(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】信号出力装置およびキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
G05B23/02 V
G05B23/02 E
(21)【出願番号】P 2020122064
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】原島 昇
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 高志
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-192973(JP,A)
【文献】特開2013-021599(JP,A)
【文献】特開2012-169860(JP,A)
【文献】特開平08-023275(JP,A)
【文献】特開2007-124051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器を制御または操作するための信号を上位装置から受信して、該信号の形式を前記機器が処理可能な形式に変換する信号出力装置であって、
前記信号を前記上位装置から受信する通信部と、
前記形式の変換によって生じる、前記信号が示す信号値の誤差を低減させるための補正値を記憶する記憶部と、
前記通信部が前記上位装置から受信した前記信号を、前記補正値を用いて、前記機器が処理可能な前記形式の信号に変換する演算変換部と、
前記演算変換部による変換後の前記信号を、前記機器に出力する出力部と、
を備え、
前記出力部は、
複数の前記機器と接続された複数の出力端子を有し、
前記演算変換部は、
前記複数の出力端子と、複数の第1伝送経路を介して接続され、
前記記憶部は、
前記機器、該機器と接続されている出力端子、または、該出力端子に接続されている前記第1伝送経路を特定する特定情報を記憶し、
前記演算変換部は、
前記通信部が前記上位装置から受信した前記信号が示す設定値からの、前記形式の変換後における前記信号値の前記誤差と、該誤差を低減させる前記補正値とを演算し、前記記憶部における前記補正値を、演算した前記補正値によって書き換える
ものであり、
1以上の前記機器を制御または操作するための、1以上の前記信号を、前記通信部が受信した場合において、前記特定情報に基づいて、前記形式の変換後の前記1以上の信号の各々を、1以上の前記第1伝送経路の各々の側へ出力するための分離部を更に有する、信号出力装置。
【請求項2】
前記記憶部は、
前記機器、該機器と接続されている出力端子、または、該出力端子に接続されている前記第1伝送経路を特定する前記特定情報と、前記機器を制御または操作するための前記信号の前記形式の変換によって生じる前記誤差を低減させる前記補正値と、を関連付けて記憶し、
前記演算変換部は、
前記複数の機器のうちの1以上の前記機器を制御または操作するための、1以上の前記信号を、前記通信部が受信した場合において、前記1以上の機器の各々、該1以上の機器と接続されている1以上の前記出力端子の各々、または、該1以上の出力端子と接続されている1以上の前記第1伝送経路の各々を特定する前記特定情報と関連付けられた前記補正値を用いて、前記1以上の信号の各々を、前記1以上の機器の各々が処理可能な前記形式の前記信号に変換する、請求項
1に記載の信号出力装置。
【請求項3】
機器を制御または操作するための信号を上位装置から受信して、該信号の形式を前記機器が処理可能な形式に変換する信号出力装置であって、
前記信号を前記上位装置から受信する通信部と、
前記形式の変換によって生じる、前記信号が示す信号値の誤差を低減させるための補正値を記憶する記憶部と、
前記通信部が前記上位装置から受信した前記信号を、前記記憶部に記憶されている前記補正値を用いて補正する演算部と、前記演算部が補正した前記信号を、前記機器が処理可能な前記形式に変換する第1変換部と、を有する演算変換部と、
前記演算変換部による変換後の前記信号を、前記機器に出力する出力部と、
前記第1変換部による変換後の前記信号を、該第1変換部による変換前の前記形式に変換する第2変換部と、を備え、
前記出力部は、複数の前記機器と接続された複数の出力端子を有し、
前記演算変換部の複数の前記第1変換部は、前記複数の出力端子と、複数の第1伝送経路を介して接続されており、
前記記憶部は、
前記機器、該機器と接続されている前記出力端子、該出力端子に接続されている前記第1伝送経路、または、該出力端子と接続されている前記第1変換部を特定する特定情報と、前記機器を制御または操作するための前記信号の前記形式の変換によって生じる前記誤差を低減させる前記補正値と、を関連付けて記憶し、
前記演算部は、
前記第2変換部による変換後の前記信号が示すフィードバック値の、前記通信部が前記上位装置から受信した前記信号が示す設定値からの前記誤差と、該誤差を低減させる前記補正値とを演算し、前記記憶部における前記補正値を、演算した前記補正値によって書き換え、
前記複数の機器のうちの1以上の前記機器を制御または操作するための、1以上の前記信号を、前記通信部が受信した場合において、前記1以上の機器の各々、該1以上の機器と接続されている1以上の前記出力端子の各々、該1以上の出力端子と接続されている1以上の前記第1伝送経路の各々、または、該1以上の出力端子と接続されている1以上の前記第1変換部の各々を、特定する前記特定情報と関連付けられた前記補正値を用いて、前記1以上の信号の各々を補正し、
前記演算変換部は、更に、
前記演算部による補正後の前記1以上の信号の各々を、前記1以上の第1変換部の各々へ出力するための分離部を有し、
前記第2変換部は、
前記1以上の第1変換部による変換後の前記1以上の信号を、前記1以上の第1変換部による変換前の前記形式に変換し、
前記演算部は、
前記第2変換部による変換後の前記1以上の信号の各々が示すフィードバック値の、前記1以上の第1変換部の各々による変換前の前記1以上の信号の各々が示す前記設定値からの前記誤差と、該誤差を低減させる前記補正値とを演算し、前記記憶部における前記補正値を、演算した前記補正値によって書き換える、信号出力装置。
【請求項4】
前記記憶部は、
前記演算部と一体的に設けられ、前記補正値を記憶する主記憶部と、
前記演算部とは別個に設けられ、前記補正値を記憶する、不揮発性の副記憶部と、
を有し、
前記演算部は、
前記信号出力装置の起動時において、前記副記憶部に記憶された前記補正値を前記主記憶部に読み込み、
前記信号出力装置の運転時には、前記主記憶部に記憶された前記補正値を用いて、前記通信部が受信した前記信号を補正し、
前記補正値の演算毎に、前記主記憶部に記憶されている前記補正値を、演算した前記補正値によって書き換え、
前記運転時において、予め定められた時間が経過した場合には、前記主記憶部に記憶されている前記補正値によって、前記副記憶部に記憶されている前記補正値を書き換える、請求項
3に記載の信号出力装置。
【請求項5】
機器を制御または操作するための信号を上位装置から受信して、該信号の形式を前記機器が処理可能な形式に変換する信号出力装置によって実行されるキャリブレーション方法であって、
前記信号出力装置は、
前記形式の変換によって生じる、前記信号が示す信号値の誤差を低減させるための補正値を記憶する記憶部
と、
変換後の前記信号を、前記機器に出力する出力部であって、複数の前記機器と接続された複数の出力端子を有する出力部と、を備え、
前記信号出力装置は、前記複数の出力端子と、複数の第1伝送経路を介して接続され、
前記記憶部は、前記複数の機器、該機器と接続されている前記出力端子、または、該出力端子に接続されている前記第1伝送経路を特定する特定情報を記憶しており、
前記信号を前記上位装置から受信するステップと、
前記上位装置から受信した前記信号を、前記記憶部に記憶されている前記補正値を用いて、前記機器が処理可能な前記形式の前記信号に変換するステップと、
変換後の前記信号を、前記機器に出力するステップと、
前記上位装置から受信した前記信号が示す設定値からの、前記形式の変換後における前記信号値の前記誤差、および、該誤差を低減させる前記補正値を演算するステップと、
前記記憶部における前記補正値を、演算した前記補正値によって書き換えるステップと、を含
んでおり、
前記出力するステップは、
1以上の前記機器を制御または操作するための、1以上の前記信号を受信した場合において、前記特定情報に基づいて、前記形式の変換後の前記1以上の信号の各々を、1以上の前記第1伝送経路の各々の側へ出力するステップ
を含む、キャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号出力装置およびキャリブレーション方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばプラントなどに設置されたフィールド機器と、当該フィールド機器を制御するコントローラなどの上位装置とを仲介する信号出力装置が知られる(例えば、特許文献1参照)。信号出力装置は、例えばデジタル形式の信号を上位装置から受信し、当該信号を、例えばアナログ形式など他形式の信号に変換する。信号出力装置は、変換した信号を、1以上の出力端子を介して、1以上のフィールド機器に出力する。
【0003】
信号出力装置における信号の変換の際において、変換前の信号が示す値から、変換後の信号が示す値がずれてしまう場合がある。このような、変換の際に発生する信号値の誤差を低減させるため、信号出力装置は、当該誤差に対応する補正値を記憶している。そして、信号出力装置は、上位装置から受信した信号の形式を変換する際に、当該補正値を用いて、当該信号の値を補正する。なお、補正値を信号出力装置に記憶させる作業は、当該信号出力装置をプラントなどへの出荷する際などにおいて、エンジニアなどにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、信号出力装置が信号の変換の際に用いる補正値は、上述のように、出荷時において定められる。しかし、信号出力装置の経時変化、または、信号出力装置の設置環境の変化等によって、誤差は変動し得る。例えば、経時変化によって信号出力装置の部品性能が劣化し、誤差が大きくなり得る。また、温度などの環境変化により、ドリフトが発生し得る。信号出力装置は、一定の補正値を用いて信号値を補正するため、補正後の信号値には、上記経時変化または環境変化等による影響が、誤差として現れる場合があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、信号を変換する際に生じる誤差を低減させるための補正値を最適化する信号出力装置およびキャリブレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る信号出力装置は、機器を制御または操作するための信号を上位装置から受信して、該信号の形式を前記機器が処理可能な形式に変換する信号出力装置であって、前記信号を前記上位装置から受信する通信部と、前記形式の変換によって生じる、前記信号が示す信号値の誤差を低減させるための補正値を記憶する記憶部と、前記通信部が前記上位装置から受信した前記信号を、前記補正値を用いて、前記機器が処理可能な前記形式の信号に変換する演算変換部と、前記演算変換部による変換後の前記信号を、前記機器に出力する出力部と、を備え、前記出力部は、複数の前記機器と接続された複数の出力端子を有し、前記演算変換部は、前記複数の出力端子と、複数の第1伝送経路を介して接続され、前記記憶部は、前記機器、該機器と接続されている出力端子、または、該出力端子に接続されている前記第1伝送経路を特定する特定情報を記憶し、前記演算変換部は、前記通信部が前記上位装置から受信した前記信号が示す設定値からの、前記形式の変換後における前記信号値の前記誤差と、該誤差を低減させる前記補正値とを演算し、前記記憶部における前記補正値を、演算した前記補正値によって書き換えるものであり、1以上の前記機器を制御または操作するための、1以上の前記信号を、前記通信部が受信した場合において、前記特定情報に基づいて、前記形式の変換後の前記1以上の信号の各々を、1以上の前記第1伝送経路の各々の側へ出力するための分離部を更に有するものである。
また、本発明に係る信号出力装置は、機器を制御または操作するための信号を上位装置から受信して、該信号の形式を前記機器が処理可能な形式に変換する信号出力装置であって、前記信号を前記上位装置から受信する通信部と、前記形式の変換によって生じる、前記信号が示す信号値の誤差を低減させるための補正値を記憶する記憶部と、前記通信部が前記上位装置から受信した前記信号を、前記記憶部に記憶されている前記補正値を用いて補正する演算部と、前記演算部が補正した前記信号を、前記機器が処理可能な前記形式に変換する第1変換部と、を有する演算変換部と、前記演算変換部による変換後の前記信号を、前記機器に出力する出力部と、前記第1変換部による変換後の前記信号を、該第1変換部による変換前の前記形式に変換する第2変換部と、を備え、前記出力部は、複数の前記機器と接続された複数の出力端子を有し、前記演算変換部の複数の前記第1変換部は、前記複数の出力端子と、複数の第1伝送経路を介して接続されており、前記記憶部は、前記機器、該機器と接続されている前記出力端子、該出力端子に接続されている前記第1伝送経路、または、該出力端子と接続されている前記第1変換部を特定する特定情報と、前記機器を制御または操作するための前記信号の前記形式の変換によって生じる前記誤差を低減させる前記補正値と、を関連付けて記憶し、前記演算部は、前記第2変換部による変換後の前記信号が示すフィードバック値の、前記通信部が前記上位装置から受信した前記信号が示す設定値からの前記誤差と、該誤差を低減させる前記補正値とを演算し、前記記憶部における前記補正値を、演算した前記補正値によって書き換え、前記複数の機器のうちの1以上の前記機器を制御または操作するための、1以上の前記信号を、前記通信部が受信した場合において、前記1以上の機器の各々、該1以上の機器と接続されている1以上の前記出力端子の各々、該1以上の出力端子と接続されている1以上の前記第1伝送経路の各々、または、該1以上の出力端子と接続されている1以上の前記第1変換部の各々を、特定する前記特定情報と関連付けられた前記補正値を用いて、前記1以上の信号の各々を補正し、前記演算変換部は、更に、前記演算部による補正後の前記1以上の信号の各々を、前記1以上の第1変換部の各々へ出力するための分離部を有し、前記第2変換部は、前記1以上の第1変換部による変換後の前記1以上の信号を、前記1以上の第1変換部による変換前の前記形式に変換し、前記演算部は、前記第2変換部による変換後の前記1以上の信号の各々が示すフィードバック値の、前記1以上の第1変換部の各々による変換前の前記1以上の信号の各々が示す前記設定値からの前記誤差と、該誤差を低減させる前記補正値とを演算し、前記記憶部における前記補正値を、演算した前記補正値によって書き換える、ものである。
【0008】
本発明に係るキャリブレーション方法は、機器を制御または操作するための信号を上位装置から受信して、該信号の形式を前記機器が処理可能な形式に変換する信号出力装置によって実行されるキャリブレーション方法であって、前記信号出力装置は、前記形式の変換によって生じる、前記信号が示す信号値の誤差を低減させるための補正値を記憶する記憶部と、変換後の前記信号を、前記機器に出力する出力部であって、複数の前記機器と接続された複数の出力端子を有する出力部と、を備え、前記信号出力装置は、前記複数の出力端子と、複数の第1伝送経路を介して接続され、前記記憶部は、前記複数の機器、該機器と接続されている前記出力端子、または、該出力端子に接続されている前記第1伝送経路を特定する特定情報を記憶しており、前記信号を前記上位装置から受信するステップと、前記上位装置から受信した前記信号を、前記記憶部に記憶されている前記補正値を用いて、前記機器が処理可能な前記形式の前記信号に変換するステップと、変換後の前記信号を、前記機器に出力するステップと、前記上位装置から受信した前記信号が示す設定値からの、前記形式の変換後における前記信号値の前記誤差、および、該誤差を低減させる前記補正値を演算するステップと、前記記憶部における前記補正値を、演算した前記補正値によって書き換えるステップと、を含んでおり、前記出力するステップは、1以上の前記機器を制御または操作するための、1以上の前記信号を受信した場合において、前記特定情報に基づいて、前記形式の変換後の前記1以上の信号の各々を、1以上の前記第1伝送経路の各々の側へ出力するステップを含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る信号出力装置およびキャリブレーション方法によれば、信号出力装置は、上位装置からの信号の形式を変換する度に、変換前の当該信号が示す設定値からの、変換後の当該信号が示す信号値の誤差と、当該誤差を低減させる補正値と、を演算する。そして、信号出力装置は、演算した補正値によって、記憶部に記憶していた補正値を書き換える。これにより、信号出力装置は、信号を変換する際に生じる誤差を低減させるための補正値を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る信号出力装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】従来の信号出力装置によって発生する誤差の時間的推移を例示する図である。
【
図3】実施の形態に係る信号出力装置の機能を詳細に説明するための図である。
【
図4】実施の形態に係る信号出力装置によるキャリブレーション処理を例示するフローチャートである。
【
図5】実施の形態に係るキャリブレーション処理を行う信号出力装置において発生する誤差の時間的推移を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る信号出力装置の構成例を示すブロック図である。実施の形態に係る信号出力装置1は、複数のフィールド機器2、および上位装置3と接続されている。そして、信号出力装置1は、複数のフィールド機器2の各々と、上位装置3との間の通信を仲介する。
【0012】
フィールド機器2は、例えばプラントなどに設置される、モータ、攪拌機、およびバルブ等の機器である。以下では、フィールド機器2を機器2と記載する場合もある。
【0013】
上位装置3は、機器2を制御するためのコントローラ、機器2を操作するための機器操作装置、または、当該コントローラと当該機器操作装置とを組み合わせた設備等である。上位装置3は、機器2を制御または操作するための信号を、信号出力装置1を介して機器2に出力する。
【0014】
実施の形態においては、上位装置3が出力する信号の形式と、機器2が処理する信号の形式とが異なっている。信号出力装置1は、上位装置3から受信した信号を、機器2が処理可能な形式へ変換し、変換した信号を機器2へ出力する。実施の形態では、上位装置3は、デジタル形式の信号を出力するものとする。そして、機器2は、アナログ形式の信号を処理するものとする。この場合において信号出力装置1は、デジタル信号をアナログ信号に変換する。
【0015】
なお、上位装置3が出力する信号の形式と、機器2が処理する信号の形式とが異なる場合としては、他にも、上位装置3が出力する信号のコードの種類と、機器2が処理する信号のコードの種類とが異なる場合などが挙げられる。この場合には、信号出力装置1は、コードの種類を変換するものなどでもよい。
【0016】
信号出力装置1は、通信部10、演算変換部11、出力部12、記憶部13、および再変換部14を備える。通信部10は、上位装置3から信号を受信する。当該信号はデジタル信号である。なお、実施の形態において、上位装置3が信号出力装置1に一度に送信する信号は、複数の機器2のうちのいずれか1つを制御または操作するための信号であるとする。ただし、上位装置3が一度に送信する信号は、2以上の機器2の各々を制御または操作するための信号を多重化した信号であってもよい。
【0017】
演算変換部11は、通信部10が受信したデジタル形式の信号を、アナログ形式の信号に変換する。出力部12は、複数の出力端子120を有する。出力端子120は、機器2と信号出力装置1とを接続するための端子である。実施の形態においては、1つの出力端子120は、1つの機器2に接続されるものとする。演算変換部11によってアナログ形式へ変換された信号は、当該信号の出力先となる機器2へ、当該機器2と接続されている出力端子120を介して出力される。機器2は、入力された信号に従って動作する。
【0018】
ここで、信号出力装置1の部品性能もしくは使用年数、または、信号出力装置1の設置環境等によって、信号出力装置1から機器2へ出力される信号が示す値が、信号出力装置1が上位装置3から受信した信号が示す値とは異なるものになってしまう場合がある。例えば、演算変換部11における、各機器2へ出力する信号の形式を変換するための回路等の性能によっては、信号出力装置1が機器2に出力する信号値が、上位装置3からの信号値とは、ずれてしまっている場合がある。上位装置3からの信号値とは異なる信号値が機器2に出力された場合には、当該機器2は、ユーザの意図しない動作を行ってしまう虞がある。このため、信号出力装置1による形式変換において、変換前後の信号値が一致することが望ましい。
【0019】
実施の形態における演算変換部11は、形式の変換によって発生する、信号値の誤差を抑制する。なお、当該誤差は、変換後の信号値の、変換前の信号値からのずれに相当する。このような誤差の抑制のため、記憶部13には、誤差に応じた補正値が記憶されている。当該補正値としては、例えば、絶対値が、誤差の絶対値と同一、または、当該誤差の絶対値に近い値であって、正負が、当該誤差とは反対の値が挙げられる。演算変換部11は、当該補正値を用いて、形式の変換によって生じる誤差を低減させる。なお、実施の形態においては、演算変換部11は、デジタル信号の信号値を、補正値を用いて補正してから、アナログ信号へと変換するものとする。ただし、演算変換部11は、デジタル信号をアナログ信号に変換後、当該アナログ信号の信号値を、補正値を用いて補正するものであってもよい。また、実施の形態においては、形式の変換は、各出力端子120に出力される信号毎に行われるとする。以下、演算変換部11について、更に詳しく説明する。
【0020】
演算変換部11は、演算部110、分離部111、および、第1変換部112を有する。演算部110は、通信部10が上位装置3から受信した信号が示す値を補正する。以下では、通信部10が上位装置3から受信した信号が示す値を設定値と記載する場合もある。上位装置3からの信号には、機器2を特定する情報など、当該信号の出力先を特定するための情報が含まれている。以下では、信号の出力先を特定するための情報を特定情報と記載する。記憶部13は、信号の出力先毎の、補正値を記憶する。具体的には、記憶部13は、信号の出力先を示す特定情報と、当該信号の値を補正するための補正値とを関連付けて記憶する。実施の形態においては、同じ出力先を示す、記憶部13における特定情報と、上位装置3からの信号に含まれる特定情報とは、一致するものとする。ただし、記憶部13における当該特定情報と、上位装置3からの信号における当該特定情報は、信号出力装置1において対応付けられていれば、異なる内容であってもよい。
【0021】
演算部110は、上位装置3からのデジタル信号に含まれる特定情報が示す出力先を示す、記憶部13における特定情報と関連付けられた補正値を用いて、当該デジタル信号の信号値を補正する。演算部110は、補正後の信号を分離部111に出力する。
【0022】
分離部111は、演算部110によって補正された信号を、特定情報に基づいて、出力先に応じた伝送経路に導くものである。出力先に応じた当該伝送経路を、以下では、第1伝送経路15と記載する。分離部111は、複数の第1伝送経路15の各々によって、複数の第1変換部112の各々に信号を出力する。また、複数の第1変換部112の各々は、複数の第1伝送経路15の各々によって、複数の出力端子120の各々の側に信号を出力する。分離部111は、演算部110による補正後の信号を、当該信号の出力先の機器2と接続されている出力端子120と、第1伝送経路15を介して接続されている第1変換部112へ出力する。
【0023】
第1変換部112は、分離部111から入力された、補正後のデジタル信号を、アナログ信号へ変換する。変換後の信号は、当該第1変換部112と接続されている出力端子120を通じて、機器2へ出力される。
【0024】
なお、上記特定情報は、信号の出力先を特定する情報であるが、例えば、各機器2、各出力端子120、各第1伝送経路15、または各第1変換部112等を特定する情報である。分離部111は、演算部110による補正後の信号を、特定情報を用いることによって、当該信号の出力先へと適切に出力できる。
【0025】
実施の形態における記憶部13は、主記憶部130および副記憶部131を含む。主記憶部130は、演算部110が処理を行う際に主に用いるものであって、例えば、演算部110と一体的に設けられている。一方、副記憶部131は、不揮発性の記憶装置を含むものであって、例えば、演算部110とは別個に設けられている。当該主記憶部130および副記憶部131についての詳細は後述する。
【0026】
上述したように、記憶部13には、第1変換部112による形式の変換によって生じる、信号値の誤差を低減させるための補正値が記憶されている。従来の信号出力装置においては、記憶部に記憶された補正値は、エンジニア等によって変更されない限り、一定値であった。しかし、第1変換部等の経時変化により、同じ値を示すデジタル信号であっても、変換結果が、過去のものとずれていってしまう場合がある。これにより、機器2に出力されるアナログ信号が示す値の、設定値からの誤差が、時間の経過と共に増大していく場合があった。以下、
図2を参照し、従来の信号出力装置による形式変換において発生する誤差と、当該誤差を解消するために行われる処理とについて説明する。
【0027】
図2は、従来の信号出力装置によって発生する誤差の時間的推移を例示する図である。
図2における横軸は、信号出力装置の出荷時を起点とする経過時間を示す。また、縦軸は、第1変換部による変換によって生じる信号値の誤差を示す。従来の信号出力装置は、出荷時において、エンジニア等によって、一定の補正値が記憶部へと記憶される。なお、当該補正値は、当該信号出力装置の第1変換部の性能、または、当該信号出力装置の設置環境等に応じて定められている。
【0028】
図2に示すように、従来の信号出力装置は、出荷後において、時間の経過と共に部品の性能が低下することによって、第1変換部による変換によって生じる誤差が増大し得る。このような増大した誤差を再び小さくするため、従来では、エンジニアによって、補正値の修正作業と、修正後の補正値の記憶部への保存作業とが行われていた。なお、補正値の修正作業と、修正後の補正値の保存作業とを、以下ではキャリブレーション作業と記載する場合もある。キャリブレーション作業は、予め定められた使用期間が経過した場合、または、誤差が閾値を超えたことが検知された場合等において行われる。
図2において、時刻t1、時刻t2、および時刻t3は、キャリブレーション作業が行われた時刻を示している。
図2に示すように、誤差は、キャリブレーション作業が行われる毎に小さくなるが、キャリブレーション作業が行われるまでは、時間の経過と共に増大していく。
【0029】
キャリブレーション作業が適切なタイミングで行われなければ、信号出力装置は、増大した誤差によって、設定値とは異なる値に変換された信号を、機器に出力する虞がある。これにより、機器が、ユーザの意図しない動作を実行する可能性が生じる。
【0030】
ここで、キャリブレーション作業は、各第1変換部および各第1伝送経路等の経時変化に応じて行われる必要がある。そのため、キャリブレーション作業は、全ての出力先の各々を示す特定情報に関連付けられた補正値に対して行われる必要がある。従って、信号の出力先の数が多い場合には、一度のキャリブレーション作業による負担が大きくなる。そして、出力先の数が大きい上に、キャリブレーション作業の頻度が高い場合には、エンジニアの作業負担が更に増大する。
【0031】
実施の形態に係る信号出力装置1は、出力先毎に、第1変換部112の変換によって生じる誤差を読み取り、記憶部13に記憶された補正値を修正するものである。すなわち、当該信号出力装置1は、キャリブレーション作業を自動的に実行するものである。なお、信号出力装置1によって自動的に行われるキャリブレーション作業を、キャリブレーション処理と記載する場合もある。信号出力装置1は、キャリブレーション処理によって、記憶部13に記憶される補正値を最適化する。そして、信号出力装置1は、エンジニアによる必要なキャリブレーション作業の頻度の増大を抑え、エンジニアの作業負担を低減させながら、誤差の増大を抑制する。
【0032】
図3は、実施の形態に係る信号出力装置の機能を詳細に説明するための図である。以下、
図1および
図3を参照して、実施の形態に係る信号出力装置1について詳述する。信号出力装置1における再変換部14は、演算変換部11における第1変換部112が、デジタル形式からアナログ形式へ変換した信号を取得し、当該信号を再びデジタル形式へ変換する。そして、再変換部14は、デジタル形式に変換後の当該信号を、演算変換部11における演算部110へ出力する。
【0033】
再変換部14は、重畳部140および第2変換部141を有する。重畳部140は、複数の第2伝送経路16の各々を介して、複数の第1変換部112の各々が変換した信号を取得する。そして、重畳部140は、取得した信号を、第2変換部141に出力する。第2変換部141は、第1変換部112がアナログ形式へ変換した信号を、デジタル形式の信号に変換する。
【0034】
演算部110は、第2変換部141による変換後のデジタル信号を取得する。以下では、第2変換部141による変換後のデジタル信号の値を、フィードバック値と記載する場合もある。演算部110は、フィードバック値の設定値からの差分である誤差と、当該誤差を低減させる補正値とを演算する。なお、誤差を低減させる補正値とは、第1変換部112による変換によって生じる誤差の大きさを小さくさせる値を指す。当該補正値の一例としては、正負が当該誤差とは反対の値であって、絶対値が当該誤差の絶対値と一致する値が挙げられる。上述したように、実施の形態では、信号に特定情報が含まれるため、演算部110は、出力先毎に、フィードバック値と設定値とを用いて、補正値を演算することができる。演算部110は、記憶部13における、当該信号に含まれる特定情報と関連付けられている補正値を、演算した補正値に書き換える。これにより、キャリブレーション作業が自動化され、補正値が自動的に最適化される。
【0035】
実施の形態における演算部110は、各特定情報に関連付けられた補正値を演算する毎に、当該演算部110と一体的に設けられた主記憶部130における、当該各特定情報に関連付けられた補正値を、演算した当該補正値に書き換える。そして、演算部110は、信号出力装置1が運転を継続する間は、主記憶部130における当該補正値を用いて、設定値を補正する。また、演算部110は、主記憶部130における、各特定情報と関連付けられた補正値を、信号出力装置1の電源遮断時の際のバックアップとして、定期的に、副記憶部131に、当該各特定情報と関連付けて保存する。演算部110は、信号出力装置1が起動した場合には、副記憶部131から主記憶部130に補正値を読み込む。
【0036】
図3を参照して具体的に説明する。ここでは、特定情報を自然数Kによって示す。通信部10が、特定情報Kを含む信号を受信すると、演算部110は、主記憶部130において特定情報Kと関連付けられている補正値によって、当該信号が示す設定値を補正する。補正後の設定値を示す信号は、分離部111によって、特定情報Kに対応する第1変換部112に出力され、アナログ形式に変換される。アナログ形式に変換された当該信号は、第2変換部141においてデジタル形式に変換される。演算部110は、デジタル形式に変換された信号が示すフィードバック値の、設定値からの誤差を演算し、当該誤差に基づく補正値を演算する。演算部110は、主記憶部130において、特定情報Kと関連付けられている補正値を、演算した補正値によって書き換える。予め定められた時間の経過後、演算部110は、主記憶部130における、各特定情報に関連付けられている補正値を、副記憶部131に、当該各特定情報に関連付けて保存する。演算部110は、信号出力装置1が、シャットダウンし、再び起動した場合において、副記憶部131において各特定情報と関連付けられて保存されている補正値を、主記憶部130に読み込む。
【0037】
演算部110は、上述のキャリブレーション処理に加え、第1変換部112などの回路の異常を判定する。具体的には、演算部110は、設定値からのフィードバック値の誤差の大きさが閾値以上か否かを判定する。当該誤差の大きさが閾値以上である場合には、演算部110は、第1変換部112などの回路に異常があると判定する。そして、演算部110は、上位装置3に当該異常を通知するよう通信部10を制御する。なお、当該異常は、上述のような経時変化、または、回路の故障等によってもたらされ得る。上位装置3への当該異常の通知によって、ユーザは、キャリブレーション作業、または、信号出力装置1における部品のメンテナンスもしくは交換等が必要であることを検知することができる。
【0038】
実施の形態における信号出力装置1は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリと、通信インターフェース回路と、マルチプレクサと、デマルチプレクサと、DAC(Digital to Analog Converter)と、ADC(Analog to Digital Converter)等とを用いて構成することができる。通信部10の機能は、通信インターフェース回路によって実現することができる。演算部110の機能は、FPGAによって実現することができる。分離部111の機能は、デマルチプレクサによって実現することができる。第1変換部112の機能は、DACによって実現することができる。主記憶部130の機能は、FPGAに含まれるレジスタによって実現することができる。副記憶部131の機能は、不揮発性の上記メモリによって実現することができる。重畳部140の機能は、マルチプレクサによって実現することができる。第2変換部141の機能は、ADCによって実現することができる。
【0039】
なお、信号出力装置1は、上記FPGAに代えて、上記メモリを内部に含むCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサを用いて構成することもできる。そして、当該プロセッサが、当該メモリに記憶されている、キャリブレーションプログラムなどの各種プログラムを実行することによって、演算部110の機能を実現してもよい。この場合において、主記憶部130の機能は、プロセッサの内部の当該メモリによって実現することができる。そして、副記憶部131の機能は、プロセッサの外部などに設けられた上記不揮発性のメモリの他、ストレージまたはHDD(Hard Disk Drive)等によって実現することができる。
【0040】
以下、
図4を参照して、実施の形態に係る信号出力装置1によるキャリブレーション処理の流れについて説明する。
図4は、実施の形態に係る信号出力装置によるキャリブレーション処理を例示するフローチャートである。ステップS1において信号出力装置1が起動すると、ステップS2において演算部110は、副記憶部131に保存されている補正値を、主記憶部130に読み込む。ステップS3において通信部10は、上位装置3からデジタル形式の信号を受信する。ステップS4において演算部110は、通信部10が受信した信号が示す設定値を、主記憶部130に記憶されている補正値を用いて補正する。当該補正値は、主記憶部130において、当該信号の出力先を示す特定情報と関連付けられているものである。
【0041】
ステップS5において分離部111は、特定情報に従って、当該信号の送信先の機器2と、出力端子120等を介して接続されている第1変換部112に、補正後の当該信号を出力する。ステップS6において当該第1変換部112は、分離部111から取得した当該信号を、アナログ形式の信号に変換する。
【0042】
ステップS7において第1変換部112は、アナログ形式に変換後の当該信号を、出力端子120の側と、重畳部140の側へ出力する。アナログ形式の当該信号は、出力端子120を介して機器2に出力されると共に、重畳部140から第2変換部141へ出力される。
【0043】
ステップS8において第2変換部141は、当該信号の形式を、アナログ形式からデジタル形式に変換する。そして、第2変換部141は、デジタル形式に変換後の当該信号を演算部110に出力する。ステップS9において演算部110は、デジタル形式に変換後の当該信号が示すフィードバック値の、設定値からの誤差を演算し、当該誤差に基づいて補正値を演算する。そして、演算部110は、演算した補正値によって、主記憶部130における元の補正値を書き換える。
【0044】
ステップS10において演算部110は、予め定められた時間が経過したか否かを判定する。予め定められた時間が経過していない場合には(ステップS10:NO)、信号出力装置1は、処理をステップS3に戻す。予め定められた時間が経過した場合には(ステップS10:YES)、ステップS11において演算部110は、主記憶部130に保存されている補正値を、副記憶部131に保存する。その後、信号出力装置1は、処理をステップS3に戻す。信号出力装置1による当該キャリブレーション処理は、電源が遮断しない間、継続される。
【0045】
図5は、実施の形態に係るキャリブレーション処理を行う信号出力装置において発生する誤差の時間的推移を例示する図である。
図5に示すように、実施の形態に係る信号出力装置1における形式変換によって生じる誤差は、キャリブレーション処理によって、
図2に例示したような、時間に伴う増加が抑制される。このため、実施の形態においては、誤差が閾値以上となりにくくなり、エンジニアによるキャリブレーション作業の負担軽減が実現される。
【0046】
以上、実施の形態に係る信号出力装置1は、機器2を制御または操作するための信号を上位装置3から受信して、当該信号の形式を機器2が処理可能な形式に変換するものであって、通信部10、記憶部13、演算変換部11、および出力部12を備える。通信部10は、信号を上位装置3から受信する。記憶部13は、形式の変換によって生じる、信号が示す信号値の誤差を低減させるための補正値を記憶する。演算変換部11は、通信部10が上位装置3から受信した信号を、当該補正値を用いて、機器2が処理可能な形式の信号に変換する。出力部12は、演算変換部11による変換後の信号を、機器2に出力する。演算変換部11は、通信部10が上位装置3から受信した信号が示す設定値からの、形式の変換後における当該信号が示す信号値の誤差と、当該誤差を低減させる補正値とを演算する。そして、演算変換部11は、記憶部13における補正値を、演算した補正値によって書き換える。これにより、形式の変換によって生じる誤差が、信号出力装置1の経時変化等によって変動しても、信号出力装置1は、当該誤差を低減させるために用いる補正値を最適化することができる。従って、信号出力装置1は、継続的に誤差を低減しながら、エンジニアによるキャリブレーション作業の負担を低減することができる。
【0047】
実施の形態における出力部12は、複数の機器2と接続された複数の出力端子120を有する。演算変換部11は、複数の出力端子120と、複数の第1伝送経路15を介して接続される。記憶部13は、機器2、当該機器2と接続されている出力端子120、または、当該出力端子120に接続されている第1伝送経路15を特定する特定情報を記憶する。演算変換部11は、複数の機器2のうちの1以上の機器2を制御または操作するための、1以上の信号を、通信部10が受信した場合において、当該特定情報に基づいて、形式の変換後の当該1以上の信号の各々を、当該1以上の第1伝送経路15の各々の側へ出力するための分離部111を更に有する。これにより、信号出力装置1は、1以上の機器2を出力先とする、1以上の信号を一度に上位装置3から受信した場合において、当該1以上の信号の各々を、適切な出力先へと出力することができる。
【0048】
実施の形態における記憶部13は、機器2、当該機器2と接続されている出力端子120、または、当該出力端子120に接続されている第1伝送経路15を特定する特定情報と、当該機器2を制御または操作するための信号の形式の変換によって生じる誤差を低減させる補正値と、を関連付けて記憶する。演算変換部11は、複数の機器2のうちの1以上の機器2を制御または操作するための、1以上の信号を、通信部10が受信した場合において、当該1以上の機器2の各々、当該1以上の機器2と接続されている1以上の出力端子120の各々、または、当該1以上の出力端子120と接続されている1以上の第1伝送経路15の各々を特定する特定情報と関連付けられた補正値を用いて、当該1以上の信号の各々を、当該1以上の機器2の各々が処理可能な形式の信号に変換する。これにより、信号出力装置1は、1以上の機器2を出力先とする、1以上の信号を一度に上位装置3から受信した場合において、当該1以上の機器2の各々へ出力される信号値の、設定値からの誤差を低減させることができる。
【0049】
実施の形態における演算変換部11は、演算部110および第1変換部112を有する。演算部110は、通信部10が受信した信号を、記憶部13に記憶されている補正値を用いて補正する。第1変換部112は、演算部110が補正した信号を、機器2が処理可能な形式に変換する。実施の形態に係る信号出力装置1は、更に第2変換部141を備える。第2変換部141は、第1変換部112による変換後の信号を、第1変換部112による変換前の形式に変換する。演算部110は、第2変換部141による変換後の信号が示すフィードバック値の、設定値からの誤差と、当該誤差を低減させる補正値とを演算する。そして、演算部110は、記憶部13における補正値を、演算した補正値によって書き換える。第2変換部141が、第1変換部112の変換後の信号を元の形式に変換するため、演算部110は、第2変換部141による変換後の信号が示すフィードバック値の、設定値からの誤差を、上位装置3からの信号の形式によって演算可能になる。演算部110は、記憶部13に記憶されている補正値を用いて、信号を補正すると共に、フィードバック値を用いて補正値を演算し、演算した補正値によって、記憶部13に記憶されている補正値を書き換える。これにより、形式の変換によって生じる誤差が、信号出力装置1の経時変化等によって変動しても、信号出力装置1は、当該誤差を低減させるために用いる補正値を最適化することができる。従って、信号出力装置1は、継続的に誤差を低減しながら、エンジニアによるキャリブレーション作業の負担を低減することができる。
【0050】
実施の形態における出力部12は、複数の機器2と接続された複数の出力端子120を有する。演算変換部11は、複数の出力端子120と、複数の第1伝送経路15を介して接続された、複数の第1変換部112を有する。記憶部13は、機器2、当該機器2と接続されている出力端子120、当該出力端子120に接続されている第1伝送経路15、または、当該出力端子120と接続されている第1変換部112を特定する特定情報と、機器2を制御または操作するための信号の形式の変換によって生じる誤差を低減させる補正値と、を関連付けて記憶する。演算部110は、複数の機器2のうちの1以上の機器2を制御または操作するための、1以上の信号を、通信部10が受信した場合において、当該1以上の機器2の各々、当該1以上の機器2と接続されている1以上の出力端子120の各々、当該1以上の出力端子120と接続されている1以上の第1伝送経路15の各々、または、当該1以上の出力端子120と接続されている1以上の第1変換部112の各々を、特定する特定情報と関連付けられた補正値を用いて、当該1以上の信号の各々を補正する。演算変換部11は、更に、演算部110による補正後の当該1以上の信号の各々を、当該1以上の第1変換部112の各々へ出力するための分離部111を有する。第2変換部141は、当該1以上の第1変換部112による変換後の当該1以上の信号を、当該1以上の第1変換部112による変換前の形式に変換する。演算部110は、第2変換部141による変換後の当該1以上の信号の各々が示すフィードバック値の、当該1以上の第1変換部112の各々による変換前の当該1以上の信号の各々が示す設定値からの誤差と、当該誤差を低減させる補正値とを演算する。そして、演算部110は、記憶部13における補正値を、演算した補正値によって書き換える。これにより、信号出力装置1は、1以上の機器2を出力先とする、1以上の信号を一度に上位装置3から受信した場合において、当該1以上の信号の各々の形式変換後の誤差を低減させるための補正値を、一括して最適化できる。従って、信号出力装置1は、エンジニアによるキャリブレーション作業の負担を軽減することができる。また、信号出力装置1は、当該1以上の信号の各々を、誤差を低減させて、適切な出力先へと出力することができる。
【0051】
実施の形態における記憶部13は、主記憶部130、および、不揮発性の副記憶部131を有する。主記憶部130は、演算部110と一体的に設けられ、補正値を記憶する。副記憶部131は、演算部110とは別個に設けられ、補正値を記憶する。演算部110は、信号出力装置1の起動時において、副記憶部131に記憶された補正値を主記憶部130に読み込む。また、演算部110は、信号出力装置1の運転時には、主記憶部130に記憶された補正値を用いて、通信部10が受信した信号を補正する。演算部110は、補正値の演算毎に、主記憶部130に記憶されている補正値を、演算した補正値によって書き換える。また、演算部110は、信号出力装置1の運転時において、予め定められた時間が経過した場合には、主記憶部130に記憶されている補正値によって、副記憶部131に記憶されている補正値を書き換える。信号出力装置1は、運転時には、主記憶部130に記憶された補正値を用いて信号を補正し、補正値の演算の度に、当該主記憶部130における補正値を書き換えるため、信号の補正処理とキャリブレーション処理の迅速化が実現できる。また、信号出力装置1は、電源遮断時に備え、誤差を最小限にする補正値のバックアップを副記憶部131に保存することができる。従って、信号出力装置1は、当該バックアップを用いることによって、起動の際において最小限の誤差の信号を機器2に出力することができる。また、副記憶部131における情報を書き換える回数に上限がある場合において、副記憶部131における補正値が、当該補正値の演算毎ではなく、予め定められた時間の経過毎に書き換えられることにより、副記憶部131における情報の書き換えの回数を抑えることができる。よって、補正値の演算毎に、副記憶部131における補正値を書き換える場合に比べ、信号出力装置1は、副記憶部131の書き換えの回数の上限に達する時間、すなわち副記憶部131の寿命を延ばすことができる。
【0052】
上記実施の形態においては、演算部110は、第1変換部112による形式変換前に、デジタル信号が示す設定値の補正を行うものであったが、第1変換部112による形式変換後に、アナログ信号が示す設定値の補正を行うものでもよい。
【0053】
上記実施の形態に係る信号出力装置1は、1つの第2変換部141を備えるものであった。そして、当該第2変換部141は、複数の第1変換部112から出力された信号をまとめて出力する重畳部140に接続されるものであった。しかし、信号出力装置1は、複数の第1変換部112と接続された複数の第2変換部141を備えるものでもよい。そして、当該複数の第2変換部141の各々は、複数の第1変換部112の各々が変換した、多重化信号における各信号を、デジタル形式に変換し、演算部110に出力するものでもよい。
【0054】
上記実施の形態では、第1変換部112は複数の出力端子120の各々に対して設けられていたが、第1変換部112は1つであってもよい。この場合には、演算部110は、第1変換部112を介して、分離部111と接続される。また、第1伝送経路15は、分離部111と各出力端子120とを結ぶ経路となる。この場合において演算部110は、補正後の信号を第1変換部112へ出力し、分離部111は、第1変換部112による形式変換後の当該信号を、適切な出力先へ導く。なお、第1変換部112は、1つの信号をアナログ形式に変換してもよいし、多重化信号における各信号をまとめて変換してもよい。この場合において、再変換部14には、重畳部140が含まれなくともよく、第2変換部141が第1変換部112からの信号を取得して、再度デジタル形式に変換してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 信号出力装置、2 機器(フィールド機器)、3 上位装置、10 通信部、11 演算変換部、12 出力部、13 記憶部、14 再変換部、15 第1伝送経路、16 第2伝送経路、110 演算部、111 分離部、112 第1変換部、120 出力端子、130 主記憶部、131 副記憶部、140 重畳部、141 第2変換部。