(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
F16H 61/42 20100101AFI20240607BHJP
F16H 61/4008 20100101ALI20240607BHJP
【FI】
F16H61/42
F16H61/4008
(21)【出願番号】P 2020209180
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 竜馬
(72)【発明者】
【氏名】山脇 孝明
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-085402(JP,A)
【文献】特開2009-092178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/40-61/478
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力が入力される静油圧式無段変速機構
と前記静油圧式無段変速機構の出力及び前記エンジンの出力が入力される複合遊星伝導部とを有
する変速装置と、
前記変速装置からの動力を受けて走行する走行装置と、
前記走行装置の速度を検出する速度検出部と、
前記静油圧式無段変速機構における閉回路の油圧を検出する圧力検出部と、
前記速度と前記油圧とに基づいて前記静油圧式無段変速機構の斜板角度が、前記
複合遊星伝導部において前記静油圧式無段変速機構から出力された回転速度と前記エンジンの回転速度とが相殺される相殺角度であるかどうかを判定する判定部と、
前記走行装置を制動させる制動装置と、
前記斜板角度
を変更制御する斜板角度制御部と、が備えられ
、
前記斜板角度制御部は、前記走行装置が前記制動装置により制動されていることにより前記速度が予め設定された値以下である場合、かつ、前記斜板角度が前記相殺角度でないと前記判定部が判定した場合に、前記斜板角度が前記相殺角度となるように変更制御する作業車。
【請求項2】
前記相殺角度は、前記変速装置から出力される回転速度が予め設定された回転速度以下となる前記斜板角度である請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記判定部は
、前記油圧が予め設定された値以上である場合に、前記斜板角度が前記相殺角度でないと判定する請求項1
または2に記載の作業車。
【請求項4】
前記閉回路に、前記エンジンからの動力によって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプが吐出する作動油によって駆動される油圧モータと、前記油圧ポンプと前記油圧モータとの間において前記作動油が循環する一対の油圧経路と、が備えられ、
前記圧力検出部は、前記一対の油圧経路の少なくとも一方に設けられている請求項1から
3の何れか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された作業車両では、静油圧式無段変速機構(文献では「第1無段変速装置」)を有する変速装置(文献では「油圧機械式無段変速機」)が備えられている。作業車両の減速に伴って静油圧式無段変速機構の斜板角度が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、減速時には静油圧式無段変速機構における閉回路の油圧が上昇しがちである。閉回路の油圧が上昇すると、作動油の温度が適温よりも高くなりがちであり、静油圧式無段変速機構による動力伝達の効率にも影響を及ぼす虞がある。このため、静油圧式無段変速機構における閉回路の油圧に基づいて、静油圧式無段変速機構の斜板角度が適切に制御される構成が望ましい。
【0005】
本発明の目的は、適切な負荷の範囲内で静油圧式無段変速機構の斜板角度が制御される作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による作業車では、エンジンの動力が入力される静油圧式無段変速機構と前記静油圧式無段変速機構の出力及び前記エンジンの出力が入力される複合遊星伝導部とを有する変速装置と、前記変速装置からの動力を受けて走行する走行装置と、前記走行装置の速度を検出する速度検出部と、前記静油圧式無段変速機構における閉回路の油圧を検出する圧力検出部と、前記速度と前記油圧とに基づいて前記静油圧式無段変速機構の斜板角度が、前記複合遊星伝導部において前記静油圧式無段変速機構から出力された回転速度と前記エンジンの回転速度とが相殺される相殺角度であるかどうかを判定する判定部と、前記走行装置を制動させる制動装置と、前記斜板角度を変更制御する斜板角度制御部と、が備えられ、前記斜板角度制御部は、前記走行装置が前記制動装置により制動されていることにより前記速度が予め設定された値以下である場合、かつ、前記斜板角度が前記相殺角度でないと前記判定部が判定した場合に、前記斜板角度が前記相殺角度となるように変更制御することを特徴とする。
【0007】
本発明によると、閉回路の油圧が圧力検出部によって検出され、判定部は速度及び油圧に基づく判定処理を行う構成となっている。このため、斜板角度制御部は、適切な油圧管理のもとに斜板角度を変更制御できる。これにより、たとえ油圧が上昇し易い動作環境であっても、静油圧式無段変速機構による動力伝達の効率を良好なものに維持できる。これにより、適切な負荷の範囲内で静油圧式無段変速機構の斜板角度が制御される。
【0008】
本発明において、前記相殺角度は、前記変速装置から出力される回転速度が予め設定された回転速度以下となる前記斜板角度であると好適である。
【0009】
本構成であれば、変速装置から出力される回転速度が低くなるため、静油圧式無段変速機構の負荷が軽減される。
【0010】
本発明において、前記変速装置は、前記静油圧式無段変速機構の出力側に遊星歯車機構を有する油圧機械式変速装置であると好適である。
【0011】
遊星歯車機構は精密な構成であるため、本構成であれば、静油圧式無段変速機構の負荷が軽減されることによって、遊星歯車機構に過度な負荷が掛かり難くなる。
【0012】
本発明において、前記判定部は、前記速度が予め設定された値以下であって、かつ、前記油圧が予め設定された値以上である場合に、前記斜板角度が前記相殺角度でないと判定すると好適である。
【0013】
本構成によって、低速時に静油圧式無段変速機構に無駄な負荷が掛かる虞が軽減される。
【0014】
本発明において、前記走行装置を制動させる制動装置が備えられ、前記斜板角度制御部は、前記走行装置が制動されている場合、かつ、前記斜板角度が前記相殺角度でないと前記判定部が判定した場合に、前記斜板角度が前記相殺角度となるように変更制御すると好適である。
【0015】
走行装置が制動装置によって拘束されている状態であると、閉回路の油圧が特に上昇しがちであるため、走行装置が制動されている場合、油圧管理がとりわけ重要である。本構成によって、例えば急ブレーキ時など、油圧管理がとりわけ重要なときに斜板角度が適切に制御される。
【0016】
本発明において、前記閉回路に、前記エンジンからの動力によって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプが吐出する作動油によって駆動される油圧モータと、前記油圧ポンプと前記油圧モータとの間において前記作動油が循環する一対の油圧経路と、が備えられ、前記圧力検出部は、前記一対の油圧経路の少なくとも一方に設けられていると好適である。
【0017】
本構成によって、閉回路における作動油の油圧がしっかりと検出される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】無段変速部の変速状態と、速度レンジと、出力軸による出力速度との関係を示す説明図である。
【
図5】斜板角度変更制御の流れを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、トラクターの走行車体に関し、
図1に示される矢印「F」の方向を車体前方、矢印「B」の方向を車体後方、矢印「U」の方向を車体上方、矢印「D」の方向を車体下方、紙面表側の方向を車体左方、紙面裏側の方向を車体右方とする。
【0020】
〔トラクターの全体の構成〕
図1に示されるように、トラクターの走行車体に、エンジン1と、クラッチユニット2と、ミッションケース3と、車体フレーム5と、が備えられている。クラッチユニット2はエンジン1の後部に連結され、ミッションケース3はクラッチユニット2の後部に連結されている。車体フレーム5は前輪支持フレーム4によって構成され、前輪支持フレーム4はエンジン1の下部から前方に延ばされている。車体フレーム5の前部に、左右一対の前車輪6が駆動可能かつ操向可能に装備され、車体フレーム5の後部に、左右一対の後車輪7が駆動可能に装備されている。走行車体の前部に、エンジン1を有する原動部8が形成されている。走行車体の後部に運転部11が形成され、運転部11に運転座席9とステアリングホィール10とが備えられている。ステアリングホィール10は前車輪6を操向操作する。運転部11には、搭乗空間を覆うキャビン12が備えられている。車体フレーム5の後部にリンク機構13が装備され、リンク機構13はロータリ耕耘装置などの各種の作業装置を昇降可能に連結する。ミッションケース3の後部に動力取出し軸14が備えられ、動力取出し軸14は、いわゆる「PTO軸」であって、リンク機構13に連結された作業装置に、エンジン1からの動力を伝達する。前車輪6及び後車輪7は、本発明の『走行装置』である。
【0021】
〔走行伝動装置の構成〕
エンジン1の動力を前車輪6及び後車輪7に伝達する走行伝動装置15が、
図2に模式的に示される。走行伝動装置15はミッションケース3に収容されている。エンジン1の出力軸1aの動力がダンパディスク16からミッションケース3の入力軸17に入力される。走行伝動装置15に、油圧機械式変速装置18と、前後進切換装置19と、後輪差動機構20と、前輪伝動機構21と、前輪差動機構22と、が備えられている。油圧機械式変速装置18は、入力軸17に入力された動力を変速する。前後進切換装置19は、油圧機械式変速装置18から出力された動力を前進動力または後進動力に変換する。後輪差動機構20は、前後進切換装置19から出力された前進動力または後進動力を左右の後車輪7に伝達する。前輪伝動機構21は、前後進切換装置19から出力された前進動力または後進動力を前車輪6に向けて出力する。前輪差動機構22は、前輪伝動機構21から出力された前進動力または後進動力を左右の前車輪6に伝達する。油圧機械式変速装置18は、本発明の『変速装置』である。このため、本実施形態では、走行装置としての前車輪6及び後車輪7は、変速装置としての油圧機械式変速装置18からの動力を受けて走行する。
【0022】
〔変速装置の構成〕
図2に示されるように、油圧機械式変速装置18に、静油圧式無段変速部18Aと、複合遊星伝動部18Bと、段階分け伝動部18Cと、が備えられている。静油圧式無段変速部18Aにエンジン1の動力が入力される。複合遊星伝動部18Bに、静油圧式無段変速部18Aの出力及びエンジン1の動力が入力される。段階分け伝動部18Cは、複合遊星伝動部18Bの出力を段階分けして出力する。
【0023】
前後方向視において、段階分け伝動部18Cの出力軸75と、前後進切換装置19の入力軸90と、が複合遊星伝動部18Bの太陽歯車51,54の軸芯Xに対して横一側方に位置する。また、前後方向視において、静油圧式無段変速部18Aの無段出力ギヤ35のポンプ軸36及びモータ軸37が、太陽歯車51,54の軸芯Xに対して横他側方に位置する。静油圧式無段変速部18Aは、本発明の『静油圧式無段変速機構』である。
【0024】
静油圧式無段変速部18Aは、静油圧式無段変速装置である。静油圧式無段変速部18Aに、可変容量型かつアキシャルプランジャ形の油圧ポンプ30と、定容量型かつアキシャルプランジャ形の油圧モータ31と、一対の駆動油路32,32と、が備えられている。油圧ポンプ30はエンジン1からの動力によって駆動される。油圧モータ31は油圧ポンプ30が吐出する作動油によって駆動される。一対の駆動油路32,32は、油圧ポンプ30と油圧モータ31との間において作動油が循環する一対の油圧経路(入り経路及び戻り経路)である。換言すると、静油圧式無段変速部18Aの閉回路に、油圧ポンプ30と、油圧モータ31と、一対の駆動油路32,32と、が備えられている。
【0025】
静油圧式無段変速部18Aに無段入力ギヤ34と無段出力ギヤ35とが備えられている。無段入力ギヤ34は静油圧式無段変速部18Aの後部に回転可能に設けられ、無段出力ギヤ35は静油圧式無段変速部18Aの前部に回転可能に設けられている。無段入力ギヤ34は、ポンプ軸36に相対回転不能に設けられ、ポンプ軸36と一体回転する。無段出力ギヤ35は、モータ軸37に相対回転不能に設けられ、モータ軸37と一体回転する。
なお、詳細に関しては後述するが、駆動油路32における入り経路と戻り経路との夫々に、第1圧力検出部25と第2圧力検出部26とが備えられ、第1圧力検出部25と第2圧力検出部26との夫々は静油圧式無段変速部18Aにおける閉回路の油圧を検出する。
【0026】
無段入力ギヤ34と、複合遊星伝動部18Bの軸芯部を前後方向に通された回転軸38のうちの複合遊星伝動部18Bよりも後方に位置する部分と、に亘って第2動力伝達機構40が設けられている。回転軸38と、油圧機械式変速装置18の入力軸17と、がスプライン係合によって相対回転不能に係合されている。
【0027】
第2動力伝達機構40に、回転可能な第2中継軸41と、動力取出しギヤ42と、第3中継ギヤ43と、第4中継ギヤ44と、が備えられている。第2中継軸41は、ポンプ軸36に対して平行に設けられている。動力取出しギヤ42は回転軸38に相対回転不能に設けられている。第3中継ギヤ43は、動力取出しギヤ42に噛み合った状態で第2中継軸41の後端部に相対回転不能に設けられている。第4中継ギヤ44は、無段入力ギヤ34に噛み合った状態で第2中継軸41の前端部に相対回転不能に設けられている。第2動力伝達機構40は、回転軸38の動力を無段入力ギヤ34に伝達する。回転軸38は、中継軸45及びPTO変速装置46を介して動力取出し軸14に連動連結されており、入力軸17に伝達されたエンジン1の動力を動力取出し軸14に伝達する。
【0028】
静油圧式無段変速部18Aにおける動力伝達に関して説明する。エンジン1の動力が、出力軸1aからダンパディスク16及び入力軸17を介して回転軸38に伝達される。回転軸38に伝達された動力は、第2動力伝達機構40によって無段入力ギヤ34に伝達されて油圧ポンプ30及び油圧モータ31によって正回転方向の動力または逆回転方向の動力に無段階に変速される。変速後の正回転方向の動力または逆回転方向の動力が無段出力ギヤ35から出力される。
【0029】
複合遊星伝動部18Bは、二つの太陽歯車51,54を有し、二つの太陽歯車51,54の軸芯Xと、エンジン1の出力軸1aの軸芯Zと、が一直線上に位置する状態で設けられている。複合遊星伝動部18Bは、前後方向に並ぶ二列の遊星歯車機構50A,50Bを備えている。一列目の遊星歯車機構50Aに、太陽歯車51、内歯歯車52、及び、三つの遊星歯車53が備えられている。二列目の遊星歯車機構50Bに、太陽歯車54、内歯歯車55、及び、三つの遊星歯車56が備えられている。一列目の遊星歯車機構50Aに、三つの遊星歯車53に各別に噛み合った三つの連動歯車57が備えられている。三つの連動歯車57は、二列目の遊星歯車機構50Bの三つの遊星歯車56に各別に連動連結されている。連動歯車57と遊星歯車56との連動連結は、連動歯車57と遊星歯車56とを一体的に形成することによって行われている。
【0030】
複合遊星伝動部18Bの前部に、一列目の遊星歯車機構50Aの太陽歯車51に相対回転不能に連動連結された第1遊星入力ギヤ58が設けられている。第1遊星入力ギヤ58は、静油圧式無段変速部18Aの無段出力ギヤ35に動力伝達機構60によって連動連結されている。動力伝達機構60に、回転可能な中継軸61と、第1中継ギヤ62と、第2中継ギヤ63と、が備えられている。中継軸61は、無段出力ギヤ35のモータ軸37に対して平行に設けられている。第1中継ギヤ62は、無段出力ギヤ35に噛み合った状態で中継軸61の後端部に相対回転不能に設けられている。第2中継ギヤ63は、第1遊星入力ギヤ58に噛み合った状態で中継軸61の前端部に相対回転不能に設けられている。
無段出力ギヤ35の動力が、動力伝達機構60によって第1遊星入力ギヤ58に伝達され、第1遊星入力ギヤ58から太陽歯車51に入力される。
【0031】
複合遊星伝動部18Bの前部に第2遊星入力ギヤ59が設けられ、第2遊星入力ギヤ59は、一列目の遊星歯車機構50Aの内歯歯車52に相対回転不能に連動連結されている。第2遊星入力ギヤ59は、入力軸17に入力伝動機構65によって連動連結されている。入力伝動機構65に、入力軸ギヤ66と、第4中継ギヤ68と、第五中継ギヤ69と、が備えられている。入力軸ギヤ66は、入力軸17に相対回転不能に設けられている。第4中継ギヤ68は、入力軸ギヤ66に噛み合った状態で第3中継軸67の前端部に相対回転不能に設けられている。第五中継ギヤ69は、第2遊星入力ギヤ59に噛み合った状態で第3中継軸67の後端部に相対回転不能に設けられている。エンジン1の動力が、出力軸1aからダンパディスク16を介して入力軸17に伝達され、入力伝動機構65によって第2遊星入力ギヤ59に伝達され、第2遊星入力ギヤ59から内歯歯車52に入力される。
【0032】
複合遊星伝動部18Bの後部に、第1出力軸71と、第2出力軸72と、第3出力軸73と、が相対回転可能に設けられている。第1出力軸71と、第2出力軸72と、第3出力軸73と、は三重軸に構成されている。第1出力軸71は、二列目の遊星歯車機構50Bの内歯歯車55に連動連結され、1速ギヤ連動機構76に動力を伝達する。第2出力軸72は、キャリヤ70に連動連結され、3速ギヤ連動機構78に動力を伝達する。キャリヤ70は、一列目の遊星歯車機構50Aの遊星歯車53を支持し、かつ、二列目の遊星歯車機構50Bの遊星歯車56を支持するよう構成されている。第3出力軸73は、二列目の遊星歯車機構50Bの太陽歯車54に連動連結され、2速ギヤ連動機構77及び4速ギヤ連動機構79に動力を伝達する。
【0033】
静油圧式無段変速部18Aは、無段出力ギヤ35から正回転方向または逆回転方向の動力を出力する。静油圧式無段変速部18Aからの動力が、動力伝達機構60によって一列目の遊星歯車機構50Aの太陽歯車51に入力される。エンジン1からの動力が入力伝動機構65によって一列目の遊星歯車機構50Aの内歯歯車52に入力される。複合遊星伝動部18Bにおいて、静油圧式無段変速部18Aの動力と、エンジン1の動力と、が二列の遊星歯車機構50A,50Bによって合成され、合成動力が第1出力軸71、第2出力軸72及び第3出力軸73から出力される。
【0034】
段階分け伝動部18Cに、第1クラッチCL1と、第2クラッチCL2と、第3クラッチCL3と、第4クラッチCL4と、が備えられている。第1クラッチCL1乃至第4クラッチは、油圧操作式の多板クラッチによって構成されている。第1クラッチCL1乃至第4クラッチの夫々の出力側回転部材に、出力軸75が相対回転不能に連動連結されている。
【0035】
第1クラッチCL1の入力側回転部材と、複合遊星伝動部18Bの第1出力軸71と、に亘って1速ギヤ連動機構76が設けられ、1速ギヤ連動機構76は1速レンジを設定する。第2クラッチCL2の入力側回転部材と、複合遊星伝動部18Bの第3出力軸73と、に亘って2速ギヤ連動機構77が設けられ、2速ギヤ連動機構77は2速レンジを設定する。第3クラッチCL3の入力側回転部材と、複合遊星伝動部18Bの第2出力軸72と、に亘って3速ギヤ連動機構78が設けられ、3速ギヤ連動機構78は3速レンジを設定する。第4クラッチCL4の入力側回転部材と、複合遊星伝動部18Bの第3出力軸73と、に亘って4速ギヤ連動機構79が設けられ、4速ギヤ連動機構79は4速レンジを設定する。
【0036】
図3は、静油圧式無段変速部18Aの変速状態と、1速レンジ乃至4速レンジと、出力軸75による出力速度Vとの関係を示すグラフ図である。
図3の縦軸は、出力軸75による出力速度Vを示す。
図3の横軸は、静油圧式無段変速部18Aの変速状態を示し、「N」は、中立状態を示し、「+MAX」は、出力方向が正回転方向にある状態での最高速状態を示し、「-MAX」は、出力方向が逆回転方向にある状態での最高速状態を示す。「C+」と「C-」との間で静油圧式無段変速部18Aの斜板角度が変更されることによって、静油圧式無段変速部18Aの無段階での変速制御が行われる。「C+」及び「C-」は、「+MAX」と「-MAX」との間に位置する。
【0037】
図3の出力速度V軸において、ゼロとV1との間の領域が1速レンジであって、第1クラッチCL1が動力伝達状態の場合における速度レンジである。V1とV2との間の領域が2速レンジであって、第2クラッチCL2が動力伝達状態の場合における速度レンジである。V2とV3との間の領域が3速レンジであって、第3クラッチCL3が動力伝達状態の場合における速度レンジである。V3とV4との間の領域が4速レンジであって、第4クラッチCL4が動力伝達状態の場合における速度レンジである。
【0038】
図3に、1速レンジと2速レンジとの交点C1が示され、交点C1における出力速度VはV1である。交点C1では、第1クラッチCL1または第2クラッチCL2が動力伝達状態に設定されるが、どちらが動力伝達状態であっても、出力速度VがV1となる。2速レンジと3速レンジとの交点C2が示され、交点C2における出力速度VはV2である。
交点C2では、第2クラッチCL2または第3クラッチCL3が動力伝達状態に設定されるが、どちらが動力伝達状態であっても、出力速度VがV2となる。3速レンジと4速レンジとの交点C3が示され、交点C3における出力速度VはV3である。交点C3では、第3クラッチCL3または第4クラッチCL4が動力伝達状態に設定されるが、どちらが動力伝達状態であっても、出力速度VがV3となる。交点C1はV1とC+との交点である。交点C2はV2とC-との交点である。交点C1はV3とC+との交点である。
【0039】
図3の1速レンジにおいて、Z0で示される領域では、静油圧式無段変速部18Aの回転速度とエンジン1の回転速度とが略相殺され、第1出力軸71から出力される動力の回転速度が、略ゼロとなる。第1クラッチCL1が動力伝達状態に制御されると、第1出力軸71から出力される動力が、第1クラッチCL1を介して出力軸75へ伝達可能となる。そして、静油圧式無段変速部18Aの斜板が逆回転方向での最高速付近(-MAX付近)から正回転方向での最高速付近(+MAX付近)に向けて変速制御されることによって、出力軸75の出力速度Vが1速レンジでゼロからV1に無段階に増速する。
【0040】
出力軸75の出力速度VがV1である状態で、第1クラッチCL1が動力遮断状態に切換えられ、第2クラッチCL2が動力伝達状態に切換えられると、1速レンジから2速レンジへシフトされる。このとき、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2との切換えが、交点C1で行われるため、出力速度VがV1のまま保持される。そして、静油圧式無段変速部18Aの斜板が正回転方向での最高速付近(+MAX付近)から逆回転方向での最高速付近(-MAX付近)に向けて変速制御されることによって、出力軸75の出力速度Vが2速レンジでV1からV2に無段階に増速する。
【0041】
出力軸75の出力速度VがV2である状態で、第2クラッチCL2が動力遮断状態に切換えられ、第3クラッチCL3が動力伝達状態に切換えられると、2速レンジから3速レンジへシフトされる。このとき、第2クラッチCL2と第3クラッチCL3との切換えが、交点C2で行われるため、出力速度VがV2のまま保持される。そして、静油圧式無段変速部18Aの斜板が逆回転方向での最高速付近(-MAX付近)から正回転方向での最高速付近(+MAX付近)に向けて変速制御されることによって、出力軸75の出力速度Vが3速レンジでV2からV3に無段階に増速する。
【0042】
出力軸75の出力速度VがV3である状態で、第3クラッチCL3が動力遮断状態に切換えられ、第4クラッチCL4が動力伝達状態に切換えられると、3速レンジから4速レンジへシフトされる。このとき、第3クラッチCL3と第4クラッチCL4との切換えが、交点C3で行われるため、出力速度VがV3のまま保持される。そして、静油圧式無段変速部18Aの斜板が正回転方向での最高速付近(+MAX付近)から逆回転方向での最高速付近(-MAX付近)に向けて変速制御されることによって、出力軸75の出力速度Vが4速レンジでV3からV4に無段階に増速する。
【0043】
出力軸75の出力速度VがV4からゼロまで減速する場合、静油圧式無段変速部18Aの斜板が増速の場合と逆向きに変速制御されるとともに、クラッチの動力伝達状態が、第4クラッチCL4、第3クラッチCL3、第2クラッチCL2、第1クラッチCL1の順に切換えられる。これにより、出力軸75の出力速度Vは、4速レンジ、3速レンジ、2速レンジ、1速レンジの順に無段階に減速する。
【0044】
〔変速後の動力について〕
図2に示されるように、出力軸75と入力軸90とが連結部材85を介して相対回転不能に連動連結されている。段階分け伝動部18Cから出力された動力は、出力軸75から入力軸90に入力され、前後進切換装置19によって前進動力または後進動力に変換され、出力軸91に伝達される。出力軸91は、入力軸90に対して平行に配置され、中継軸45に相対回転可能に外嵌された筒軸によって構成されている。出力軸91の軸芯は、複合遊星伝動部18Bの太陽歯車51,54の軸芯と同じ軸芯上に位置している。
【0045】
前後進切換装置19に前進クラッチCLFと後進クラッチCLRとが備えられている。
入力軸90に、前進クラッチCLFと後進クラッチCLRとの夫々の入力側回転部材が相対回転不能に連結されている。前進クラッチCLFの出力側回転部材と、出力軸91と、に亘って前進ギヤ機構92が設けられている。後進クラッチCLRの出力側回転部材と、出力軸91と、に亘って後進ギヤ機構93が設けられている。後進ギヤ機構93の逆転ギヤ93aは、後輪差動機構20の入力軸20aに相対回転可能に支持されている。前後進切換装置19の出力軸91の前部と、後輪差動機構20の入力軸20aの前部と、に亘ってギヤ連動機構95が設けられている。
【0046】
前進クラッチCLFが動力伝達状態であって、かつ、後進クラッチCLRが動力遮断状態であると、出力軸75から入力軸90に入力された動力が、前進クラッチCLF及び前進ギヤ機構92を介して、前進動力として出力軸91に伝達される。前進クラッチCLFが動力遮断状態であって、かつ、後進クラッチCLRが動力伝達状態であると、出力軸75から入力軸90に入力された動力が、後進クラッチCLR及び後進ギヤ機構93を介して、前進動力とは逆回転の後進動力として出力軸91に伝達される。
【0047】
前後進切換装置19が出力軸91から出力する前進動力または後進動力がギヤ連動機構95によって後輪差動機構20の入力軸20aに伝達され、後輪差動機構20によって左右の後車輪7に伝達される。後輪差動機構20から左右の後車輪7への動力伝達は、後輪差動機構20の出力軸20bと後車軸7aとの間に設けられた遊星歯車式の最終減速機構96を介して行われる。後輪差動機構20の出力軸20bに、後車輪7を制動させるブレーキ97が設けられている。ブレーキ97は、本発明の『制動装置』である。
【0048】
前輪伝動機構21は、後輪差動機構20の入力軸20aの前部に第2ギヤ連動機構100、中継軸101及び連結部材102を介して連動連結された入力軸103と、入力軸103に対して平行に配置された出力軸104とを備えている。入力軸103に等速クラッチ105及び増速クラッチ106の入力側回転部材が相対回転不能に連結されている。等速クラッチ105の出力側回転部材と出力軸104とにわたり、入力軸103の回転速度をほぼ等速の伝動で出力軸104に伝達する等速ギヤ機構107が設けられている。増速クラッチ106の出力側回転部材と出力軸104とにわたり、入力軸103の回転速度を増速して出力軸104に伝達する増速ギヤ機構108が設けられている。出力軸104は、回転軸109を介して前輪差動機構22の入力軸22aに連動連結されており、左右の前車輪6に向けて出力する。なお、中継軸101に、駐車ブレーキ101Aが装着されている。
【0049】
等速クラッチ105が動力伝達状態であって、かつ、増速クラッチ106が動力遮断状態であると、左右の前車輪6の平均周速度が左右の後車輪7の平均周速度にほぼ等しくなる状態で前車輪6及び後車輪7が駆動される。また、等速クラッチ105が動力遮断状態であって、かつ、増速クラッチ106が動力伝達状態であると、左右の前車輪6の平均周速度が左右の後車輪7の平均周速度よりも速くなる状態で前車輪6及び後車輪7が駆動される。更に、等速クラッチ105と増速クラッチ106との両方が動力遮断状態であると、入力軸103から出力軸104への伝動が停止され、前車輪6に向けての出力が停止される。この場合、左右の前車輪6が駆動されず、左右の後車輪7のみが駆動される。
【0050】
〔斜板角度制御部について〕
上述したように、出力軸75の出力速度VがV4からゼロまで減速する場合、出力軸75の出力速度Vは、4速レンジ、3速レンジ、2速レンジ、1速レンジの順に無段階に減速する。オペレータがブレーキ操作を行った場合、左右一対の後車輪7,7の夫々に設けられたブレーキ97,97の両方が制動作用しながら、静油圧式無段変速部18Aが減速制御される。しかし、ブレーキ97,97の制動作用が強い場合(いわゆる急ブレーキ)、ブレーキ97,97のブレーキ力が、静油圧式無段変速部18Aの斜板の動作スピードよりも速く出力軸75に作用し、出力軸20bや出力軸75がブレーキ97,97によって当該斜板の動作完了前に拘束される虞がある。このとき、駆動油路32における油圧が過度に高くなり、駆動油路32に設けられたリリーフ弁が作動したり、駆動油路32における作動油の温度が適温よりも高くなったりする虞がある。こうなると、静油圧式無段変速部18Aによる動力伝達の効率にも影響を及ぼす虞がある。このような不都合を回避するため制御を、
図4及び
図5に基づいて説明する。
【0051】
図4に示されるように、駆動油路32における入り経路と戻り経路との夫々に第1圧力検出部25と第2圧力検出部26とが備えられ、第1圧力検出部25と第2圧力検出部26との夫々は駆動油路32を循環する油圧を検出する。
図4に示される制御装置80は、マイクロコンピュータによって構成され、制御装置80に判定部81及び斜板角度制御部82が備えられている。第1圧力検出部25と第2圧力検出部26と車速検出部27との夫々の検出信号が制御装置80に送られる。車速検出部27は、本発明の『速度検出部』であって、例えば入力軸20aまたは出力軸20bの回転速度に基づいて、後車輪7の速度を検出するように構成されている。また、車速検出部27は、入力軸20aまたは出力軸20bの回転速度に基づいて、出力軸75の出力速度Vを検出可能である。
【0052】
判定部81は、車速検出部27によって検出された速度と、第1圧力検出部25及び第2圧力検出部26によって検出された油圧と、に基づいて静油圧式無段変速部18Aの斜板角度がトラクターの停車に適した斜板角度であるかどうかを判定する。トラクターの停車に適した斜板角度とは、出力軸75から出力される回転速度が予め設定された回転速度以下となる斜板角度であることを意味する。つまり、判定部81は、油圧機械式変速装置18から出力される回転速度が予め設定された回転速度以下となる斜板角度であるかどうかを判定する。斜板角度制御部82は、判定部81の判定結果に基づいて、静油圧式無段変速部18Aの斜板角度を変更制御する。
【0053】
図5に、判定部81による処理の一例が示される。まず、判定部81は、上述したブレーキ97,97の制動力が予め設定された値以上であるかどうかを判定する(ステップ#01)。ブレーキ97,97の制動力は、例えばブレーキペダルの操作量に基づいて算出されても良いし、例えば3次元加速度センサーの検出値に基づいて算出されても良い。ブレーキ97,97の制動力が予め設定された値未満であれば(ステップ#01:No)、判定部81は、ブレーキ97,97の制動力が緩やかであると判定する。ブレーキ97,97の制動力が緩やかであれば、ブレーキ97,97の制動作用による出力軸20bや出力軸75の回転速度の減速に対して、静油圧式無段変速部18Aの斜板の動作スピードが十分追い付いつく。このため、判定部81による判定処理は行われず、斜板角度制御部82による斜板角度の変更制御は行われない。つまり、斜板角度制御部82は、ブレーキ97,97によって後車輪7,7が制動されている場合に斜板角度を変更制御する。
【0054】
ブレーキ97,97の制動力が予め設定された値以上であれば(ステップ#01:Yes)、判定部81は、急ブレーキが作用していると判定する。そして判定部81は、出力軸75の出力速度VがV0以下であるかどうかを判定する(ステップ#02)。V0はV1よりも小さく、
図3における1速レンジの範囲内の速度である。出力速度VがV0を上回ると(ステップ#02:No)、制御装置80は、例えば前進クラッチCLFが半クラッチ状態となるように前進クラッチCLFを制御する(ステップ#05)。ブレーキ97,97によって急減速が行われる間であっても、クラッチが半クラッチ状態になることによって、駆動油路32における作動油の圧力上昇が抑制され、エンジン1のストールが回避される。
【0055】
出力速度VがV0以下であれば(ステップ#02:Yes)、判定部81は、閉回路である駆動油路32の油圧が予め設定された値以上であるかどうかを判定する(ステップ#03)。駆動油路32の油圧が予め設定された値以上であれば(ステップ#03:Yes)、判定部81は、トラクターの停車状態において静油圧式無段変速部18Aに過度な負荷が掛かっていると判定する。このとき、斜板角度制御部82は、静油圧式無段変速部18Aの回転速度とエンジン1の回転速度とが相殺されるように、静油圧式無段変速部18Aの斜板を
図3に示されるZ0の領域まで動作させる。これにより、エンジン1と静油圧式無段変速部18Aとの合成動力が略ゼロとなって、駆動油路32における作動油の過度な圧力上昇が抑制される。つまり、斜板角度制御部82は、出力速度Vが予め設定された値以下であって、かつ、閉回路である駆動油路32の油圧が予め設定された値以上である場合に、静油圧式無段変速部18Aの斜板角度を変更制御する。
【0056】
駆動油路32の圧力が予め設定された値未満であれば(ステップ#03:No)、判定部81による判定処理は終了し、斜板角度制御部82による斜板角度の変更制御は行われない。
【0057】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0058】
(1)
図5に示されるフローチャート図では、ステップ#01の制御が無くても良く、ステップ#02からスタートする構成であっても良い。
【0059】
(2)
図3に示されるV0はゼロであっても良い。この場合、斜板角度制御部82による斜板角度変更制御が、トラクターの停車後(停車の瞬間も含む)に行われても良い。
【0060】
(3)上述の実施形態において、変速装置は、静油圧式無段変速部18Aの出力側に遊星歯車機構50A,50Bを有する油圧機械式変速装置18であるが、変速装置は静油圧式無段変速部18Aのみを有する構成であっても良い。
【0061】
(4)上述の実施形態において、駆動油路32,32における入り経路と戻り経路との夫々に、第1圧力検出部25と第2圧力検出部26とが備えられているが、この実施形態に限定されない。例えば、圧力検出部は、一対の駆動油路32,32の少なくとも一方に設けられても良い。
【0062】
(5)上述の実施形態では、走行装置として前車輪6及び後車輪7が備えられているが、走行装置はクローラ式のものであっても良い。
【0063】
(6)上述の実施形態では、駆動油路32の油圧が予め設定された値以上であれば、斜板角度制御部82は、判定部81の判定結果に基づいて、静油圧式無段変速部18Aの斜板を
図3に示されるZ0の領域まで動作させる。このとき、静油圧式無段変速部18Aの斜板が、
図3に示される1速レンジの右上側(交点C1側)からZ0の領域まで動作する構成であっても良いし、
図3に示される1速レンジの左下側(-MAX側)からZ0の領域まで動作する構成であっても良い。静油圧式無段変速部18Aの斜板が1速レンジの左下側(-MAX側)に位置する状態は、例えば、出力速度Vがゼロ以下になって、出力軸75に正規の回転方向と逆方向の回転力が作用する状態を意味する。このような場合にも、静油圧式無段変速部18Aに過度な油圧が作用し得るため、判定部81は、
図5のステップ#03に基づいて、駆動油路32の油圧が予め設定された値以上であるかどうかを判定する。そして、斜板角度制御部82は、判定部81の判定結果に基づいて、静油圧式無段変速部18Aの斜板を
図3に示されるZ0の領域まで動作させる。
【0064】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。
また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、静油圧式無段変速機構を有する変速装置が備えられた作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 :エンジン
6 :前車輪(走行装置)
7 :後車輪(走行装置)
18 :油圧機械式変速装置(変速装置)
18A :静油圧式無段変速部(静油圧式無段変速機構)
25 :第1圧力検出部(圧力検出部)
26 :第2圧力検出部(圧力検出部)
27 :車速検出部(速度検出部)
30 :油圧ポンプ
31 :油圧モータ
32 :駆動油路(油圧経路)
50A :遊星歯車機構
50B :遊星歯車機構
81 :判定部
82 :斜板角度制御部
97 :ブレーキ(制動装置)