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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】自動フライヤー
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/12 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
A47J37/12 331
A47J37/12 371
A47J37/12 381
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021008614
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022067034
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2020175201
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592181440
【氏名又は名称】株式会社マルゼン
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】石川 智行
(72)【発明者】
【氏名】二村 慎也
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-290530(JP,A)
【文献】特開2012-143274(JP,A)
【文献】登録実用新案第3205244(JP,U)
【文献】特開2010-246677(JP,A)
【文献】特開2017-192650(JP,A)
【文献】実開昭54-042782(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材(F)を揚げる油を貯留する油槽(6)と、
該油槽(6)内において食材(F)送る食材送り機構(4)と、
該油槽(6)を加熱する、油槽底面の下に配設されたIHコイル(81)と、
を具備し、
前記油槽(6)に、該油槽の底(61b)より一段低いカス貯め部(63)が付設されており、
前記底(61b)の少なくとも前記IHコイル(81)が配設されている部分が磁性材からなり、
前記カス貯め部(63)が非磁性材からなるクールゾーンを構成しており、
前記油槽(6)の底(61b)の下に、
前記IHコイル(81)に給電するインバータ(85)、及び、
フライヤー(1)の底部周辺から空気を取り入れ、前記IHコイル(81)及びインバータ(85)に空気を当てる冷却機構(9)が配置されており、
前記IHコイル(81)及び前記インバータ(85)に当たった空気は、前記カス貯め部(63)の周辺にも流れて厨房内に排気されるものであることを特徴とするフライヤー(1)。
【請求項2】
食材(F)を揚げる油を貯留する油槽(6)と、
該油槽(6)内において食材(F)送る食材送り機構(4)と、
該油槽(6)を加熱する、油槽底面の下に配設されたIHコイル(81)と、
を具備し、
前記油槽()に、該油槽の底(61b)より一段低いカス貯め部(63)付設されており、
前記底(61b)の少なくとも前記IHコイル(81)が配設されている部分が磁性材からなり、
前記カス貯め部(63)が非磁性材からなるクールゾーンを構成しており、
前記油槽(6)が、一定の角度に傾斜した傾斜底面(61b)を有し、
該傾斜底面(61b)の外側下面に前記IHコイル(81)が配設されており、
前記油槽(6)の前記傾斜底面(61b)の低い側の先に前記カス貯め部(63)が接続されており、
前記食材送り機構(4)が、前記油槽(6)内の前記傾斜底面(61b)に沿って移動して食材(F)を送る送り部材(41)を有し、
前記食材送り機構(4)が、前記送り部材(41)を送る無限軌道(44)を具備し、
前記送り部材(41)の上部の前記無限軌道(44)への取付部が前記油槽(6)の油面よりも上であり、前記送り部材(41)が前記油槽(6)内に吊り下げられていることを特徴とするフライヤー(1)。
【請求項3】
さらに、前記カス貯め部(63)の上面を覆う孔付きフタ(64)を具備し、
該孔付きフタ(64)が、前記傾斜底面(61b)の延長面に沿って広が、その上面を食材(F)の前記送り部材(41)が摺動するとともに、揚げカスは通って落ちるものであることを特徴とする請求項2記載のフライヤー(1)。
【請求項4】
前記カス貯め部(63)に揚げカス容器を備え、該容器が前記孔付きフタ(64)と共に取り外し可能であることを特徴とする請求項3記載のフライヤー(1)。
【請求項5】
前記送り部材(41)が前記孔付きフタ(64)から外れた位置で停止した状態で、前記孔付きフタ(64)及び前記揚げカス容器が取り外せることを特徴とする請求項4記載のフライヤー(1)。
【請求項6】
前記油槽(6)の底(61b)の下に、
前記IHコイル(81)に給電するインバータ(85)、及び、
フライヤー(1)の底部周辺から空気を取り入れ、前記IHコイル(81)及びインバータ(85)に空気を当てる冷却機構(9)が配置されていることを特徴とする請求項2~5いずれか1項記載のフライヤー(1)。
【請求項7】
前記冷却機構(9)が、 前記油槽(6)が搭載される支持架台(10)の下部又は底部から空気を取り入れて、前記IHコイル(81)及び前記インバータ(85)に送るものであることを特徴とする請求項6記載のフライヤー(1)。
【請求項8】
前記IHコイル(81)及び前記インバータ(85)、並びに、前記冷却機構(9)が、前記油槽(6)の下方に収まるように配設されていることを特徴とする請求項6又は7記載のフライヤー(1)。
【請求項9】
前記食材送り機構(4)が、
前記無限軌道(44)を収容する、前記油槽(6)に配設されたケーシング(42)と、
前記無限軌道(44)を駆動するモータ(49)と、を具備し、
前記送り部材(41)の前記無限軌道(44)への取付構造が、自転回動不能な凹凸嵌合して載置支持するものであることを特徴とする請求項2記載のフライヤー(1)。
【請求項10】
前記送り部材(41)が、
本体板(41b)と、
該本体板(41b)の下部に固定された垂れ下がるヒレ(41f)であって、その下縁が前記油槽(6)の底(61b)に触れながら移動する、低摩擦樹脂からなるヒレ(41f)を有することを特徴とする請求項2又は9記載のフライヤー(1)。
【請求項11】
前記食材送り機構(4)が、前記軌道(44)を駆動するモータ(49)を具備し、
前記モータ(49)が、前記ケーシング(42)の底の下方に配置されていることを特徴とする自動式の請求項9記載のフライヤー(1)。
【請求項12】
前記無限軌道(44)の駆動部材(45L)の回転中心軸が、前記モータ(49)の回転中心軸から、前記油槽(6)の端方向にシフトするように構成されていることを特徴とする請求項1記載の自動式のフライヤー(1)。
【請求項13】
前記ケーシングが、ケーシング本体(142-2)と上蓋(142-1)とからなり、
前記無限軌道の軌道部材(144)、及び、該軌道部材を駆動する軌道駆動部材(145)が、実質的に前記上蓋(142-1)内に収容されており、
前記ケーシング本体(142-2)の上面(142-5)の、前記軌道部材(144)の下面(144b)と対向する部分が、油溜まりとなる凹所を実質的に有していない面であることを特徴とする請求項1又は1記載の自動式のフライヤー(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファミリーレストランや回転鮨店などにおいて、様々な食材を自動搬送しながら油で揚げるフライヤーに関する。特には、省人化や省スぺース化を図れる、あるいは、油が長持ちする、などの特性を有するロータリー式などの自動フライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、厨房業界においては、人手不足対策として、省人化・自動化を促進した厨房機器の開発・利用が進んでいる。フライヤー(揚げ器)では、加熱した油の中で回転(長円運動含む)する食材送り部材(羽根など)を有するロータリー式のものが用いられる(後記特許文献1参照)。ロータリー式フライヤーにおいては、食材送り経路における、調理時間に応じたポジションに食材投入後、搬送から取り出しまでの調理作業が自動で行われる。
【0003】
現状の自動フライヤーにおける問題点は以下である。
(1)揚げカス回収に手間がかかる。
加熱手段(熱源)が、食材を揚げる油槽の中に、棒状のカートリッジヒーターやシーズヒーターを沈めたものとなっている。そして、ヒーターは、移動する食材送り部材(羽根)との接触を避けるため、油槽の底の一段低い部位(ヒーター設置凹部)に置かれている。この凹部には、揚げカス(食材のかけらなど)が溜まる。この溜まった揚げカスを回収する際に、ヒーターが障害となって非常に手前がかかる。
【0004】
(2)油槽の拭き取り清掃が困難である。
油槽の拭き取り清掃の際に、上述のように、ヒーターが油槽内の凹部に設置されているため、ヒーターが邪魔になり、また油槽底の構造が複雑になるため、油槽の掃除、特に拭き掃除が非常に困難となっている。
(3)食材送り部材(羽根)の取り外しに手間がかかり、油槽の拭き取り清掃が、一層困難である。羽根が駆動機構(無限軌道)に対してビス止めされているものがあり、この場合、羽根の取り外し・取り付けに手間がかかり、油槽底の拭き取り清掃に手間と時間がかかる。
【0005】
(4)揚げカスがヒーターで加熱されて油の寿命が短くなる。
上述のように、ヒーター設置凹部に揚げカスが溜まって、ヒーターに揚げカスが接触するため、揚げカスや周囲の油が不必要に加熱される。そのため、油の酸化が進んで油寿命が短くなる。あるいは、油が焦げ臭くなって、料理の味や色が劣化する。
【0006】
(5)食材送り機構が油槽の上や横に突出し、調理作業を阻害する。あるいは、フライヤーの設置スペースが広くなる。
ロータリー式のフライヤーにおいては、モータなどの食材送り駆動機構やその配線が、油槽の上に張り出しているものがある。この場合、また、食材の投入作業の動線に邪魔なものが存在することとなるため、作業に支障をきたしている。また、フライヤーの設置スペースが油槽寸法よりも相当大きくなる。
(6)食材送り駆動機構に油や揚げカスが浸入して溜まると、清掃に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許3911505
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、揚げカス回収に手間がかからない、あるいは、油槽の拭き取り清掃が容易、などの特長を有する自動フライヤーを提供することを目的とする。あるいは、ヒーターによる揚げカス加熱を抑制でき、油の寿命が長くなる自動フライヤーを提供することを目的とする。あるいは、食材送り駆動機構により調理作業の動線が阻害されず、省スペースの自動式フライヤーを提供することを目的とする。あるいは、食材送り駆動機構に油が溜まらない自動フライヤーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この「課題を解決するための手段」、及び、「特許請求の範囲」においては、添付図各部の参照符号を括弧書きして示すが、これは単に参考のためであって、権利範囲を添付図のものに限定する意図はない。
【0010】
本発明の第一の自動フライヤー(1)は、 食材(F)を揚げる油を貯留する油槽(6)と、 該油槽(6)内において食材(F)送る食材送り機構(4)と、 該油槽(6)を加熱する、油槽底面の下に配設されたIHコイル(81)と、を具備し、
前記油槽(61)に、該油槽の底(61b)より一段低いカス貯め部(63)付設されており
、 前記底(61b)の少なくとも前記IHコイル(81)が配設されている部分が磁性材か
らなり、 前記カス貯め部(63)が非磁性材からなるクールゾーンを構成していることを特徴とする。
【0011】
本発明の第一の自動フライヤー(1)においては、IHコイル(81)は油槽(6)の底(61b)の下、すなわち油槽(6)の外に配置されている。つまり、従来のような油槽内ヒーターは存在しない。そのため、油槽のカス貯め部(63)から揚げカスを回収するのに、手間がかからない。あるいは、油槽の底61bなどの拭き取り清掃が容易である。
【0012】
また、本発明の第一の自動フライヤー(1)においては、カス貯め部(63)が、油槽の底(61b)より一段低く形成されているとともに、IHコイル(81)によって加熱されない非磁性材からなるクールゾーンを構成しているため、カス貯め部(63)に溜まった揚げカスがヒーターにより加熱されることがなく焦げたりしないため、油槽(6)内のフライ油の寿命が長くなる。また、調理品の味や色が劣化しない。
【0013】
本発明のフライヤー(1)においては、 前記油槽(6)が、一定の角度に傾斜した傾斜底面(61b)を有し、 該傾斜底面(61b)の外側下面に前記IHコイル(81)が配設されており、 前記油槽(61)の前記傾斜底面(61b)の低い側の先に前記カス貯め部(63
)が接続されており、 前記食材送り機構(4)が、前記油槽(6)内の前記傾斜底面(61b)に沿って移動して食材(F)を送る送り部材(41)を有するものとできる。
【0014】
上記の食材送り機構(4)を有するフライヤー(1)においては、食材送りをスムーズにするとともに、クールゾーンとなるカス貯め部(63)を、適切に配置できる。また、揚げカスは低いカス貯め部(63)に集まりやすい。
【0015】
上記フライヤー(1)においては、さらに、前記カス貯め部(63)の上面を覆う孔付きフタ(64)を具備し、 該孔付きフタ(64)が、前記傾斜底面(61b)の延長面に沿って広がり、その上面を食材(F)の前記送り部材(41)が摺動するとともに、揚げカスは通って落ちるものであることが好ましい。 カス貯め部(63)の上方においても、食材(F)をフライ油中で送って揚げることができ、フライヤー(1)全体の寸法をコンパクトにできる。
【0016】
上記フライヤー(1)においては、さらに、カス貯め部(63)に油抜き孔を設けた揚げカス容器(又はカス籠)を備えることが好ましい。容器ごと揚げカスを取り出すことができる。このような、揚げカス容器をカス貯め部(63)に配置できるのも、従来のフライヤーと異なり、カス貯め部(63)にカートリッジヒーターやシーズヒーターが存在しないためである。
【0017】
本発明のフライヤー(1)においては、 前記油槽(6)の底(61b)の下に配置された、前記IHコイル(81)に給電するインバータ(85)と、 フライヤー(1)の底部周辺から空気を取り入れ、前記IHコイル(81)及び前記インバータ(85)に空気を当てる冷却機構(9)と、 を具備することが好ましい。
【0018】
すなわち、ヒーターやインバータの冷却風は、フライヤーの下部あるいは底部から、調理室の床近くの空気を取入れる。一般的にも厨房室内には幾つもの熱機器が稼働し、輻射熱や排気熱が放出される環境上、フライヤーの本体下部付近にあるエアーの温度が最も低い状態であり、ヒーターやインバータの冷却効果を高めることができる。ここで、インバータや冷却機構(9)は、油槽(6)の下方に収まるように配置することが好ましい。そうすると、フライヤー(1)の寸法がコンパクトになる。
【0019】
本発明の第二の自動フライヤー(1)は、 食材(F)を揚げる油を貯留する油槽(6)と、 該油槽(6)内において食材(F)送る食材送り機構(4)と、 該油槽(6)を加熱する手段(81)と、 を備える自動フライヤー(1)であって、 前記食材送り機構(4)が、 前記油槽(6)内で循環駆動される、食材(F)を送る送り部材(41)と、 該部材を移動させる無限軌道(44)と、 該軌道を収容する、前記油槽(6)に配設されたケーシング(42)と、 前記軌道(44)を駆動するモータ(49)と、を具備し、 前記送り部材(41)の前記無限軌道(44)への取付構造が、自転回動不能な凹凸嵌合する載置支持部であることを特徴とする。
【0020】
ねじ止めなどによる食材送り部材(41)の取付構造では、部材(羽根など)の取り外しに手間がかかり、油槽の拭き取り清掃に、一層手間がかかる。発明の第二の自動フライヤー(1)においては、その取付構造が、凹凸嵌合する載置支持部(嵌めるだけ、重力の作用で載置保持するだけ)であるため、食材送り部材(41)の取り外し・取り付けがほぼ一瞬で行える。そのため、油槽の拭き取り清掃を、手軽に行える。
【0021】
本発明の第三の自動フライヤー(1)は、 食材(F)を揚げる油を貯留する油槽(6)と、 該油槽(6)内において食材(F)送る食材送り機構(4)と、 該油槽(6)を加熱する手段(81)と、 を備える自動フライヤー(1)であって、 前記食材送り機構(4)が、 前記油槽(6)内で循環駆動される、食材(F)を送る送り部材(41)と、 該部材を送る無限軌道(44)と、 該軌道を収容する、前記油槽(6)に配設されたケーシング(42)と、 前記軌道(44)を駆動するモータ(49)と、を具備し、
前記モータ(49)が、前記ケーシング(42)の底の下方に配置されていることを特徴とする。
【0022】
従来と異なり、食材送り駆動機構(モータやそのケーブルなど)により調理作業の動線が阻害されず、狭いスペースに設置できるとともに、使いやすい自動式フライヤーを提供できる。
また、IH加熱方式とし、嵩張るカートリッジヒーターを油槽(6)に収容するヒーターボックスを設ける必要がなく、油槽(6)の容積が減るため、フライ油の節約にもなる。一例で、従来の同性能のフライヤーの油量が28Lなのに対して、本発明実施形態のフライヤーの場合、油量は23Lですむ。なお、従来のフライヤーでは、ヒーターボックスが揚げカスで埋まってしまうため、さらにヒーターボックスを大きくし、油量を増やす必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係るフライヤー1の全体構成を示す正面図である。
図2図1のフライヤー1の平面図である。
図3図1のフライヤー1の油槽加熱手段8と、その冷却機構9の構造を模式的に示す斜視図である。
図4図1のフライヤー1の支持架台10、及び、吸気ボックス95の構成を示す斜視図である。
図5】無限軌道チェーン44と羽根41との接続構造を示す斜視図である。
図6図1のフライヤー1の食材送り機構4の具体的構造例を示す、模式的な一部分解正面断面図である。
図7図6の食材送り機構の変形例に係る食材送り機構104の具体的構造を示す図であって、(A)は模式的な正面断面図であり、(B)は模式的な一部分解正面断面図である。
【符号の説明】
【0024】
A;フライ油、F;食材、1;フライヤー、
2;本体フレーム、21;バックプレート、23;箱体、3;操作盤
4;食材送り機構、41;食材送り部材(羽根)、41m;角パイプ、41b;羽根本体板、
41f;ヒレ
42;ケーシング、42-1;蓋、42-2;ケーシング本体、
42-5;ケーシング底、42-7;蓋取付ポスト、42-8;ナット、42-9;蓋セットピン
42b;溝、43;無限軌道機構
44;無限軌道(チェーン)、44x;羽根取付片、44z;角棒
45;スプロケット、46;カップリング、46x;カップリング軸、49;モータ、49b;出力軸、49x;減速機、
50;取付板、51;平歯車、52;スプロケット軸、52x;カップリング凹部52x
6;油槽、61;油槽本体、61b;底(傾斜底面)、61f;側壁、61g;半円部、61h;矩形部61p;上縁、61s;食材出口
63;カス貯め部(クールゾーン)、63f;右側側壁、63g;左側側壁、64;孔付きフタ、
69;排油口
7;揚がり食材受け、71;上段、73;下段
8;油槽加熱手段、81;IHコイル(加熱手段)、
83;コイルボックス、83b;上面、83g;吸気口、83k・83j;排気口、
85;インバータ、86;インバータボックス
9;冷却機構、91;ブロワー、93;ダクト
95;吸気ボックス、95b;上面、95d;奥側の室、95f;円形孔、95k;手前側の面
95p;開口、95r;仕切り、95s;手前側の室、95x;下端部、
97;フィルター、99;ファン
10;支持架台、101;テーブル、101g;孔、103;脚、106;底箱、106b;開口
104;食材送り機構、106;油槽、161b;底
142;ケーシング、
142-1;上蓋、142-1b;薄い上面板、142-1f;側壁、142-1j;軸受収容部、
142-2;ケーシング本体、142-2b;側面、142-5上面、142-6;軸孔、
142-7;蓋取付ポスト、142-8;ナット、142-9;蓋セットピン
144;チェーン(軌道部材)、144b;下面、145;軌道駆動部材(スプロケット)、
145L;駆動スプロケット、145R;従動スプロケット
146;カップリング、146X;係合部、148;軸受、
149;モータ、151;平歯車、152;延長スプロケット軸(延長軸)、152x;係合部
【発明の実施の形態】
【0025】
以下、添付図を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。各図において矢印で示す各方向は、「上」・「下」は地球重力に沿う方向である。「手前」は、操作盤3の正面の、調理人が立つ側であり、調理人は、フライヤー1の手前側に立って、これから揚げる食材Fを油槽6に投入する。「奥」は、調理人から見て、対向する遠い方向である。「左」・「右」は、調理人がフライヤー1に向かって見た左右の方向である。
まず、本発明の実施の形態に係るフライヤー1の全体構成を、その正面図である図1、及び、平面図である図2を参照しつつ説明する。
【0026】
このフライヤー1は、大きく分けて、以下に述べる、本体フレーム2、操作盤3、食材送り機構4、油槽6、揚がり食材受け7、油槽加熱手段8、冷却機構9(図3)、支持架台10から構成されている。
【0027】
本体フレーム2は、油槽6を収容する箱体23(上面開放)と、同箱体の奥側上部に広がるバックプレート21を有する。バックプレート21は、油跳ねを遮るとともに、フライヤー1の奥側で作業したり移動する調理人が、誤って手などを食材送り機構4や油槽6に触れないようにするための保護部材である。
操作盤3は、本体フレーム2の左上奥側に立ち上がっている。この操作盤3のタッチパネルなどを調理人が操作して、油槽6の温度や、食材送り機構4の速度などを調整する。
【0028】
食材送り機構4は、油槽6内で長円形の軌道に沿って駆動される羽根(食材送り部材)41や、該羽根41を送る無限軌道機構43、羽根駆動モータ49などを有する(詳細後述)。
油槽6は、フライ油を溜める槽本体61やカス貯め部63を有する。槽本体61の傾斜した底61bの上を上記の羽根41が移動して食材Fを送る(詳細後述)。
【0029】
揚がり食材受け7は、油槽6から羽根41に押されて左上方向に上がってきた食材を受ける部位である。食材受け7は、上下二段の引き出しとなっており、上段71に揚がった食材が落ち込み、下段73に食材の付着油が食材から落ちて溜まる(上段71の底は網になっている)。
【0030】
油槽加熱手段8は、油槽6の底裏に取り付けられたIHコイル81・81´や、それに高周波電流を供給するインバータ85を有する。
冷却機構9は、上記IHコイル81やインバータ85(インバータボックス86)に風を当てて冷却するものである。詳細は図3図4を参照しつつ後述する。
支持架台10は、上記の本体フレーム2や揚がり食材受け7などを載せる台(テーブル)である。
【0031】
油槽6の詳細を、図1図2を参照しつつ説明する。油槽6の平面形状は、図2に示すように、右側が半円形の側壁61fを有する半円部61gと、左側の矩形部61hが合わさったものである。油槽6の底61bは、右に行くほど下に下がる傾斜面(傾斜角度例15°)となっている。油槽6の上縁61pは、水平である。したがって、油槽6の底61bの深さは、右側ほど深く、左側ほど浅くなっている。
【0032】
油槽6の奥手前方向中央部には、詳しくは後述する、食材送り羽根41を駆動する食材送り機構4のケーシング42が配置されている。同ケーシング42は、左右に長い箱状であって、油槽6の底61bから立ち上がる堤状であり、底61bと同様に傾斜している。食材送り機構4のケーシング42によって、油槽6は奥手前に半分ずつに分かれている。
【0033】
油槽6の奥側では、食材送り羽根41は左から右に移動し、食材F(エビフライを模擬)を、油槽6の深い方向に送る。油槽6の右端部(カス貯め部63の上など)では、食材送り羽根41は時計回りに半円運動し、食材Fを奥から手前側に送る。油槽6の手前側では、食材送り羽根41は右から左に移動し、食材Fを油槽6の浅くなる方向に送る。食材Fの種類に応じて、所要の揚げ時間となるように、食材Fを油槽6に投入する位置を変える。なお、通常は、食材送り羽根41の移動速度は一定で使用する。
【0034】
油槽6の底61bの手前側の左端は、側壁のない食材出口61sとなっている。羽根41のよって押し上げられて食材出口61sから左側に出た食材Fは、揚がり食材受け7に落下する。油槽6内には、食材出口61sのやや右側(下)まで、フライ油Aが溜められている。食材出口61sの上では、羽根41が時計回りに半円運動する。
【0035】
油槽6の右端部は、カス貯め部63となっている。カス貯め部63は、底61bから一段掘り込まれた深い部分である。カス貯め部63の右側側壁63fは、平面形状が円弧形であって、上述した油槽6の半円形の側壁61fに連なって下に延びている。カス貯め部63の左側側壁63gは、平面状で、まっすぐ下に落ち込んでいる。カス貯め部63の底も右側に行くほど低くなるように傾斜している。カス貯め部63の底の右端部には、排油口69(管、弁付き)が設けられている。
【0036】
カス貯め部63の上には、孔付きフタ64がかぶさっている。同フタ64は、その上面が平面であり、油槽6の底61bと同一平面に沿っている(やや低くてもよい)。孔付きフタ64の左側縁は直線状で、右側縁は円弧状である。このフタ64の上を、食材送り機構4の羽根41の下縁が移動する。これにより、孔付きフタ64の部分も、底61b同様に食材Fが送られる。
【0037】
孔付きフタ64は、ステンレス板に多数の孔(隙間)を開けたものである。その隙間の寸法は4mm(一例)程度であり、食材Fは落ちないが、揚げカスはカス貯め部63に落ちるようになっている。カス貯め部63の中には、同部63の内側に沿う形状のカス籠(揚げカス容器)が置かれており、揚げカスを取り出しやすくなっている。なお、カス籠も、非磁性ステンレス板に油抜き孔を開けたものである(隙間は孔付きフタ64より細かい、一例で孔径3.2mm)。孔付きフタ64やカス籠は、フックを用いて、上に引き上げられるようになっている。すなわち、前記カス貯め部(63)に揚げカス容器を備え、該容器が前記孔付きフタ(64)と共に取り外し可能である。羽根41を、孔付きフタ64から外れた適当な位置で止めることにより、フライヤー使用中においても、羽根41を外すことなく、また油槽6の油を抜くことなく、揚げカスの除去が可能である。
【0038】
油槽6は、カス貯め部63以外は、磁性材料で作製されている。磁性材料としては、例えば、フェライト系ステンレス鋼(SUS430など)や、非磁性材料に磁性材料をコーティングしたものなどを使用できる。一方、カス貯め部63は、非磁性材料で作製される。非磁性材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、316など)を使用できる。カス貯め部を非磁性材製とすることで、コイルの磁束による誘導加熱が起こらないので、同部の温度上昇を防止できる。
【0039】
油槽6の底61bの右側(カス貯め部63の左側)の底外面には、コイルボックス83に収められた、IHコイル81・81´が配置されている。各IHコイル81・81´は、円形に巻き回されたものである。奥側のコイル81は、油槽底61bの食材送り機構4より奥側に存在し、手前側のコイル81´は、油槽底61bの食材送り機構4より手前側に存在する。各コイルは、インバータ85に接続している。コイル81に電流を流すと、通常のIH加熱の場合と同様に、底61bの磁性材製の板にうず電流が生じ、このうず電流が電気抵抗で熱に変わって同部を加熱する。
【0040】
次に、図3図4を参照しつつ、フライヤー1の油槽加熱手段8と、その冷却機構9の構成を説明する。図3は、それらの模式的斜視図であり、図4は、フライヤー1の支持架台10、及び 吸気ボックス95の構成を示す斜視図である。
【0041】
図4に分かり易く示すように、吸気ボックス95は、架台10上に設けられており、冷却風を架台10の下から吸い込んで、IHコイル81及びインバータボックス86(インバータ85(素子基板)を内蔵)に送る。架台10は、脚103に支えられたテーブル101を備える。テーブル101の上面に、吸気ボックス95が搭載されて固定されている。この吸気ボックス95は、全体として、直方体の箱状である。吸気ボックス95内部は、仕切り95rによって、奥側の室95dと、手前側の室95sに分けられている。
【0042】
テーブル101の下方から冷却空気を吸うため、ボックスの下端部95xは、テーブル101の孔101gを貫通し、テーブル101の下に出ている。吸気ボックス95の下面は、開放されており(底なし)、同面にはフィルター97(図3)が貼られている。テーブル101の下方から冷却空気を吸うのは、一般的にも厨房室内には幾つもの熱機器が稼働し、輻射熱や排気熱が放出される環境上、テーブル101の下方にあるエアーの温度が最も低い状態であり、IHコイル81などの冷却効果を高めるためである。
【0043】
吸気ボックス95は、上面95bに円形孔95fが開けられている。この孔95fは、ボックス上面95bに搭載されたブロワー(ファン)91の吸気口に接続されている。
吸気ボックス95の手前側の面95kには、開口95pが開けられている。同開口95pには、図3に示すように、インバータボックス86を冷却するためのファン99(軸流ファン)が対面接続されている。結局、吸気ボックス95内に下方から吸い込まれた空気は、奥側のものはIHコイル81冷却用とされ、手前側のものはインバータボックス86(インバータ85)冷却用とされる。
【0044】
吸気ボックス95の上に搭載されたブロワー91(遠心ファン)からは、コイルボックス83に、送風ダクト93が繋がっている。コイルボックス83は、アルミ合金板やマイカ板などからなる、薄い、長方形の箱である。コイルボックス83の上面83bは、油槽6の底61bの底面(下面)に対して、少し隙間を開けて対向している。このボックス83内に、二組のIHコイル81・81´が収容されている。
【0045】
コイルボックス83の下面の中央部には吸気口83gが形成されている。この口83gには、ダクト93の先端が接続されている。コイルボックス83の、奥側の端面には、排気口83kが開けられており、手前側の端面には、排気口83jが開けられている。吸気口83gからコイルボックス83に入った空気は、奥手前の両側に分かれて、各IHコイル81・81´を冷却した後、手前奥の排気口83j・83kから排出される。
【0046】
インバータボックス86の冷却用のファン99(軸流ファン)から出た風は、一部はインバータボックス86の上面に当たり、一部はインバータボックス86の内部を通過して、インバータ85を冷却する。IHコイル81やインバータ85を冷却した後の空気(50~60℃)は、カス貯め部63(クールゾーン、100~120℃)の周辺をも流れ、カス貯め部63を冷却する効果もある。冷却風は、架台テーブル101の下の底箱106の側面の開口106bから、厨房内に排気される。なお、各ファン・ブロワーの定格送風量は、ブロワー91が3.0m3/min、軸流ファン99が3.25m3/min、合計で6.25m3/minであり、二台のIHコイル81・81´(合計定格出力7.0kW)を冷却するのに十分な送風量となっている。
【0047】
本実施形態においては、フライヤー1の油槽加熱手段8と、その冷却機構9は、油槽6の下方に収まるように配置されている。これにより、フライヤー1寸法が従来品よりも広がらず、コンパクトなフライヤー1を提供できる。
【0048】
次に、食材送り機構4の詳細について、図1図2図5図6を参照しつつ説明する。図5は、無限軌道チェーン44と羽根41との接続構造を示す斜視図である。図6は、食材送り機構4の具体的構造例を示す、模式的な一部分解正面断面図である(ケーシング蓋42-1は上に持ち上がった状態)。
食材送り機構4は、食材Fを送る羽根(食材送り部材)41を、長円軌道に沿って平面視で時計回りに送る機構である。羽根41は、この例では、図2に示すように、符号411~416の6枚が設けられている。羽根41は、食材送り機構4のケーシング42から、外側に突き出す形態である。
【0049】
奥側の二枚の羽根411・412は、図2の右方向に動き、食材Fを油槽6の深い方に送る。右側の羽根413は、半円運動しているところである。同羽根413は、食材Fを奥側から手前側に送る。手前側の二枚の羽根414・415は、図2の左方向に動き、食材Fを油槽6の浅い方に送る。そして、食材Fが、左端の側壁のない食材出口61sに達し、食材出口61sから左側に押し出されて、揚がり食材受け7に落下する。左側の羽根416は、半円運動して、油槽6の奥側に戻ろうとしているところである。
【0050】
図2図5図6に示すように、ケーシング42内には、無限軌道チェーン44が収められている。同チェーン44は、ケーシング42内の左右端部に配設された、一対のスプロケット45L・R(図5には右スプロケット45Rのみ示す)に巻き回されている。そして、両スプロケットの間では、チェーン44は左右方向に直線運動し、両スプロケットの外側では、半円運動する。左側のスプロケット45Lの下端部は、図6に示すように、スプロケット軸52や平歯車51を介して、モータ49の出力軸49bに連結されている。なお、出力軸49bは、一対のシフト平歯車51により、モータ49の中心から図の左側にシフトされている。これは、スプロケット45をできるだけ油槽6の端に位置させたいからである。モータ49そのものは減速機49x付きモータである。このモータ49により、無限軌道チェーン44、及び、羽根41が駆動される。
【0051】
モータ49や平歯車51、スプロケット軸52は、油槽6の底61bに下裏から貼り付けられる取付板50により固定されている。なお、取付板50とスプロケット軸52との間にはベアリング(図示されず)が設けられている。スプロケット軸52の上端はカップリング凹部52xとなっており、スプロケット45L側のカップリング46の軸46xと嵌合し(ケーシング蓋42-1のセット時に)、スプロケット軸52とスプロケット45Lが接続される。
【0052】
ケーシング42-2の底42-5には、左右二本の蓋取付ポスト42-7と、その中央部の蓋セットピン42-9(図の面の奥手前方向に二本ある)が立設されている。ケーシング蓋42-1を下げ、ポスト42-7の先のねじ部を蓋42-1に通し、ナット42-8を締めれば蓋42-1をケーシング42-2に固定できる。なお、蓋セットピン42-9の先端は、蓋42-1の下面の凹部(図示されず)に嵌まり込んで、位置決めとなる。
【0053】
次に、無限軌道チェーン44と羽根41との接続構造について、図5を参照しつつ説明する。無限軌道チェーン44の上端部からは、羽根取付片44xが、外向けに突出している。羽根取付片44xは、ケーシング42の溝42b(具体的には上のケーシング蓋42-1と下のケーシング本体42-2との間の隙間)から、ケーシング外に突出している。なお、スプロケット45は、軸受(図示されず)を介して、蓋42-1やケーシング本体42-2に、回動自在に取り付けられている。上記のケーシング42の構造は、長年市販されている従来のロータリー式自動フライヤーと、基本的には、同じ構造である。
【0054】
羽根取付片44xの先端には、上向きの角棒44zが突設されている。同角棒44zは、水平断面が矩形であり、下端部を除いて、周囲は空間となっている。この角棒44zに、次述する羽根41の根元の角パイプ41mを差し込んで、羽根41を無限軌道チェーン44に取り付けている。角パイプ41mは、角棒44z、及び、無限軌道チェーン44とともに、長円軌道上を周回する。しかし、角パイプ41mは角棒44zの軸心周りには回動不能である。
【0055】
羽根41は、羽根本体板41bと、その下部に重ねてリベット固定されたヒレ41fを有する。羽根本体板41bは、ステンレスの薄板(一例)からなり、やや横長の略長方形である。羽根本体板41bの横長方向は、無限軌道チェーン44の軌道から直角に張り出した方向に固定されている。ヒレ41fは、フッ素樹脂((polytetrafluoroethylene, PTFE)など、いわゆるテフロン)の板であり、本体板41bの下端から2cm程度、垂れ下がっている。ヒレ41fの下端は、油槽6の底61bに触れながら移動するが、フッ素樹脂の柔軟性・低摩擦性により、油槽6の底61bを傷付けることがない(従来品は金属板バネ製)。そのため、油槽底61bの拭き取り清掃が容易である。なお、ヒレの下端には、切り欠き41fbが形成されているが、これは油を逃がすためのものである。
【0056】
羽根41の根元の上部には、上述の角パイプ41mが固定されている。この角パイプ41mは、無限軌道チェーン44の角棒44zに上から嵌まり込んでいる。つまり、羽根41の角パイプ41mを角棒44zに嵌めるだけで、羽根41が無限軌道チェーン44に取り付けられている。そして、羽根41を油槽6から取り出す際は、羽根41を上に上げるだけで、取り外せる。この構造の要点は、羽根(送り部材)41の無限軌道44への取付構造が、自転回動不能な凹凸嵌合して載置支持するものである。そのため、油槽6の清掃、特に拭き掃除がきわめて楽である。なお、現在用いられているフライヤーの中には、羽根を取り外すのに、ビスを緩めて外さなければならないものもある。
【0057】
次に、図7を参照しつつ、図6の食材送り機構の変形例に係る食材送り機構104の具体的構造を説明する。図7(A)は模式的な正面断面図であり、同(B)は模式的な一部分解正面断面図(蓋142-1が上に浮いた状態)である。図7において図6における符号に100を加えた符号の部位は、以下に特記した点を除いて、前記図6における符号の部位と、基本的には類似した形態の部位である。
【0058】
この図7の変形例の食材送り機構104の特徴は次のとおりである。すなわち、図7の食材送り機構104は、そのケーシングが、ケーシング本体142-2と上蓋142-1とからなり(両者を併せてチェーンボックスとも呼ぶ)、無限軌道の軌道部材(チェーン144)、及び、該チェーン144を駆動する軌道駆動部材(スプロケット145)が、実質的に上蓋142-1内に収容されている。そして、上記ケーシング本体142-2の上面142-5の、上記チェーン144の下面144bと対向する部分が、油溜まりとなる凹所を実質的に有していない面であることを特徴とする。
【0059】
ケーシング本体142-2は、図6の場合と同様に、油槽106の底161bに立設された、左右に長い箱状のものである。ケーシング本体142-2は、底161bと同様に傾斜している。ケーシング本体142-2の外周を、食材送り羽根(図2の符号411~416参照)が、チェーン144に駆動されて周回する。ケーシング本体142-2の下部は、油槽106に貯留されたフライ油(油面を二点鎖線で示す)に浸っている。
【0060】
図7(B)に示すように、ケーシング本体142-2は、その上面142-5が、フラットであり、油槽底161bと同じ傾斜が付されている。図6のケーシング本体42-2は、上面(ケーシング底)42-5の周囲に壁が設けられており、該上面42-5は凹所となっている。図6のフライヤーの場合、この凹所にフライ油が浸入して溜まると、掃除が面倒である。なお、油の浸入するケーシング本体と蓋42-1との隙間(図5に示す溝42b、羽根取付片44xが通る)は、油槽6の油面より上であるが、食材を入れるときの油跳ねなどが浸入することがある。このような隙間は図7の変形例でも存在し(隙間142c)、その寸法は、例えば7mmである(図6の例10mmより狭い)。
【0061】
図7の変形例の場合、ケーシング本体142-2と上蓋142-1との間の隙間142c(図7(A)参照)から油が入っても、ケーシング上面142-5はフラットであるので、油が大規模に溜まるようなことはない。そして、同上面142-5は傾斜しているので、自然と油は自重でケーシング外に排出される。また、同ケーシング上面142-5に油が付着しても、同面142-5の周囲においては、ケーシング本体の側面142-2bが切れ落ちていて、内窪みが存在しないので、手軽に掃除できる。
【0062】
上述の「上記ケーシング本体142-2の上面142-5の、上記チェーン144の下面144bと対向する部分が、油溜まりとなる凹所を実質的に有していない面である」における「実質的」とは、小さい浅い凹所を名目的に設けるような特許逃れを排除する意図を表明する趣旨である。
【0063】
なお、図7に示すように、ケーシング本体142-2の上面142-5には、延長スプロケット軸(延長軸)152が貫通する軸孔142-6が開いているが、この孔142-6は、ケーシング本体142-2の上の方にあるので、油はほとんど浸入してこない。また、同孔142-6は、延長軸152や、カップリング146で、ほぼ塞がれているので、問題となる油浸入はない。さらに、軸孔142-6の上端部には、樹脂摺動材の鍔付きブッシュ(図示されず)が嵌合されており、その鍔の分だけ周りより高くなっており、この点も油浸入防止の作用がある。カップリング146の係合部146xはメス形であり、延長軸152の上端部はオス型の係合部152xとなっている。
【0064】
ケーシング本体142-2の上面142-5には、左右二本の蓋取付ポスト142-7と、その中央部の蓋セットピン142-9(図の面の奥手前方向に二本ある)が立設されている。図7(B)の状態から、ケーシングの上蓋142-1を下げ、ポスト142-7の先のねじ部を上蓋142-1に通し、ナット142-8を締めれば上蓋142-1をケーシング本体142-2に固定できる。なお、蓋セットピン142-9の先端は、蓋142-1の下面の凹部(図示されず)に嵌まり込んで、位置決めとなる。
【0065】
これらのポスト142-7や蓋セットピン142-9の作用は、図6の実施形態と同じであるが、それらの長さは、図6の場合よりも短くなっている。なお、蓋取付ポスト142-7、及び、蓋セットピン142-9の根元と、ケーシング本体上面142-5との間には、油溜まりが問題となるような凹所は存在しない。
【0066】
図7の実施形態のケーシング142の上蓋142-1は、図6の実施形態の蓋42-1よりも上下に分厚く(深く)なっている。上蓋142-1は、底が開いた箱状のものであり、薄い上面板142-1bと、その周囲辺から垂れ下がる側壁142-1fを有する。上蓋142-1の左側上面には、隆起した小箱状の軸受収容部142-1jが取り付けられている。
【0067】
この上蓋142-1内には、チェーン(軌道部材)144、及び、該チェーン144を駆動する軌道駆動部材(スプロケット145)が、収容されている。なお、チェーン144の下端部は少し上蓋142-1の下縁から下に出ている。このような状態を、本願明細書・特許請求の範囲では、「実質的に収容」と言っている。
【0068】
左側のスプロケット145Lは、前述の延長軸152や一対の平歯車151を介して、モータ149によって駆動される。スプロケット145Lはチェーン144を駆動する駆動スプロケットである。駆動スプロケット145Lは、軸受148を介して、上蓋142-1の軸受収容部142-1jに保持されている。チェーン144は、駆動スプロケット145L及び従動スプロケット145Rによって、周回回動可能に保持されている。従動スプロケット145Rは、図示せぬ軸受によって、回動自在に上蓋142-1に保持されている。
【0069】
このような図7の食材送り機構104・ケーシング本体142-2・上蓋142-1などの構造により、食材送り機構ケーシング内に油が溜まりにくく、浸入した油の清掃も容易になっている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7