圧力上昇の大きさが検出され、この圧力上昇の大きさがしきい値未満であれば合格、しきい値以上であれば不合格と判定される。クライオポンプ容器16を真空保持するために、クライオポンプ10に設けられたバルブはすべて閉鎖される。
【0034】
第1基準圧力、第2基準圧力、第3基準圧力は、それぞれ予め設定される。第2基準圧力は、第1基準圧力よりも低い圧力値であり、第3基準圧力は、第2基準圧力よりも低い圧力値である。第1基準圧力は、例えば、600~50Paの範囲から選択されてもよい。第2基準圧力は、例えば、100~10Paの範囲から選択されてもよい。第3基準圧力は、例えば、10~1Paの範囲から選択されてもよい。
【0035】
クールダウン工程(S30)においては、クライオポンプ10は、再生温度から極低温に再び冷却される。このようにして、再生は完了し、クライオポンプ10は、再び真空排気運転を始めることができる。
【0036】
図4は、実施の形態に係る順番待ちリストの一例を示す図である。コントローラ20は、複数のクライオポンプ10がラフポンプ32を使用する順番を定める第1順番待ちリスト40を備える。クライオポンプシステム100がN台(Nは自然数)のクライオポンプ10を有する場合、第1順番待ちリスト40は、各クライオポンプ10の識別情報(例えば識別番号1~N)と順番とを対応付けるデータである。
【0037】
この実施形態では、コントローラ20は、第1順番待ちリスト40を複数のクライオポンプ10の昇温完了の順に基づいて決定するように構成されている。よって、第1順番待ちリスト40は、再生中に(すなわち昇温工程において)生成される。第1順番待ちリスト40は、排出工程の前半、少なくとも第1減圧工程で用いられる。
【0038】
図4には、4台のクライオポンプ(1)~(4)について、昇温工程がクライオポンプ(3)、(2)、(1)、(4)の順番に完了した場合が例示される。昇温工程が速く完了した順に従って(昇温工程の所要時間の昇順に従って)、第1順番待ちリスト40においてはクライオポンプ(3)、(2)、(1)、(4)と順序付けられている。したがって、排出工程(すなわち第1減圧工程)は、第1順番待ちリスト40に従って、クライオポンプ(3)、(2)、(1)、(4)の順に開始される。
【0039】
また、コントローラ20は、複数のクライオポンプ10がラフポンプ32を使用する順番を定める第2順番待ちリスト42を備える。第2順番待ちリスト42は、第1順番待ちリスト40と異なる。第2順番待ちリスト42も、各クライオポンプ10の識別情報(例えば識別番号)と順番とを対応付けるデータである。
【0040】
この実施形態では、コントローラ20は、第2順番待ちリスト42を複数のクライオポンプ10の前回の再生完了の順に基づいて決定するように構成されている。よって、第2順番待ちリスト42は、再生前に予め生成されている。第2順番待ちリスト42は、排出工程の後半、少なくとも第3減圧工程、例えば第2減圧工程以降で用いられる。第2順番待ちリスト42においては、複数のクライオポンプ10が複数のグループに分けられ、グループごとに順番が定められている。言い換えれば、第2順番待ちリスト42は、1以上のクライオポンプ10を同じ順番に設定することができる。第1グループのクライオポンプ10が優先して処理され、第1グループのクライオポンプ10が処理されてから、第2グループのクライオポンプ10が処理される。これに代えて、1つのグループ内のクライオポンプ10に順番が付されていてもよい。
【0041】
図4には、前回の再生がクライオポンプ(3)、(2)、(1)、(4)の順番に完了した場合が例示される。また、クライオポンプ(3)と(2)については同程度の時間でクールダウンが完了し、クライオポンプ(1)と(4)については、クライオポンプ(3)と(2)よりも遅いが、これら2つは同程度の時間でクールダウンが完了したものとする。第2順番待ちリスト42においては、再生すなわちクールダウン工程が遅く完了した順に従って(クールダウン工程の所要時間の降順に従って)、クライオポンプ(1)と(4)が第1グループ、クライオポンプ(3)と(2)が第2グループと順序付けられる。したがって、第2減圧工程(または第3減圧工程)は、第2順番待ちリスト42に従って、第1グループのクライオポンプ(1)と(4)について先に実行され、その後に、第2グループのクライオポンプ(3)と(2)について実行される。
【0042】
図5は、図3に示される第1減圧工程の一例を示すフローチャートである。第1減圧工程は、第1順番待ちリスト40における1番目のクライオポンプ10から実行される。図5に示されるように、コントローラ20は、パージバルブ26を閉じ、ラフバルブ24を開く(S40)。こうしてクライオポンプ10の第1減圧が行われる。第1減圧は、第1減圧時間(たとえば数十秒から1分程度)にわたる。コントローラ20は、タイマーを有しており、ラフバルブ24を開いてから第1減圧時間が経過するときラフバルブ24を閉じる(S41、S42)。
【0043】
コントローラ20は、クライオポンプ10の測定圧力Pを第1基準圧力P1と比較する(S44)。測定圧力Pは、圧力センサ22によって測定され、コントローラ20に入力される。第1基準圧力P1は、例えば300Paである。測定圧力Pが第1基準圧力P1以上の場合(S44のN)、コントローラ20は、パージバルブ26を開く(S46)。この場合、第1減圧工程が再び実行されるときまで、クライオポンプ10は、パージガスが供給された状態で待機する。コントローラ20は、測定圧力Pが大気圧に復帰したときまたは所定時間経過後にパージバルブ26を閉じてもよい。以降に第1減圧工程が再び行われることにより、ラフアンドパージが行われる。
【0044】
一方、測定圧力Pが第1基準圧力P1を下回る場合(S44のY)、コントローラ20は、第1順番待ちリスト40を参照し、第1順番待ちリスト40に従って次の順位のクライオポンプ10(第1減圧工程を先に行っているクライオポンプ10が1番目のクライオポンプ10である場合、第1順番待ちリスト40における2番目のクライオポンプ10)を選択し、この選択したクライオポンプ10について第1減圧工程を開始する(S48)。すなわち、コントローラ20は、第1順番待ちリスト40における次のクライオポンプ10のパージバルブ26を閉じ、ラフバルブ24を開く(S40)。こうして、クライオポンプ10の第1減圧(すなわち第1基準圧力P1への減圧)が行われる。
【0045】
また、コントローラ20は、第1減圧工程を先に行っているクライオポンプ10について、第1昇圧レートテストを実行する(S50)。前述のように、第1昇圧レートテストにおいては、ラフバルブ24の閉鎖によりクライオポンプ10を真空保持して第1所定時間を経過するときの第1基準圧力P1からの圧力上昇の大きさが検出され、この圧力上昇の大きさが第1しきい値未満であれば合格、第1しきい値以上であれば不合格と判定される。第1昇圧レートテストに合格の場合、コントローラ20は、第1合格フラグをオンに変更する(S52)。クライオポンプ10はそのまま真空保持される。第1昇圧レートテストに不合格の場合、コントローラ20は、パージバルブ26を開く(S46)。なお第1合格フラグの初期値はオフであり、第1昇圧レートテストに不合格の場合、第1合格フラグはオフのままである。
【0046】
このようにして、コントローラ20は、第1減圧工程を複数のクライオポンプ10に順番に実行する。第1順番待ちリスト40における最後(N番目)のクライオポンプ10の第1減圧工程の次は、再び1番目のクライオポンプ10に戻る。
【0047】
1番目のクライオポンプ10の第1合格フラグがオフである場合、コントローラ20は、1番目のクライオポンプ10の第1減圧工程をもう一度実行する。1番目のクライオポンプ10の第1合格フラグがオンである場合、コントローラ20は、1番目のクライオポンプ10の第1減圧工程をスキップし、2番目のクライオポンプ10に移行する。同様にして、2番目のクライオポンプ10およびそれ以降のクライオポンプ10についても順番に、第1合格フラグがオフの場合に第1減圧工程をもう一度行い、第1合格フラグがオンの場合に第1減圧工程をスキップして次のクライオポンプ10に移行する。すべてのクライオポンプ10の第1合格フラグがオンになると、コントローラ20は、第1減圧工程を終了し、第2減圧工程を開始する。
【0048】
図6は、図3に示される第2減圧工程の一例を示すフローチャートである。第2減圧工程は、第2順番待ちリスト42における第1グループのクライオポンプ10から実行される。第1グループに2以上のクライオポンプ10が含まれる場合には、そのうちいずれか1つのクライオポンプ10が任意に選択される(あるいは、第1グループのなかで順番が決められている場合には、その順番に従ってクライオポンプ10が選択される)。図6に示されるように、コントローラ20は、パージバルブ26を閉じ、ラフバルブ24を開く(S60)。こうしてクライオポンプ10の第2減圧が行われる。第2減圧は、第2減圧時間(たとえば数分程度)にわたる。すなわち、コントローラ20は、ラフバルブ24を開いてから第2減圧時間が経過するときラフバルブ24を閉じる(S61、S62)。
【0049】
コントローラ20は、クライオポンプ10の測定圧力Pを第2基準圧力P2と比較する(S64)。第2基準圧力P2は、例えば50Paである。測定圧力Pが第2基準圧力P2以上の場合(S64のN)、コントローラ20は、他のクライオポンプ10のラフバルブ24が閉じているか否かをチェックする(S66)。他のいずれかのクライオポンプ10のラフバルブ24が開いている場合(S66のN)、コントローラ20は、再びラフバルブ24をチェックする(S66)。他のすべてのクライオポンプ10のラフバルブ24が閉じている場合(S66のY)、第2減圧工程をもう一度実行する。
【0050】
一方、測定圧力Pが第2基準圧力P2を下回る場合(S64のY)、コントローラ20は、第2順番待ちリスト42を参照し、第2順番待ちリスト42に従って次の順位のクライオポンプ10(第1グループのクライオポンプ10について第2減圧工程を行っている場合、第1グループに含まれる別のクライオポンプ10を選択し、この選択したクライオポンプ10について第2減圧工程を開始する(S68)。コントローラ20は、第1グループから別のクライオポンプ10をランダムに選択してもよいし、第1グループのなかでの順番に従って選択してもよいし、または、優先度に基づいて選択してもよい(例えばラフバルブ24を閉じてからの経過時間が長いクライオポンプから選択してもよい)。ただし、第1グループに含まれるクライオポンプ10が1つだけの場合には、コントローラ20は、このステップ(S68)をスキップする。
【0051】
また、コントローラ20は、第2減圧工程を先に行っているクライオポンプ10について、第2昇圧レートテストを実行する(S70)。第2昇圧レートテストにおいては、ラフバルブ24の閉鎖によりクライオポンプ10を真空保持して第2所定時間を経過するときの第2基準圧力P2からの圧力上昇の大きさが検出され、この圧力上昇の大きさが第2しきい値未満であれば合格、第2しきい値以上であれば不合格と判定される。第2昇圧レートテストに合格の場合、コントローラ20は、第2合格フラグをオンに変更する(S72)。クライオポンプ10はそのまま真空保持される。第2昇圧レートテストに不合格の場合、コントローラ20は、他のクライオポンプ10のラフバルブ24が閉じているか否かをチェックする(S66)。第2合格フラグの初期値はオフであり、第2昇圧レートテストに不合格の場合、第2合格フラグはオフのままである。
【0052】
このようにして、コントローラ20は、第2減圧工程を第1グループのクライオポンプ10に順番に実行する。第1グループのすべてのクライオポンプ10の第2合格フラグがオンになると、コントローラ20は、第1グループのクライオポンプ10について、第2減圧工程を終了し、第3減圧工程を開始する。
【0053】
第3減圧工程は、第2減圧工程と同様である。ただし、第2減圧工程で使用されるパラメータに代えて、第3減圧工程のパラメータが使用される。すなわち、第2減圧時間、第2基準圧力に代えて、第3減圧時間、第3基準圧力が使用される。第3基準圧力は、例えば10Paである。また、第2昇圧レートテストに代えて、第3昇圧レートテストが実行される。第3昇圧レートテストに合格の場合、コントローラ20は、そのクライオポンプ10の第3合格フラグをオンに変更し、クールダウン工程を開始する。
【0054】
コントローラ20は、第3減圧工程を第1グループのクライオポンプ10に順番に実行し、第1グループのすべてのクライオポンプ10の第3合格フラグがオンになると、コントローラ20は、第2グループのクライオポンプ10について、第2減圧工程、第3減圧工程、クールダウン工程を実行する。すべてのグループについてクールダウン工程を終了するとき、クライオポンプシステム100の再生が完了する。
【0055】
以上、実施の形態に係るクライオポンプシステム100の構成を述べた。続いてその動作を説明する。
【0056】
真空排気運転が継続されることによりクライオポンプ10には気体が蓄積されていく。蓄積した気体を外部に排出するために、クライオポンプ10が再生される。再生を開始するとき吸気口17に設けられたゲートバルブが閉鎖され、クライオポンプ10は真空プロセス装置の真空チャンバから遮断される。
【0057】
複数のクライオポンプ10について同時に再生が開始され、並行して昇温されていく。捕捉した気体の量は、クライオポンプ10ごとに異なりうる。多量の気体を捕捉したクライオポンプ10は、昇温に時間がかかる。また、クライオポンプシステム100は、たとえば一部のクライオポンプ10が口径8インチであり、他の一部のクライオポンプが口径12インチであるというように、異なるサイズのクライオポンプ10を含む場合がある。大型のクライオポンプ10は、小型のものに比べて昇温に時間がかかる。同じサイズのクライオポンプ10であっても、個体差によりクライオポンプ10ごとに挙動に微妙な差異がありうる。こうした事情により、複数のクライオポンプ10の再生を同時に開始したとしても、それらクライオポンプ10どうしで昇温が完了するタイミングは異なることになり、さらに、再生の各工程が完全に同期することもなく、個々のクライオポンプ10で再生が完了するタイミングは異なる。
【0058】
排出工程では、ラフポンプ32によって各クライオポンプ10が排気される。ラフポンプ32の台数は、多くの場合、クライオポンプ10の台数より少なく、通例1台のみである。複数のクライオポンプ10の再生が互いに同期しないので、排出工程のある時点において各クライオポンプ10が有する圧力も互いに異なりうる。つまり、異なるクライオポンプ10間には圧力差が生じうる。仮に、複数のクライオポンプ10のラフバルブ24を同時に開きこれらクライオポンプ10を同時にラフポンプ32につないだとすると、クライオポンプ10間の圧力差により相対的に高圧のクライオポンプ10からラフ排気ライン30を通じて相対的に低圧のクライオポンプ10へと逆流が起こりうる。このようなガスの逆流は、再生時間の増加やクライオポンプ10の汚染の原因となりうるので、望ましくない。そこで、ラフポンプ32は、同時に1台のクライオポンプ10のみに接続される。そのため、コントローラ20は、あるクライオポンプ10のラフバルブ24が開いているときそれ以外のすべてのクライオポンプ10のラフバルブ24を閉じるように構成される。
【0059】
昇圧工程を完了したクライオポンプ10から順に排出工程が開始される。よって、排出工程の当初は、先に昇温を完了した1台または少数台のクライオポンプ10のみが第1順番待ちリスト40に載り、これらから第1減圧工程が始まる。昇温を完了したクライオポンプ10が増えるにつれて、それらクライオポンプ10も第1順番待ちリスト40に載り、第1減圧工程に参加するクライオポンプ10の台数も増えていく。
【0060】
第1順番待ちリスト40に従って、第1減圧工程では、ある1つのクライオポンプ10の真空保持(および第1昇圧レートテスト)と他の1つのクライオポンプ10の第1減圧が同時に行われる。第1減圧工程のある時点において、1台のクライオポンプ10で第1減圧が実行されるとき、残りのクライオポンプ10は、第1基準圧力への減圧後に真空保持されているか、またはパージガスが導入され大気圧で保持されている。真空保持されているクライオポンプ10においては、そのクライオポンプ10内の表面に吸着されている気体分子の脱離により、第1基準圧力から若干圧力が高まりうる。すべてのクライオポンプ10が第1昇圧レートテストに合格すると、第2減圧工程が始まる。
【0061】
第2順番待ちリスト42に従って、クールダウン工程の所要時間が長いクライオポンプ10から優先して、第2減圧工程と第3減圧工程が行われる。第2減圧工程でも、ある1つのクライオポンプ10の真空保持(および第2昇圧レートテスト)と他の1つのクライオポンプ10の第2減圧が同時に行われる。第2減圧工程のある時点において、1台のクライオポンプ10で第2減圧が実行されるとき、残りのクライオポンプ10のうち第2減圧工程をまだ開始していないクライオポンプ10は、第1基準圧力またはそれより若干高い圧力で真空保持され、その他のクライオポンプ10は、第2基準圧力またはそれより若干高い圧力で真空保持されている。
【0062】
第2昇圧レートテストに合格したクライオポンプ10については、第3減圧工程が始まる。同様にして、第3減圧工程でも、ある1つのクライオポンプ10の真空保持(および第3昇圧レートテスト)と他の1つのクライオポンプ10の第3減圧が同時に行われる。第3減圧工程のある時点において、1台のクライオポンプ10で第3減圧が行われているとき、残りのクライオポンプ10はそれぞれ減圧工程の段階に応じた圧力で真空保持されている。
【0063】
第3昇圧レートテストに合格したクライオポンプ10については、クールダウン工程が始まる。第2減圧工程と第3減圧工程がクールダウン工程の所要時間が長いクライオポンプ10から優先して行われるので、クールダウン工程もその所要時間が長いクライオポンプ10から行われることになる。このようにして、すべてのクライオポンプ10についてクールダウン工程を終了するとき、クライオポンプシステム100の再生が完了する。真空排気運転が再開される。
【0064】
ここで、1台のクライオポンプ10について、大気圧から目標圧力まで一気に減圧する場合と、減圧する最中に中間の圧力でいちど中断し、一時待機(一時的に真空保持)し、減圧を再開して目標圧力まで最終的に減圧する場合との比較を考える。目標圧力まで減圧する所要時間は、途中で中断し待機しているから、当然、後者のほうが長いと予想される。しかしながら、本発明者は、前者と後者で所要時間にほとんど差が無いケースがありうることを実験により見出した。本発明者は、この新たな知見を基礎として、あるクライオポンプ10を中間圧力で待機させ、その間に他のクライオポンプ10にラフポンプ32を利用させることを提案する。これにより、複数のクライオポンプ10の再生にかかるトータルの時間を短縮できると期待される。
【0065】
図7(a)から図7(d)は、クライオポンプをラフポンプで減圧するときの圧力の時間変化を示すグラフである。各図は本発明者による実験結果を示す。図7(a)は、大気圧(10Pa)から目標圧力(10Pa)まで一気に減圧する場合の圧力変化を示す。図7(b)は、大気圧から減圧する最中に中間圧力(50Pa)で中断し、1分間待機し、減圧を再開して目標圧力まで減圧する場合の圧力変化を示す。図7(c)および図7(d)はそれぞれ、待機時間を3分間、5分間とした場合の圧力変化を示す。
【0066】
図7(a)に示されるように、大気圧から目標圧力まで一気に減圧する場合、約7分かかっている。図7(b)に示されるように、50Paの中間圧力で1分間待機する場合にも、目標圧力への減圧の所要時間は、約7分である。驚くべきことに、途中で待機しているにもかかわらず、一気に減圧する場合と比べて、目標圧力への減圧の所要時間が変わらない。所要時間から待機時間を引くと、クライオポンプがラフポンプを占有する時間となる。図7(a)では、占有時間が7分であるのに対し、図7(b)では、占有時間が6分に短くなっている。同様に、図7(c)に示されるように、中間圧力で3分間待機する場合、目標圧力への減圧の所要時間は、約7分半であり、ラフポンプ占有時間は、4分半に短縮される。図7(d)に示されるように、中間圧力で5分間待機する場合、目標圧力への減圧の所要時間は、約9分であり、ラフポンプ占有時間は、4分に短縮される。
【0067】
待機時間を他のクライオポンプの減圧に利用することによって、ラフポンプの時間的な利用効率が高まる。大気圧から目標圧力まで一気に減圧するときには1台のクライオポンプしか減圧し得ない時間で、もう1台(またはそれより多くの)のクライオポンプを減圧することができる。例として、4台のクライオポンプを有するクライオポンプシステムでは、これら4台のクライオポンプを順番に一気に減圧する場合、トータルの減圧所要時間は、約28分となる。これに対して、50Paの中間圧力で5分間待機する場合、各クライオポンプのラフポンプ占有時間は4分であるから、トータルの減圧所要時間は理想的には16分まで短縮されうる。
【0068】
待機時間の間はクライオポンプが真空保持されるので、クライオポンプ内の表面に吸着されている気体分子の脱離により、クライオポンプ内の圧力がいくらか高まる。図7(b)では、1分間の真空保持により、圧力が約100Paに上昇している。図7(c)では、3分間の真空保持により、圧力が約105Paに上昇している。図7(d)では、5分間の真空保持により、圧力が約105Paに上昇している。
【0069】
図7(b)から図7(d)によれば、減圧速度が、真空保持の直前に比べて、真空保持後に減圧を再開した直後に大きくなっていることがわかる。これは、真空保持中の気体分子の脱離に起因すると考えられる。脱離したガスはクライオポンプ内の表面に再び吸着されうる。しかし、こうした再吸着では、気体分子は表面からの深さ方向において浅い領域に吸着される。そのため、減圧を再開したとき再び脱離しやすく、クライオポンプから排気されやすい。もし、真空保持ではなく、クライオポンプを大気圧で保持する場合には、減圧再開時にこのような減圧速度の向上は得られない。
【0070】
図8(a)から図8(c)は、クライオポンプをラフポンプで減圧するときの圧力の時間変化を示すグラフである。図8(a)から図8(c)には、中間圧力を20Paとして、待機時間を1分間、3分間、5分間とした場合の圧力変化を示す。図8(a)に示されるように、20Paの中間圧力で1分間待機する場合、目標圧力への減圧の所要時間は、約7分であり、ラフポンプ占有時間は、6分となる。図8(b)では、中間圧力で3分間待機する場合、目標圧力への減圧の所要時間は、約8分半であり、ラフポンプ占有時間は、5分半となる。図8(c)では、中間圧力で5分間待機する場合、目標圧力への減圧の所要時間は、約10分半であり、ラフポンプ占有時間は、5分半となる。したがって、中間圧力を異なる値に設定しても、同様の時間短縮を得られるものと期待される。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によると、コントローラ20は、ラフポンプ32によって複数のクライオポンプ10を順番に第1基準圧力まで減圧し、第1基準圧力まで減圧されたクライオポンプ10を真空保持し、ラフポンプ32によって複数のクライオポンプ10を第1基準圧力より低い第2基準圧力までさらに減圧するように構成されている。さらに、コントローラ20は、複数のクライオポンプ10のうちあるクライオポンプ10を真空保持している間に、他の一つのクライオポンプ10を第1基準圧力まで減圧するように構成されている。
【0072】
より具体的には、コントローラ20は、複数のクライオポンプ10の各々について、ラフポンプ32によって当該クライオポンプ10を第1基準圧力まで減圧して真空保持し、第1基準圧力より低い第2基準圧力までさらに減圧するように、当該クライオポンプ10の圧力センサ22による測定圧力に基づいて当該クライオポンプ10のラフバルブ24を制御する。コントローラ20は、複数のクライオポンプ10のうちあるクライオポンプ10を真空保持している間に他の一つのクライオポンプ10を第1基準圧力まで減圧するように、あるクライオポンプ10の圧力センサ22の測定圧力に基づいて他の一つのクライオポンプ10のラフバルブ24を開くように構成されている。例えば、コントローラ20は、あるクライオポンプ10の圧力センサ22の測定圧力を第1基準圧力と比較し、測定圧力が第1基準圧力を下回る場合、他の一つのクライオポンプ10のラフバルブ24を開くように構成されている。
【0073】
このように、あるクライオポンプ10の中間圧力での待機(真空保持)と別のクライオポンプ10の中間圧力への減圧を組み合わせることで、ラフポンプ32の時間的な利用効率を高め、再生時間を短縮することができる。
【0074】
コントローラ20は、複数のクライオポンプ10がラフポンプ32を使用する順番を定める第1順番待ちリスト40を備える。コントローラ20は、第1順番待ちリスト40に従ってあるクライオポンプ10を選択し、他の一つのクライオポンプ10として第1順番待ちリスト40におけるあるクライオポンプ10の次のクライオポンプ10を選択するように構成されている。第1順番待ちリスト40に従って選択されたクライオポンプ10のラフバルブ24が開かれるので、複数のラフバルブ24を同時に開く(すなわち複数のクライオポンプ10を同時にラフポンプ32につなぐ)ことが回避される。
【0075】
コントローラ20は、第1順番待ちリスト40を複数のクライオポンプ10の昇温完了の順に基づいて決定するように構成されている。各クライオポンプ10は、当該クライオポンプ10内の温度を測定する温度センサ23を備える。コントローラ20は、当該クライオポンプ10の温度センサ23による測定温度を再生温度と比較し、測定温度が再生温度を超える場合、当該クライオポンプ10を昇温完了と判定するように構成されている。
【0076】
このようにすれば、複数のクライオポンプ10を、昇温が早く完了するクライオポンプ10から順に第1順番待ちリスト40に並べることができる。昇温の完了したクライオポンプ10から排出工程を速やかに順次始めることができるので、再生時間を短縮することができる。
【0077】
コントローラ20は、複数のクライオポンプ10がラフポンプ32を使用する順番を定め、第1順番待ちリスト40と異なる第2順番待ちリスト42を備える。コントローラ20は、第2順番待ちリスト42に従って複数のクライオポンプ10のうち一のクライオポンプ10を選択し、選択されたクライオポンプ10を第2基準圧力まで減圧して真空保持し、第2基準圧力より低い第3基準圧力までさらに減圧するように、選択されたクライオポンプ10の圧力センサ22による測定圧力に基づいて選択されたクライオポンプ10のラフバルブ24を制御する。それとともに、コントローラ20は、選択されたクライオポンプ10を真空保持している間に、第2順番待ちリスト42における選択されたクライオポンプ10の次のクライオポンプ10を第2基準圧力まで減圧するように、選択されたクライオポンプ10の圧力センサ22の測定圧力に基づいて次のクライオポンプ10のラフバルブ24を開くように構成されている。このようにすれば、第2減圧工程についても、真空保持と減圧を組み合わせることで、ラフポンプ32の時間的な利用効率が高まり、再生時間を短縮することができる。
【0078】
コントローラ20は、第2順番待ちリスト42を複数のクライオポンプ10の前回の再生完了の順に基づいて決定するように構成されている。このようにすれば、複数のクライオポンプ10を、再生完了またはクールダウン完了に長い時間を要するクライオポンプ10から順に第2順番待ちリスト42に並べることができる。再生完了に時間のかかるクライオポンプ10が優先して再冷却されるので、再生時間を短縮することができる。
【0079】
コントローラ20は、複数のクライオポンプ10の各々について、当該クライオポンプ10を真空保持している間に、当該クライオポンプ10の圧力センサ22の測定圧力に基づいて当該クライオポンプ10に第1基準圧力のもとで第1昇圧レートテストを実行するように構成されている。このようにすれば、あるクライオポンプ10の第1昇圧レートテストと別のクライオポンプ10の減圧が同時に行われる。これも、再生時間の短縮に役立つ。
【0080】
既存の再生シーケンスではクライオポンプごとに大気圧から最終的な目標圧力(例えばクライオポンプの動作開始圧力)まで連続的に減圧されうる。この場合、本発明者の経験上、クライオポンプのサイズや個体差など諸事情によって、ラフポンプの奪い合いに負けがちなクライオポンプが現れることがある。このクライオポンプの再生完了が他のクライオポンプに比べて著しく遅れ、それにより、クライオポンプシステムのトータルの再生時間がかなり長くなりうる。
【0081】
これに対して、本実施形態では、コントローラ20は、複数のクライオポンプ10のすべてが第1昇圧レートテストに合格した場合に、複数のクライオポンプ10を順番に第2基準圧力までさらに減圧するように構成されている。すべてのクライオポンプ10について第1減圧工程を完了してから第2減圧工程に進むことにより、ラフポンプ32の奪い合いに負けがちなクライオポンプ10の出現を回避し、再生時間を短縮することができる。
【0082】
本実施形態では、第1基準圧力は、600~50Paの範囲から選択され、第2基準圧力は、100~10Paの範囲から選択される。このようにすれば、ラフポンプの利用効率向上とそれによる再生時間の短縮という有利な効果が期待される。また、第1基準圧力は、水の三重点圧力(611Pa)より低いので、第1減圧工程における水蒸気の液化を避けられる。クライオポンプ10は吸着材として通例、活性炭を有するが、再生により活性炭の効率的に脱水するには、第1基準圧力は、300Pa以下であることが好ましい。
【0083】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0084】
上述の実施の形態では、再生の排出工程は3段階の減圧工程を含むが、ある実施の形態においては、排出工程は、2段階の減圧工程により行われてもよい。この場合、第1基準圧力は、600~10Paの範囲、好ましくは300~20Paの範囲から選択されてもよい。第2基準圧力は、クライオポンプ10の動作開始圧力である10~1Paの範囲から選択されてもよい。
【0085】
上述の実施の形態では、第1順番待ちリスト40は、再生中に昇温完了の順に従って生成されるが、ある実施の形態においては、第1順番待ちリスト40は、再生前に予め生成されてもよい。例えば、第1順番待ちリスト40は、複数のクライオポンプの前回の再生完了の順、または前回の再生におけるクールダウン所要時間の順に基づいて決定されてもよい。再生全体またはクールダウンの所要時間は、昇温工程の所要時間と関連すると考えられる。すなわち、早く昇温されるクライオポンプは、早く冷却されると予想される。したがって、第1順番待ちリスト40は、再生全体またはクールダウンの所要時間の昇順に従って決定されてもよい。また、第1順番待ちリスト40において、第2順番待ちリスト42のように、複数のクライオポンプ10が複数のグループに分けられてもよい。
【0086】
また、上述の実施の形態では、第2順番待ちリスト42は、再生前に予め生成されるが、ある実施の形態においては、再生中に生成されてもよい。例えば、第2順番待ちリスト42は、第1順番待ちリスト40に基づいて生成されてもよい。上述のように、早く昇温されるクライオポンプは、早く冷却されると予想される。したがって、第2順番待ちリスト42は、昇温工程の所要時間の降順に従って決定されてもよい。例えば、第2順番待ちリスト42は、第1順番待ちリスト40の逆の順番でもよい。また、第2順番待ちリスト42において、第1順番待ちリスト40のように、グループ分けをすることなく、複数のクライオポンプ10が単純に順番付けられてもよい。
【0087】
上述の実施の形態では、第1順番待ちリスト40と第2順番待ちリスト42は異なっているが、それは必須ではなく、排出工程を通じて1つの同じ順番待ちリストが使用されてもよい。
【0088】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0089】
10 クライオポンプ、 20 コントローラ、 22 圧力センサ、 23 温度センサ、 24 ラフバルブ、 32 ラフポンプ、 40 第1順番待ちリスト、 42 第2順番待ちリスト、 100 クライオポンプシステム。
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図8