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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020181378
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072115
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】尾立 圭巳
(72)【発明者】
【氏名】和田 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 陽平
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕章
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-034371(JP,A)
【文献】特開2007-203402(JP,A)
【文献】特開2012-066357(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016116191(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1指および第2指と、
前記第1指および前記第2指を所定の移動方向において互いに接近させて前記第1指および前記第2指にワークを把持させる第1移動機構とを備え、
前記第1移動機構は、
第1動滑車と、
前記第1指および前記第2指のそれぞれに接続される2つの端部を有し、前記第1動滑車に巻き掛けられる第1索状部材と、
前記第1動滑車を移動させる第1アクチュエータとを有し、
前記第1アクチュエータは、前記第1索状部材の張力が前記第1指および前記第2指に作用して前記第1指および前記第2指が互いに接近するように前記第1動滑車を移動させるロボットハンド。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットハンドにおいて、
前記第1移動機構は、前記移動方向において、前記第1指側に配置された第1定滑車および前記第2指側に配置された第2定滑車を有し、
前記第1索状部材は、前記第1指から前記第2指に向かって、前記第2定滑車、前記第1動滑車および前記第1定滑車の順に巻き掛けられているロボットハンド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロボットハンドにおいて、
前記第1動滑車を回転させて前記第1索状部材を移動させることによって、前記第1指および前記第2指を互いの間隔を保持した状態で移動させる第1調整機構をさらに備えているロボットハンド。
【請求項4】
請求項3に記載のロボットハンドにおいて、
前記第1調整機構は、
前記第1動滑車と一体的に移動及び回転する第3動滑車と、
前記第3動滑車に接続され、前記第1動滑車の回転によって前記第3動滑車に巻き取られる第3索状部材と、
前記第3動滑車に巻き取られた前記第3索状部材を引き戻すことによって前記第1動滑車を回転させる第3アクチュエータとを有しているロボットハンド。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のロボットハンドにおいて、
前記第1索状部材は、前記第1動滑車に固定されているロボットハンド。
【請求項6】
請求項に記載のロボットハンドにおいて、
前記第1索状部材は、前記第1動滑車に固定され、
前記第1調整機構は、前記第3索状部材を最大限引き戻すことによって前記第3動滑車を所定の第1回転位置に位置させるように構成され、前記第3動滑車を前記第1回転位置に位置させることによって前記第1指および前記第2指を互いの間隔を保持した状態で所定の第1位置まで移動させるロボットハンド。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のロボットハンドにおいて、
前記第1指および前記第2指を前記移動方向において互いに離隔させて前記第1指および前記第2指にワークを把持させる第2移動機構をさらに備え、
前記第2移動機構は、
前記移動方向において、前記第1指側に配置された第3定滑車および前記第2指側に配置された第4定滑車と、
第2動滑車と、
前記第1指および前記第2指のそれぞれに接続される2つの端部を有し、前記第3定滑車、前記第4定滑車および前記第2動滑車に巻き掛けられる第2索状部材と、
前記第2動滑車を移動させる第2アクチュエータとを有し、
前記第2索状部材は、前記第1指から前記第2指に向かって、前記第3定滑車、前記第2動滑車および前記第4定滑車の順に巻き掛けられ、
前記第2アクチュエータは、前記第2索状部材の張力が前記第1指および前記第2指に作用するように前記第2動滑車を移動させることによって、前記第1指および前記第2指を互いに離隔させるロボットハンド。
【請求項8】
請求項7に記載のロボットハンドにおいて、
前記第1動滑車および前記第2動滑車は、一体的に移動するように構成され、
前記第1指および前記第2指を互いに接近させるための前記第1動滑車の移動方向と前記第1指および前記第2指を互いに離隔させるための前記第2動滑車の移動方向とは、互いに反対の向きとなっており、
前記第1アクチュエータは、前記第2アクチュエータを兼ねており、前記第1動滑車および前記第2動滑車を移動させるロボットハンド。
【請求項9】
請求項8に記載のロボットハンドにおいて、
前記第1動滑車を回転させて前記第1索状部材を移動させることによって、前記第1指および前記第2指を互いの間隔を保持した状態で移動させる第1調整機構をさらに備え、
前記第1動滑車および前記第2動滑車は、一体的に回転するように構成され、
前記第1調整機構は、前記第1動滑車と共に前記第2動滑車を回転させて前記第1索状部材及び前記第2索状部材を移動させることによって、前記第1指および前記第2指を互いの間隔を保持した状態で移動させるロボットハンド。
【請求項10】
請求項9に記載のロボットハンドにおいて、
前記第1調整機構は、
前記第1動滑車及び前記第2動滑車と一体的に移動及び回転する第3動滑車と、
前記第3動滑車に接続され、前記第1動滑車及び前記第2動滑車の回転によって前記第3動滑車に巻き取られる第3索状部材と、
前記第3動滑車に巻き取られた前記第3索状部材を引き戻すことによって前記第1動滑車及び第2動滑車を回転させる第3アクチュエータとを有しているロボットハンド。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のロボットハンドにおいて、
前記第1索状部材は、前記第1動滑車に固定され、
前記第2索状部材は、前記第2動滑車に固定されているロボットハンド。
【請求項12】
請求項10に記載のロボットハンドにおいて、
前記第1索状部材は、前記第1動滑車に固定され、
前記第2索状部材は、前記第2動滑車に固定され、
前記第1調整機構は、前記第3索状部材を最大限引き戻すことによって前記第3動滑車を所定の第1回転位置に位置させるように構成され、前記第3動滑車を前記第1回転位置に位置させることによって前記第1指および前記第2指を互いの間隔を保持した状態で所定の第1位置まで移動させるロボットハンド。
【請求項13】
第1指および第2指と、
前記第1指および前記第2指を所定の移動方向において互いに離隔させて前記第1指および前記第2指にワークを把持させる第2移動機構とを備え、
前記第2移動機構は、
第2動滑車と、
前記第1指および前記第2指のそれぞれに接続される2つの端部を有し、前記第2動滑車に巻き掛けられる第2索状部材と、
前記第2動滑車を移動させる第2アクチュエータとを有し、
前記第2アクチュエータは、前記第2索状部材の張力が前記第1指および前記第2指に作用して前記第1指および前記第2指が互いに離隔するように前記第2動滑車を移動させるロボットハンド。
【請求項14】
請求項13に記載のロボットハンドにおいて、
前記第2移動機構は、前記移動方向において、前記第1指側に配置された第3定滑車および前記第2指側に配置された第4定滑車を有し、
前記第2索状部材は、前記第1指から前記第2指に向かって、前記第3定滑車、前記第2動滑車および前記第4定滑車の順に巻き掛けられているロボットハンド。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のロボットハンドにおいて、
前記第2動滑車を回転させて前記第2索状部材を移動させることによって、前記第1指および前記第2指を互いの間隔を保持した状態で移動させる第2調整機構をさらに備えているロボットハンド。
【請求項16】
請求項15に記載のロボットハンドにおいて、
前記第2調整機構は、
前記第2動滑車と一体的に移動及び回転する第4動滑車と、
前記第4動滑車に接続され、前記第2動滑車の回転によって前記第4動滑車に巻き取られる第4索状部材と、
前記第4動滑車に巻き取られた前記第4索状部材を引き戻すことによって前記第2動滑車を回転させる第4アクチュエータとを有しているロボットハンド。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のロボットハンドにおいて、
前記第2索状部材は、前記第2動滑車に固定されているロボットハンド。
【請求項18】
請求項16に記載のロボットハンドにおいて、
前記第2索状部材は、前記第2動滑車に固定され、
前記第2調整機構は、前記第4索状部材を最大限引き戻すことによって前記第4動滑車を所定の第2回転位置に位置させるように構成され、前記第4動滑車を前記第2回転位置に位置させることによって前記第1指および前記第2指を互いの間隔を保持した状態で所定の第2位置まで移動させるロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークをいわゆる倣い把持することが可能なロボットハンドが知られている。例えば特許文献1に開示のロボットハンドは、ワークを把持する一対の指と、一対の指を動作させるモータと、モータの動力を一対の指に伝達する差動歯車機構とを備えている。このロボットハンドによれば、ワークがロボットハンドの中心からずれている場合、一対の指のうちワークに近い方の指(一方の指)が先にワークに接触して停止する。一方の指が停止しても、他方の指は、そのまま移動し続け、その後、ワークに接触して停止する。こうして、ワークの倣い把持が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-99094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したロボットハンドでは、差動歯車機構を用いているため、一方の指が停止した後の他方の指の動作について円滑性に欠けるという問題がある。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、円滑な倣い把持を行うことができるロボットハンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示の技術は、第1指および第2指と、前記第1指および前記第2指を所定の移動方向において互いに接近させて前記第1指および前記第2指にワークを把持させる第1移動機構とを備えたロボットハンドである。前記第1移動機構は、第1動滑車と、第1索状部材と、第1アクチュエータとを有している。前記第1索状部材は、前記第1指および前記第2指のそれぞれに接続される2つの端部を有し、前記第1動滑車に巻き掛けられる。前記第1アクチュエータは、前記第1動滑車を移動させる。前記第1アクチュエータは、前記第1索状部材の張力が前記第1指および前記第2指に作用して前記第1指および前記第2指が互いに接近するように前記第1動滑車を移動させる。
【0007】
前記の技術では、第1アクチュエータによる第1動滑車の移動量に対応して、第1指および第2指がそれぞれ第1索状部材に引っ張られて移動する。より詳しくは、第1アクチュエータによって第1動滑車が移動すると、第1索状部材の張力が第1指および第2指に作用して、第1指および第2指は互いに接近する方向へ移動する。その結果、第1指および第2指は、互いに接近してワークWを外側から把持する。このとき、第1動滑車の移動量に対応する第1指の移動量と第2指の移動量とは、第1指の移動に対する抵抗および第2指の移動に対する抵抗に応じて適宜調整される。例えば、第1指がワークWに接触して第1指の移動に対する抵抗が大きくなると、例えば第1指が停止し、第2指の移動量が適宜増大される。そのため、第2指はワークWに向かって円滑に移動し続けることができる。その結果、第2指がワークWに到達することで、円滑な倣い把持を行うことができる。
【0008】
本願に開示の別の技術は、第1指および第2指と、前記第1指および前記第2指を所定の移動方向において互いに離隔させて前記第1指および前記第2指にワークを把持させる第2移動機構とを備えたロボットハンドである。前記第2移動機構は、第2動滑車と、第2索状部材と、第2アクチュエータとを有している。前記第2索状部材は、前記第1指および前記第2指のそれぞれに接続される2つの端部を有し、前記第2動滑車に巻き掛けられる。前記第2アクチュエータは、前記第2動滑車を移動させる。前記第2アクチュエータは、前記第2索状部材の張力が前記第1指および前記第2指に作用して前記第1指および前記第2指が互いに離隔するように前記第2動滑車を移動させる。
【0009】
前記の技術では、第2アクチュエータによる第2動滑車の移動量に対応して、第1指および第2指がそれぞれ第2索状部材に引っ張られて移動する。より詳しくは、第2アクチュエータによって第2動滑車が移動すると、第2索状部材の張力が第1指および第2指に作用して、第1指および第2指は互いに離隔する方向へ移動する。その結果、第1指2および第2指3は、互いに離隔してワークWを内側から把持する。このとき、第2動滑車65の移動量に対応する第1指の移動量と第2指の移動量とは、第1指の移動に対する抵抗および第2指の移動に対する抵抗に応じて適宜調整される。例えば、第1指がワークWに接触して第1指の移動に対する抵抗が大きくなると、例えば第1指が停止し、第2指の移動量が適宜増大される。そのため、第2指はワークWに向かって円滑に移動し続けることができる。その結果、第2指がワークWに到達することで、円滑な倣い把持を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
上述したロボットハンドによれば、円滑な倣い把持を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、ロボットアームに連結されたロボットハンドを示す概略図である。
図2図2は、ロボットハンドを前板を省略して概略的に示す正面図である。
図3図3は、ロボットハンドを概略的に示す左側面図である。
図4図4は、ロボットハンドを概略的に示す右側面図である。
図5図5は、ロボットハンドを上板を省略して概略的に示す平面図である。
図6図6は、第1~第3動滑車および第1エアシリンダを右側から視て示す図である。
図7図7は、第1~第3動滑車を拡大して示す図である。
図8図8は、図7に示すA-A線の断面図である。
図9図9は、第1移動機構におけるワイヤリングを模式的に示す斜視図である。
図10図10は、第2移動機構におけるワイヤリングを模式的に示す斜視図である。
図11図11は、制御装置の構成を示すブロック図である。
図12図12は、第1移動機構による閉じ把持動作の一状態を示す模式図である。
図13図13は、閉じ把持動作の開始時の第3動滑車の状態を示す図である。
図14図14は、第1移動機構による閉じ把持動作の一状態を示す模式図である。
図15図15は、第1移動機構による閉じ把持動作が完了した状態を示す模式図である。
図16図16は、センタリング動作における第3動滑車の状態を示す図である。
図17図17は、センタリング動作完了時の第3動滑車の状態を示す図である。
図18図18は、センタリング動作完了時の第1移動機構の状態を示す模式図である。
図19図19は、第2移動機構による開き把持動作の一状態を示す模式図である。
図20図20は、第2移動機構による開き把持動作の一状態を示す模式図である。
図21図21は、第2移動機構による開き把持動作が完了した状態を示す模式図である。
図22図22は、センタリング動作完了時の第2移動機構の状態を示す模式図である。
図23図23は、その他の実施形態に係る第2移動機構の構成を示す模式図である。
図24図24は、センタリング動作におけるその他の実施形態に係る第3動滑車の状態を示す図である。
図25図25は、センタリング動作完了時のその他の実施形態に係る第3動滑車の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のロボットハンド100(以下、単にハンド100ともいう)は、ロボットアーム10の先端に連結されるエンドエフェクタである。ロボットアーム10は、例えば、複数のリンクが直列に連結された多関節型アームであり、垂直多関節ロボット等に設けられる。ハンド100は、例えば、ロボットアーム10に対して回転可能に連結される。
【0014】
ここでは、ハンド100に関して言及する方向および位置は、後述する一対の指(第1指2および第2指3)の延びる方向が上下方向(鉛直方向)と一致する状態、即ち図1に示す状態でのものである。そして、図2における左右方向をベース1の幅方向と称し、図3および図4における左右方向をベース1の奥行き方向と称する。
【0015】
ハンド100は、いわゆるワークを倣い把持することができるように構成されている。倣い把持は、一対の指(第1指2および第2指3)のうち一方の指の移動に対する抵抗が大きくなると、他方の指がより多く移動してワークを把持することである。例えば、一方の指が先にワークに接触して停止しても、他方の指は停止することなく移動し続けてワークに接触することでワークを把持することである。
【0016】
具体的に、図2図6にも示すように、ハンド100は、ベース1と、第1指2および第2指3と、支持部4と、第1移動機構5と、第2移動機構6と、第1調整機構7と、制御装置8とを備えている。なお、図3では、第1調整機構7の第3エアシリンダ77等を省略している。
【0017】
ベース1は、ロボットアーム10に連結される部分であり、輪郭が略矩形体状に形成されている。ベース1は、上下方向が長手方向となっている。ベース1は、前板11、後板12および上板13を有している。前板11および後板12は、互いに同じ形状を有しており、互いに対向している。上板13は、前板11および後板12の上端に設けられており、前板11と後板12とを繋いでいる。
【0018】
また、ベース1には、中間板14が設けられている。中間板14は、前板11、後板12および上板13で囲まれた内部空間を、上下方向に仕切っている。つまり、中間板14は、前述の内部空間を上側空間と下側空間とに仕切っている。中間板14は、前述の内部空間において上板13寄りに設けられており、上側空間は下側空間よりも小さい。
【0019】
第1指2および第2指3は、ワークを把持する把持部である。なお、第1指2および第2指3を両指2,3と称することがある。
【0020】
第1指2および第2指3のそれぞれは、上下方向に延びる略棒状の部材である。第1指2および第2指3は、互いに同じ形状を有している。第1指2および第2指3は、互いに平行に並んで設けられている。第1指2および第2指3の並び方向は、ベース1の幅方向である。第1指2および第2指3は、上下方向(長手方向)に延びる線に対して互いに線対称な形状を有している。より詳しくは、第1指2および第2指3は、基部21,31と、指本体22,32とを有している。基部21,31は、水平方向に延びる板状部材である。指本体22,32は、基部21,31の下面から下方へ向かって略棒状に延びている。なお、第1指2および第2指3は、棒状以外の形状を有していてもよいし、互いに異なる形状を有していてもよい。
【0021】
支持部4は、ベース1の下部において、第1指2および第2指3を移動可能に支持する。第1指2および第2指3の移動方向は、ベース1の幅方向、即ち両指2,3の並び方向である。第1指2および第2指3は、姿勢を維持したまま移動する。より詳しくは、両指2,3は、移動方向において互いに接近してワークを外側から把持(挟持)することが可能である。また、両指2,3は、移動方向において互いに離隔してワークを内側から把持することも可能である。
【0022】
支持部4は、ガイドレール41と、第1ガイドブロック42と、第2ガイドブロック43とを有している。
【0023】
ガイドレール41は、第1ガイドブロック42および第2ガイドブロック43をガイドするものであり、ベース1の下部に取り付けられている。ガイドレール41は、ベース1の幅方向に延びる直線状のレールである。より具体的に、ガイドレール41は、第1指2および第2指3の移動方向に延びるレールである。ガイドレール41は、ベース1の概ね幅方向に亘って設けられている。
【0024】
第1ガイドブロック42および第2ガイドブロック43はそれぞれ、ガイドレール41の延びる方向へスライド可能にガイドレール41に取り付けられている。第1ガイドブロック42および第2ガイドブロック43は、筒状に形成されている。第1ガイドブロック42および第2ガイドブロック43の内側に、ガイドレール41が位置している(図3図4等を参照)。
【0025】
第1ガイドブロック42の下面は、第1指2が取り付けられる指取付部425となっている。第2ガイドブロック43の下面は、第2指3が取り付けられる指取付部435となっている。具体的に、両指2,3の基部21,31のそれぞれが指取付部425,435にボルト締結されることにより、両指2,3のそれぞれが第1ガイドブロック42および第2ガイドブロック43に取り付けられる。こうして、両指2,3は、ガイドレール41の方向に移動可能に支持される。支持部4では、両指2,3の移動可能な範囲である所定の可動範囲(以下、両指2,3の可動範囲ともいう)が設定されている。
【0026】
また、第1ガイドブロック42は、上部にワイヤ取付部421が設けられている。ワイヤ取付部421は、後述する第1移動機構5のワイヤ56の端部および第2移動機構6の第2ワイヤ66の端部が取り付けられる部分である。より具体的に、ワイヤ取付部421には、第1スリット422および第2スリット423が設けられている。第1スリット422には、第2移動機構6の第2ワイヤ66の端部が固定され、第2スリット423には、第1移動機構5のワイヤ56の端部が固定される。
【0027】
第2ガイドブロック43は、上部に2つのワイヤ取付部431,432が設けられている。ワイヤ取付部431,432は、第1ガイドブロック42と同様、第1移動機構5のワイヤ56の端部および第2移動機構6の第2ワイヤ66の端部が取り付けられる部分である。より具体的に、ワイヤ取付部431には第1スリット433が設けられ、ワイヤ取付部432には第2スリット434が設けられている。第1スリット433には、第2移動機構6の第2ワイヤ66の端部が固定され、第2スリット434には、第1移動機構5のワイヤ56の端部が固定される。
【0028】
図6に示すように、ガイドレール41が延びる方向へ向かって視たとき、ワイヤ取付部421は、第1ガイドブロック42においてベース1の幅方向の中央に設けられている。ガイドレール41が延びる方向へ向かって視たとき、2つのワイヤ取付部431,432はそれぞれ、第2ガイドブロック43においてベース1の幅方向の両端部に設けられている。そのため、ガイドレール41が延びる方向へ向かって視たとき、前述した4つのスリット422,423,433,434は互いに干渉することはない。
【0029】
第1移動機構5は、第1指2および第2指3を移動方向において互いに接近させて第1指2および第2指3にワークを把持させる。そして、第1移動機構5は、第1指2および第2指3によって倣い把持が可能に構成されている。なお、上記の移動方向は、第1指2および第2指3がハンド100内で移動する方向であり、ベース1の幅方向と一致している。
【0030】
具体的に、第1移動機構5は、第1定滑車51と、第2定滑車52と、第1動滑車53と、第1ワイヤ56とを有している。第1移動機構5は、ベース1の内部空間において中間板14で仕切られた下側空間に設けられている。
【0031】
第1定滑車51は、第1指2および第2指3の移動方向において、第1指2側に配置されている。第2定滑車52は、第1指2および第2指3の移動方向において、第2指3側に配置されている。より詳しくは、第1定滑車51および第2定滑車52は、両指2,3の移動方向において、互いの間に両指2,3が位置するように配置されている。第1定滑車51および第2定滑車52は、ベース1内の下側空間の下部に設けられている。
【0032】
図3および図4に示すように、この例では、第1定滑車51は、2つの定滑車511,512を含んでいる。第2定滑車52は、2つの定滑車521,522を含んでいる。2つの定滑車511,512は、互いに同軸に設けられており、具体的には、共通の軸515に回転自在に支持されている。2つの定滑車521,522は、互いに同軸に設けられており、具体的には、共通の軸525に回転自在に支持されている。
【0033】
第1動滑車53は、第1定滑車51および第2定滑車52よりも高い位置に設けられている。第1動滑車53は、第1定滑車51と第2定滑車52との間の中央を通る鉛直軸上に位置している。図6および図7に示すように、この例では、第1動滑車53は、3つの動滑車531,532,533を含んでいる。3つの動滑車531,532,533は、互いに同軸に設けられており、具体的には、共通の軸535に回転自在に支持されている。尚、3つの動滑車531,532,533のうち動滑車531は、2つのワイヤ溝が形成されており、第1ワイヤ56の二重巻きが可能となっている。
【0034】
第1ワイヤ56は、第1索状部材の一例である。第1ワイヤ56は、第1指2および第2指3のそれぞれに直接または間接的に接続される2つの端部(第1端部56a、第2端部56b)を有し、第1指2から第2指3に向かって、第2定滑車52、第1動滑車53および第1定滑車51の順に巻き掛けられている。これは、第2定滑車52、第1動滑車53および第1定滑車51の3つの滑車における巻き掛け順序を定めているに過ぎず、これら滑車の間に別の滑車が設けられて第1ワイヤ56が巻き掛けられることを除外するものではない。また、第1移動機構5ついても上述した構成に限られない。
【0035】
より詳しくは、第1移動機構5では、図9に示すような第1ワイヤ56のワイヤリングがされる。第1ワイヤ56の第1端部56aは、第2ガイドブロック43のワイヤ取付部432(第2スリット434)に固定され、間接的に第2指3に接続される。第1ワイヤ56の第2端部56bは、第1ガイドブロック42のワイヤ取付部421(第2スリット423)に固定され、間接的に第1指2に接続される。つまり、第1ワイヤ56の第1端部56aは、第2ガイドブロック43を介して第2指3に接続され、第1ワイヤ56の第2端部56bは、第1ガイドブロック42を介して第1指2に接続されている。そして、第1ワイヤ56は、第1端部56a側から順に、定滑車512(第1定滑車51)、動滑車533(第1動滑車53)、定滑車511(第1定滑車51)、動滑車531(第1動滑車53)、定滑車522(第2定滑車52)、動滑車532(第1動滑車53)および定滑車521(第2定滑車52)へと巻き掛けられる。尚、動滑車531には、第1ワイヤ56が二重に巻き掛けられている(図7も参照)。
【0036】
第2移動機構6は、第1指2および第2指3を移動方向において互いに離隔させて第1指2および第2指3にワークを把持させる。そして、第2移動機構6も、第1指2および第2指3によって倣い把持が可能に構成されている。なお、上記の移動方向は、第1移動機構5と同様、第1指2および第2指3がハンド100内で移動する方向である。
【0037】
具体的には、第2移動機構6は、第3定滑車61と、第4定滑車62と、第2動滑車65と、第2ワイヤ66とを有している。第2移動機構6は、第5定滑車63および第6定滑車64をさらに有している。第2移動機構6は、第1移動機構5と同様、ベース1内の下側空間に設けられている。
【0038】
第3定滑車61は、第1指2および第2指3の移動方向において、第1指2側に配置されている。第4定滑車62は、第1指2および第2指3の移動方向において、第2指3側に配置されている。つまり、第3定滑車61および第4定滑車62は、両指2,3の移動方向において、互いの間に両指2,3が位置するように配置されている。第3定滑車61および第4定滑車62は、ベース1内の下側空間の下部に設けられている。この例では、第3定滑車61および第4定滑車62はそれぞれ、1つの定滑車で形成されている。
【0039】
第5定滑車63および第6定滑車64は、ベース1内の下側空間の上部に設けられている。第5定滑車63は、第3定滑車61の上方に設けられている。第6定滑車64は、第4定滑車62の上方に設けられている。第5定滑車63および第6定滑車64は、互いに同じ高さに設けられている。
【0040】
この例では、第5定滑車63は、3つの定滑車631,632,633を含んでいる。第6定滑車64は、3つの定滑車641,642,643を含んでいる。3つの定滑車631,632,633は、互いに同軸に設けられており、具体的には、共通の軸635に回転自在に支持されている。3つの定滑車641,642,643は、互いに同軸に設けられており、具体的には、共通の軸645に回転自在に支持されている。
【0041】
第2動滑車65は、第3定滑車61および第4定滑車62よりも高い位置に設けられ、第5定滑車63および第6定滑車64よりも低い位置に設けられている。第2動滑車65は、第3定滑車61と第4定滑車62との間の中央、および、第5定滑車63と第6定滑車64との間の中央を通る鉛直軸上に位置している。図6および図7に示すように、この例では、第2動滑車65は、3つの動滑車651,652,653を含んでいる。3つの動滑車651,652,653は、互いに同軸に設けられており、具体的には、共通の軸535に回転自在に支持されている。つまり、第1移動機構5の第1動滑車53および第2移動機構6の第2動滑車65は、互いに同軸に設けられており、具体的には、互いに共通の軸535に回転自在に支持されている。第1動滑車53および第2動滑車65は、一体的に移動および回転するように構成されている。尚、3つの動滑車651,652,653のうち動滑車653は、2つのワイヤ溝が形成されており、第2ワイヤ66の二重巻きが可能となっている。
【0042】
第2ワイヤ66は、第2索状部材の一例である。第2ワイヤ66は、第1指2および第2指3のそれぞれに直接または間接的に接続される2つの端部(第1端部66a、第2端部66b)を有し、第1指2から第2指3に向かって、第3定滑車61、第2動滑車65および第4定滑車62の順に巻き掛けられている。これは、第3定滑車61、第2動滑車65および第4定滑車62の3つの滑車における巻き掛け順序を定めているに過ぎず、これら滑車の間に別の滑車が設けられて第2ワイヤ66が巻き掛けられることを除外するものではない。
【0043】
より詳しくは、第2移動機構6では、図10に示すような第2ワイヤ66のワイヤリングがされる。第2ワイヤ66の第1端部66aは、第1ガイドブロック42のワイヤ取付部421(第1スリット422)に固定され、間接的に第1指2に接続されている。第2ワイヤ66の第2端部66bは、第2ガイドブロック43のワイヤ取付部431(第1スリット433)に固定され、間接的に第2指3に接続されている。つまり、第2ワイヤ66の第1端部66aは、第1ガイドブロック42を介して第1指2に接続され、第2ワイヤ66の第2端部66bは、第2ガイドブロック43を介して第2指3に接続されている。そして、第2ワイヤ66は、第1端部66a側から順に、第3定滑車61、定滑車633(第5定滑車63)、定滑車643(第6定滑車64)、動滑車652(第2動滑車65)、定滑車642(第6定滑車64)、動滑車653(第2動滑車65)、定滑車632(第5定滑車63)、動滑車651(第2動滑車65)、定滑車631(第5定滑車63)、定滑車641(第6定滑車64)および第4定滑車62へと巻き掛けられる。尚、動滑車653には、第2ワイヤ66が二重に巻き掛けられている(図7も参照)。
【0044】
また、図6に示すように、第1移動機構5および第2移動機構6は、共通の2つの第1エアシリンダ57を有している。第1エアシリンダ57は、第1アクチュエータの一例であり、第2アクチュエータの一例でもある。つまり、第1アクチュエータは、第2アクチュエータを兼用している。さらに言い換えると、第1アクチュエータと第2アクチュエータとは、同じアクチュエータである。
【0045】
第1エアシリンダ57は、第1移動機構5における第1ワイヤ56の張力が第1指2および第2指3に作用するように第1動滑車53を移動させることによって、第1指2および第2指3を互いに接近させる。また、第1エアシリンダ57は、第2移動機構6における第2ワイヤ66の張力が第1指2および第2指3に作用するように第2動滑車65を移動させることによって、第1指2および第2指3を互いに離隔させる。
【0046】
より詳しくは、第1エアシリンダ57は、共通の軸535を移動させることによって、第1動滑車53および第2動滑車65を移動させることが可能である。第1エアシリンダ57のピストンロッド571はそれぞれ、連結部材572を介して軸535の両端に連結されている。第1エアシリンダ57は、ピストンロッド571が上下方向に往復動作(進退動作)するように配置されている。
【0047】
ピストンロッド571の往復動作(進退動作)に応じて、軸535ひいては第1動滑車53および第2動滑車65が上下動される。例えば、ピストンロッド571が進出した場合、即ちピストンロッド571が押し出されて上昇した場合、第1動滑車53および第2動滑車65は上方へ移動する(図6に示す上側の二点鎖線の図を参照)。また、ピストンロッド571が後退した場合、即ちピストンロッド571が引き込まれて下降した場合、第1動滑車53および第2動滑車65は下方へ移動する(図6に示す下側の二点鎖線の図を参照)。
【0048】
つまり、図9に示すように、第1移動機構5では、第1動滑車53が上方へ移動すると(実線の矢印参照)、第1ワイヤ56の張力が第1ガイドブロック42および第2ガイドブロック43を介して両指2,3に作用し、その結果、両指2,3が互いに接近する(破線の矢印参照)。また、図10に示すように、第2移動機構6では、第2動滑車65が下方へ移動すると(実線の矢印参照)、第2ワイヤ66の張力が第1ガイドブロック42および第2ガイドブロック43を介して両指2,3に作用し、その結果、両指2,3が互いに離隔する(破線の矢印参照)。
【0049】
このように、第1移動機構5において第1指2および第2指3を互いに接近させるための第1動滑車53の移動方向と、第2移動機構6において第1指2および第2指3を互いに離隔させるための第2動滑車65の移動方向とは、互いに反対の向きとなるように構成されている。そのため、上述したように共通の第1エアシリンダ57で第1動滑車53および第2動滑車65を移動させることが可能である。
【0050】
第1調整機構7は、第1動滑車53を回転させて第1ワイヤ56を移動させることによって、第1指2および第2指3を互いの間隔を保持した状態で移動させる。また、第1調整機構7は、第2動滑車65を回転させて第2ワイヤ66を移動させることによって、第1指2および第2指3を互いの間隔を保持した状態で移動させる。第1調整機構7は、第2調整機構を兼ねている。
【0051】
具体的に、第1調整機構7は、第3動滑車71と、第3ワイヤ72と、ガイド部73と、ワイヤ取付部76と、第3エアシリンダ77とを有している。そして、第1調整機構7は、第1指2および第2指3の間隔の中心が、第1指2と第2指3の可動範囲の中心に位置するように、第1指2および第2指3を移動させる。
【0052】
第3動滑車71は、第1移動機構5の第1動滑車53および第2移動機構6の第2動滑車65と一体的に移動および回転する。具体的に、第3動滑車71は、図7に示すように、第1動滑車53および第2動滑車65と同軸に設けられており、共通の軸535に回転自在に支持されている。第3動滑車71は、第1動滑車53と第2動滑車65との間に設けられている。より詳しくは、第3動滑車71は、その両側に位置する第1移動機構5の動滑車531および第2移動機構6の動滑車653と一体に形成されている。そのため、動滑車531と、第3動滑車71と、動滑車653とは、共に回転する。つまり、後述する倣い把持によって生じる動滑車531および動滑車653の回転に伴って、第3動滑車71が確実に回転する。第3動滑車71は、第4動滑車を兼ねている。
【0053】
また、第1ワイヤ56は、第1動滑車53の動滑車531に固定されている。そのため、第1ワイヤ56が移動すると、動滑車531が回転する。また、第2ワイヤ66は、第2動滑車65の動滑車653に固定されている。そのため、第2ワイヤ66が移動すると、動滑車653が回転する。具体的に、上述した動滑車531には第1ワイヤ56を固定する固定部P1が設けられ、動滑車653には第2ワイヤ66を固定する固定部P2が設けられている。これにより、第1ワイヤ56および第2ワイヤ66が移動する際、第1ワイヤ56および第2ワイヤ66が動滑車531および動滑車653に対して滑るといった現象が防止される。尚、図7においては、説明の便宜上、固定部P1,P2の位置は簡略的に示している。
【0054】
第3ワイヤ72は、第3動滑車71に接続され、動滑車531および動滑車653の回転によって第3動滑車71に巻き取られる。第3ワイヤ72は、第3索状部材の一例であり、第4索状部材の一例でもある。つまり、第3ワイヤ72は、第4索状部材を兼ねている。具体的に、第3ワイヤ72の第1端部72aは、ベース1内の上側空間に設けられたワイヤ取付部76に取り付けられている。第3ワイヤ72の第2端部72bは、第3動滑車71に取り付けられている。
【0055】
図8に示すように、第3動滑車71は、2つの胴部711,712を有している。2つの胴部711,712は、概ね、扁平な円筒部材を径方向に2つに分割してなる形状を有している。第3動滑車71において、2つの胴部711,712は互いに所定の隙間713を置いて配置されている。つまり、2つの胴部711,712の間には2つの隙間713が設けられている。2つの隙間713は、第3動滑車71の周方向において互いに180°ずれた位置に設けられている。第3ワイヤ72は、第2端部72b側が2つに分岐してなる分岐部721,722を有しており、これら分岐部721,722の端部が第2端部72bを構成している。第3ワイヤ72の2つの第2端部72bはそれぞれ、2つの隙間713に挿入されている。第3ワイヤ72の第2端部72bは、隙間713から抜け出ないようになっている。こうして、第3ワイヤ72の第2端部72bが第3動滑車71に取り付けられる。第3ワイヤ72の2つの分岐部721,722のうちの一方は、第3動滑車71の回転に伴って胴部711の外周面に巻き取られるように構成されている。
【0056】
ガイド部73は、略筒状に形成されており、中間板14に設けられている。第3ワイヤ72は、第3動滑車71からガイド部73を通過しベース1内の上側空間へ延びている。つまり、ガイド部73は第3ワイヤ72を上下方向にガイドしている。ベース1内の上側空間では、ガイド部73とワイヤ取付部76との間に動滑車74が設けられている。つまり、ガイド部73を通過した第3ワイヤ72は、動滑車74を介してワイヤ取付部76に取り付けられている。
【0057】
動滑車74は、連結部材772に回転自在に取り付けられている。具体的には、連結部材772には、軸741が設けられており、動滑車74は軸741によって回転自在に支持されている。軸741は、上下方向に延びる状態で設けられている。連結部材772は、第3エアシリンダ77のピストンロッド771に連結されている。
【0058】
第3エアシリンダ77は、第3動滑車71に巻き取られた第3ワイヤ72を引き戻すことによって第1動滑車53および第2動滑車65を戻し回転させる。即ち、第3エアシリンダ77は、第3動滑車71から第3ワイヤ72を引き戻すことによって、第1動滑車53および第2動滑車65を、第3ワイヤ72が第3動滑車71に巻き取られた向きと反対向きに戻し回転させる。
【0059】
第3エアシリンダ77は、第3アクチュエータの一例であり、第4アクチュエータを兼ねている。第3エアシリンダ77は、ピストンロッド771が水平方向に往復動作(進退動作)するように配置されている。例えば、後述する閉じ把持動作および開き把持動作の開始時では、ピストンロッド771が後退している(図5に実線で示す状態)。また、ピストンロッド771が進出すると、第3動滑車71に巻き取られた第3ワイヤ72が引き出される(図5に二点鎖線で示す状態)。
【0060】
また、第1調整機構7は、第3ワイヤ72を最大限引き戻すことによって第3動滑車71を所定の第1回転位置に位置させるように構成され、第3動滑車71を前記第1回転位置に位置させることによって第1指2および第2指3を互いの間隔を保持した状態で所定の第1位置まで移動させる。この例では、第3ワイヤ72が最大限引き戻された状態の第3動滑車71の位置が第1回転位置として設定されている。そして、所定の第1位置は、両指2,3の可動範囲の中心として設定されている。
【0061】
制御装置8は、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータを備えたロボットコントローラである。図11に示すように、制御装置8は、記憶部81と、演算部82と、制御部83とを有している。
【0062】
記憶部81は、ROMおよびRAM等であり、ロボットコントローラとしての基本プログラム、各種固定データ等の情報が記憶されている。演算部82は、CPU等であり、記憶部81に記憶された基本プログラム等のソフトウェアを読み出して実行することにより、ロボットアーム10およびロボットハンド100の各種動作を制御するための制御指令を生成する。制御部83は、演算部82によって生成された制御指令に基づいて、第1エアシリンダ57、第2エアシリンダ58および第3エアシリンダ77を駆動制御する。
【0063】
〈動作〉
上述したハンド100の動作について、図12図22を参照しながら説明する。ロボットハンド100は、第1指2および第2指3を互いに接近させて(閉じて)ワークを把持する動作(以下、「閉じ把持動作」という。)と、第1指2および第2指3を互いに離隔させて(開いて)ワークを把持する動作(以下、「開き把持動作」という。)と、第1指2および第2指3を互いの間隔を保持した状態で両指2,3の可動範囲の中心Cまで移動させる動作(以下、「センタリング動作」という。)を行う。なお、図12図21図15および図16を除く)は、説明の便宜上、第1移動機構5および第2移動機構6の構成を簡易的に示している。
【0064】
閉じ把持動作の開始時では、第1エアシリンダ57,57のピストンロッド571,571は後退した(下降した)状態になっており、第3エアシリンダ77のピストンロッド771も後退した状態になっている。閉じ把持動作では、先ず、ハンド100が、ロボットアーム10によって把持対象のワークWの位置に移動される。ワークWは、水平方向への移動が制限された状態で載置されている。ワークWは、例えば、円柱状や角柱状に形成されている。尚、ハンド100がワークWの位置に移動する際、両指2,3は開き切っているのでぐらつかない。
【0065】
ハンド100がワークWの位置に移動した状態では、両指2,3がワークWの外側に位置する。この状態では、図12に示すように、両指2,3の可動範囲の中心C(以下、単に「可動範囲の中心C」ともいう)とワークWの中心とがずれている場合がある。つまり、第1指2および第2指3の間隔の中心(以下、単に「両指2,3の中心」ともいう)とワークWの中心とがずれている場合がある。この例では、ワークWの中心が第1指2側にずれているとして説明する。
【0066】
また、閉じ把持動作の開始時は、第3動滑車71が第1回転位置に位置している。また、図13に示すように、第3ワイヤ72は、張った状態ではなく、弛んだ状態になっている。このとき、第1動滑車53では、説明の便宜上、固定部P1は動滑車531における最上部に位置しているものとする。さらに、閉じ把持動作の開始時は、両指2,3の中心と可動範囲の中心Cとが一致した状態である。
【0067】
この状態において、第1エアシリンダ57,57が制御装置8によって制御され、ピストンロッド571,571が進出(上昇)し、第1動滑車53が上昇する。そうすると、図14に示すように、第1動滑車53の上昇によって生じた第1ワイヤ56の張力が両指2,3に作用するため、両指2,3が互いに接近するように移動する。つまり、両指2,3はそれぞれワークWに向かって移動する。このとき、両指2,3のそれぞれの移動に対する抵抗は互いに略同じであることから、両指2,3の移動量は略等しい。そのため、第1動滑車53は回転することなく上昇する。その後、両指2,3のうち第1指2が先にワークWに接触して停止する。このとき、第1エアシリンダ57,57では、ピストンロッド571,571の進出動作が継続される。
【0068】
図15に示すように、第1指2がワークWに接触して停止しても、第1動滑車53は上昇動作を継続する。そのため、第2指3は停止することなく円滑に移動し続ける。第1指2がワークWと接触することによって第1指2の移動に対する抵抗が大きくなると、第1動滑車53では第1動滑車53の上昇に伴って第1ワイヤ56が第1定滑車51側から第2定滑車52側へ移動する。この第1ワイヤ56の移動により、動滑車531は回転する。つまり、動滑車531(第1動滑車53)は回転しながら上昇する。ここで、第1ワイヤ56は動滑車531に固定されているので、確実に動滑車531は第1ワイヤ56の移動に伴って回転する。そのため、第1ワイヤ56の張力は移動に対する抵抗が小さい方の第2指3側に専ら作用することとなり、第2指3のみがワークW(第1指2)へ向かって移動し続ける。その後、第2指3はワークWに接触して停止する。
【0069】
第1調整機構7では、上述した動滑車531の回転に伴い、第3動滑車71も動滑車531と同じ方向に回転する。図16に示すように、第3動滑車71が回転すると、第3ワイヤ72は第3動滑車71に巻き取られる。より詳しくは、第3ワイヤ72において弛んでいた2つの分岐部721,722のうちの一方が胴部711に巻き取られる。つまり、第3ワイヤ72のうち弛んでいる部分が第3動滑車71に巻き取られる。そのため、例えば第3エアシリンダ77のピストンロッド771を進出させて第3ワイヤ72を張った状態にした場合に比べて、第3動滑車71の回転時の抵抗が低減される。尚、このとき、第3エアシリンダ77のピストンロッド771は後退したままである。
【0070】
こうして、第1指2および第2指3によってワークWが倣い把持され、閉じ把持動作が完了する。つまり、両指2,3によってワークWが外側から把持される。このように、ハンド100がワークWの位置に移動したときにワークWの中心が可動範囲の中心Cからずれた場合でも、円滑な倣い把持が行われる。しかも、上述したように第3ワイヤ72の巻き取り時の第3動滑車71の回転抵抗が低減されるので、より円滑な倣い把持が行われる。閉じ把持動作の完了後は、ロボットアーム10によってハンド100が上方へ移動され、把持されたワークWが載置されていた場所から上方へ移動する。
【0071】
続いて、センタリング動作が行われる。上述したように倣い把持がされた状態では、図15に示すように、両指2,3の中心と可動範囲の中心Cとがずれているため、センタリング動作が行われる。
【0072】
センタリング動作では、第3エアシリンダ77が制御装置8によって制御され、後退していたピストンロッド771が進出する。ピストンロッド771が進出すると、図17に示すように、第3ワイヤ72が第3動滑車71から引き戻され、2つの分岐部721,722を含む第3ワイヤ72が張った状態になる。つまり、第3動滑車71から第3ワイヤ72が最大限引き戻された状態となり、第3動滑車71が第1回転位置に戻し回転される。そうすると、第3ワイヤ72の引き戻しが不可となるため、第3エアシリンダ77のピストンロッド771の進出動作が停止する。
【0073】
こうして第3動滑車71が回転すると、図18に示すように、動滑車531(第1動滑車53)が上述した閉じ把持動作における回転方向(図15に示す回転方向)とは逆方向に回転する。つまり、動滑車531は、逆回転して、固定部P1が最上部に位置する回転位置(「閉じ把持動作」によって回転する前の位置)に戻る。そうすると、第1ワイヤ56が移動して、第1指2および第2指3が互いの間隔を保持した状態で可動範囲の中心Cまで移動する。つまり、第1指2および第2指3が、ワークWを保持した状態で移動し、両指2,3の中心が可動範囲の中心Cと一致する。こうして、センタリング動作が完了する。このように、第1指2および第2指3の位置をセンサ等によって検出することなく第1指2および第2指3を可動範囲の中心Cまで移動させることができる。尚、この例では、両指2,3を可動範囲の中心Cまで移動させるセンタリング動作について説明したが、ハンド100は、両指2,3を移動方向における任意の位置に移動させて固定することができる。
【0074】
次に、開き把持動作について説明する。開き把持動作の開始時では、第1エアシリンダ57,57のピストンロッド571,571は進出した(上昇した)状態になっており、第3エアシリンダ77のピストンロッド771は後退した状態になっている。開き把持動作では、先ず、ハンド100が、ロボットアーム10によって把持対象のワークWの位置に移動される。ワークWは、水平方向への移動が制限された状態で載置されている。ワークWは、例えば、内部が円形や矩形に形成された筒状部材である。
【0075】
ハンド100がワークWの位置に移動した状態では、両指2,3がワークWの内側に位置する。この状態では、図19に示すように、両指2,3の可動範囲の中心CとワークWの中心とがずれている場合がある。つまり、第1指2および第2指3の間隔の中心とワークWの中心とがずれている場合がある。この例では、ワークWの中心が第2指3側にずれているとして説明する。また、開き把持動作においても、第1指2および第2指3の間隔の中心と両指2,3の可動範囲の中心Cとが一致した状態で開始される。
【0076】
また、開き把持動作の開始時は、第3動滑車71が第1回転位置に位置している。また、閉じ把持動作の開始時と同様、第3ワイヤ72は、張った状態ではなく、弛んだ状態になっている(図13参照)。このとき、第2動滑車65では、説明の便宜上、固定部P2は動滑車653における最下部に位置しているものとする。さらに、開き把持動作の開始時は、両指2,3の中心と可動範囲の中心Cとが一致した状態である。
【0077】
この状態において、第1エアシリンダ57,57が制御装置8によって制御され、ピストンロッド571,571が後退(下降)し、第2動滑車65が下降する。そうすると、図20に示すように、第2動滑車65の下降によって生じた第2ワイヤ66の張力が両指2,3に作用するため、両指2,3が互いに離隔するように移動する。つまり、両指2,3はそれぞれワークWに向かって移動する。このとき、両指2,3のそれぞれの移動に対する抵抗は互いに略同じであることから、両指2,3の移動量は略等しい。そのため、第2動滑車65は回転することなく下降する。その後、両指2,3のうち第1指2が先にワークWに接触して停止する。このとき、第1エアシリンダ57,57では、ピストンロッド571,571の後退動作が継続される。
【0078】
図21に示すように、第1指2がワークWに接触して停止しても、第2動滑車65は下降動作を継続する。そのため、第2指3は停止することなく円滑に移動し続ける。第1指2がワークWと接触することによって第1指2の移動に対する抵抗が大きくなると、第2動滑車65では第2動滑車65の下降に伴って第2ワイヤ66が第5定滑車63(第3定滑車61)側から第6定滑車64(第4定滑車62)側へ移動する。この第2ワイヤ66の移動により、動滑車653は回転する。つまり、動滑車653(第2動滑車65)は回転しながら下降する。ここで、第2ワイヤ66は動滑車653に固定されているので、確実に動滑車653は第2ワイヤ66の移動に伴って回転する。そのため、第2ワイヤ66の張力は移動に対する抵抗が小さい方の第2指3に専ら作用することとなり、第2指3のみがワークWへ向かって移動し続ける。その後、第2指3はワークWに接触して停止する。
【0079】
この場合も、第1調整機構7では、上述した動滑車653の回転に伴い、第3動滑車71が動滑車653と同じ方向に回転する。図16に示すように、第3動滑車71が回転すると、第3ワイヤ72は第3動滑車71に巻き取られる。つまり、閉じ把持動作と同様、第3ワイヤ72において弛んでいる2つの分岐部721,722のうちの一方が胴部711に巻き取られる。そのため、第3動滑車71の回転時の抵抗が低減される。尚、このとき、第3エアシリンダ77のピストンロッド771は後退したままである。
【0080】
こうして、第1指2および第2指3によってワークWが倣い把持され、開き把持動作が完了する。つまり、両指2,3によってワークWが内側から把持される。このように、ハンド100がワークWの位置に移動したときにワークWの中心が可動範囲の中心Cからずれた場合でも、円滑な倣い把持が行われる。しかも、上述したように第3ワイヤ72の巻き取り時の第3動滑車71の回転抵抗が低減されるので、より円滑な倣い把持が行われる。開き把持動作の完了後は、ロボットアーム10によってハンド100が上方へ移動され、把持されたワークWが載置されていた場所から上方へ移動する。
【0081】
続いて、センタリング動作が行われる。上述したように倣い把持がされた状態では、図21に示すように、両指2,3の中心と可動範囲の中心Cとがずれているため、センタリング動作が行われる。
【0082】
センタリング動作では、第3エアシリンダ77が制御装置8によって制御され、後退していたピストンロッド771が進出する。ピストンロッド771が進出すると、図17に示すように、第3ワイヤ72が第3動滑車71から引き戻され、2つの分岐部721,722を含む第3ワイヤ72が張った状態になる。つまり、第3動滑車71から第3ワイヤ72が最大限引き戻された状態となり、第3動滑車71が第1回転位置に戻し回転される。そうすると、第3ワイヤ72の引き戻しが不可となるため、第3エアシリンダ77のピストンロッド771の進出動作が停止する。
【0083】
こうして第3動滑車71が回転すると、図22に示すように、動滑車653(第2動滑車65)が上述した「開き把持動作」における回転方向(図21に示す回転方向)とは逆方向に回転する。つまり、動滑車653は、逆回転して、固定部P2が最下部に位置する回転位置(「開き把持動作」によって回転する前の位置)に戻る。そうすると、第2ワイヤ66が移動して、第1指2および第2指3が互いの間隔を保持した状態で可動範囲の中心Cまで移動する。つまり、第1指2および第2指3が、ワークWを保持した状態で移動し、両指2,3の中心が可動範囲の中心Cと一致する。こうして、センタリング動作が完了する。このように、第1指2および第2指3の位置をセンサ等によって検出することなく第1指2および第2指3を可動範囲の中心Cまで移動させることができる。
【0084】
以上のように、ロボットハンド100は、第1指2および第2指3と、第1指2および第2指3を所定の移動方向において互いに接近させて第1指2および第2指3にワークWを把持させる第1移動機構5とを備えている。第1移動機構5は、第1動滑車53と、第1指2および第2指3のそれぞれに接続される2つの端部(第1端部56a、第2端部56b)を有し、第1動滑車53に巻き掛けられる第1ワイヤ56(第1索状部材)と、第1動滑車53を移動させる第1エアシリンダ57(第1アクチュエータ)とを有している。そして、第1エアシリンダ57は、第1ワイヤ56の張力が第1指2および第2指3に作用して第1指2および第2指3が互いに接近するように第1動滑車53を移動させる。
【0085】
より具体的に、第1移動機構5は、移動方向において、第1指2側に配置された第1定滑車51および第2指3側に配置された第2定滑車52を有している。第1ワイヤ56は、第1指2から第2指3に向かって、第2定滑車52、第1動滑車53および第1定滑車51の順に巻き掛けられている。
【0086】
上記の構成によれば、第1エアシリンダ57による第1動滑車53の移動量に対応して、第1指2及び第2指3がそれぞれ第1ワイヤ56に引っ張られて移動する。ここで、第1ワイヤ56のうち第1動滑車53から第1定滑車51の方へ延びる部分は、第1定滑車51に巻き掛けられて第2指3に接続されている。一方、第1ワイヤ56のうち第1動滑車53から第2定滑車52の方へ延びる部分は、第2定滑車52に巻き掛けられて第1指2に接続されている。第1定滑車51は、移動方向において第1指2側に配置される一方、第2定滑車52は、移動方向において第2指3側に配置される。そのため、第1指2および第2指3がそれぞれ第1ワイヤ56に引っ張られると、第1指2および第2指3は互いに接近する方向へ移動する。その結果、第1指2および第2指3は、互いに接近してワークWを外側から把持する。
【0087】
このとき、第1動滑車53の移動量に対応する第1指2の移動量と第2指3の移動量とは、第1指2の移動に対する抵抗および第2指3の移動に対する抵抗に応じて適宜調整される。例えば、第1指2がワークWに接触して第1指2の移動に対する抵抗が大きくなると、例えば第1指2が停止し、第2指3の移動量が適宜増大される。そのため、第2指3はワークWに向かって円滑に移動し続けることができる。その結果、第2指3がワークWに到達することで、円滑な倣い把持を行うことができる。
【0088】
また、例えば可動範囲の中心CとワークWの中心とがずれている場合でも、上述したように円滑な倣い把持を行うことができるので、ロボットハンド100をワークWの位置に移動させる際にワークWの位置検出を高精度に行う必要がなくなる。そのため、制御負荷を軽減することができる。
【0089】
また、ロボットハンド100は、第1指2および第2指3を移動方向において互いに離隔させて第1指2および第2指3にワークWを把持させる第2移動機構6をさらに備えている。第2移動機構6は、第2動滑車と、第1指2および第2指3のそれぞれに接続される2つの端部(第1端部66a、第2端部66b)を有し、第2動滑車65に巻き掛けられる第2ワイヤ66(第2索状部材)と、第2動滑車65を移動させる第1エアシリンダ57(第2アクチュエータ)とを有している。第2ワイヤ66は、第1エアシリンダ57は、第2ワイヤ66の張力が第1指2および第2指3に作用して第1指2および第2指3が互いに離隔するように第2動滑車65を移動させる。
【0090】
より具体的に、第2移動機構6は、移動方向において、第1指2側に配置された第3定滑車61および第2指3側に配置された第4定滑車62を有している。第2ワイヤ66は、第1指2から第2指3に向かって、第3定滑車61、第2動滑車65および第4定滑車62の順に巻き掛けられている。
【0091】
上記の構成によれば、第1エアシリンダ57による第2動滑車65の移動量に対応して、第1指2および第2指3がそれぞれ第2ワイヤ66に引っ張られて移動する。ここで、第2ワイヤ66のうち第2動滑車65から第3定滑車61の方へ延びる部分は、第3定滑車61に巻き掛けられて第1指2に接続されている。一方、第2ワイヤ66のうち第2動滑車65から第4定滑車62の方へ延びる部分は、第4定滑車62に巻き掛けられて第2指3に接続されている。第3定滑車61は、移動方向において第1指2側に配置される一方、第4定滑車62は、移動方向において第2指3側に配置される。そのため、第1指2および第2指3がそれぞれ第2ワイヤ66に引っ張られると、第1指2および第2指3は互いに離隔する方向へ移動する。その結果、第1指2および第2指3は、互いに離隔してワークWを内側から把持する。
【0092】
このとき、第2動滑車65の移動量に対応する第1指2の移動量と第2指3の移動量とは、第1指2の移動に対する抵抗および第2指3の移動に対する抵抗に応じて適宜調整される。例えば、第1指2がワークWに接触して第1指2の移動に対する抵抗が大きくなると、例えば第1指2が停止し、第2指3の移動量が適宜増大される。そのため、第2指3はワークWに向かって円滑に移動し続けることができる。その結果、第2指3がワークWに到達することで、円滑な倣い把持を行うことができる。
【0093】
また、ロボットハンド100においては、第1動滑車53および第2動滑車65は、一体的に移動するように構成されている。第1指2および第2指3を互いに接近させるための第1動滑車53の移動方向と、第1指2および第2指3を互いに離隔させるための第2動滑車65の移動方向とは、互いに反対の向きとなっている。そして、第1エアシリンダ57(第1アクチュエータ)は、第2アクチュエータを兼ねており、第1動滑車53および第2動滑車65を移動させる。
【0094】
上記の構成によれば、第1動滑車53を移動させる第1エアシリンダ57が、第2動滑車65を移動させる第2アクチュエータを兼ねている。そのため、第1指2および第2指3を互いに接近させてワークWを外側から把持する動作(閉じ把持動作)と、第1指2および第2指3を互いに離隔させてワークWを内側から把持する動作(開き把持動作)の両方を可能としつつも、第1移動機構5および第2移動機構6、ひいては、ロボットハンド100のコンパクト化を図ることができる。
【0095】
また、ロボットハンド100は、第1動滑車53を回転させて第1ワイヤ56を移動させることによって、第1指2および第2指3を互いの間隔を保持した状態で移動させる第1調整機構7をさらに備えている。第1動滑車53および第2動滑車65は、一体的に回転するように構成されている。第1調整機構7は、第1動滑車53と共に第2動滑車65を回転させて第1ワイヤ56および第2ワイヤ66を移動させることによって、第1指2および第2指3を互いの間隔を保持した状態で移動させる。
【0096】
上記の構成によれば、例えば、第1指2および第2指3をワークWを把持した状態のままハンド100内における任意な位置に容易に移動させることができる。そのため、例えば、次の作業の作業性を考慮してロボットハンド100内で第1指2および第2指3を移動させることができる。従来の差動歯車機構では、歯車のバックラッシュやガタの影響により、歯車を把持する方向と逆方向に回転させた際に把持力が低下する虞があるため、第1指および第2指をワークを把持した状態で移動させることは容易ではない。
【0097】
また、ロボットハンド100において、第1調整機構7は、第3動滑車71と、第3ワイヤ72(第3索状部材)と、第3エアシリンダ77(第3アクチュエータ)とを有している。第3動滑車71は、第1動滑車53および第2動滑車65と一体的に移動及び回転する。第3ワイヤ72は、第3動滑車71に接続され、第1動滑車53および第2動滑車65の回転によって第3動滑車71に巻き取られる。第3エアシリンダ77は、第3動滑車71に巻き取られた第3ワイヤ72を引き戻すことによって第1動滑車53および第2動滑車65を回転させる。
【0098】
上記の構成によれば、第3動滑車71が第1動滑車53および第2動滑車65と一体的に移動および回転するため、第3ワイヤ72を引き戻すという簡易な構成で、第1動滑車53および第2動滑車65の両方を回転させることができる。ロボットハンド100のコンパクト化を図ることができる。
【0099】
また、ロボットハンド100において、第1ワイヤ56は、第1動滑車53に固定されており、第2ワイヤ66は、第2動滑車65に固定されている。
【0100】
上記の構成によれば、第1ワイヤ56が滑ることなく第1動滑車53の回転に伴って確実に移動し、第2ワイヤ66が滑ることなく第2動滑車65の回転に伴って確実に移動する。そのため、第1指2および第2指3を互いの間隔を保持した状態で移動させることを高精度に行うことができる。
【0101】
また、ロボットハンド100において、第1調整機構7は、第3ワイヤ72を最大限引き戻すことによって第3動滑車71を所定の第1回転位置に位置させるように構成され、第3動滑車71を第1回転位置に位置させることによって第1指2および第2指3を互いの間隔を保持した状態で所定の第1位置まで移動させる。
【0102】
上記の構成によれば、第3ワイヤ72が最大限引き戻されることによって、第3動滑車71を第1回転位置に位置し、これによって、第1指2および第2指3が互いの間隔を保持した状態で所定の第1位置まで移動する。ここで、所定の第1位置として、両指2,3の可動範囲の中心Cを設定することにより、第3ワイヤ72の引き戻し量をセンサ等で検出することなく、円滑かつ容易に第1指2および第2指3をセンタリングさせることができる。
【0103】
また、ロボットハンド100は、第1アクチュエータ、第2アクチュエータおよび第3アクチュエータとして、エアシリンダ57,58,77を用いている。
【0104】
上記の構成によれば、例えばモータ(サーボモータ)を用いる場合に比べて、ロボットハンド100を安価に構築することができる。特に、第1動滑車53および第2動滑車65を上下させる構成であるため、往復動作が可能なエアシリンダが有効である。
【0105】
(その他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0106】
上記実施形態において、第2移動機構6を省略するようにしてもよい。つまり、ロボットハンド100は、把持動作として「閉じ把持動作」のみを行うものであってもよい。
【0107】
また、上記実施形態において、第1移動機構5を省略するようにしてもよい。つまり、ロボットハンド100は、把持動作として「開き把持動作」のみを行うものであってもよい。この場合、第1調整機構7に代えて、第2調整機構が設けられる。第2調整機構は、第2動滑車65を回転させて第2ワイヤ66(第2索状部材)を移動させることによって、第1指2および第2指3を互いの間隔を保持した状態で移動させる。
【0108】
また、第1移動機構5を省略して「開き把持動作」のみを行うものとした場合、第2移動機構6は、図23に示すような構成にしてもよい。つまり、第2ワイヤ66では、第1端部66aが第1指2に接続され、第2端部66bが第2指3に接続される。そして、第2ワイヤ66は、第1指2から第2指3に向かって、第3定滑車61、第2動滑車65および第4定滑車64の順に巻き掛けられる。このように構成された第2移動機構6では、第2動滑車65が上昇することによって、第2ワイヤ66の張力が第1指2および第2指3に作用し、第1指2および第2指3が互いに離隔する。
【0109】
また、第2調整機構は、第2動滑車65と一体的に移動及び回転する第4動滑車と、第4動滑車に接続され、第2動滑車65の回転によって第4動滑車に巻き取られる第4ワイヤ(第4索状部材)と、第4動滑車に巻き取られた第4ワイヤを引き戻すことによって第2動滑車65を回転させる第4エアシリンダ(第4アクチュエータ)とを有してもよい。
【0110】
また、第2調整機構は、第4ワイヤを最大限引き戻すことによって第4動滑車を所定の第2回転位置に位置させるように構成され、第4動滑車を第2回転位置に位置させることによって第1指2および第2指3を互いの間隔を保持した状態で所定の第2位置まで移動させるようにしてもよい。
【0111】
また、第1調整機構7では、閉じ把持動作および開き把持動作の開始時において、第3エアシリンダ77のピストンロッド771を後退させて第3ワイヤ72を弛んだ状態にしたが、本開示の技術はこれに代えて、第3エアシリンダ77のピストンロッド771を進出させて第3ワイヤ72を張った状態にしてもよい。
【0112】
また、上記実施形態において、第1調整機構7を省略するようにしてもよいし、第2移動機構6および第1調整機構7を省略するようにしてもよいし、第1移動機構5および第1調整機構7を省略するようにしてもよい。
【0113】
また、第1ワイヤ56および第2ワイヤ66のそれぞれのワイヤリング構成は、上記実施形態で説明したものに限られない。つまり、第1動滑車53および第2動滑車65を上下させることにより、第1ワイヤ56および第2ワイヤ66の張力が第1指2および第2指3に作用し得るものであれば、如何なるワイヤリング構成であってもよい。
【0114】
また、上記実施形態において、第1定滑車51、第2定滑車52、第3定滑車61、第4定滑車62、第5定滑車63および第6定滑車64のそれぞれを構成する定滑車の数、第1動滑車53および第2動滑車65のそれぞれを構成する動滑車の数は、上述したものに限られない。基本的には、定滑車および動滑車の数が多いほど、巻き掛け数が増えるため、第1指2および第2指3を移動させるのに必要な第1動滑車53および第2動滑車65の移動量を抑えることができる。そのため、ハンド100のコンパクト化を図ることができる。
【0115】
また、上記実施形態において、第3動滑車および第3ワイヤは次のように構成するようにしてもよい。図24および図25に示すように、第3動滑車78は、円環状の胴部781を有する。第3ワイヤ79の第2端部79bは、胴部781の外周面における所定の位置に接続されている。上記実施形態では第3ワイヤ72と第3動滑車71との接続箇所は2か所であったが、本変形例の第3動滑車78と第3ワイヤ79との接続箇所は1か所である。第3ワイヤ79は、ガイドである転向滑車75を介した後、図示しないが、上記実施形態と同様に、第3エアシリンダ77に接続された動滑車74を介してワイヤ取付部76に固定されている。この場合も、「閉じ把持動作」および「開き把持動作」による倣い把持が行われると、第1動滑車53および第2動滑車65の回転に伴って第3動滑車78が回転する(図24の状態)。これにより、第3ワイヤ79が第3動滑車78の胴部781に巻き取られる。そして、「センタリング動作」では、第3エアシリンダ77によって第3ワイヤ79が最大限引き戻される(図25の状態)。つまり、第3動滑車78では、第3ワイヤ79の接続点が最上部に位置する。これにより、第3動滑車78が第1回転位置に戻り、それに伴って、第1動滑車53および第2動滑車65が回転する。その結果、上記実施形態と同様、第1指2および第2指3がセンタリングされる。
【0116】
また、上記実施形態では、第1アクチュエータ、第2アクチュエータおよび第3アクチュエータとして、エアシリンダ以外のものを用いるようにしてもよい。例えば、モータや油圧シリンダが挙げられる。
【0117】
また、上記実施形態では、索状部材として、ワイヤを用いるようにしたが、これに限らず、例えば繊維製のロープ等を用いてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、第1動滑車53および第2動滑車65に巻き掛けられるワイヤの長さが、第1動滑車53および第2動滑車65の上下位置によって異なるため、若干の緩みを持たせたワイヤリングが必要な場合がある。その場合、ワイヤが定滑車等から外れる虞があるため、例えば、必要以上の緩みを吸収可能なテンショナを設けたり、ワイヤ外れ防止用のガイドを設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0119】
100 ロボットハンド
2 第1指
3 第2指
5 第1移動機構
6 第2移動機構
7 第調整機構
51 第1定滑車
52 第2定滑車
53 第1動滑車
56 第1ワイヤ(第1索状部材)
56a 第1端部(端部)
56b 第2端部(端部)
57 第1エアシリンダ(第1アクチュエータ、第2アクチュエータ)
61 第3定滑車
62 第4定滑車
65 第2動滑車
66 第2ワイヤ(第2索状部材)
66a 第1端部(端部)
66b 第2端部(端部)
71 第3動滑車
72 第3ワイヤ(第3索状部材)
77 第3エアシリンダ(第3アクチュエータ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25