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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】鋼製エレメント施工装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20240607BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/06 311B
E21D9/06 311C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020214389
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100431
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399101337
【氏名又は名称】株式会社ジェイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 智明
(72)【発明者】
【氏名】大塚 隆人
(72)【発明者】
【氏名】山本 達也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佑基
(72)【発明者】
【氏名】本田 諭
(72)【発明者】
【氏名】丸子 文之
(72)【発明者】
【氏名】西村 知晃
(72)【発明者】
【氏名】中村 征史
(72)【発明者】
【氏名】山田 宣彦
(72)【発明者】
【氏名】桑原 清
(72)【発明者】
【氏名】益田 彰久
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-108474(JP,A)
【文献】実開昭59-163691(JP,U)
【文献】特開2006-169780(JP,A)
【文献】特開2002-168100(JP,A)
【文献】特開2009-079359(JP,A)
【文献】特開2010-077595(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1266112(KR,B1)
【文献】実開昭60-087294(JP,U)
【文献】特開平03-151415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0030398(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/04
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃口の後端に接続された鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させ、互いの継手にて連結された前記鋼製エレメントを左右方向に並設する施工を行う鋼製エレメント施工装置であって、
底面部と一対の側面部と天面部を有して略角管状を呈している第1刃口本体と、前記第1刃口本体の四隅にその第1刃口本体の管軸方向に沿って設けられている第1刃口継手とを備えており、既に地盤中に設置されている基準鋼製エレメントの側部に沿って設けられている継手に一方の側面部側の第1刃口継手を連結した状態で、後端に接続された先行鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させる第一の刃口と、
底面部と一対の側面部と天面部を有して略角筒状を呈している第2刃口本体と、前記第2刃口本体の一方の側面部側の上隅と下隅にその第2刃口本体の管軸方向に沿って設けられている第2刃口継手とを備えており、前記第一の刃口の他方の側面部側の第1刃口継手と前記先行鋼製エレメントの継手の少なくとも一方に前記第2刃口継手を連結した状態で、後端に接続された後行鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させる第二の刃口と、
を備え、
前記第二の刃口における上隅の第2刃口継手には、その第2刃口継手が前方に延出されてなる突出部が設けられていることを特徴とする鋼製エレメント施工装置。
【請求項2】
前記突出部の先端側と、前記第2刃口本体の天面部とを繋ぐ補強板部が設けられており、
前記補強板部は、前記天面部から前記突出部の先端側に向けて先細る形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製エレメント施工装置。
【請求項3】
前記第一の刃口の他方の側面部側の第1刃口継手と、前記第二の刃口の第2刃口継手とが連結された状態で、前記第二の刃口における上隅の第2刃口継手が前記第1刃口継手の上側に配されるようになっており、下側に配される第1刃口継手の少なくとも一部は、第2刃口継手の下面を露出させるように切り欠かれた態様に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼製エレメント施工装置。
【請求項4】
前記第一の刃口の他方の側面部側の上隅の第1刃口継手の先端部には、その上隅の第1刃口継手と連結される第2刃口継手の進行方向前方の少なくとも一部を覆うサイズを有する排障カバーが取り付けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の鋼製エレメント施工装置。
【請求項5】
刃口の後端に接続された鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させ、互いの継手にて連結された前記鋼製エレメントを上下方向に並設する施工を行う鋼製エレメント施工装置であって、
底面部と一対の側面部と天面部を有して略角管状を呈している第1刃口本体と、前記第1刃口本体の四隅にその第1刃口本体の管軸方向に沿って設けられている第1刃口継手とを備えており、既に地盤中に設置されている基準鋼製エレメントの下部に沿って設けられている継手に天面部側の第1刃口継手を連結した状態で、後端に接続された先行鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させる第一の刃口と、
底面部と一対の側面部と天面部を有して略角筒状を呈している第2刃口本体と、前記第2刃口本体の天面部側の隅にその第2刃口本体の管軸方向に沿って設けられている第2刃口継手とを備えており、前記第一の刃口の底面部側の第1刃口継手と前記先行鋼製エレメントの継手の少なくとも一方に前記第2刃口継手を連結した状態で、後端に接続された後行鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させる第二の刃口と、
を備え、
前記第二の刃口の第2刃口継手には、その第2刃口継手が前方に延出されてなる突出部が設けられていることを特徴とする鋼製エレメント施工装置。
【請求項6】
前記突出部の先端側と、前記第2刃口本体の側面部とを繋ぐ補強板部が設けられており、
前記補強板部は、前記側面部から前記突出部の先端側に向けて先細る形状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の鋼製エレメント施工装置。
【請求項7】
前記第一の刃口の底面部側の第1刃口継手と、前記第二の刃口の第2刃口継手とが連結された状態で、前記第2刃口継手が前記第1刃口継手よりも外側に配されるようになっており、内側に配される第1刃口継手の少なくとも一部は、第2刃口継手の側面を露出させるように切り欠かれた態様に形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の鋼製エレメント施工装置。
【請求項8】
前記第一の刃口の底面部側の第1刃口継手の先端部には、その第1刃口継手と連結される第2刃口継手の進行方向前方の少なくとも一部を覆うサイズを有する排障カバーが取り付けられていることを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の鋼製エレメント施工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路等の下方地盤中に鋼製エレメントを挿入する施工を行うための鋼製エレメント施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道線路等の下方地盤中に鋼製エレメントを挿入する施工を行い、非開削方式で地下構造物を構築する工法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この工法では、発進立坑側から到達立坑側に地盤を貫通させた基準エレメントの継手に、先端部に刃口Sを取り付けた先行鋼製エレメントE1の継手Jを連結し、ガイドとする基準エレメントに沿って先行鋼製エレメントE1を地盤に挿入させるとともに、先行鋼製エレメントE1の継手Jに、先端部に刃口Sを取り付けた後行鋼製エレメントE2の継手Jを連結し、先行鋼製エレメントE1に続けて後行鋼製エレメントE2を地盤に挿入させることを繰り返して、地下構造物を構築するようにしている。
具体的には、図10(a)に示すように、先行鋼製エレメントE1が後行鋼製エレメントE2よりも常に先行した位置にあるように、先行鋼製エレメントE1の掘進と後行鋼製エレメントE2の掘進を交互に行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-77595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の工法の場合、地盤の強度などに起因して先行鋼製エレメントE1と後行鋼製エレメントE2の掘進量(刃口Sからの掘削量)に差が生じてしまい、先行鋼製エレメントE1に対する後行鋼製エレメントE2の掘進が遅れ過ぎてしまうことがある。
そして、例えば、図10(b)に示すように、後行鋼製エレメントE2の刃口Sよりも先に、先行鋼製エレメントE1の先端部が位置してしまうと、先行鋼製エレメントE1における後行鋼製エレメントE2側の継手Jが地中にて剥出しの状態にされて土砂に晒されてしまい(図中のX部分)、地中にて露出された継手Jの内部空間に土砂が入り込んでしまうことがある。
鋼製エレメントの継手に入り込んだ土砂が密に詰まっていると、隣接する鋼製エレメント同士を連結している継手の隙間にグラウトを注入して止水を図っても、所定の止水効果が得られないことがあるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、鋼製エレメントの継手の内部空間に土砂が詰まり難くすることができる鋼製エレメント施工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
刃口の後端に接続された鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させ、互いの継手にて連結された前記鋼製エレメントを左右方向に並設する施工を行う鋼製エレメント施工装置であって、
底面部と一対の側面部と天面部を有して略角管状を呈している第1刃口本体と、前記第1刃口本体の四隅にその第1刃口本体の管軸方向に沿って設けられている第1刃口継手とを備えており、既に地盤中に設置されている基準鋼製エレメントの側部に沿って設けられている継手に一方の側面部側の第1刃口継手を連結した状態で、後端に接続された先行鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させる第一の刃口と、
底面部と一対の側面部と天面部を有して略角筒状を呈している第2刃口本体と、前記第2刃口本体の一方の側面部側の上隅と下隅にその第2刃口本体の管軸方向に沿って設けられている第2刃口継手とを備えており、前記第一の刃口の他方の側面部側の第1刃口継手と前記先行鋼製エレメントの継手の少なくとも一方に前記第2刃口継手を連結した状態で、後端に接続された後行鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させる第二の刃口と、
を備え、
前記第二の刃口における上隅の第2刃口継手には、その第2刃口継手が前方に延出されてなる突出部が設けられているようにした。
【0007】
かかる構成の鋼製エレメント施工装置であれば、第二の刃口における第一の刃口側に配される一方の側面部の上隅の第2刃口継手に継手状の突出部が設けられているので、後行鋼製エレメントを牽引または推進する第二の刃口よりも先の位置に、先行鋼製エレメントの先端部が位置してしまっても、突出部の長さ範囲であれば、先行鋼製エレメントにおける後行鋼製エレメント側の継手が地中にて剥出しの状態にされてしまうことがなく、継手部分からその内部空間に土砂が入り込み難くなっているため、鋼製エレメントの継手の内部空間に土砂が詰まり難くすることができる。
【0008】
また、望ましくは、
前記突出部の先端側と、前記第2刃口本体の天面部とを繋ぐ補強板部が設けられており、
前記補強板部は、前記天面部から前記突出部の先端側に向けて先細る形状に形成されているようにする。
【0009】
地盤に対して圧入される突起部は補強板部によって補強されており、この補強板部が、天面部から突出部の先端側に向けて先細る形状に形成されていることで、地盤に対して圧入し易くなっている。
【0010】
また、望ましくは、
前記第一の刃口の他方の側面部側の第1刃口継手と、前記第二の刃口の第2刃口継手とが連結された状態で、前記第二の刃口における上隅の第2刃口継手が前記第1刃口継手の上側に配されるようになっており、下側に配される第1刃口継手の少なくとも一部は、第2刃口継手の下面を露出させるように切り欠かれた態様に形成されているようにする。
【0011】
第1刃口継手と第2刃口継手とが連結された状態で、第2刃口継手の下面を露出させるように、第1刃口継手の一部が切り欠かれていれば、第2刃口継手の下面に付着した土砂は脱落し易くなっており、第1刃口継手と第2刃口継手の隙間に土砂が入り込み難くなっているので、第1刃口継手と第2刃口継手の隙間を通じて、刃口(第一の刃口,第二の刃口)の後端に接続されている鋼製エレメント(先行鋼製エレメント,後行鋼製エレメント)の継手間に土砂が入り込んで詰まってしまうことを低減することができる。
【0012】
また、望ましくは、
前記第一の刃口の他方の側面部側の上隅の第1刃口継手の先端部には、その上隅の第1刃口継手と連結される第2刃口継手の進行方向前方の少なくとも一部を覆うサイズを有する排障カバーが取り付けられているようにする。
【0013】
このような排障カバーが、第一の刃口の他方の側面部側の上隅の第1刃口継手の先端部に取り付けられていれば、第1刃口継手と第2刃口継手の隙間に土砂が入り込み難くなり、第1刃口継手と第2刃口継手の隙間を通じて、刃口(第一の刃口,第二の刃口)の後端に接続されている鋼製エレメント(先行鋼製エレメント,後行鋼製エレメント)の継手間に土砂が入り込むことを低減することができる。
また、先端が尖っている排障カバーにより、進行方向前方の地盤を崩すことによって、第1刃口継手や第2刃口継手を地盤に対して圧入し易くなる。
【0014】
上記目的を達成するため、この発明は、
刃口の後端に接続された鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させ、互いの継手にて連結された前記鋼製エレメントを上下方向に並設する施工を行う鋼製エレメント施工装置であって、
底面部と一対の側面部と天面部を有して略角管状を呈している第1刃口本体と、前記第1刃口本体の四隅にその第1刃口本体の管軸方向に沿って設けられている第1刃口継手とを備えており、既に地盤中に設置されている基準鋼製エレメントの下部に沿って設けられている継手に天面部側の第1刃口継手を連結した状態で、後端に接続された先行鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させる第一の刃口と、
底面部と一対の側面部と天面部を有して略角筒状を呈している第2刃口本体と、前記第2刃口本体の天面部側の隅にその第2刃口本体の管軸方向に沿って設けられている第2刃口継手とを備えており、前記第一の刃口の底面部側の第1刃口継手と前記先行鋼製エレメントの継手の少なくとも一方に前記第2刃口継手を連結した状態で、後端に接続された後行鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させる第二の刃口と、
を備え、
前記第二の刃口の第2刃口継手には、その第2刃口継手が前方に延出されてなる突出部が設けられているようにした。
【0015】
かかる構成の鋼製エレメント施工装置であれば、第二の刃口における第一の刃口側に配される天面部の隅の第2刃口継手に継手状の突出部が設けられているので、後行鋼製エレメントを牽引または推進する第二の刃口よりも先の位置に、先行鋼製エレメントの先端部が位置してしまっても、突出部の長さ範囲であれば、先行鋼製エレメントにおける後行鋼製エレメント側の継手が地中にて剥出しの状態にされてしまうことがなく、継手部分からその内部空間に土砂が入り込み難くなっているため、鋼製エレメントの継手の内部空間に土砂が詰まり難くすることができる。
【0016】
また、望ましくは、
前記突出部の先端側と、前記第2刃口本体の側面部とを繋ぐ補強板部が設けられており、
前記補強板部は、前記側面部から前記突出部の先端側に向けて先細る形状に形成されているようにする。
【0017】
地盤に対して圧入される突起部は補強板部によって補強されており、この補強板部が、側面部から突出部の先端側に向けて先細る形状に形成されていることで、地盤に対して圧入し易くなっている。
【0018】
また、望ましくは、
前記第一の刃口の底面部側の第1刃口継手と、前記第二の刃口の第2刃口継手とが連結された状態で、前記第2刃口継手が前記第1刃口継手よりも外側に配されるようになっており、内側に配される第1刃口継手の少なくとも一部は、第2刃口継手の側面を露出させるように切り欠かれた態様に形成されているようにする。
【0019】
第1刃口継手と第2刃口継手とが連結された状態で、第2刃口継手の側面を露出させるように、第1刃口継手の一部が切り欠かれていれば、第2刃口継手の側面に付着した土砂は脱落し易くなっており、第1刃口継手と第2刃口継手の隙間に土砂が入り込み難くなっているので、第1刃口継手と第2刃口継手の隙間を通じて、刃口(第一の刃口,第二の刃口)の後端に接続されている鋼製エレメント(先行鋼製エレメント,後行鋼製エレメント)の継手間に土砂が入り込んで詰まってしまうことを低減することができる。
【0020】
また、望ましくは、
前記第一の刃口の底面部側の第1刃口継手の先端部には、その第1刃口継手と連結される第2刃口継手の進行方向前方の少なくとも一部を覆うサイズを有する排障カバーが取り付けられているようにする。
【0021】
このような排障カバーが、第一の刃口の底面部側の第1刃口継手の先端部に取り付けられていれば、第1刃口継手と第2刃口継手の隙間に土砂が入り込み難くなり、第1刃口継手と第2刃口継手の隙間を通じて、刃口(第一の刃口,第二の刃口)の後端に接続されている鋼製エレメント(先行鋼製エレメント,後行鋼製エレメント)の継手間に土砂が入り込むことを低減することができる。
また、先端が尖っている排障カバーにより、進行方向前方の地盤を崩すことによって、第1刃口継手や第2刃口継手を地盤に対して圧入し易くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、鋼製エレメントの継手の内部空間に土砂が詰まり難くすることができる鋼製エレメント施工装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1の鋼製エレメント施工装置を示す概略斜視図である。
図2】鋼製エレメント施工装置の第二の刃口における突起部部分の拡大図である。
図3】鋼製エレメント施工装置の第二の刃口における突起部を示す拡大図である。
図4】第1刃口継手と第2刃口継手とが連結された状態で、第2刃口継手の下面を露出させるように、第1刃口継手の一部が切り欠かれている態様の説明図(a)と、第1刃口継手が切り欠かれていない態様の説明図(b)である。
図5】第1刃口継手の先端部に取り付けられた排障カバーを示す説明図(a)(b)である。
図6】排障カバーの変形例を示す説明図である。
図7】実施形態2の鋼製エレメント施工装置を示す概略斜視図である。
図8】実施形態2の鋼製エレメント施工装置を示す概略正面図である。
図9】排障カバーが取り付けられている実施形態2の鋼製エレメント施工装置を示す概略正面図である。
図10】先行鋼製エレメントが後行鋼製エレメントよりも先行した位置にある好適な状態に関する説明図(a)と、先行鋼製エレメントに対して後行鋼製エレメントが遅れ過ぎた状態に関する説明図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係る鋼製エレメント施工装置の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0025】
鋼製エレメント施工装置は、刃口の後端に接続された鋼製エレメントを牽引または推進するように地盤中に挿入させ、鋼製エレメント同士を互いの継手にて連結して複数の鋼製エレメントを所定方向に並設する施工を行う装置である。
鋼製エレメントEは、例えば、図1に示すように、断面視略「ロ」字状を呈する角管体であり、その四隅には角管体の管軸方向に沿う継手Jを有している。
鋼製エレメント施工装置は、このような鋼製エレメントと略同じ断面形状を有する刃口を用いて鋼製エレメントを牽引または推進し、鋼製エレメントを地盤中に挿入させる施工を行う。
なお、土砂を掘削・除去しながら刃口を前進させる駆動機構の構成や動作は従来公知のものと同様であるので、説明は省略する。
また、以下の実施形態では、鋼製エレメント牽引して地盤中に挿入させる施工を例に説明するが、鋼製エレメント牽引して地盤中に挿入させる施工も、鋼製エレメント推進して地盤中に挿入させる施工も、従来公知であるので、ここでは詳述しない。
【0026】
(実施形態1)
本実施形態の鋼製エレメント施工装置100は、例えば、図1に示すように、既に地盤中に設置されている基準鋼製エレメントEに沿って先行鋼製エレメントE1を牽引する第一の刃口10と、先行鋼製エレメントE1に沿って後行鋼製エレメントE2を牽引する第二の刃口20と、を備えている。
そして、先行鋼製エレメントE1が後行鋼製エレメントE2よりも先行した位置にあるように、第一の刃口10による掘進と第二の刃口20による掘進を交互に行うようにして、先行鋼製エレメントE1と後行鋼製エレメントE2を地盤中に挿入させる施工を行うようになっている。
実施形態1では、先行鋼製エレメントE1と後行鋼製エレメントE2を左右方向に並設する施工を行う装置について説明する。
なお、基準鋼製エレメントEと先行鋼製エレメントE1と後行鋼製エレメントE2の側面部と、第一の刃口10と第二の刃口20の側面部は同じ高さを有しており、互いの継手にて左右方向に連結可能となっている。
【0027】
第一の刃口10は、底面部11と一対の側面部12,13と天面部14を有して略角管状を呈している第1刃口本体10aと、第1刃口本体10aの四隅にその第1刃口本体10aの管軸方向に沿って設けられている第1刃口継手15とを備えている。
この第一の刃口10は、既に地盤中に設置されている基準鋼製エレメントEの側部に沿って設けられている継手Jに一方の側面部12側の第1刃口継手15を連結した状態で、後端に接続された先行鋼製エレメントE1を牽引するように地盤中に挿入させる。
【0028】
第二の刃口20は、底面部21と一対の側面部22,23と天面部24を有して略角筒状を呈している第2刃口本体20aと、第2刃口本体20aの一方の側面部22側の上隅と下隅にその第2刃口本体20aの管軸方向に沿って設けられている第2刃口継手25とを備えている。
この第二の刃口20は、第一の刃口10の他方の側面部13側の第1刃口継手15と先行鋼製エレメントE1の継手Jの少なくとも一方に第2刃口継手25を連結した状態で、後端に接続された後行鋼製エレメントE2を牽引するように地盤中に挿入させる。
なお、第2刃口本体20aの他方の側面部23側の上隅と下隅には、その第2刃口本体20aの管軸方向に沿う刃口継手26が設けられている。
【0029】
そして、図1図3に示すように、第二の刃口20における上隅の第2刃口継手25には、その第2刃口継手25が前方に延出されてなる突出部30が設けられている。
つまり、第2刃口継手25を延長した態様で形成された突起部30は、第2刃口継手25と同じ断面形状を有しており、突起部30は第2刃口継手25と同様に第1刃口継手15と連結可能になっている。
また、この突起部30には、突出部30の先端側と第2刃口本体20aの天面部24とを繋ぐ補強板部31が設けられている。
補強板部31は、地盤に対して圧入される突起部30を補強するために設けられている。
この補強板部31は、天面部24から突出部30の先端側に向けて先細る形状に形成されており、地盤に対して圧入し易くなっている。
【0030】
このように、実施形態1の鋼製エレメント施工装置100は、第一の刃口10と第二の刃口20を備えており、第二の刃口20における第一の刃口10側の上隅の第2刃口継手25には、継手状の突出部30が設けられている。
そして、後行鋼製エレメントE2を牽引する第二の刃口20よりも先の位置に、先行鋼製エレメントE1の先端部が位置してしまっても、突出部30の長さ範囲であれば、先行鋼製エレメントE1における後行鋼製エレメントE2側の継手Jが地中にて剥出しの状態にされて土砂に晒されてしまうことがないので、上記従来技術のように、地中にて露出された継手J部分からその内部空間に土砂が入り込んでしまうことがない。
なお、第二の刃口20における第一の刃口10側の下隅の第2刃口継手25の近傍の土砂は、第二の刃口20からの掘削により除去されるため、その箇所から継手Jの内部空間に土砂が入り込むことはないので、第二の刃口20における下隅の第2刃口継手25には突起部を設けていなくてもよい。
【0031】
以上のように、実施形態1の鋼製エレメント施工装置100であれば、第二の刃口20における第一の刃口10側の上隅の第2刃口継手25に突出部30が設けられていることで、先行鋼製エレメントE1における後行鋼製エレメントE2側の継手Jが地中にて露出され難くなっており、その継手Jの内部空間に土砂が入り込み難くなっているので、鋼製エレメント(E1,E2)の継手Jの内部空間に土砂が詰まり難くすることができる。
こうして、鋼製エレメント(E1,E2)の継手Jの内部空間に土砂が詰まり難くすることができれば、並設した鋼製エレメント(E1,E2)同士を連結している継手Jの隙間にグラウトを注入して好適に止水を図ることが可能になる。
そして、鋼製エレメント施工装置100は、第一の刃口10と第二の刃口20によって、鋼製エレメントE1,E2を牽引するように地盤中に挿入させ、鋼製エレメントE1,E2同士を互いの継手にて連結して複数の鋼製エレメントE1,E2を左右方向に並設する施工を好適に行うことができる。
【0032】
また、この鋼製エレメント施工装置100であれば、突出部30の長さ分、第二の刃口20よりも先に、先行鋼製エレメントE1の先端部が位置するように、第一の刃口10を掘進させてもよいので、第一の刃口10や第二の刃口20の1ストロークあたりの掘進長を従来よりも長くすることができる。
つまり、第一の刃口10や第二の刃口20による1ストロークあたりの掘進長を長くすることで、鋼製エレメント(E1,E2)を第一の刃口10や第二の刃口20で牽引して地盤中に挿入させる施工を効率よく行うことができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図4(a)に示すように、第一の刃口10の他方の側面部13側の第1刃口継手15と、第二の刃口20の第2刃口継手25とが連結された状態で、第二の刃口20における上隅の第2刃口継手25が第1刃口継手15の上側に配されるようになっている場合、下側に配される第1刃口継手15の少なくとも一部が、第2刃口継手25の下面を露出させるように切り欠かれた態様に形成されていることが好ましい。
第1刃口継手15と第2刃口継手25とが連結された状態で、第2刃口継手25の下面を露出させるように、第1刃口継手15の一部が切り欠かれていれば、第2刃口継手25の下面に付着した土砂は脱落し易く、第1刃口継手15と第2刃口継手25の隙間に土砂が入り込み難くなっているので、第1刃口継手15と第2刃口継手25の隙間を通じて、刃口(10,20)の後端に接続されている鋼製エレメント(E1,E2)の継手J間に土砂が入り込んで詰まってしまうようなことはない。
このようにして、鋼製エレメント(E1,E2)の継手J間に入り込む土砂を最小限にすれば、並設した鋼製エレメント(E1,E2)同士を連結している継手Jの隙間にグラウトを注入して好適に止水を図ることが可能になる。
【0034】
また、図5(a)(b)に示すように、第一の刃口10の他方の側面部13側の上隅の第1刃口継手15の先端部には、その上隅の第1刃口継手15と連結される第2刃口継手25の進行方向前方の少なくとも一部を覆うサイズを有する排障カバー40が取り付けられていてもよい。この排障カバー40は第一の刃口10に、着脱可能に取り付けられている。
排障カバー40は、第1刃口継手15に固定される軸部41と、軸部41に固設されている排障部42を備えている。排障部42は側面視略五角形状を呈し、その先端が尖った嘴状に形成されている。
このような排障カバー40が、第一の刃口10の他方の側面部13側の上隅の第1刃口継手15の先端部に取り付けられていれば、第1刃口継手15と第2刃口継手25の隙間に土砂が入り込み難くなり、第1刃口継手15と第2刃口継手25の隙間を通じて、刃口(10,20)の後端に接続されている鋼製エレメント(E1,E2)の継手J間に土砂が入り込むことを低減することができる。
また、先端が尖っている排障カバー40により、進行方向前方の地盤を崩すことによって、第1刃口継手15や第2刃口継手25を地盤に対して圧入し易くなる。
【0035】
また、排障カバー40は、図6に示すように、側面視略直角三角形状を呈する排障部42を備えたものでもよい。
この排障カバー40は、上面側に平坦面を配するように第1刃口継手15の先端部に取り付けて使用する。
このような排障カバー40であれば、進行方向前方の地盤を崩した際、その地盤を押し上げ難くなっているので、地盤上方にある鉄道線路や道路等に施工の影響をより一層及ぼし難くなっている。
【0036】
(実施形態2)
次に、本発明に係る鋼製エレメント施工装置の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0037】
本実施形態の鋼製エレメント施工装置100は、例えば、図7図8に示すように、既に地盤中に設置されている基準鋼製エレメントEに沿って先行鋼製エレメントE1を牽引する第一の刃口50と、先行鋼製エレメントE1に沿って後行鋼製エレメントE2を牽引する第二の刃口60と、を備えている。
そして、先行鋼製エレメントE1が後行鋼製エレメントE2よりも先行した位置にあるように、第一の刃口50による掘進と第二の刃口60による掘進を交互に行うようにして、先行鋼製エレメントE1と後行鋼製エレメントE2を地盤中に挿入させる施工を行うようになっている。
実施形態2では、先行鋼製エレメントE1と後行鋼製エレメントE2を上下方向に並設する施工を行う装置について説明する。
なお、基準鋼製エレメントEと先行鋼製エレメントE1と後行鋼製エレメントE2の底面部および天面部と、第一の刃口50と第二の刃口60の底面部および天面部は同じ幅を有しており、互いの継手にて上下方向に連結可能となっている。
【0038】
第一の刃口50は、底面部51と一対の側面部52,53と天面部54を有して略角管状を呈している第1刃口本体50aと、第1刃口本体50aの四隅にその第1刃口本体10aの管軸方向に沿って設けられている第1刃口継手55とを備えている。
この第一の刃口50は、既に地盤中に設置されている基準鋼製エレメントEの下部に沿って設けられている継手Jに天面部54側の第1刃口継手55を連結した状態で、後端に接続された先行鋼製エレメントE1を牽引するように地盤中に挿入させる。
【0039】
第二の刃口60は、底面部61と一対の側面部62,63と天面部64を有して略角筒状を呈している第2刃口本体60aと、第2刃口本体60aの天面部64側の隅にその第2刃口本体60aの管軸方向に沿って設けられている第2刃口継手65とを備えている。
この第二の刃口60は、第一の刃口50の底面部51側の第1刃口継手55と先行鋼製エレメントE1の継手Jの少なくとも一方に第2刃口継手65を連結した状態で、後端に接続された後行鋼製エレメントE2を牽引するように地盤中に挿入させる。
なお、第2刃口本体60aの底面部61側の隅には、その第2刃口本体60aの管軸方向に沿う刃口継手66が設けられている。
【0040】
そして、図7に示すように、第二の刃口60における天面部64側の第2刃口継手65には、その第2刃口継手65が前方に延出されてなる突出部30が設けられている。
つまり、第2刃口継手65を延長した態様で形成された突起部30は、第2刃口継手65と同じ断面形状を有しており、突起部30は第2刃口継手65と同様に第1刃口継手55と連結可能になっている。
また、この突起部30には、突出部30の先端側と第2刃口本体20aの側面部62,63とを繋ぐ補強板部31が設けられている。
補強板部31は、地盤に対して圧入される突起部30を補強するために設けられている。
この補強板部31は、側面部62,63から突出部30の先端側に向けて先細る形状に形成されており、地盤に対して圧入し易くなっている。
【0041】
このように、実施形態2の鋼製エレメント施工装置100は、第一の刃口50と第二の刃口60を備えており、第二の刃口60における第一の刃口50側の第2刃口継手65には、継手状の突出部30が設けられている。
そして、後行鋼製エレメントE2を牽引する第二の刃口60よりも先の位置に、先行鋼製エレメントE1の先端部が位置してしまっても、突出部30の長さ範囲であれば、先行鋼製エレメントE1における後行鋼製エレメントE2側の継手Jが地中にて剥出しの状態にされて土砂に晒されてしまうことがないので、上記従来技術のように、地中にて露出された継手J部分からその内部空間に土砂が入り込んでしまうことがない。
【0042】
以上のように、実施形態2の鋼製エレメント施工装置100であれば、第二の刃口60における第一の刃口50側の第2刃口継手65に突出部30が設けられていることで、先行鋼製エレメントE1における後行鋼製エレメントE2側の継手Jが地中にて露出され難くなっており、その継手Jの内部空間に土砂が入り込み難くなっているので、鋼製エレメント(E1,E2)の継手Jの内部空間に土砂が詰まり難くすることができる。
こうして、鋼製エレメント(E1,E2)の継手Jの内部空間に土砂が詰まり難くすることができれば、並設した鋼製エレメント(E1,E2)同士を連結している継手Jの隙間にグラウトを注入して好適に止水を図ることが可能になる。
そして、鋼製エレメント施工装置100は、第一の刃口50と第二の刃口60によって、鋼製エレメントE1,E2を牽引するように地盤中に挿入させ、鋼製エレメントE1,E2同士を互いの継手にて連結して複数の鋼製エレメントE1,E2を上下方向に並設する施工を好適に行うことができる。
【0043】
また、この鋼製エレメント施工装置100であれば、突出部30の長さ分、第二の刃口60よりも先に、先行鋼製エレメントE1の先端部が位置するように、第一の刃口50を掘進させてもよいので、第一の刃口50や第二の刃口60の1ストロークあたりの掘進長を従来よりも長くすることができる。
つまり、第一の刃口50や第二の刃口60による1ストロークあたりの掘進長を長くすることで、鋼製エレメント(E1,E2)を第一の刃口50や第二の刃口60で牽引して地盤中に挿入させる施工を効率よく行うことができる。
【0044】
特に、図7図8に示すように、第一の刃口50の底面部51側の第1刃口継手55と、第二の刃口60の天面部64側の第2刃口継手65とが連結された状態で、第2刃口継手65が第1刃口継手55よりも外側に配されるようになっており、内側に配される第1刃口継手55の少なくとも一部は、第2刃口継手65の側面を露出させるように切り欠かれた態様に形成されている。
第1刃口継手55と第2刃口継手65とが連結された状態で、第2刃口継手65の側面(ここでは第一の刃口50における内側となる側面)を露出させるように、第1刃口継手55の一部が切り欠かれていれば、第2刃口継手65の側面に付着した土砂は脱落し易く、第1刃口継手55と第2刃口継手65の隙間に土砂が入り込み難くなっているので、第1刃口継手55と第2刃口継手65の隙間を通じて、刃口(50,60)の後端に接続されている鋼製エレメント(E1,E2)の継手J間に土砂が入り込んで詰まってしまうようなことはない。
このようにして、鋼製エレメント(E1,E2)の継手J間に入り込む土砂を最小限にすれば、並設した鋼製エレメント(E1,E2)同士を連結している継手Jの隙間にグラウトを注入して好適に止水を図ることが可能になる。
なお、第1刃口継手55は切り欠かれた態様に形成されていなくてもよい。その第1刃口継手55と連結される第2刃口継手65側に突出部30が設けられていることで、鋼製エレメント(E1,E2)の継手J間に土砂が入り込むのを低減することができるので、さらに第1刃口継手55が切り欠かれていれば、より一層継手J間に土砂が入り込むのを防ぐことが可能になる。
【0045】
また、図9に示すように、第一の刃口50の底面部51側の第1刃口継手55の先端部には、その第1刃口継手55と連結される第2刃口継手65の進行方向前方の少なくとも一部を覆うサイズを有する排障カバー40が取り付けられていてもよい。この排障カバー40は第一の刃口50に、着脱可能に取り付けられている。
このような排障カバー40が、第一の刃口50の底面部51側の第1刃口継手55の先端部に取り付けられていれば、第1刃口継手55と第2刃口継手65の隙間に土砂が入り込み難くなり、第1刃口継手65と第2刃口継手65の隙間を通じて、刃口(50,60)の後端に接続されている鋼製エレメント(E1,E2)の継手J間に土砂が入り込むことを低減することができる。
また、先端が尖っている排障カバー40により、進行方向前方の地盤を崩すことによって、第1刃口継手55や第2刃口継手65を地盤に対して圧入し易くなる。
【0046】
このように、本実施形態の鋼製エレメント施工装置100であれば、第二の刃口20,60における第一の刃口10,50側の第2刃口継手25,65に突出部30が設けられていることで、先行鋼製エレメントE1における後行鋼製エレメントE2側の継手Jが地中にて剥出しの状態にされ難くなっており、その継手Jの内部空間に土砂が入り込み難くなっているので、鋼製エレメント(E1,E2)の継手Jの内部空間に土砂が詰まり難くすることができる。
そして、鋼製エレメント施工装置100は、第一の刃口10,50と第二の刃口20,60によって、鋼製エレメントE1,E2を牽引するように地盤中に挿入させ、鋼製エレメントE1,E2同士を互いの継手にて連結して複数の鋼製エレメントE1,E2を所定方向に並設する施工を好適に行うことができる。
【0047】
そして、例えば、実施形態1の鋼製エレメント施工装置100によって上床版エレメント列を施工した後、その上床版エレメント列の両側から下方に向けて、実施形態2の鋼製エレメント施工装置100によって左右側壁エレメント列を施工し、その左右側壁エレメント列の下端同士を繋げるように、実施形態1の鋼製エレメント施工装置100によって下床版エレメント列を施工することにより、鋼製箱型(地下構造物)を地中に構築することができる(上記特許文献1の図7参照。)。
【0048】
なお、以上の実施の形態においては、第二の刃口20,60における第一の刃口10,50とは反対側の隅に刃口継手26,66を設けたが、刃口継手26,66を設けない構成であってもよい。
一方、第二の刃口20,60における第一の刃口10,50とは反対側の隅に刃口継手26,66が設けられていれば、第一の刃口10,50に連結される第二の刃口20,60に、さらに第二の刃口20,60を連結するようにして、3本以上の鋼製エレメントEを地盤中に挿入する施工を行うことが可能になる。
例えば、基準鋼製エレメントEに沿って第一の刃口(10,50)で先行鋼製エレメントE1を牽引しつつ、その先行鋼製エレメントE1に沿って第二の刃口(20,60)で後行鋼製エレメントE2を牽引し、更にその後行鋼製エレメントE2に沿って第二の刃口(20,60)で後行鋼製エレメントE2を牽引するようにすることで、3本以上の鋼製エレメントEを地盤中に挿入する施工を行うことができる。
ここで、基準鋼製エレメントEは、新たに地盤に挿入する鋼製エレメントよりも先に地盤中に設置されているものであり、地盤中に挿入し終えた先行鋼製エレメントE1や後行鋼製エレメントE2が設置済みの鋼製エレメントとして、次工程での基準鋼製エレメントEになる。
つまり、本願発明である鋼製エレメント施工装置100は、第一の刃口10,50や第二の刃口20,60を繰り返し使用することで、複数の鋼製エレメントEを地盤中に設置して、地下構造物を地中に構築する装置である。
【0049】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0050】
また、以下に、本願発明である鋼製エレメント施工装置100の要旨を付記しておく。
〈付記〉
刃口(S(10,20、50,60))の後端に接続された鋼製エレメント(E(E1,E2))を牽引するように地盤中に挿入させ、互いの継手(J)にて連結された前記鋼製エレメントを左右方向または上下方向に並設する施工を行う鋼製エレメント施工装置(100)であって、
底面部と一対の側面部と天面部を有して略角管状を呈している第1刃口本体(10a,50a)と、前記第1刃口本体の四隅にその第1刃口本体の管軸方向に沿って設けられている第1刃口継手(15,55)とを備えており、既に地盤中に設置されている基準鋼製エレメント(E)の側部(左右方向の連結の場合)または下部(上下方向の連結の場合)に沿って設けられている継手(J)に前記基準鋼製エレメント側となる第1刃口継手を連結した状態で、後端に接続された先行鋼製エレメント(E1)を牽引するように地盤中に挿入させる第一の刃口(10,50)と、
底面部と一対の側面部と天面部を有して略角筒状を呈している第2刃口本体(20a,60a)と、前記第2刃口本体の前記第一の刃口側となる隅にその第2刃口本体の管軸方向に沿って設けられている一対の第2刃口継手(25,65)とを備えており、前記第一の刃口の前記基準鋼製エレメントの反対側となる第1刃口継手と前記先行鋼製エレメントの継手の少なくとも一方に前記一対の第2刃口継手を連結した状態で、後端に接続された後行鋼製エレメント(E2)を牽引するように地盤中に挿入させる第二の刃口(20,60)と、
を備え、
前記一対の第2刃口継手の少なくとも一方には、その第2刃口継手が前方に延出されてなる突出部(30)が設けられていることを特徴とする鋼製エレメント施工装置。
【符号の説明】
【0051】
10 第一の刃口
10a 第1刃口本体
11 底面部
12 側面部(一方の側面部)
13 側面部(他方の側面部)
14 天面部
15 第1刃口継手
20 第二の刃口
20a 第2刃口本体
21 底面部
22 側面部(一方の側面部)
23 側面部(他方の側面部)
24 天面部
25 第2刃口継手
26 刃口継手
30 突出部
31 補強板部
40 排障カバー
50 第一の刃口
50a 第1刃口本体
51 底面部
52,53 側面部
54 天面部
55 第1刃口継手
60 第二の刃口
60a 第2刃口本体
61 底面部
62,63 側面部
64 天面部
65 第2刃口継手
66 刃口継手
100 鋼製エレメント施工装置
E 鋼製エレメント(基準鋼製エレメント)
E1 先行鋼製エレメント
E2 後行鋼製エレメント
J 継手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10