(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】追従式のプーリーユニット及びこれを用いるワイヤーソーマシン
(51)【国際特許分類】
B28D 1/08 20060101AFI20240607BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240607BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20240607BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20240607BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20240607BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20240607BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
B28D1/08
B24B27/06 R
B24B55/02 Z
B24B55/06
B28D7/02
E01D24/00
E01D19/12
(21)【出願番号】P 2020179857
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河野 允告
(72)【発明者】
【氏名】内田 健
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-3319(JP,A)
【文献】特開2012-152850(JP,A)
【文献】特開平9-72110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/08
B24B 27/06
B24B 55/02
B24B 55/06
B28D 7/02
E01D 24/00
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断対象物の近傍に設置されるレールに移動可能に配置され、ワイヤーソーマシン本体の駆動部から延ばされるワイヤーソーを巻き掛けられて、前記駆動部による前記ワイヤーソーの牽引とともに移動されるプーリーユニットであって、
前記レールに移動可能に配置されるプーリーベースと、
前記プーリーベースに回動軸を介して回動可能に軸支されるプーリーアームと、
前記プーリーアームの一端に回転軸を介して前記プーリーアームと平行に回転可能に軸支されるプーリーと、
前記プーリーアームの他端に前記プーリーアームの回動により前記レールに対して当接、離間可能に設けられるストッパーと、
前記プーリーアームの他端を前記レールに向けて回動付勢し、前記ストッパーを常態として前記レールに圧接するばね部材と、
を備え、
前記ワイヤーソーが切断対象物に掛け回されて、前記駆動部の駆動により、前記ワイヤーソーで切断対象物が切断される間、前記ワイヤーソーは前記駆動部により牽引され、
前記プーリーに作用する前記ワイヤーソーの張力が前記プーリーアームに作用する前記ばね部材による回動付勢力よりも大きくなったときに、前記プーリーアームは前記ストッパーが前記レールに対して離脱する方向に回動し、
前記プーリーに作用する前記ワイヤーソーの張力が前記プーリーアームに作用する前記ばね部材による回動付勢力よりも小さくなったときに、前記プーリーアームは前記ばね部材により弾性復帰されて前記ストッパーが前記レールに対して圧接され、
前記プーリーは前記駆動部による前記ワイヤーソーの牽引に自動的に追従される、
ことを特徴とする追従式のプーリーユニット。
【請求項2】
プーリーベースは、レールに外嵌可能に略筒形に形成され、周面に前記レール上で転動可能に複数のガイドローラーを有する請求項1に記載の追従式のプーリーユニット。
【請求項3】
プーリーアームは、略への字形に形成され、一端にプーリーの取付部を有し、他端にストッパーの取付部を有する請求項1又は2に記載の追従式のプーリーユニット。
【請求項4】
ストッパーはベース板とゴム板とを積層してなる請求項1乃至3のいずれかに記載の追従式のプーリーユニット。
【請求項5】
ばね部材はコイルスプリングが使用され、プーリーアームのストッパーの取付部に作動連結される請求項1乃至4のいずれかに記載の追従式のプーリーユニット。
【請求項6】
ばね部材にばね圧を調整するばね圧調整部を有する請求項1乃至5のいずれかに記載の追従式のプーリーユニット。
【請求項7】
プーリーベースに集塵機の集塵口の取付部を有する請求項1乃至6のいずれかに記載の追従式のプーリーユニット。
【請求項8】
プーリーベースに給水装置の給水口及び/又は排水口の取付部を有する請求項1乃至7のいずれかに記載の追従式のプーリーユニット。
【請求項9】
ワイヤーソーマシン本体の駆動部と、切断対象物に沿って設置されるレールと、前記レールに移動可能に配置されるプーリーユニットと、前記駆動部から延び、前記プーリーユニットに巻き掛けられるワイヤーソーとを備え、前記ワイヤーソーを切断対象物に巻き掛けて、前記駆動部を駆動することにより、前記ワイヤーソーを回転させながら牽引するとともに、前記レール上で前記プーリーユニットを移動して、切断対象物を切断するワイヤーソーマシンにおいて、
前記プーリーユニットに、請求項1乃至8のいずれかに記載の追従式のプーリーユニットを用いる、
ことを特徴とするワイヤーソーマシン。
【請求項10】
ワイヤーソーマシン本体の駆動部と、切断対象物の両側に並列に設置される一対のレールと、前記各レールに移動可能に配置される一対のプーリーユニットと、前記駆動部から延び、前記各プーリーユニットに巻き掛けられるワイヤーソーとを備え、前記各プーリーユニット間の前記ワイヤーソーを切断対象物に巻き掛けて、前記駆動部を駆動することにより、前記ワイヤーソーを回転させながら牽引するとともに、前記各レール上で前記各プーリーユニットを移動して、切断対象物を切断するワイヤーソーマシンにおいて、
前記各プーリーユニットに、請求項1乃至8のいずれかに記載の追従式のプーリーユニットを用いる、
ことを特徴とするワイヤーソーマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物その他の切断対象物の切断工事に使用する追従式のプーリーユニット及びこれを用いるワイヤーソーマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄筋コンクリート造の構造物などをワイヤーソーマシンを使って切断する工法が知られている。この種の工法は、特許文献1により開示されているように、切断対象物の周囲(切断位置)に沿ってワイヤーソーを一対のガイドプーリー、駆動装置の駆動プーリーを介して無端状に巻き掛けて線状に接触させ、このワイヤーソーを駆動装置により高速回転するとともに、駆動装置の(切断対象物から引き離す方向へ)の移動により、切断対象物に対する切断進行とともに切断に必要な適度の張力を維持して(ワイヤーソーに生ずる弛みをなくして)、切断対象物のコンクリート、鉄筋などを引き切り、切断する。
【0003】
そして、この工法では、ワイヤーソーで切断対象物の切断中、切断対象物から切断粉が発生するため、集塵機を使って切断粉を吸引し、また、ワイヤーソー及びその切断部分が摩擦熱で高温となるため、給水装置を使ってワイヤーソー及びその切断部分を水で冷却する。
【0004】
ところで、このようなワイヤーソーマシンを用いた工法では、切断対象物に対する切断ラインの精度が悪く、施工性に影響する。そこで、このような切断精度の向上を図ることを目的として、新たな切断装置が特許文献2により提案されている。
【0005】
この文献2の切断装置は、駆動部と、鋼桁に沿って移動可能に設けられた一対の移動部と、駆動部と一対の移動部との間に掛け回されたワイヤーソーとを備え、一対の移動部は、鋼桁を挟んで対向するように設けられ、ワイヤーソーは、鋼桁と床版との境界において鋼桁の桁軸と交差するように移動部同士の間に配設されて、駆動部の動力により回転しつつ一対の移動部とともに駆動部に牽引される。
【0006】
この場合、一対の移動部は、鋼桁の側面に設けられた一対のレールに摺動可能に取り付けられる。一対のレールは、鋼桁を挟んで対向するように、鋼桁の桁軸に沿って配設される。一対の移動部は、それぞれレールに移動可能に係合されることで、鋼桁を挟んで対向するように設けられる。この場合、移動部本体には図示しないモーターが内蔵される。移動部本体は、モーターの動力により車輪を回転させることで、レールに沿って移動する。モーターは、制御手段に接続されており、駆動部の作動状況に応じて作動する。
【0007】
このようにしてワイヤーソーによって桁と床版との接合部を切断するため、簡易に施工を行うことができる。ワイヤーソーは、桁の側面に沿って移動する一対の移動部とともに牽引されるため、一定の角度を保持した状態で接合部を切断する。そのため、駆動部の負担が大きくなることがなく、高精度に施工を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-101542公報
【文献】特開2017-203299公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、このような従来のワイヤーソーマシンでは、次のような問題がある。
(1)特許文献1のワイヤーソーマシンの場合、既述の集塵作業が、ワイヤーソーで切断対象物の切断中に、作業員の人手により、切断対象物の切断箇所付近で行われることが多く、作業員が切断中の切断対象物に接触するおそれがあり、好ましくない。この点について、特許文献2では課題になっていない。
(2)特許文献1のワイヤーソーマシンの場合、既述の給水作業が、ワイヤーソーで切断対象物の切断中に、作業員が給水のタイミングを見計らって、切断対象物の切断を止めて切断対象物に給水し、排水を回収するため、施工性がよいとは言い難い。この点について、特許文献2では課題になっていない。
(3)特許文献2のワイヤーソーマシンの場合、一対のプーリー(ガイドプーリー)が一対のレール上で電動駆動されて、駆動部によるワイヤーソーの牽引に追従するようになっているため、施工に当たり、電源、制御手段及びその配線などを設置するための段取りが増えて、その分だけ施工性は低下せざるを得ない。
【0010】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種のワイヤーソーマシンにおいて、プーリーをユニット化しレール上で駆動部によるワイヤーソーの牽引に自動的に追従させるようにして、コンクリート構造物その他の切断対象物の切断工事において、切断対象物の切断精度、集塵作業の安全性、及び給水、排水作業の作業性を向上させて施工性を高めること、併せてプーリーを駆動するための電動などの駆動系を不要とすることで、電源、電動モーター、配線などの機器機材を設置するための段取りをなくし、施工性の向上に資すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、
切断対象物の近傍に設置されるレールに移動可能に配置され、ワイヤーソーマシン本体の駆動部から延ばされるワイヤーソーを巻き掛けられて、前記駆動部による前記ワイヤーソーの牽引とともに移動されるプーリーユニットであって、
前記レールに移動可能に配置されるプーリーベースと、
前記プーリーベースに回動軸を介して回動可能に軸支されるプーリーアームと、
前記プーリーアームの一端に回転軸を介して前記プーリーアームと平行に回転可能に軸支されるプーリーと、
前記プーリーアームの他端に前記プーリーアームの回動により前記レールに対して当接、離間可能に設けられるストッパーと、
前記プーリーアームの他端を前記レールに向けて回動付勢し、前記ストッパーを常態として前記レールに圧接するばね部材と、
を備え、
前記ワイヤーソーが切断対象物に掛け回されて、前記駆動部の駆動により、前記ワイヤーソーで切断対象物が切断される間、前記ワイヤーソーは前記駆動部により牽引され、
前記プーリーに作用する前記ワイヤーソーの張力が前記プーリーアームに作用する前記ばね部材による回動付勢力よりも大きくなったときに、前記プーリーアームは前記ストッパーが前記レールに対して離脱する方向に回動し、
前記プーリーに作用する前記ワイヤーソーの張力が前記プーリーアームに作用する前記ばね部材による回動付勢力よりも小さくなったときに、前記プーリーアームは前記ばね部材により弾性復帰されて前記ストッパーが前記レールに対して圧接され、
前記プーリーは前記駆動部による前記ワイヤーソーの牽引に自動的に追従される、
ことを要旨とする。
【0012】
この場合、プーリーベースは、レールに外嵌可能に略筒形に形成され、周面に前記レール上で転動可能に複数のガイドローラーを有することが好ましい。
この場合、プーリーアームは、略への字形に形成され、一端にプーリーの取付部を有し、他端にストッパーの取付部を有することが好ましい。
この場合、ストッパーはベース板とゴム板とを積層してなることが好ましい。
この場合、ばね部材は引張りコイルスプリングが使用され、プーリーアームのストッパーの取付部に作動連結されることが好ましい。
この場合、ばね部材にばね圧を調整するばね圧調整部を有することが好ましい。
この場合、プーリーベースに集塵機の集塵口の取付部を有することが好ましい。
この場合、プーリーベースに給水装置の給水口及び/又は排水口の取付部を有することが好ましい。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、
ワイヤーソーマシン本体の駆動部と、切断対象物に沿って設置されるレールと、前記レールに移動可能に配置されるプーリーユニットと、前記駆動部から延び、前記プーリーユニットに巻き掛けられるワイヤーソーとを備え、前記ワイヤーソーを切断対象物に巻き掛けて、前記駆動部を駆動することにより、前記ワイヤーソーを回転させながら牽引するとともに、前記レール上で前記プーリーユニットを移動して、切断対象物を切断するワイヤーソーマシンにおいて、
前記プーリーユニットに、上記追従式のプーリーユニットを用いる、
ことを要旨とする。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、
ワイヤーソーマシン本体の駆動部と、切断対象物の両側に並列に設置される一対のレールと、前記各レールに移動可能に配置される一対のプーリーユニットと、前記駆動部から延び、前記各プーリーユニットに巻き掛けられるワイヤーソーとを備え、前記各プーリーユニット間の前記ワイヤーソーを切断対象物に巻き掛けて、前記駆動部を駆動することにより、前記ワイヤーソーを回転させながら牽引するとともに、前記各レール上で前記各プーリーユニットを移動して、切断対象物を切断するワイヤーソーマシンにおいて、
前記各プーリーユニットに、上記追従式のプーリーユニットを用いる、
ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の追従式のプーリーユニット及びこれを用いるワイヤーソーマシンによれば、プーリーをユニット化しレール上で駆動部によるワイヤーソーの牽引に自動的に追従させるようにしたので、コンクリート構造物その他の切断対象物の切断工事において、切断対象物の切断精度、集塵作業の安全性、及び給水、排水作業の作業性を向上させて施工性を高めることができ、併せてプーリーを駆動するための電動などの駆動系を不要として、電源、電動モーター、配線などの機器機材を設置するための段取りをなくし、施工性の向上に資することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る追従式のプーリーユニットの構成を示す図
【
図2】同追従式のプーリーユニットを用いるワイヤーソーマシンの全体構成を示す図
【
図3】同追従式のプーリーユニットの構成をより詳細に示す図
【
図4】同追従式のプーリーユニットを有するワイヤーソーマシンを用いた施工例を示す図
【
図5】同追従式のプーリーユニットを有するワイヤーソーマシンを用いた施工例を示し、特に追従式のプーリーユニットの動作を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1に追従式のプーリーユニット、
図2にこのプーリーユニットを用いたワイヤーソーマシンを示している。
【0018】
図1に示すように、追従式のプーリーユニットUは、切断対象物の近傍に設置されるレールRに移動可能に配置され、ワイヤーソーマシン本体M1((
図2参照)。以下、単に本体M1という。)の駆動部M11(
図2参照)から延ばされるワイヤーソーW(
図2参照)を巻き掛けられて、駆動部M11によるワイヤーソーWの牽引とともに移動されるものである。
【0019】
このプーリーユニットUは、特に、プーリーベース1と、プーリーアーム2と、プーリー3と、ストッパー4と、ばね部材5とを備えて構成される。
【0020】
プーリーベース1はレールRに移動可能に配置される。このプーリーベース1は、レールRに外嵌可能に略筒形に形成され、周面にレールR上で転動可能に複数のガイドローラー11を有する。この場合、レールRは鋼材により角形(断面略四角形)に形成されてなり、プーリーベース1は鋼材によりこのレールRに外嵌し、摺動可能に略角筒形(断面略四角形の筒形)に形成される。このプーリーベース1の各面の両端には、幅方向中央に軸受12が突設され、その両側に開口10が対にして形成され、各面の各開口10にガイドローラー11が対にして中央の軸受12に軸を介して取り付けられる。各ガイドローラー11は各開口10を通してレールRの各面に当接可能になっている。
【0021】
また、この場合、このプーリーベース1は相互に対向する2面が後述するプーリーアームの取付面101(以下、プーリーアーム取付面101又は取付面101という。)で、これらの取付面101に隣接してかつプーリーアーム2の他端22に対応する側の一方の面102に長さ方向中央よりも他端寄りに後述するストッパー4が対向し嵌合可能に開口103を形成される。
【0022】
さらに、このプーリーベース1には、特に図示していないが、適宜の位置に、集塵機の集塵口の取付部、給水装置の給水口及び/又は排水口の取付部を有する。なお、この場合、集塵機及びその集塵口、給水装置及びその給水口、排水口には一般に知られているものが使用され、各取付部はそれに応じたものになっている。
【0023】
プーリーアーム2はプーリーベース1に回動軸211を介して回動可能に軸支される。このプーリーアーム2は、略への字形に形成され、一端21にプーリー3の取付部202を有し、他端22はストッパー4の取付部203になっている。この場合、プーリーアーム2は一対のアーム201からなり、各アーム201は鋼材により平面視への字形に形成され、一端21にプーリー3の取付部202として、プーリー3を軸支する回転軸31のための軸挿通孔(以下、軸挿通孔202という。)を有する一端側の長い一対のレバー部201aと、他端22の短いコ字形を呈するストッパー4の取付部203とからなる。このプーリーアーム2は各アーム201がプーリーベース1の相互に対向する2面、すなわち、各プーリーアーム取付面101で長さ方向中央よりも一端寄りに回動軸211を介して回動可能に支持されて取り付けられる。
【0024】
プーリー3はプーリーアーム2の一端21に回転軸31を介してプーリーアーム2と平行に回転可能に軸支される。この場合、プーリー3は円盤状の部材からなり、周面には両縁部にフランジが形成されて、その中央にワイヤーソーWが挿入可能に凹部を有する。プーリー3はプーリーアーム2の各アーム201の一端21の軸挿通孔202に回転軸31が通されこの回転軸31の一端に取り付けられて、プーリーアーム2の一端21にプーリーアーム2と平行に回転可能に配置される。
【0025】
ストッパー4はプーリーアーム2の他端22にプーリーアーム2の回動によりレールRに対して当接、離間可能に設けられる。この場合、ストッパー4は鋼材からなるベース板41と防振ゴムからなるゴム板42とを積層してなり、プーリーアーム他端22のストッパー4の取付部203に取付フレーム43を介して取り付けられ、プーリーベース1の開口103に対向し嵌合可能に配置される。
図3に示すように、取付フレーム43は鋼材により長方形のフレーム状に形成される。この取付フレーム43はプーリーベース1の各プーリーアーム取付面101を開口103に対応する位置で各プーリーアーム取付面101に対して直交方向に跨いでかつ直交方向に変位可能に組み付け配置され、プーリーアーム2の他端22側でプーリーアーム2の取付部203に取り付けられる。ストッパー4はこの取付フレーム43のプーリーアーム2の他端22側の他端部に固定されて、ストッパー4のゴム板42の面がプーリーベース1の開口103に対向配置される。かくしてプーリーアーム2の他端22がプーリーベース1に近接する方向に回動されることにより、取付フレーム43は他端部がプーリーベース1に向けて変位してストッパー4がプーリーベース1の開口103に嵌入され、プーリーアーム2の他端22がプーリーベース1から離間する方向に回動されることにより、取付フレーム43は他端部がプーリーベース1から離間方向に変位してストッパー4がプーリーベース1の開口103から離脱されるようになっている。
【0026】
ばね部材5はプーリーアーム2の他端22をレールRに向けて回動付勢し、ストッパー4を常態としてレールRに圧接する。この場合、ばね部材5はコイルスプリング(以下、コイルスプリング5という。)が使用され、プーリーアーム2のストッパー4の取付部203に作動連結される。この場合、コイルスプリング5は取付フレーム43内でプーリーベース1を挟んでストッパー4とは反対側にプーリーベース1側の受け部431と取付フレーム43の一端部側の受け部432との間に介装される。かくしてこのコイルスプリング5の付勢力により、取付フレーム43全体が常態として他端部がプーリーベース1に近接する方向に変位してストッパー4がプーリーベース1の開口103に圧入され、プーリーアーム2の他端22がコイルスプリング5の付勢力に抗してプーリーベース1から離間する方向に回動されることにより、取付フレーム43全体が他端部がプーリーベース1から離間する方向に変位してストッパー4がプーリーベース1の開口103から離脱されるようになっている。
【0027】
このようにしてプーリーアーム2、取付フレーム43、ストッパー4、コイルスプリング5はプーリーユニットUのブレーキ機構をなす。このブレーキ機構は、通常、コイルスプリング5の付勢力がプーリー3に対するワイヤーソーWの張力よりも強く、プーリーユニットUをレールR上に固定し、ワイヤーソーWによる切断対象物の切断進行とともに、切断対象物の切断部分がプーリーユニットUに接近して、プーリー3に対するワイヤーソーWの張力がコイルスプリング5の付勢力によりも増すと、(ブレーキが解除されて)プーリーユニットUがワイヤーソーWに引張られ、ワイヤーソーWに追従してレールR上を摺動する。そして、プーリーユニットUがワイヤーソーWに追従しレールR上を摺動すると、コイルスプリング5の付勢力がプーリー3に対するワイヤーソーWの張力よりも強くなり、(ブレーキが掛かって)プーリーユニットUをレールR上に固定する。この動作を繰り返すことにより、ワイヤーソーWによる切断対象物の切断に合わせて、ワイヤーソーWにプーリーユニットUが自動的に間欠的に追従する。
【0028】
このプーリーユニットUはかかる構成を有し、ワイヤーソーWが切断対象物に掛け回されて、駆動部M11の駆動により、ワイヤーソーWで切断対象物が切断される間、ワイヤーソーWは駆動部M11により牽引され、プーリー3に作用するワイヤーソーWの張力がプーリーアーム2に作用するコイルスプリング5による回動付勢力よりも大きくなったときに、プーリーアーム2はストッパー4がレールRに対して離脱する方向に回動し、プーリー3に作用するワイヤーソーWの張力がプーリーアーム2に作用するコイルスプリング5による回動付勢力よりも小さくなったときに、プーリーアーム2はコイルスプリング5により弾性復帰されてストッパー4がレールRに対して圧接されるようになっている。
【0029】
すなわち、ワイヤーソーWが切断対象物に掛け回されて、駆動部M11の駆動により、ワイヤーソーWで切断対象物が切断される間、ワイヤーソーWは駆動部M11により牽引され、プーリー3に作用するワイヤーソーWの張力がプーリーアーム2に作用するコイルスプリング5による回動付勢力よりも大きくなったときに、プーリーアーム2はストッパー4がレールRに対して離脱する方向に回動する。このプーリーアーム2の回動の間、プーリーユニットUはワイヤーソーWに牽引されてプーリーベース1がレールR上で駆動部M11方向に移動される。このプーリーベース1の移動により、プーリー3に作用するワイヤーソーWの張力はプーリーアーム2に作用するコイルスプリング5による回動付勢力よりも小さくなり、プーリーアーム2がコイルスプリング5により弾性復帰される。これにより、ストッパー4がレールRに圧接され、プーリーベース1はレールR上で移動を停止して固定される。このようなプーリーユニットUのレールR上での移動、停止を繰り返し、プーリー3は駆動部M11によるワイヤーソーWの牽引に自動的に間欠的に追従される。
【0030】
図2に示すように、ワイヤーソーマシンMは、本体M1の駆動部M11と、切断対象物に沿って設置されるレールRと、レールRに移動可能に配置されるプーリーユニットUと、駆動部M11から延び、プーリーユニットUに巻き掛けられるワイヤーソーWとを備えて構成される。
【0031】
駆動部M11は、ワイヤーソーWを回転させつつ牽引するもので、駆動部本体60、一対の第1の駆動部プーリー61及び一対の第2の駆動部プーリー62を有する。
【0032】
駆動部本体60は、ワイヤーソーWに対して回転力を付与するとともに、ワイヤーソーWを牽引する。また、駆動部本体60は、特に図示していないが、モーターなどの駆動源の他、複数のガイドプーリー601を有する。これらのガイドプーリー601はワイヤーソーWが掛け回されて、各ガイドプーリー601が適宜移動されることにより、駆動部M11から延びるワイヤーソーWの長さが調整される。
【0033】
第1、第2の駆動部プーリー61、62はそれぞれ、円盤状の部材からなり、周面には両縁部にフランジが形成されて、その中央にワイヤーソーが挿入可能に凹部を有する。
【0034】
第1の駆動部プーリー61はそれぞれ、駆動部本体60から延びる取付部材(図示省略)によって、回転可能に保持される。この場合、各第1の駆動部プーリー61は、駆動部本体60から延びるワイヤーソーWを縦向きに誘導する。
【0035】
第2の駆動部プーリー62はそれぞれ、レールRに取り付けられた取付部材621によって、回転可能に保持される。この場合、各第2の駆動部プーリー62は、各第1の駆動部プーリー61の下部でレールRに取り付けられ、各第1の駆動部プーリー61に対してワイヤーソーWを横向きに誘導する。なお、このプーリー62の取付部材621は、レールRに摺動可能に取り付けられてもよい。
【0036】
ワイヤーソーWは、所謂ダイヤモンドワイヤーからなり、柔軟性を有し、無端状である。駆動部M11とプーリーユニットUのプーリー3との間に巻き掛けられる。
【0037】
レールR、プーリーユニットUには、それぞれ、既述のレールR、追従式のプーリーユニットUが用いられる。
【0038】
このようにしてワイヤーソーWを切断対象物に巻き掛けて、駆動部M11を駆動することにより、ワイヤーソーWを回転させながら牽引するとともに、レールR上で追従式のプーリーユニットUを移動して、切断対象物を切断するようになっている。
【0039】
図4、
図5にこの追従式のプーリーユニットUを有するワイヤーソーマシンMを用いた施工例を示している。なお、この場合、切断対象物はコンクリート構造物である。
【0040】
図4(1)に示すように、まず、ワイヤーソーマシンMを設置する。この場合、まず、本体M1を、コンクリート構造物の上面に配置し、コンクリート構造物の上面から打設されたアンカーにより固定する。続いて、レールRをコンクリート構造物の上面に沿って平行に設置するとともに、このレールRの他端側で駆動部M11の各第1の駆動部プーリー61の下部に各第2の駆動部プーリー62を取り付ける。次いで、このレールRの一端側に追従式のプーリーユニットUを取り付ける。この場合、プーリーユニットUを、プーリー3を第2の駆動部プーリー62と同じ向きにしてプーリーベース1にレールRを通して、レールR上に嵌め込み、レールRの一端に配置する。この状態はストッパー4がプーリーベース1の開口103(
図1参照)を通してレールR面に圧接されることで固定(ロック)される。そして、駆動部M11から延びるワイヤーソーWを、各第1、各第2の駆動部プーリー61、62、追従式のプーリーユニットUのプーリー3に巻き掛けて、コンクリート構造物に掛け回し、両端部を連結することで、無端状にする。
【0041】
また、このプーリーベース1には、既述のとおり、集塵機の集塵口の取付部、給水装置の給水口及び/又は排水口の取付部を有しており、各取付部に、集塵機の集塵口、給水装置の給水口及び/又は排水口を取り付けて、それぞれを、コンクリート構造物におけるワイヤーソーWによる研削部分に向けておく。
【0042】
このようにして駆動部M11を駆動しワイヤーソーWを回転駆動して、コンクリート構造物を切断する。この場合、駆動部M11の動力により無端状のワイヤーソーWに一定の張力を与えつつワイヤーソーWを回転させ、牽引する(つまり、引っ張る)ことで、コンクリート構造物を切断する。
【0043】
図4(1)に示すように、ワイヤーソーWでコンクリート構造物が切断される間、ワイヤーソーWは駆動部M11により牽引され、ワイヤーソーWのコンクリート構造物に対する研削部分がプーリーユニットUに徐々に近づいていく。続いて、
図5(1)、(2)に示すように、ワイヤーソーWのコンクリート構造物に対する研削部分がプーリーユニットUに近づき、プーリー3に作用するワイヤーソーWの張力がプーリーアーム2に作用するコイルスプリング5による回動付勢力よりも大きくなると、
図5(3)に示すように、プーリーアーム2はストッパー4がレールRから離脱する方向に徐々に回動され、ストッパー4のレールRに対する圧接状態が解除される。ストッパー4のレールRに対する圧接状態が解除されると、この解除の間、プーリーユニットUはワイヤーソーWに牽引されてプーリーベース1がレールR上で駆動部M11方向に摺動される。このプーリーベース1の摺動により、
図4(2)、
図5(4)に示すように、プーリー3に作用するワイヤーソーWの張力がプーリーアーム2に作用するコイルスプリング5による回動付勢力よりも小さくなる。これにより、プーリーアーム2がコイルスプリング5により弾性復帰され、ストッパー4がレールRに圧接されて、プーリーベース1はレールR上で移動を停止して固定(ロック)される。
【0044】
ワイヤーソーWでコンクリート構造物が切断される間、このようなプーリーユニットUのレールR上での移動、停止が繰り返され、プーリー3は駆動部M11によるワイヤーソーWの牽引に自動的に間欠的に追従される。このようにコンクリート構造物が切断される間、プーリー3が駆動部M11によるワイヤーソーWの牽引に自動的に追従することで、ワイヤーソーWはコンクリート構造物を一定の速度、一定の負荷で、切断ラインを一定の方向に安定させて切断する。また、ワイヤーソーWがコンクリート構造物を一定の速度、一定の負荷で、切断ラインを一定の方向に安定させて切断することで、切断粉の飛散方向、冷却水の給水方向及び/又は排水方向が定まるので、人手を要することなしに、プーリーユニットUに取り付けた吸塵口、給水口及び/又は排水口を使って切断粉の回収、冷却水の給水及び/又は排水を、有効に実施できる。
【0045】
以上説明したように、追従式のプーリーユニットU及びこれを用いたワイヤーソーマシンMによれば、プーリー3をユニット化してレールR上で駆動部M11によるワイヤーソーWの牽引に自動的に追従させるようにしたので、コンクリート構造物その他の切断対象物の切断工事において、切断対象物の切断精度、集塵作業の安全性、及び給水、排水作業の作業性を向上させて、切断工事全体として施工性を向上させることができ、併せて従来のようなプーリー駆動用の電動などの駆動系をなくして、電源、電動モーター、配線などの機器機材の設置などの段取りを削減し、施工性の向上に資することができる。
【0046】
すなわち、ワイヤーソーWで切断対象物が切断される間、ワイヤーソーWが駆動部M11により牽引され、プーリーユニットUは駆動部M11によるワイヤーソーWの牽引に自動的に追従されるので、ワイヤーソーWがコンクリート構造物を一定の速度、一定の負荷で、切断ラインを一定の方向に安定させて切断することができる。したがって、プーリー3を駆動部M11によるワイヤーソーWの牽引に自動的に追従させることで、切断対象物の切断において切断ラインの精度を向上させることができる。また、プーリー3をワイヤーソーWに自動的に追従させることで、切断粉や冷却水の給水及び/又は排水の方向が定まり、プーリーベース1に取り付けた吸塵口で切断粉を吸引回収することができ、プーリーベース1に取り付けた給水口及び/又は排水口で冷却水を給排水することができ、切断粉や冷却水の回収率を向上させることができる。また、これにより、人手が不要になるので、従来のように、作業員が切断中の切断対象物の近くで切断粉の吸引作業を行ったり、作業員が切断対象物の切断の進行に合わせて切断対象物に給水するタイミングを見計らい、切断対象物の切断を中断して、給水作業を行ったりするなどの煩雑な作業をなくすことができ、作業員の安全を確保することもできる。これら煩雑な作業をなくした分だけ、切断工事の施工性を向上させることができる。併せて、ワイヤーソーWによる切断対象物の切断はワイヤーソーWの一定の負荷での切断になるため、ワイヤーソーWの消耗を抑えることもできる。
【0047】
さらに、ワイヤーソーWで切断対象物が切断される間、ワイヤーソーWが駆動部M11により牽引され、プーリーユニットUは駆動部M11によるワイヤーソーWの牽引に自動的に追従されるので、従来のようにプーリーユニットUを駆動するための電源、電動モーター、これらの制御盤及び配線などを削減して、これら機器機材の設置作業をなくすことができ、これらの設置作業をなくした分だけ、切断工事の施工性をさらに向上させることができる。
【0048】
またさらに、このプーリーユニットUの自動追従方式によれば、薄い躯体の切断でもワイヤーソーWの消耗を軽減することができ、鉄の切断など施工途中に止められない現場での施工にも適し、施工性を高めることができる。
【0049】
なお、この実施の形態においては、ばね部材にばね圧を調整するばね圧調整部が設けられてもよい。この場合、ばね圧調整部は、例えば、コイルスプリング5をボルトで締め込むことによりコイルスプリング5を圧縮してばね圧を上げ(強め)、ボルトの締め込みを緩めることによりコイルスプリング5の圧縮を緩めてばね圧を下げ(弱め)るボルト締め込み式のものなど、一般に知られているばね圧調整形式により構成される。このようにしてばね圧調整部でコイルスプリング5のばね圧を、駆動部M11の駆動形式(電動式か油圧式か)や駆動力(出力)の大きさに応じて調整することにより、ブレーキ機構のブレーキの大きさを適切に調節することができる。すなわち、既述の、プーリー3が駆動部M11によるワイヤーソーWの牽引に自動的に追従される構造では、駆動部M11の駆動形式や駆動力の大きさによって、プーリー3に作用するワイヤーソーWの張力やプーリー3に作用するワイヤーソーWの有効角度が変わるため、ブレーキ機構のブレーキは駆動部M11の駆動形式や駆動力の大きさに適した大きさに調整されることが望ましい。そこで、ばね圧調整部でコイルスプリング5のばね圧を、駆動部M11の駆動形式や駆動力の大きさに応じて、調整し、ブレーキ機構のブレーキ力を調節することにより、駆動部M11の駆動形式や駆動力の大きさに応じて、駆動部M11のよるワイヤーソーWの牽引に、プーリーユニットUをレールR上で効果的に追従させることができる。
【0050】
また、この実施の形態では、ワイヤーソーマシンMは、本体M1の駆動部M11と、切断対象物に沿って設置されるレールRと、レールRに移動可能に配置される追従式のプーリーユニットUと、駆動部M11から延び、プーリーユニットUに巻き掛けられるワイヤーソーWとを備え、ワイヤーソーWを切断対象物に巻き掛けて、駆動部M11を駆動することにより、ワイヤーソーWを回転させながら牽引するとともに、レールR上でプーリーユニットUを移動して、切断対象物を切断する形式としたが、ワイヤーソーマシンは、本体の駆動部と、切断対象物の両側に並列に設置される一対のレールと、各レールに移動可能に配置される追従式の一対のプーリーユニットと、駆動部から延び、各プーリーユニットに巻き掛けられるワイヤーソーとを備え、各プーリーユニット間のワイヤーソーを切断対象物に巻き掛けて、駆動部を駆動することにより、ワイヤーソーを回転させながら牽引するとともに、各レール上で各プーリーユニットを移動して、切断対象物を切断する形式としてもよい。
このような一対のレール及びプーリーユニットにすることで、上記実施の形態と同様の又はそれ以上の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0051】
U 追従式のプーリーユニット
R レール
M ワイヤーソーマシン
M1 ワイヤーソーマシン本体(本体)
M11 駆動部
W ワイヤーソー
1 プーリーベース
101 プーリーアームの取付面(プーリーアーム取付面又は取付面)
102 面
103 開口
10 開口
11 ガイドローラー
12 軸受
2 プーリーアーム
21 一端
211 回動軸
22 他端
201 アーム
201a レバー部
202 取付部(軸挿通孔)
203 取付部
3 プーリー
31 回転軸
4 ストッパー
41 ベース板
42 ゴム板
43 取付フレーム
431 受け部
432 受け部
5 ばね部材(コイルスプリング)
60 駆動部本体
601 ガイドプーリー
61 第1の駆動部プーリー
62 第2の駆動部プーリー
621 取付部材