(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】高周波アブレーション及び直流電気穿孔カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2020564916
(86)(22)【出願日】2019-05-21
(86)【国際出願番号】 US2019033297
(87)【国際公開番号】W WO2019226640
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-05-19
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デレク シー. ズーターマイスター
(72)【発明者】
【氏名】トロイ ティー. テッグ
(72)【発明者】
【氏名】サロメ エー. ゴンザレス
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0116539(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0143414(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0319269(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0143588(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0230775(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0083194(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0366508(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0007071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面アレイ・カテーテルであって、
近位端及び遠位端を有するとともに長手方向軸を画定する細長いカテーテル・シャフトと、
可撓な平面アレイであって、
前記細長いカテーテル・シャフトの前記遠位端に連結され、
前記長手方向軸に平行に延在するストラットを複数個有し、
前記ストラットのそれぞれは、共通の平面に配置されるとともに当該ストラットに連結された電極を複数個有し、
前記電極は、前記平面アレイと接触している組織の電気生理学的特性を検出するとともに前記組織をアブレーションするように構成及び配置される、前記平面アレイと、
前記電極に通信可能に結合されるアブレーション・コントローラ回路であって、
前記電極から、前記電極と接触している前記組織の前記電気生理学的特性を示す信号を受信し、
前記信号に基づいて電気生理学的マップを生成し、
前記電気生理学的マップは、前記組織の前記電気生理学的特性と前記組織の場所との関連付けを示し、
前記組織のアブレーション療法を制御し、
前記組織の電気生理学的マップに少なくとも部分的に基づいて、前記アブレーション療法の際に単極構成又は双極構成で前記電極を選択的に動作させるように、
構成及び配置される、前記アブレーション・コントローラ回路と、
を備える、
平面アレイ・カテーテル。
【請求項2】
前記電極は、組織アブレーションを実施する高周波エネルギーを送信するとともに組織アブレーションのために単極構成及び双極構成の両方で動作されるように構成される、請求項1に記載の平面アレイ・カテーテル。
【請求項3】
前記平面アレイ・カテーテルは、さらに、温度センサであって、前記温度センサのそれぞれは、前記ストラットの一つに機械的に連結されるとともに前記電極の少なくとも1つに対して熱に関する通信を実行可能に配置される、前記温度センサを複数個備え、
前記アブレーション・コントローラ回路は、前記温度センサと通信可能に結合されるとともに、前記温度センサによって測定された温度に少なくとも部分的に基づいて、前記電極への電力供給を制御するように構成及び配置される、
請求項1から
2のいずれか一項に記載の平面アレイ・カテーテル。
【請求項4】
前記アブレーション・コントローラ回路は、少なくとも一対の電極を前記双極構成で動作させるように構成及び配置され、
前記双極構成で動作する少なくとも一対の前記電極は、前記平面アレイの隣り合うストラット上に分散される、請求項1から
3のいずれか一項に記載の平面アレイ・カテーテル。
【請求項5】
前記アブレーション・コントローラ回路は、さらに、
前記双極構成で動作する少なくとも一対の前記電極を介して、接触している組織の電気的特性をサンプリングするとともに制御された組織アブレーション療法を実施するように構成及び配置され、
接触している組織においてアブレーション療法の治療深さを変えるため、患者の皮膚に導電的に結合された接地パッドと組み合わせて、少なくとも一対の前記電極を単極構成で動作させるように構成及び配置される、
請求項
4に記載の平面アレイ・カテーテル。
【請求項6】
前記双極構成で動作する少なくとも一対の前記電極は、前記平面アレイの隣り合うストラットを斜めにわたって分散される、請求項
5に記載の平面アレイ・カテーテル。
【請求項7】
前記アブレーション・コントローラ回路は、さらに、少なくとも一対の前記電極を双極構成で動作させて接触している組織に高電圧直流を供給して組織のアブレーションに影響を与えるように構成及び配置され、
前記高電圧直流は、400から4000ボルトの間の電圧を含む、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の平面アレイ・カテーテル。
【請求項8】
バスケット・カテーテルであって
近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル・シャフトと、
前記細長いカテーテル・シャフトの前記遠位端に結合されるとともにスプラインを複数個備える可撓なバスケットと、
前記スプラインに取り付けられた複数の電極であって、前記可撓なバスケットと接触している組織の電気生理学的特性を検出するとともに前記組織をアブレーションするように構成及び配置される、前記電極と、
前記電極に通信可能に結合されるアブレーション・コントローラ回路であって、
前記電極から、前記可撓なバスケットと接触している前記組織の前記電気生理学的特性を示す信号を受信し、
前記組織の電気生理学的マップを生成し、
前記組織のアブレーション療法を制御し、
前記組織の電気生理学的マップに少なくとも部分的に基づいて、前記アブレーション療法の際に単極構成又は双極構成で前記電極を選択的に動作させるように、
構成及び配置される、前記アブレーション・コントローラ回路と、
を備える、
バスケット・カテーテル。
【請求項9】
前記電極は、組織アブレーションを実施する高周波エネルギーを送信するとともに組織アブレーションのために単極構成及び双極構成の両方で動作されるように構成される、請求項
8に記載のバスケット・カテーテル。
【請求項10】
前記バスケット・カテーテルは、さらに、
温度センサであって、前記温度センサのそれぞれは、前記スプラインの一つに機械的に連結されるとともに前記電極の少なくとも1つに対して熱に関する通信を実行可能に配置される、前記温度センサを複数個備え、
前記アブレーション・コントローラ回路は、温度センサ及び前記電極と通信可能に結合されるとともに、前記温度センサによって測定された温度に少なくとも部分的に基づいて、前記電極への電力供給を制御するように構成及び配置される、
請求項
8または9に記載のバスケット・カテーテル。
【請求項11】
前記アブレーション・コントローラ回路は、前記双極構成で前記電極を動作させるように構成及び配置され、
前記双極構成で動作する少なくとも一対の前記電極は、前記バスケットの隣り合うスプラインを斜めにわたって分散される、請求項
8から1
0のいずれか一項に記載のバスケット・カテーテル。
【請求項12】
前記アブレーション・コントローラ回路は、さらに、
前記双極構成で動作する少なくとも一対の前記電極を介して、接触している組織の電気的特性をサンプリングするとともに制御された組織アブレーション療法を実施するように構成及び配置され、
接触している組織においてアブレーション療法の治療深さを変えるため、患者の胸部に導電的に結合された接地パッドと組み合わせて少なくとも一対の前記電極を単極構成で動作させるように構成及び配置される、
請求項1
1に記載のバスケット・カテーテル。
【請求項13】
前記アブレーション・コントローラ回路は、さらに、少なくとも一対の前記電極を前記双極構成で動作させるように構成及び配置され、
前記双極構成で動作する少なくとも一対の前記電極は、隣り合うスプライン上に分散される、請求項
8から1
2のいずれか一項に記載のバスケット・カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2018年5月21日に出願された、米国仮特許出願第62/674,314号の利益を主張し、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、例えば、心臓の筋肉内の心筋組織を治療する高周波アブレーション・カテーテルに関する。詳細には、本開示は、高密度アレイ内に位置する複数の電極を備えるバスケット・カテーテル及び平面アレイ・カテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
カテーテルは、長年にわたって心臓の医療処置に使用されてきた。カテーテルは、例えば、心不整脈を診断及び治療するために使用され、より侵襲的な手術なしに、その他の方法ではアクセスできない体内の特定の場所に位置し得る。
【0004】
従来のアブレーション・カテーテルは、例えば、バスケット・カテーテルの長手方向軸を取り囲む複数の隣り合うリング電極を備え得る。リング電極は、白金又は他の何らかの金属で構成され得る。こうしたリング電極は比較的剛性が高く、例えば心不整脈に関連する症状を治療するためのアブレーション療法(例えば、RFアブレーション・エネルギー)を提供できる。
【0005】
心筋組織に対してアブレーション療法を実施するとき、心臓の鼓動が、特に不安定又は不規則である場合、電極と組織との間の適切な接触を、十分な時間維持することを困難にする。起伏のある、不規則な、又は肉柱形成された表面で、こうした問題は大きくなる。電極と組織との間の接触を十分に維持できない場合、質の高い変化が生じる可能性は低い。
【0006】
典型的には、心臓アブレーション療法は、フォーカルポイント(focal pоint)アブレーション・カテーテルを使用して実施される。フォーカルポイントアブレーション・カテーテルは、単一の電極と接地パッドとの間にエネルギーを供給する。電気生理学的マッピングがより正確になるにつれて、アブレーション療法も同様に、より的が絞られ得る。より的を絞ったアブレーション療法は、不必要な組織の損傷を制限する。
【0007】
心房細動などに対するアブレーション療法は、臨床医が、電気生理学的マッピング・カテーテルを患者の左心房内に導入し、診断を確認し、電気生理学的マッピング・カテーテルを取り外す前に、アブレーション療法の手順を決定しなければならないので、継続時間が延びる。アブレーション・カテーテルを導入してアブレーション療法を完了した後、続いて電気生理学的マッピング・カテーテルを再導入して療法の有効性を確認する。前述のことを考慮すると、電気生理学的マッピング及びアブレーション療法の両方が可能なカテーテルが、手術の継続時間を制限するために望ましいはずである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の議論は、本分野を説明することだけを意図しており、特許請求の範囲の否定と解釈されるべきではない。
【0009】
本開示の態様は、高密度電極アレイを使用する電気生理学的マッピングとアブレーションとの両方のための、可撓なカテーテルを対象とする。こうしたカテーテルを使用して、電極と接触している組織の電気生理学的特性を検出し、組織の単極及び/又は双極でのアブレーションを実施できる。詳細には、本開示は、カテーテル・シャフトの遠位端に連結された平面及びバスケット型の両方のエンド・エフェクタに関する。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態は、細長いカテーテル・シャフトと、可撓であるとともに、カテーテル・シャフトの遠位端に連結される平面アレイを備える平面アレイ・カテーテルを対象とする。カテーテル・シャフトは、長手方向軸を画定する。可撓な平面アレイは、組織に沿って当接するとともに長手方向軸に実質的に平行に延在する2本以上のストラットを有する。ストラットのそれぞれは、共通の平面に配置されるとともに、ストラットに連結された複数の電極を有する。複数の電極は、平面アレイと接触している組織の電気生理学的特性を検出するとともに組織を選択的にアブレーションする。より具体的な実施形態では、平面アレイの複数の電極は、組織のアブレーションのために単極構成及び双極構成の両方で動作できる。
【0011】
本開示の別の実施形態は、近位端と遠位端を有する細長いカテーテル・シャフトと、複数のスプラインを備える可撓なバスケットと、複数のスプラインに取り付けられた複数の電極とを備えるバスケット・カテーテルを対象とする。カテーテル・シャフトの遠位端に結合される可撓なバスケットは、組織に沿って当接する。複数の電極は、バスケットと接触している組織の電気生理学的特性を検出し、組織を選択的にアブレーションする。いくつかの特定の実施形態では、バスケット・カテーテルは、複数の温度センサ、及びアブレーション・コントローラ回路をさらに備える。各温度センサはスプラインに機械的に連結され、電極の少なくとも1つと熱的に連通するように配置される。アブレーション・コントローラ回路は、複数の温度センサ及び複数の電極と、通信可能に結合されている。アブレーション・コントローラ回路は、温度センサによって測定された各電極付近の温度に少なくとも部分的に基づいて、各電極への電力供給を制御する。
【0012】
本開示の前述及び他の態様、特徴、詳細、有用性、及び利点は、以下の説明及び特許請求の範囲を読み、添付図面を検討することにより明らかとなろう。
【0013】
様々な例示的な実施形態は、添付図面と共に、以下の詳細な説明を考慮して、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の様々な実施形態と整合する、電気生理学的カテーテル・システムの概略図である。
【0015】
【
図2A】本開示の様々な実施形態と整合する、電気生理学的カテーテルのバスケット型エンド・エフェクタの等角側面図である。
【0016】
【
図2B】本開示の様々な実施形態と整合する、
図2Aのバスケット型エンド・エフェクタの4本の隣り合うスプラインの一部の拡大図である。
【0017】
【
図2C】本開示の様々な実施形態と整合する、
図2Aのバスケット型エンド・エフェクタの2本の隣り合うスプラインの一部、及び一体で高周波アブレーション・システムを形成する接地パッドの拡大図である。
【0018】
【
図3A】本開示の様々な実施形態と整合する、電気生理学的マッピング・カテーテルの平面エンド・エフェクタの上面図である。
【0019】
【
図3B】本開示の様々な実施形態と整合する、組織と接触する電極のアレイを備える、
図3Aの平面アレイ・カテーテルの図である。
【0020】
【
図3C】本開示の様々な実施形態と整合する、脈管構造の上にある
図3Aの平面アレイ・カテーテルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で論じられる様々な実施形態は、修正形態及び代替形態に適用できるが、その態様は、例として図面に示されており、詳細に説明されることになる。しかし、本発明を、記載された個々の実施形態に限定する意図はないことを理解されたい。それどころか、特許請求の範囲で定義された態様を含む、本開示の範囲内にあるすべての修正形態、同等物、及び代替形態を包含することを意図する。加えて、この出願書類全体にわたり使用される用語「例」は、単なる例示のためであり、限定するものではない。
【0022】
本開示の態様は、高密度電極アレイを使用する、電気生理学的マッピングとアブレーションとの両方のための、可撓なカテーテルを対象とする。こうしたカテーテルを使用して、電極と接触している組織の電気生理学的特性を検出し、組織の単極及び/又は双極でのアブレーションを実施できる。詳細には、本開示は、カテーテル・シャフトの遠位端に連結された平面及びバスケット型の両方のエンド・エフェクタに関する。
【0023】
心臓の筋肉の電気生理学的マッピングを実施するために、ペーシングが実施される。ペーシング手術の際に、隣り合う電極が双極子対に割り当てられ、各双極子対がペア間の組織の電気的特性をサンプリングする。結果として生じる電気信号は、コントローラ回路で受信及び処理される。コントローラ回路は、各双極子対からの信号サンプルを、双極子対でサンプリングされた組織の場所に関連づけることにより、電気生理学的マッピングを作り出す。各双極子対からの電位図を分析でき、様々な電気的特性を、色分け(又は他の視覚的表示方式、例えば、陰影づけ、模様づけなど)によって、電気生理学的マップ上に視覚的に示し得る。いくつかの実施形態では、色分けは、各場所での電位図の電圧(例えば、中央、平均、最大など)に基づき得る。他の実施形態では、サンプリング窓の期間に電気信号が閾値電圧を超える(又は電圧勾配が変わる)回数を、マップ上に視覚的に表示してもよい。さらに他の実施形態では、時間窓の期間にサンプリングされた総エネルギーを表示してもよい。分画説明(fractionation accounting)の他の様々な方法が知られており、電気生理学的マップ上に表示される、結果として生じた色分けの1つ又は複数の要因として使用してもよい。こうした電気生理学的マップは、臨床医が、診断を検証し、望ましいアブレーション療法の手順への洞察を行い、療法の有効性を検証するために使用できる。
【0024】
本開示の態様は、電気生理学的マッピング及び単極/双極での高周波アブレーション治療が可能なエンド・エフェクタを備えた血管内カテーテルを対象とする。歴史的に、心臓アブレーション療法は、カテーテルの遠位先端に位置する単一の電極と患者の胸部に電気的に結合された接地パッドとの間にエネルギーを供給する、一箇所ずつアブレーションする技法を使用して実施されてきた。しかし、高密度電気生理学的マッピング・カテーテルは、容易に診断の特定を向上させ、それにより、臨床医は、電気生理学的マップを使用して、問題のある組織(例えば、不整脈病巣を含む組織など)を、より正確にアブレーション療法の標的とすることができる。これは、特に望ましい。というのは、臨床医が、左心房の健康な機能を維持するために、健康な心筋組織のアブレーションを可能な限り最小限に抑えることを望むからである。アブレーション療法のワークフローをさらに改善するために、本開示の態様は、単一のカテーテルを使用して、左心房の電気生理学的マッピングとアブレーション治療との両方を実施することを対象とする。かかる機能を単一のカテーテル内に組み合わせることにより、アブレーション療法の長さ(及び手術室の時間)を短縮できる。本開示のより具体的な実施形態は、アブレーション・カテーテルのアブレーション深さを制御することを対象とする。かかる実施形態は、接触している心筋組織の表面下の電気生理学的特性を示す、改善された3次元電気生理学的マッピングによって容易になる。次いで、アブレーション療法をカスタマイズして、単極型及び双極型の高周波組織アブレーションを組み合わせて使用し、左心房全体にわたり深さを変化させる組織アブレーション療法を提供できる。
【0025】
多くの成人において、心筋組織の深さは、通常は3ミリメートル未満であり、多くの場合2ミリメートル未満である。本開示の態様は、患者の組織アブレーション療法をカスタマイズすること、例えば、アブレーション療法の治療深さを変えて、損傷した組織だけを治療することによって、心不整脈に関係する症状を軽減することを対象とする。例えば、アブレーション療法の治療計画では、アブレーション治療の深さを変えるために、単極RFモード(単一の電極と接地パッドとの間のアブレーション)と双極RFモード(カテーテル上の電極間のアブレーション)との組合せを使用できる。かかる深さが可変のアブレーション療法での治療は、横隔神経などの影響を受けやすい組織へのリスクを軽減する。より具体的な実施形態では、アブレーション療法をさらにカスタマイズするために、変化を形成する多重化された又は選択された連続的なエネルギー供給を利用できる。
【0026】
本開示のいくつかの特定の態様では、8本のスプラインを備えるバスケット・カテーテルが開示される。スプラインのそれぞれは、イントロデューサを出ると半円形に戻る形状記憶材料で構成される。スプラインのそれぞれは、他のスプラインに対して、バスケットの周方向に均等に分散される。拡張されると、8本のスプラインは、ほぼ円形のバスケットを形成する。スプラインのそれぞれは、スプラインの長手方向に沿って延在する電極の列を備える。電極は、スプラインの長手方向に沿って均一に分散されることも、又は特殊な用途のために、スプラインの長手方向に沿って不均一に分散されることもあり得る。例えば、電極の分散は、バスケット・カテーテルが、例えば、心不整脈を診断することを目的とする場合、バスケットの遠位端に向かって重みづけされ得る。多くの心不整脈は、1本又は複数本の肺静脈から出ている漂遊電気信号によって引き起こされる。左心房への経中隔的アプローチを想定すると、臨床医は、電極の高密度アレイを備えるバスケットの遠位端の向きを、肺静脈へ合わせるであろう。バスケット・カテーテルは、左心房内に配置されると、左心房の電気生理学的マッピングを実施し、肺静脈に近接する心筋組織をアブレーションして心房細動に関係する症状を軽減し、左心房を再マッピングして療法の有効性を検証できる。
【0027】
本開示のいくつかの特定の態様では、5本のストラットを備える平面アレイ・カテーテルが開示される。ストラットのそれぞれは、カテーテル・シャフトの長手方向軸に整列し、長手方向軸と平行に延在できる。各ストラットは、近位端及び遠位端で、平面アレイの他のストラットと連結されている。ストラットはそれぞれ、ストラットの長手方向に沿って延在する電極の列を備える。いくつかの特定の実施形態では、電極は、ストラットの長手方向に沿って、平面アレイの隣り合うストラット間で、均等に分散されている。様々な実施形態によれば、本開示の平面カテーテル・アレイは、少なくとも4本のストラット、5本のストラット、6本のストラット、7本のストラット、又はおそらく8本のストラットさえも備え得る。
図3Aに示される実施形態では、アレイは5本のストラットを備える。
【0028】
本明細書に開示される電極は、リング電極、及び/又は基板(例えば、可撓な回路基板)上の印刷(スポット)電極であってもよい。印刷電極は、リング電極よりも近接した間隔で配置され得るので有利である。いくつかの実施形態では、例えば、印刷電極が、平面アレイ・カテーテルに0.1mmの間隔で首尾良く配置されている。より典型的には、リング電極及び印刷電極は、0.5mmから4mmの間隔で配置されているので有利である。かかる電極の間隔により、例えば、多くの心血管用途で、望ましい電気生理学的マッピングの粒度が容易に得られることが判明した。さらに、平面アレイ又はバスケット・カテーテルの周りに電極を高密度に位置させることにより、患者の心房細動などの心不整脈の影響を軽減するために必要な、変化組織の量を最小限に抑えるカスタマイズ可能なアブレーション療法が、容易になり得る。
【0029】
従来のマッピング・カテーテルの設計では、心臓からの電気信号を検出、測定、及び表示するために双極での電極構成を使用し、組織のアブレーションを容易にするために、一箇所ずつアブレーションするカテーテルで、単極での電極構成を使用する。しかし、本開示の様々な態様は、例えば心房細動の治療を容易にするために、カテーテル上での単極構成と双極構成との組合せを使用することを対象としている。所与の組織の場所における単極でのアブレーション治療か、又は双極でのアブレーション治療かは、例えば、所望のアブレーションの深さ又は幅に基づき、比較して選択されてもよい。いくつかの特定の実施形態では、アブレーション・コントローラ回路は、標的組織エリアの電気生理学的マップを受信し、標的組織エリア内の各組織領域が受けることになるアブレーション療法の種類を決定できる。別法として、臨床医は、提供された電気生理学的マップに基づいてアブレーション療法を手動で設計するか、又はさもなければ、アブレーション・コントローラ回路によって設計された治療手順を承認/修正できる。
【0030】
本開示と整合する、アブレーション療法用のバスケット・カテーテルは、バスケットを形成する1本又は複数本のスプラインの周りに分散される複数の電極を備え得る。電極のそれぞれは、単極又は双極構成で、或いは両方の構成で同時に動作できる。すなわち、単一の電極が、バスケット・カテーテル上の隣り合う電極と患者の胸部のパッチ電極とに、同時に高周波エネルギーを送信できる。いくつかのより具体的な実施形態では、温度制御された高周波組織アブレーションを可能にするように、熱電対が、1つ又は複数の電極の下に(又はさもなければ近接して)、配置されてもよい。
【0031】
本開示の様々な実施形態の詳細は、図を具体的に参照して以下に説明される。
【0032】
図1は、本開示の様々な実施形態と整合する、電気生理学的カテーテル・システムの概略図である。
【0033】
ここで、様々な図において、同一の構成要素を特定するために同様の参照番号が使用されている図面を参照すると、
図1は、医療処置のために体内で使用されるよう構成されたセンサ・アセンブリ11(例えば、電気生理学的マッピング及びアブレーション用の複数の電極)を具備する細長い医療デバイス19を備える、力検出(force detecting)用電気生理学的カテーテル・システム10を、全体的に示す。細長い医療デバイス19は、体内の組織13(心臓組織又は他の組織など)の診断、視覚化、及び/又は治療のために使用できる。例えば、医療デバイス19は、組織13のアブレーション療法又は患者の身体14におけるマッピング目的のために使用され得る。
図1はさらに、システム10全体に備えられる様々なサブシステムを示している。システム10は、主コンピュータ・システム15(電子制御ユニット16及びデータ記憶装置17、例えばメモリを具備する)を備え得る。コンピュータ・システム15は、構成要素の中でもとりわけ、様々なユーザ入力/出力機構18A及びディスプレイ18Bなどの、従来のインタフェース構成要素をさらに備え得る。コンピュータ・システム15は、センサ・アセンブリ11から提供される情報を処理することができ、且つ入力/出力機構18A及び/又はディスプレイ18Bを介して、又は本明細書に記載される他のやり方で、臨床医にデータを提供できる。
【0034】
図1の例示的な実施形態では、細長い医療デバイス19は、ケーブル・コネクタ又はケーブル・インタフェース20、ハンドル21、近位端23及び遠位端24を有する管状体又はシャフト22を備え得る。細長い医療機器19はまた、温度センサ、追加の電極、及びそれに対応する導体又はリードなど、本明細書に示されていない他の従来の構成要素を備えてもよい。コネクタ20は、流体貯蔵器12及びポンプ27、並びにコンピュータ・システム15からそれぞれ延びるケーブル25、26用の、機械的連結、流体連結、及び/又は電気的接続を提供できる。コネクタ20は、当技術分野で知られている従来の構成要素を備えることができ、図示のように、細長い医療機器19の近位端に配置され得る。
【0035】
ハンドル21は、ユーザが細長い医療デバイス19を把持又は保持する部分を備え、さらに、患者の身体14内でシャフト22を操作又は誘導する機構を備え得る。例えば、ハンドル21は、細長い医療デバイス19を通ってシャフト22の遠位端24まで延出するプルワイヤの張力を変化させるよう構成された機構、又はシャフト22を操作するための他の何らかの機構を備え得る。ハンドル21は、当技術分野における従来のものであってもよく、また、ハンドル21の構成は、異なるものであってもよい。
【0036】
コンピュータ・システム15は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、及び/又はロジックを利用して、本明細書に記載のいくつかの機能を実行できる。コンピュータ・システム15は、情報を共有するためのハードウェアと命令との組合せたものであってもよい。ハードウェアは、例えば、処理リソース16及び/又はメモリ17(例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体(CRM:computer-readable medium)データベースなど)を備えてもよい。本明細書で使用される処理リソース16は、メモリ・リソース17によって記憶された命令を実行することができるいくつかのプロセッサを備えてもよい。処理リソース16は、単一のデバイスに統合するか、又は複数のデバイスにわたって分散させてもよい。命令(例えば、コンピュータ可読命令(CRI:comupter-readable instruction))は、メモリ17に記憶され、力検出のために処理リソース16によって実行可能な命令を含んでもよい。
【0037】
メモリ・リソース17は、処理リソース16と通信可能に結合されている。本明細書で使用されるメモリ17は、処理リソース16によって実行される命令を記憶可能ないくつかのメモリ構成要素を備えてもよい。かかるメモリ17は、例えば、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。メモリ17は、単一のデバイスに統合するか、又は複数のデバイスにわたって分散させてもよい。さらに、メモリ17は、処理リソース16と同じデバイスに完全に若しくは部分的に統合されてもよく、又は別々に構成されるが、そのデバイス及び処理リソース16にアクセス可能であってもよい。したがって、コンピュータ・システム15は、ユーザ・デバイス及び/若しくはユーザ・デバイスの集合、モバイル・デバイス及び/若しくはモバイル・デバイスの集合、並びに/又はユーザ・デバイスとモバイル・デバイスとの組合せ上に実装され得ることに留意されたい。
【0038】
メモリ17は、通信リンク(例えば、パス)を介して、処理リソース16と通信可能に結合されてもよい。通信リンクは、処理リソース16に関連するコンピュータ処理デバイスに対して、ローカル又はリモートであってもよい。電子バスを介して処理リソース16と通信する揮発性、不揮発性、固定、及び/又は取外し可能な記憶媒体のうちの1つである場合、ローカル通信リンクの例は、メモリ17は、コンピュータ処理デバイス内部の電子バスを含んでもよい。
【0039】
図2Aは、本開示の様々な実施形態と整合する、電気生理学的カテーテルのバスケット型エンド・エフェクタ(バスケット・カテーテルとも称される)の等角側面図である。
図2Aのバスケット・カテーテル201は、拡大された形態で示されている。バスケット201は、近位端でカテーテル・シャフト205に、且つ遠位端で遠位キャップ215に(又は互いに)連結された、複数のスプライン210
1~8で構成される。本実施形態は、8本のスプライン210
1~8で構成されるバスケットを提示しているが、所期の臨床用途及び所望の電気生理学的マッピング粒度に応じた設計を有する、3本以上のスプラインを備えるバスケット・カテーテルが、容易に考えられる。バスケットの膨張/収縮を容易にするために、スプライン210
1~8は、イントロデューサを出た後に半円形状に戻る、形状記憶合金(例えば、ニチノール)からなり得る。さらに他の実施形態では、バスケット・カテーテルは、展開部材を利用してバスケットを拡張/収縮させることができる。
【0040】
本実施形態では、スプライン210
1~8のそれぞれは、所定の長さの各スプラインのあちこちに分散された、複数の電極211
1~Nを備える。
図2A~
図2Cに提示される実施形態は、各スプラインの長手方向に沿って規則的に分散された電極211
1~Nを示すが、他の実施形態では、スプラインに沿って不均一に分散された電極を備えてもよい。例えば、肺静脈の電気生理学的マッピング用途では、バスケットの遠位部分しか肺静脈の近位の組織と接触しない場合がある。したがって、電極211
1~Nの分散は、バスケット201の遠位端に向かって重みづけされ、肺静脈に近接する電気生理学的マッピングの粒度を容易に高めることができる。
【0041】
電極2111~Nは、電極と接触している組織の電気的特性の測定を容易にするために、様々な双極構成で使用されてもよい。第1の双極子対は、スプライン210の長手方向に沿った電極211の対を含んでもよく、カテーテルの長手方向軸にほぼ平行な方向での、組織の電気的特性データの収集を容易にする。第2の直交する双極子対は、隣り合うスプライン210を横方向にわたることができ、カテーテルの長手方向軸をほぼ横切る方向での、組織の電気的特性データの収集を容易にする。この電気的データの収集を容易にするために、これらの双極電極対は、信号処理回路によって別個にアドレス指定可能であってもよい。信号処理回路は、様々な双極電極対から受信した信号を分析し、バスケット・カテーテルによって感知された電極と接触している組織の電気生理学的データを視覚化する、電気生理学的マップを組み立てる。
【0042】
本開示と整合する様々な実施形態では、スプライン210は、可撓な電子回路基板で形成することができ、電極211のそれぞれが、電子回路基板に結合され、可撓なプリント回路基板の内層又は外層に沿って延在する電気トレースを介して、信号処理回路に通信可能に結合される。いくつかの特定の実施形態では、スプライン210はそれぞれ、ニチノールからなり得る。かかる実施形態では、フレックス回路は、ニチノールに直接結合されてもよいし、又は別法として、フレックス回路は、ニチノール製スプラインを内部に収容するPebax(登録商標)チューブに直接結合されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、電極211は、直径0.8ミリメートル、総表面積は0.5mm2であってもよい。バスケット・カテーテル201の電極211は、サイズ及び形状が均一である必要はない。例えば、本開示と整合する実施形態は、電気生理学的マッピング、RF組織アブレーション、及び任意選択でインピーダンスベース又はハイブリッドベースのカテーテル誘導システム(例えば、それぞれAbbottから市販の、MediGuide(登録商標)システム、及び/又はEnSite(登録商標)NavX(登録商標)システム)での位置特定を容易にすることが可能な、電極を備えてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、1本のスプライン210上のすべての電極211間、及びスプライン間のすべての電極211間に、等しい間隔を有することが望ましい場合があるが、双極子対を形成する各電極間の相対間隔についての知識は、電極と接触している組織の電気的特性データを正確に取り込むのに十分である。いくつかの特定の実施形態では、電極の1つ又は複数の双極子対の端から端までの間隔は、2~2.5ミリメートルの間であってもよい。さらに他の特定の実施形態では、双極子対における電極の中心間隔は、0.5~4ミリメートルの間であってもよい。
【0045】
いくつかの特定の実施形態では、バスケット201上の電極211のいくつかは多目的であってもよいが、他の電極は一つの目的であってもよい。例えば、電極のいくつかは、誘導、アブレーション、及び電気生理学的マッピング電極の両方として機能でき、他の電極は、電気生理学的マッピング電極としてのみ機能でき、さらに他の電極は、誘導用電極としてのみ機能してもよい。
【0046】
図2Aにさらに示されるように、遠位キャップ215は、スプライン210
1~8の遠位端を、背面で互いに(カテーテルの長手方向軸付近で)連結すること、及び遠位キャップに接触した組織への意図しない外傷を防ぐ、カテーテルの最遠位の表面を提供することを含む、いくつかの目的に適い得る。
【0047】
本開示と整合する様々な実施形態では、バスケット・カテーテルの各スプラインは、作動されるとスプラインを拡張及び/又は収縮させて所望の形状を形成する、1本又は複数本の操作ワイヤに連結できる。
【0048】
本開示は、各スプライン210上に8つの電極211を備えるバスケット・カテーテル201を対象とするが、他の様々な実施態様が容易に考えられる。例えば、バスケット・カテーテルは、より多く、又はより少ない数のスプライン、及び/又はそれぞれのスプライン上に、より多く、又はより少ない数の電極を備えてもよい。
【0049】
以下でより詳細に論じられるように、電気生理学的マッピングとアブレーション療法との両方が可能なバスケット・カテーテルの1つの特有の利点は、手術時間の短縮である。というのは、臨床医が、治療手順を確認した後に、電気生理学的マッピング・カテーテルをアブレーション・カテーテルと交換する必要がないからである。さらに、電気生理学的マッピングの効果及び患者の左心房内のバスケット・カテーテルの静的位置によって、アブレーションの標的組織の相対的な場所が既知であるので、患者の心臓の筋肉内でのアブレーション・カテーテルの磁気ベース及び/又はインピーダンスベースの位置特定の必要性を低減することができる。
【0050】
図2Bは、本開示の様々な実施形態と整合する、
図2Aのバスケット201の4本の隣り合うスプライン210
1~4の一部の拡大図である。スプライン210のそれぞれは、いくつかの電極211
1~12を備えており、それらは、組織の電気生理学的特性を感知するために(別の隣り合う電極との双極構成で動作することが多い)、且つ/又は電極に接触する組織をアブレーションするために使用されてもよい。電極は、双極構成、又は1つ若しくは複数の電極が、例えば、患者の胸部に結合された接地パッドと対になる単極構成を使用して、組織をアブレーションできる。
図2Bに示されるように、いくつかの双極電極対212
1~Nが示されている。これらの対は、スプラインの長手方向軸に沿って延びることができ、スプラインの長手方向軸を横切ってわたることができ、又は電極対は、2本の隣り合うスプライン間を斜めにわたることができる。かかるシステムは、バスケット・カテーテルの表面全体にわたる電極の双極構成を使用して電気生理学的マッピングを実施し、且つ/又は健康な組織の壊死を制限する正確な組織アブレーション療法を実施し得る。例えば、患者の左心房内の組織の生成された電気生理学的マップに基づいて、漂遊電気信号を送信しやすい組織及び/又は(かかる電気信号を生成する可能性がある)不整脈病巣を含む心筋組織だけをアブレーションする、双極アブレーション療法を実施できる。
【0051】
双極アブレーション療法の1つの特有の利点は、正電極及び負電極が近接しているため、標的組織に供給される実際のエネルギーが既知なことである。さらに、双極アブレーション療法は、電極が比較的近位にあることによって、非標的組織へのエネルギー供給を制限する。
【0052】
図2Bは、互いに接近して隣り合う電極の双極子対を示しているが、他の双極子対の配置は容易に考えられる。例えば、接近して隣り合ってはいない電極対。例えば、電極が双極配置で動作する場合、組織のアブレーションが、電極211
1及び211
12に近接する組織に対して実施される場合がある。いくつかの実施形態では、第1のスプライン210
1上の第1のいくつかの電極(例えば、電極211
1~3)は、第2のスプライン210
2上の第2のいくつかの電極(例えば、電極211
4~6)との双極配置で動作し得る。さらに別の実施形態では、第1のスプライン210
1上の第1のいくつかの電極(例えば、電極211
1~3)は、第3のスプライン210
3上の第3のいくつかの電極(例えば、電極211
7~9)との双極配置で動作し得る。さらに、第1のスプライン210
1上の第1のいくつかの電極(例えば、電極211
1~3)は、第4のスプライン210
4上の第4のいくつかの電極(例えば、電極211
10~12)との双極配置で動作し得る。
【0053】
図2Cは、
図2Aのバスケット・カテーテル201の2本の隣り合うスプライン210
1~2の一部、及び一体で高周波アブレーション・システム299を形成する接地パッド214の拡大図である。
図2Bで論じられたように、各スプライン210は、いくつかの電極211
1~4を備える。各電極は、双極での電気生理学的マッピング及び/又は組織のアブレーションを容易にするために、別の隣り合う電極と対にされてもよい(例えば、双極電極対212
1~N)。別法として、又は同時に、電極211
1~4はまた、単極でのアブレーション療法の構成(例えば、単極電極対213
1~N)で動作させるために、接地パッド214と対にされてもよい。アブレーション療法の際に、単極構成で動作する電極は、より深い変化を実現させることになり、双極構成の電極は、より正確に配置された変化を作り出すことになる。
【0054】
図3Aは、本開示の様々な実施形態と整合する、電気生理学的マッピング・カテーテルの平面アレイ301の上面図である。電気生理学的マッピング・カテーテルの平面アレイ301は、電極311
1~Nの高密度アレイを備える。平面アレイ301は、電極311
1~Nの可撓なアレイを形成する。この電極のアレイは、カテーテル・シャフト305の長手方向軸とほぼ平行である平面に沿って延在するストラット310
1~5の可撓な枠組みに連結されている。ストラットのそれぞれは、互いに正確に横方向に間隔をあけて配置され、隣り合うストラット310
1~5上の電極311
1~N間の正確な隔置を容易にする。ストラットは、遠位端及び近位端で(例えば、遠位先端315及びブッシュ308で)互いに連結されている。
【0055】
図3Aに示されるように、5本のストラット310
1~5のそれぞれは、ストラットの長手方向に沿って電極の間隔が同じである(又は少なくとも既知である)、複数の電極311を担持してもよい。同様に、アレイのストラット310を跨ぐ電極311間の間隔もまた、等しくあり得る(又は少なくとも既知である)。結果的に、既知の間隔を有する複数の電極の双極子対となる。例えば、いくつかの実施形態では、双極子対の電極の中心間隔は、0.5~4mmの間であってもよい。さらにより具体的な実施形態では、双極子対の電極の中心間隔は、0.5ミリメートル未満(例えば、0.1mm)であってもよい。本実施形態は、中心間隔が等しい双極子対を対象とするが、本開示と整合する電極アレイの他の様々な実施形態では、端から端までの間隔が等しい電極アレイを含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、電極の端から端までの間隔は、0.5~4mmの間であってもよい。さらにより具体的な実施形態では、電極の端から端までの間隔は、0.5ミリメートル未満(例えば、0.1mm)であってもよい。アレイ301の電極311が様々な相対サイズ(又は表面積)を有する場合、端から端までの間隔を考慮することが望ましい場合がある。
【0056】
図3Aの平面アレイ301は5本のストラット310
1~5を示しているが、カテーテルは、所与の電気生理学的用途のための所望の電極間隔に基づいて、それぞれのストラット間の間隔で、より多く、又はより少ない数のストラットを備えてもよい。さらに、
図3Aに示される平面アレイ301は20個の電極311を示しているが、平面アレイは、20個より多い又は少ない電極を備える場合があり、各ストラットは、隣り合うストラットと同じ数の電極を備えなくてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、電極3111~Nは、診断、治療、且つ/又はマッピングの処置において使用されてもよい。例えば、それに限定されるものではないが、電極311は、電気生理学的研究、ペーシング、心臓マッピング、及びアブレーションのために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、電極311は、単極及び/又は双極での組織アブレーション療法を実行してもよい。アブレーション療法は、変化の特定の線又はパターンを作り出すことができる。いくつかの実施形態では、電極311は、ペーシング電極から電気信号を受信でき、これは、電気生理学的研究/マッピングに使用されてもよい。重要なことに、ストラット310上の隣り合う電極間の電極間隔と、隣り合うストラット上の電極間の電極間隔とは同じである(又はさもなければ既知である)ので、いろいろな相対的向きを有する双極子対をサンプリングして、双極子対と接触する組織の電気的特性を判定できる。いくつかの実施形態では、電極311は、位置特定に関連付けて、場所又は位置を感知する機能を実行することができる(例えば、カテーテル310の場所及び/又は向きを判定する)。
【0058】
平面アレイ301は、ブッシュ308(コネクタとも呼ばれる)でカテーテル・シャフト305の遠位端に連結されている。カテーテル・シャフト305はまた、カテーテル・シャフトの長手方向軸を画定し得る。本実施形態では、ストラット3101~5のそれぞれは、長手方向軸に平行に延在する。カテーテル・シャフト305は、患者の蛇行した脈管構造を挿通され得るように、可撓な材料で作製されてもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル・シャフト305は、カテーテル・シャフトの長手方向に沿って配置された1つ又は複数のリング電極を備えてもよい。リング電極は、例えば、診断、治療、位置特定、且つ/又はマッピングの処置において使用されてもよい。一実施形態では、平面アレイ301は、ミネソタ州St. PaulにあるSt. Jude Medical, Inc.から販売されているMediGuide(登録商標)システムなどの、電磁位置特定システムと共に使用するように構成された、1つ又は複数の磁場センサを備えてもよい。
【0059】
平面アレイ301は、組織(例えば、心臓組織)に沿って当接するように適合されてもよい。例えば、平面アレイが組織に接触するとき、各ストラット3101~5は別々に、組織に当接するように撓むことができる。平面アレイが組織に応じて撓む能力は、平面アレイが起伏のある、不規則な、又は肉柱形成された組織と接触する場合に、特に有益であり得る。いくつかの実施形態では、ストラット310(又はストラットの下部構造)は、ニチノール及び/又は可撓な基板などの可撓性の、又はバネ状の材料で作製されてもよい。平面アレイストラット3101~5の構造(例えば、ストラットの長さ及び/又は直径、並びに材料を含む)は、所望の弾性、可撓性、折り曲げ性、適合性、及び剛性の特性を実現させるよう調節されてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、ストラットの近位端からストラットの遠位端までで、又は平面アレイ301を形成する複数のストラット間若しくは複数のストラットの中で、1つ又は複数の特性を変えることが望ましい場合がある。ニチノール及び/又は可撓な基板などの材料の圧潰性は、カテーテルを体内への送達する際であれ、又はカテーテルを手術終了時に身体から除去する際であれ、送達シース又はイントロデューサ内へ平面アレイを容易に挿入できるという、追加の利点をもたらす。
【0060】
その上に位置するように高密度電極アレイを備える平面アレイ・カテーテルは、例えば、以下のために使用されてもよい。(1)心臓の壁の特定のサイズのエリアについて、局部的な伝播を示すマップを定義すること、(2)アブレーションのためのコンプレックス細分化心房電位図を特定すること、(3)電位図の分解能をより高めるために、電極間の局所化された限局電位を特定すること、及び/又は(4)アブレーションすべきエリアを、より正確に標的とすること。さらに、本明細書に記載のカテーテルは、心外膜及び/又は心内膜の使用において、より具体的には、ブルガダ症候群に関連する症状の治療に適用されてもよい。例えば、本明細書に示される平面アレイの実施形態は、心外膜処置において、電極の平面アレイが心筋表面と心膜との間に位置する場合に使用されてもよい。別法として、平面アレイを心内膜手術で使用して、心筋の内面を掃引及び/又は分析し、心臓組織の電気的特性の高密度マップを作成することができる。
【0061】
本開示で開示される平面アレイ301の様々な実施形態は、ストラット3101~5に連結されたリング電極3111~Nを備えて示されているが、ストラットに連結されたスポット型電極を備える実施形態が容易に考えられる。その上さらに別の実施形態では、平面アレイのストラットは、プリント回路製造技法に適合する可撓性の薄膜を備えてもよく、且つ/又はストラットの構造要素(例えば、ニチノールベースの構造要素)に連結された、かかる薄膜を備えてもよい。かかる実施形態では、スポット型電極は、ストラット自体に印刷されてもよい。本開示の可撓なプリント回路の実施形態では、プリント電極は、1層又は複数層の薄膜層上又はその内部に延在するトレースを介して、信号処理回路及び/又は駆動回路に電気的に結合されてもよい。多くの電気生理学的マッピング用途では、高い信号忠実度を必要とするので、アナログ信号の伝送長を制限し、伝送線自体をシールドし、且つ/又はアナログ信号をアナログ信号源の近傍でデジタル信号に変換することが望ましい。したがって、本開示の態様は、信号処理回路(例えば、アナログ~デジタル変換器、ノイズのフィルタ処理及びバンドパス・フィルタなどの信号調整)並びに/又は駆動回路を、ストラット3101~5上に、又はストラットに近接して配置することを対象とする。
【0062】
リング電極311
1~Nを備える平面アレイ301の実施形態では、高密度電極アレイのリング電極は、同じ種類の電極又は種々の多様な種類の電極を含んでもよい。例えば、表面積がより小さい電極は、電気生理学的マッピング専用に使用でき、一方、表面積がより大きい電極は、マッピング、組織のアブレーション、及び/又は位置特定のために使用されてもよい。いくつかの特定の実施形態では、電極アレイは、1つ又は複数のわずかに拡大されたリング電極を備えてもよい。こうしたわずかに拡大された電極は、例えば、マッピング及び誘導システムにおける可撓なアレイの、より正確な位置特定に使用できる。必要に応じて、双極でのアブレーションのために、こうした拡大電極間でアブレーション電流を駆動することも、又は別法として、こうした拡大リング電極の1つ若しくは複数と、例えば、接地電極若しくは患者上にある(例えば、患者の背中にある)パッチ電極との間で、単極モードでアブレーション電流を駆動することも、可能であり得る。同様に、いくつかの実施形態における電極311
1~Nはすべて、単極又は双極でのアブレーション療法を実行可能であってもよい。代替的に、又は併行して、電流は、1つ又は複数の拡大電極と、任意の1つ又はすべての電極との間を流れ得る。この単極又は双極でのアブレーション療法の技法は、特定の変化線又は変化パターンを作り出すために使用することができる。
図3Aにも見られるように、1本又は複数本のストラット310
1~5を一体にするための、遠位先端315が配置されてもよい。この遠位先端315は、X線透視(fluoroscopy)での視覚化を可能にするために、金属又は他の何らかの放射線不透過性材料で作製されてもよい。遠位先端315はさらに、ストラット310
1~5間の(半)独立した平面運動を容易にし得る。
【0063】
本開示のいくつかの実施形態では、マッピング・カテーテル301は、カテーテル・シャフト305の長さを延長する操作ワイヤを備えてもよい。操作ワイヤは、カテーテル・シャフト305を平面アレイ301のストラット310
1~5に連結するブッシュ308に到達する前に、操作ワイヤの近位端から張力を受ける操作リングに連結され、患者の脈管構造を通るカテーテル・シャフト305及び平面アレイ301の操作を容易にし得る。
図3Aにさらに示されるように、ストラット310
1~5のそれぞれは、ストラットの長手方向に沿って分散された複数の電極311
1~Nを備える。本実施形態では、電極のそれぞれは、隣り合う電極のそれぞれから等間隔に配置されている。コントローラ回路が平面アレイ301内の電極の双極子対からの電気信号をサンプリングするとき、双極子対のそれぞれは、電極と接触している組織の健康状態を示す、様々な電気的特性を検出することになる。5本のストラット310
1~5は、電極311
1~Nを、間隔をあけた関係に維持するように設計されており、それにより電極の各双極子対は、組織の既知の距離にわたる電気生理学的データを取り込む。
【0064】
本開示の多くの実施形態は、電気生理学的マッピングを対象としているが、本開示の実施形態はまた、ペーシングのために(同様に)構成され得てもよい。例えば、1つ又は複数の電極3111~Nは、ペーシング信号を、例えば、心臓組織に送信できる。
【0065】
図3Aには示されていないが、平面アレイ・カテーテル301の様々な実施形態は、1つ又は複数の灌注ポートを備えてもよい。例えば、近位灌注液用ポートは、近位のブッシュ308の遠位端上又は遠位端に配置してもよく、近位灌注液用ポートは、電極を担持するストラット310
1~5が、この実施形態ではカテーテル・シャフト305の遠位端に取り付けられている近位のブッシュの遠位端から出る箇所又はその付近に、灌注液を供給するように位置する。いくつかのより具体的な実施形態では、第2の遠位灌注ポートが、ストラット310
1~5の遠位の合流点の近く、遠位先端315上又はその付近に配置されてもよい。さらに別の実施形態では、必要に応じて、複数の灌注ポートがストラット310に沿った様々な位置に存在してもよい。複数の灌注液用ポートが平面アレイ301の近位端及び/又は遠位端に位置する場合、ストラット310の近位/遠位頂点又はその付近で、容易に、より均一に灌注液を分散できる。
【0066】
図3Bは、組織325に接触する電極311
1~Nのアレイ301を備えた、
図3Aの平面アレイ・カテーテル300を示す。本実施形態の組織305は、肉柱形成された、不規則な、又は起伏のある組織として示されている。
図3Bに示されるように、可撓なストラット310
1を備える平面アレイの可撓性ストラットは、医師が、平面アレイ301(及び平面アレイの電極311
1~N)を、組織325に沿うように、組織325と安定して接触するように配置することを可能にする。各ストラット310
1~5は、組織に当接するように、別々に撓み得る。その結果、平面アレイによってサンプリングされた電気信号(組織の電気的活動を示す)の精度が向上し、それにより診断値がより正確なものとなる。可撓なストラットのそれぞれは、複数の電極311
1~Nを備え、遠位部材315及びブッシュ308で、平面アレイ301の他の隣り合うストラットに連結されている。ブッシュ308はさらに、平面アレイ301をシャフト305に連結する。
【0067】
図3Cは、本開示の様々な実施形態と整合する、脈管構造330の上にある
図3Aの平面アレイ・カテーテル300を示す。本開示のいくつかの実施形態では、カテーテル300は、カテーテル・シャフト305の長さを延長する操作ワイヤを備え得る。操作ワイヤは、カテーテル・シャフト305を平面アレイ301のストラット310
1~5に連結するブッシュ308に到達する前に、ステアリング・ワイヤの近位端から張力を受けるプル・リングに連結され、患者の脈管構造を通るカテーテル・シャフト305及び平面アレイ301の操作を容易にし得る。
図3Cにさらに示されるように、ストラット310
1~5のそれぞれは、ストラットの長手方向に沿って分散された複数の電極311
1~Nを備える。本実施形態では、電極のそれぞれは、等間隔に配置されている。コントローラ回路が平面アレイ301内の電極の双極子対からの電気信号をサンプリングするとき、双極子対のそれぞれは、電極と接触している組織の健康状態を示す、様々な電気的特性を検出することになる。
【0068】
図3Cでは、脈管構造330は、心臓の筋肉の左心房であり、平面アレイ301は、4つの肺静脈331
1~4を横切って延びている。考察のため、患者の左心房の電気生理学的マッピングが完了し、臨床医が患者の心房細動の診断を確認している。肺静脈331に近接して取得された電気生理学的マッピングに基づいて、臨床医は、漂遊電気信号が右上肺静脈331
1及び右下肺静脈331
3から出ていると判断した。したがって、臨床医は、患者の心房細動の症状を軽減するために、右上及び右下肺静脈を左心房から分離する必要があると判断した。次いで、肺静脈の周りの組織のアブレーションを実施するために、標的肺静脈のそれぞれを周方向に囲繞する複数の電極が、選択され、単極/双極構成のいずれか又は両方で使用され得る。結果として生じる変化332
1~2はそれぞれ、それぞれの肺静脈を囲繞し、肺静脈内の不整脈病巣からの漂遊電気信号の、左心房内での電気信号の分散を抑制する、電気的特性を示す。
【0069】
本開示の態様は、高周波アブレーション技法に容易に適用可能なものとして提示されてきたが、本開示の態様は、不可逆電気穿孔法(electroporation)(直流アブレーションとも呼ばれる)にも容易に適用される。さらに、双極及び単極RF技法が本明細書に開示されているが、かかる技法の変形形態も考えられる。例えば、双極でのアブレーション構成では、電極アレイ上の隣り合う電極の極性を、負の分極を有する接地パッドと交互に配置してもよい。ある単極でのアブレーション構成では、隣り合う電極が交互に異なる極性を有する状態で、接地パッドは、時間の経過と共に交互に異なる極性を有してもよい。さらに、心不整脈(例えば、心房細動)の診断及び治療を含む、本開示の態様が論じられてきたが、本開示は、いくつかの様々な病気、例えば、ブルガダ症候群の診断及び治療に、容易に適用可能である。
【0070】
本開示と整合するさらに別の実施形態は、高電圧直流(DC:direct current)アブレーション(双極構成又は単極構成)を対象とする。かかる実施形態では、高電圧DCは、400から4000ボルトの間の電圧、及び電流供給ではなく電圧勾配を目標とするため、最小限に抑えられた電流引き込みであってもよい。
【0071】
2016年10月28日に出願された米国仮特許出願第62/414,634号、2017年10月13日に出願された米国仮特許出願第62/572,186号、及び2017年10月25日に出願された米国特許出願第15/793,093号はすべて、概ね、可撓な高密度のマッピング・カテーテルを対象とし、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により組み込まれる。
【0072】
高密度電極のカテーテルの様々な実施形態が本明細書に開示されているが、本開示の教示は、例えば、本明細書に参照により組み込まれる以下の特許及び特許出願に開示されている、他の様々なカテーテルの実施形態に容易に適用され得る。2013年1月16日に出願された米国仮特許出願第61/753,429号、2007年5月23日に出願された米国仮特許出願第60/939,799号、2007年9月11日に出願された米国特許出願第11/853,759号であって、現在は2012年5月29日に特許証が発行された米国特許第8,187,267号、2007年7月3日に出願された米国仮特許出願第60/947,791号、2008年7月3日に出願された米国特許出願第12/167,736号であって、現在は2012年6月26日に特許証が発行された米国特許第8,206,404号、2011年1月20日に出願された米国特許出願12/667,338号(米国特許法第371条における日付(371 date))であって、米国特許出願公開第2011/0118582A1号として公開された特許、2009年12月31日に出願された米国特許出願第12/651,074号であって、米国特許出願公開第2010/0152731A1号として公開された特許、2009年5月7日に出願された米国特許出願第12/436,977号であって、米国特許出願公開第2010/0286684A1号として公開された特許、2010年3月12日に出願された米国特許出願第12/723,110号であって、米国特許出願公開第2010/0174177A1号として公開された特許、2010年6月16日に出願された米国仮特許出願第61/355,242号、2010年12月30日に出願された米国特許出願第12/982,715号であって、米国特許出願公開第2011/0288392A1号として公開された特許、2011年6月14日に出願された米国特許出願第13/159,446号であって、米国特許出願公開第2011/0313417A1号として公開された特許、2011年6月16日に出願された国際特許出願第PCT/US2011/040629号であって、国際公開第2011/159861A2号として公開された特許、2011年6月16日に出願された米国特許出願第13/162,392号であって、米国特許出願公開第2012/0010490A1号として公開された特許、2012年12月16日に出願された米国特許出願第13/704,619号であって、2011年6月16日に出願された国際特許出願第PCT/US2011/040781号の国内段階であり、国際公開第2011/159955A1号として公開された特許。
【0073】
本開示の様々な態様は、電気生理学的マッピングのためのOIS/OT同様の信号処理アルゴリズムと併せて実施できる。OIS/OT及び関連するアルゴリズムについては、2014年2月25日に出願された米国仮特許出願第61/944,426号、2015年2月25日に出願された米国特許出願第15/118,522号、及び2014年1月16日に出願された国際特許出願第PCT/US2014/011940号でより詳細に論じられ、本明細書に完全に開示されているかのように、参照されることにより本明細書に組み込まれる。本開示のさらに他の実施形態は、電気生理学的マッピングのための他の様々な種類のアルゴリズムと併せて実施できる。例えば、本開示と整合する実施形態は、電極信号後処理技法、及び以下の刊行物に開示され、参照により本明細書に組み込まれる、電気生理学的マッピングアルゴリズムを利用できる。Magtibay等、JAHA2017(米国心臓協会ジャーナル2017;6:e006447.DOI:10.1161/JAHA.117.006447)(例えば、6頁及び7頁、及び「Omnipoles Provide the Largest Possible Bipolar Voltages」という表題の段落参照)、並びにHaldar等、循環(Circulation)AE2017(循環、不整脈及び電気生理学2017;10:e005018.DOI:10.1161/CIRCEP.117.005018)(例えば、6頁、「Omnipolar Voltage Amplitude Correlates to Largest Measurable Bipolar Vpp」という表題の段落、及び
図4参照)。
【0074】
本明細書に提示される様々な実施形態は、可撓な電子回路に結合されたスポット電極に適用でき、ここで可撓な電子回路はまた、(部分的に)平面カテーテル及びバスケット・カテーテルのスプライン及びストラットをそれぞれ備えてもよい。さらに他の実施形態は、スプライン及びストラットに圧着、又はかしめられ、当技術分野でよく知られた材料を含む、リング電極の使用を対象としてもよい。リング電極は、リード線を使用して信号処理回路に電気的に結合される。スプライン及びストラットに沿って位置するリング電極は、電極間が既知の間隔である、電極の双極子対を形成する。さらに他の実施形態では、リング電極は、スプライン及び/又は本明細書に開示される様々なカテーテルのストラットの少なくとも一部を備える、可撓な回路基板にかしめられるか、又は圧着されてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態がある程度の特殊性をもって上記で説明されてきたが、当業者は、本開示の精神から逸脱することなく、開示された実施形態に多くの変更を加えてもよい。上記の説明に含まれているか又は添付図面に示されているすべての事項は、例示にすぎず、限定しないものとして解釈されることが、意図されている。詳細な又は構造の変形は、現在の教示から逸脱することなく行うことができる。前述の説明及び以下の特許請求の範囲は、かかるすべての修正形態及び変形形態を包含することを意図している。
【0076】
様々な装置、システム、及び方法の様々な実施形態が、本明細書に記載されている。明細書に記載され、添付図面に示されているように、実施形態の全体的な構造、機能、製造、及び使用法の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が示されている。しかし、実施形態は、かかる特定の詳細なしで実施され得ることを、当業者は理解されよう。他の例では、本明細書に記載された実施形態を曖昧にしないように、よく知られた動作、構成要素、及び要素は詳細に説明されていない。当業者は、本明細書に記載及び図示された実施形態が、非限定的な例であることを理解されよう。したがって、本明細書に開示された特定の構造的及び機能的詳細は、典型的なものであり、必ずしも実施形態の範囲を限定し得ず、実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されることが理解されよう。
【0077】
「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、「実施形態」などへの本明細書全体にわたる記述は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる、所々での「様々な実施形態において」、「いくつかの実施形態において」、「一実施形態において」、「実施形態において」などの句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照するものではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の好適なやり方で組み合わせられ得る。したがって、一実施形態に関連して図示又は説明される特定の特徴、構造、又は特性は、限定されることなく、他の1つ又は複数の実施形態の特徴、構造、又は特性と全体的に又は部分的に組み合わせることができる。
【0078】
用語「近位の」及び「遠位の」は、臨床医が患者を治療するために使用する器具の一端を操作することに関連して、本明細書全体にわたって使用され得ることが理解されよう。用語「近位の」は、器具の、臨床医に最も近い部分を指し、用語「遠位の」は、臨床医から最も遠い位置にある部分を指す。簡潔且つ明確にするために、「垂直の」、「水平の」、「上へ」、及び「下へ」などの空間的な用語が、図示された実施形態に関連して本明細書で使用され得ることが、さらに理解されよう。ただし、手術器具は多くの向き及び位置で使用される可能性があり、これらの用語は、限定的且つ絶対的であることを意図していない。
【0079】
本明細書に参照により組み込まれると言われているどの特許、刊行物、又は他の開示資料の全部又は一部も、組み込まれた資料が、存在する定義、記述、又はこの開示に記載されている他の開示資料と矛盾しない範囲でしか、本明細書に組み込まれない。したがって、必要な範囲で、本明細書に明示的に記載されている開示は、参照により本明細書に組み込まれている、どの矛盾する資料にも優先する。参照により本明細書に組み込まれると言われているが、本明細書に記載の存在する定義、記述、又は他の開示資料と矛盾する、どの資料又は資料の一部も、その組み込まれた資料と存在する開示資料との間に矛盾が生じない範囲でしか、組み込まれないことになる。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
平面アレイ・カテーテルであって、
近位端及び遠位端を有するとともに長手方向軸を画定する細長いカテーテル・シャフトと、
可撓な平面アレイであって、
前記カテーテル・シャフトの前記遠位端に連結され、
組織に沿って当接するように構成され、
前記長手方向軸に実質的に平行に延在する2本以上のストラットを有し、
前記2本以上のストラットのそれぞれは、共通の平面に配置されるとともに当該ストラットに連結された複数の電極を有する、前記平面アレイと、
を備え、
前記複数の電極は、前記平面アレイと接触している組織の電気生理学的特性を検出するとともに前記組織を選択的にアブレーションするように構成及び配置される、平面アレイ・カテーテル。
(項目2)
前記平面アレイの前記複数の電極は、さらに、高周波組織アブレーションを実施するとともに組織のアブレーションのために単極構成及び双極構成の両方で動作するように構成される、項目1に記載の平面アレイ・カテーテル。
(項目3)
前記複数の電極のうちの1つ又は複数は、スポット電極であり、
前記2本以上のストラットのうちの1本又は複数本は、前記複数の電極に通信可能であるとともに機械的に結合された可撓な電子回路基板を備える、項目1に記載の平面アレイ・カテーテル。
(項目4)
前記平面アレイ・カテーテルは、さらに、
複数の温度センサであって、前記複数の温度センサのそれぞれは、前記ストラットに機械的に連結されるとともに前記複数の電極の少なくとも1つに対して熱に関する通信を実行可能に配置される、前記複数の温度センサと、
前記複数の温度センサ及び前記複数の電極と通信可能に結合されるアブレーション・コントローラ回路であって、前記アブレーション・コントローラ回路は、前記複数の温度センサによって測定された各電極付近の温度に少なくとも部分的に基づいて、各電極への電力供給を制御するように構成及び配置される、前記アブレーション・コントローラ回路と、
を備える、項目1に記載の平面アレイ・カテーテル。
(項目5)
前記平面アレイは、さらに、前記複数の電極に通信可能に結合されるアブレーション・コントローラ回路を備え、
前記アブレーション・コントローラ回路は、
前記複数の電極から、前記平面アレイと接触している前記組織の前記電気生理学的特性を示すの信号を受信し、
前記組織の電気生理学的マップを生成し、
前記電気生理学的マップに少なくとも部分的に基づいて、前記組織のアブレーション療法を制御する
ように構成及び配置される、項目1に記載の平面アレイ・カテーテル。
(項目6)
前記アブレーション・コントローラ回路は、さらに、各電極での所望の変化の特性に応じて、前記アブレーション療法の際に単極構成又は双極構成で前記複数の電極を動作させるように構成及び配置される、項目5に記載の平面アレイ・カテーテル。
(項目7)
前記複数の電極は、前記平面アレイの隣り合うストラット上の各電極を含む双極電極対を含む、項目1に記載の平面アレイ・カテーテル。
(項目8)
前記双極電極対は、前記接触している組織の電気的特性をサンプリングするとともに制御された組織アブレーション療法を実施するように構成され、
前記複数の電極は、さらに、前記接触している組織の貫壁性の変化を容易にするため、患者の皮膚に導電的に結合された接地パッドと組み合わせて、単極構成で動作するように構成される、項目7に記載の平面アレイ・カテーテル。
(項目9)
前記複数の電極は、前記平面アレイの隣り合うストラットを斜めにわたる双極電極対を含む、項目1に記載の平面アレイ・カテーテル。
(項目10)
バスケット・カテーテルであって
近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル・シャフトと、
前記カテーテル・シャフトの前記遠位端に結合されるとともに複数のスプラインを備え、組織に沿って当接するように構成される可撓なバスケットと、
前記複数のスプラインに取り付けられた複数の電極と、
を備え、
前記複数の電極は、前記バスケットと接触している組織の電気生理学的特性を検出するとともに前記組織を選択的にアブレーションするように構成及び配置される、バスケット・カテーテル。
(項目11)
前記複数のスプライン上の前記複数の電極は、さらに、高周波組織アブレーションを実施するとともに組織のアブレーションのために単極構成及び双極構成の両方で動作するように構成される、項目10に記載のバスケット・カテーテル。
(項目12)
前記複数の電極のうちの1つ又は複数は、スポット電極であり、
前記前記複数のスプラインは、前記複数の電極に通信可能であるとともに機械的に結合された可撓な電子回路基板を備える、項目10に記載のバスケット・カテーテル。
(項目13)
前記バスケット・カテーテルは、さらに、
複数の温度センサであって、前記複数の温度センサのそれぞれは、前記スプラインに機械的に連結されるとともに前記複数の電極の少なくとも1つに対して熱に関する通信を実行可能に配置される、前記複数の温度センサと、
前記複数の温度センサ及び前記複数の電極と通信可能に結合されるアブレーション・コントローラ回路であって、前記アブレーション・コントローラ回路は、前記複数の温度センサによって測定された各電極付近の温度に少なくとも部分的に基づいて、各電極への電力供給を制御するように構成及び配置される、前記アブレーション・コントローラ回路と、
を備える、項目10に記載のバスケット・カテーテル。
(項目14)
前記バスケット・カテーテルは、さらに、前記複数の電極に通信可能に結合されるアブレーション・コントローラ回路を備え、
前記アブレーション・コントローラ回路は、
前記複数の電極から、前記バスケットと接触している前記組織の前記電気生理学的特性を示す信号を受信し、
前記組織の電気生理学的マップを生成し、
前記電気生理学的マップに少なくとも部分的に基づいて、前記組織のアブレーション療法を制御する
ように構成及び配置される、項目10に記載のバスケット・カテーテル。
(項目15)
前記アブレーション・コントローラ回路は、さらに、各電極での所望の変化の特性に応じて、前記アブレーション療法の際に単極構成又は双極構成で前記電極を動作させるように構成及び配置される、項目14に記載のバスケット・カテーテル。
(項目16)
前記アブレーション・コントローラ回路は、さらに、前記複数の電極を双極構成で動作させるとともに高電圧直流を前記接触している組織に供給して組織のアブレーションに影響を与えるように構成及び配置され、且つ
前記アブレーション・コントローラ回路は、さらに、前記複数の電極への電流引き込みを最小限に抑えるとともに所望の電圧勾配を供給するように構成及び配置される、項目14に記載のバスケット・カテーテル。
(項目17)
前記複数の電極は、前記バスケットの隣り合うスプラインを斜めにわたる双極電極対を含む、項目10に記載のバスケット・カテーテル。
(項目18)
前記双極電極対は、前記接触している組織の電気的特性をサンプリングするとともに制御された組織アブレーション療法を実施するように構成され、
前記複数の電極は、さらに、前記接触している組織の貫壁性の変化を容易にするため、患者の胸部に導電的に結合された接地パッドと組み合わせて動作するように単極構成で構成される、項目17に記載のバスケット・カテーテル。
(項目19)
前記複数の電極は、隣り合うスプライン上の電極を有する双極電極対を含む、項目10に記載のバスケット・カテーテル。
(項目20)
前記平面アレイの前記複数の電極は、さらに、双極構成で動作するとともに前記接触している組織に高電圧直流を供給して組織のアブレーションに影響を与えるように構成される、項目1に記載の平面アレイ・カテーテル。