(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】性能評価方法、運転制御方法、性能評価装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F01D 25/00 20060101AFI20240607BHJP
F01K 23/10 20060101ALI20240607BHJP
F02C 6/18 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
F01D25/00 W
F01K23/10 A
F01K23/10 B
F02C6/18 A
(21)【出願番号】P 2020169638
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤冨 陽介
(72)【発明者】
【氏名】市丸 隆志
(72)【発明者】
【氏名】毛利 悟
(72)【発明者】
【氏名】新家 利彦
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-81920(JP,A)
【文献】特開2020-79564(JP,A)
【文献】特開2001-263006(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0060065(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、蒸気タービンとを用いて発電を行うコンバインドサイクル発電プラントの運転中の各時刻に計測されたガスタービン出力のサンプリング値と、蒸気タービン出力のサンプリング値とを取得するステップと、
第1時刻に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記第1時刻の前記ガスタービン出力に対応する前記蒸気タービン出力であって、前記第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力を求めるステップと、
を有
し、
前記プラント出力を求めるステップにおいて、
一定時間内に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記蒸気タービン出力のサンプリング値との相互相関関数の最大値から、前記遅れ時間の固定値を求める、
性能評価方法。
【請求項2】
ガスタービンと、蒸気タービンとを用いて発電を行うコンバインドサイクル発電プラントの運転中の各時刻に計測されたガスタービン出力のサンプリング値と、蒸気タービン出力のサンプリング値とを取得するステップと、
第1時刻に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記第1時刻の前記ガスタービン出力に対応する前記蒸気タービン出力であって、前記第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力を求めるステップと、
を有し、
前記プラント出力を求めるステップにおいて、
一定時間内に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値及び前記蒸気タービン出力のサンプリング値に基づいて、前記ガスタービン出力の第1極値と、前記第1極値よりも後の時刻において前記第1極値と時系列に隣接する前記蒸気タービン出力の第2極値との組み合わせを特定し、
特定した複数の組み合わせそれぞれの前記第1極値及び前記第2極値の計測時刻の時間差を平均して、前記遅れ時間の固定値を求める、
性能評価方法。
【請求項3】
ガスタービンと、蒸気タービンとを用いて発電を行うコンバインドサイクル発電プラントの運転中の各時刻に計測されたガスタービン出力のサンプリング値と、蒸気タービン出力のサンプリング値とを取得するステップと、
第1時刻に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記第1時刻の前記ガスタービン出力に対応する前記蒸気タービン出力であって、前記第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力を求めるステップと、
を有し、
前記プラント出力を求めるステップにおいて、
取得した前記ガスタービン出力のサンプリング値及び前記蒸気タービン出力のサンプリング値に基づいて、前記ガスタービン出力の第1極値と、前記第1極値よりも後の時刻において前記第1極値と時系列に隣接する前記蒸気タービン出力の第2極値とのそれぞれの計測時刻の時間差を求め、
前記時間差を、前記第1極値の計測時刻から次の第1極値の計測時刻までの期間における前記遅れ時間の固定値とする、
性能評価方法。
【請求項4】
前記プラント出力を求めるステップにおいて、
前記第1極値及び前記第2極値は、2回連続してサンプリング値が上昇した後の極大値、及び、2回連続してサンプリング値が下降した後の極小値のうち少なくとも一方である、
請求項
2又は
3に記載の性能評価方法。
【請求項5】
ガスタービンと、蒸気タービンとを用いて発電を行うコンバインドサイクル発電プラントの運転中の各時刻に計測されたガスタービン出力のサンプリング値と、蒸気タービン出力のサンプリング値とを取得するステップと、
第1時刻に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記第1時刻の前記ガスタービン出力に対応する前記蒸気タービン出力であって、前記第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力を求めるステップと、
を有し、
前記プラント出力を求めるステップにおいて、
前記コンバインドサイクル発電プラントの評価期間の一部である分割期間内に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記蒸気タービン出力のサンプリング値との相互相関関数の最大値から、当該分割期間における前記遅れ時間の固定値を求める、
性能評価方法。
【請求項6】
前記プラント出力を求めるステップにおいて、
一定時間内に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記蒸気タービン出力のサンプリング値との相互相関関数を求め、
前記第2時刻は複数の時刻を含み、
前記第2時刻に含まれる各時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値それぞれについて、前記相互相関関数に基づく時刻毎の重みを付けた値を、前記第1時刻に計測された前記ガスタービン出力と合計して前記プラント出力を求める、
請求項1に記載の性能評価方法。
【請求項7】
前記コンバインドサイクル発電プラントの運転中に、各時刻に計測された燃料流量のサンプリング値を取得するステップと、
前記プラント出力と前記燃料流量とに基づいて前記コンバインドサイクル発電プラントのプラント効率を求めるステップと、
を更に有する請求項1から請求項
6の何れか一項に記載の性能評価方法。
【請求項8】
前記プラント出力と、前記プラント効率との関係から、前記プラント出力の区間毎の平均効率を求めるステップを更に有する、
請求項
7に記載の性能評価方法。
【請求項9】
前記コンバインドサイクル発電プラントの第1の運転モードにおける前記プラント出力の区間毎の前記平均効率と、前記第1の運転モードとは異なる第2の運転モードにおける前記プラント出力の区間毎の前記平均効率とを比較するステップを更に有する、
請求項
8に記載の性能評価方法。
【請求項10】
前記第1の運転モードは、前記コンバインドサイクル発電プラントの定期点検前の運転であり、前記第2の運転モードは、前記定期点検後の運転である、
請求項
9に記載の性能評価方法。
【請求項11】
コンバインドサイクル発電プラントの運転制御方法であって、
請求項
10に記載の性能評価方法を実施した結果、前記第1の運転モードよりも前記第2の運転モードの方が性能の良い区間では、前記第2の運転モードに切り替えるステップを有する、
運転制御方法。
【請求項12】
ガスタービンと、蒸気タービンとを用いて発電を行うコンバインドサイクル発電プラントの運転中の各時刻に計測されたガスタービン出力のサンプリング値と、蒸気タービン出力のサンプリング値とを取得する取得部と、
第1時刻に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記第1時刻の前記ガスタービン出力に対応する前記蒸気タービン出力であって、前記第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力を求める出力算出部と、
を備え
、
前記出力算出部は、
一定時間内に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記蒸気タービン出力のサンプリング値との相互相関関数の最大値から、前記遅れ時間の固定値を求める、
性能評価装置。
【請求項13】
ガスタービンと、蒸気タービンとを用いて発電を行うコンバインドサイクル発電プラントの運転中の各時刻に計測されたガスタービン出力のサンプリング値と、蒸気タービン出力のサンプリング値とを取得するステップと、
第1時刻に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記第1時刻の前記ガスタービン出力に対応する前記蒸気タービン出力であって、前記第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力を求めるステップと、
を性能評価装置のコンピュータに実行させるプログラム
であって、
前記プラント出力を求めるステップにおいて、
一定時間内に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記蒸気タービン出力のサンプリング値との相互相関関数の最大値から、前記遅れ時間の固定値を求める、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、性能評価方法、運転制御方法、性能評価装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントの診断を行う技術として、例えばプラント診断モデルで計算して得た状態量と、発電プラントから取得した状態量とを比較して、異常の有無を診断する技術が考えられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、発電プラントの定期点検を行った場合、若しくは、運転条件(制御ロジック等)を変えた場合に、どの程度性能が改善されるかを確認するための診断(性能評価)を行う場合がある。発電プラントでは、電力の需要に応じて負荷が時々刻々と変化する。そうすると、営業運転中の発電プラントで計測したデータはばらつきが大きくなるので、これらデータを使って発電プラントの性能評価を行うことが困難であった。このため、従来の技術では、営業運転を一時的に停止し、発電プラントのガスタービンを静定させて(負荷を一定に保って)試験運転を行い、性能評価用のデータを計測する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、試験運転中は発電電力を売電することができず、また、試験運転用のコストも大きなものとなる。このため、営業運転中に計測したデータで発電プラントの性能評価を行うことが望まれていた。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、運転中に計測したデータに基づきプラント性能の評価を行うことができる性能評価方法、運転制御方法、性能評価装置、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、性能評価方法は、ガスタービンと、蒸気タービンとを用いて発電を行うコンバインドサイクル発電プラントの運転中の各時刻に計測されたガスタービン出力のサンプリング値と、蒸気タービン出力のサンプリング値とを取得するステップと、第1時刻に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記第1時刻の前記ガスタービン出力に対応する前記蒸気タービン出力であって、前記第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力を求めるステップと、を有する。
【0008】
本開示の一態様によれば、性能評価装置は、ガスタービンと、蒸気タービンとを用いて発電を行うコンバインドサイクル発電プラントの運転中の各時刻に計測されたガスタービン出力のサンプリング値と、蒸気タービン出力のサンプリング値とを取得する取得部と、第1時刻に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記第1時刻の前記ガスタービン出力に対応する前記蒸気タービン出力であって、前記第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力を求める出力算出部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様によれば、プログラムは、ガスタービンと、蒸気タービンとを用いて発電を行うコンバインドサイクル発電プラントの運転中の各時刻に計測されたガスタービン出力のサンプリング値と、蒸気タービン出力のサンプリング値とを取得するステップと、第1時刻に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記第1時刻の前記ガスタービン出力に対応する前記蒸気タービン出力であって、前記第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力を求めるステップと、を性能評価装置のコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る性能評価方法、運転制御方法、性能評価装置、及びプログラムによれば、運転中に計測したデータに基づきプラント性能の評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る性能評価システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係る性能評価システムの機能構成を示す図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態に係る性能評価装置の処理の一例を示す第1のフローチャートである。
【
図4】本開示の第1の実施形態に係る性能評価装置の処理の一例を示す第2のフローチャートである。
【
図5】本開示の第1の実施形態に係るサンプリング値及びプラント出力の一例を示す図である。
【
図6】本開示の第1の実施形態に係る性能評価装置の処理の一例を示す第3のフローチャートである。
【
図7】本開示の第1の実施形態に係る相互相関関数の一例を示す図である。
【
図8】本開示の第1の実施形態に係る性能評価装置の処理の一例を示す第4のフローチャートである。
【
図9】本開示の第1の実施形態に係るプラント効率の一例を示す図である。
【
図10】本開示の第1の実施形態に係る性能評価装置の処理の一例を示す第5のフローチャートである。
【
図11】本開示の第1の実施形態に係るプラント出力及びヒートレートの一例を示す図である。
【
図12】本開示の第1の実施形態に係る第1の運転モード及び第2の運転モードの平均ヒートレートの一例を示す図である。
【
図13】本開示の第1の実施形態に係る性能評価装置及び制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図14】本開示の変形例1に係るガスタービン出力及び蒸気タービン出力の平均ヒートレートの一例を示す図である。
【
図15】本開示の変形例1に係る性能評価装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】本開示の変形例2に係る性能評価装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
以下、本開示の第1の実施形態に係る性能評価システム1について、
図1~
図13を参照しながら説明する。
【0013】
(全体構成)
図1は、本開示の第1の実施形態に係る性能評価システムの全体構成を示す図である。
性能評価システム1は、コンバインドサイクル発電プラント10(以下、「発電プラント10」とも記載する。)の性能を評価するためのシステムである。
図1に示すように、性能評価システム1は、発電プラント10と、性能評価装置20とを備えている。
【0014】
(発電プラントの構成)
発電プラント10は、
図1に示すように、ガスタービン100と、ガスタービン100の駆動で発電する発電機110と、ガスタービン100から排気される排ガスの熱で蒸気を発生する排熱回収ボイラー120と、排熱回収ボイラー120からの蒸気で駆動される蒸気タービン130(高圧蒸気タービン131、中圧蒸気タービン132、及び低圧蒸気タービン133)と、蒸気タービン130(131、132、133)の駆動で発電する発電機140と、低圧蒸気タービン133から排気された蒸気を水に戻す復水器150と、給水加熱器155と、これら各機器を制御する制御装置160とを備えている。
【0015】
ガスタービン100は、外気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機101と、燃料ガスに圧縮空気を混合して燃焼させ高温の燃焼ガスを生成する燃焼器102と、燃焼ガスにより駆動されるタービン103と、燃焼器102に供給する燃料流量を調節する燃料流量調節弁104と、を備えている。燃焼器102には、燃料供給源からの燃料を燃焼器102に供給する燃料ラインが接続されている。燃料ラインには、燃料流量調節弁104が設けられている。タービン103の排気口は排熱回収ボイラー120と接続されている。また、燃料ラインには流量計105が設けられ、燃焼器102に供給される燃料流量Fが逐次、計測される。
【0016】
高圧蒸気タービン131には、排熱回収ボイラー120で発生させた高圧蒸気が、蒸気ラインを介して供給される。中圧蒸気タービン132には、高圧蒸気タービン131から排気された蒸気が排熱回収ボイラー120で再加熱された中圧蒸気が、蒸気ラインを介して供給される。低圧蒸気タービン133には、排熱回収ボイラー120で発生させた低圧蒸気、及び中圧蒸気タービン132から排気された蒸気が、蒸気ラインを介して供給される。
【0017】
復水器150は低圧蒸気タービン133の出口に接続されている。低圧蒸気タービン133から排気された蒸気は、復水器150で水に戻されて、給水ラインを介し、さらに給水加熱器155を通って排熱回収ボイラー120に送られる。
【0018】
制御装置160は、ガスタービン100の出力制御および蒸気タービン130の出力制御を行って、発電機110、140による発電を行う。
【0019】
発電機110、140により発電された電力は、それぞれ電力経路を介してグリッド(電力系統)に供給可能である。また、各電力経路には出力計111、141が設けられ、ガスタービン100により駆動される発電機110の発電電力(以下、「ガスタービン出力Pg」とも記載する。)、及び蒸気タービン130により駆動される発電機140の発電電力(以下、「蒸気タービン出力Ps」とも記載する。)が逐次、計測される。
【0020】
(性能評価装置の機能構成)
図2は、本開示の第1の実施形態に係る性能評価システムの機能構成を示す図である。
性能評価装置20は、発電プラント10の運転データに基づいて、発電プラント10の性能を評価する。
【0021】
運転データとは、営業運転中の発電プラント10において計測されたサンプリング値(燃料流量F、ガスタービン出力Pg、及び蒸気タービン出力Ps)と、発電プラント10の運転モードと、サンプリング値の計測時刻と、を含むデータである。運転モードとは、発電プラント10の特定の運転状態を表すものであり、運転条件(制御ロジック)、定期点検の実施状況(実施前又は実施後)に応じて複数の運転モードが規定されている。発電プラント10の運転データは、所定のサンプリング時間(例えば、1分)毎に収集され、インターネット等のネットワークを介してデータサーバ30に送信されて蓄積される。なお、運転データは、発電プラント10が有するメモリ(不図示)に一時的に蓄積され、所定タイミング毎にパケット化されてデータサーバ30に送信される態様であってもよい。所定タイミングは、例えば前回送信してから一定時間(例えば、1時間)経過後であってもよいし、メモリに一定のデータ点数(例えば、1000点)が蓄積されたときであってもよい。
【0022】
性能評価装置20は、データサーバ30に蓄積されたサンプリング値を取得して、発電プラント10の性能評価を行う。
図1には、性能評価装置20及びデータサーバ30が発電プラント10の製造事業者等(製造、メンテナンス、評価等を行う事業者)により管理、運用される例が示されているが、この態様に限られることはない。他の実施形態では、データサーバ30は、クラウドコンピューティングサービス事業者により提供されるデータサーバであってもよい。
【0023】
性能評価装置20は、
図2に示すように、取得部201と、出力算出部202と、効率算出部203と、比較部204と、出力処理部205と、メモリ206とを備えている。
【0024】
取得部201は、発電プラント10の運転中の各時刻に計測されたサンプリング値(燃料流量F、ガスタービン出力Pg、蒸気タービン出力Ps)を取得する。
【0025】
出力算出部202は、第1時刻に計測されたガスタービン出力Pgのサンプリング値と、第1時刻のガスタービン出力Pgに対応する蒸気タービン出力Psであって、第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された蒸気タービン出力Psのサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力Pcを求める。
【0026】
効率算出部203は、プラント出力Pcと、燃料流量Fとに基づいて発電プラント10の効率を求める。
【0027】
比較部204は、発電プラント10の第1の運転モードにおけるプラント出力Pcの区間毎の平均効率と、第1の運転モードとは異なる第2の運転モードにおけるプラント出力Pcの区間毎の平均効率とを比較する。プラント出力Pcの区間は、例えば「0~9MW」の区間、「10~19MW」の区間、…のように、プラント出力を所定の範囲ΔPc(例えば10MW)毎に区切ったものである。
【0028】
例えば、第1の運転モードは発電プラント10の定期点検前の運転モードであり、第2の運転モードは定期点検後の運転モードである。なお、発電プラント10は、制御装置160を通じて、複数の運転条件(制御ロジック)を手動又は自動で切り替えることができる。したがって、第1の運転モードは複数の運転条件のうち一の運転条件下における運転モードであり、第2の運転モードは他の運転条件下における運転モードであってもよい。
【0029】
出力処理部205は、発電プラント10の評価結果を発電プラント10の制御装置160に送信する。評価結果は、出力算出部202が算出したプラント出力Pc、効率算出部203が算出したプラント効率、及び比較部204の比較結果が含まれている。また、出力処理部205は、性能評価装置に接続されたディスプレイ等に評価結果を出力してもよい。
【0030】
メモリ206は、いわゆる補助記憶装置であって、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等であってよい。メモリ206には、取得部201が取得したサンプリング値、出力算出部202及び効率算出部203による算出結果等が記憶される。
【0031】
(制御装置の機能構成)
図2に示すように、制御装置160は、運転制御部161と、操作受付部162と、表示部163とを有している。
【0032】
運転制御部161は、発電プラント10の状態に応じて、発電プラント10の各機器を自動的に制御する。また、発電プラント10の監視等を行う作業者が、後述の操作受付部162を介して手動操作を行う場合がある。この場合、運転制御部161は、作業者から受け付けた操作に基づいて、発電プラント10の各機器を制御する。
【0033】
また、本実施形態に係る運転制御部161は、性能評価装置20から受信した評価結果に基づいて、発電プラント10の運転モードを切り替える制御を行う。例えば、運転制御部161は、あるプラント出力の区間において第1の運転モードよりも第2の運転モードの方が効率の良いという評価結果であった場合、且つ、発電プラント10の現在のプラント出力がこの区間に含まれている場合、発電プラント10の運転モードを第1の運転モードから第2の運転モードに自動的に切り替える。
【0034】
操作受付部162は、発電プラント10の監視等を行う作業者の操作を受け付ける。例えば、操作受付部162は、発電プラント10の運転モードを切り替える操作を受け付ける。この場合、操作受付部162は、運転制御部161に運転モードの切り替えに係る制御を行わせる。また、操作受付部162は、性能評価装置20に対し、運転モード切り替え前後の発電プラント10の性能を評価するように指示してもよい。
【0035】
また、操作受付部162は、発電プラント10の性能評価の開始操作を受け付ける。例えば、定期点検が終了した後に作業者が性能評価の開始操作を行った場合、操作受付部162は、性能評価装置20に対し、定期点検前後の発電プラント10の性能を評価するように指示する。
【0036】
表示部163は、発電プラント10のサンプリング値、性能評価装置20から受信した評価結果等を表示するディスプレイである。作業者は、表示部163に表示された評価結果等を参照して、操作受付部162を介して運転モードの切り替え操作を行う。
【0037】
(性能評価システムの処理フロー)
図3は、本開示の第1の実施形態に係る性能評価装置の処理の一例を示す第1のフローチャートである。
ここでは、作業者の手動操作により第1の運転モードから第2の運転モードへの切り替えが行われ、切り替え前(第1の運転モード)の評価期間と、切り替え後(第2の運転モード)の評価期間の性能とを評価する例について説明する。評価期間は、切り替え前後の一定時間n分間(例えば、60分間)に設定される。ここでは、性能評価装置20は、運転モード切り替え前後のn分間を含む、所定数分の運転データがデータサーバ30に蓄積された後で、以下の各処理を実行するものとする。所定数は、データの個数(例えば、1000点)、データの取得期間(例えば、3~4時間)で設定される。
【0038】
図3に示すように、性能評価装置20の取得部201は、まずデータサーバ30から運転モードの切り替え前(第1の運転モード)のサンプリング値を取得する(ステップS10)。
【0039】
次に、性能評価装置20の出力算出部202及び効率算出部203は、発電プラント10の第1の運転モードの性能を評価する(ステップS11)。
【0040】
図4は、本開示の第1の実施形態に係る性能評価装置の処理の一例を示す第2のフローチャートである。
図4に示すように、まず、出力算出部202は、第1の運転モードにおける蒸気タービン出力Psの遅れ時間τdを算出する(ステップS100)。
【0041】
図5は、本開示の第1の実施形態に係るサンプリング値及びプラント出力の一例を示す図である。
図5の(a)は燃料流量F、(b)はガスタービン出力Pg、(c)は蒸気タービン出力Psの時系列を表すグラフである。また、
図5の(d)は本実施形態に係る出力算出部202が算出したプラント出力Pcの時系列を示すグラフであり、(e)は比較として従来の方法により算出したプラント出力Pcの時系列を示すグラフである。
【0042】
発電プラント10では、制御装置160の制御指令に応じてガスタービン100及び蒸気タービン130の出力が変動する。このとき、ガスタービン100の排ガスを使って発生させた蒸気により蒸気タービンを駆動させることから、
図5の(b)及び(c)に示すように、蒸気タービン130の出力変動は、ガスタービン100の出力変動に対して遅れて発生する。
【0043】
このため、
図5の(e)に示す従来の方法のように、同時刻tのガスタービン出力Pg(t)と蒸気タービン出力Ps(t)とを合計してプラント出力Pcを算出すると、発電プラント10の性能を正しく評価することが困難であった。このような知見を踏まえ、本実施形態に係る出力算出部202は、
図5の(d)に示すように、ガスタービン出力Pgに対する蒸気タービン出力Psの遅れ時間τを考慮して、プラント出力Pcを求めるようにしている。以下、本実施形態に係る出力算出部202が蒸気タービン出力Psの遅れ時間τを考慮してプラント出力Pcを求める方法について詳細に説明する。
【0044】
図6は、本開示の第1の実施形態に係る性能評価装置の処理の一例を示す第3のフローチャートである。
先ず、
図6を参照しながら、出力算出部202が遅れ時間の固定値τd(以下、単に「遅れ時間τd」とも記載する、)を算出する処理の詳細について説明する。なお、本実施形態に係る出力算出部202は、第1の運転モードの評価期間(t0~tn)を、更に一定時間(例えば、7分)で分割した分割期間毎に、遅れ時間τdを求める。ここでは、出力算出部202が複数の分割期間のうち、第1の分割期間(時刻t0~t7)の遅れ時間τdを求める例についてのみ説明するが、出力算出部は、第2の分割期間、第3の分割期間、…についても同様の処理を行い、分割時間毎の遅れ時間τd1、τd2、τd3、…を求めるものとする。
【0045】
まず、出力算出部202は、遅れ時間τを初期化する(ステップS101)。
【0046】
次に、出力算出部202は、第1の運転モードの評価期間のガスタービン出力Pg及び蒸気タービン出力Psのサンプリング値を読み出す(ステップS102)。また、評価期間内の時刻を時刻t0~tnとする。
【0047】
次に、出力算出部202は、蒸気タービン出力の遅れ時間が「τ」である場合のガスタービン出力Pg及び蒸気タービン出力Psの相互相関関数を求める(ステップS103)。ここで、時刻tのガスタービン出力Pg(t)と、遅れ時間τ後の蒸気タービン出力Ps(t+τ)との相互相関関数は、式(1)で表される。
【0048】
【0049】
また、出力算出部202は、式(2)及び(3)により、Rm(τ)を正規化したRmr(τ)を求める(ステップS104、S105)。
【0050】
【0051】
【0052】
次に、出力算出部202は、遅れ時間τを一定時間Δτ増加させる(ステップS106)。一定時間Δτは、例えば1分である。
【0053】
次に、出力算出部202は、初期値(0分)から上限値m(例えば、7分)までの全ての遅れ時間τ(τ0~τ7)について相互相関関数を求めたか判断する(ステップS107)。なお、遅れ時間の上限値mはガスタービン100及び蒸気タービン130の性能等に応じて変更してもよい。出力算出部202は、全ての遅れ時間τについて相互相関関数を求めていない場合(ステップS107:NO)、ステップS102に戻り、次の遅れ時間τについて相互相関関数を求める処理を実行する。一方、出力算出部202は、全ての遅れ時間τについて相互相関関数を求めた場合(ステップS107:YES)、Rmr(τ)が最大となる遅れ時間τdを求める(ステップS108)。
【0054】
図7は、本開示の第1の実施形態に係る相互相関関数の一例を示す図である。
図7には、出力算出部202が求めた各遅れ時間τについての相互相関関数Rmr(τ)をグラフ化したものが示されている。
図7の例では、相互相関関数Rmr(τ)が最大となる遅れ時間は「τ2」である。したがって、出力算出部202は、当該分割期間における遅れ時間τdを「τ2(2分)」に設定する。
【0055】
次に、
図4に戻り、出力算出部202及び効率算出部203は、第1の運転モードの評価期間の各時刻t0~tnにおけるプラント出力Pc及びプラント効率ηを算出する(ステップS200)。
【0056】
図8は、本開示の第1の実施形態に係る性能評価装置の処理の一例を示す第4のフローチャートである。
図8に示すように、出力算出部202は評価期間内の時刻を示すtを初期化する(ステップS201)。
【0057】
次に、出力算出部202は、式(4)のように、時刻tのガスタービン出力Pg(t)と、時刻tから遅れ時間τd後の蒸気タービン出力Ps(t+τd)とを加算して、時刻tのプラント出力Pcを算出する(ステップS202)。このとき、出力算出部202は、分割期間毎の遅れ時間τdを用いて、分割期間内の各時刻におけるプラント出力Pcを算出する。例えば、第1の分割期間の遅れ時間τd1を用いて、第1の分割期間の各時刻t0~t7のプラント出力Pcを算出する。第2の分割期間、第3の分割期間、…についても同様に、それぞれ第2の分割期間の遅れ時間τd2、第3の分割期間の遅れ時間τd3、…を使用して、各分割期間内の時刻毎のプラント出力Pcを算出する。
【0058】
【0059】
次に、効率算出部203は、式(5)のように時刻tのプラント効率η(エネルギー効率)を算出する(ステップS203)。
【0060】
【0061】
図9は、本開示の第1の実施形態に係るプラント効率の一例を示す図である。
図9の(a)は、本実施形態における蒸気タービン出力Psの遅れ時間τを考慮して算出したプラント出力Pc(
図5の(d)のプラント出力「Pc(t)=Pg(t)+Ps(t+τd)」)に基づいて算出したプラント効率ηの一例である。また、
図9の(b)は、比較として、従来のように蒸気タービン出力Psの遅れ時間を考慮せずに算出したプラント出力Pc(
図5の(
e)に示すプラント出力「Pc(t)=Pg(t)+Ps(t)」)に基づいて算出したプラント効率ηの一例である。
【0062】
効率算出部203は、算出した時刻tのプラント効率ηを
図9の(a)のグラフ上にプロットする(ステップS204)。なお、このグラフは、出力処理部205により性能評価装置に接続されたディスプレイ等に表示されてもよい。
【0063】
次に、効率算出部203は、時刻tを一定時間Δt増加させる(ステップS205)。一定時間Δtは、サンプリング時間(例えば、1分)にあわせて設定される。
【0064】
また、効率算出部203は、評価期間の全ての時刻(時刻t0~tn)のプラント効率ηを算出したか判断する(ステップS207)。効率算出部203は、時刻tnまでの全てのプラント効率ηを算出していない場合(ステップS207:NO)、ステップS202に戻り、次の時刻について上述の各ステップを再度実行する。一方、効率算出部203は、時刻tnまでの全ての時刻のプラント効率ηを算出した場合(ステップS207:YES)、
図4のステップS300に進む。効率算出部203が評価期間の各時刻のプラント効率ηを全て算出すると、
図9の(a)に示すようなグラフを得ることができる。従来の方式で算出したプラント効率η(
図9の(b))と比較すると、本実施形態に係る効率算出部203が算出したプラント効率ηはノイズが低減され、より正確にプラント効率を評価することが可能となる。
【0065】
効率算出部203は、発電プラント10のプラント効率をヒートレートHRで表してもよい。本実施形態に係る効率算出部203は、
図4に示すように、発電プラント10の負荷区間毎のプラント効率の平均ヒートレートHRavを更に算出する(ステップS300)。
【0066】
図10は、本開示の第1の実施形態に係る性能評価装置の処理の一例を示す第5のフローチャートである。
以下、
図10を参照しながら、効率算出部203がプラント効率の平均ヒートレートHRavを求める処理の詳細について説明する。
【0067】
まず、効率算出部203は、評価期間内の時刻を示すtを初期化する(ステップS301)。
【0068】
次に、効率算出部203は、以下の式(6)により、時刻tのプラント効率を表すヒートレートHR(t)を求める(ステップS302)。
【0069】
【0070】
また、効率算出部203は、時刻tと、時刻tのプラント出力Pc(t)と、算出した時刻tのヒートレートHR(t)とを関連付けてメモリ206に記憶する(ステップS303)。
【0071】
次に、効率算出部203は、時刻tを一定時間Δt増加させる(ステップS304)。一定時間Δtは、サンプリング時間(例えば、1分)にあわせて設定される。
【0072】
また、効率算出部203は、評価期間の全ての時刻(時刻t0~tn)のヒートレートHRを算出したか判断する(ステップS305)。効率算出部203は、時刻tnまでの全てのヒートレートHRを算出していない場合(ステップS305:NO)、ステップS302に戻り、次の時刻のヒートレートHRを算出する処理を実行する。一方、効率算出部203は、時刻tnまでの全ての時刻のヒートレートHRを算出した場合(ステップS305:YES)、各時刻のプラント出力Pc及びヒートレートHRの座標をプロットしたグラフを作成する(ステップS306)。このグラフでは、ヒートレートHRが低いほど、発電プラント10の性能がよいことを表している。
【0073】
図11は、本開示の第1の実施形態に係るプラント出力及びヒートレートの一例を示す図である。
図11のグラフの縦軸はヒートレートHR、横軸はプラント出力Pcを表す。効率算出部203は、メモリ206に記録された時刻t0~tnそれぞれのプラント出力Pc及びヒートレートHRをグラフ上にプロットして、発電プラント10のプラント出力Pcに応じたヒートレートHRの分布を表すグラフを得る。
【0074】
次に、効率算出部203は、プラント出力Pcの区間(ΔPc)毎の平均ヒートレートHRavを求める(ステップS307)。例えば、効率算出部203は、10MW毎の平均ヒートレートHRavを求める。このとき、効率算出部203は、ヒートレートHRのばらつきが大きい場合は、このばらつきの標準偏差でフィルタリング(例えば、4σ以内のデータのみを採用する)を行うようにしてもよい。蒸気タービン出力Psの遅れ時間τを考慮することによりばらつきが所定範囲以内に収まる場合は、標準偏差によるフィルタリングは省略してもよい。
【0075】
また、効率算出部203は、
図11に示すように、各区間の平均ヒートレートHRavをプロットしたグラフを作成する(ステップS308)。なお、このグラフは、出力処理部205により性能評価装置に接続されたディスプレイ等に表示されてもよい。
【0076】
運転モード切り替え前(第1の運転モード)についての性能評価(プラント出力Pc、プラント効率η、及びプラント出力の区間毎(10MW毎)の平均ヒートレートHRavの算出)が完了すると、性能評価装置20は、
図3に戻り、運転モード切り替え後(第2の運転モード)についての性能評価を行う(ステップS12~S13)。
【0077】
取得部201は、データサーバ30から第2の運転モードのサンプリング値を取得する(ステップS12)。
【0078】
サンプリング値を取得すると、出力算出部202及び効率算出部203は、発電プラント10の第2の運転モードの性能を評価する(ステップS13)。当該処理の流れは、上述の第1の運転モードの性能を評価する処理(ステップS11)と同様である。
【0079】
次に、比較部204は、第1の運転モード及び第2の運転モードの平均ヒートレートHRavを比較する。本実施形態では、第1の運転モードと比較して、第2の運転モードがどの程度、性能が改善されたかを評価する。この場合、比較部204は、プラント出力の区間毎(10MW毎)に、式(7)のように第2の運転モードの平均ヒートレートHRav2から第1の運転モードの平均ヒートレートHRav1を減じたヒートレート差HReを求める(ステップS14)。
【0080】
【0081】
図12は、本開示の第1の実施形態に係る第1の運転モード及び第2の運転モードの性能差の一例を示す図である。
比較部204は、
図12の(a)に示すように、第1の運転モードの平均ヒートレートHRav1と、第2の運転モードの平均ヒートレートHRav2とを比較したグラフを作成する。また、比較部204は、
図12の(b)に示すように、第1の運転モードと第2の運転モードとのヒートレート差HReを、プラント出力の区間毎(10MW毎)に表したグラフを作成する。なお、比較部204は、これらのグラフを一つのグラフにまとめてもよい。
【0082】
ヒートレートHRが低いほど発電プラント10の性能が良いので、比較部204は、ヒートレート差HReがゼロ未満(負の値)となる場合、第2の運転モードの方が性能がよいと判断する。また、ヒートレート差HReがゼロ未満、且つ平均ヒートレートHRavの値が小さいほど、第2の運転モードの性能改善度合いが高いと判断する。
図12の例では、比較部204は、ヒートレート差HReがゼロ未満となる区間R1、R3、R5については、第2の運転モードの方が発電プラント10の性能が良くなると判断する。一方、比較部204は、ヒートレート差HReがゼロの場合は第1の運転モードと第2の運転モードに性能差はなく、ヒートレート差HReがゼロ以上(正の値)となる区間R2、R4では、第1の運転モードの方が発電プラント10の性能が良くなると判断する。
【0083】
次に、出力処理部205は、比較部204の判断結果(第2の運転モードに切り替えたことによる性能改善の有無、改善の度合い)を、性能評価装置20による評価結果として制御装置160に出力(送信)する(ステップS15)。また、出力処理部205は、この評価結果を性能評価装置に接続されたディスプレイ等に表示してもよい。
【0084】
なお、この評価結果には、出力算出部202が算出したプラント出力Pcの時刻歴(
図5の(d)のグラフ)、効率算出部203が算出したプラント効率ηの時刻歴(
図9の(a)のグラフ)、効率算出部203が算出した各運転モードのプラント出力区分(ΔPc)毎のヒートレートHRの分布及び平均ヒートレートHRav(
図11のグラフ)、比較部204が作成した第1の運転モードと第2の運転モードとの比較グラフ(
図12の(a)の平均ヒートレートHRavのグラフ、及び(b)のヒートレート差HReのグラフ)のうち、少なくとも一つが更に含まれていてもよい。
【0085】
また、制御装置160は、性能評価装置20から受信した評価結果を表示部163に表示する。このとき、制御装置160の運転制御部161は、以降の運転制御処理において、現在のプラント出力Pcが、第2の運転モードの方が性能のよい区間(
図12の区間R1、R3、R5)に含まれる場合、第1の運転モードから第2の運転モードに切り替える自動制御を行うようにしてもよい。また、運転制御部161は、現在のプラント出力Pcが、第1の運転モードの方が性能のよい区間(
図12の区間R2、R4)に含まれる場合、第2の運転モードから第1の運転モードに切り替える自動制御を行う。更に、制御装置160は、表示部163を確認した作業者による操作を受け付けて、操作に応じて運転モードを切り替える手動制御を行ってもよい。
【0086】
性能評価装置20は、作業者の手動操作により発電プラント10の運転モードが切り替えられる度に、上述の各処理を行い、運転モードの切り替え前後の性能評価を行う。
【0087】
なお、他の実施形態では、性能評価装置20は、データサーバ30を介して収集した発電プラント10の運転データに基づいて、運転モードが手動制御又は自動制御で切り替えられたことを検出し、切り替え前後の性能評価を自動的に行うようにしてもよい。
【0088】
更に他の実施形態では、性能評価装置20は、制御装置160から性能評価を行うように指示されたとき、発電プラント10の性能評価を行ってもよい。例えば、発電プラント10の定期点検を行った後、作業者は、制御装置160の操作受付部162を通じて性能評価の開始操作を行ったとする。そうすると、制御装置160は、性能評価装置20に対し、定期点検前の一定期間における運転性能と、定期点検後の一定期間における運転性能とを比較する評価を行うよう指示する。このとき、定期点検前後の一定期間は、作業者により、制御装置160の操作受付部162を通じて任意に指定されてもよい。また、作業者は、定期点検の有無に関わらず、営業運転中の任意のタイミングで性能評価の開始操作を行ってもよい。
【0089】
なお、上述の例では、出力算出部202が評価期間を一定時間で分割した分割期間毎に遅れ時間τdを求める態様について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、出力算出部202は、評価期間を発電プラント10の負荷帯毎に分割し、負荷帯毎の遅れ時間τdを求めるようにしてもよい。例えば、出力算出部202は、出力81%~90%の負荷帯で運転していた期間の遅れ時間τd1と、出力91%~100%の負荷帯で運転していた期間の遅れ時間τd2と、をそれぞれ求めてもよい。また、出力算出部202は、遅れ時間τd1を使用して、出力81%~90%の負荷帯で運転していた期間の時刻毎のプラント出力Pcを算出する。同様に、出力算出部202は、遅れ時間τd2を使用して、出力91%~100%の負荷帯で運転していた期間の時刻毎のプラント出力Pcを算出する。
【0090】
(ハードウェア構成)
図13は、本開示の第1の実施形態に係る性能評価装置及び制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図13に示すように、コンピュータ900は、プロセッサ901、メインメモリ902、ストレージ903、インタフェース904を備える。
【0091】
上述の性能評価装置20及び制御装置160は、それぞれコンピュータ900に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ903に記憶されている。プロセッサ901は、プログラムをストレージ903から読み出してメインメモリ902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ902に確保する。
【0092】
プログラムは、コンピュータ900に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。たとえば、プログラムは、ストレージ903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ900は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ901によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0093】
ストレージ903の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904または通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部メディア910であってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムをメインメモリ902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0094】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0095】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る性能評価装置20及び性能評価方法は、出力算出部202において、第1時刻tに計測されたガスタービン出力Pg(t)と、蒸気タービン出力Psの遅れ時間τ後の第2時刻t+τに計測された蒸気タービン出力Ps(t+τ)との合計出力であるプラント出力Pc(t)を求める処理を実行する。
上述のように、蒸気タービン130は、ガスタービン100からの排ガスの熱で発生した蒸気を用いて駆動することから、蒸気タービン出力Psの変動は、ガスタービン出力Pgの変動よりも遅れて発生する。このため、電力需要に応じて時々刻々と発電プラントの負荷が変動する営業運転中に計測したデータでは、蒸気タービン出力Psの遅れが影響してデータのばらつきが大きくなる。そうすると、従来の方法のように、単に同時刻tに計測されたガスタービン出力Pg(t)と蒸気タービン出力Ps(t)とを合計すると、発電プラントの正確なプラント出力Pcを求める(評価する)ことが困難であった。これに対し、本実施形態に係る出力算出部202は、蒸気タービン130の出力の遅れ時間τを考慮することにより、負荷変動の頻度が高い営業運転中に計測したデータを使用したとしても、より正確に発電プラント10のプラント出力Pcを求めることが出来る。
【0096】
また、本実施形態に係る性能評価装置20及び性能評価方法は、出力算出部202において、ガスタービン出力Pgと、蒸気タービン出力Psとに基づいて、蒸気タービン出力Psの遅れ時間の固定値τdを求める。具体的には、出力算出部202は、一定時間(例えば、運転モードの切り替え前後の評価期間である60分間)に計測されたガスタービン出力Pgと、蒸気タービン出力Psとの相互相関関数の最大値から、遅れ時間の固定値τdを求める。
ガスタービン出力Pgと蒸気タービン出力Psとの間には相関性があることが想定される。このため、これらの相互相関関数の最大値(最も相関性がある値)から遅れ時間の固定値τdを求めることにより、より現実の遅れ時間に近いと推定される値を得ることができる。
【0097】
また、本実施形態に係る性能評価装置20及び性能評価方法は、取得部201において燃料流量Fのサンプリング値を更に取得し、効率算出部203において燃料流量F及びプラント出力Pcに基づいて、発電プラント10のプラント効率η及びヒートレートHRを求める。
このようにすることで、発電プラント10の性能をプラント効率η又はヒートレートHRにより評価することができる。
【0098】
また、本実施形態に係る性能評価装置20及び性能評価方法は、効率算出部203において、プラント出力Pcとプラント効率(ヒートレートHR)との関係から、プラント出力Pcの区間毎(例えば、10MW毎)の平均効率HRavを求める。
このようにすることで、プラント出力Pcの区間毎のプラント効率(平均ヒートレートHRav)の傾向を容易に理解できるデータを提供することができる。
【0099】
また、本実施形態に係る性能評価装置20及び性能評価方法は、比較部204において、第1の運転モードにおける区間毎の平均効率HRavと、第2の運転モードにおける区間毎の平均効率HRavと比較する。例えば、第1の運転モードは、発電プラント10の運転モード切り替え前の運転モードであり、第2の運転モードは運転モード切り替え後の運転モードである。
このようにすることで、二つの異なる運転モードの性能を比較し、プラント出力Pcの区間毎にどちらの運転モードの方が性能の改善を見込めるかを容易に理解できるデータを提供することができる。
【0100】
また、本実施形態に係る性能評価装置20及び性能評価方法は、第1の運転モードは、発電プラント10の定期点検前の運転であり、第2の運転モードは定期点検後の運転であってもよい。
このようにすることで、定期点検による性能改善の有無を容易に理解できるデータを提供することができる。
【0101】
また、作業者は、制御装置160を通じて任意のタイミングで発電プラント10の性能評価の開始操作を行うようにしてもよい。この場合、性能評価装置20は、制御装置160から指示を受け付けた前後の一定時間n分間についての性能評価を行う。
このようにすることで、作業者は、定期点検の実施を待つことなく、いつでも発電プラント10の性能を確認することができる。これにより、発電プラント10の性能劣化等を迅速に知ることができる。
【0102】
また、本実施形態に係る性能評価システム1及び運転制御方法は、制御装置160の運転制御部161において、性能評価の結果、第1の運転モードよりも第2の運転モードの方が性能のよい区間では、第2の運転モードに切り替える制御を行う。
このようにすることで、発電プラント10をより効率よく運転させることができる。また、制御装置160は、性能評価の結果を表示部163に表示して、作業者にどの区間ではどちらの運転モードの方が性能が良いかを提示するようにしてもよい。これにより、作業者は、運転モードの切り替え操作を適切に行うことが可能となる。
【0103】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。以下、上述の第1の実施形態の変形例について説明する。
【0104】
<変形例1>
上述の第1の実施形態において、出力算出部202がガスタービン出力Pgと蒸気タービン出力Psとの相互相関関数に基づいて、蒸気タービン出力Psの遅れ時間τを求める態様について説明したが、これに限られることはない。変形例1では、出力算出部202は、ガスタービン出力Pg及び蒸気タービン出力Psの極値の分析を行い、遅れ時間τを求める態様について説明する。
【0105】
図14は、本開示の変形例1に係るガスタービン出力及び蒸気タービン出力の平均ヒートレートの一例を示す図である。
図15は、本開示の変形例1に係る性能評価装置の処理の一例を示すフローチャートである。
以下、
図14~
図15を参照しながら、変形例1に係る出力算出部202が遅れ時間τdを求める処理の詳細について説明する。また、本変形例に係る出力算出部202は、第1の実施形態の
図6に示す処理に代えて、
図15に示す処理を実行する。
【0106】
(性能評価システムの処理フロー)
図15に示すように、本変形例に係る出力算出部202は、評価期間(時刻t0~tn)に計測されたガスタービン出力Pgの第1極値v1(極大値及び極小値)と、蒸気タービン出力Psの第2極値v2(極大値及び極小値)との組み合わせを抽出する(ステップS501)。
図14の例では、まず、出力算出部202は、ガスタービン出力Pgの第1極値v1_1(極小値)、v1_2(極大値)、及びv
1_3(極大値)を抽出する。また、出力算出部202は、蒸気タービン出力Psの第2極値v2_1(極小値)、v2_2(極大値)、及びv2_3(極大値)を抽出する。そして、出力算出部202は、第1極値v1と、当該第1極値v1よりも後の時刻において第1極値v1と時系列に隣接する第2極値v2との組み合わせを特定する。
【0107】
なお、出力算出部202は、例えば、時系列に連続する3点のサンプリング値のうち、最大の値を極大値、最小の値を極小値として抽出してもよい。しかしながら、この場合、ノイズによりサンプリング値が増減したときに、極大値又は極小値として抽出してしまう可能性がある。このため、本変形例に係る出力算出部202は、時系列に連続する5点毎にサンプリング値を参照して、極大値及び極小値を抽出する。具体的には、
図14に示すように、時系列に2回連続してサンプリング値が上昇した後の極大値を、又は、2回連続してサンプリング値が下降した後の極小値を、それぞれ抽出する。
【0108】
次に、出力算出部202は、各組み合わせの計測時刻の時間差を求める(ステップS502)。
図14の例では、第1極値v1_1及び第2極値v2_1の組み合わせの計測時刻の時間差は「2分」である。第1極値v1_2及び第2極値v2_2の組み合わせの計測時刻の時間差は「3分」である。第1極値v1_3及び第2極値v2_3の組み合わせの計測時刻の時間差は「1分」である。
【0109】
また、出力算出部202は、これら計測時刻の時間差を平均した値を、評価期間t0~tnにおける蒸気タービン出力Psの遅れ時間τdとして求める(ステップS503)。
【0110】
出力算出部202は、このようにして求めた遅れ時間τdを用いて、評価期間t0~tnの時刻毎のプラント出力Pcを算出する。プラント出力Pcを算出する処理については、第1の実施形態と同様である。
【0111】
(作用効果)
以上のように、本変形例に係る性能評価装置20及び性能評価方法は、出力算出部202において、評価期間(時刻t0~tn)内に計測されたガスタービン出力Pg及び蒸気タービン出力Psの時系列に連続する極値の組み合わせを特定し、各組み合わせの第1極値v1と第2極値v2の計測時刻の時間差を平均して、評価期間に適用する蒸気タービン出力Psの遅れ時間の固定値τdを求める。
このようにすることで、第1の実施形態よりも簡易な処理で、蒸気タービン出力Psの遅れ時間τdを求めることができる。
【0112】
なお、本変形例に係る出力算出部202は、ステップS503において、第1極値v1と第2極値v2との計測時刻の時間差を、当該第1極値v1が計測された時刻から、次の第1極値v1が計測された時刻までの期間に適用する遅れ時間τdとしてもよい。
図14の例では、出力算出部202は、第1極値v1_1及び第2極値v2_1の計測時刻の時間差「2分」を、第1極値v1_1の計測時刻から、次の第1極値v1_2の計測時刻までの期間の遅れ時間τdとする。同様に、出力算出部202は、第1極値v1_2及び第2極値v2_2の計測時刻の時間差「3分」を、第1極値v1_2の計測時刻から、次の第1極値v1_3の計測時刻までの期間の遅れ時間τdとする。
これにより、第1の実施形態よりも簡易な処理で、評価期間内の部分毎に細かに遅れ時間τdを調整することができる。
【0113】
また、出力算出部202は、時系列に2回連続してサンプリング値が上昇した後の極大値を、又は、2回連続してサンプリング値が下降した後の極小値を、それぞれ第1極値v1として抽出する。同様に、出力算出部202は、時系列に2回連続してサンプリング値が上昇した後の極大値を、又は、2回連続してサンプリング値が下降した後の極小値を、それぞれ第2極値v2として抽出する。
このようにすることで、ノイズによるサンプリング値の増減による影響を低減して、より正確に第1極値v1及び第2極値v2を抽出することができる。
【0114】
<変形例2>
また、上述の第1の実施形態において、出力算出部202が第1時刻tのガスタービン出力Pg(t)と、第1時刻から遅れ時間τd後の第2時刻t+τdの蒸気タービン出力Ps(t+τd)とを合計して、第1時刻tのプラント出力Pc(t)を求める態様について説明したが、これに限られることはない。変形例2では、第1時刻tに対応する第2時刻は、複数の時刻を含んでいてもよい。したがって、出力算出部202は、第1時刻tに計測されたガスタービン出力Pg(t)と、第1時刻tに対応する複数の第2時刻のそれぞれで計測された蒸気タービン出力Psとに基づいて、第1時刻tのプラント出力Pc(t)を求める。具体的には、出力算出部202は、以下のような処理を行う。
【0115】
(性能評価システムの処理フロー)
図16は、本開示の変形例2に係る性能評価装置の処理の一例を示すフローチャートである。
本変形例に係る出力算出部202は、
図8のステップS202に代えて、
図16のステップS602を実行する。なお、
図16のステップS601、及びS604~S607は、
図8のステップS201、及びS204~
S207とそれぞれ同じであるため、説明を省略する。
【0116】
出力算出部202は、
図6のステップS103~S105で求めた遅れ時間τ0~τmのそれぞれに対応する相互相関関数Rmr(τ)の値を、第1時刻tに対応する複数の第2時刻t+τ(τ=1,2,…,m)の各時刻で計測した蒸気タービン出力Ps(t+τ)の重み係数として乗じる。例えば、時刻t+τ1の蒸気タービン出力Ps(t+τ1)には相互相関関数Rmr(τ1)を重み係数として乗じ、時刻t+τ2の蒸気タービン出力Ps(t+τ2)には、相互相関関数Rmr(τ2)を重み係数として乗じる。以降の時刻t+τ3、…、t+τmについても同様である。また、出力算出部202は、相互相関関数Rmr(τ)により重み付けをした第2時刻t+τ1~t+τmそれぞれの蒸気タービン出力Psを総和した値を、第1時刻tのガスタービン出力Pg(t)と合計して、第1時刻tのプラント出力Pc(t)を求める。すなわち、出力算出部202は、時刻t1におけるプラント出力Pc(t1)を、式(8)により求める(ステップS602)。なお、式(8)において、mは、例えば「7(分)」に設定される。同様に、出力算出部202は、式(8)により、評価期間の各時刻t0~tnのプラント出力Pcを求める。
【0117】
【0118】
(作用効果)
以上のように、本変形例に係る出力算出部202は、第1時刻tから遅れ時間τ1~τm後の複数の第2時刻t+τそれぞれにおいて計測された蒸気タービン出力Ps(t+τ)について、相互相関関数Rmr(τ)に基づく時刻毎の重み付けた値を、第1時刻tに計測されたガスタービン出力Pgと合計して、第1時刻tのプラント出力Pc(t)を求める。
時系列に連続するサンプリング値は、過去のサンプリング値の影響を受けている。本変形例のように、時系列に連続する蒸気タービン出力Ps(t+τ)について、相互相関関数Rmr(τ)で重み付けすることにより、過去のサンプリング値の影響を加味して、蒸気タービン出力Psの値を求めることが可能となる。これにより、プラント出力Pcの精度を向上させることができる。
【0119】
<付記>
上述の実施形態に記載の性能評価方法、運転制御方法、性能評価装置、及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0120】
本開示の第1の態様によれば、性能評価方法は、ガスタービンと、蒸気タービンとを用いて発電を行うコンバインドサイクル発電プラントの運転中の各時刻に計測されたガスタービン出力のサンプリング値と、蒸気タービン出力のサンプリング値とを取得するステップと、第1時刻に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記第1時刻の前記ガスタービン出力に対応する前記蒸気タービン出力であって、前記第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力を求めるステップと、を有する。
【0121】
このように蒸気タービンの出力の遅れ時間を考慮してプラント出力を求めることにより、負荷変動の頻度が高い営業運転中に計測したデータを使用したとしても、より正確に発電プラントのプラント出力を求めることが出来る。
【0122】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る性能評価方法の前記プラント出力を求めるステップにおいて、前記ガスタービン出力の複数のサンプリング値と、前記蒸気タービン出力の複数のサンプリング値とに基づいて、前記遅れ時間の固定値を求める。
【0123】
ガスタービン出力と蒸気タービン出力との間には相関性があることが想定される。このため、上述のように、ガスタービン出力及び蒸気タービン出力のサンプリング値から遅れ時間の固定値を求めることにより、より精度よくプラント出力を求めることができる。
【0124】
本開示の第3の態様によれば、第2の態様に係る性能評価方法の前記プラント出力を求めるステップにおいて、一定時間内に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記蒸気タービン出力のサンプリング値との相互相関関数の最大値から、前記遅れ時間の固定値を求める。
【0125】
このように、相互相関関数の最大値(最も相関性がある値)から遅れ時間の固定値を求めることにより、より現実の遅れ時間に近いと推定される値を得ることができる。
【0126】
本開示の第4の態様によれば、第2の態様に係る性能評価方法の前記プラント出力を求めるステップにおいて、一定時間内に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値及び前記蒸気タービン出力のサンプリング値に基づいて、前記ガスタービン出力の第1極値と、前記第1極値よりも後の時刻において前記第1極値と時系列に隣接する前記蒸気タービン出力の第2極値との組み合わせを特定し、特定した複数の組み合わせそれぞれの前記第1極値及び前記第2極値の計測時刻の時間差を平均して、前記遅れ時間の固定値を求める。
【0127】
このようにすることで、簡易な処理で蒸気タービン出力の遅れ時間を求めることができる。
【0128】
本開示の第5の態様によれば、第2の態様に係る性能評価方法の前記プラント出力を求めるステップにおいて、取得した前記ガスタービン出力のサンプリング値及び前記蒸気タービン出力のサンプリング値に基づいて、前記ガスタービン出力の第1極値と、前記第1極値よりも後の時刻において前記第1極値と時系列に隣接する前記蒸気タービン出力の第2極値とのそれぞれの計測時刻の時間差を求め、前記時間差を、前記第1極値の計測時刻から次の第1極値の計測時刻までの期間における前記遅れ時間の固定値とする。
【0129】
このようにすることで、簡易な処理で、一定時間内の部分毎に細かに遅れ時間を調整することができる。
【0130】
本開示の第6の態様によれば、第4又は第5の態様に係る性能評価方法の前記プラント出力を求めるステップにおいて、前記第1極値及び前記第2極値は、2回連続してサンプリング値が上昇した後の極大値、及び、2回連続してサンプリング値が下降した後の極小値のうち少なくとも一方である。
【0131】
このようにすることで、ノイズによるサンプリング値の増減による影響を低減して、より正確に第1極値及び第2極値を抽出することができる。
【0132】
本開示の第7の態様によれば、第2の態様に係る性能評価方法の前記プラント出力を求めるステップにおいて、前記コンバインドサイクル発電プラントの評価期間の一部である分割期間内に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記蒸気タービン出力のサンプリング値との相互相関関数の最大値から、当該分割期間における前記遅れ時間の固定値を求める。
【0133】
このように相互相関関数の最大値(最も相関性がある値)から遅れ時間の固定値を求めることにより、より現実の遅れ時間に近いと推定される値を得ることができる。また、評価期間を更に複数の分割期間に分割し、各分割期間における遅れ時間を求めることで、より正確にプラント出力を求めることができる。
【0134】
本開示の第8の態様によれば、第1の態様に係る性能評価方法の前記プラント出力を求めるステップにおいて、一定時間内に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記蒸気タービン出力のサンプリング値との相互相関関数を求め、前記第2時刻は複数の時刻を含み、前記第2時刻に含まれる各時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値それぞれについて、前記相互相関関数に基づく時刻毎の重みを付けた値を、前記第1時刻に計測された前記ガスタービン出力と合計して前記プラント出力を求める。
【0135】
このようにすることで、過去のサンプリング値の影響を加味して、蒸気タービン出力の値を求めることが可能となる。これにより、プラント出力の精度を向上させることができる。
【0136】
本開示の第9の態様によれば、第1から第8の何れか一の態様に係る性能評価方法は、前記コンバインドサイクル発電プラントの運転中に、各時刻に計測された燃料流量のサンプリング値を取得するステップと、前記プラント出力と前記燃料流量とに基づいて前記コンバインドサイクル発電プラントのプラント効率を求めるステップと、を更に有する。
【0137】
このようにすることで、発電プラントの性能をプラント効率(エネルギー効率又はヒートレート)により評価することができる。
【0138】
本開示の第10の態様によれば、第9の態様に係る性能評価方法は、前記プラント出力と、前記プラント効率との関係から、前記プラント出力の区間毎の平均効率を求めるステップを更に有する。
【0139】
このようにすることで、プラント出力の区間毎のプラント効率(平均ヒートレート)の傾向を容易に理解できるデータを提供することができる。
【0140】
本開示の第11の態様によれば、第10の態様に係る性能評価方法は、前記コンバインドサイクル発電プラントの第1の運転モードにおける前記プラント出力の区間毎の前記平均効率と、前記第1の運転モードとは異なる第2の運転モードにおける前記プラント出力の区間毎の前記平均効率とを比較するステップを更に有する。
【0141】
このようにすることで、二つの異なる運転モードの性能を比較し、プラント出力Pcの区間毎にどちらの運転モードの方が性能の改善を見込めるかを容易に理解できるデータを提供することができる。
【0142】
本開示の第12の態様によれば、第11の態様に係る性能評価方法において、前記第1の運転モードは、前記コンバインドサイクル発電プラントの定期点検前の運転であり、前記第2の運転モードは、前記定期点検後の運転である。
【0143】
このようにすることで、定期点検による性能改善の有無を容易に理解できるデータを提供することができる。
【0144】
本開示の第13の態様によれば、コンバインドサイクル発電プラントの運転制御方法では、第12の態様に係る性能評価方法を実施した結果、前記第1の運転モードよりも前記第2の運転モードの方が性能の良い区間では、前記第2の運転モードに切り替えるステップを有する。
【0145】
このようにすることで、発電プラントをより効率よく運転させることができる。
【0146】
本開示の第14の態様によれば、性能評価装置は、ガスタービンと、蒸気タービンとを用いて発電を行うコンバインドサイクル発電プラントの運転中の各時刻に計測されたガスタービン出力のサンプリング値と、蒸気タービン出力のサンプリング値とを取得する取得部と、第1時刻に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記第1時刻の前記ガスタービン出力に対応する前記蒸気タービン出力であって、前記第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力を求める出力算出部と、を備える。
【0147】
本開示の第15の態様によれば、プログラムは、ガスタービンと、蒸気タービンとを用いて発電を行うコンバインドサイクル発電プラントの運転中の各時刻に計測されたガスタービン出力のサンプリング値と、蒸気タービン出力のサンプリング値とを取得するステップと、第1時刻に計測された前記ガスタービン出力のサンプリング値と、前記第1時刻の前記ガスタービン出力に対応する前記蒸気タービン出力であって、前記第1時刻から所定の遅れ時間後の第2時刻に計測された前記蒸気タービン出力のサンプリング値と、の合計出力であるプラント出力を求めるステップと、を性能評価装置のコンピュータに実行させる。
【符号の説明】
【0148】
1 性能評価システム
10 発電プラント(コンバインドサイクル発電プラント)
20 性能評価装置
201 取得部
202 出力算出部
203 効率算出部
204 比較部
205 出力処理部
206 メモリ
30 データサーバ
100 ガスタービン
110 発電機
120 排熱回収ボイラー
130 蒸気タービン
140 発電機
150 復水器
160 制御装置
161 運転制御部
162 操作受付部
163 表示部
900 コンピュータ
901 プロセッサ