(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】PTPシート及びPTPシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 75/34 20060101AFI20240607BHJP
B65B 47/04 20060101ALI20240607BHJP
B65D 83/04 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
B65D75/34
B65B47/04
B65D83/04 D
(21)【出願番号】P 2021014144
(22)【出願日】2021-02-01
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】服部 真治
(72)【発明者】
【氏名】真川 達也
(72)【発明者】
【氏名】大山 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 憲彦
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178352(JP,A)
【文献】特開2020-015524(JP,A)
【文献】特開2012-144288(JP,A)
【文献】実開昭55-001655(JP,U)
【文献】米国特許第04574954(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/34
B65D 83/04
B65B 9/04
B65B 47/02-47/04
A61J 1/00-1/03/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を収容するためのポケット部が形成された容器フィルムと、
前記ポケット部の開口を塞ぐようにして前記容器フィルムに取着されたカバーフィルムとを備え、錠剤が前記ポケット部に収容されてなるPTPシートであって、
前記錠剤は、少なくとも表面が外側に凸の湾曲形状をなす平面視円形状の口腔内崩壊錠であり、
前記錠剤の前記表面の直径は、前記ポケット部の深さ以上の大きさであり、
前記錠剤の中心軸を含む任意の断面における前記錠剤の前記表面の外形線は、一定の曲率半径CRt(mm)を有する円弧形状であり、
前記錠剤の前記表面は、直径φt(mm)を有し、
前記ポケット部は、収容された前記錠剤の前記表面と相対向する平面視円形状の底壁部を有し、
前記底壁部は、外側に凸の湾曲形状をなし、
前記底壁部のうち、前記ポケット部に収容された前記錠剤側に位置する内面は、
前記錠剤の前記表面と接触することで、前記ポケット部に収容された前記錠剤を支持可能な平面視円環状の支持領域と、
前記支持領域に囲まれた平面視円形状の中央領域とを具備し、
前記中央領域の最外周部は、直径φp2(mm)を有し、
前記ポケット部の中心軸を含む任意の断面における前記支持領域の外形線は、一定の曲率半径CRp1(mm)を有する円弧形状であるとともに、
前記ポケット部の中心軸を含む任意の断面における前記中央領域の外形線は、一定の曲率半径CRp2(mm)を有する円弧形状であり、
CRt≧CRp2>CRp1、及び、φt>φp2を満たし、
前記ポケット部は、前記底壁部の最外周部に連なる円筒状の側壁部を有し、
前記支持領域は、前記底壁部の内面の最外周部まで広がる領域であり、
前記支持領域の最外周部は、直径φp1(mm)を有し、
φt-(φp1-φt)≧φp2を満たすことを特徴とするPTPシート。
【請求項2】
請求項1に記載のPTPシートを製造するためのPTP
シートの製造方法であって、
帯状の前記容器フィルムに対し前記ポケット部を形成するポケット部形成
工程を有し、
前記ポケット部形成
工程では、
収容される前記錠剤に対し、CRt≧CRp2>CRp1及びφt>φp2の関係、並びに、φt-(φp1-φt)≧φp2の関係を満たす前記ポケット部を形成
することを特徴とするPTP
シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポケット部に錠剤を収容してなるPTPシート、及び、PTPシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に医薬品や食料品等の分野において用いられるブリスタシートとしてPTP(プレススルーパック)シートが知られている。PTPシートは、錠剤が収容されるポケット部を有する容器フィルムと、その容器フィルムに対しポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとを備えている。また、一般的な錠剤は、平面視円形状をなしており、それぞれ外側に凸の湾曲面状をなす表面及び裏面と、これら面により挟まれた側面とによって外表面が構成されている。加えて、錠剤としては、唾液や少量の水で速やかに溶けるように構成された口腔内崩壊錠が知られている。
【0003】
PTPシートは、PTP包装機を用いて製造される。PTP包装機は、帯状の容器フィルムにポケット部を形成する手段、ポケット部に錠剤を充填する手段、ポケット部を塞ぐようにして容器フィルムにカバーフィルムを取着する手段、両フィルムが取着されてなる帯状のPTPフィルムをシート単位に打ち抜く手段などを備えている。
【0004】
ところで、製品の輸送時や使用者が持ち運ぶ際などにおいて、PTPシートに対し衝撃や振動が加わることで、ポケット部の底壁部に対し錠剤の表面(錠剤における底壁部側に配置される面)がこすれるおそれがある。底壁部に錠剤の表面がこすれると、錠剤の成分が底壁部に付着し、容器フィルムが透明又は半透明の材料により形成されている場合には、底壁部の広範囲に亘って白濁が生じ得る。このような白濁が生じると、ポケット部内の錠剤自体や、印刷等により錠剤に付された各種情報を正確に把握することが難しくなるおそれがある。特に錠剤が口腔内崩壊錠である場合には、錠剤の成分が底壁部に付着しやすく、底壁部の白濁がより生じやすい。
【0005】
そこで近年では、錠剤の表面の曲率半径と底壁部の曲率半径とを所定の関係とすることによって、PTPシートに衝撃や振動が加わった場合であっても、底壁部の白濁を抑えることを目的とした技術が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。より具体的に説明すると、該技術では、底壁部(天面部分)の少なくとも1つの方向に沿った曲率半径を、錠剤の表面(情報表示部)の少なくとも1つの方向に沿った曲率半径以下とすることで、底壁部の白濁を防ぐことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記技術において、底壁部の曲率半径を錠剤の表面の曲率半径と同一とした場合には、底壁部の内面に対し錠剤の表面全域が面接触することとなり、底壁部の広範囲に亘って白濁が生じるおそれがある。
【0008】
一方、
図15に示すように、ポケット部2の底壁部2bの曲率半径を錠剤5の表面5bの曲率半径よりも小さなものとすれば、錠剤5の表面5bにおける外周部(周縁部)のみが底壁部2bの内面と接触するため、底壁部2bの広範囲に亘って白濁が生じることを防止可能であるとも考えられる。ところが、両曲率半径の差が小さいと、
図16(
図16は、
図15における仮想円VC内を示す部分拡大断面図である)に示すように、錠剤5の表面5bが底壁部2bとこすれて変形した場合(例えば、
図16の破線で示すように錠剤5が変形した場合)に、その変形量がさほど大きなものでなくても、底壁部2bの広範囲に対し錠剤5が接触し得る。従って、両曲率半径の差が小さいと、製品の輸送等に伴い底壁部2bの中心側に向けて徐々に白濁が広がっていき、結果的に、底壁部2bの広範囲に亘って白濁が生じるおそれがある。
【0009】
これに対し、
図17に示すように、底壁部2bの曲率半径を錠剤5の表面5bの曲率半径よりも十分に小さなものとすることで、錠剤5の表面5bが底壁部2bとこすれて変形した場合であっても、底壁部2bの中心側に向けて白濁が広がることを抑制できる。しかしながら、この場合には、ポケット部2の高さHpを比較的大きなものとする必要がある。ここで、PTPシートは、通常複数枚重ねられた状態で箱詰め梱包されてなるシート梱包体として輸送・保管される。そのため、高さHpを数mm増大させたことに伴い、PTPシートの高さを数mm増大させただけであっても、シート梱包体のサイズが著しく大きくなってしまう。そのため、輸送や保管に係る効率の悪化を招くおそれがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされてものであり、その目的は、底壁部の広範囲に亘って白濁が生じることをより確実に抑制可能としつつ、ポケット部の高さ増大を効果的に防ぐことができるPTPシートなどを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.錠剤を収容するためのポケット部が形成された容器フィルムと、
前記ポケット部の開口を塞ぐようにして前記容器フィルムに取着されたカバーフィルムとを備え、錠剤が前記ポケット部に収容されてなるPTPシートであって、
前記錠剤は、少なくとも表面が外側に凸の湾曲形状をなす平面視円形状の口腔内崩壊錠であり、
前記錠剤の前記表面の直径は、前記ポケット部の深さ以上の大きさであり、
前記錠剤の中心軸を含む任意の断面における前記錠剤の前記表面の外形線は、一定の曲率半径CRt(mm)を有する円弧形状であり、
前記錠剤の前記表面は、直径φt(mm)を有し、
前記ポケット部は、収容された前記錠剤の前記表面と相対向する平面視円形状の底壁部を有し、
前記底壁部は、外側に凸の湾曲形状をなし、
前記底壁部のうち、前記ポケット部に収容された前記錠剤側に位置する内面は、
前記錠剤の前記表面と接触することで、前記ポケット部に収容された前記錠剤を支持可能な平面視円環状の支持領域と、
前記支持領域に囲まれた平面視円形状の中央領域とを具備し、
前記中央領域の最外周部は、直径φp2(mm)を有し、
前記ポケット部の中心軸を含む任意の断面における前記支持領域の外形線は、一定の曲率半径CRp1(mm)を有する円弧形状であるとともに、
前記ポケット部の中心軸を含む任意の断面における前記中央領域の外形線は、一定の曲率半径CRp2(mm)を有する円弧形状であり、
CRt≧CRp2>CRp1、及び、φt>φp2を満たし、
前記ポケット部は、前記底壁部の最外周部に連なる円筒状の側壁部を有し、
前記支持領域は、前記底壁部の内面の最外周部まで広がる領域であり、
前記支持領域の最外周部は、直径φp1(mm)を有し、
φt-(φp1-φt)≧φp2を満たすことを特徴とするPTPシート。
【0013】
上記手段1によれば、φt>φp2を満たすため、支持領域によって錠剤をより確実に支持することができる。
【0014】
また、上記手段1によれば、錠剤の中心軸を含む任意の断面における錠剤の表面の外形線は、一定の曲率半径CRt(mm)を有する円弧形状とされている。すなわち、錠剤の表面は、一定の曲率半径CRt(mm)を有する球面形状とされている。一方、ポケット部の底壁部の内面は、錠剤を支持可能な円環状の支持領域と、該支持領域に囲まれた中央領域とを備えている。そして、ポケット部の中心軸を含む任意の断面における支持領域の外形線は、一定の曲率半径CRp1(mm)を有する円弧形状とされている。すなわち、支持領域は、一定の曲率半径CRp1(mm)を有する球面形状とされている。その上で、CRt≧CRp2>CRp1を満たすため、支持領域に係る曲率半径CRp1を、錠剤の表面に係る曲率半径CRtよりも十分に小さなものとすることができる。これにより、錠剤が底壁部とこすれて変形した場合であっても、底壁部に対する錠剤の接触面積が増大しにくくなり、底壁部の中心側に向けて白濁が広がりにくくなる。その結果、底壁部の広範囲に亘って白濁が生じることをより確実に抑制できる。
【0015】
一方、上記手段1によれば、ポケット部の中心軸を含む任意の断面における中央領域の外形線は、一定の曲率半径CRp2(mm)を有する円弧形状とされている。すなわち、中央領域は、一定の曲率半径CRp2(mm)を有する球面形状とされている。そして、中央領域に係る曲率半径CRp2は、支持領域に係る曲率半径CRp1よりも大きなものとされている。従って、底壁部の内面全体を一定の曲率半径CRp1の球面形状とする場合と比べて、ポケット部の高さをより小さなものとすることができ、ポケット部の高さ増大を効果的に防ぐことができる。
【0016】
また、錠剤の表面の直径は、ポケット部の深さ以上の大きさとされているため、ポケット部内にて錠剤が表裏反転することを防止でき、支持領域によって錠剤の表面を一層確実に支持することができる。
【0017】
尚、支持領域に係る曲率半径CRp1を錠剤に係る曲率半径CRtよりも一層小さなものとし、底壁部の中心側に向けた白濁の広がりを一層確実に抑制するという点では、曲率半径CRp1が、曲率半径CRtを係数k(kは2以上の正数)で除算した値以下となる(すなわち、CRp1≦CRt/kを満たす)ように構成することが好ましい。また、係数kが大きいほど白濁の広がり抑制効果が高まるため、k≧3を満たすことがより好ましく、k≧4を満たすことがより一層好ましい。但し、ポケット部の高さ増大をより確実に抑えるという点では、曲率半径CRp1を極端に小さなものとしないことが好ましいため、例えば、k≦8を満たすことが好ましく、k≦6を満たすことがより好ましい。
【0018】
さらに、仮に錠剤がこすれて大きく変形した場合であっても、中央領域に錠剤の表面が面接触することを防止するという点では、CRt>CRp2を満たすように構成することが好ましい。
【0020】
ポケット部の中心軸と錠剤の中心軸とが重なるようにポケット部内に錠剤を配置した状態において、これら中心軸と直交する方向に沿った、中央領域の最外周部から錠剤の表面の最外周部までの距離は、(φt-φp2)/2となる。また、ポケット部の中心軸と錠剤の中心軸とが重なるようにポケット部内に錠剤を配置した状態において、これら中心軸と直交する方向に沿った、錠剤の表面の最外周部から支持領域の最外周部までの距離は、(φp1-φt)/2となる。ここで、該距離は、前記状態におけるポケット部の側壁部内面と錠剤表面の最外周部との間の隙間の大きさとほぼ等しい。
【0021】
そして、前記各中心軸と直交する方向に沿って前記隙間の分だけ錠剤が側壁部側に移動し、錠剤表面の最外周部が側壁部に寄った状態になったときであっても、依然として支持領域によって錠剤(錠剤の最外周部)をより確実に支持可能とする、つまり、前記各中心軸方向に沿って支持領域と錠剤の最外周部とが重なる状態をより確実に維持するためには、〔(φt-φp2)/2〕-〔(φp1-φt)/2〕≧0を満たす必要がある。
【0022】
この点、上記手段1によれば、φt-(φp1-φt)≧φp2、すなわち、〔(φt-φp2)/2〕-〔(φp1-φt)/2〕≧0を満たすものとされている。従って、錠剤表面の最外周部が側壁部に寄った状態になったときであっても、支持領域によって錠剤をより確実に支持することができる。これにより、上記作用効果をより確実に発揮させることができる。
【0025】
手段2.手段1に記載のPTPシートを製造するためのPTPシートの製造方法であって、
帯状の前記容器フィルムに対し前記ポケット部を形成するポケット部形成工程を有し、
前記ポケット部形成工程では、
収容される前記錠剤に対し、CRt≧CRp2>CRp1及びφt>φp2の関係、並びに、φt-(φp1-φt)≧φp2の関係を満たす前記ポケット部を形成することを特徴とするPTPシートの製造方法。
【0026】
上記手段2によれば、製造されたPTPシートにおいて、上記手段1と同様の作用効果が奏されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図3】錠剤の表面の直径などを示すためのPTPシートの部分拡大断面図である。
【
図4】錠剤の表面に係る曲率半径などを示すためのPTPシートの部分拡大断面図である。
【
図5】PTP包装機の概略構成を示す模式図である。
【
図7】ポケット部の形成工程において、下型及び上型により容器フィルムを挟持する工程を示す図である。
【
図8】ポケット部の形成工程において、エアにより容器フィルムを変形させる工程を示す図である。
【
図9】ポケット部の形成工程において、プラグにより容器フィルムを変形させる工程を示す図である。
【
図10】CRp1=CRt/2としたときにおいて、錠剤が一定量変形した場合における錠剤及び支持領域の接触範囲などを示す図である。
【
図11】CRp1=CRt/3としたときにおいて、錠剤が一定量変形した場合における錠剤及び支持領域の接触範囲などを示す図である。
【
図12】CRp1=CRt/4としたときにおいて、錠剤が一定量変形した場合における錠剤及び支持領域の接触範囲などを示す図である。
【
図13】別の実施形態において、支持領域の最外周部に湾曲形状部分を設けた場合における支持領域に係る曲率半径について説明するための図である。
【
図14】別の実施形態において、中央領域の最外周部に湾曲形状部分を設けた場合における中央領域に係る曲率半径について説明するための図である。
【
図15】従来技術を説明するためのポケット部や錠剤などの断面図である。
【
図16】従来技術を説明するためのポケット部や錠剤などの部分拡大断面図である。
【
図17】従来技術において、底壁部の曲率半径を錠剤の表面の曲率半径よりも十分に小さなものとした場合におけるポケット部の高さなどを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、PTPシートの構成について説明する。
図1,3に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
【0029】
容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等からなる透明又は半透明の熱可塑性樹脂材料により形成されており、透光性を有している。つまり、容器フィルム3は、外部からポケット部2の内部を視認可能とされている。また、容器フィルム3は、ポケット部2の開口側端部から外側に延出形成されており、カバーフィルム4の取着対象となる平坦状のフランジ部3aを有している。
【0030】
カバーフィルム4は、例えばPP樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。尚、各フィルム3,4の材料は、これらに限定されるものではなく、各フィルム3,4の材料を適宜変更してもよい。
【0031】
PTPシート1は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(
図2参照)がシート状に打抜かれることによって製造されるものであり、平面視略矩形状に形成されている。
【0032】
PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。つまり、計10個のポケット部2が形成されている。各ポケット部2には、錠剤5が1つずつ収容されている。尚、PTPシート1のより詳細な構成については後に説明する。
【0033】
次に、
図5を参照して、上記PTPシート1を製造するためのPTP包装機10の概略構成について説明する。
【0034】
図5に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール12,13に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール12,13の下流側において間欠送りロール14に掛装されている。間欠送りロール14は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0035】
ガイドロール13と間欠送りロール14との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、加熱装置15及びポケット部形成装置16が順に配設されている。本実施形態では、ポケット部形成装置16が「ポケット部形成手段」を構成する。
【0036】
加熱装置15は、ポケット部形成装置16の直上流にて容器フィルム3を予熱する。ポケット部形成装置16は、加熱装置15によって加熱されて比較的柔軟な状態となった容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2を形成する。ポケット部2の形成は、間欠送りロール14による容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。ポケット部形成装置16のより詳細な構成については後に説明する。
【0037】
間欠送りロール14から送り出された容器フィルム3は、ガイドロール17、テンションロール18及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。フィルム受けロール20は、一定回転するモータに連結されているため、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール14とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の弛みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。
【0038】
ガイドロール19とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、充填装置21及び検査装置22が順に配設されている。
【0039】
充填装置21は、ポケット部2に錠剤5を充填する。充填装置21は、例えば、錠剤5を一列に並んだ状態で収容する筒状のシュート、及び、該シュートの出口を開閉可能なシャッタ(それぞれ不図示)を備えており、所定のタイミングにて前記シャッタを開くことでポケット部2に錠剤5を充填する。尚、充填装置21は、錠剤5を吸着可能な吸着ドラム(不図示)を備え、吸着解除によりポケット部2に錠剤5を充填するものであってもよい。
【0040】
検査装置22は、例えば錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、錠剤5の異常の有無、ポケット部2への異物混入の有無など、主として錠剤不良に関する検査を行う。
【0041】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール24によって加熱ロール25の方へと案内されている。
【0042】
加熱ロール25は、前記フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、両フィルム3,4が両ロール20,25間を加熱圧接状態で通過することにより、容器フィルム3にカバーフィルム4が取着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。これにより、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状のPTPフィルム6が製造される。
【0043】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。間欠送りロール28は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記フィルム受けロール20と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム6の弛みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0044】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。間欠送りロール32は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の弛みを防止する。
【0045】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット形成装置33及び刻印装置34が順に配設されている。スリット形成装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用のスリットを形成する機能を有する。刻印装置34は、PTPフィルム6の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す機能を有する。尚、
図1においては、スリットや刻印の図示を省略している。
【0046】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6をPTPシート1単位にその外縁を切離す(打抜く)。これにより、PTPシート1が得られる。
【0047】
得られたPTPシート1は、コンベア39によって搬送され、完成品用ホッパ40に一旦貯留される。但し、上記検査装置22によって不良判定がなされた場合、該判定に係るPTPシート1は、完成品用ホッパ40へ送られることなく、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0048】
前記連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残った不要フィルム部42は、テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。裁断装置41は、不要フィルム部42を所定寸法に裁断する。裁断された不要フィルム部42(スクラップ)はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0049】
次いで、
図3,4を参照して、PTPシート1のより詳細な構成について説明する。
図3等では、ポケット部2の中心軸Lpに対し錠剤5の中心軸Ltが一致する状態を示している。まず、ポケット部2に収容される錠剤5について説明する。
【0050】
錠剤5は、唾液や少量の水で速やかに溶けるように構成された口腔内崩壊錠である。錠剤5は、平面視円形状、すなわち中心軸Lt方向に沿って見たときに円形状をなしている。
【0051】
また、錠剤5は、側面5aと、該側面5aを挟む表面5b及び裏面5cとによって外表面が構成されている。側面5aは、中心軸Lt方向に沿って一定の外径を有する円柱状をなしている。一方、表面5b及び裏面5cは、それぞれ外側に凸の湾曲面状をなしており、側面5aの端部に連続している。本実施形態において、表面5b及び裏面5cの各形状は同一であるが、表面5bとは、ポケット部2の後述する底壁部2b側に配置された面をいう。
【0052】
加えて、錠剤5の表面5bの直径φt(mm)は、ポケット部2の深さDp(mm)以上とされている。尚、本実施形態において、直径φtは深さDpの2倍以上とされている。換言すれば、Dp≦φt/2を満たすものとされており、深さDpは、直径φtと比べて十分に小さなものとされている。但し、当然ではあるが、深さDpは、錠剤5の最大厚さ(中心軸Lt上における表面5b及び裏面5c間の距離)よりも大きなものとされる。尚、直径φtは、通常、5~15mmとされる。
【0053】
さらに、錠剤5の中心軸Ltを含む任意の断面における錠剤5の表面5bの外形線は、一定の曲率半径CRt(mm)を有している。すなわち、錠剤5の表面5bは、一定の曲率半径CRt(mm)を有する球面形状とされている(但し、割線や刻印などの凹部は無視する)。本実施形態において、曲率半径CRtは直径φt以上とされており、表面5bの中心は、中心軸Lt方向に沿って表面5bの最外周部よりも過度に突出しない状態とされている。一方、曲率半径CRtは、例えば直径φt×5以下とされており、表面5bから側面5aにかけた角部分は、十分に大きな角度を有する鈍角形状をなしている。これにより、錠剤5が比較的脆い口腔内崩壊錠であっても、前記角部分における欠けの発生を抑制可能となっている。
【0054】
次いで、錠剤5が収容されるポケット部2について説明する。ポケット部2は、前記フランジ部3aから突出した円筒状の側壁部2aと、該側壁部2aの端部に連続する平面視略円形状の底壁部2bとを備えている。
【0055】
側壁部2aは、ポケット部2の中心軸Lp方向に沿って略一定の内径を有しており、側壁部2aの内径は、錠剤5の表面5bの直径φtよりも大きなものとされている。そのため、両中心軸Lp,Ltが重なるようにポケット部2内に錠剤5を配置した状態において、側壁部2aの内面全域は錠剤5の側面5a全域から離間した状態となり、側壁部2aの内面及び側面5a間には平面視円環状の隙間が形成されるようになっている。これにより、側壁部2aへと負荷が加わったときに、該負荷から逃げるようにして錠剤5が移動可能となり、錠剤5の破損をより確実に防止可能となっている。
【0056】
尚、側壁部2aは、底壁部2b側に向けて徐々に内径が小さなものとなるテーパ形状であってもよい。この場合においても、両中心軸Lp,Ltが重なるようにポケット部2内に錠剤5を配置した状態において、側壁部2aの内面全域が錠剤5の側面5a全域から離間した状態となるようにすることが好ましい。
【0057】
底壁部2bは、外側に凸の湾曲形状をなしている。底壁部2bのうち、ポケット部2に収容された錠剤5側に位置する内面は、支持領域p1及び中央領域p2を備えている。
【0058】
支持領域p1は、両中心軸Lp,Ltが重なるようにポケット部2内に錠剤5を配置した状態において、該錠剤5の表面5bの最外周部と接触することで、該錠剤5を支持可能な平面視円環状をなす(すなわち中心軸Lp方向に沿って見たときに円環状をなす)領域である。より詳しくは、支持領域p1は、両中心軸Lp,Ltが重なるとともに両中心軸Lp,Ltが鉛直方向に延び、かつ、底壁部2bの内面に錠剤5が載置される状態において、錠剤5の表面5bの最外周部と接触することで、錠剤5を支持可能な領域である。また、ポケット部2の中心軸Lpを含む任意の断面における支持領域p1の外形線は、一定の曲率半径CRp1(mm)を有している。すなわち、支持領域p1は、一定の曲率半径CRp1(mm)を有する球面形状とされている。
【0059】
さらに、本実施形態において、支持領域p1は、底壁部2bの内面の最外周部まで広がる領域であり、支持領域p1の最外周部は、側壁部2aの内面端部に連続している。そして、支持領域p1の最外周部は、直径φp1(mm)を有している。従って、直径φp1は、側壁部2aにおける底壁部2b側の端部の内径と同一となっている。
【0060】
中央領域p2は、底壁部2bの中心に位置し、支持領域p1に囲まれた平面視円形状(すなわち中心軸Lp方向に沿って見たときに円形状)をなす領域である。中央領域p2は、両中心軸Lp,Ltが重なるとともに両中心軸Lp,Ltが鉛直方向に延び、かつ、支持領域p1により錠剤5が支持されている状態において、錠剤5の表面5bと接触しないようになっている。また、中心軸Lpを含む任意の断面における中央領域p2の外形線は、一定の曲率半径CRp2(mm)を有している。すなわち、中央領域p2は、一定の曲率半径CRp2(mm)を有する球面形状とされている。
【0061】
さらに、中央領域p2の最外周部は、直径φp2(mm)を有している。直径φp2は、支持領域p1の最内周部の直径と同一である。
【0062】
加えて、錠剤5の表面5bに係る曲率半径CRt、支持領域p1に係る曲率半径CRp1、及び、中央領域p2に係る曲率半径CRp2について、CRt≧CRp2>CRp1を満たすものとされている。特に本実施形態では、仮に錠剤5が支持領域p1にこすれて大きく変形した場合であっても、中央領域p2に錠剤5の表面5bが面接触することを防止すべく、CRt>CRp2を満たすものとされている。
【0063】
また、本実施形態では、曲率半径CRp1が、曲率半径CRtを係数k(kは2以上の正数)で除算した値以下となる(すなわち、CRp1≦CRt/kを満たす)ように構成されている。尚、k≧3を満たすように構成することがより好ましく、k≧4を満たすように構成することがより一層好ましい。
図10~12に示すように、係数kが大きいほど、支持領域p1に錠剤5がこすれて変形した場合における錠剤5及び支持領域p1の接触範囲Arが小さなものとなり、ポケット部2の白濁抑制効果が高いためである。
【0064】
尚、
図10~12は、曲率半径CRt及び曲率半径CRp2をそれぞれ一定とした上で、係数kを2,3又は4とし、曲率半径CRp1(=CRt/k)を変動させたときのポケット部2等を示す図である。また、
図10~12では、支持領域p1に錠剤5の表面5bがこすれることで錠剤5が一定量変形した場合において、ポケット部2を平面視したときにおける錠剤5及び支持領域p1の接触範囲Arを散点模様で示している。さらも。表面5bの最外周部において、錠剤5の変形部分を破線で示している。
【0065】
但し、ポケット部2の高さHpをより低く抑えるという点では、曲率半径CRp1を極端に小さなものとしないことが好ましい。従って、例えば、k≦8を満たすことが好ましく、k≦6を満たすことがより好ましい。
【0066】
図3,4に戻り、錠剤5の表面5bの直径φt、支持領域p1の最外周部の直径φp1、及び、中央領域p2の最外周部の直径φp2については、φt-(φp1-φt)≧φp2を満たすように構成されている。この式を満たすように構成されている理由は、次の通りである。
【0067】
すなわち、両中心軸Lp,Ltが重なるようにポケット部2内に錠剤5を配置した状態において、これら中心軸Lp,Ltと直交する方向に沿った、中央領域p2の最外周部から錠剤5の表面5bの最外周部までの距離は、(φt-φp2)/2となる。また、両中心軸Lp,Ltが重なるようにポケット部2内に錠剤5を配置した状態において、これら中心軸Lp,Ltと直交する方向に沿った、錠剤5の表面5bの最外周部から支持領域p1の最外周部までの距離は、(φp1-φt)/2となる。ここで、該距離は、前記状態におけるポケット部2の側壁部2a(特に側壁部2aにおける底壁部2b側の端部)内面と表面5bの最外周部との間における隙間の大きさとほぼ等しい。
【0068】
そして、両中心軸Lp,Ltと直交する方向に沿って前記隙間の分だけ錠剤5が側壁部2a側に移動し、錠剤5の表面5bの最外周部が側壁部2a(特に側壁部2aにおける底壁部2b側の端部)の内面に寄った状態になったとする。この場合であっても、依然として支持領域p1によって錠剤5(錠剤5の最外周部)をより確実に支持可能とする、つまり、両中心軸方向Lp,Ltに沿って支持領域p1と錠剤5(表面5b)の最外周部とが重なる状態をより確実に維持するためには、〔(φt-φp2)/2〕-〔(φp1-φt)/2〕≧0を満たす必要がある。そこで、本実施形態では、φt-(φp1-φt)≧φp2を満たすことで、結果的に、〔(φt-φp2)/2〕-〔(φp1-φt)/2〕≧0を満たすものとされている。
【0069】
尚、錠剤5の表面5bの最外周部が側壁部2aに寄った状態となったとき、錠剤5に傾きが生じる(中心軸Ltが中心軸Lpと非平行な状態となる)ことがある。一方、φt-(φp1-φt)≧φp2という式は、この傾きがないと仮定した場合において、錠剤5の表面5bの最外周部が側壁部2aに寄った状態になったときに、両中心軸方向Lp,Ltに沿って支持領域p1と錠剤5(表面5b)の最外周部とが重なる状態をより確実に維持するためのものである。従って、厳密には、ポケット部2内における錠剤5の傾きを考慮して、直径φp1などを設定することがより好ましい。但し、通常、錠剤5の傾きは小さなものであるから、φt-(φp1-φt)≧φp2を満たすことで、支持領域p1によって錠剤5を支持する機能を十分に維持することができる。
【0070】
加えて、本実施形態において、中央領域p2に係る直径φp2は、錠剤5に係る直径φt未満とされている。すなわち、φt>φp2を満たすように構成されている。
【0071】
一方、直径φp2は過度に小さなものではなく、直径φp1の半分以上とされている。尚、直径φp2が大きいほど、底壁部2bにおいて中央領域p2の占める範囲が大きくなり、結果的に、ポケット部2の高さHpをより小さなものとすることができる。従って、直径φp2を直径φp1の2/3倍以上とすることが好ましく、直径φp2を直径φp1の3/4倍以上とすることがより好ましい。
【0072】
次いで、ポケット部形成装置16のより詳しい構成について説明する。
図6に示すように、ポケット部形成装置16は、固定状態で設置された下型161と、上下動可能であるとともに、下型161との間で容器フィルム3を挟持可能な上型162とを備えている。
【0073】
下型161には、複数の孔161aが形成されている。そして、該孔161aに対応する位置に、ポケット部2の成形型として機能するプラグ163が設けられている。プラグ163は、上下動可能であり、孔161aに挿通可能とされている。プラグ163の上面は、容器フィルム3を押し上げてポケット部2を形成する面であり、支持領域p1を形成するための面と、中央領域p2を形成するための面とを備えている。尚、プラグ163は、ポケット部2に収容される錠剤5に応じて交換可能である。
【0074】
一方、上型162における前記孔161aの鉛直上方に当たる部分には、孔162aが形成されている。そして、図示しないエア供給装置から孔162aに対し、所定のエアが供給可能とされている。
【0075】
上記のように構成されたポケット部形成装置16は、次のようにしてポケット部2を形成する。すなわち、所定の初期位置に配置された上型162が下動することで、
図7に示すように、両型161,162によって、一時停止中の容器フィルム3におけるポケット部2の形成予定部位の周囲を挟持する。また、所定の初期位置に配置されたプラグ163が上動されて孔162aに挿通されるとともに、所定位置にて一時停止される。
【0076】
その後、
図8に示すように、孔162aに対しエアを供給することで、ポケット部2における突出側(上側)とは反対側(下側)に容器フィルム3を一旦変形させる。このとき、プラグ163の上面に容器フィルム3が接触することで、容器フィルム3の変形量が制限される。
【0077】
次いで、
図9に示すように、プラグ163の上動が再開されることで、容器フィルム3の裏側から表側に向かって、プラグ163の上面を突出させる。これにより、プラグ163によって容器フィルム3が押圧変形される。そして、プラグ163が所定位置にて停止されることで、ポケット部2が形成される。上記の通り、プラグ163の上面は、支持領域p1を形成するための面と、中央領域p2を形成するための面とを備えているため、形成されるポケット部2は、支持領域p1及び中央領域p2を有するものとなる。また、形成されるポケット部2は、収容される錠剤5に対し、CRt≧CRp2>CRp1及びφt>φp2の関係、並びに、φt-(φp1-φt)≧φp2の関係を満たすものとなる。
【0078】
尚、孔162aに対するエアの供給は、プラグ163が容器フィルム3を押圧変形させて停止した後まで継続される。これにより、容器フィルム3がプラグ163の上面により確実に密着することとなり、収容される錠剤5に対し、CRt≧CRp2>CRp1及びφt>φp2の関係、並びに、φt-(φp1-φt)≧φp2の関係を満たすポケット部2をより確実に形成可能となっている。
【0079】
尚、ポケット部2の形成後には、プラグ163を下動させるとともに、上型162を上動させることで、これらが初期位置に戻される。
【0080】
以上詳述したように、本実施形態によれば、φt>φp2を満たすため、支持領域p1によって錠剤5をより確実に支持することができる。
【0081】
さらに、CRt≧CRp2>CRp1を満たすため、支持領域p1に係る曲率半径CRp1を、錠剤5の表面5bに係る曲率半径CRtよりも十分に小さなものとすることができる。これにより、錠剤5が底壁部2bとこすれて変形した場合であっても、底壁部2bに対する錠剤5の接触面積が増大しにくくなり、底壁部2bの中心側に向けて白濁が広がりにくくなる。その結果、底壁部2bの広範囲に亘って白濁が生じることをより確実に抑制できる。
【0082】
一方、中央領域p2に係る曲率半径CRp2は、支持領域p1に係る曲率半径CRp1よりも大きなものとされている。従って、底壁部2bの内面全体を一定の曲率半径CRp1の球面形状とする場合と比べて、ポケット部2の高さHpをより小さなものとすることができ、ポケット部2の高さ増大を効果的に防ぐことができる。
【0083】
また、ポケット部2内から錠剤5を取り出す際には、主として中央領域p2が押圧対象となるところ、上記実施形態によれば、中央領域p2に係る曲率半径CRp2が比較的大きなものとなるため、中央領域p2をより平坦に近い状態とすることができる。これにより、ポケット部2(中央領域p2)を押圧したときに、錠剤5を中心軸Lpとほぼ平行な方向に沿って移動させることがより確実に可能となる。これにより、ポケット部2内から錠剤5をよりスムーズに取り出すことができる。
【0084】
一方、中央領域p2は、厳密な平坦(中心軸Lpと直交する平坦形状)ではなく、外側に凸の湾曲形状であるため、中央領域p2及び錠剤5の表面5b間の距離をより大きく確保することができる。そのため、仮に錠剤5が底壁部2bにこすれて変形した場合であっても、中央領域p2に対し錠剤5が接触しにくくなる。これにより、底壁部2bの広範囲に亘った白濁の発生を効果的に抑えることができる。
【0085】
さらに、錠剤5の表面5bの直径φtは、ポケット部2の深さDp以上の大きさとされているため、ポケット部2内にて錠剤5が表裏反転することを防止でき、支持領域p1によって錠剤5を一層確実に支持することができる。
【0086】
加えて、φt-(φp1-φt)≧φp2、すなわち、〔(φt-φp2)/2〕-〔(φp1-φt)/2〕≧0を満たすものとされている。従って、錠剤5の表面5bの最外周部が側壁部2aに寄った状態になったときであっても、支持領域p1によって錠剤5をより確実に支持することができる。これにより、底壁部2bの広範囲に亘る白濁の抑制という作用効果をより確実に発揮させることができる。
【0087】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0088】
(a)上記実施形態において、ポケット部形成装置16は、エアによって容器フィルム3を一旦変形させた上で、底壁部2bに対応する形状を有するプラグ163を該容器フィルム3に押し当てることで、ポケット部2を形成するように構成されている。すなわち、ポケット部形成装置16は、いわゆるエアアシストプラグ成形法を用いてポケット部2を形成するものとされている。
【0089】
これに対し、ポケット部形成装置は、底壁部2bに対応する形状の成型凹部が形成されてなる型を有し、気体の制御などにより容器フィルム3を前記型に接触させることでポケット部2を形成するものであってもよい。また、ポケット部形成装置は、エアによって容器フィルム3を変形させる工程を行わず、単にプラグを容器フィルムに押し当てることでポケット部2を形成するものであってもよい。
【0090】
(b)ポケット部2の中心軸Lpを含む任意の断面における支持領域p1の最外周部(つまり、側壁部2aの内面に連なる部位)の外形線を、曲率半径CRp1とは異なる曲率半径を有する円弧形状又は非円弧形状としてもよい(
図13参照)。この場合、曲率半径CRp1は、支持領域p1のうちその最外周部を除いた大部分の領域(
図13にて太線で示す領域)の曲率半径をいう。尚、上記作用効果をより確実に奏するという点では、中心軸Lpを含む断面において、支持領域p1における90%以上の領域の外形線が曲率半径CRp1の円弧形状をなすように構成することが好ましい。
【0091】
また、中心軸Lpを含む任意の断面における中央領域p2の最外周部(つまり、支持領域p1に連なる部位)の外形線を、曲率半径CRp2とは異なる曲率半径を有する円弧形状又は非円弧形状としてもよい(
図14参照)。この場合、曲率半径CRp2は、中央領域p2のうちその最外周部を除いた大部分の領域(
図14にて太線で示す領域)の曲率半径をいう。尚、上記作用効果をより確実に奏するという点では、中心軸Lpを含む断面において、中央領域p2における90%以上の領域の外形線が曲率半径CRp2の円弧形状をなすように構成することが好ましい。
【0092】
(c)印刷や刻印によって、錠剤5の表面5bに対し、文字情報や記号などからなる情報部を設けることとしてもよい。上記実施形態によれば、底壁部2bの広範囲における白濁をより確実に抑制することができるため、底壁部2bを通して前記情報部の内容をより正確に把握することができる。尚、文字情報としては、「製品名」、「含量」、「剤形」、「製造元」及び「ロット番号」などを挙げることができる。
【0093】
また、錠剤5は、割線を備えるものであってもよい。刻印や割線などの凹部を錠剤5に設ける場合、曲率半径CRtは、錠剤5のうち該凹部を除いた部位に基づき算出することができる。
【0094】
(d)製造されるPTPシートの構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更してもよい。例えばPTPシート1単位のポケット部2の配列や個数は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0095】
さらに、上記実施形態において、PTPフィルム6は、その幅方向に沿って1シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成となっているが、例えば、その幅方向に沿って複数シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…PTPシート、2…ポケット部、2a…側壁部、2b…底壁部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤、5b…(錠剤の)表面、10…PTP包装機、16…ポケット部形成装置(ポケット部形成手段)、Lp…(ポケット部の)中心軸、Lt…(錠剤の)中心軸、p1…支持領域、p2…中央領域。