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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】飛行体制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/617 20240101AFI20240607BHJP
   G08B 21/16 20060101ALI20240607BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240607BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20240607BHJP
   B64D 45/00 20060101ALI20240607BHJP
   G05D 1/46 20240101ALI20240607BHJP
【FI】
G05D1/617
G08B21/16
B64C39/02
B64C13/18 Z
B64D45/00 Z
G05D1/46
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020186727
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076355
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】椋田 千聖
(72)【発明者】
【氏名】池永 紗耶
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 大祐
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-202682(JP,A)
【文献】特開2011-221722(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033976(WO,A1)
【文献】特表2018-505089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
G08B 21/16
B64C 39/02
B64C 13/18
B64D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視エリア内の設備の周囲に規定された進入禁止エリアの外側に設定される飛行ルートに沿って飛行体を飛行させ、前記設備を点検するための飛行体制御システムであって、
前記飛行体の飛行を管理する飛行管理部と、
前記飛行体に設けられ、爆発性ガスを検知する飛行体側ガス検知部及び、前記監視エリア内に設けられ、爆発性ガスを検知するエリア側ガス検知部のうちの少なくともいずれか一方と、
前記飛行体側ガス検知部及び前記エリア側ガス検知部のうちの少なくともいずれか一方での検知結果を基に、爆発性雰囲気が存在するか、または爆発性雰囲気が存在する虞のある危険エリアを設定する危険エリア設定部と、
前記飛行体側ガス検知部及び前記エリア側ガス検知部のうちの少なくともいずれか一方で検知した前記爆発性ガスの空気に対する比重が1よりも大きいか否かを判断する比重判断部と、
前記危険エリアを避ける前記飛行ルートとしての回避飛行ルートを生成するか否かを判断するルート生成要否判断部と、
前記ルート生成要否判断部において、前記回避飛行ルートを生成すると判断した場合に、ルート生成情報を基にして前記回避飛行ルートを生成するルート生成部と、を備えており、
前記ルート生成情報は、前記比重判断部での判断結果及び前記危険エリア設定部で設定された前記危険エリアを含み、
前記ルート生成部は、
前記比重判断部において前記比重が1よりも大きいと判断された場合に、飛行中の飛行ルートよりも前記飛行体の高度が高くなる高高度回避飛行ルートを前記回避飛行ルートとして生成し、
前記比重判断部において前記比重が1よりも大きくないと判断された場合に、飛行中の飛行ルートよりも前記飛行体の高度が低くなる低高度回避飛行ルートを前記回避飛行ルートとして生成する飛行体制御システム。
【請求項2】
前記ルート生成部は、
前記高高度回避飛行ルートとして、高度を高くした元来た飛行ルートに沿って現在地から発着場へ向かう第1高高度帰還飛行ルート、及び前記第1高高度帰還飛行ルートとは異なる経路で現在地から発着場へ向かう第2高高度帰還飛行ルートのうちのいずれか一方を生成し、
前記低高度回避飛行ルートとして、高度を低くした元来た飛行ルートに沿って現在地から発着場へ向かう第1低高度帰還飛行ルート、及び前記第1低高度帰還飛行ルートとは異なる経路で現在地から発着場へ向かう第2低高度帰還飛行ルートのうちのいずれか一方を生成する請求項1に記載の飛行体制御システム。
【請求項3】
前記飛行体が前記危険エリア又は前記進入禁止エリアに落下する、或いは落下する虞がある回避エリアを設定する回避エリア設定部を備えており、
前記回避エリア設定部で設定された前記回避エリアが前記ルート生成情報の一つである請求項1又は2に記載の飛行体制御システム。
【請求項4】
前記飛行体の位置を検出する飛行体位置検出部と、
前記監視エリア内の風向及び風速を検出する風向風速検出部と、
前記飛行体の加速度を導出する飛行体加速度導出部と、を備えており、
前記回避エリア設定部は、前記飛行体位置検出部での検出結果、前記飛行体加速度導出部での導出結果、前記風向風速検出部での検出結果、前記飛行体の重量及び前記飛行体の受風面積を基に、前記回避エリアを設定する請求項3に記載の飛行体制御システム。
【請求項5】
前記飛行体の落下予測エリアを算出する落下予測エリア算出部と、
前記落下予測エリア算出部で算出された前記落下予測エリアが、前記危険エリア設定部によって設定された前記危険エリア内又は前記進入禁止エリア内であるか否かを判断する落下エリア判断部と、を備えており、
前記飛行管理部は、
前記落下エリア判断部において、前記落下予測エリアが前記危険エリア内又は前記進入禁止エリア内であると判断した場合に、前記危険エリア又は前記進入禁止エリアへの前記飛行体の接近を回避する接近回避対応をとる請求項1~4のいずれか一項に記載の飛行体制御システム。
【請求項6】
前記接近回避対応は、前記危険エリア又は前記進入禁止エリアに前記飛行体が近づかないように、前記ルート生成部で生成された前記回避飛行ルートを修正しつつ、当該回避飛行ルートに沿って前記飛行体を自動操縦により飛行させる対応である請求項5に記載の飛行体制御システム。
【請求項7】
前記飛行体の遠隔操縦に関する指令を送受信可能に構成された操縦機器を備え、
前記接近回避対応は、前記危険エリア又は前記進入禁止エリアに前記飛行体が近づかないように操縦者による前記飛行体の遠隔操縦に制限を加える対応である請求項5に記載の飛行体制御システム。
【請求項8】
前記飛行体の位置を検出する飛行体位置検出部と、
前記監視エリア内の風向及び風速を検出する風向風速検出部と、
前記飛行体の加速度を導出する飛行体加速度導出部と、を備えており、
前記落下予測エリア算出部は、前記飛行体位置検出部での検出結果、前記飛行体加速度導出部での導出結果、前記風向風速検出部での検出結果、前記飛行体の重量及び前記飛行体の受風面積を基に、前記落下予測エリアを算出する請求項5~7のいずれか一項に記載の飛行体制御システム。
【請求項9】
前記飛行管理部は、前記ルート生成部で生成された前記回避飛行ルートに沿って前記飛行体を自動操縦により飛行させる請求項1~8のいずれか一項に記載の飛行体制御システム。
【請求項10】
前記飛行体の遠隔操縦に関する指令を送受信可能に構成された操縦機器を備え、
前記飛行管理部は、前記ルート生成部で生成された前記回避飛行ルートを前記操縦機器を通じて操縦者に提示する請求項1~9のいずれか一項に記載の飛行体制御システム。
【請求項11】
前記監視エリア内の風向及び風速を検出する風向風速検出部を備えており、
前記危険エリア設定部は、前記飛行体側ガス検知部及び前記エリア側ガス検知部のうちの少なくともいずれか一方での検知結果並びに前記風向風速検出部での検出結果を基に前記危険エリアを設定する請求項1~10のいずれか一項に記載の飛行体制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視エリア内の設備の周囲に規定された進入禁止エリアの外側に設定される飛行ルートに沿って飛行体を飛行させ、設備を点検する飛行体制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス製造プラントや発電プラントなどのインフラ施設の健全性を維持する上で、これらの施設に設けられた各種設備の点検が必要不可欠である。近年、インフラ施設などの大規模施設の点検を行う際に、所謂ドローンを利用する試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、監視エリアに設けられた設備を点検して当該監視エリアを監視する無人飛行体及びその飛行制御方法が提案されている。
【0004】
この飛行制御方法は、設備を点検するために予め設定された飛行ルートに従って無人飛行体を飛行させるステップや、設備から漏洩した漏洩対象を無人飛行体に設けられたセンサにより検知するステップ、漏洩対象が漏洩したと判断された場合に無人飛行体の飛行が危険な危険エリアを決定するステップ、決定された危険エリアを回避する新たな飛行ルートを設定するステップ、設定された新たな飛行ルートに従って無人飛行体を飛行させるステップなどを行うようになっている。
【0005】
この飛行制御方法によれば、漏洩対象が漏洩した場合に、無人飛行体の飛行が危険な危険エリアを回避する新たな飛行ルートに従って無人飛行体を飛行させることができるため、例えば、漏洩対象が爆発性を有するガスである場合に、無人飛行体が防爆構造を有していなくとも、無人飛行体がガスの爆発を発生させることなく、簡単な構成で漏洩対象が漏洩しても安全に設備を点検することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-202682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ガス製造プラントなどの爆発性ガスを取り扱う施設における設備の点検を飛行体によって行う場合、爆発性ガスが存在するエリアへ飛行体が侵入すると、爆発が発生して甚大な災害が引き起こされる虞がある。そのため、より安全に飛行体を飛行させることが肝要である。
【0008】
ここで、上記特許文献1記載の飛行制御方法のように、危険エリアを避ける飛行ルートで飛行体を飛行させることで、設備の点検を比較的安全に行うことができるが、漏洩対象が爆発性ガスである場合、爆発が発生すると被害が甚大になり易いため、安全に飛行体を飛行させるための技術の改良が常に求められている。
【0009】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、飛行体をより安全な飛行ルートで飛行させることができる飛行体制御システムの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る飛行体制御システムの特徴構成は、
監視エリア内の設備の周囲に規定された進入禁止エリアの外側に設定される飛行ルートに沿って飛行体を飛行させ、前記設備を点検するための飛行体制御システムであって、
前記飛行体の飛行を管理する飛行管理部と、
前記飛行体に設けられ、爆発性ガスを検知する飛行体側ガス検知部及び、前記監視エリア内に設けられ、爆発性ガスを検知するエリア側ガス検知部のうちの少なくともいずれか一方と、
前記飛行体側ガス検知部及び前記エリア側ガス検知部のうちの少なくともいずれか一方での検知結果を基に、爆発性雰囲気が存在するか、または爆発性雰囲気が存在する虞のある危険エリアを設定する危険エリア設定部と、
前記飛行体側ガス検知部及び前記エリア側ガス検知部のうちの少なくともいずれか一方で検知した前記爆発性ガスの空気に対する比重が1よりも大きいか否かを判断する比重判断部と、
前記危険エリアを避ける前記飛行ルートとしての回避飛行ルートを生成するか否かを判断するルート生成要否判断部と、
前記ルート生成要否判断部において、前記回避飛行ルートを生成すると判断した場合に、ルート生成情報を基にして前記回避飛行ルートを生成するルート生成部と、を備えており、
前記ルート生成情報は、前記比重判断部での判断結果及び前記危険エリア設定部で設定された前記危険エリアを含み、
前記ルート生成部は、
前記比重判断部において前記比重が1よりも大きいと判断された場合に、飛行中の飛行ルートよりも前記飛行体の高度が高くなる高高度回避飛行ルートを前記回避飛行ルートとして生成し、
前記比重判断部において前記比重が1よりも大きくないと判断された場合に、飛行中の飛行ルートよりも前記飛行体の高度が低くなる低高度回避飛行ルートを前記回避飛行ルートとして生成する点にある。
【0011】
検知された爆発性ガスの比重が1よりも大きい場合、即ち、空気よりも重い場合、爆発性ガスは、より地表に近い位置に滞留・拡散するため、地表付近に存在する可能性が高くなる。逆に、爆発性ガスの比重が1よりも大きくない場合、即ち、空気よりも軽い場合、爆発性ガスは、上空に向けて拡散するため、地表付近に存在する可能性が低くなる。つまり、爆発性ガスの比重によって、当該爆発性ガスが存在する可能性が高い場所が変化する。
【0012】
上記特徴構成によれば、爆発性ガスの比重が1よりも大きい場合には、爆発性ガスが存在する可能性が高い地表から離れるように、高度が高い高高度回避飛行ルートを生成して当該高高度回避飛行ルートに沿って飛行体を飛行させることができる。また、爆発性ガスの比重が1よりも大きくない場合には、爆発性ガスが存在する可能性が低い地表に近づくように、高度が低い低高度回避飛行ルートを生成して当該低高度回避飛行ルートに沿って飛行体を飛行させることができる。したがって、従来よりも安全に飛行体を飛行させることができる。
【0013】
尚、本願において、「飛行体を飛行させる」とは、飛行管理部による自動操縦により飛行体を飛行させる態様、及び操縦者による遠隔操縦により飛行体を飛行させる態様の双方を含む概念である。
【0014】
本発明に係る飛行体制御システムの更なる特徴構成は、
前記ルート生成部は、
前記高高度回避飛行ルートとして、高度を高くした元来た飛行ルートに沿って現在地から発着場へ向かう第1高高度帰還飛行ルート、及び前記第1高高度帰還飛行ルートとは異なる経路で現在地から発着場へ向かう第2高高度帰還飛行ルートのうちのいずれか一方を生成し、
前記低高度回避飛行ルートとして、高度を低くした元来た飛行ルートに沿って現在地から発着場へ向かう第1低高度帰還飛行ルート、及び前記第1低高度帰還飛行ルートとは異なる経路で現在地から発着場へ向かう第2低高度帰還飛行ルートのうちのいずれか一方を生成する点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、第1高高度帰還飛行ルートや第1低高度帰還飛行ルートを生成することができるため、爆発性ガスが存在する可能性が低い高度を通りつつ、これまで飛行してきた比較的安全と考えられる飛行ルートと上方から視た経路(平面視経路)が略同じ飛行ルートで飛行体が発着場に帰還できる。また、第1高高度帰還飛行ルートや第1低高度帰還飛行ルートとは異なる経路を通る第2高高度帰還飛行ルートや第2低高度帰還飛行ルートを生成することができるため、これまで飛行してきた飛行ルート上に危険エリアが設定されたような場合、即ち、第1高高度帰還飛行ルートや第1低高度帰還飛行ルートに沿って飛行体を飛行させることが難しい場合でも、危険エリアを避けた飛行ルートで飛行体が発着場に帰還できる。尚、「高度を高く(低く)した元来た飛行ルート」とは、高度が変更されていれば、平面視経路が元来た飛行ルートと完全に一致する経路を通る飛行ルートのみ意味するものではなく、元来た飛行ルートよりも高く(低く)した経路であって、平面視経路が元来た飛行ルートとほぼ同じである経路を通る飛行ルートを意味する。
【0016】
また、本発明に係る飛行体制御システムの更なる特徴構成は、
前記飛行体が前記危険エリア又は前記進入禁止エリアに落下する、或いは落下する虞がある回避エリアを設定する回避エリア設定部を備えており、
前記回避エリア設定部で設定された前記回避エリアが前記ルート生成情報の一つである点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、回避飛行ルートの生成に、比重判断部での判断結果や設定された危険エリアに加え、設定された回避エリアを使用する。したがって、ルート生成部で生成される回避飛行ルートは、当該回避飛行ルートに沿って飛行体が飛行している際に、飛行体が落下したとしても危険エリアや進入禁止エリアに落下し難いルートになる。よって、上記特徴構成によれば、危険エリア内や進入禁止エリア内への侵入が起こり難い安全なルートで飛行体を飛行させることができる。
【0018】
また、本発明に係る飛行体制御システムの更なる特徴構成は、
前記飛行体の位置を検出する飛行体位置検出部と、
前記監視エリア内の風向及び風速を検出する風向風速検出部と、
前記飛行体の加速度を導出する飛行体加速度導出部と、を備えており、
前記回避エリア設定部は、前記飛行体位置検出部での検出結果、前記飛行体加速度導出部での導出結果、前記風向風速検出部での検出結果、前記飛行体の重量及び前記飛行体の受風面積を基に、前記回避エリアを設定する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、回避エリアを精度良く設定できる。
【0020】
また、本発明に係る飛行体制御システムの更なる特徴構成は、
前記飛行体の落下予測エリアを算出する落下予測エリア算出部と、
前記落下予測エリア算出部で算出された前記落下予測エリアが、前記危険エリア設定部によって設定された前記危険エリア内又は前記進入禁止エリア内であるか否かを判断する落下エリア判断部と、を備えており、
前記飛行管理部は、
前記落下エリア判断部において、前記落下予測エリアが前記危険エリア内又は前記進入禁止エリア内であると判断した場合に、前記危険エリア又は前記進入禁止エリアへの前記飛行体の接近を回避する接近回避対応をとる点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、飛行途中で落下予測エリアが危険エリア内又は進入禁止エリア内となるような事態が生じた場合に、接近回避対応をとって飛行体を危険エリアや進入禁止エリアに近づけないようにできるため、実際に飛行体が落下するような事態が発生しても、飛行体が危険エリア内に落下する可能性を低くできる。
【0022】
また、本発明に係る飛行体制御システムの更なる特徴構成は、
前記接近回避対応は、前記危険エリア又は前記進入禁止エリアに前記飛行体が近づかないように、前記ルート生成部で生成された前記回避飛行ルートを修正しつつ、当該回避飛行ルートに沿って前記飛行体を自動操縦により飛行させる対応である点にある。
【0023】
飛行体を飛行させている途中で、強風が吹き始めたこと等に起因して落下予測エリアが危険エリア内又は進入禁止エリアとなるような事態が生じる場合がある。上記特徴構成によれば、落下予測エリアが危険エリアや進入禁止エリアに入らないように修正した回避飛行ルートに沿って自動操縦により飛行体を飛行させることができるため、飛行体を危険エリアや進入禁止エリアに近づけないようにしつつ、飛行体を飛行させることができる。例えば、操縦者による遠隔操縦によって飛行体を飛行させている場合であれば、修正した回避飛行ルートに沿った自動操縦に切り替わることで、操縦者の誤操作等に起因する危険エリアや進入禁止エリアへの飛行体の接近を防止できる。したがって、飛行体を危険エリアや進入禁止エリアに近づけないようにしつつ、飛行体を飛行させることができる。
【0024】
尚、回避飛行ルートを修正する態様としては、ルート生成部が生成した回避飛行ルートに可能な限り沿いつつ、当該回避飛行ルートのうち、飛行体の落下予測エリアが危険エリア内及び進入禁止エリア内となるような部分を危険エリアや進入禁止エリアから遠ざけるように修正する態様を例示できる。
【0025】
また、本発明に係る飛行体制御システムの更なる特徴構成は、
前記飛行体の遠隔操縦に関する指令を送受信可能に構成された操縦機器を備え、
前記接近回避対応は、前記危険エリア又は前記進入禁止エリアに前記飛行体が近づかないように操縦者による前記飛行体の遠隔操縦に制限を加える対応である点にある。
【0026】
上記特徴構成によれば、操縦者による遠隔操縦によって飛行体を飛行させている途中で落下予測エリアが危険エリア内又は進入禁止エリア内となるような事態が生じた場合に、遠隔操縦に制限が加えられる。そのため、操縦者が誤って飛行体を危険エリアや進入禁止エリアに接近させるような操作を行ったとしても、当該操作が制限され、危険エリアや進入禁止エリアへの飛行体の接近を防止でき、飛行体を危険エリアに近づけないように飛行させることができる。
【0027】
また、本発明に係る飛行体制御システムの更なる特徴構成は、
前記飛行体の位置を検出する飛行体位置検出部と、
前記監視エリア内の風向及び風速を検出する風向風速検出部と、
前記飛行体の加速度を導出する飛行体加速度導出部と、を備えており、
前記落下予測エリア算出部は、前記飛行体位置検出部での検出結果、前記飛行体加速度導出部での導出結果、前記風向風速検出部での検出結果、前記飛行体の重量及び前記飛行体の受風面積を基に、前記落下予測エリアを算出する点にある。
【0028】
上記特徴構成によれば、落下予測エリアを精度良く算出できる。
【0029】
また、本発明に係る飛行体制御システムの更なる特徴構成は、
前記飛行管理部は、前記ルート生成部で生成された前記回避飛行ルートに沿って前記飛行体を自動操縦により飛行させる点にある。
【0030】
上記特徴構成によれば、回避飛行ルートに沿った自動操縦によって、飛行体を従来よりも安全に飛行させることができる。
【0031】
また、本発明に係る飛行体制御システムの更なる特徴構成は、
前記飛行体の遠隔操縦に関する指令を送受信可能に構成された操縦機器を備え、
前記飛行管理部は、前記ルート生成部で生成された前記回避飛行ルートを前記操縦機器を通じて操縦者に提示する点にある。
【0032】
上記特徴構成によれば、上記特徴構成によれば、回避飛行ルートが提示された操縦者による当該回避飛行ルートに沿った遠隔操縦によって、飛行体を従来よりも安全に飛行させることができる。
【0033】
また、本発明に係る飛行体制御システムの更なる特徴構成によれば、
前記監視エリア内の風向及び風速を検出する風向風速検出部を備えており、
前記危険エリア設定部は、前記飛行体側ガス検知部及び前記エリア側ガス検知部のうちの少なくともいずれか一方での検知結果並びに前記風向風速検出部での検出結果を基に前記危険エリアを設定する点にある。
【0034】
上記特徴構成によれば、危険エリアを精度良く設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本実施形態に係る飛行体制御システムの概要を示す図である。
図2】本実施形態に係る飛行体制御システムの概略構成を示す図である。
図3】危険エリアの一例を示す図である。
図4】回避エリアの一例を示す図である。
図5】落下予測エリアの位置が変化する一例を示す図である。
図6】第1高高度帰還飛行ルート及び第2高高度帰還飛行ルートの一例を示す図である。
図7】第1低高度帰還飛行ルート及び第2低高度帰還飛行ルートの一例を示す図である。
図8】第1高高度帰還飛行ルート及び第1低高度帰還飛行ルートの一例を示す図である。
図9】第2高高度帰還飛行ルート及び第2低高度帰還飛行ルートの一例を示す図である。
図10】飛行体制御システムにおける処理フローを説明するためのフローチャートである。
図11】飛行体制御システムにおける処理フローを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る飛行体制御システムについて説明する。
【0037】
〔飛行体制御システムの概要〕
本実施形態に係る飛行体制御システムは、図1に示すように、監視エリアA内の設備Bの周囲に規定された進入禁止エリアCの外側に設定される飛行ルートに沿って飛行体10を飛行させ、設備Bを点検するためのシステムであって、監視エリアA内で爆発性ガスの漏洩が起こった場合には、この爆発性雰囲気が存在する或いは爆発性雰囲気が存在する虞がある危険エリアDを回避する回避飛行ルートRaを生成し、既存飛行ルートReに代えて、生成した回避飛行ルートRaに沿って飛行体10を飛行させるシステムである。
【0038】
尚、本実施形態において、監視エリアAは爆発性ガスを扱うガス関連プラントであるが、これに限られるものではなく、爆発性ガスを扱う施設が広く監視エリアとなり得る。また、既存飛行ルートReは、設備Bを点検するためのルートであって、点検する設備Bの数や種類、位置に応じて予め設定されるものであり、本実施形態では、1つの設備Bを点検するために予め設定されたものである。また、進入禁止エリアCとは、設備Bの種類によって当該設備Bの周囲に予め設定されるものである。既存飛行ルートRe及び回避飛行ルートRaは、飛行体10が進入禁止エリアC内に侵入しないように、設備Bに対して少なくとも所定の離隔距離以上離れた位置を通るように設定・生成される。
【0039】
〔飛行体制御システムの構成〕
図1及び図2に示すように、本実施形態における飛行体制御システムは、監視エリアA内を飛行する飛行体10と、外部から飛行体10を制御する管理サーバ20と、飛行体10の遠隔操縦が可能な操縦機器40とを備えており、飛行体10と管理サーバ20と操縦機器40との間では各種情報や操作指令に係る信号を送受信できるようになっている。
【0040】
また、監視エリアA内には、爆発性ガスを検知する3つのエリア側ガスセンサ16a,16b,16c(エリア側ガス検知部)及び監視エリアA内の風向及び風速を検出する3つの風向風速計17a,17b,17c(風向風速検出部)が設置されており、エリア側ガスセンサ16a,16b,16c及び風向風速計17a,17b,17cと、管理サーバ20及び操縦機器40との間では各種情報に係る信号を送受信できるようになっている。
【0041】
図2に示すように、飛行体10は、爆発性ガスを検知する飛行体側ガスセンサ11(飛行体側ガス検知部)と、飛行体10の位置を検出するための衛星測位用受信機12(飛行体位置検出部)と、飛行体10の加速度を導出するための加速度センサ13(飛行体加速度導出部)と、管理サーバ20及び操縦機器40と無線通信可能な飛行体側通信ユニット14と、各種情報処理を行う飛行体側制御部15とを備えている。
【0042】
飛行体側ガスセンサ11は、検知した爆発性ガスの種類に基づく検知データを飛行体側制御部15に送信する。尚、爆発性ガスとは、都市ガスに含まれるメタン等や、アンモニア、フロンなどであり、本実施形態における飛行体側ガスセンサ11は、都市ガスに含まれるメタン等や、アンモニア、フロンを判別可能に構成されている。
【0043】
衛星測位用受信機12は、全球測位衛星システムからの信号を受信して、受信した信号に基づく飛行体10の位置(平面位置及び高度)を示す測位データを飛行体側制御部15に送信する。尚、本実施形態における全球測位衛星システムとしては、飛行体10の平面位置及び高度を示す測位データを生成するもの可能であれば、特に制限されるものではない。
【0044】
加速度センサ13は、飛行体10の加速度を導出して飛行体側制御部15に送信する。
【0045】
飛行体側通信ユニット14は、管理サーバ20及び操縦機器40にそれぞれ設けられた各通信ユニット21,42と各種通信を相互に行うように構成されている。
【0046】
飛行体側制御部15は、衛星測位用受信機12が生成した測位データに基づいて、飛行体10の空間座標を経時的に算出し、算出した空間座標及び時刻を含む位置情報を生成する機能部や、飛行体側ガスセンサ11での検知データに基づき爆発性ガスの種類を特定してガス情報を生成する機能部の他、飛行体10の飛行に必要なロータなどの動作部を制御する機能部などを備えている。つまり、飛行体側制御部15は、各機能部に対応するプログラムを記憶するROMやRAMなどのメモリと、このプログラムを実行するCPUとを備えており、プログラムがCPUによって実行されることにより、各機能部の機能が実現される。後述するサーバ側制御部22及び機器側制御部43についても同様である。尚、上記ガス情報、並びに、飛行体10の位置情報及び加速度は、適宜管理サーバ20及び操縦機器40へ送信される。
【0047】
このように、本実施形態において、飛行体側ガス検知部としての飛行体側ガスセンサ11、飛行体位置検出部としての衛星測位用受信機12及び飛行体加速度導出部としての加速度センサ13は、飛行体10に設けられている。
【0048】
図2に示すように、監視エリアA内に設けられた各エリア側ガスセンサ16a,16b,16cは、ガスを検知するセンサ部や、ガス情報を生成する制御部、ガス情報を管理サーバ20や操縦機器40へ送信する通信ユニットなどを備えている。このエリア側ガスセンサ16a,16b,16cによれば、検知した爆発性ガスの種類に基づく検知データが制御部に送信され、検知データに基づいて爆発性ガスの種類が特定され、ガス情報が生成される。そして、当該生成されたガス情報が管理サーバ20や操縦機器40へ適宜送信される。
【0049】
図2に示すように、監視エリアA内に設けられた各風向風速計17a,17b,17cは、風向及び風速を検出する検出部や、風向風速情報を管理サーバ20や操縦機器40へ送信する通信ユニットなどを備えている。この風向風速計17a,17b,17cによれば、検出した風向及び風速が風向風速情報として管理サーバ20や操縦機器40へ適宜送信される。
【0050】
図2に示すように、管理サーバ20は、飛行体10及び操縦機器40と無線通信可能なサーバ側通信ユニット21と、各種情報処理を行うサーバ側制御部22とを備えている。サーバ側通信ユニット21は、飛行体側通信ユニット14と同様の構成を備えており、飛行体10及び操縦機器40の各通信ユニット14,42と各種通信を相互に行う。
【0051】
サーバ側制御部22は、比重判断部30と、危険エリア設定部23と、ルート生成要否判断部24と、落下予測エリア算出部25と、回避エリア設定部26と、落下エリア判断部27と、ルート生成部31と、飛行管理部32と、記憶部33とを備えている。
【0052】
比重判断部30は、飛行体側ガスセンサ11及び3つのエリア側ガスセンサ16a,16b,16cのうちの少なくともいずれか一方で検知した爆発性ガスの空気に対する比重が1よりも大きいか否かを判断する機能部である。具体的に、本実施形態における比重判断部30は、飛行体側ガスセンサ11及び3つのエリア側ガスセンサ16a,16b,16cのうちのいずれかによって爆発性ガスが検知された際に、飛行体10又はエリア側ガスセンサ16a,16b,16cから送信されるガス情報、及び後述する記憶部33に格納されたデータベース中の各種爆発性ガスの空気に対する比重を基に、検知された爆発性ガスの空気に対する比重が1よりも大きいか否かを判断する。
【0053】
危険エリア設定部23は、飛行体側ガスセンサ11及び3つのエリア側ガスセンサ16a,16b,16cのうちの少なくともいずれかでの検知結果を基に、危険エリアDを設定する機能部である。具体的に、本実施形態における危険エリア設定部23は、飛行体側ガスセンサ11及び3つのエリア側ガスセンサ16a,16b,16cのうちのいずれかによって爆発性ガスが検知された際に、飛行体10又はエリア側ガスセンサ16a,16b,16cから送信されるガス情報、及び風向風速計17a,17b,17cから送信される風向風速情報を基に危険エリアDを設定する。より具体的に、危険エリア設定部23は、爆発性ガスの種類や、爆発性ガスが検知された箇所の周囲の風向及び風速を基に、爆発性ガスが今後どのように拡散するかをシミュレートして危険エリアDを設定する。尚、図3には、エリア側ガスセンサ16aによって爆発性ガスが検知された際に設定される危険エリアDの一例を示した。同図3においては、紙面に向かって左斜め上から右斜め下に向かって所定風速の風W(図3中の矢印)が吹いている場合に設定される危険エリアDを例示した。この場合、エリア側ガスセンサ16aによって検知された爆発性ガスは、風Wの風下に流され易く拡散し易いため、危険エリアDは、エリア側ガスセンサ16aを中心に紙面に向かって右斜め下側ほど大きくなるように設定される。
【0054】
ルート生成要否判断部24は、危険エリアDを避ける飛行ルートとしての回避飛行ルートRaを生成するか否かを判断する機能部である。例えば、ルート生成要否判断部24は、爆発性ガスが検知されて危険エリアDが設定された際に、危険エリアDが現在飛行している飛行ルート(既存飛行ルートRe或いは既に回避飛行ルートが生成されている場合には当該回避飛行ルートRa)の先に存在する場合などに、回避飛行ルートRaを生成すると判断する。逆に言えば、本実施形態のルート生成要否判断部24は、爆発性ガスが検知されていない場合や、爆発性ガスが検知された場合であっても設定された危険エリアDが現在飛行している飛行ルートの先に存在しない場合には、回避飛行ルートRaを生成しないと判断する。尚、後述するように、本実施形態においては、危険エリアDや進入禁止エリアCの周囲に回避エリアFが設定されるため、現在飛行しているルートの先に回避エリアFが存在する場合に、回避飛行ルートRaを生成すると判断する。
【0055】
落下予測エリア算出部25は、飛行体10の落下予測エリアEを算出する機能部である。本実施形態において、落下予測エリア算出部25は、飛行体10の位置情報、加速度、重量及び受風面積、並びに風向風速情報に基づいて、落下予測エリアEを算出する。尚、飛行体10の重量及び受風面積は、記憶部33に予め記憶されているものを適宜使用する。このように、本実施形態においては、落下予測エリアEを算出する際に複数の情報を使用しているため、落下予測エリアEを精度良く算出することができる。
【0056】
ここで、落下予測エリアEの算出は、以下の式1~式3を用いて行うことができる。尚、式1において、Fは飛行体10が受ける空気抵抗、ρは風の密度、Cは抵抗係数、(v-u)は相対速度、Aは飛行体10の受風面積であり、式2において、aは飛行体10の加速度、mは飛行体10の重量であり、式3において、tは時間(秒)、Lはt秒間で飛行体10が移動する水平距離である。
(式1)
F=ρC(v-u)×A/2
(式2)
a=F/m
(式3)
L=(at)/2
【0057】
具体的に、本実施形態の落下予測エリア算出部25は、飛行体10の高度や加速度センサ13により導出された加速度を基に、上記式3を基に落下予測エリアEを算出する。即ち、落下予測エリア算出部25は、飛行体10の高度を基に上記式3におけるtを自由落下の場合或いは空気抵抗を加味した場合の少なくともいずれかの場合について算出した上で、式3を基に飛行体10が水平移動する距離を算出する。そして、落下予測エリア算出部25は、地表における、算出した水平距離分だけ飛行体10が移動した地点の真下を落下予測点とし、その周辺を落下予測エリアEとして算出する。尚、本実施形態における落下予測エリア算出部25は、回避飛行ルートRaに沿って飛行している飛行体10が所定の場所に帰還するまで一定間隔で落下予測エリアEを算出する。また、本実施形態において、加速度センサ13により得られる加速度には、上記式1や式2のパラメータの影響が加味されており、落下予測エリアEの算出に位置情報、重量及び受風面積、並びに風向風速情報が実質的に用いられた状態となっている。
【0058】
回避エリア設定部26は、飛行体10が危険エリアD又は進入禁止エリアCに落下する、或いは落下する虞がある回避エリアFを設定する機能部である。本実施形態において、回避エリア設定部26は、飛行体10の位置情報、加速度、重量、及び受風面積、並びに風向風速情報に基づいて、回避エリアFを設定する。このように、本実施形態においては、回避エリアFを設定する際に複数の情報を使用しているため、回避エリアFを精度良く設定することができる。尚、落下予測エリアEの算出と同様に、飛行体10の重量及び受風面積は、記憶部33に予め記憶されているものを適宜使用する。
【0059】
具体的に、本実施形態における回避エリア設定部26は、回避エリアF設定時点での状況(飛行体10の高度や風速、風向等)の下で飛行体10が飛行した場合に、上記式1~式3を基に算出される落下予測エリアEが、危険エリアD又は進入禁止エリアCと少なくとも被る状態で飛行体10が飛行することになるエリアを回避エリアFとして、危険エリアD及び進入禁止エリアCの周囲に設定する。尚、回避エリアFを設定するために算出される落下予測エリアEは、回避エリアF設定時点での飛行体10の位置情報や、加速度、風向風速情報に基づいて算出される。
【0060】
より具体的に、本実施形態における回避エリア設定部26は、図4に示すように、危険エリア設定部23で設定された危険エリアD及び予め規定された進入禁止エリアCの周囲に設定される。例えば、図4には、紙面に向かって左斜め上から右斜め下に向かって所定風速の風W(図4中の矢印)が吹いている場合に設定される回避エリアFを例示した。この場合、飛行体10は風Wの風下に流され易いため、回避エリアFは、危険エリアDや進入禁止エリアCの紙面に向かって左斜め上側ほど大きくなるように設定される。
【0061】
本実施形態においては、後述するように、回避エリア設定部26によって設定された回避エリアFがルート生成情報として利用され、ルート生成部31によって回避飛行ルートRaが生成される。即ち、ルート生成部31で生成される回避飛行ルートRaは、当該回避飛行ルートに沿って飛行する飛行体10が落下したとしても危険エリアDや進入禁止エリアCに落下し難いルートになる。したがって、本実施形態に係る飛行体制御システムによれば、落下したとしても危険エリアD内や進入禁止エリアC内への侵入が起こり難い安全なルートで飛行体10を飛行させることができる。
【0062】
落下エリア判断部27は、落下予測エリア算出部25で算出された落下予測エリアEが、危険エリア設定部23によって設定された危険エリアD内又は進入禁止エリアC内であるか否かを判断する機能部である。例えば、図5に示すように、飛行体10が回避飛行ルートRaに沿って飛行している最中に、風向や風速が回避エリアF設定時(図4参照)から変化し、回避エリアFの外側を飛行しているにもかかわらず、落下予測エリアEが危険エリアD内や進入禁止エリアC内に位置してしまう場合がある。このような場合に、落下エリア判断部27は、落下予測エリアEが危険エリアD内又は進入禁止エリアC内であると判断する。
【0063】
ルート生成部31は、ルート生成要否判断部24において、回避飛行ルートRaを生成すると判断した場合に、ルート生成情報を基にして回避飛行ルートRaを生成する機能である。本実施形態において、ルート生成部31は、ルート生成情報として、比重判断部30での判断結果、設定された危険エリアDに加え、飛行体10の位置(平面位置及び高度)、風向風速情報、飛行体10が飛行してきたルート(既存飛行ルートReを飛行しているのであれば当該既存飛行ルートRe、回避飛行ルートRaを飛行しているのであれば当該回避飛行ルートRa)、及び設定された回避エリアFを基に回避飛行ルートRaを生成する。また、ルート生成部31は、回避飛行ルートRaを生成する際に、予め記憶部33に記憶された3Dマップを基に、設備Bなどの位置座標を3Dマップから参照し、これをルート生成情報として利用する。
【0064】
具体的に、本実施形態におけるルート生成部31は、回避飛行ルートRaとして、飛行中の飛行ルート(既存飛行ルートReを飛行している場合には当該既存飛行ルートRe、回避飛行ルートRaを飛行している場合には当該回避飛行ルートRa)よりも飛行体10の高度が高くなる高高度回避飛行ルートRah、及び飛行中の飛行ルート(既存飛行ルートRe又は回避飛行ルートRa)よりも飛行体10の高度が低くなる低高度回避飛行ルートRalのいずれか一方を生成する。
【0065】
より具体的に、ルート生成部31は、高高度回避飛行ルートRahとして、元来た飛行ルート(即ち、既存飛行ルートReを飛行している場合には当該既存飛行ルートRe、回避飛行ルートRaを飛行している場合には当該回避飛行ルートRa)よりも高度を高くした元来た飛行ルート(高度を高くした元来た飛行ルート)に沿って現在地から発着場Pへ向かう第1高高度帰還飛行ルートRrh1、及び第1高高度帰還飛行ルートRrh1とは異なる経路で現在地から発着場Pへ向かう第2高高度帰還飛行ルートRrh2のうちのいずれか一方を生成する。即ち、第1高高度帰還飛行ルートRrh1は、これまで飛行してきた比較的安全と考えられる飛行ルートと上方から視た経路(平面視経路)が略同じ飛行ルートであって、側方から視た経路(側方視経路)がこれまで飛行してきた飛行ルートよりも高度の高い経路を通る飛行ルートである。また、第2高高度帰還飛行ルートRrh2は、平面視経路が第1高高度帰還飛行ルートRrh1と異なる経路を通り、側方視経路がこれまで飛行してきた飛行ルートよりも高度の高い経路を通る飛行ルートである。
【0066】
また、ルート生成部31は、低高度回避飛行ルートRalとして、元来た飛行ルート(既存飛行ルートRe又は回避飛行ルートRa)よりも高度を低くした元来た飛行ルート(高度を低くした元来た飛行ルート)に沿って現在地から発着場Pへ向かう第1低高度帰還飛行ルートRrl1、及び第1低高度帰還飛行ルートRrl1とは異なる経路で現在地から発着場Pへ向かう第2低高度帰還飛行ルートRrl2のうちのいずれか一方を生成する。即ち、第1低高度帰還飛行ルートRrl1は、これまで飛行してきた比較的安全と考えられる飛行ルートと上方から視た経路(平面視経路)が略同じ飛行ルートであって、側方から視た経路がこれまで飛行してきた飛行ルートよりも高度の低い経路を通る飛行ルートである。また、第2低高度帰還飛行ルートRrl2は、平面視経路が第1低高度帰還飛行ルートRrl1と異なる経路を通り、側方視経路がこれまで飛行してきた飛行ルートよりも高度の低い経路を通る飛行ルートである。
【0067】
尚、図6には、第1高高度帰還飛行ルートRrh1及び第2高高度帰還飛行ルートRrh2の一例を水平方向から視た状態を模式的に示し、図7には、第1低高度帰還飛行ルートRrl1及び第2低高度帰還飛行ルートRrl2の一例を水平方向から視た状態を模式的に示した。同図6及び図7における網掛け部分は、滞留・拡散した爆発性ガスである。また、図8には、第1高高度帰還飛行ルートRrh1及び第1低高度帰還飛行ルートRrl1の一例を上空から見た状態を模式的に示し、図9には、第2高高度帰還飛行ルートRrh2及び第2低高度帰還飛行ルートRrl2の一例を上空から見た状態を模式的に示した。尚、同図8及び図9では、回避エリアFについて図示を省略したが、第1高高度帰還飛行ルートRrh1、第1低高度帰還飛行ルートRrl1、第2高高度帰還飛行ルートRrh2及び第2低高度帰還飛行ルートRrl2は、当然のことながら、回避エリアFが設定されている場合、回避エリアFの外側を通るルートとして生成される。また、図6図9において、既存飛行ルートRe上におけるX地点が各飛行ルートRrh1,Rrh2,Rrl1,Rrl2の始点である。
【0068】
尚、第1高高度帰還飛行ルートRrh1、第2高高度帰還飛行ルートRrh2、第1低高度帰還飛行ルートRrl1及び第2低高度帰還飛行ルートRrl2のうちいずれを生成するかは、比重判断部30での判断結果や、元来た飛行ルート上における危険エリアD及び回避エリアFの有無などを基に判断する。例えば、比重判断部30において、検知された爆発性ガスの空気に対する比重が1よりも大きいと判断された場合、元来た飛行ルート上に危険エリアDや回避エリアFが存在しないのであれば、第1高高度帰還飛行ルートRrh1を生成すると判断し、元来た飛行ルート上に危険エリアDや回避エリアFが存在するのであれば、第2高高度帰還飛行ルートRrh2を生成すると判断する。一方、検知された爆発性ガスの空気に対する比重が1よりも大きくない(即ち、1以下である)と判断された場合、元来た飛行ルート上に危険エリアDや回避エリアFが存在しないのであれば、第1低高度帰還飛行ルートRrl1を生成すると判断し、元来た飛行ルート上に危険エリアDや回避エリアFが存在するのであれば、第2低高度帰還飛行ルートRrl2を生成すると判断する。尚、本実施形態においては、危険エリアDや進入禁止エリアCの周囲に回避エリアFが設定されるため、元来た飛行ルート上に回避エリアFが存在するか否かを基に、第1高高度帰還飛行ルートRrh1及び第2高高度帰還飛行ルートRrh2のいずれを生成するか、第1低高度帰還飛行ルートRrl1及び第2低高度帰還飛行ルートRrl2のいずれを生成するかを判断する。また、元来た飛行ルートとは、これまで飛行してきたルート(既存飛行ルートReを飛行していた場合には当該既存飛行ルートRe、回避飛行ルートRaを飛行していた場合には当該回避飛行ルートRa)のうち、発着場Pから現在地までの部分である。
【0069】
ここで、検知された爆発性ガスの比重が1よりも大きい場合、即ち、空気よりも重い場合、爆発性ガスは、より地表に近い位置に滞留・拡散するため、地表付近に存在する可能性が高くなる。逆に、爆発性ガスの比重が1よりも大きくない場合、即ち、空気よりも軽い場合、爆発性ガスは、上空に向けて拡散するため、地表付近に存在する可能性が低くなる。つまり、爆発性ガスの比重によって、当該爆発性ガスが存在する可能性が高い場所が変化する。本実施形態においては、ルート生成部31が、第1高高度帰還飛行ルートRrh1、第2高高度帰還飛行ルートRrh2、第1低高度帰還飛行ルートRrl1及び第2低高度帰還飛行ルートRrl2のいずれを生成するのが最適かを判断した上で、危険エリアDを回避しながら帰還するための飛行ルートを生成できる。即ち、爆発性ガスの比重が1よりも大きい場合には、爆発性ガスが存在する可能性が高い地表から離れるように、高度が高い飛行ルートRrh1,Rrh2を生成して当該飛行ルートRrh1,Rrh2に沿って飛行体を飛行させることができる。また、爆発性ガスの比重が1よりも大きくない場合には、爆発性ガスが存在する可能性が低い地表に近づくように、高度が低い飛行ルートRrl1,Rrl2を生成して当該飛行ルートRrl1,Rrl2に沿って飛行体を飛行させることができる。したがって、従来よりも安全に飛行体を飛行させることができる。
【0070】
飛行管理部32は、飛行体10の飛行を管理する機能部である。本実施形態において、飛行管理部32は、ルート生成部31で生成された回避飛行ルートRaや予め規定された既存飛行ルートReに沿って飛行体を自動操縦により飛行させる場合と、当該回避飛行ルートRaや既存飛行ルートReを操縦機器40を通じて操縦者Hに提示する場合とを、操縦者Hによるサーバ側制御部22への入力や、落下エリア判断部27での判断結果等を基に適宜変更する。例えば、設備Bの点検を飛行体10の自動操縦により行うために、操縦者Hがその旨をサーバ側制御部22に入力した場合、飛行管理部32は、飛行体10の自動操縦に係る信号を適宜飛行体10に送信し、飛行体10を自動操縦により飛行させる。一方、操縦者Hによる遠隔操縦を主として飛行体10を飛行させて設備Bの点検を行う場合、飛行管理部32は、点検開始前に、操縦者Hが飛行体10を既存飛行ルートReに沿って飛行させるために、当該既存飛行ルートReを操縦者Hに提示し、また、ルート生成部31で回避飛行ルートRaが生成されると、操縦者Hが飛行体10を回避飛行ルートRaに沿って飛行させるために、当該回避飛行ルートRaを操縦者Hに提示する。
【0071】
また、本実施形態における飛行管理部32は、落下エリア判断部27において、落下予測エリアEが危険エリアD内又は進入禁止エリアC内であると判断した場合に、危険エリアDや進入禁止エリアC内への飛行体10の接近を回避する接近回避対応をとる。このように、飛行管理部32が接近回避対応をとるように構成されていることで、飛行途中で落下予測エリアEが危険エリアD内や進入禁止エリアC内となるような事態が生じた場合に、接近回避対応をとって飛行体10を危険エリアDや進入禁止エリアCに近づけないようにできる。そのため、実際に飛行体10が落下するような事態が発生しても、飛行体10が危険エリアD内や進入禁止エリアC内に落下する可能性を低くできる。
【0072】
尚、接近回避対応とは、危険エリアDや進入禁止エリアCに飛行体10が近づかないように、ルート生成部31で生成された回避飛行ルートRaを修正しつつ、当該回避飛行ルートRaに沿って飛行体10を自動操縦により飛行させる対応であり、本実施形態において、回避飛行ルートRaが生成されていない場合には、現在飛行している飛行ルート(即ち、既存飛行ルートRe)を修正しつつ、当該飛行ルートに沿って飛行体10を自動操縦により飛行させる。このようにすれば、操縦者Hによる遠隔操縦によって飛行体10を飛行させている場合であっても、回避飛行ルートRaや既存飛行ルートReを修正しつつ、修正したこれらの飛行ルートRa,Reに沿った自動操縦に切り替わり、操縦者Hの誤操作等に起因する危険エリアDや進入禁止エリアCへの飛行体10の接近を防止して、飛行体10を飛行させることができる。
【0073】
記憶部33は、各種情報を記憶する機能部である。本実施形態において、記憶部33には、既存飛行ルートReや、監視エリアの3Dマップ、設備Bについて予め規定された進入禁止エリアCの大きさ、飛行体10に関する情報(重量や受風面積)、爆発性ガスの空気に対する比重などの情報がまとめられたデータベースなどが予め記憶されている。また、記憶部33には、設定された危険エリアDや回避エリアFの位置・大きさ、生成された回避飛行ルートRaなどが適宜記憶される。
【0074】
図1及び図2に示すように、操縦機器40は、所定の情報を表示可能な表示部41や、管理サーバ20及び飛行体10と無線通信可能な機器側通信ユニット42、表示部41に所定の情報を表示させるための機能部や飛行体10を遠隔操作するための機能部の他、操縦機器40に必要な各種動作を行うための機能を実行する機能部を有した機器側制御部43を備えている。機器側通信ユニット42は、飛行体側通信ユニット14及びサーバ側通信ユニット21と同様の構成を備えており、飛行体10及び管理サーバ20の各通信ユニット14,21と相互に各種通信を行う。また、本実施形態において、操縦機器40の機器側制御部43は、操縦機器40に設けられる衛星測位用受信機(図示せず)が生成した測位データを基に、当該操縦機器40の位置情報を生成する機能部(図示せず)を備えている。そして、生成された位置情報は管理サーバ20に送信される。
【0075】
本実施形態において、表示部41には、監視エリアAの二次元マップや三次元マップ、サーバ側制御部22から送信された回避飛行ルートRa、爆発性ガスの漏洩が発生したことを知らせる警告画面、危険エリアDや回避エリアFの位置・範囲、遠隔操縦に必要な操作画面、点検継続の可否をサーバ側制御部22に送信するための入力画面などが表示される。
【0076】
〔飛行体制御システムの処理フロー〕
次に、以上の構成を備えた飛行体制御システムの処理フローについて、図10及び図11を参照しつつ説明する。尚、以下においては、主として飛行管理部32による自動操縦によって飛行体10を飛行させて設備Bの点検を行う場合を例にとって説明する。
【0077】
まず、既存飛行ルートReに沿った飛行体10の飛行を開始させる(工程#1)。次に、飛行体側ガスセンサ11又はエリア側ガスセンサ16a,16b,16cによって爆発性ガスが検知されたか否かが判断される(工程#2)。そして、爆発性ガスが検知された場合(工程#2:Yes)にはアラートが発報される(工程#3)。一方、爆発性ガスが検知されていない場合(工程#2:No)には、現在飛行している飛行ルートに沿った飛行が継続され(工程#4)、工程#20へ移行する。尚、本実施形態において、「アラートが発報される」とは、例えば、操縦機器40の表示部41に爆発性ガスが検知されたことを知らせるための警告画面が表示されたり、操縦機器40から警報音が発せられることである。
【0078】
アラート発報後、爆発性ガスを検知したガスセンサ11,16a,16b,16cの検知結果から得られるガス情報及び風向風速計17a、17b、17cの検出結果から得られる風向風速情報を基に、危険エリア設定部23により危険エリアDが設定される(工程#5)。
【0079】
次に、飛行体10の位置情報、加速度、重量及び受風面積、並びに、風向風速情報を基に、回避エリア設定部26によって回避エリアFが設定される(工程#6)。
【0080】
ついで、ルート生成要否判断部24によって、現在飛行している飛行ルートの先に回避エリアFが存在するか否かが判断される(工程#7)。そして、現在飛行している飛行ルートの先に回避エリアFが存在しないと判断された場合(工程#7:No)には、現在飛行している飛行ルートに沿った飛行が継続され(工程#4)、工程#20へ移行する。一方、現在飛行している飛行ルートの先に回避エリアFが存在すると判断された場合(工程#7:Yes)には、工程#8へ移行する。
【0081】
工程#8では、検知された爆発性ガスの空気に対する比重が1よりも大きいか否かが判断される。そして、検知された爆発性ガスの空気に対する比重が1よりも大きいと判断された場合(工程#8:Yes)には、ルート生成部31において、回避飛行ルートRaとして高高度回避飛行ルートRahを生成すると判断される(工程#9)。一方、検知された爆発性ガスの空気に対する比重が1よりも大きくないと判断された場合(工程#8:No)には、ルート生成部31において、回避飛行ルートRaとして低高度回避飛行ルートRalを生成すると判断される(工程#13)。
【0082】
回避飛行ルートRaとして高高度回避飛行ルートRahを生成すると判断された場合、その後、ルート生成部31によって、飛行してきたルート上に回避エリアFがあるか否かが判断される(工程#10)。そして、飛行してきたルート上に回避エリアFがないと判断された場合(工程#10:No)には、第1高高度帰還飛行ルートRrh1を生成すると判断され(工程#11)、回避飛行ルートRaとして当該第1高高度帰還飛行ルートRrh1が生成される(工程#17)。一方、飛行してきたルート上に回避エリアFがあると判断された場合(工程#10:Yes)には、第2高高度帰還飛行ルートRrh2を生成すると判断され(工程#12)、回避飛行ルートRaとして当該第2高高度帰還飛行ルートRrh2が生成される(工程#17)。
【0083】
これに対して、回避飛行ルートRaとして低高度回避飛行ルートRalを生成すると判断された場合、その後、ルート生成部31によって、飛行してきたルート上に回避エリアFがあるか否かが判断される(工程#14)。そして、飛行してきたルート上に回避エリアFがないと判断された場合(工程#14:No)には、第1低高度帰還飛行ルートRrl1を生成すると判断され(工程#15)、回避飛行ルートRaとして当該第1低高度帰還飛行ルートRrl1が生成される(工程#17)。一方、飛行してきたルート上に回避エリアFがあると判断された場合(工程#14:Yes)には、第2低高度帰還飛行ルートRrl2を生成すると判断され(工程#16)、回避飛行ルートRaとして当該第2低高度帰還飛行ルートRrl2が生成される(工程#17)。
【0084】
回避飛行ルートRaが生成された後、生成された回避飛行ルートRaを操縦者Hが確認し(工程#18)、その後、飛行管理部32によって当該回避飛行ルートRa(即ち、第1及び第2高高度帰還飛行ルートRrh1,Rrh2並びに第1及び第2低高度帰還飛行ルートRrl1,Rrl2のいずれか一の飛行ルート)に沿った飛行体10の飛行が開始され(工程#19)、工程#20へ移行する。
【0085】
回避飛行ルートRaに沿った飛行体10の飛行が開始された場合や現在の飛行ルートに沿った飛行を継続した場合、その後、落下予測エリア算出部25によって落下予測エリアEが算出される(工程#20)。次に、落下エリア判断部27によって、算出された落下予測エリアEが危険エリアD内又は進入禁止エリアC内であるか否かが判断される(工程#21)。そして、落下予測エリアEが危険エリアD内又は進入禁止エリアC内であると判断された場合(工程#21:Yes)には、飛行管理部32が、回避飛行ルートRa(回避飛行ルートRaが生成されていない場合には既存飛行ルートRe)を修正しつつ、当該回避飛行ルートRa(又は既存飛行ルートRe)に沿って自動操縦により飛行体10を飛行させ(工程#22)、工程#24へ移行する。一方、落下予測エリアEが危険エリアD又は進入禁止エリアC内でないと判断された場合(工程#21:No)には、飛行管理部32が、回避飛行ルートRa(又は既存飛行ルートRe)に沿った飛行体10の飛行を継続させ(工程#23)、工程#24へ移行する。
【0086】
その後、飛行管理部32によって、飛行体10が着陸したか否かが判断される(工程#24)。そして、飛行体10が着陸したと判断された場合(工程#27:Yes)には、処理を終了する。一方、飛行体10が着陸していないと判断された場合(工程#27:No)には、工程#2に戻り、当該工程#2以降の処理を引き続き実行する。尚、この再度の工程#2における爆発性ガスが検知されたか否かの判断は、ある一のガスセンサ11,16a,16b,16cで既に爆発性ガスが検知されている場合に、これとは異なるガスセンサ11,16a,16b,16cで爆発性ガスが検知されたか否かを判断したり、既にアラートが発報されている場合に、当該アラートが鳴り続けているか否かを判断したりするものである。
【0087】
以上のように、本実施形態に係る飛行体制御システムによれば、監視エリアA内の設備Bについて飛行体10を飛行させて点検を行っている際に、飛行体側ガスセンサ11やエリア側ガスセンサ16a,16b,16cによって爆発性ガスを検知した場合、回避飛行ルートRaを生成することができる。そして、爆発性ガスの比重が1よりも大きい場合には、爆発性ガスが存在する可能性が高い地表から離れるように、高度が高い高高度回避飛行ルートRahを生成して当該高高度回避飛行ルートRahに沿って飛行体10を飛行させることができる。また、爆発性ガスの比重が1よりも大きくない場合には、爆発性ガスが存在する可能性が低い地表に近づくように、高度が低い低高度回避飛行ルートRalを生成して当該低高度回避飛行ルートRalに沿って飛行体10を飛行させることができる。したがって、従来よりも安全に飛行体10を飛行させることができる。
【0088】
〔別実施形態〕
〔1〕上記実施形態では、飛行体10を自動操縦により飛行させる場合と、回避飛行ルートRaや既存飛行ルートReを操縦者Hに提示する場合とを飛行管理部32が適宜変更する態様としたが、これに限られるものではない。例えば、常に飛行体10を自動操縦により飛行させるようにしてもよいし、常に所定の飛行ルートを操縦者Hに提示するようにしてもよい。
【0089】
〔2〕上記実施形態では、回避飛行ルートRaたる高高度回避飛行ルートRah及び低高度回避飛行ルートRalが、第1高高度帰還飛行ルートRrh1、第2高高度帰還飛行ルートRrh2、第1低高度帰還飛行ルートRrl1及び第2低高度帰還飛行ルートRrl2のいずれかである態様としたが、これに限られるものではなく、飛行中のルートよりも高い又は低い高度を通り、且つ危険エリアDを回避する飛行ルートであれば、特に限定されるものではない。
【0090】
〔3〕上記実施形態では、サーバ側制御部22が、危険エリア設定部23、ルート生成要否判断部24、落下予測エリア算出部25、回避エリア設定部26、落下エリア判断部27、ルート生成部31、飛行管理部32及び比重判断部30を備える態様としたが、これらの機能部のうち、一部又は全部を飛行体側制御部15や機器側制御部43が備えていてもよい。例えば、これらサーバ側制御部22が備える機能部の全てを飛行体側制御部15及び機器側制御部43が分担して備える構成を採用し、管理サーバ20を設けることなく、飛行体10と操縦機器40とで設備Bの点検を行うようにしてもよい。
【0091】
〔4〕上記実施形態では、危険エリア設定部23が、爆発性ガスが今後どのように拡散するかをシミュレートして危険エリアDを設定する態様としたが、これに限られるものではない。ガス情報及び風向風速情報を基に、爆発性ガスが検知された時点から危険エリアD設定するまでの間に拡散する可能性があるエリアを危険エリアとして設定してもよい。
また、上記実施形態では、危険エリアDを設定する際に、比重判断部30の判断結果を考慮していないが、当該判断結果を考慮して危険エリアDを設定するようにしてもよい。この場合、例えば、爆発性ガスの空気に対する比重が1よりも大きいという判断結果が得られていれば、地表に近い部分に沿って広がるような危険エリアDが設定される。
【0092】
〔5〕上記実施形態では、接近回避対応として、ルート生成部31で生成された回避飛行ルートRaや予め規定された既存飛行ルートReを修正しつつ、当該回避飛行ルートRaや既存飛行ルートReに沿って飛行体10を自動操縦により飛行させる対応を採用したが、これに限られるものではない。例えば、接近回避対応として、ジオフェンス等を利用し、危険エリアDに飛行体10が侵入しないように操縦者Hによる飛行体10の遠隔操縦に制限を加える対応を採用してもよい。この場合、操縦者Hによる遠隔操縦により飛行体10を飛行させている途中で、落下予測エリアEが危険エリアD内となるような事態が生じた場合に、遠隔操縦に制限が加えられる。そのため、操縦者Hが誤って飛行体10を危険エリアDに接近させるような操作を行ったとしても、当該操作が制限され、危険エリアDへの飛行体10の接近を防止でき、飛行体10を危険エリアDに可能な限り近づけないように飛行させることができる。
【0093】
〔6〕上記実施形態では、衛星測位用受信機12や加速度センサ13、風向風速計17a,17b,17cや回避エリア設定部26、落下予測エリア算出部25、落下エリア判断部27を備える態様としたが、これらの一部又は全部を備えない態様であってもよい。また、飛行体側ガスセンサ11及び3つのエリア側ガスセンサ16a,16b,16cを備える態様としたが、飛行体側ガスセンサ又はエリア側ガスセンサのいずれか一方のみを備える態様であってもよい。
【0094】
〔7〕上記実施形態では、落下予測エリアEを算出する際に、飛行体10に設けられた加速度センサ13によって導出された加速度を用いるようにしていたが、これに限られるものではない。例えば、加速度センサ13から加速度が得られないような場合には、上記式1及び式2を基に加速度を算出し、この算出した加速度を用いて落下予測エリアEを算出するようにしてもよい。尚、この場合における飛行体10の速度は、例えば、飛行体10の位置情報を基に算出することができ、より具体的には、飛行体10の移動距離と当該距離だけ移動するのに要した時間とから算出することができる。
【0095】
〔8〕上記実施形態では、ルート生成部31で回避飛行ルートRaを生成する際に、記憶部33に記憶された3Dマップを利用する態様としたが、これに限られるものではない。例えば、電気通信回線を通じて外部から取得した3Dマップを利用してもよい。また、3Dマップを利用せずに、回避飛行ルートRaを生成するようにしてもよい。
【0096】
〔9〕上記実施形態では、監視エリアA内の1つの設備Bを点検する態様としたが、これに限られるものではなく、2以上の設備を同時に点検するようにしてもよい。尚、この場合、既存飛行ルートReは、全ての設備を同時に点検できるように設定される。
【0097】
〔10〕上記実施形態では、エリア側ガスセンサ16a,16b,16c及び風向風速計17a,17b,17cがそれぞれ3つずつ設置された態様としたが、設置数は特に限定されない。
【0098】
〔11〕上記実施形態では、飛行体10の平面位置及び高度を、全球測位衛星システムを利用して取得する態様としたが、これに限られるものではない。例えば、飛行体10の平面位置は、全球測位衛星システムを利用して取得し、飛行体10の高度は、飛行体10に気圧センサや超音波センサを設け、これを利用して取得するようにしてもよい。
【0099】
〔12〕上記実施形態では、アラートが発報される態様として、操縦機器40の表示部41に警告画面が表示される、あるいは、操縦機器40から警報音が発せられる態様を例示したが、これに限られるものではない。例えば、外部の制御室のモニタ等に警告画面が表示される態様であってもよく、この場合、制御室内にいる者から操縦者Hが電話連絡等を受けることで、爆発性ガスが検知されたことを操縦者Hが知ることができる。
【0100】
上記実施形態(別実施形態を含む)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、所定の飛行ルートに沿って飛行体を飛行させ、設備を点検する飛行体制御システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
10:飛行体
11:飛行体側ガスセンサ(飛行体側ガス検知部)
12:衛星測位用受信機(飛行体位置検出部)
13:加速度センサ(飛行体加速度導出部)
16a,16b,16c:エリア側ガスセンサ(エリア側ガス検知部)
17a,17b,17c:風向風速計(風向風速検出部)
23:危険エリア設定部
24:ルート生成要否判断部
25:落下予測エリア算出部
26:回避エリア設定部
27:落下エリア判断部
30:比重判断部
31:ルート生成部
32:飛行管理部
40:操縦機器
A:監視エリア
B:設備
C:進入禁止エリア
D:危険エリア
E:落下予測エリア
F:回避エリア
P:発着場
H:操縦者
Re:既存飛行ルート
Ra:回避飛行ルート
Rah:高高度回避飛行ルート
Ral:低高度回避飛行ルート
Rrh1:第1高高度帰還飛行ルート
Rrh2:第2高高度帰還飛行ルート
Rrl1:第1低高度帰還飛行ルート
Rrl2:第2低高度帰還飛行ルート
図1
図2
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図5
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図11