IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 芝浦メカトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-基板処理装置 図1
  • 特許-基板処理装置 図2
  • 特許-基板処理装置 図3
  • 特許-基板処理装置 図4
  • 特許-基板処理装置 図5
  • 特許-基板処理装置 図6
  • 特許-基板処理装置 図7
  • 特許-基板処理装置 図8
  • 特許-基板処理装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20240607BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
H01L21/306 J
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/304 651M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020151354
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2021057581
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019179326
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】松下 淳
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-157531(JP,A)
【文献】特開2012-094836(JP,A)
【文献】特開2011-238825(JP,A)
【文献】特開2017-069353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持した基板を回転可能な回転保持部と、
回転する前記基板の面の中心領域に、エッチング液を供給可能な第1の処理液供給部と、
回転する前記基板の前記表面の中心領域に、洗浄液を供給可能な第2の処理液供給部と、
前記回転保持部に保持された前記基板の外側に僅かな隙間を設けて位置し、上面が前記基板の前記表面と近接して並ぶ第1の位置と、前記基板の外周面が露出するよう前記第1の位置から離れた第2の位置と、の間で移動可能な、基板の周縁に沿った形状を有する制御体と、
前記制御体の移動を制御可能なコントローラと、
を備え
前記コントローラは、前記エッチング液の供給を行う場合には、前記第1の位置に前記制御体を移動させ、前記洗浄液の供給を行う場合には、前記第2の位置に前記制御体を移動させる、基板処理装置。
【請求項2】
前記制御体は、前記回転保持部に保持された前記基板の周縁を囲み、複数に分割されている請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記複数に分割された制御体のそれぞれは、前記基板の周縁に沿って湾曲している請求項記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記回転保持部は、前記制御体を内部に収納する凹部を備え、前記第2の位置は、前記凹部の内部に設定される請求項1~のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記回転保持部に保持された前記基板の面に対向する加熱部をさらに備え、
前記加熱部の平面寸法は、前記基板の平面寸法よりも大きい請求項1~のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やフラットパネルディスプレイなどの製造工程においては、ウェーハやガラス基板などの基板の表面に設けられた膜に、エッチング液を供給して所望のパターンを形成している。
【0003】
この様なエッチング処理を行う装置として、回転させた基板の中心領域に、エッチング液を供給する基板処理装置が提案されている。この場合、基板の中心領域に供給されたエッチング液は、遠心力により基板の周縁に向けて広がるので、基板の表面が供給されたエッチング液でエッチング処理されることになる。
【0004】
ここで、エッチング処理は、エッチング液とエッチング対象となる除去部分との化学反応により行われるため、エッチング液が除去部分に接触している時間を確保する必要がある。この場合、基板の回転数を高くすると、エッチング液の排出速度が速くなるので、エッチング反応が進まない。
【0005】
そこで、エッチング処理を行う際には、リンス液などの洗浄液による洗浄処理などの場合に比べて基板の回転数を低くしている。基板の回転数を低くすれば、エッチング液の排出速度が遅くなるので、エッチング液が除去部分に接触している時間を長くすることができる。それにより、エッチング対象物に対して、適切なエッチング反応をさせることができ、適切なエッチング処理ができる。
【0006】
ところが、基板の周縁近傍においては、表面張力により、エッチング液が外部に排出されにくくなる。またさらに、エッチング処理の場合には基板の回転数を低くするので遠心力が小さくなる。そのため、遠心力によるエッチング液の排出がし難くなり、基板の周縁近傍にエッチング液が滞留しやすくなる。この場合、基板の中心領域に供給されたエッチング液は、除去部分との化学反応を行いつつ基板の周縁に向けて流れる。そのため、基板の周縁近傍に流れてきたエッチング液は既に使用されたエッチング液、すなわち、除去部分との反応性能が低下したエッチング液となる。反応性能が低下したエッチング液が、基板の周縁近傍に滞留すると、基板の周縁近傍におけるエッチングレートが低下して、基板の表面におけるエッチングレートの均一性が損なわれることになる。
【0007】
そのため、基板を載置する載置部に凹部を設け、凹部の内部に基板を収納した際に、載置部の凹部が開口する面と、基板の表面(エッチング処理を行う面)とが面一となるようにした基板処理装置が提案されている。載置部の面と基板の表面とが面一となっていれば、基板の表面が実質的に延長されたことになるので、基板の周縁近傍における表面張力を小さくすることができる。そのため、基板の周縁近傍に流れてきたエッチング液を載置部の面に排出するのが容易となる。この様にすれば、反応性能が低下したエッチング液が、基板の周縁近傍に滞留するのを抑制することができるので、基板の表面におけるエッチングレートの均一性を向上させることができる。
【0008】
ここで、一般的には、エッチング処理に続けて、リンス液などの洗浄液による洗浄処理が行われる。例えば、前述した基板処理装置においては、凹部の内部に基板を収納した状態で、基板の中心領域にリンス液などの洗浄液が供給されることになる。そのため、エッチング処理後のリンス処理において、載置部の面と基板(基板の周縁)との隙間にある、エッチング処理で残留したエッチング液をリンス液で洗い流せない。つまり、載置部の面と基板との隙間にエッチング液が入り込んで、基板の外周面に残留した状態となる。この状態でリンス液を供給しても、隙間にエッチング液及び処理済みのリンス液が溜まって残留することになる。したがって、エッチング処理後の基板の洗浄度が低下するおそれがある。
そこで、エッチングレートの均一性を向上させることができ、且つ、エッチング処理後の基板の清浄度を向上させることができる基板処理装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平7-221062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、エッチングレートの均一性を向上させることができ、且つ、エッチング処理後の基板の清浄度を向上させることができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態に係る基板処理装置は、保持した基板を回転可能な回転保持部と、回転する前記基板の面の中心領域に、エッチング液を供給可能な第1の処理液供給部と、回転する前記基板の前記表面の中心領域に、洗浄液を供給可能な第2の処理液供給部と、前記回転保持部に保持された前記基板の外側に僅かな隙間を設けて位置し、上面が前記基板の前記表面と近接して並ぶ第1の位置と、前記基板の外周面が露出するよう前記第1の位置から離れた第2の位置と、の間で移動可能な、基板の周縁に沿った形状を有する制御体と、前記制御体の移動を制御可能なコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記エッチング液の供給を行う場合には、前記第1の位置に前記制御体を移動させ、前記洗浄液の供給を行う場合には、前記第2の位置に前記制御体を移動させる

【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、エッチングレートを向上させることができ、且つ、エッチング処理後の基板の清浄度を向上させることができる基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る基板処理装置を例示するための模式図である。
図2】流動制御部を例示するための模式平面図である。
図3図1におけるA部の模式拡大図である。
図4】流動制御部が設けられていない場合のエッチング液の流動状態を例示するための模式断面図である。
図5】流動制御部の構成を例示するための模式図である。
図6図5における流動制御部を矢印Bの方向から見た図である。
図7】流動制御部の構成を例示するための模式図である。
図8】基板処理装置の作用を例示するためのフローチャートである。
図9】加熱部を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る基板処理装置は、例えば、半導体装置やフラットパネルディスプレイなどの微細構造体の製造工程において用いることができる。例えば、ウェーハやガラス基板などの基板の表面に設けられた膜をエッチング処理する工程において用いることができる。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る基板処理装置1を例示するための模式図である。
図1に示すように、基板処理装置1には、回転保持部10、供給部20、流動制御部30、およびコントローラ40を有する。
なお、以下においては、一例として、複数の制御体31が設けられる場合を例示するが、制御体31は回転保持部10に保持された基板100の周縁に沿って1つ設けることもできる。複数の制御体31を設ける場合には、基板100の周縁を囲む1つ制御体31を分割すればよい。複数に分割された制御体31のそれぞれは、基板100の周縁に沿って湾曲した形態を有する。例えば、複数に分割された制御体31のそれぞれは、基板100の周縁を囲んでいる。例えば、複数に分割された制御体31のそれぞれは、基板100の周縁に沿って湾曲した形状で設けられる。また、本実施例では、円盤状のウェーハで記載しているが、矩形の基板であれば矩形の枠状に基板の周縁を囲む。
【0016】
コントローラ40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、メモリなどの記憶部とを有する。コントローラ40は、例えば、コンピュータなどである。
コントローラ40は、例えば、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
例えば、後述するように、コントローラ40は、処理液供給部24(第1の処理液供給部の一例に相当する)と、処理液供給部25、26(第2の処理液供給部の一例に相当する)と、基板100の周縁近傍における処理液の流動を制御する制御体31の移動と、を制御する。そして、例えば、コントローラ40は、処理液供給部24に、エッチング液101(第1の液の一例に相当する)の供給を行わせる場合には、制御体31の上面31aが、エッチング液101が供給される基板100の表面100aと近接して並ぶ位置(第1の位置の一例に相当する)に、複数の制御体31を移動させる。また、例えば、コントローラ40は、処理液供給部25、26に、洗浄液(第2の液の一例に相当する)の供給を行わせる場合には、制御体31の上面31aが表面100aと近接して並ぶ位置から下方に離れた凹部11a2の内部(第2の位置の一例に相当する)に、複数の制御体31を移動させる。なお、制御体31についての詳細は後述する。
【0017】
回転保持部10は、基板100を保持し、保持した基板100を回転させる。回転保持部10は、例えば、回転部11、保持部12、および回収部13を有する。
【0018】
回転部11は、例えば、載置部11a、シャフト11b、および回転駆動部11cを有する。
載置部11aは、板状を呈する。載置部11aの形状は、例えば、基板Wと同じ円形状であり、載置部11aの大きさは基板100よりも大きい。載置部11aの、複数の保持部12が設けられた側の面(基板100と対向する面)11a1には凹部11a2が設けられる。凹部11a2は、載置部11aの周縁に沿って設けられる。凹部11a2は、面11a1の周縁に形成された所定の幅の溝である。凹部11a2の内部には、流動制御部30の制御体31を収納することができる。制御体31が凹部11a2の内部に収納された際には、制御体31の上面31aと、載置部11aの面11a1とが面一、または、制御体31の上面31aが面11a1よりも若干下側(シャフト11b側)になっている。制御体31が上昇していると、基板100の乾燥時に高速回転した時、制御体31により、基板100の外周部に乱流を発生させてしまい、基板100の周縁から飛散される処理液がその乱流により、処理室内に飛散もしくは、基板100の表面に再付着させる恐れがある。
【0019】
シャフト11bは柱状を呈し、載置部11aの、基板100が載置される側とは反対側の面に接続されている。例えば、シャフト11bは載置部11aと一体に形成することができる。
回転駆動部11cは、シャフト11bを介して載置部11aを回転させる。また、回転駆動部11cは、載置部11aの回転速度と回転方向を制御可能なものである。回転駆動部11cは、例えば、サーボモータなどの制御モータを備えたものである。
【0020】
図2に示すように、保持部12は柱状を呈し、載置部11aの面11a1の周縁近傍に設けられる。保持部12は、複数設けられる。複数の保持部12の基板100側の側面には切り欠き部12aが設けられ、複数の切り欠き部12aの内部に基板100の端面が接触し、保持されるようになっている。この様にすれば、遠心力で基板100の位置がズレるのを抑制することができる。
【0021】
図1に示すように、回収部13は、例えば、カップ13a、および移動部13bを有する。
カップ13aは、筒状を呈する。カップ13aの内部には、載置部11a、シャフト11b、および保持部12を設けられる。すなわち、カップ13aは、載置部11aを囲んでいる。カップ13aは、載置部11aに保持された基板100の表面100aが露出するように開口している。カップ13aの下方側の端部には底板(不図示)が設けられる。シャフト11bは、底板に設けられた孔(不図示)の内部を挿通している。シャフト11bの下方側の端部は、カップ13aの外側に設けられ、回転駆動部11cが接続される。カップ13aの底板には、配管を介して回収タンクを接続することができる。基板100の表面100aに供給され、遠心力により基板100の外部に排出された処理液は、カップ13aの内壁により捕捉される。カップ13aの開口側は、基板100の径方向内側に向けて傾斜しているので、カップ13aの外部に処理液が飛散するのを抑制することができる。カップ13aの内壁により捕捉された処理液は、カップ13aの内部に収納され、配管を介して回収タンクに送られる。
【0022】
移動部13bは、回転部11の中心軸方向におけるカップ13aの位置を変化させる。移動部13bは、例えば、エアシリンダなどを備えている。例えば、処理液を基板100の表面100aに供給する際には、図1に示すように、移動部13bによりカップ13aの位置を上昇させて、カップ13aの内部に基板100が位置するようにする。この様にすれば、基板100の外部に排出された処理液を捕捉するのが容易となる。一方、保持部12に基板100を載置する際や、保持部12にから基板100を取り出す際には、移動部13bによりカップ13aの位置を下降させて、カップ13aの開口の近傍に保持部12が位置するようにする。この様にすれば、基板100の受け渡しが容易となる。
【0023】
供給部20は、回転保持部10に保持された基板100の表面100aに処理液を供給する。
供給部20は、例えば、ノズル21、アーム22、アーム駆動部23、処理液供給部24、処理液供給部25、および処理液供給部26を有する。
【0024】
ノズル21は、載置部11aの、シャフト11bが設けられる側とは反対側に設ける。ノズル21の、載置部11a側の端部には吐出口21aを設ける。ノズル21の内部には処理液を吐出口21aに導くための空間を設ける。ノズル21の、吐出口21a側とは反対側の端部や、ノズル21の側面には、ノズル21の内部に処理液を供給するための供給口を設ける。
【0025】
アーム22は、一方の端部側にノズル21を保持し、保持したノズル21の位置を移動させる。アーム22は、例えば、シャフト11bの中心軸に平行な軸を回転中心として旋回可能なものとする。例えば、処理液を基板100の表面100aに供給する際には、アーム22は、ノズル21の吐出口21aが、基板100の表面100aの中心領域の上方に位置するようにノズル21の位置を移動させる。保持部12への基板100の受け渡しを行う際には、アーム22は、載置部11aの外側にノズル21を退避させる。
アーム駆動部23は、例えば、エアシリンダや、サーボモータなどの制御モータを有する。
【0026】
処理液供給部24は、処理液の一種であるエッチング液101をノズル21に供給する。エッチング液101は加熱されたものとする。すなわち、処理液供給部24は、回転する基板100の、表面100aの中心領域に、加熱されたエッチング液101を供給する。
【0027】
処理液供給部24は、例えば、タンク24a、供給部24b、処理液制御部24c、および加熱部24dを有する。
タンク24aは、内部にエッチング液101を収納する。エッチング液101としては、例えば、フッ酸と硝酸を含む液、フッ酸と酢酸と硝酸とを含む液、リン酸を含む液などである。
【0028】
供給部24bは、タンク24aの内部に収納されているエッチング液101をノズル21に供給する。供給部24bは、例えば、ケミカルポンプなどである。
処理液制御部24cは、供給部24bとノズル21との間に設けることができる。処理液制御部24cは、例えば、エッチング液101の流量や圧力などを制御する。また、処理液制御部24cは、エッチング液101の供給と供給の停止を制御する。
【0029】
ここで、エッチング液101の温度が高くなれば、エッチング液101と除去部分との反応が促進されるので、エッチングレートの向上、ひいては生産性の向上を図ることができる。そのため、タンク24aの内部には加熱部24dを設ける。加熱部24dは、例えば、通電によりジュール熱を発生するヒータなどとする。
【0030】
この場合、加熱部24dは、エッチング液101の種類に応じてエッチング液101の温度を変化させる。例えば、エッチング液101がフッ酸と酢酸と硝酸とを含む液の場合には、加熱部24dは、基板100の表面100aの中心領域に供給されたエッチング液101の温度が80℃程度となるように、タンク24aに収納されているエッチング液101を加熱する。例えば、エッチング液101がリン酸を含む液の場合には、加熱部24dは、基板100の表面100aの中心領域に供給されたエッチング液101の温度が160℃程度となるように、タンク24aに収納されているエッチング液101を加熱する。
【0031】
タンク24a、供給部24b、処理液制御部24c、および、これらを接続する配管の、少なくともエッチング液101と接触する部分は、耐熱性と耐薬品性の高い材料を用いて形成することが好ましい。例えば、これらをフッ素樹脂などから形成したり、フッ素樹脂などをコーティングしたりする。
【0032】
なお、エッチング液101の成分や温度は例示をしたものに限定されるわけではなく、除去部分の材料に応じて適宜変更することができる。この場合、エッチング液101の成分および温度と、除去部分の材料との関係は、例えば、予め実験やシミュレーションを行うことで求める。
【0033】
処理液供給部25は、処理液の一種であるアルカリ洗浄液102をノズル21に供給する。すなわち、処理液供給部25は、回転する基板100の、表面100aの中心領域に、アルカリ洗浄液102を供給する。
【0034】
処理液供給部25は、例えば、タンク25a、供給部25b、および処理液制御部25cを有する。
タンク25aは、内部にアルカリ洗浄液102を収納することができる。アルカリ洗浄液102は、例えば、APM(アンモニアと過酸化水素水の混合液)などである。
【0035】
供給部25bは、タンク25aの内部に収納されているアルカリ洗浄液102をノズル21に供給する。供給部25bは、例えば、ケミカルポンプなどとする。
処理液制御部25cは、供給部25bとノズル21との間に設けることができる。処理液制御部25cは、例えば、アルカリ洗浄液102の流量や圧力などを制御する。また、処理液制御部25cは、アルカリ洗浄液102の供給と供給の停止を制御する。
【0036】
タンク25a、供給部25b、処理液制御部25c、および、これらを接続する配管の、少なくともアルカリ洗浄液102と接触する部分は、耐薬品性の高い材料を用いて形成することが好ましい。なお、アルカリ洗浄液102の場合は、必ずしも耐熱性の高い材料とする必要はないが、処理液供給部24の場合と同様とする。例えば、これらをフッ素樹脂などから形成したり、フッ素樹脂などをコーティングしたりする。この様にすれば、構成が同じ処理液供給部を設ければよいので、基板処理装置1の製造工程を簡略化することができる。
【0037】
なお、アルカリ洗浄液102による洗浄は、エッチング液101によるエッチング処理の後に行う。そのため、アルカリ洗浄液102による洗浄は、エッチング液101の種類によっては省くこともできる。例えば、エッチング液101がリン酸を含む液の場合にはアルカリ洗浄液102による洗浄を行い、エッチング液101がフッ酸と酢酸と硝酸とを含む液の場合にはアルカリ洗浄液102による洗浄を省く。
そのため、処理液供給部25は、必要に応じて設ける。ただし、処理液供給部25が設けられていれば、エッチング液101の種類が変更になった場合の対応が容易となる。
【0038】
処理液供給部26は、処理液の一種であるリンス液103をノズル21に供給する。なお、リンス液103は、洗浄液の一種である。処理液供給部26は、回転する基板100の、表面100aの中心領域に、リンス液103を供給する。
【0039】
処理液供給部26は、例えば、タンク26a、供給部26b、および処理液制御部26cを有する。
タンク26aは、内部にリンス液103を収納することができる。リンス液103は、例えば、純水などである。
【0040】
供給部26bは、タンク26aの内部に収納されているリンス液103をノズル21に供給する。供給部26bは、例えば、ケミカルポンプなどとする。
処理液制御部26cは、供給部26bとノズル21との間に設ける。処理液制御部26cは、例えば、リンス液103の流量や圧力などを制御する。また、処理液制御部26cは、リンス液103の供給と供給の停止を制御する。
【0041】
タンク26a、供給部26b、処理液制御部26c、および、これらを接続する配管は、必ずしも、耐薬品性の高い材料および耐熱性の高い材料を用いて形成する必要はないが、処理液供給部24の場合と同様とする。例えば、これらをフッ素樹脂などから形成したり、フッ素樹脂などをコーティングしたりする。この様にすれば、構成が同じ処理液供給部を設ければよいので、基板処理装置1の製造工程を簡略化する。
【0042】
また、以上においては、1つのノズル21に、処理液供給部24~26を接続する場合を例示したが、複数のノズル21を設けることもできる。例えば、処理液供給部24~26毎にノズル21を設ける。エッチング液101を供給する処理液供給部24に対して1つのノズル21を設け、アルカリ洗浄液102やリンス液103などの洗浄液を供給する処理液供給部25、26に対して1つのノズル21を設ける。ノズル21を兼用化すれば製造コストの低減を図ることができる。処理液の性質に応じてノズル21を設ければ、処理液の変質を抑制するのが容易となる。
なお、例えば、処理液が前述したものであれば、図1に示すように、1つのノズル21に、処理液供給部24~26を接続する。
【0043】
図2は、流動制御部30を例示するための模式平面図である。
なお、図2は、エッチング液101の流動状態を制御する場合の制御体31の位置を表している。
図3は、図1におけるA部の模式拡大図である。
図4は、流動制御部30が設けられていない場合のエッチング液101の流動状態を例示するための模式断面図である。
【0044】
ここで、エッチング液101を用いたエッチング処理は、エッチング液101とエッチング対象となる除去部分との化学反応により行われる。この化学反応にはある程度の時間を要するため、エッチング液101とエッチング対象となる除去部分とがある程度の間、接触している必要がある。この場合、基板100の回転数を高くすると、エッチング液101の排出速度が速くなる。そこで、エッチング処理を行う際には、リンス液103などの洗浄液による洗浄処理の場合に比べて基板100の回転数を低くする。基板100の回転数を低くすれば、エッチング液101の排出速度が遅くなるので、エッチング液101が除去部分に接触している時間を長くする。
【0045】
ところが、基板100の周縁近傍においては、表面張力により、エッチング液101が外部に排出されにくくなる。またさらに、エッチング処理の場合には基板100の回転数を低くするので遠心力が小さくなる。そのため、遠心力によるエッチング液101の排出がし難くなり、図4に示すように、基板100の周縁近傍にエッチング液101が滞留しやすくなる。この場合、基板100の中心領域に供給されたエッチング液101は、エッチング対象となる除去部分との化学反応を行いつつ基板100の周縁に向けて流れる。そのため、基板100の周縁近傍に流れてきたエッチング液101は既にエッチング対象となる除去部分との化学反応が行われたエッチング液101、すなわち、除去部分との反応性能が低下したエッチング液101となる。反応性能が低下したエッチング液101が、基板100の周縁近傍に滞留すると、基板100の周縁近傍におけるエッチング対象となる除去部分との化学反応が進まなくなる。つまり、基板100の周縁近傍におけるエッチングレートが低下して、基板100の表面100aにおける中央領域のエッチングレートと周縁領域のエッチングレートとに差が生じることになる。
【0046】
そのため、図2および図3に示すように、エッチング液101を用いて基板100のエッチング処理を行う場合には、基板100の外側に流動制御部30の制御体31が位置するようにしている。すなわち、複数の制御体31の上面31aが、基板100の処理液が供給される表面100aと近接して平行に並ぶようにしている。この様にすれば、エッチング液101が基板100から制御体31に流れるので、図3に示すように、エッチング液101の表面張力が大きくなる部分が、制御体31の外周縁側に移動する。その結果、反応性能が低下したエッチング液101が、基板100の周縁近傍に滞留するのを抑制することができるので、反応性能が低下していないエッチング液101を基板100の周縁近傍に円滑に供給することができる。そのため、基板100の周縁近傍のエッチングレートの低下を防ぐことができ、基板100の中心領域と周縁近傍とのエッチングレートの均一性を図ることができる。
【0047】
この場合、図3に示すように、制御体31の上面31aと、基板100の表面100aとが面一、または、制御体31の上面31aが表面100aよりも若干下側(載置部11a側)になるようにすることが好ましい。この様にすれば、エッチング液101が制御体31に乗り移る際の抵抗を抑制することができるので、エッチング液101を基板100の周縁近傍に円滑に供給するのがさらに容易となる。
【0048】
また、制御体31の側面と基板100の側面が接触すると、パーティクルが発生したり、基板100が損傷したりするおそれがある。そのため、図3に示すように、制御体31の、基板100側の側面31bと基板100の側面との間には、僅かな隙間Sが設けられるようにすることが好ましい。なお、制御体31の側面31bと基板100の側面との接触を防止するための隙間Sは、僅かな寸法で足りるため、エッチング液101が隙間Sを介して基板100の裏面100b側に漏れる量は少なくすることができる。
【0049】
図3に示すように、制御体31の側面31bは傾斜面とする。側面31bは、一端が基板100に近接し、他端が基板100と離れる方向に傾斜させる。すなわち、制御体31の側面31bと、基板100の中心との間の距離は、載置部11a側になるに従い大きくする。この様にすれば、基板100の側面(ベベル面)が外側に突出する曲面であったとしても、制御体31の上面31aと、基板100の表面100aとの間の距離を小さくするのが容易となる。そのため、エッチング液101が制御体31に乗り移る際の抵抗を抑制したり、エッチング液101が隙間Sを介して基板100の裏面100b側に漏れるのを抑制したりするのが容易となる。
【0050】
ここで、後述するように、エッチング液101を用いたエッチング処理に続けて、アルカリ洗浄液102やリンス液103などの洗浄液を用いた洗浄処理が行われる。例えば、回転する基板100の表面100aの中心領域に、アルカリ洗浄液102を供給することができる。例えば、回転する基板100の表面100aの中心領域に、リンス液103を供給することができる。基板100の表面100aの中心領域に供給された洗浄液は、遠心力により、基板100の表面100aを流れて基板100の外側に排出される。
【0051】
ところが、基板100の外側に制御体31が位置していると、制御体31と基板100の間の隙間Sに処理液が残り、エッチング処理後の基板100の清浄度が低下するおそれがある。
【0052】
そこで、リンス液103などの洗浄液を用いた洗浄処理を行う際、好ましくは、洗浄処理の開始前に、には、制御体31を載置部11a側に移動させるようにしている。例えば、後述する図7に示すように、制御体31を載置部11aの凹部11a2の内部に収納するようにしている。
ここで、エッチング処理時に制御体31と基板100の周縁とが並ぶと、エッチング液が基板100の周縁から制御体31に乗り移る。このとき、基板100の周縁と制御体31との間の隙間には、エッチング液が入り込む。つまり、基板100の外周面(ベベル)にエッチング液が残ることになる。
制御体31が格納されれば、基板100の外周面が露出する。これにより、リンス液が基板100の外周面に流れ込むので、外周面に付着するエッチング液をリンス液で洗い流せることができる。そのため、エッチング処理後の洗浄度が向上する。
また、基板100の周縁近傍に流れてきた洗浄液を基板100の外部に直接排出させることができるので、洗浄液の排出の円滑化、ひいては、エッチング処理後の基板100の清浄度の向上を図ることができる。
【0053】
次に、流動制御部30の構成の一例についてさらに説明する。
図5図7は、流動制御部30の構成を例示するための模式図である。
なお、図5は、エッチング液101の流動状態を制御する場合の制御体31の位置を表している。
図6は、図5における流動制御部30を矢印Bの方向から見た図である。
また、図7は、制御体31を載置部11aの凹部11a2の内部に収納した状態を表している。例えば、図7は、アルカリ洗浄液102やリンス液103などの洗浄液を用いた洗浄処理や、乾燥処理(いわゆるスピン乾燥)などを行う場合の制御体31の位置を表している。
【0054】
図5図7に示すように、流動制御部30は、制御体31、リンク機構部32、および駆動部33を有する。
この場合、制御体31は、回転保持部10に保持された基板100の外側の領域に複数設ける。例えば、図2に例示をしたものは、基板100の周縁に沿って6つの制御体31が設けられている。なお、制御体31の数は、図2に例示をしたものに限定されるわけではなく、基板100の大きさに応じて適宜変更することができる。複数の制御体31は、載置部11aの中心軸を中心として、載置部11aと同速度で回転する。すなわち、回転保持部10は、複数の制御体31と基板100とを同速度で回転させる。
【0055】
制御体31は、例えば、板状を呈するものとする。制御体31は、例えば、石英、セラミックス(SiC)などのように、薬液耐性があり、耐熱性があり、汚染を出さないような材料から形成することが好ましい。この様にすれば、基板100の周縁近傍にあるエッチング液101の温度が、制御体31により低下するのを抑制することができる。平面視における制御体31の内側面側の形状は、基板10の周縁と略同じ形状とする。図2に示すように、平面視における制御体31の内側面側の形状は、例えば、円弧とする。なお、制御体31の側面31bの形状や、図5図7における制御体31の位置については、前述したとおりである。
【0056】
リンク機構部32は、1つの制御体31に対して少なくとも1つ設ける。リンク機構部32は、例えば、いわゆる平行クランク機構とする。
図5図7に例示をしたものの場合には、リンク機構部32は、シャフト32a、シャフト32b、リンクプレート32c、リンクプレート32d、保持部32e、付勢部32f、軸受け32g、および磁石32hを有している。
【0057】
シャフト32aは、棒状を呈し、一方の端部を制御体31の下面31cに接続される。シャフト32aの他方の端部は、載置部11aの内部に設ける。
シャフト32bは、棒状を呈し、シャフト32aと略平行に設ける。シャフト32bの一方の端部は、載置部11aの内部に設ける。シャフト32bの他方の端部は、載置部11aの外部に設ける。
【0058】
リンクプレート32cは、板状を呈するものとする。リンクプレート32cの一方の端部の近傍は、ピン32c1を介してシャフト32aと接続することができる。リンクプレート32cの他方の端部の近傍は、ピン32c2を介してシャフト32bと接続される。リンクプレート32cは、シャフト32a、32bに対して回動可能に設ける。
【0059】
リンクプレート32dは、板状を呈するものとする。リンクプレート32dは、リンクプレート32cと略平行に設ける。リンクプレート32dの一方の端部の近傍は、ピン32d1を介してシャフト32aと接続される。リンクプレート32dの他方の端部の近傍は、ピン32d2を介してシャフト32bと接続される。リンクプレート32dは、シャフト32a、32bに対して回動可能に設ける。
【0060】
この場合、ピン32c1とピン32d1との間の距離は、ピン32c2とピン32d2との間の距離と同じにする。また、ピン32c1とピン32c2との間の距離は、ピン32d1とピン32d2との間の距離と同じにする。そのため、シャフト32aはシャフト32bに対して略平行状態を保ちつつ動く。
【0061】
保持部32eは、載置部11aの内部に設ける。リンクプレート32cの中心はピン32c3を介して保持部32eと接続される。リンクプレート32dの中心はピン32d3を介して保持部32eと接続することができる。リンクプレート32c、32dは、保持部32eに対して回動可能に設けることができる。なお、リンクプレート32c、32dを回動可能とする機構の図示は省略する。ピン32c1とピン32c3との間の距離は、ピン32c2とピン32c3との間の距離と略同じとする。ピン32d1とピン32d3との間の距離は、ピン32d2とピン32d3との間の距離と略同じとする。
【0062】
付勢部32fは、載置部11aの内部に設ける。付勢部32の一端は、シャフト32bの基板100側の端部に接続され、他端は載置部11aの凹部11a2側に接続されている。付勢部32fは、シャフト32bを基板100から離れる方向に付勢する。付勢部32fは、例えば、圧縮バネとする。
【0063】
軸受け32gは、載置部11aの内部に設ける。軸受け32gの内部にはシャフト32bを挿通する。軸受け32gは、シャフト32bが基板100の表面100aに略垂直な方向に移動できるように、シャフト32bを案内する。
磁石32hは、例えば、永久磁石とする。磁石32hは、シャフト32bの下端側に設ける。
【0064】
駆動部33は、複数のリンク機構部32に対して1つ設ける。駆動部33は、載置部11aの外部に設けられ、完全に分離している。例えば、図5に示すように、駆動部33は、載置部11aの下方に設ける。駆動部33は、シャフト32bの位置を変化させることで、リンク機構部32を駆動する。
駆動部33は、磁石33a、取付部33b、および昇降部33cを有する。
【0065】
磁石33aは、例えば、リング状の永久磁石とすることができる。磁石33aの磁石32h側の端部の極性は、磁石32hの磁石33a側の端部の極性と同じとすることができる。そのため、磁石33aと磁石32hとの間に斥力を発生させることができる。
【0066】
取付部33bは、例えば、リング状を呈するものとする。取付部33bの載置部11a側の端部には、磁石33aを設ける。
昇降部33cは、取付部33bの、磁石33aが設けられる側の端部とは反対側の端部に接続する。昇降部33cは、取付部33bを介して磁石33aの位置を変化させる。昇降部33cは、例えば、エアシリンダや、サーボモータなどの制御モータを備えたものとする。
【0067】
ここで、駆動部33がリンク機構部32とともに載置部11aに設けられていると、駆動部33が載置部11aとともに回転することになる。駆動部33(昇降部33c)にはエアシリンダや制御モータなどが設けられているため、駆動部33が載置部11aとともに回転すると、配線系や配管系の構成が複雑となったり、載置台11aの重量が増えて制御モータに対する負荷が増えたりする。
【0068】
そこで、リンク機構部32を載置部11aに設け、駆動部33を載置部11aから分離し、磁石33aと磁石32hを介して、駆動部33の動作をリンク機構部32に伝える様にしている。この様にすれば、磁力(斥力)により、駆動部33の動作をリンク機構部32に伝えることができるので、筐体などの固定部分に駆動部33を設ける。そのため、配線系や配管系の構成が複雑となったり、制御モータに対する負荷が増えたりするのを抑制することができる。
【0069】
ここで、一般的には、載置部11aの回転が停止する位置はランダムな位置となるので、磁石32hの回転方向の位置もランダムな位置となる。また、載置部11aの回転中は磁石32hが回転方向に移動する。磁石33aがリング状を呈していれば、磁石32hの回転方向の位置にかかわらず駆動部33の動作をリンク機構部32に伝えることができる。
【0070】
次に、流動制御部30の作用について説明する。
エッチング液101を用いて基板100のエッチング処理を行う際には、図5に示すように、制御体31が上昇し、基板100の外側に位置するようにする。例えば、昇降部33cは、取付部33bを介して、磁石33aを下降させる。すると、磁石33aと磁石32hとの間の斥力が小さくなるので、付勢部32fにより押されたシャフト32bが下降する。シャフト32bが下降すると、リンクプレート32c、32dを介して、シャフト32aが上昇する。制御体31はシャフト32aに接続されているため、シャフト32aの上昇とともに制御体31が上昇する。シャフト32a、シャフト32b、リンクプレート32c、および、リンクプレート32dにより、平行クランク機構が構成されている。そのため、制御体31の上面31aは、基板100の表面100aに略垂直な方向に上昇するとともに、図5中の曲線の矢印で示すように、基板100の外方から基板100の表面100aの周縁に近づく方向に移動する。その結果、制御体31の上面31aは、基板100の表面100aと略平行とすることができる。制御体31の上面31aが、基板100の表面100aと略平行となっていれば、エッチング液101が制御体31に乗り移る際の抵抗を抑制することができるので、エッチング液101を基板100の周縁近傍に円滑に供給することができる。なお、エッチング液101を基板100の周縁近傍に供給する効果は前述したとおりである。
【0071】
前述したように、基板100のスピン乾燥を行う場合に、基板100の外側に制御体31が位置していると、制御体31と基板100の間の隙間Sに処理液が残るので、基板100のスピン乾燥を行う場合には、図7に示すように、制御体31を載置部11a側に移動させるようにする。例えば、昇降部33cは、取付部33bを介して、磁石33aを上昇させる。すると、磁石33aと磁石32hとの間の斥力が大きくなるので、付勢部32fによる力に抗してシャフト32bを上昇させることができる。シャフト32bが上昇すると、リンクプレート32c、32dを介して、シャフト32aが下降する。制御体31はシャフト32aに接続されているため、シャフト32aの下降とともに制御体31が下降する。シャフト32a、シャフト32b、リンクプレート32c、および、リンクプレート32dにより、平行クランク機構が構成されている。そのため、制御体31は、基板100から外方に離れるとともに、図6中の曲線の矢印で示すように、基板100の表面100aに略垂直な方向に下降する。下降した制御体31は、載置部11aの凹部11a2の内部に収納する。
【0072】
洗浄液による洗浄を行う際に、基板100の外側に制御体31が位置していなければ、制御体31と基板100の間の隙間Sに処理液が残らないため、エッチング処理後の基板100の清浄度の向上を図ることができる。
【0073】
次に、基板処理装置1の作用を説明する。
図8は、基板処理装置1の作用を例示するためのフローチャートである。
図8に示すように、まず、図示しない搬送装置などにより、処理前の基板100が基板処理装置1の内部に搬入される。(ステップSt1)
なお、カップ13aは、基板100を処理装置1の内部に搬入するのを阻害しないように、移動部13bにより下降されている。
搬入された基板100は、複数の保持部12に受け渡され、複数の保持部12により保持される。基板100が複数の保持部12により保持された後、カップ13aは、移動部13bにより、上昇して、基板100から飛散する処理液を回収する位置に位置づけられる。
【0074】
次に、複数の制御体31を上昇させて、基板100の周縁が複数の制御体31により囲まれるようにする。(ステップSt2)
次に、回転駆動部11cにより、載置部11aを回転させることで基板100を回転させる。(ステップSt3)
回転数は、エッチング液101による処理に適したものとする。回転数は、例えば、100rpm以下(例えば、40rpm~60rpm程度)とする。
【0075】
次に、エッチング液101を基板100の表面100aに供給することにより、基板100の表面100aをエッチングする。(ステップSt4)
例えば、処理液供給部24により、加熱されたエッチング液101を、基板100の表面100aの中心領域に供給する。供給されたエッチング液101は、遠心力により基板100の周縁に向けて広がり、基板100の表面100aが加熱したエッチング液101によりエッチングされる。エッチング液101の温度は、エッチング液101の種類などに応じて適宜変更することができる。例えば、フッ酸と酢酸と硝酸とを含むエッチング液101の場合には、80℃程度の温度のエッチング液101を供給する。例えば、リン酸を含むエッチング液101の場合には、160℃程度の温度のエッチング液101を供給する。
【0076】
前述したように、エッチング液101は基板100から制御体31に流れるので、エッチング液101の表面張力が大きくなる部分が、制御体31の外周縁側に移動する。そのため、基板100の周縁近傍における表面張力が小さくなるので、基板100の周縁近傍に流れてきたエッチング液101を基板100の外側に円滑に排出することができる。その結果、反応性能が低下したエッチング液101が、基板100の周縁近傍に滞留するのを抑制することができるので、基板100の周縁近傍におけるエッチングレートの低減の抑制、ひいては基板100の中心領域と周縁近傍とのエッチングレートの均一性を図ることができる。
【0077】
次に、エッチング液101の供給を停止する。(ステップSt5)
次に、複数の制御体31を下降させて、複数の制御体31を凹部11a2の内部に収納する。(ステップSt6)
次に、アルカリ洗浄液102を基板100の表面100aに供給することにより、基板100の表面100aを洗浄する。(ステップSt7)
例えば、処理液供給部25により、アルカリ洗浄液102を、基板100の表面100aの中心領域に供給する。供給されたアルカリ洗浄液102は、遠心力により基板100の周縁に向けて広がり、基板100の表面100aがアルカリ洗浄液102により洗浄される。基板100の回転数は、例えば、150rpm~300rpm程度とすることができる。
【0078】
次に、リンス液103により、基板100の表面100aを洗浄する。(ステップSt8)
例えば、処理液供給部26により、リンス液103を、基板100の表面100aの中心領域に供給する。供給されたリンス液103は、遠心力により基板100の周縁に向けて広がり、基板100の表面100aがリンス液103により洗浄される。基板100の回転数は、例えば、150rpm~300rpm程度とする。
【0079】
前述したように、エッチング液101の種類によっては、アルカリ洗浄液102による洗浄を省くことができる。例えば、エッチング液101がリン酸を含む液の場合にはアルカリ洗浄液102による洗浄を行い、エッチング液101がフッ酸と酢酸と硝酸とを含む液の場合にはアルカリ洗浄液102による洗浄を省くことができる。
【0080】
次に、基板100を乾燥させる。(ステップSt9)
例えば、基板100の回転数を上げて、遠心力により、基板100の表面100aに付着しているリンス液103を排出させるとともに、回転による気流により基板100の表面100aを乾燥させることができる。基板100の回転数は、例えば、1500rpm程度とする。
【0081】
次に、カップ13aが移動部13bにより下降して、処理が終了した基板100を基板処理装置1の外部に搬出する。(ステップSt10)
例えば、基板100の回転を停止させる。そして、基板100と載置部11aとの間に図示しない搬送装置のアームを挿入し、載置部11aから搬送装置に基板100を受け渡す。搬送装置は、受け渡された基板100を基板処理装置1の外部に搬出する。
【0082】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る基板処理装置1aは、前述した基板処理装置1に加熱部50をさらに設けたものとする。
図9は、加熱部50を例示するための模式断面図である。
エッチング液101によるエッチングは、化学反応を用いるため、エッチングレートには温度の依存性がある。すなわち、エッチング液の温度が高くなれば、エッチング液と除去部分との反応が促進されるので、エッチングレートの向上、ひいては生産性の向上を図ることができる。
【0083】
ここで、ウェーハなどの基板100は、熱伝導率が比較的高い材料から形成され、面積(放熱面積)も大きくなる。そのため、基板100の表面100aに供給されたエッチング液101の熱が、基板100を介して基板100の裏面100b側に放熱されやすくなるので、エッチング液101が基板100の周縁に移動する間に、エッチング液101の温度が低下し易くなる。またさらに、基板100は回転しているため、基板100の周縁領域の周速度は、基板100の中心領域の周速度よりも速くなる。そのため、基板100の周縁領域の放熱が促進されるので、基板100の周縁領域にあるエッチング液101の温度がさらに低下し易くなる。
【0084】
基板100の中心領域と基板100の周縁領域とでエッチング液101の温度に差が生じれば、基板100の表面100a内におけるエッチングレートに不均一が生じることになる。また、前述したように、エッチング液101の種類によっては、エッチング液101の温度が高くなる。エッチング液101の温度が高くなれば、エッチング液101が基板100の周縁に移動する間に、エッチング液101の温度低下が大きくなるおそれがある。そのため、基板100の中心領域と基板100の周縁領域とでエッチングレートの差がさらに大きくなるおそれがある。
そこで、基板処理装置1aには、基板100の表面100aに供給されたエッチング液101の加熱あるいは保温を行う加熱部50が設けられている。
【0085】
図9に示すように、加熱部50は、回転保持部10に保持された基板100の表面100aに対向させて設ける。
加熱部50は、例えば、プレート51、およびヒータ52を有する。
プレート51は、例えば基板100が円形ウェーハである場合、基板100と同じ形の円形の板状を呈し、耐熱性、耐薬品性、および熱伝導率が高い材料から形成する。プレート51は、例えば、石英から形成する。プレート51の平面寸法は、基板100の平面寸法よりも大きくする。平面視において、プレート51の周縁は、基板100の周縁を囲む複数の制御体31の上に設ける。
【0086】
プレート51の載置部11a側の面は、平坦面とする。プレート51の中心には厚み方向を貫通する孔51aが設けられ、孔51aにノズル21を接続することができる。プレート51は、例えば、断熱材を介して、ノズル21を保持するアーム22に設ける。
【0087】
ヒータ52は、例えば、通電によりジュール熱を発生するものとする。また、ヒータ52を複数設け、それぞれの発熱量を制御する。例えば、図9に例示をしたように、ヒータ52a、52b、52cを同心に配置し、ヒータ52aの発熱量が最も小さく、ヒータ52bの発熱量が次に小さく、ヒータ52cの発熱量が最も大きくなるようにする。ヒータ52(ヒータ52a、52b、52c)の発熱量の制御は、例えば、コントローラ40により行う。例えば、コントローラ40は、プレート51などに設けられた熱電対などの出力に基づいて、ヒータ52(ヒータ52a、52b、52c)の発熱量を制御する。
【0088】
図9に示すように、基板100の表面100aに供給されたエッチング液101の加熱あるいは保温を行う場合には、プレート51と載置部11aとを近接させて、プレート51と基板100の表面100aとの間に狭い隙間が設けられるようにする。プレート51と基板100の表面100aとの間の隙間が、エッチング液101が流れる空間となる。
例えば、エッチング液101がリン酸水溶液の場合、プレート51と基板100の表面100a上との間の隙間に高温のリン酸水溶液が供給される。この時、基板100の周縁部は、供給されたリン酸水溶液中のHOが蒸発することにより温度が低下する。上述したように、基板100の外側に制御体31を配置して、プレート51と制御体31と、により形成された隙間を設けるようにすれば、プレート51と制御体31の端部からリン酸水溶液中のHOが蒸発することになり、基板100の周縁部の温度低下を防ぐ。そのため、基板100の周縁の近傍におけるエッチングレートの低下が抑制されて、基板100全体のエッチングレートの均等化を図ることが容易となる。
【0089】
さらに、ヒータ52a、52b、52cを同心に配置し、ヒータ52aの発熱量が最も小さく、ヒータ52bの発熱量が次に小さく、ヒータ52cの発熱量が最も大きくなるようにすれば、基板100の表面100a内におけるエッチング液101の温度の均一性を向上させることができる。そのため、ノズル21から吐出されるエッチング液101の温度が高い場合であっても、エッチングレートの面内分布の低減、ひいてはエッチング量の面内分布の低減を図ることができる。
【0090】
ウェーハなどの基板100は、熱伝導率が比較的高い材料から形成され、面積(放熱面積)も大きくなる。そのため、基板100の表面100aに供給されたエッチング液101の熱が、基板100を介して基板100の裏面100d側に放熱されやすくなる。そのため、ヒータ52aの温度は、エッチング液101の設定温度よりも高くなっている。
【0091】
また、基板100の表面100aの周縁部分と中心部分とのエッチング液101の温度を均一化するという役割が制御体31にはある。
ヒータ5aの温度、つまり、ノズル21から吐出されたエッチング液101の温度が高い状態であっても、基板100を介した放熱により、エッチング液101が基板100の周縁に移動した際に、エッチング液101の温度が低下するおそれがある。ヒータ5cが設けられていれば、ヒータ52cによって制御体31を加熱することができるので、ヒータ52cによって加熱された制御体31が、基板100の周縁近傍を保温することになる。それにより、基板100の中心付近に吐出されたエッチング液101の温度と基板100の周縁に移動してきたエッチング液101の温度の差が縮まり、基板100の表面100aの全域におけるエッチングレートの均一化を図ることができる。
【0092】
また、加熱部50が設けられていれば、基板100の周縁領域のエッチング液101が揮発することを防止し、基板100の周縁領域のエッチング液101の濃度及び液温の低下を抑制することが可能となる。
例えば、160℃のリン酸を用いた窒素酸化物もしくは金属酸化物をエッチングするプロセスにおいて、エッチングの主要成分はリン酸中のHOであるが、160℃のリン酸中のHO成分は、大気圧環境で液面から蒸発するため、液中のHO濃度は減少し、さらにHO蒸発潜熱による温度低下が発生する。しかし液面に対向するプレート51が存在するウェーハ周縁領域を除く内周部は、プレート51が蓋の役割をし、液面とプレート51の空間は飽和蒸気圧に達しやすく、液中のHO濃度減少及び温度低下は抑制される。一方で、ウェーハ周縁領域は、大気圧に開放されているため、ウェーハ面内でHO濃度低下及び温度低下が発生しやすくなる。そこで制御体31を設けることで、ウェーハ周縁領域も内周部と同様に飽和蒸気圧へ達するため、ウェーハ周縁領域のHO濃度低下及び温度低下を防止する効果もある。
【0093】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、前述した実施形態では、側面31bは、上に行くほど外周側に広がる傾斜面となっているが、これに限られるものではない。例えば、前述した実施形態とは反対に、側面31bは、下に行くほど外周側に広がる傾斜面としても良い。また、基板100の側面が外側に突出する円弧状の凸曲面である場合には、側面31bは、この凸曲面に沿った凹曲面に形成してもよい。もちろん、制御体31の上面31aに垂直な面としても良い。
また、例えば、フッ酸、アンモニア、フッ化アンモニウム、硝酸などの化学種を含むエッチング液、もしくは、洗浄液は、本発明に適用することができる。さらに、オゾンや水素などを含むガス溶解洗浄水、その他IPAなど揮発性有機溶媒を含む洗浄液などは第1の実施形態には適用することができる。
また、例えば、基板処理装置1、1aに設けられた各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0094】
1、1a 基板処理装置、10 回転保持部、11 回転部、12 保持部、20 処理液供給部、21 ノズル、24 処理液供給部、25 処理液供給部、26 処理液供給部、30 流動制御部、31 制御体、31a 上面、32 リンク機構部、33 駆動部、40 コントローラ、50 加熱部、100 基板、100a 面、100b 面、101 エッチング液、102 アルカリ洗浄液、103 リンス液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9