(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】シール部材
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
F16J15/10 U
F16J15/10 F
(21)【出願番号】P 2021007505
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】土屋 幸司
(72)【発明者】
【氏名】白瀬 利和
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-025809(JP,A)
【文献】特開2012-243536(JP,A)
【文献】特開2003-287150(JP,A)
【文献】米国特許第05579936(US,A)
【文献】国際公開第2012/069392(WO,A1)
【文献】特開2002-037351(JP,A)
【文献】特開平08-175559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
F16J 12/00-15/14
H05K 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するとともに凹部を有し、かつ前記凹部の底を貫通する孔を有する第一部材と、
連続気泡を有し、前記凹部に収容されて前記孔を塞ぐ第二部材と、
前記第二部材を収容している前記凹部に嵌合する凸部を有し、前記凸部の前記凹部への嵌合によって前記第一部材に保持される第三部材と、
前記凹部に収容されている前記第二部材と外部とを連通し、前記外部において前記凹部の深さ方向に交差する方向に向けて開口する通気路と、
を有
し、
前記第三部材は、前記凸部が前記凹部に嵌合したときに前記第一部材における前記凹部の開口端部に当接する蓋部を有し、
前記通気路は、前記蓋部と前記第一部材における前記凹部の開口端部とが当接する部分を通って前記蓋部および前記開口端部の一方または両方における外縁部に開口している、シール部材。
【請求項2】
前記第一部材における前記凹部の開口端部の外寸は、前記第三部材の前記蓋部の外寸よりも大きい、請求項
1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記第三部材の前記蓋部の外寸は、前記第一部材における前記凹部の開口端部の外寸以上である、請求項
1に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
シール部材は、様々な機械要素において使用され、気密性または液密性などの所期の機能を発現する。シール部材には、複数の機能を発現するシール部材が知られている。その一例として、
図5に示されるような、通気性と液密性との両方を発現可能な通気非透水ユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
図5に示されるように、通気非透水ユニット900は、例えばフッ素ゴム製のアウタケース911、インナケース912、およびこれらによって挟持される通気非透水シート913によって構成されている。
【0003】
アウタケース911は、筒状部921と、筒状部921の一端部から径方向の内方に延びる有孔底板部922と、筒状部921の他端部から径方向の外方に延びる抜止フランジ部923とを有している。インナケース912は、有孔の円筒体であり、アウタケース911の通気穴924に対応する通気穴931を中心軸CA上に有する。通気非透水シート913は、通気性を有するが透水性を有さないシートであり、例えば商品名ゴアテックス(登録商標)で知られるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートである。
【0004】
通気非透水シート913は、アウタケース911の内底面925とインナケース912の底面932とよって挟まれて、通気穴924、931を塞いだ状態でアウタケース911内に保持される。インナケース912は、インナケース912の外周面における一端部に形成されている突条部933が、アウタケース911の内周面における一端部に形成されている凹条部926に嵌合することによって、アウタケース911内に固定されている。通気非透水ユニット900は、ハウジング950に形成されている貫通孔921に着脱可能に装着されている。より詳しくは、アウタケース911の外周面における中央部に形成されている突条部927が、貫通孔921の周壁における一端部に形成されている凹条部951に嵌り込んでいる。この嵌合により、通気非透水ユニット900が貫通孔921に着脱可能に装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来技術では、アウタケース911の通気穴924とインナケース912の通気穴931とが同軸上に形成される。そのため、通気非透水ユニット900では、ハウジング950に装着されているときに、外部から通気非透水ユニット900への刺激が通気穴931を通じて通気非透水シート913に直接到達することがある。たとえば、外部から強い水流が通気非透水ユニット900を直撃した場合に、当該水流が通気穴931を通じて通気非透水シート913を直撃し、通気非透水シート913の非透水性の発現が不十分になることがあり、あるいは通気性が不十分になることがある。このように従来技術には、ハウジング950に装着されている通気非透水ユニット900の外部からの影響を低減させる観点から検討の余地が残されている。
【0007】
本発明の一態様は、使用時におけるシール部材の外部からの影響を低減可能なシール部材を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシール部材は、弾性を有するとともに凹部を有し、かつ前記凹部の底を貫通する孔を有する第一部材と、連続気泡を有し、前記凹部に収容されて前記孔を塞ぐ第二部材と、前記第二部材を収容している前記凹部に嵌合する凸部を有し、前記凸部の前記凹部への嵌合によって前記第一部材に保持される第三部材と、前記凹部に収容されている前記第二部材と外部とを連通し、前記外部において前記凹部の深さ方向に交差する方向に向けて開口する通気路と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、使用時におけるシール部材の外部からの影響を低減可能なシール部材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るシール部材が貫通孔に装着された状態の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係るシール部材が貫通孔に装着された状態の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】通気性および液密性を有する従来のシール部材の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示されるように、シール部材10は、第一部材11、第二部材12、第三部材13および通気路14を有する。シール部材10は、第一部材11の凹部111に第二部材12を収容し、次いで第三部材13を嵌合させることによって構成されている。
【0012】
[第一部材]
第一部材11は、有底の略円筒体であり、底面部とその周囲から起立する周壁部とを有する。当該底面部および周壁部の内表面は、凹部111を形成している。凹部111は、シール部材10の中心軸CAと同軸の略円柱状の空間である。
【0013】
第一部材11は、凹部111おける中央部に孔112を有している。孔112は、凹部111の底に開口し、凹部111の深さ方向に沿って第一部材11を貫通している。孔112は、シール部材10の中心軸CAと同軸の孔であり、円形の断面形状を有している。なお、本発明の実施形態において、「凹部の深さ方向」とは、「中心軸CAに沿う方向」と同じである。
【0014】
第一部材11の周壁部の内周壁は、嵌合凹条部113を有している。嵌合凹条部113は、中心軸CAに沿う方向における内周壁の中央部に周設されている。嵌合凹条部113の断面形状は、略矩形である。
【0015】
また、第一部材11の周壁部の外周壁は、二つの押圧突条部114を有している。押圧突条部114は、中心軸CAに沿う方向における外周壁の中央部および凹部111の開口端部(すなわち凹部111の外壁の開口部側の端)にそれぞれ周設されている。押圧突条部114の断面形状は、波型である。
【0016】
第一部材11は、弾性を有する。第一部材11の材料には、Oリングの材料として従来から知られた弾性体材料を採用することができ、当該弾性体材料の例には、ゴムおよび熱可塑性エラストマー(TPE)が含まれる。ゴムの例には、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(NBM/HNBR)、フッ素ゴム(FKM)、パーフロロポリエーテル系ゴム(FO)、フロロシリコーンゴム(FVMQ)、シリコーンゴム(Q)、エピクロルヒドリンゴム(CO)、アクリルゴム(ACM)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム(NR)およびウレタンゴム(U)が含まれる。また、熱可塑性エラストマー(TPE)の例には、スチレン系TPE(SBC、TPS)、オレフィン系TPE(TPO)、ポリ塩化ビニル系TPE(TPVC)、ポリウレタン系TPE(TPU)、ポリエステル系TPE(TPEE、TPC)、ポリアミド系TPE(TPA、TPAE)およびポリブタジエン系TPEが含まれる。第一部材11の材料は、第一部材11に求められる弾性に応じて適宜に決めることができ、第一部材11の弾性は、シール部材10に求められるシール性に応じて適宜に決めることが可能である。
【0017】
このように、第一部材11は、弾性を有するとともに凹部111を有し、かつ凹部111の底を貫通する孔112を有している。また、第一部材11は、凹部111の周壁部の内周面に嵌合凹条部113を有し、その断面形状は略矩形である。さらに、第一部材11は、周壁部の外周面に押圧突条部114を有している。
【0018】
[第二部材]
第二部材12は、凹部111の底面部に敷設されるシート状の部材である。第二部材12は、連続気泡を有する。連続気泡とは、第二部材12の一方の表面から他方の表面まで連通するように連結した気泡を言う。第二部材12は、通気性を有する一方で、透水性を実質的に有さない(非透水性を有する)シート状の部材である。第二部材12は、例えば商品名ゴアテックス(登録商標)で知られるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートであってよい。第二部材12の通気性または非透水性などの性質は、第二部材12の空隙の状態に応じて適宜に発現させることが可能である。第二部材12は、公知の多孔質の部材から適宜に選ぶことができる。このように、第二部材12は、連続気泡を有し、凹部111に収容されて孔112を塞いでいる。なお、第二部材12の平面視したときの形状は、円形であるが、孔112を塞ぐことが可能である範囲において、円形以外の他の形状に適宜に決めてもよい。
【0019】
[第三部材]
第三部材13は、凸部131、嵌合突条部132および蓋部133を有する。凸部131は、略円柱の形状を有している。凸部131は、凹部111の内径とほぼ同じ径を有し、凹部111の深さとほぼ同じ長さを有している。嵌合突条部132は、凸部131の長さ方向における周壁の中央部に周設されている。嵌合突条部132の断面形状は、嵌合凹条部113のそれとほぼ同じ略矩形である。蓋部133は、凸部131に連結する板状の部分である。蓋部133の平面視したときの形状は、略円形である。蓋部133の平面視したときの外径は、凹部111の口径よりも大きく、第一部材11の外径よりも小さい。
【0020】
また、第三部材13は、凸部131の端面に、押さえ凸部134を有している。押さえ凸部134は、平面視したときの形状が三重の円環状の突条群である。それぞれの突条は、平面視したときの形状において異なる直径を有し、当該直径は、凹部111の孔112の孔径よりも大きく、凸部131の径よりも小さい範囲で適宜に設定されている。押さえ凸部134の断面形状は、山型または波型である。
【0021】
第三部材13は、弾性を有していてもよいし、有していなくてもよい。弾性を有する第三部材13の材料の例には、前述した第一部材11の材料の例が挙げられる。弾性を有さない第三部材13の材料の例には、プラスチックス、鉄などの金属、および、金属酸化物の焼結体、が含まれる。
【0022】
第三部材13は、第二部材12が収容されている第一部材11の凹部111に、第三部材13の凸部131を挿入して押圧することで凹部111に嵌合する。より詳しくは、当該押圧により、凹部111の嵌合凹条部113に凸部131の嵌合突条部132が嵌合し、その結果、第三部材13が第一部材11に保持される。そして、蓋部133は、凹部111の開口端部に当接して密着する。
【0023】
このように、第三部材13は、第二部材12を収容している凹部111に嵌合する凸部131を有し、凸部131の凹部111への嵌合によって第一部材11に保持される。また、第三部材13は、凸部131が凹部111に嵌合したときに第一部材11における凹部111の開口端部に当接する蓋部133を有している。そして、蓋部133の外径は、凹部111の口径よりも大きいが、第一部材11における凹部111の開口端部の外径よりは小さい。さらに、第三部材13は、凸部131の周壁部に、凹部111の嵌合凹条部113に嵌合する嵌合突条部132を有している。
【0024】
[通気路]
シール部材10は、二本の通気路14を有している。それぞれの通気路14は、第三部材13の表面に形成されている溝とそれに対向する第一部材11の表面とによって構成されている。各溝は、一連の溝であり、凸部131の端面から、凸部131の周壁および蓋部133における第一部材11に対向する表面を通って蓋部133の外周縁に至っている。また、各溝は、嵌合突条部132を横断するように凸部131の周壁に形成されている。このように、通気路14は、第一部材11および第三部材13が当接する部分に位置し、凹部111に収容されている第二部材12と外部とを連通している。そして、通気路14は、蓋部133および第一部材11における凹部111の開口端部が当接する部分を通って、蓋部133の外縁部に開口している。
【0025】
なお、溝の断面形状および深さは、通気路14における所期の通気性が発現される範囲において適宜に決めてよい。たとえば、溝は、丸溝であってもよいし、V字溝であってよいし、矩形溝であってもよい。また、図示されている通気路14は二本だが、通気路14の数は一本でもそれ以上でもよい。複数の通気路14が存在する場合では、通気路14は、シール部材10の中心軸CAに対して対称の位置にあることが好ましい。たとえば、通気路14の数は、好ましくは2または4である。
【0026】
[シール部材の装着]
本実施形態のシール部材の装着例として、本実施形態のシール部材がハウジングの貫通孔に装着される例を説明する。
図2は、本発明の実施形態1に係るシール部材が貫通孔に装着された状態の一例を模式的に示す断面図である。ハウジング100は、例えば内部空間と外空間とを隔てる筐体である。ハウジング100の内部空間は、圧力が変動する空間である。ハウジング100の外表面は、外空間に露出している。
【0027】
図2に示されるように、ハウジング100は、外壁101と、外壁101に形成されている、外部に対して窪んでいる有底の凹部102と、凹部102の底部に形成されている貫通孔103とを有している。凹部102および貫通孔103の平面視したときの形状は、いずれも円形である。凹部102の径は、シール部材10の第一部材11の外径とほぼ同じであり、貫通孔103の孔径は、孔112の孔径よりも大きく、第一部材11の外径よりも十分に小さい。なお、図中、図の紙面に対して下側を当該内部空間とし、上側を当該外空間としている。
【0028】
シール部材10は、第三部材13を押圧することによって第一部材11側から凹部102に挿入される。シール部材10の凹部102への挿入により、第一部材11の押圧突条部114は、その弾性によって径方向に収縮し、その反発によって凹部102の内周壁を押圧する。
【0029】
[シール部材の機能]
内部空間は、貫通孔103、シール部材10の孔112、第二部材12および通気路14を介して外空間と連通している。第二部材12は、通気性を有するが透水性を有していない。したがって、シール部材10は、内部空間における圧力上昇に応じて内部空間から気体を外空間へ放出することが可能であり、かつ外空間からの水の侵入を防止することが可能である。
【0030】
シール部材10では、通気路14は、外空間側において、シール部材10の中心軸CAに対して直交する向きに開口している。よって、外空間から水流がシール部材10を直撃しても、シール部材10を直撃する水流が第二部材12に直接到達し得ない。よって、第二部材12の非透水性が十分に発現される。
【0031】
また、通気路14は、第三部材13の表面に形成された溝と第一部材11の表面における当該溝に対向する部分とで構成されている。このように、第三部材13の表面の適所に溝を形成することにより通気路14を形成することができ、通気路14はシール部材10の生産性を高める観点から有利である。
【0032】
さらに、シール部材10では、蓋部133の外径が第一部材11の外径よりも小さい。したがって、通気路14は、外空間側において、第一部材11の外周縁よりも中心軸CA側の位置に開口する。よって、シール部材10がハウジング100に装着される際に第一部材11が凹部102に内嵌しても、通気路14の外空間側の開口と凹部102の内周壁との間に、通気路14に求められる通気性を十分に確保することが可能である。したがって、通気路14における所期の通気性が十分に発現される。
【0033】
また、シール部材10において、第二部材12はシート状である。このため、凹部111の深さをより浅くすることが可能となり、シール部材10の中心軸CAに沿う方向の寸法(高さ)をより小さくするのに有利である。
【0034】
さらに、嵌合凹条部113および嵌合突条部132の断面形状は、いずれも略矩形である。よって、第一部材11および第三部材13は、中心軸CAに沿う方向において互いにより強く係止する。このため、中心軸CAに沿う方向における第一部材11と第三部材13との滑りが生じにくく、中心軸CAに沿う方向における第一部材11と第三部材13との結合強度がより高められる。
【0035】
また、第一部材11の押圧突条部114は、嵌合凹条部113および嵌合突条部132の外側に位置している。押圧突条部114の前述した収縮による反発によって、第一部材11が中心軸CAに向けて第三部材13をより強く押圧し、嵌合凹条部113および嵌合突条部132による第一部材11と第三部材13との結合強度がより一層高められる。
【0036】
第一部材11の凹部111内において、第三部材13の凸部131の端面は、第二部材12に当接する。第三部材13は、凸部131の端面に前述した押さえ凸部134を有することから、押さえ凸部134も第二部材12に当接する。押さえ凸部134は、円環状の平面形状を有することから、周方向において第二部材12に連続して当接し、径方向において第二部材12に断続的に当接する。よって、第二部材12の径方向への移動が抑制され、シート状の第二部材12の広がっている状態がより確実に維持される。
【0037】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0038】
[構成]
図3は、本発明の実施形態2に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図3に示されるように、シール部材20は、第一部材21、第二部材22、第三部材23および通気路24を有する。シール部材20も、シール部材10と同様に、第一部材21の凹部211に第二部材22を収容し、次いで第三部材23を嵌合させることによって構成されている。
【0039】
第一部材21は、凹部211、孔212、嵌合凹条部213、押さえ凸部214、第一係止突条部215および第二係止突条部216を有している。凹部211は、有底の略円筒形状を有しており、孔212は、凹部211の底の中心部において、底を貫通している。嵌合凹条部213は、中心軸CAに沿う方向における凹部211の中央部よりも開口部側の位置に形成されている。嵌合凹条部213の断面形状は、波型である。押さえ凸部214は、凹部211の底における凹部211内側の表面から突出する突条部であり、その平面視したときの形状は円環状である。
【0040】
第一係止突条部215および第二係止突条部216は、いずれも、第一部材21の外周壁から外方に突出する突条部である。第一係止突条部215は、凹部211の開口端部から外方に突出しており、第二係止突条部216は、中心軸CAに沿う方向における凹部211の中央部よりも底側から外方に突出している。第一係止突条部215の断面形状は略矩形であり、第二係止突条部216の断面形状は波型である。また、第一係止突条部215は、第二係止突条部216のさらに外方まで突出している。
【0041】
第二部材22は、略円柱形状の多孔質体であり、通気性と非透水性と保形性とを有している。保形性とは、その物体が有する特定の形状を維持する性質であり、例えば特定の形状が保たれる十分な硬さである。第二部材22の材料の例には、日東電工株式会社製の超高分子量ポリエチレン多孔体「サンマップLC」(厚さ2.0mm、「サンマップ」は同社の登録商標)が含まれる。この他にも、第二部材22の材料の例には、三福工業株式会社製のフッ素樹脂発泡体、トーメイ工業株式会社製のプラスチック焼結多孔質体、株式会社染谷製作所製のプラスチック焼結多孔質体、スペイシーケミカル株式会社製のプラスチック焼結多孔質体、富士ケミカル株式会社製のプラスチック焼結多孔質体、株式会社先田製作所製のプラスチック焼結多孔質体、株式会社巴川製紙所製のフッ素繊維シート、中興化成工業株式会社製のフッ素樹脂多孔質体「C-Porous」(「シポラス」は同社の登録商標)、日東電工株式会社製のEPDMゴム発泡体「エプトシーラー」(「エプトシーラー」は同社の登録商標)、小段金属株式会社製の焼結金属多孔質体、および、株式会社創和製の透湿防水フィルター「FOLEC」(「FOLEC」は株式会社イノアックコーポレーションの登録商標)が含まれる。
【0042】
第三部材23は、凸部231、嵌合突条部232および蓋部233を有している。凸部231は、略円柱形状を有しており、凹部211の内径とほぼ同じ外径を有し、凹部211の深さから第二部材22の厚さを引いた値とほぼ同じ長さを有している。嵌合突条部232は、中心軸CAに沿う方向における凸部231の中央部から外方に突出している。嵌合突条部232の断面形状は、波型である。蓋部233は、平面視したときの形状が略円形の板状を有する部分である。蓋部233の外径は、第一部材21における第一係止突条部215の外径とほぼ同じである。このように、蓋部233の外寸は、第一部材21における凹部211の開口端部の外寸と実質同じである。
【0043】
通気路24は、通気路14と同様に、凹部211に収容されている第二部材22と外部とを連通しており、第三部材23の表面に形成されている溝とそれに対向する第一部材21の表面とによって構成されている。通気路24は、通気路14と同様に、凹部211の内周壁および開口端部に沿って延在し、蓋部233の外周縁で開口している。
【0044】
[シール部材の装着]
本実施形態において、凹部102の内径は、シール部材20の外径(蓋部233の外径および第一部材21の凹部211開口端部における外径)より大きい。また、貫通孔103の孔径は、第一部材21の凹部211における外径とほぼ同じである。
【0045】
シール部材20は、第三部材23を押圧することによって第一部材21側から凹部102に挿入される。第二係止突条部216は、収縮しながら貫通孔103を通り抜け、内部空間側に到達して弾性により突条の形状に復元する。第一係止突条部215は、凹部102の底に当接する。シール部材20は、このように、中心軸CAに沿う方向において第一係止突条部215と第二係止突条部216とが貫通孔103のそれぞれの開口縁部に係止することにより、ハウジング100に装着される。
【0046】
[シール部材の機能]
シール部材20は、通気性と非透水性とを有する第二部材22、および、外空間において中心軸CAに交差する方向に開口する通気路24、を有する。したがって、シール部材20も、シール部材10と同様に、内部空間から空気を放出することが可能であり、かつ外空間からの水の侵入を防止することが可能である。また、外空間からシール部材20を直撃する水流が第二部材22に直接到達することが妨げられる。
【0047】
蓋部233の外径は、第一部材21における凹部211の開口端部の外径と実質的に同じであり、シール部材20の外径と同じである。また、凹部102の内径は、シール部材20の外径よりも大きい。そして、通気路24は、シール部材20の外周面に開口している。蓋部233が通気路24よりも外空間側に配置されていることから、外空間からシール部材20に直撃する水流は、蓋部233に当たる。よって当該水流による通気路24への浸水がより一層抑制される。
【0048】
シール部材20において、第二部材22は保形性を有している。したがって、シール部材20の剛性を高める観点から有利であり、シール部材20の外径をより小さくすることが可能である。
【0049】
また、第一部材21における嵌合凹条部213と、それに嵌合する第三部材23における嵌合突条部232は、いずれも波型の断面形状を有している。したがって、中心軸CAに沿う方向における第一部材21と第三部材23との結合強度を調整しやすい。よって、中心軸CAに沿う方向における特定の大きさ以上の力がかかったときに、第二部材22を介して第三部材23を第一部材21から脱離させることが可能である。したがって、内部空間での異常な圧力上昇に応じて第一部材21の凹部211を外空間に対して開放させることが可能となり、内部空間側に配置されている様々な機械要素の、内部空間の圧力上昇による破損を防止するのに好適である。
【0050】
また、第二係止突条部216の断面形状が波型であることから、内部空間側からシール部材20に力がかかったときのシール部材20の貫通孔103への保持力を適宜に調整することが可能である。したがって、内部空間の圧力に応じて外空間側へのシール部材20の外れやすさを調整することが可能であり、内部空間側に配置されている様々な機械要素の、内部空間の圧力上昇による破損を防止するのに好適である。
【0051】
〔変形例〕
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
たとえば、前述の実施形態において、通気路は、第三部材の表面に形成された溝と第一部材の表面とによって構成されているが、当該溝は、第一部材の表面のみに形成されてもよいし、第一部材と第三部材の両方の表面に形成されてもよい。また、通気路の一部または全部が、第一部材および第三部材の一方または両方を貫通する孔あるいは管によって構成されてもよい。
【0053】
また、前述の実施形態において、第二部材は、スポンジのように形状を自在に変形可能であってもよいし、樹脂製の多孔質板またはモノリスのように保形性を有していてもよい。なお、モノリスとは、微細な網目状の骨格が繋がった一体型の多孔質体である。
【0054】
また、前述の実施形態において、シール部材の平面視したときの形状は円形であるが、他の形状であってもよい。たとえば、シール部材の平面視したときの形状は矩形であってもよいし、多角形であってもよいし、楕円形などの非円形であってもよい。
【0055】
また、実施形態2において、蓋部は、第一部材の外寸よりも大きい外寸を有していてもよい。この場合、蓋部は、通気路の外空間側の開口からさらに外方に突き出た位置まで延在する。したがって、外空間からシール部材に水流が直撃する場合に、通気路の外空間側の開口近傍に向かう水流は、蓋部の外周縁部によって妨げられる。よって、通気路への浸水をより一層防止する観点から有利である。
【0056】
〔まとめ〕
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態のシール部材(10、20)は、弾性を有するとともに凹部(111、211)を有し、かつ凹部の底を貫通する孔(112、212)を有する第一部材(11、21)と、連続気泡を有し、凹部に収容されて孔を塞ぐ第二部材(12、22)と、第二部材を収容している凹部に嵌合する凸部(131、231)を有し、凸部の凹部への嵌合によって第一部材に保持される第三部材(13、23)と、凹部に収容されている第二部材と外部とを連通し、外部において凹部の深さ方向に交差する方向に向けて開口する通気路(14、24)とを有する。このような構成によれば、シール部材の外側において、シール部材のシール方向に対して交差する向きに通気路が開口する。したがって、シール部材に向かう外部からの影響が通気路に入りにくくなることから、使用時におけるシール部材の外部からの影響を低減することができる。
【0057】
本発明の実施形態において、第三部材が、凸部が凹部に嵌合したときに第一部材における凹部の開口端部に当接する蓋部(133、233)を有し、通気路が、蓋部と第一部材における凹部の開口端部とが当接する部分を通って蓋部および開口端部の一方または両方における外縁部に開口していてもよい。このような構成によれば、第一部材および第三部材の一方または両方の表面に溝を形成することによって上記通気路を作製することができることから、外空間において上記の向きに開口する通気路を容易に形成する観点からより一層効果的である。
【0058】
また、本発明の実施形態において、第一部材における凹部の開口端部の外寸は、第三部材の蓋部の外寸よりも大きくてもよい。このような構成によれば、通気路の外空間側の開口がシール部材の設置によって塞がれることが防止されるので、通気路の通気性を十分に確保する観点からより一層効果的である。
【0059】
あるいは、本発明の実施形態において、第三部材の蓋部の外寸は、第一部材における凹部の開口端部の外寸以上であってもよい。このような構成によれば、通気路の外空間側の開口に対して第三部材の蓋部が外方により張り出すことから、通気路への外空間からの影響を抑える観点からより一層効果的である。
【符号の説明】
【0060】
10、20 シール部材
11、21 第一部材
12、22 第二部材
13、23 第三部材
14、24 溝
100、950 ハウジング
101 外壁
102 凹部
103、951 貫通孔
111、211 凹部
112、212 孔
113、213 嵌合凹条部
114 押圧突条部
131、231 凸部
132、232 嵌合突条部
133、233 蓋部
134、214 押さえ凸部
215 第一係止突条部
216 第二係止突条部
900 通気非透水ユニット
911 アウタケース
912 インナケース
913 通気非透水シート
921 筒状部
922 有孔底板部
923 抜止フランジ部
924、931 通気穴
925 内底面
926、952 凹条部
932 底面
CA 中心軸