(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】ロボットアーム及び関節構造
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
B25J19/00 D
(21)【出願番号】P 2020098080
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】平田 政貴
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-036153(JP,A)
【文献】特開昭60-076989(JP,A)
【文献】特開2016-156408(JP,A)
【文献】特開平08-090484(JP,A)
【文献】米国特許第06145403(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームと、前記アームを回動可能に支持する関節部と、を備えるロボットアームであって、
前記関節部には磁石が設けられ、
前記磁石は、前記アームが所定の基準状態から回動するに伴って、当該アームを前記基準状態に復帰させる方向の磁力を当該アームに作用させるように配置され、
前記関節部は、回動しないベース部に対し、前記アームを水平な中心軸回りに回動可能に連結し、
前記磁石は、前記ベース部に連結された第1永久磁石と、前記アームに連結された第2永久磁石とを含み、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石は、前記中心軸に垂直な径方向に異なる位置に配置され、前記アームの前記中心軸回りの回動に伴って前記中心軸回りの周方向に接離し、
前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の少なくとも一方は、前記中心軸に沿った軸方向に移動可能に構成されている、
ロボットアーム。
【請求項2】
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石との間の前記径方向の位置に、導電体が配置されている、
請求項1に記載のロボットアーム。
【請求項3】
アームと、前記アームを回動可能に支持する関節部と、を備えるロボットアームであって、
前記関節部には磁石が設けられ、
前記磁石は、前記アームが所定の基準状態から回動するに伴って、当該アームを前記基準状態に復帰させる方向の磁力を当該アームに作用させるように配置され、
前記関節部は、回動しないベース部に対し、前記アームを水平な中心軸回りに回動可能に連結し、
前記磁石は、前記ベース部に連結された第1永久磁石と、前記アームに連結された第2永久磁石とを含み、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石は、前記中心軸に垂直な径方向に異なる位置に配置され、前記アームの前記中心軸回りの回動に伴って前記中心軸回りの周方向に接離し、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石との間の前記径方向の位置に、導電体が配置されている、
ロボットアーム。
【請求項4】
前記基準状態は、前記アームの重心が前記中心軸を含む鉛直面内に位置する状態である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のロボットアーム。
【請求項5】
前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の各々は、前記中心軸回りの周上のうち前記中心軸を挟んだ反対側の2箇所に配置され、前記中心軸に垂直な径方向の内側と外側とで異なる極性を有し、
2つの前記第1永久磁石は、前記中心軸に垂直な径方向の極性の位置が互いに反対に配置され、
2つの前記第2永久磁石は、
前記アームが前記基準状態のときに、2つの前記第1永久磁石と対応する周方向位置に位置し、
前記径方向の極性の位置が、互いに反対に配置され、かつ、前記アームが前記基準状態のときに対応する前記第1永久磁石と同様に配置されている、
請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載のロボットアーム。
【請求項6】
アーム部材と、前記アーム部材を回動可能に支持する関節部と、を備える関節構造であって、
前記関節部には磁石が設けられ、
前記磁石は、前記アーム部材が所定の基準状態から回動するに伴って、当該アーム部材を前記基準状態に復帰させる方向の磁力を当該アーム部材に作用させるように配置され、
前記関節部は、回動しないベース部に対し、前記アーム部材を水平な中心軸回りに回動可能に連結し、
前記磁石は、前記ベース部に連結された第1永久磁石と、前記アーム部材に連結された第2永久磁石とを含み、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石は、前記中心軸に垂直な径方向に異なる位置に配置され、前記アーム部材の前記中心軸回りの回動に伴って前記中心軸回りの周方向に接離し、
前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の少なくとも一方は、前記中心軸に沿った軸方向に移動可能に構成されている、
関節構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアーム及び関節構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアーム等の関節構造として、アームの自重を補償する機構を備えるものが知られている。
特許文献1には、ばね等の弾性体によりアームの変位に応じた力を発生させて自重を補償するアーム装置が記載されている。
特許文献2には、関節部の回転軸方向に対向させた磁石と平板コイルを用い、磁力を利用するロボットの自重補償装置が記載されている。
また、他の技術として、アームの基端側に自重を相殺するカウンターウェイトを設ける機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/051665号
【文献】特開昭60-076989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ばね等の弾性体を伸縮させる必要があるため、機構が大型化・複雑化しやすい。また、関節部の動作範囲が制限される、弾性体による補償力の設計が難しい等の問題もある。
特許文献2に記載の技術では、平板コイルへの電力供給が必要なため、装置全体として構成が複雑化する。
また、カウンターウェイトを設ける場合には、カウンターウェイトにより機構が大型化・重量化してしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡便な構成で好適にアームの自重を補償することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アームと、前記アームを回動可能に支持する関節部と、を備えるロボットアームであって、
前記関節部には磁石が設けられ、
前記磁石は、前記アームが所定の基準状態から回動するに伴って、当該アームを前記基準状態に復帰させる方向の磁力を当該アームに作用させるように配置され、
前記関節部は、回動しないベース部に対し、前記アームを水平な中心軸回りに回動可能に連結し、
前記磁石は、前記ベース部に連結された第1永久磁石と、前記アームに連結された第2永久磁石とを含み、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石は、前記中心軸に垂直な径方向に異なる位置に配置され、前記アームの前記中心軸回りの回動に伴って前記中心軸回りの周方向に接離し、
前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の少なくとも一方は、前記中心軸に沿った軸方向に移動可能に構成されている。
また、本発明は、アームと、前記アームを回動可能に支持する関節部と、を備えるロボットアームであって、
前記関節部には磁石が設けられ、
前記磁石は、前記アームが所定の基準状態から回動するに伴って、当該アームを前記基準状態に復帰させる方向の磁力を当該アームに作用させるように配置され、
前記関節部は、回動しないベース部に対し、前記アームを水平な中心軸回りに回動可能に連結し、
前記磁石は、前記ベース部に連結された第1永久磁石と、前記アームに連結された第2永久磁石とを含み、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石は、前記中心軸に垂直な径方向に異なる位置に配置され、前記アームの前記中心軸回りの回動に伴って前記中心軸回りの周方向に接離し、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石との間の前記径方向の位置に、導電体が配置されている。
【0007】
また、本発明は、アーム部材と、前記アーム部材を回動可能に支持する関節部と、を備える関節構造であって、
前記関節部には磁石が設けられ、
前記磁石は、前記アーム部材が所定の基準状態から回動するに伴って、当該アーム部材を前記基準状態に復帰させる方向の磁力を当該アーム部材に作用させるように配置され、
前記関節部は、回動しないベース部に対し、前記アーム部材を水平な中心軸回りに回動可能に連結し、
前記磁石は、前記ベース部に連結された第1永久磁石と、前記アーム部材に連結された第2永久磁石とを含み、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石は、前記中心軸に垂直な径方向に異なる位置に配置され、前記アーム部材の前記中心軸回りの回動に伴って前記中心軸回りの周方向に接離し、
前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の少なくとも一方は、前記中心軸に沿った軸方向に移動可能に構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡便な構成で好適にアームの自重を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るロボットアームを示す側面図である。
【
図2】実施形態に係る第1関節部の構造を示す図であって、(a)が軸方向から見た図であり、(b)が(a)のII-II線での断面図である。
【
図3】実施形態に係る第1関節部の動作を説明するための図であって、(a)は第1アームの起立状態を示す図であり、(b)は第1アームが起立状態から回転した状態を示す図である。
【
図4】実施形態の第1の変形例に係る関節部を示す図であり、(a)が軸方向に沿った断面図、(b)が部分的な断面斜視図である。
【
図5】実施形態の第2の変形例に係る関節部を示す図であり、(a)が軸方向から見た図であり、(b)が(a)のV-V線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[ロボットアームの全体構成]
図1は、本実施形態に係るロボットアーム1を示す側面図である。
この図に示すように、ロボットアーム1は、例えば垂直多関節ロボットであり、ベース部21と、複数のアーム22(本実施形態では、ベース部21側から順に第1アーム22a~第3アーム22c)と、エンドエフェクタ23と、複数の関節部24(本実施形態では、ベース部21側から順に第1関節部24a~第3関節部24c)とを有している。
【0012】
複数の関節部24は、ベース部21と、複数のアーム22とを直列に連結している。具体的には、第1関節部24aがベース部21と第1アーム22aを、第2関節部24bが第1アーム22aと第2アーム22bを、第3関節部24cが第2アーム22bと第3アーム22cを、それぞれ水平軸回りに相対回転可能に連結している。各関節部24には、アーム22を駆動するモータやエンコーダが設けられている(図示省略)。
【0013】
[関節部の構造]
図2は、第1関節部24aの構造を示す図であって、(a)が軸方向から見た図であり、(b)が(a)のII-II線での断面図である。
図3は、第1関節部24aの動作を説明するための図であって、(a)は第1アーム22aの起立状態を示す図であり、(b)は第1アーム22aが起立状態から回転した状態を示す図である。
図2(a)、(b)に示すように、第1関節部24aは、第1アーム22aに連結された円筒状の内輪31と、ベース部21に連結された円筒状の外輪32と、複数の転動体33とを備える。これらは玉軸受を構成しており、ベース部21と第1アーム22aとを略水平な中心軸Ax回りに互いに回動可能に連結している。
以下では、中心軸Axに沿った方向を「軸方向」、中心軸Axに垂直な方向を「径方向」、中心軸Axを中心とする回動方向を「周方向」という。
【0014】
内輪31及び外輪32は、転動体33が配置された軸方向の一方側(
図2(b)の左側)とは反対の他方側(
図2(b)の右側)に延出している。
内輪31の外周面のうち、軸方向の他方側には、円筒状の内側磁石部材34が取り付けられている。内側磁石部材34は、永久磁石である2つの内側磁石341(341a、341b)と、非磁性体である2つの樹脂モールド部342とを有する。内側磁石341と樹脂モールド部342とは、それぞれ中心角90度の円弧(部分円筒)状に形成され、周方向に交互に配置されている。各内側磁石341は、後述するように、内径側と外径側とで異なる極性を有している。
【0015】
外輪32の内周面のうち、軸方向の他方側には、円筒状の外側磁石部材35が取り付けられている。外側磁石部材35は、内側磁石部材34と対応する軸方向位置に配置されており、所定の隙間を介在させて内側磁石部材34と径方向に対向している。外側磁石部材35は、永久磁石である2つの外側磁石351(351a、351b)と、非磁性体である2つの樹脂モールド部352とを有する。外側磁石351と樹脂モールド部352とは、それぞれ中心角90度の円弧(部分円筒)状に形成され、周方向に交互に配置されている。各外側磁石351は、後述するように、内径側と外径側とで異なる極性を有している。
【0016】
内側磁石部材34の内側磁石341と、外側磁石部材35の外側磁石351とは、第1アーム22aの回動に伴って周方向に接離し、第1アーム22a(内輪31)とベース部21(外輪32)との相対的な周方向位置に応じた磁力を相互に作用させる。
具体的には、
図3(a)に示すように、固定された(回動しない)ベース部21に対して第1アーム22aが直立した起立状態において、内側磁石341と外側磁石351とが相互に最大の吸引力(磁力)を作用させる。第1アーム22aの「起立状態」とは、すなわち、第1アーム22aの重心Gが中心軸Axを含む略鉛直面内に位置し、第1アーム22aの自重トルク(自重による回動トルク)がほぼ生じない状態である。
【0017】
本実施形態では、ベース部21(外輪32)と一体的な2つの外側磁石351が、鉛直方向の上側と下側の対向する2箇所に配置されている。2つの外側磁石351は、径方向の極性の位置が互いに反対に配置されている。具体的には、上側の外側磁石351aでは、外径側がN極、内径側がS極となっており、下側の外側磁石351bでは、外径側がS極、内径側がN極となっている。
【0018】
一方、第1アーム22a(内輪31)と一体的な2つの内側磁石341は、第1アーム22aが起立状態のときに、外側磁石351と対応する上側と下側に位置するように配置されている。2つの内側磁石341は、径方向の極性の位置が、互いに反対に配置され、かつ、第1アーム22aが起立状態のときにギャップを介して対向する各外側磁石351と同様に(すなわち、当該外側磁石351と異極性が対向するように)配置されている。具体的には、第1アーム22aが起立状態のときに上側に位置する内側磁石341aでは、外径側がN極、内径側がS極となっており、第1アーム22aが起立状態のときに下側に位置する内側磁石341bでは、外径側がS極、内径側がN極となっている。
【0019】
このような構成により、
図3(b)に示すように、第1アーム22aが起立状態から回動すると、第1アーム22aとともに内輪31が回動する。すると、内輪31の内側磁石341には、外側磁石351との間で最大の吸引力を作用させる状態、すなわち第1アーム22aの自重トルクが生じない起立状態に復帰するように、起立状態からの回動角度に応じた復元力Fが作用する。これにより、第1アーム22aの自重トルクを補償できる。
【0020】
またこのとき、2つの外側磁石351は、径方向の極性の位置が互いに反対に配置され、2つの内側磁石341は、径方向の極性の位置が、互いに反対に配置され、かつ、第1アーム22aが起立状態のときに対応する各外側磁石351と同様に配置されている。
そのため、第1アーム22aの自重トルクが生じない起立状態では、内側磁石341と外側磁石351とで異極性が対向して最大の吸引力が作用する。また、第1アーム22aの自重トルクが最大となる回動角度90°の状態では、内側磁石341と外側磁石351とで位相角が90°となる。そして、第1アーム22aの自重トルクが生じない回動角度180°の状態では、内側磁石341と外側磁石351とで同極性が対向して最大の斥力が作用する。
これにより、第1アーム22aの回動角度360°の範囲で、第1アーム22aの自重トルクを補償できる。
【0021】
なお、内側磁石341と外側磁石351の各々は、鉛直方向の上側と下側に配置されていなくともよく、第1アーム22aが起立状態のときに2つの内側磁石341と2つの外側磁石351とが対応する周方向位置に位置するように、中心軸Axを挟んだ反対側の2箇所に配置されていればよい。さらに言えば、内側磁石341と外側磁石351は、第1アーム22aが所定の基準状態から回動するに伴って、当該第1アーム22aを基準状態に復帰させる方向の磁力を当該第1アーム22aに作用させるように設けられていればよく、数量や位置等は特に限定されない。永久磁石でなくともよい。
【0022】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、内側磁石341と外側磁石351が、第1アーム22aの所定の基準状態(起立状態)からの回動に伴って、当該第1アーム22aを起立状態に復帰させる方向の磁力(復元力F)を当該第1アーム22aに作用させる。
これにより、永久磁石を設けるだけの簡便な構成で、好適に第1アーム22aの自重トルクを補償することができる。ひいては、関節部24(第1関節部24a)のペイロードを増大できるとともに、関節動作の応答性を向上できる。
【0023】
また、本実施形態によれば、内側磁石341及び外側磁石351として永久磁石を用いるので、コイル(電磁石)等の電力供給を必要とする機構を用いる場合に比べ、省エネ化を図れるとともに、停電時のアームの落下を防止できる。
【0024】
また、本実施形態によれば、2つの外側磁石351は、径方向の極性の位置が互いに反対に配置され、2つの内側磁石341は、径方向の極性の位置が、互いに反対に配置され、かつ、第1アーム22aが起立状態のときに対応する各外側磁石351と同様に配置されている。
そのため、内側磁石341と外側磁石351とは、第1アーム22aの自重トルクが生じない起立状態では異極性が対向して最大の吸引力を作用させ、第1アーム22aの自重トルクが最大となる回動角度90°の状態では位相角が90°となり、第1アーム22aの自重トルクが生じない回動角度180°の状態では同極性が対向して最大の斥力を作用させる。
これにより、第1アーム22aの回動角度360°の範囲で、第1アーム22aの自重トルクを補償できる。
【0025】
[変形例1]
図4は、上記実施形態の関節部24(第1関節部24a)の第1の変形例を示す図であり、(a)が軸方向に沿った断面図、(b)が部分的な断面斜視図である。
本変形例の関節部24Aは、内側磁石341と外側磁石351の軸方向の距離を変更できるように構成されている。本例では、関節部24Aが、特に限定はされないが、上記実施形態における第1関節部24aに代えて、ベース部21と第1アーム22aとを中心軸Ax回りに回動可能に連結するものとする。
【0026】
具体的に、関節部24Aは、
図4(a)、(b)に示すように、外筒部材41と、シャフト42とを備える。これらは中心軸Ax回りに同心状に配置されている。
外筒部材41は、略円筒状に形成され、内周面に外側磁石部材35が取り付けられている。また、外筒部材41は、ベース部21に連結されている。外側磁石部材35は、上記実施形態と同様に構成され、外側磁石351を有する。
シャフト42は、外筒部材41の内側に配置されている。シャフト42は、ベース軸部材421と、付勢ばね422と、キャップ部材423とを備える。
【0027】
ベース軸部材421は、基端側(
図4(a)の下側)で回動軸43に固定されている。回動軸43は、支持部材44との間に配置された軸受45により、中心軸Ax回りに回動可能に支持されている。回動軸43は第1アーム22aに連結され、支持部材44はベース部21に連結されている。
ベース軸部材421の基端部には、鍔部421aが設けられている。
ベース軸部材421の先端部には、雄ネジが形成されている。
また、ベース軸部材421は、内側磁石部材34に挿通されている。内側磁石部材34は、上記実施形態と同様に構成され、内側磁石341を有する。ただし、内側磁石部材34は、内筒部材343の外周面に固定されている。内筒部材343は、ベース軸部材421(の外周面)に対し、図示しない回り止めにより、相対回転することなく軸方向に移動可能なように嵌合されている。
【0028】
付勢ばね422は、ベース軸部材421が先端側から挿通され、ベース軸部材421の鍔部421aと内側磁石部材34との間に配置されている。付勢ばね422は、内側磁石部材34を軸方向の先端側に付勢している。
【0029】
キャップ部材423は、基端側に雌ネジが形成されており、付勢ばね422と内側磁石部材34をベース軸部材421との間で軸方向に挟持した状態で、ベース軸部材421の先端の雄ネジに締結されている。より詳しくは、キャップ部材423の基端面とベース軸部材421の鍔部421aとの間に、付勢ばね422と内側磁石部材34とが基端側からこの順に挟持されている。これにより、内側磁石部材34がキャップ部材423と付勢ばね422によって軸方向に保持されている。
【0030】
キャップ部材423の先端部423aは、六角頭状に形成されるとともに外筒部材41から露出している。この先端部423aに六角レンチ等の治工具を嵌め、ベース軸部材421に対してキャップ部材423を回転させて軸方向に移動させることにより、内側磁石部材34が軸方向に移動する。なお、先端部423aの形状は、キャップ部材423に回転トルクを加える治工具を係止できる形状であれば、六角頭状でなくともよく、例えば対向する二面を有する形状や六角穴等であってもよい。
【0031】
このような構成により、本変形例の関節部24Aでは、内側磁石部材34を軸方向に移動させて、内側磁石341と外側磁石351との軸方向の距離(位置)を調整できる。これにより、内側磁石341と外側磁石351との間で作用する磁力の強さを調整し、ひいては、第1アーム22aの自重トルクの補償力を調整することができる。
なお、内側磁石部材34(内側磁石341)を軸方向に移動させる構成に限定されず、内側磁石341と外側磁石351の少なくとも一方が軸方向に移動可能に構成されていればよい。
【0032】
[変形例2]
図5は、上記実施形態の関節部24(第1関節部24a)の第2の変形例を示す図であり、(a)が軸方向から見た図であり、(b)が(a)のV-V線での断面図である。
本変形例の関節部24Bでは、
図5(a)、(b)に示すように、外側磁石部材35の内周面に円筒状の導電体51が取り付けられている。ただし、導電体51は、内側磁石341と外側磁石351との間の径方向位置に配置されていればよく、内側磁石部材34の外周面に取り付けられていてもよいし、軸方向に配置した別の部材に支持されていてもよい。
【0033】
このような構成により、内側磁石341と外側磁石351の相対回転に伴って、これらの間で磁場が変化し、この磁場中に配置された導電体51に渦電流が発生する。これにより、減衰効果を生じさせることができる。減衰効果の程度は、導電体51の形状や材料を変えることで調整できる。また、この構成は上記第1の変形例における関節部24Aにも適用できる。
【0034】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、回動しないベース部21と第1アーム22aとを連結する第1関節部24aの構造を例に挙げて説明した。しかし、当該第1関節部24aの構造は、鉛直方向に対してそれぞれ回動する2つのアーム22を連結する他の関節部24(24b、24c)にも適用できる。この場合、アーム22の基準状態(上記実施形態における起立状態)は、特に限定はされないが、例えば、アーム22の重心方向(中心軸Axと重心Gを結ぶ方向)が鉛直方向に対して所定の向きにある状態である。
【0035】
また、上記実施形態では、中心軸Axが略水平であることとしたが、中心軸Axは鉛直方向と交差する方向であればよい。
【0036】
また、上記実施形態では、本発明をロボットアーム(の関節部)に適用した場合について説明した。しかし、本発明は、ロボットアームに限定されず、アーム部材を支持する関節部を備える関節構造に広く適用可能である。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ロボットアーム
21 ベース部
22 アーム
22a 第1アーム
24、24A、24B 関節部
24a 第1関節部
31 内輪
32 外輪
34 内側磁石部材
35 外側磁石部材
51 導電体
341 内側磁石(第2永久磁石)
351 外側磁石(第1永久磁石)
Ax 中心軸
F 復元力
G 第1アームの重心