(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20240607BHJP
G01S 19/40 20100101ALI20240607BHJP
B62D 57/02 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
B60G17/015 B
G01S19/40
B62D57/02 Z
(21)【出願番号】P 2020199740
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-148564(JP,A)
【文献】特開2016-189172(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131522(WO,A1)
【文献】特開平06-317652(JP,A)
【文献】特開2010-019637(JP,A)
【文献】特開2019-106939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0024252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/015
G01S 19/40
B62D 57/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体の傾きを変更可能な状態で前記車両本体を支持する支持機構と、
前記車両本体に取り付けられ測位衛星からの信号を受信して測位位置を出力する衛星測位装置と、
前記車両本体の傾き角度を取得する傾き取得部と、
前記支持機構を制御して前記車両本体の傾きを変更する傾き変更部と、
前記車両本体の傾きの変更の前後における前記傾き角度の変化量及び前記測位位置の変化量に基づいて、前記衛星測位装置の取付高さを算出する取付高さ算出部と、
前記車両本体の位置を算出する位置算出部と、を備え
、
前記位置算出部は、前記取付高さ算出部で算出された値で更新された前記取付高さ、及び、前記傾き角度の変化量に基づいて前記車両本体の傾きによる誤差を算出し、前記衛星測位装置から取得した前記測位位置から前記誤差を差し引いて前記車両本体の位置を算出する作業車。
【請求項2】
前記支持機構は、前記車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の駆動輪と、複数の前記駆動輪を個別に昇降可能に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、複数の前記屈折リンク機構の姿勢を個別に変更可能な姿勢変更操作機構と、を備える請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記屈折リンク機構は、一端部が前記車両本体に横軸芯周りで回動可能に支持された第一リンクと、一端部が前記第一リンクの他端部に横軸芯周りで回動可能に枢支連結され且つ他端部に前記駆動輪が支持された第二リンクと、を備え、
前記姿勢変更操作機構は、前記車両本体に対する前記第一リンクの揺動姿勢を変更可能な第一油圧シリンダと、前記第一リンクに対する前記第二リンクの揺動姿勢を変更可能な第二油圧シリンダと、を備え、
前記傾き変更部は、前記第一油圧シリンダの動作と前記第二油圧シリンダの動作とを制御する請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記駆動輪を回転駆動する油圧モータが、複数の前記駆動輪に個別に備えられている請求項2又は3に記載の作業車。
【請求項5】
前記衛星測位装置は、取付高さ変更可能に備えられている請求項1から4のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項6】
前記衛星測位装置は、脱着可能に取り付けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星測位装置を備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車は、測位衛星からの信号を受信した衛星測位装置から得た測位位置を基にして、自動走行するための制御や、操縦者の操作を補助するための制御等を行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の作業車では、衛星測位装置としては、例えば、GPS(Global Positioning System)モジュールが利用されている。測位衛星からの信号の受信をより好適にするために、一般に、衛星測位装置は、車体において高い位置に取り付けられる。
【0005】
しかし、上記従来の作業車では、車体が傾くと、衛星測位装置から得た測位位置に誤差が生じることがある。なぜなら、車体が傾くと、高い位置に取り付けられている衛星測位装置が、車体の移動量よりも大きく移動するからである。そのため、衛星測位装置からの測位位置を基にした制御において、高精度な制御を行うことが困難になる場合があった。このような問題は、凹凸の多い田畑や起伏の多い果樹園においては、特に顕著であった。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、傾きによる誤差を抑制して衛星測位により車両本体の位置を高精度に算出でき、かつメンテナンス作業の増大を抑制した作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業車は、車両本体と、前記車両本体の傾きを変更可能な状態で前記車両本体を支持する支持機構と、前記車両本体に取り付けられ測位衛星からの信号を受信して測位位置を出力する衛星測位装置と、前記車両本体の傾き角度を取得する傾き取得部と、前記支持機構を制御して前記車両本体の傾きを変更する傾き変更部と、前記車両本体の傾きの変更の前後における前記傾き角度の変化量及び前記測位位置の変化量に基づいて、前記衛星測位装置の取付高さを算出する取付高さ算出部と、前記車両本体の位置を算出する位置算出部と、を備え、前記位置算出部は、前記取付高さ算出部で算出された値で更新された前記取付高さ、及び、前記傾き角度の変化量に基づいて前記車両本体の傾きによる誤差を算出し、前記衛星測位装置から取得した前記測位位置から前記誤差を差し引いて前記車両本体の位置を算出する。
【0008】
この発明によれば、算出された取付高さ及び測位位置に基づいて車両本体の位置が算出されるので、作業車の傾きによる誤差の発生を抑制し、車両本体の位置を高精度に算出することができる。加えて、この発明によれば、自動的に車両本体の傾きを変更して傾き角度及び測位位置の変化量を取得し、衛星測位装置の取付高さを算出するので、衛星測位装置の取付高さの測定や入力等を行う必要がなく、メンテナンス作業の増大を抑制することができる。
【0009】
本発明においては、前記支持機構は、前記車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の駆動輪と、複数の前記駆動輪を個別に昇降可能に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、複数の前記屈折リンク機構の姿勢を個別に変更可能な姿勢変更操作機構と、を備えると好適である。
【0010】
この構成によれば、車両本体に対して複数の走行車輪が屈折リンク機構によって各別に昇降自在に支持される。姿勢変更操作手段によって屈折リンク機構が姿勢を変更することにより、複数の走行車輪においてそれぞれ車両本体に対する高さを変更することができる。従って、簡易な構成により車両本体の傾きの変更を実現することができる。
【0011】
本発明においては、前記屈折リンク機構は、一端部が前記車両本体に横軸芯周りで回動可能に支持された第一リンクと、一端部が前記第一リンクの他端部に横軸芯周りで回動可能に枢支連結され且つ他端部に前記駆動輪が支持された第二リンクと、を備え、前記姿勢変更操作機構は、前記車両本体に対する前記第一リンクの揺動姿勢を変更可能な第一油圧シリンダと、前記第一リンクに対する前記第二リンクの揺動姿勢を変更可能な第二油圧シリンダと、を備え、前記傾き変更部は、前記第一油圧シリンダの動作と前記第二油圧シリンダの動作とを制御すると好適である。
【0012】
この構成によれば、第一油圧シリンダの操作によって、第一リンク、第二リンク及び走行車輪を含む屈折リンク機構全体が、第一リンクの車両本体側の一端部の横軸芯周りで回動して姿勢変化する。また、第二油圧シリンダの操作によって、第二リンク及び走行車輪が第一リンク側の一端部の横軸芯周りで回動して姿勢変化する。そして、傾き変更部が、第一油圧シリンダの動作と第二油圧シリンダの動作を制御することにより、車両本体の傾きを変更することができる。
【0013】
本発明においては、前記駆動輪を回転駆動する油圧モータが、複数の前記駆動輪に個別に備えられていると好適である。
【0014】
この構成によれば、油圧モータが個別に駆動輪に備えられていることにより、場所の移動や、方向転換を容易に行うことができる。その結果、作業車は、例えば、衛星測位装置が測位衛星からの信号を好適に受信できる場所に移動することや方向転換することが容易に行うことができる。
【0015】
本発明においては、前記衛星測位装置は、取付高さ変更可能に備えられていると好適である。
【0016】
この構成によれば、走行環境に合わせて、衛星測位装置の高さを変更することができ、好適に測位衛星からの信号を受信できる状態とすることが可能となる。
【0017】
本発明においては、前記衛星測位装置は、脱着可能に取り付けられていると好適である。
【0018】
この構成によれば、作業車を搬送する場合など、衛星測位装置が不要な場合には、衛星測位装置を取り外すことができる。また、衛星測位装置が故障した場合には、衛星測位装置の交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図6】取付高さ更新処理の流れの一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る作業車の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1及び
図2に本発明に係る作業車が示されている。この実施形態で、車体の前後方向を定義するときは、車体進行方向に沿って定義し、車体の左右方向を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。すなわち、
図1に符号(A)で示す方向が車体前後方向であり、
図2に符号(B)で示す方向が車体左右方向である。
【0022】
〔全体構成について〕
作業車には、車両全体を支持する平面視で略矩形状の車両本体1と、複数(具体的には4個)の駆動輪2と、複数の駆動輪2のそれぞれに対応して設けられた複数の補助車輪3と、複数の駆動輪2を個別に駆動する複数の油圧モータ6とが備えられている。また、車両本体1の傾きを変更可能な状態で車両本体1を支持する支持機構Mとして、複数の駆動輪2を個別に位置変更可能に車両本体1に支持する屈折リンク機構4と、屈折リンク機構4を変更操作可能な油圧駆動式の姿勢変更操作機構5とが備えられている。屈折リンク機構4、駆動輪2及び補助車輪3のそれぞれが、車両本体1の前後両側にそれぞれ左右一対ずつ備えられている。また、車両本体1の上方には、測位衛星からの信号を受信して測位位置を出力する衛星測位装置40が備えられている。
【0023】
車両本体1には、車両本体1の全周を囲うとともに、全体を支持する矩形枠状の車体フレーム7と、姿勢変更操作機構5に向けて作動油を送り出す油圧供給源8と、油圧供給源8から姿勢変更操作機構5に供給される作動油を制御する弁機構9とが備えられている。油圧供給源8は、詳述はしないが、エンジン(図示せず)と、エンジンによって駆動される油圧ポンプとを備えて、それらが一体的に連結されている。油圧供給源8は、車体フレーム7の下側に連結された支持台10により載置支持され、車両本体1の下腹部に位置する状態で備えられている。油圧供給源8は、エンジンにて駆動される油圧ポンプにより、弁機構9を介して姿勢変更操作機構5に作動油を送り出し供給する。
【0024】
弁機構9は、車体フレーム7の上側に載置支持される状態で備えられ、姿勢変更操作機構5に対する作動油の給排あるいは流量の調節等を行う複数の油圧制御弁11を備えている。弁機構9の上方は収納ケース12によって覆われている。また、収納ケース12の内部には、制御装置13が備えられている。制御装置13は、例えば、マイクロコンピュータ等を備えており、制御プログラムに従って種々の制御を実行可能である。
【0025】
〔支持機構について〕
次に、駆動輪2を車両本体1に支持するための支持構造について説明する。
複数(具体的には4つ)の駆動輪2は、屈折リンク機構4を介して車両本体1に対して個別に昇降可能に支持されている。屈折リンク機構4は、旋回機構16を介して縦軸芯Y周りで回動可能に車体フレーム7に支持されている。
【0026】
旋回機構16には、車体フレーム7に連結されるとともに、屈折リンク機構4を揺動可能に支持する車体側支持部17(
図3及び
図4参照)と、屈折リンク機構4を旋回操作させる旋回用油圧シリンダ18(以下、旋回シリンダと称する)とが備えられている。
【0027】
図3及び
図4に示すように、車体側支持部17は、車体フレーム7(
図2参照)における横側箇所に備えられた角筒状の前後向きフレーム体19(
図2参照)に対して、横側外方から挟み込む状態で嵌め合い係合するとともに、取外し可能にボルト連結される連結部材20と、連結部材20の車体前後方向外方側箇所に位置する外方側枢支ブラケット21と、連結部材20の車体前後方向の内方側箇所に位置する内方側枢支ブラケット22と、外方側枢支ブラケット21に支持される縦向きの回動支軸23とを備え、回動支軸23の縦軸芯Y周りで回動可能に屈折リンク機構4を支持している。
【0028】
屈折リンク機構4には、上下方向の位置が固定された状態で且つ縦軸芯Y周りで回動可能に車体側支持部17に支持される基端部24と、一端部が基端部24の下部に横軸芯X1周りで回動可能に支持された第一リンク25と、一端部が第一リンク25の他端部に横軸芯X2周りで回動可能に支持され且つ他端部に駆動輪2が支持された第二リンク26とが備えられている。
【0029】
基端部24は、平面視で矩形枠状に設けられ、車体横幅方向内方側に偏倚した箇所において、回動支軸23を介して縦軸芯Y周りで回動可能に、車体側支持部17の外方側枢支ブラケット21に支持されている。旋回シリンダ18は、一端部が、内方側枢支ブラケット22に回動可能に連結され、他端部が、基端部24における回動支軸23に対して横方向に位置ずれした箇所に回動可能に連結されている。
【0030】
基端部24の左右両側部に亘って第一リンク25の一端側に備えられた支持軸27が回動可能に架設支持され、第一リンク25は基端部24の下部に対して支持軸27の軸芯周りで回動可能に連結されている。
【0031】
図4に示すように、第一リンク25は、基端側アーム部25bと他端側アーム部25aとを有している。第一リンク25の一端側箇所には、斜め上外方に向けて延びる基端側アーム部25bが一体的に形成されている。第一リンク25の他端側箇所には、斜め上外方に向けて延びる他端側アーム部25aが一体的に形成されている。
【0032】
図3に示すように、第二リンク26は、左右一対の帯板状の板体26a,26bを備えて平面視で二股状に形成されている。第二リンク26の第一リンク25に対する連結箇所は一対の板体26a,26bが間隔をあけている。一対の板体26a,26bで挟まれた領域に、第一リンク25と連結するための連結支軸28が回動可能に支持されている。第二リンク26の第一リンク25に対する連結箇所とは反対側の揺動側端部には駆動輪2が支持されている。
図4に示すように、第二リンク26の揺動側端部は車両本体1から離れる方向に略L字状に延びるL字状延設部26Aが形成され、L字状延設部26Aの延設側端部に駆動輪2が支持されている。
【0033】
図2に示すように、駆動輪2は、屈折リンク機構4に対して左右方向の車体外方側に位置する状態で支持されている。具体的には、第二リンク26の揺動側端部において、左右方向の車体外方側に位置する状態で支持されている。油圧モータ6は、第二リンク26の揺動側端部において、左右方向の車体内方側(駆動輪2とは反対側)に位置する状態で支持されている。
【0034】
複数の屈折リンク機構4のそれぞれに対応して、屈折リンク機構4の姿勢を個別に変更可能な姿勢変更操作機構5が備えられている。
図3及び
図4に示すように、姿勢変更操作機構5には、車両本体1に対する第一リンク25の揺動姿勢を変更可能な第一油圧シリンダ29と、第一リンク25に対する第二リンク26の揺動姿勢を変更可能な第二油圧シリンダ30とが備えられている。第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30は、それぞれ、第一リンク25の近傍に集約して配置されている。
【0035】
第一リンク25、第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30が、平面視において、第二リンク26の一対の板体26a,26bの間に位置する状態で配備されている。第一油圧シリンダ29は、第一リンク25に対して車体前後方向内方側に位置して、第一リンク25の長手方向に沿うように設けられている。第一油圧シリンダ29の一端部が円弧状の第一連動部材31を介して基端部24の下部に連動連結されている。第一油圧シリンダ29の一端部は、別の第二連動部材32を介して第一リンク25の基端側箇所に連動連結されている。第一連動部材31及び第二連動部材32は、両側端部がそれぞれ、相対回動可能に枢支連結されている。第一油圧シリンダ29の他端部は、第一リンク25に一体的に形成された他端側アーム部25aに連動連結されている。
【0036】
第二油圧シリンダ30は、第一油圧シリンダ29とは反対側、すなわち、第一リンク25に対して車体前後方向外方側に位置して、第一リンク25の長手方向に略沿うように設けられている。第二油圧シリンダ30の一端部が第一リンク25の基端側に一体的に形成された基端側アーム部25bに連動連結されている。第二油圧シリンダ30の他端部は、第三連動部材34を介して第二リンク26の基端側箇所に一体的に形成されたアーム部35に連動連結されている。第二油圧シリンダ30の他端部は、別の第四連動部材36を介して第一リンク25の揺動端側箇所にも連動連結されている。第三連動部材34及び第四連動部材36は、両側端部がそれぞれ、相対回動可能に枢支連結されている。
【0037】
第二油圧シリンダ30の作動を停止した状態で第一油圧シリンダ29を伸縮操作すると、第一リンク25、第二リンク26及び駆動輪2のそれぞれが、相対的な姿勢を一定に維持したまま一体的に、基端部24に対する枢支連結箇所の横軸芯X1周りで揺動する。第一油圧シリンダ29の作動を停止した状態で第二油圧シリンダ30を伸縮操作すると、第一リンク25の姿勢が一定に維持されたまま、第二リンク26及び駆動輪2が、一体的に、第一リンク25と第二リンク26との連結箇所の横軸芯X2周りで揺動する。
【0038】
複数の屈折リンク機構4それぞれの中間屈折部に自由回転可能に補助車輪3が支持されている。補助車輪3は駆動輪2と略同じ外径の車輪にて構成されている。第一リンク25と第二リンク26とを枢支連結する連結支軸28が、第二リンク26よりも車体横幅方向外方側に突出するように延長形成されている。連結支軸28の延長突出箇所に補助車輪3が回動可能に支持されている。
【0039】
〔制御装置について〕
図5に示すように、制御装置13は、車両本体1の傾き角度を取得する傾き取得部13aと、車両本体1の傾きを変更するよう制御する傾き変更部13bと、衛星測位装置40の取付高さH及び衛星測位装置40から取得した測位位置に基づいて、車両本体1の位置を算出する位置算出部13cと、車両本体1の傾きの変更の前後における傾き角度の変化量θ及び測位位置の変化量Lに基づいて、衛星測位装置40の取付高さHを算出する取付高さ算出部13dと、が備えられている。ここで、衛星測位装置40の取付高さHは、車両本体1の下端部から衛星測位装置40の取り付け位置の高さのことをいう。
【0040】
傾き取得部13aは、傾きセンサ装置S3(例えば、慣性計測装置)から、水平方向に対する車両本体1の傾き角度を取得する。ここで、重力方向に垂直となる方向を水平方向(傾き角度0度)とする。
【0041】
傾き変更部13bは、弁機構9の作動を制御することで、姿勢変更操作機構5の動作を制御している。ここで、4つの第一油圧シリンダ29及び4つの第二油圧シリンダ30のそれぞれについて、伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS1が備えられている。各油圧シリンダ29,30の伸縮操作量は、操作対象である第一リンク25及び第二リンク26の揺動位置に対応する検出値であり、各ストロークセンサS1の検出結果は制御装置13に入力される。傾き変更部13bは、ストロークセンサS1の検出結果に基づいて、車両本体1の姿勢が目標の姿勢となるよう、それぞれの第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30への作動油の供給が制御される。
位置算出部13cは、記憶部13eから取得した衛星測位装置40の取付高さH、及び、衛星測位装置40から取得した測位位置に基づいて、車両本体1の位置を算出する。
【0042】
取付高さ算出部13dは、車両本体1の傾きの変更の前後における傾き角度の変化量θ及び測位位置の変化量Lに基づいて、衛星測位装置40の取付高さHを算出する。
【0043】
駆動輪2には、油圧モータ6により駆動される駆動輪2の回転速度を検出する回転センサS2が備えられている。制御装置13は、回転センサS2にて検出された駆動輪2の回転速度に基づいて、駆動輪2の回転速度が目標の値となるように、油圧モータ6への作動油の供給を制御する。
【0044】
制御装置13には、取付高さ算出部13dにより算出された衛星測位装置40の取付高さHを記憶しておく記憶部13eが備えられている。
【0045】
〔衛星測位装置について〕
次に、衛星測位装置40を車両本体1に支持するための支持構造について説明する。
図1及び
図2に示す通り、測位装置支持機構41は、略I字型に構成されており、収納ケース12の上面部12aに取り付けられている。測位装置支持機構41は、上面部12aの前後方向の車体中央箇所に配置されている。
【0046】
測位装置支持機構41は、それぞれ四角筒状体に形成されている下部筒状体41Aと中間筒状体41Bと上部筒状体41Cとを有する。下部筒状体41Aは、下端部に径外方に突出したフランジ41Aaが形成されている。フランジ41Aaは、取外し可能にボルト連結される連結部材42を用いて、上面部12aに取り付けられている。中間筒状体41Bは、下部筒状体41Aに収納されるように構成されている。上部筒状体41Cは、中間筒状体41Bの内部に収納されるように構成されている。
【0047】
詳述はしないが、測位装置支持機構41は、電動モータ等の駆動装置(図示せず)を内部に備えており、この駆動装置により、下部筒状体41Aに対して中間筒状体41B及び上部筒状体41Cをそれぞれ上下方向に移動させることで、測位装置支持機構41を上下方向に伸縮させることができる。
【0048】
衛星測位装置40は、上部筒状体41Cの上端部に設けられている。測位装置支持機構41を上下方向に伸縮させることで、衛星測位装置40の取付高さHを変更することが可能に構成されている。
【0049】
なお、図示はしないが、上面部12aに対する連結部材42のボルト連結を解除すると、衛星測位装置40及び測位装置支持機構41のそれぞれが、一体的に組付けられた状態で、車両本体1から取り外すことができる。また、上面部12aに対して連結部材42をボルト連結することで、衛星測位装置40及び測位装置支持機構41が一体的に組付けられた状態で、車両本体1に取付けることができる。
【0050】
また、制御装置13は、記憶部13eに記録されている衛星測位装置40の取付高さの値を更新するための取付高さ更新処理を行う。取付高さ更新処理は、当該処理を実行するための人為操作が行われたときに、処理が開始される。取付高さ更新処理を開始するための人為操作としては、例えば、専用の切替スイッチを設けたうえで、当該切替スイッチを操作することで取付高さ更新処理を開始するよう構成されていてもよく、また、既存の電源入切スイッチ(図示せず)を操作することで取付高さ更新処理を開始するよう構成されていてもよい。
【0051】
次に、
図6のフローチャート及び
図7を用いて、この実施形態における取付高さ更新処理の一例を説明する。
【0052】
(ステップ#01)作業車停止の確認
取付高さ更新処理を開始するために、作業車が停止していることが必要となる。作業車が走行していると、測位位置の変化が、車両本体1の傾きの変更によるものであるのか、作業車の走行によるものであるのかが判別できないためである。制御装置13は、回転センサS2により、駆動輪2が駆動していない(車速=0)と判断した場合、ステップ#02へ進む。駆動輪2が駆動していると判断した場合、取付高さ更新処理を終了する。
【0053】
(ステップ#02)衛星測位装置の受信確認
取付高さ更新処理を開始するために、衛星測位装置40が測位衛星からの信号を受信できている必要がある。制御装置13は、衛星測位装置40が測位衛星からの信号を受信できていることを確認する。衛星測位装置40が信号を受信できていると判断した場合、ステップ#03へ進む。衛星測位装置40が信号を受信できていないと判断した場合、取付高さ更新処理を終了する。
【0054】
(ステップ#03)作業車設置場所の傾斜の確認
取付高さ更新処理を開始するために、作業車は水平な場所に設置されていることが必要となる。例えば、作業車が傾斜地に設置され、重力方向に対して車両本体1が傾いている状態から車両本体1を傾斜の下側に向けて傾き角度を変更した場合、平面視においては、衛星測位装置40の位置の変化が小さくなってしまう。その結果、車両本体1の角度を変更しても、測位位置の変化量を正確に算出できない虞がある。そこで、制御装置13は、ストロークセンサS1から、すべての油圧シリンダ29,30の伸縮操作量を取得し、すべて同一であること、かつ、傾き取得部13aから傾き角度を取得し、車両本体1が水平地に設置されていること(傾き角度が0度付近であること)を確認する。車両本体1が水平地に設置されていることを判断した場合、ステップ#05へ進む。車両本体1が水平地に設置されていないと判断した場合、車両本体1の傾きを補正するためにステップ#04へ進む。
【0055】
(ステップ#04)車両本体の傾きの補正処理
傾き変更部13bは、傾き取得部13aから取得した車両本体1の傾き角度が0度付近となるように姿勢変更操作機構5の動作を制御し、車両本体1の傾きを補正する。車両本体1の傾き角度が0度付近となるよう補正し、姿勢変更操作機構5の動作の制御が完了すれば、ステップ#05へ進む。なお、傾斜地が急傾斜となっている等、制御装置13が、傾き変更部13bにより車両本体1の傾き角度を0度付近にすることが不可能であると判断した場合、取付高さ更新処理を終了する。
【0056】
(ステップ#05)傾き変更前の傾き角度及び測位位置の取得
制御装置13は、傾き取得部13aから車両本体1の傾き変更前の傾き角度θ1を取得し、衛星測位装置40から車両本体1の傾き変更前の測位位置L1を取得し、制御装置13に備えられた一時記憶部(図示せず)に、これらの情報を一時的に記憶しておく。その後、ステップ#06へ進む。
【0057】
(ステップ#06)車両本体の傾きの変更処理
傾き変更部13bは、傾き取得部13aから取得した車両本体1の傾き角度が所定の角度となるように姿勢変更操作機構5の動作を制御し、車両本体1の傾きを変更する。このとき、傾き変更部13bは、車両本体1の底面部の前後方向中央において、車体幅方向に延びる回転軸芯P周りで車両本体1を揺動させるように、姿勢変更操作機構5の動作を制御する。姿勢変更操作機構5の動作の制御が完了すれば、ステップ#07へ進む。
【0058】
(ステップ#07)傾き角度変更後における傾き角度及び測位位置の取得
制御装置13は、傾き取得部13aから車両本体1の傾き変更後の傾き角度θ2を取得する。さらに衛星測位装置40から車両本体1の傾きの変更の後の測位位置L2を取得する。その後、ステップ#08へ進む。
【0059】
(ステップ#08)衛星測位装置の取付高さを算出
制御装置13は、車両本体1の傾きの変更前における傾き角度θ1及び車両本体1の傾きの変更後における傾き角度θ2から傾き角度の変化量θを算出する。さらに、制御装置13は、車両本体1の傾きの変更前における測位位置L1及び車両本体1の傾きの変更後における測位位置L2から測位位置の変化量Lを算出する。取付高さ算出部13dは、算出された傾き角度の変化量θ及び測位位置の変化量Lを基に、衛星測位装置40の取付高さHを算出する。本実施形態では、取付高さHは、下記の数式で求められる。
H=L/(sinθ)
制御装置13は、算出された衛星測位装置40の取付高さHを用いて、記憶部13eに記録されている衛星測位装置40の取付高さHの値を更新する。その後、ステップ#09へ進む。
【0060】
(ステップ#09)終了処理
ステップ#05で取得した傾き角度の情報を基に、傾き変更部13bは、傾き取得部13aから取得した車両本体1の傾き角度が初期状態に戻るように姿勢変更操作機構5の動作を制御し、車両本体1の傾きを元に戻す。その後、取付高さ更新処理を終了する。
【0061】
なお、ステップ#01、ステップ#02、及びステップ#04にて、処理を終了する場合、取付高さ更新処理が実行できないと判断したことを作業者に通知するために、エラー表示又は警告音で、警告を発信するように構成されていてもよい。
【0062】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態を例示する。以下の別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて上記実施形態に適用してよい。なお、本発明の範囲は、各実施形態の内容に限定されるものではない。
【0063】
(1)上記実施形態では、取付高さ更新処理としてステップ#01からステップ#08までの処理を一回実施する実施例を説明したが、複数回実施してもよい。このとき、ステップ#08が実施された後、再度ステップ#01から実施する構成としてもよい。また、複数回実施するときには、ステップ#06において、それぞれ傾きの角度や方向を変えるように構成してもよい。
【0064】
(2)上記実施形態では、測位装置支持機構41が、側面視で略I字型に構成されている構成を例に説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、測位装置支持機構41は、略逆U字型に構成されていてもよい。
【0065】
(3)上記実施形態では、測位装置支持機構41が、収納ケース12の上面部12aに取り付けられている構成を例に説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、前後向きフレーム体19に測位装置支持機構41が取り付けられている構成としてもよい。
【0066】
(4)上記実施形態では、衛星測位装置40が上下方向に伸縮可能に構成されている測位装置支持機構41に備えられていることにより、取付高さ変更可能に構成されている構成を例に説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、高さの異なる支持部材を用意し、支持部材を交換することにより、衛星測位装置40の取付高さを変更できるように構成されていてもよい。
【0067】
(5)上記実施形態では、取付高さHは、数式(H=L/(sinθ))を用いて算出される構成を例に説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、制御装置13に、傾き角度の変化量θ及び測位位置の変化量Lと取付高さHとの関係を示すテーブルデータを予め格納しておき、取付高さ算出部13dは、当該テーブルデータを用いて、傾き角度の変化量θ及び測位位置の変化量Lから取付高さHを算定する構成としてもよい。
【0068】
(6)位置算出部13cが、記憶部13eから取得した衛星測位装置40の取付高さH、傾き取得部13aが取得した車両本体1の傾き角度の変化量θ、及び、衛星測位装置40から取得した測位位置に基づいて、車両本体1の位置を算出してもよい。例えば、位置算出部13cは、次の数式により傾きによる誤差Eを算出し、測位位置から誤差Eを差し引いて車両本体1の位置を算出する。
E=H・sinθ
【0069】
(7)上記実施形態では、傾きセンサ装置S3から、水平方向に対する車両本体1の傾き角度を取得する構成を例に説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、それぞれのストロークセンサS1の検出結果から水平方向に対する車両本体1の傾き角度を算出する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、衛星測位装置を備え、車両本体の傾きを変更可能な作業車、例えば、コンバイン、圃場管理機等に適用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 :車両本体
2 :駆動輪
4 :屈折リンク機構
5 :姿勢変更操作機構
6 :油圧モータ
13a :傾き取得部
13b :傾き変更部
13c :位置算出部
13d :取付高さ算出部
25 :第一リンク
26 :第二リンク
29 :第一油圧シリンダ
29 :油圧シリンダ
30 :第二油圧シリンダ
30 :油圧シリンダ
40 :衛星測位装置
M :支持機構
X1 :横軸芯
X2 :横軸芯
θ :傾き角度変化量
L :測位位置変化量
H :衛星測位装置の取付高さ