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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】走行制御システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303F
A01B69/00 301
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021031767
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022132988
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】川畑 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀内 真幸
(72)【発明者】
【氏名】奥平 淳人
(72)【発明者】
【氏名】松永 俊
(72)【発明者】
【氏名】藤本 淳
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-021891(JP,A)
【文献】特開2020-022398(JP,A)
【文献】特開2020-022397(JP,A)
【文献】特開2020-000025(JP,A)
【文献】特開2017-123803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車の走行を制御する走行制御システムであって、
操舵のための操舵操作具と、
前記操舵操作具の操作に応じて前記作業車の走行を制御する走行制御部と、を備え、
前記走行制御部の制御モードは、手動操舵モードと、自動操舵モードと、の間でモード切替可能であり、
前記走行制御部の制御モードが前記手動操舵モードである場合、前記走行制御部は、前記操舵操作具の操作に応じて前記作業車の走行を制御し、
前記走行制御部の制御モードが前記自動操舵モードである場合、前記走行制御部は、方位決定部により決定された基準方位に基づいて算出された目標走行経路に基づいて、前記作業車の自動操舵制御を実行可能であり、
前記方位決定部により決定された前記基準方位を、人為的な操作入力に応じて変更可能な方位変更部と、
前記目標走行経路を、人為的な操作入力に応じて平行移動可能な平行移動部と、を備え
前記方位変更部は、0から9までの数字キーの操作を介して、方位を示す値を人為的に入力可能に構成されており、且つ、入力された前記値に基づいて前記基準方位を変更可能である走行制御システム。
【請求項2】
作業車の走行を制御する走行制御システムであって、
操舵のための操舵操作具と、
前記操舵操作具の操作に応じて前記作業車の走行を制御する走行制御部と、を備え、
前記走行制御部の制御モードは、手動操舵モードと、自動操舵モードと、の間でモード切替可能であり、
前記走行制御部の制御モードが前記手動操舵モードである場合、前記走行制御部は、前記操舵操作具の操作に応じて前記作業車の走行を制御し、
前記走行制御部の制御モードが前記自動操舵モードである場合、前記走行制御部は、方位決定部により決定された基準方位に基づいて算出された目標走行経路に基づいて、前記作業車の自動操舵制御を実行可能であり、
前記方位決定部により決定された前記基準方位を、人為的な操作入力に応じて変更可能な方位変更部と、
前記目標走行経路を、人為的な操作入力に応じて平行移動可能な平行移動部と、を備え、
前記方位変更部は、人為的な操作入力を受け付ける入力受付部を有しており、且つ、前記入力受付部が操作された場合、前記入力受付部が操作された時点での前記作業車の姿勢方位に一致させるように前記基準方位を変更するように構成されている走行制御システム。
【請求項3】
作業車の走行を制御する走行制御システムであって、
操舵のための操舵操作具と、
前記操舵操作具の操作に応じて前記作業車の走行を制御する走行制御部と、を備え、
前記走行制御部の制御モードは、手動操舵モードと、自動操舵モードと、の間でモード切替可能であり、
前記走行制御部の制御モードが前記手動操舵モードである場合、前記走行制御部は、前記操舵操作具の操作に応じて前記作業車の走行を制御し、
前記走行制御部の制御モードが前記自動操舵モードである場合、前記走行制御部は、方位決定部により決定された基準方位に基づいて算出された目標走行経路に基づいて、前記作業車の自動操舵制御を実行可能であり、
前記方位決定部により決定された前記基準方位を、人為的な操作入力に応じて変更可能な方位変更部と、
前記目標走行経路を、人為的な操作入力に応じて平行移動可能な平行移動部と、を備え、
前記平行移動部は、前記走行制御部の制御モードが前記自動操舵モードであるとき、前記操舵操作具の操作に応じて、前記目標走行経路を平行移動させる走行制御システム。
【請求項4】
前記方位変更部は、前記基準方位と前記作業車の姿勢方位とを示す画面である方位表示画面を表示可能である請求項1から3の何れか一項に記載の走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の走行を制御する走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行しながら作業を行う作業車として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この作業車(特許文献1では「田植機」)は、操舵のための操舵操作具(特許文献1では「操向ハンドル」)を備えている。
【0003】
この作業車は、決定された基準方位(特許文献1では「ティーチング方向」)に基づいて、目標走行経路(特許文献1では「目標ライン」)を算出するように構成されている。そして、この目標走行経路に沿って、自動操舵制御による走行が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-136015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、基準方位の変更、及び、自動操舵制御による走行中の走行位置の変更については、記載されていない。
【0006】
本発明の目的は、基準方位の変更、及び、自動操舵制御による走行中の走行位置の変更を、オペレータが任意に行うことができる走行制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、作業車の走行を制御する走行制御システムであって、操舵のための操舵操作具と、前記操舵操作具の操作に応じて前記作業車の走行を制御する走行制御部と、を備え、前記走行制御部の制御モードは、手動操舵モードと、自動操舵モードと、の間でモード切替可能であり、前記走行制御部の制御モードが前記手動操舵モードである場合、前記走行制御部は、前記操舵操作具の操作に応じて前記作業車の走行を制御し、前記走行制御部の制御モードが前記自動操舵モードである場合、前記走行制御部は、方位決定部により決定された基準方位に基づいて算出された目標走行経路に基づいて、前記作業車の自動操舵制御を実行可能であり、前記方位決定部により決定された前記基準方位を、人為的な操作入力に応じて変更可能な方位変更部と、前記目標走行経路を、人為的な操作入力に応じて平行移動可能な平行移動部と、を備え、前記方位変更部は、0から9までの数字キーの操作を介して、方位を示す値を人為的に入力可能に構成されており、且つ、入力された前記値に基づいて前記基準方位を変更可能であることにある。
【0008】
本発明であれば、人為的な操作入力により、基準方位を変更することができる。これにより、オペレータは、基準方位の変更を任意に行うことができる。
【0009】
また、本発明であれば、人為的な操作入力により、目標走行経路を平行移動させることができる。ここで、自動操舵制御による走行中に、目標走行経路が平行移動すると、作業車の走行位置が左または右へ変化することとなる。そのため、本発明であれば、オペレータは、人為的な操作入力により、自動操舵制御による走行中の走行位置の変更を行うことができる。これにより、オペレータは、自動操舵制御による走行中の走行位置の変更を任意に行うことができる。
【0010】
従って、本発明であれば、基準方位の変更、及び、自動操舵制御による走行中の走行位置の変更を、オペレータが任意に行うことができる走行制御システムを実現できる。
また、この構成によれば、例えば、基準方位が、入力された値により示される方位に一致するように変更される構成を実現できる。これにより、基準方位を、オペレータの望み通りに変更しやすい。従って、基準方位を適切な方位に変更しやすい。
このように、上記の構成によれば、基準方位を適切な方位に変更しやすい走行制御システムを実現できる。
【0011】
本発明の別の特徴は、作業車の走行を制御する走行制御システムであって、操舵のための操舵操作具と、前記操舵操作具の操作に応じて前記作業車の走行を制御する走行制御部と、を備え、前記走行制御部の制御モードは、手動操舵モードと、自動操舵モードと、の間でモード切替可能であり、前記走行制御部の制御モードが前記手動操舵モードである場合、前記走行制御部は、前記操舵操作具の操作に応じて前記作業車の走行を制御し、前記走行制御部の制御モードが前記自動操舵モードである場合、前記走行制御部は、方位決定部により決定された基準方位に基づいて算出された目標走行経路に基づいて、前記作業車の自動操舵制御を実行可能であり、前記方位決定部により決定された前記基準方位を、人為的な操作入力に応じて変更可能な方位変更部と、前記目標走行経路を、人為的な操作入力に応じて平行移動可能な平行移動部と、を備え、前記平行移動部は、前記走行制御部の制御モードが前記自動操舵モードであるとき、前記操舵操作具の操作に応じて、前記目標走行経路を平行移動させることにある
【0012】
この構成によれば、目標走行経路を平行移動させるための専用の操作部材を設ける必要がない。そのため、専用の操作部材を設けることによる製造コストの増大を回避することができる。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
さらに、本発明において、前記方位変更部は、前記基準方位と前記作業車の姿勢方位とを示す画面である方位表示画面を表示可能であると好適である。
【0017】
この構成によれば、オペレータは、方位表示画面を見ることにより、基準方位と作業車の姿勢方位とを比較することができる。これにより、オペレータは、基準方位が適切であるか否かを確認しやすい。
【0018】
本発明の別の特徴は、作業車の走行を制御する走行制御システムであって、操舵のための操舵操作具と、前記操舵操作具の操作に応じて前記作業車の走行を制御する走行制御部と、を備え、前記走行制御部の制御モードは、手動操舵モードと、自動操舵モードと、の間でモード切替可能であり、前記走行制御部の制御モードが前記手動操舵モードである場合、前記走行制御部は、前記操舵操作具の操作に応じて前記作業車の走行を制御し、前記走行制御部の制御モードが前記自動操舵モードである場合、前記走行制御部は、方位決定部により決定された基準方位に基づいて算出された目標走行経路に基づいて、前記作業車の自動操舵制御を実行可能であり、前記方位決定部により決定された前記基準方位を、人為的な操作入力に応じて変更可能な方位変更部と、前記目標走行経路を、人為的な操作入力に応じて平行移動可能な平行移動部と、を備え、前記方位変更部は、人為的な操作入力を受け付ける入力受付部を有しており、且つ、前記入力受付部が操作された場合、前記入力受付部が操作された時点での前記作業車の姿勢方位に一致させるように前記基準方位を変更するように構成されていることにある
【0019】
この構成によれば、基準方位が、入力受付部が操作された時点での作業車の姿勢方位に一致するように変更される構成を実現できる。これにより、オペレータが、圃場等の作業場所の実際の状態に応じて作業車の姿勢方位を調節した上で、入力受付部を操作すれば、基準方位を、圃場等の作業場所の実際の状態に応じた適切な方位に変更することができる。
【0020】
このように、上記の構成によれば、基準方位を、圃場等の作業場所の実際の状態に応じた適切な方位に変更しやすい走行制御システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】コンバインの左側面図である。
図2】操舵操作具の構成を示す図である。
図3】制御部に関する構成を示すブロック図である。
図4】走行制御部の制御モードが自動操舵モードへ切り替えられたときのディスプレイの表示画面を示す図である。
図5】方位決定部に第1登録地点と第2登録地点とが記憶された時点でのディスプレイの表示画面を示す図である。
図6】自動操舵モードでの自動操舵制御が行われる場合の例を示す図である。
図7】自動操舵モードでの自動操舵制御が行われる場合の例を示す図である。
図8】平行移動処理が実行される前の状態を示す図である。
図9】平行移動処理を説明する図である。
図10】平行移動処理が実行された後の状態を示す図である。
図11】判定ルーチンのフローチャートである。
図12】方位表示画面を示す図である。
図13】値入力部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図1に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、図2に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図1に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0023】
また、以下の説明においては、特に断りがない限り、図6から図10に示す矢印Nの方向を「北」、矢印Sの方向を「南」、矢印Eの方向を「東」、矢印Wの方向を「西」とする。
【0024】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、普通型のコンバイン1(本発明に係る「作業車」に相当)は、収穫部H、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0025】
走行装置11は、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、コンバイン1に搭載されたエンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって自走可能である。
【0026】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられている。運転部12にはオペレータが搭乗可能である。
【0027】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0028】
収穫部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられている。また、収穫部Hは、刈刃15及びリール17を含んでいる。
【0029】
刈刃15は、圃場の植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。刈刃15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送部16へ送られる。
【0030】
この構成により、収穫部Hは、圃場の穀物を収穫する。そして、コンバイン1は、刈刃15によって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0031】
収穫部Hにより収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。
【0032】
脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0033】
また、図1に示すように、運転部12には、通信端末4(本発明に係る「方位変更部」に相当)が配置されている。通信端末4は、種々の情報を表示可能に構成されている。本実施形態において、通信端末4は、運転部12に固定されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、通信端末4は、運転部12に対して着脱可能に構成されていても良いし、通信端末4は、コンバイン1の機外に位置していても良い。
【0034】
ここで、コンバイン1は、自動操舵制御による走行を行うことができるように構成されている。自動操舵制御とは、前進走行を自動で行う制御である。特に、本実施形態において、自動操舵制御とは、αターンやUターン等の大きな方向転換のない前進走行を自動で行う制御である。
【0035】
また、コンバイン1は、自動操舵制御が実行されていないときは、手動操舵走行を行うように構成されている。手動操舵走行とは、オペレータの手動操舵によって走行を行うことを意味する。
【0036】
また、運転部12には、主変速レバー(図示せず)が設けられている。コンバイン1が走行しているとき、オペレータが主変速レバーを操作すると、コンバイン1の車速が変化する。即ち、コンバイン1が走行しているとき、オペレータは、主変速レバーを操作することにより、コンバイン1の車速を変更することができる。
【0037】
また、運転部12には、図2に示す操舵操作具41が設けられている。コンバイン1が手動操舵走行を行っているとき、オペレータが操舵操作具41を操作すると、走行装置11における左右のクローラの間に速度差が生じるように構成されている。これにより、コンバイン1が旋回する。即ち、コンバイン1が手動操舵走行を行っているとき、オペレータは、操舵操作具41を操作することにより、コンバイン1の操舵を行うことができる。
【0038】
尚、コンバイン1は、操舵操作具41への操作力が走行装置11へ伝達されないように構成されている。即ち、操舵操作具41は、走行装置11に機械的に連動するものではない。オペレータが操舵操作具41を操作すると、操舵操作具41の動きが電気的に検知され、この検知に基づいて、走行装置11における左右のクローラが制御される。これにより、左右のクローラの間に速度差が生じると、コンバイン1は旋回する。また、左右のクローラの間に速度差がない状態では、コンバイン1は直進する。
【0039】
〔操舵操作具の構成〕
図2に示すように、操舵操作具41は、右第3操作位置R3と左第3操作位置L3との間で、左右方向に揺動操作可能に構成されている。操舵操作具41の可動範囲の中央に、中央操作位置CPが位置している。
【0040】
中央操作位置CPと右第3操作位置R3との間に、右第1操作位置R1及び右第2操作位置R2が位置している。右第2操作位置R2は、右第1操作位置R1よりも右側に位置している。
【0041】
中央操作位置CPと左第3操作位置L3との間に、左第1操作位置L1及び左第2操作位置L2が位置している。左第2操作位置L2は、左第1操作位置L1よりも左側に位置している。
【0042】
本実施形態において、操舵操作具41の操作量は、中央操作位置CPからの揺動角度である。
【0043】
中央操作位置CPから右第1操作位置R1までの操作量は、第1操作量A1である。また、中央操作位置CPから右第2操作位置R2までの操作量は、第2操作量A2である。そして、上述の通り、操舵操作具41は、右側へ右第3操作位置R3まで操作可能である。即ち、操舵操作具41は、右側へ第2操作量A2よりも大きく操作可能である。
【0044】
また、図2には図示されていないが、左側についても同様である。即ち、中央操作位置CPから左第1操作位置L1までの操作量は、第1操作量A1である。また、中央操作位置CPから左第2操作位置L2までの操作量は、第2操作量A2である。そして、上述の通り、操舵操作具41は、左側へ左第3操作位置L3まで操作可能である。即ち、操舵操作具41は、左側へ第2操作量A2よりも大きく操作可能である。
【0045】
このように、操舵操作具41の可動範囲は、第1操作量A1よりも大きな操作量である第2操作量A2よりも大きく操舵操作具41を操作可能であるように設定されている。
【0046】
〔走行制御システムの構成〕
本実施形態において、コンバイン1の走行は、走行制御システムA(図3参照)によって制御される。即ち、走行制御システムAは、コンバイン1の走行を制御する。図3に示すように、コンバイン1は、制御部20を備えている。そして、通信端末4、操舵操作具41、制御部20は、走行制御システムAに含まれている。
【0047】
即ち、走行制御システムAは、操舵のための操舵操作具41を備えている。
【0048】
図3に示すように、制御部20は、走行制御部24を有している。走行制御部24は、走行装置11を制御可能に構成されている。走行制御部24は、走行装置11を制御することにより、コンバイン1の走行を制御する。
【0049】
尚、制御部20、及び、制御部20に含まれる走行制御部24等の各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0050】
ここで、走行制御部24の制御モードは、手動操舵モードと、自動操舵モードと、の間でモード切替可能である。
【0051】
尚、詳しくは後述するが、走行制御部24の制御モードが自動操舵モードである場合、走行制御部24は、コンバイン1の自動操舵制御を実行可能である。
【0052】
本実施形態において、通信端末4は、人為的な操作入力を受け付けるように構成されている。そして、走行制御部24の制御モードは、通信端末4への操作入力によって切り替わる。即ち、オペレータは、通信端末4への操作入力により、走行制御部24の制御モードを、手動操舵モードと、自動操舵モードと、の間で切り替えることができる。
【0053】
以下では、走行制御部24の各制御モードについて詳述する。
【0054】
〔手動操舵モードについて〕
走行制御部24の制御モードが手動操舵モードであるとき、図3に示すように、操舵操作具41から走行制御部24へ、操舵操作具41の操作に応じた信号が入力される。そして、走行制御部24は、この信号に応じて、走行装置11を制御することにより、コンバイン1の走行を制御する。
【0055】
即ち、走行制御部24の制御モードが手動操舵モードである場合、走行制御部24は、操舵操作具41の操作に応じてコンバイン1の走行を制御する。また、走行制御システムAは、操舵操作具41の操作に応じてコンバイン1の走行を制御する走行制御部24を備えている。
【0056】
この構成により、コンバイン1は、走行制御部24の制御モードが手動操舵モードであるとき、手動操舵走行を行う。
【0057】
走行制御部24は、特に限定されないが、例えば、操舵操作具41の操作量が第1操作量A1より小さい場合にはコンバイン1を直進させ、操舵操作具41の操作量が第1操作量A1以上である場合には、操舵操作具41の操作方向にコンバイン1を旋回させるように構成されていても良い。さらに、走行制御部24は、操舵操作具41の操作量が第1操作量A1以上である場合、操舵操作具41の操作量が大きいほどコンバイン1の旋回半径が小さくなるように、コンバイン1の走行を制御するように構成されていても良い。
【0058】
〔自動操舵モードについて〕
以下では、自動操舵モードについて説明する。図3に示すように、制御部20は、自車位置算出部21、及び、自動操舵制御部30を有している。
【0059】
図1に示すように、衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星GSからのGPS信号を受信する。そして、図3に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを自車位置算出部21へ送る。
【0060】
尚、本発明はこれに限定されない。衛星測位モジュール80は、GPSを利用するものでなくても良い。例えば、衛星測位モジュール80は、GPS以外のGNSS(GLONASS、Galileo、みちびき、BeiDou等)を利用するものであっても良い。
【0061】
自車位置算出部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。
【0062】
このように、走行制御システムAは、衛星測位を用いてコンバイン1の機体位置を算出する自車位置算出部21を備えている。自車位置算出部21により算出されたコンバイン1の位置座標は、走行制御部24へ送られる。
【0063】
また、図3に示すように、コンバイン1は、慣性計測装置81を備えている。また、制御部20は、自車方位算出部25を有している。
【0064】
慣性計測装置81は、コンバイン1の機体のヨー角度の角速度、及び、互いに直交する3軸方向の加速度を経時的に検知する。慣性計測装置81による検知結果は、自車方位算出部25へ送られる。
【0065】
自車方位算出部25は、自車位置算出部21から、コンバイン1の位置座標を受け取る。そして、自車方位算出部25は、慣性計測装置81による検知結果と、コンバイン1の位置座標と、に基づいて、コンバイン1の姿勢方位を算出する。
【0066】
より具体的には、まず、コンバイン1の走行中に、現在のコンバイン1の位置座標、及び、直前に走行していた地点におけるコンバイン1の位置座標に基づいて、自車方位算出部25は、初期姿勢方位を算出する。次に、初期姿勢方位が算出されてからコンバイン1が一定時間走行すると、自車方位算出部25は、その一定時間の走行の間に慣性計測装置81により検知された角速度を積分処理することにより、姿勢方位の変化量を算出する。
【0067】
そして、このように算出された姿勢方位の変化量を初期姿勢方位に足し合わせることによって、自車方位算出部25は、姿勢方位の算出結果を更新する。その後、一定時間毎に、姿勢方位の変化量が同様に算出されると共に、順次、姿勢方位の算出結果が更新されていく。
【0068】
以上の構成により、自車方位算出部25は、コンバイン1の姿勢方位を算出する。自車方位算出部25により算出されたコンバイン1の姿勢方位は、走行制御部24へ送られる。
【0069】
ここで、走行制御部24の制御モードが、手動操舵モードから自動操舵モードへ切り替えられると、通信端末4のディスプレイ4bに、図4に示す画面が表示される。図4に示す画面では、第1登録ボタン51、第2登録ボタン52、終了ボタン63が表示される。
【0070】
尚、通信端末4は、図3に示すように、自車位置算出部21からコンバイン1の位置座標を受け取る。これにより、通信端末4は、通信端末4のディスプレイ4bに、コンバイン1の現在位置を表示可能である。
【0071】
また、ディスプレイ4bは、タッチ操作可能に構成されている。オペレータは、ディスプレイ4bにタッチ操作を行うことにより、通信端末4への操作入力を行うことができる。
【0072】
図4に示す第1登録ボタン51がタッチ操作された場合、所定の第1信号が通信端末4から自動操舵制御部30へ送られる。自動操舵制御部30は、この第1信号に応答して、自車位置算出部21から、コンバイン1の位置座標を取得する。自動操舵制御部30は、この位置座標を、第1登録地点Q1(図5参照)として決定する。第1登録地点Q1は、自動操舵制御部30における方位決定部31(図3参照)に記憶される。
【0073】
また、コンバイン1が第1登録地点Q1からある程度離れた場所に位置しているときに、第2登録ボタン52がタッチ操作された場合、所定の第2信号が通信端末4から自動操舵制御部30へ送られる。自動操舵制御部30は、この第2信号に応答して、自車位置算出部21から、コンバイン1の位置座標を取得する。自動操舵制御部30は、この位置座標を、第2登録地点Q2(図5参照)として決定する。第2登録地点Q2は、方位決定部31(図3参照)に記憶される。
【0074】
図4に示す画面において、オペレータが第1登録ボタン51をタッチ操作した後、コンバイン1がある程度の距離を手動操舵走行によって走行し、オペレータが第2登録ボタン52をタッチ操作すると、方位決定部31に、第1登録地点Q1と第2登録地点Q2とが記憶されることとなる。そして、ディスプレイ4bの表示は、図5に示すような画面になる。
【0075】
図5に示す画面では、第1登録ボタン51、第2登録ボタン52、終了ボタン63が表示される。また、この画面では、第1登録地点Q1、第2登録地点Q2、既刈領域BAが表示されている。尚、既刈領域BAは、コンバイン1により植立穀稈が刈り取られた領域である。
【0076】
そして、方位決定部31は、第1登録地点Q1と第2登録地点Q2とに基づいて、自動操舵制御のための基準方位TA(図6参照)を決定する。より具体的には、方位決定部31は、第1登録地点Q1と第2登録地点Q2とを結ぶ直線の方位を算出し、この方位を基準方位TAとして決定する。
【0077】
即ち、方位決定部31は、第1登録地点Q1と第2登録地点Q2とを結ぶ直線の方位を基準方位TAとして決定する。
【0078】
基準方位TAの形式は、特に限定されないが、例えば、東西南北を基準とした形式(例えば、「北」や「北27度東」等)であっても良いし、座標系における単位ベクトルであっても良い。
【0079】
また、基準方位TAは、一方から他方への向きを有するものでなくても良い。例えば、基準方位TAは、座標系における直線の傾き(例えば、第1登録地点Q1と第2登録地点Q2とを通る直線の傾き)を示すものであっても良いし、座標系における直線そのもの(例えば、第1登録地点Q1と第2登録地点Q2とを通る直線そのもの)を示すものであっても良いし、東西南北を基準として方向を示すもの(例えば、「南北方向」や「東西方向」等)であっても良い。
【0080】
図3に示すように、自動操舵制御部30は、経路算出部32を有している。走行制御部24の制御モードが自動操舵モードである場合において、方位決定部31が基準方位TAを決定した後、経路算出部32は、収穫部Hの刈幅中心を通ると共に基準方位TAに沿う方向の走行ラインを常時算出する。即ち、この走行ラインは、基準方位TAに基づいて算出される。そして、オペレータが自動操舵開始終了ボタン(図示せず)を操作すると、走行制御部24は、コンバイン1の自動操舵制御を開始する。
【0081】
尚、本発明はこれに限定されない。走行制御部24は、コンバイン1が所定の走行距離に亘って直進した場合に、コンバイン1の自動操舵制御を開始するように構成されていても良い。
【0082】
また、自動操舵開始終了ボタンの設けられる場所は特に限定されないが、例えば、運転部12に設けられていても良いし、また、走行制御システムAのうちのコンバイン1の外部に設けられていても良い。また、走行制御部24がコンバイン1の自動操舵制御を実行しているとき、オペレータが自動操舵開始終了ボタンを操作すると、走行制御部24は、コンバイン1の自動操舵制御を終了する。
【0083】
走行制御部24がコンバイン1の自動操舵制御を開始したとき、経路算出部32は、その時点で算出されていた走行ラインを固定する。固定された走行ラインは、自動操舵目標ラインGL(本発明に係る「目標走行経路」に相当)(図7参照)となる。即ち、経路算出部32は、コンバイン1の自動操舵制御が開始されたタイミングで、そのときに算出していた走行ラインを自動操舵目標ラインGLとして決定する。そして、自動操舵目標ラインGLを示す情報が、自動操舵制御部30から走行制御部24へ送られる。
【0084】
コンバイン1の自動操舵制御の実行中、走行制御部24は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、自車方位算出部25から受け取ったコンバイン1の姿勢方位と、自動操舵制御部30から受け取った自動操舵目標ラインGLを示す情報と、に基づいて、コンバイン1の走行を制御する。より具体的には、走行制御部24は、自動操舵目標ラインGLに沿って刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。このとき、走行制御部24は、例えば、収穫部Hの刈幅中心が自動操舵目標ラインGL上に位置するように、コンバイン1の走行を制御する。
【0085】
即ち、走行制御部24の制御モードが自動操舵モードである場合、走行制御部24は、方位決定部31により決定された基準方位TAに基づいて算出された自動操舵目標ラインGLに基づいて、コンバイン1の自動操舵制御を実行可能である。
【0086】
尚、コンバイン1の自動操舵制御の実行中、走行制御部24は、自動操舵目標ラインGLに代えて、基準方位TAに基づいてコンバイン1の走行を制御しても良い。この場合、走行制御部24は、コンバイン1の姿勢方位が基準方位TAに合うように、または、基準方位TAに対して平行となるように、機体方位を制御しても良い。
【0087】
また、ディスプレイ4bに図4に示す画面、または、図5に示す画面が表示された状態で、オペレータが終了ボタン63をタッチ操作すると、走行制御部24の制御モードが自動操舵モードから手動操舵モードへ切り替わると共に、ディスプレイ4bの画面は、手動操舵モード用の画面(図示せず)に切り替わる。
【0088】
ここで、自動操舵モードによるコンバイン1の自動操舵制御について、例を挙げて説明する。図6及び図7に示す例では、コンバイン1は、圃場の境界OBに沿って、圃場における外周側を走行している。
【0089】
図6において、走行制御部24の制御モードは自動操舵モードである。このとき、基準方位TAはまだ決定されていないものとする。また、コンバイン1は、圃場の北端において、西へ向かって走行している。コンバイン1は、第1地点P1を通過した後、第2地点P2を通過する。
【0090】
そして、この例では、コンバイン1が第1地点P1に位置しているとき、オペレータが、第1登録ボタン51をタッチ操作する。また、コンバイン1が第2地点P2に位置しているとき、オペレータが、第2登録ボタン52をタッチ操作する。
【0091】
これにより、第1地点P1の位置座標が、第1登録地点Q1として方位決定部31に記憶される。また、第2地点P2の位置座標が、第2登録地点Q2として方位決定部31に記憶される。そして、方位決定部31は、第1登録地点Q1から第2登録地点Q2へ向かう直線の方向を算出し、この方向を基準方位TAとして決定する。この例において、基準方位TAは、西の方角に一致する。
【0092】
その後、経路算出部32は、収穫部Hの刈幅中心を通ると共に基準方位TAに沿う方向の走行ラインを常時算出する。この例において、経路算出部32は、東西方向に延びる走行ラインを算出することとなる。
【0093】
次に、コンバイン1が圃場の南端において東へ向かって走行する際、オペレータが、自動操舵開始終了ボタンを操作するものとする。これにより、走行制御部24が、コンバイン1の自動操舵制御を開始する。これに伴い、図7に示すように、走行ラインが固定され、自動操舵目標ラインGLとなる。この自動操舵目標ラインGLは、圃場の南端部において、東西方向に延びている。
【0094】
そして、図7に示すように、コンバイン1は、自動操舵制御により、圃場の南端において東へ向かって走行する。
【0095】
〔平行移動処理について〕
図3に示すように、自動操舵制御部30は、平行移動部35を有している。平行移動部35は、平行移動処理を実行可能に構成されている。平行移動処理とは、走行制御部24の制御モードが自動操舵モードであり、且つ、コンバイン1の自動操舵制御が実行中であるとき、オペレータによる操舵操作具41の操作に応じて、自動操舵目標ラインGLを平行移動する処理である。尚、オペレータによる操舵操作具41の操作は、本発明に係る「人為的な操作入力」の具体例である。
【0096】
即ち、走行制御システムAは、自動操舵目標ラインGLを、人為的な操作入力に応じて平行移動可能な平行移動部35を備えている。また、平行移動部35は、走行制御部24の制御モードが自動操舵モードであるとき、操舵操作具41の操作に応じて、自動操舵目標ラインGLを平行移動させる。
【0097】
以下では、平行移動部35により平行移動処理が実行される場合について、例を挙げて説明する。
【0098】
図8から図10に示す例では、コンバイン1は、圃場の東端において、北へ向かって走行している。また、この圃場の東端における境界OBは、図8に示す第3地点P3、第4地点P4において折れ曲がっている。第4地点P4は、第3地点P3に対して北東に位置している。圃場の境界OBのうち、第3地点P3よりも南側の部分、及び、第4地点P4よりも北側の部分は、南北方向に沿って延びている。また、圃場の境界OBのうち、第3地点P3と第4地点P4とを繋ぐ部分は、第3地点P3から北東方向へ延びている。
【0099】
図8において、コンバイン1は、南北方向に延びる第1目標ラインGL1に沿って自動操舵制御による刈取走行を行っている。第1目標ラインGL1は、自動操舵目標ラインGLである。このとき、走行制御部24の制御モードは自動操舵モードである。また、このときの基準方位TAは、北向きであるものとする。
【0100】
この例においては、図9に示すように、コンバイン1が第3地点P3に到達した時点で、オペレータが、操舵操作具41を右第1操作位置R1と右第2操作位置R2との間の位置まで操作したものとする。これにより、操舵操作具41は、右側へ第1操作量A1以上且つ第2操作量A2以下の操作量で操作されたこととなる。
【0101】
ここで、平行移動部35は、自動操舵モードによるコンバイン1の自動操舵制御が実行中であるとき、操舵操作具41の操作量が第1操作量A1以上且つ第2操作量A2以下となるように操舵操作具41が操作された場合、平行移動処理を実行するように構成されている。
【0102】
そのため、図9に示す操舵操作具41の操作に応じて、平行移動部35は、平行移動処理を実行する。本実施形態における平行移動処理では、自動操舵目標ラインGLが、操舵操作具41の操作方向へ平行移動するものとする。この例では操舵操作具41が右側へ操作されたため、自動操舵目標ラインGLが、右側へ所定の移動距離だけ平行移動する。
【0103】
これにより、新たな自動操舵目標ラインGLである第2目標ラインGL2が算出される。尚、平行移動処理において、新たな自動操舵目標ラインGLは、平行移動部35により算出されても良いし、平行移動部35からの指示信号を受け取った経路算出部32により算出されても良い。
【0104】
尚、仮に、操舵操作具41が左側へ第1操作量A1以上且つ第2操作量A2以下の操作量で操作された場合は、自動操舵目標ラインGLが、左側へ所定の移動距離だけ平行移動する。
【0105】
また、このときの移動距離は、任意に設定することが可能である。移動距離は、例えば10cm(センチメートル)である。
【0106】
また、仮に、操舵操作具41の操作量が第1操作量A1未満である場合は、平行移動部35は、平行移動処理を実行しない。
【0107】
また、この例では、新たな自動操舵目標ラインGLである第2目標ラインGL2が算出されると同時に、古い自動操舵目標ラインGLである第1目標ラインGL1は破棄される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。新たな自動操舵目標ラインGLが算出されたとき、古い自動操舵目標ラインGLは破棄されず、記憶されたままでも良い。
【0108】
図10に示すように、平行移動処理の実行後は、コンバイン1は、第2目標ラインGL2に沿って自動操舵制御による刈取走行を行う。即ち、平行移動処理の実行直後に、コンバイン1は、第2目標ラインGL2へ近づくように走行する。その後、コンバイン1は、コンバイン1の機体位置が第2目標ラインGL2上に位置するように、走行する。
【0109】
〔判定ルーチンについて〕
自動操舵制御部30(図3参照)は、走行制御部24の制御モードが自動操舵モードであり、且つ、コンバイン1の自動操舵制御が実行中であるとき、図11に示す判定ルーチンに従って、平行移動処理を実行するか否かを決定する。この判定ルーチンは、自動操舵制御部30に格納されている。自動操舵制御部30は、この判定ルーチンを、走行制御部24の制御モードが自動操舵モードであり、且つ、コンバイン1の自動操舵制御が実行中であるときに、一定時間毎に繰り返し実行する。
【0110】
以下では、図11を参照し、判定ルーチンについて説明する。
【0111】
判定ルーチンが開始されると、まず、ステップS11の処理が実行される。ステップS11では、操舵操作具41から自動操舵制御部30へ送られる操舵操作具41の操作状態を示す信号に基づいて、操舵操作具41が操作されたか否かが判定される。操舵操作具41が操作されていない場合、ステップS11でNoと判定され、処理は一旦終了する。また、操舵操作具41が操作されている場合、ステップS11でYesと判定され、処理はステップS12へ移行する。
【0112】
ステップS12では、操舵操作具41の操作量が第1操作量A1よりも小さいか否かが判定される。操舵操作具41の操作量が第1操作量A1よりも小さい場合、ステップS12でYesと判定され、処理は一旦終了する。また、操舵操作具41の操作量が第1操作量A1以上である場合、ステップS12でNoと判定され、処理はステップS13へ移行する。
【0113】
尚、本発明はこれに限定されず、操舵操作具41は、操作量が第1操作量A1よりも小さいときには、操舵操作具41の操作による信号が走行制御部24及び自動操舵制御部30へ送られないように構成されていても良い。言い換えれば、コンバイン1は、操舵操作具41の操作量が第1操作量A1よりも小さいときには、操舵操作具41が操作されていないときと同じ状態となるように構成されていても良い。この場合、ステップS12が設けられておらず、且つ、ステップS11において、操舵操作具41の操作量が第1操作量A1よりも小さい場合はNoと判定され、操舵操作具41の操作量が第1操作量A1以上である場合はYesと判定される構成であっても良い。
【0114】
ステップS13では、操舵操作具41の操作量が第2操作量A2以下であるか否かが判定される。操舵操作具41の操作量が第2操作量A2よりも大きい場合、ステップS13でNoと判定され、処理はステップS14へ移行する。また、操舵操作具41の操作量が第2操作量A2以下である場合、ステップS13でYesと判定され、処理はステップS15へ移行する。
【0115】
ステップS14では、走行制御部24による自動操舵制御が終了する。その後、処理は一旦終了する。尚、この後、コンバイン1は、走行制御部24の制御モードが自動操舵モードであるままで、手動操舵によって走行する。
【0116】
ステップS15では、上述の平行移動処理が実行される。その後、処理は一旦終了する。
【0117】
〔基準方位の変更について〕
走行制御部24の制御モードが自動操舵モードであるとき、通信端末4は、ディスプレイ4bに、方位表示画面を表示可能に構成されている。図12に示す通信端末4のディスプレイ4bには、方位表示画面が表示されている。
【0118】
図12に示すように、方位表示画面には、姿勢方位表示部71、基準方位表示部72、プラスボタン73、マイナスボタン74、現在方位ボタン75(本発明に係る「入力受付部」に相当)が表示されている。
【0119】
図3に示すように、通信端末4は、自車方位算出部25から、現在のコンバイン1の姿勢方位を取得する。そして、通信端末4は、図12に示すように、姿勢方位表示部71に、現在のコンバイン1の姿勢方位を表示する。
【0120】
本実施形態において、姿勢方位表示部71に表示される姿勢方位は、北を0°としたときの値である。尚、本発明はこれに限定されず、姿勢方位表示部71に表示される姿勢方位は、値でなくても良い。例えば、姿勢方位表示部71に、姿勢方位を示すアイコン等が表示されても良い。
【0121】
図12に示すように、通信端末4は、方位決定部31から、基準方位TAを示す情報を取得する。そして、通信端末4は、基準方位表示部72に、基準方位TAを表示する。
【0122】
本実施形態において、基準方位表示部72に表示される基準方位TAは、北を0°としたときの値である。尚、本発明はこれに限定されず、基準方位表示部72に表示される基準方位TAは、値でなくても良い。例えば、基準方位表示部72に、基準方位TAを示すアイコン等が表示されても良い。
【0123】
このように、通信端末4は、基準方位TAとコンバイン1の姿勢方位とを示す画面である方位表示画面を表示可能である。
【0124】
プラスボタン73及びマイナスボタン74は、タッチ操作可能なボタンである。オペレータがプラスボタン73をタッチ操作する度に、所定の信号が方位決定部31へ送られる。この信号は、プラスボタン73がタッチ操作されたことを示す信号である。
【0125】
ここで、方位決定部31は、方位決定部31により決定された基準方位TAを記憶している。そして、方位決定部31は、プラスボタン73がタッチ操作されたことを示す信号を受け取ると、基準方位TAの値を所定角度だけ増加させる。そして、方位決定部31は、値の増加後の基準方位TAを記憶する。
【0126】
この構成により、オペレータがプラスボタン73をタッチ操作する度に、基準方位TAの値が所定角度刻みで増加する。尚、本実施形態において、基準方位TAの値が増加することは、基準方位TAが平面視で時計回り方向に変化することと同じである。例えば、基準方位TAの値が10°増加することは、基準方位TAが平面視で時計回り方向に10°変化することと同じである。
【0127】
また、オペレータがマイナスボタン74をタッチ操作する度に、所定の信号が方位決定部31へ送られる。この信号は、マイナスボタン74がタッチ操作されたことを示す信号である。
【0128】
方位決定部31は、マイナスボタン74がタッチ操作されたことを示す信号を受け取ると、基準方位TAの値を所定角度だけ減少させる。そして、方位決定部31は、値の減少後の基準方位TAを記憶する。
【0129】
この構成により、オペレータがマイナスボタン74をタッチ操作する度に、基準方位TAの値が所定角度刻みで減少する。尚、本実施形態において、基準方位TAの値が減少することは、基準方位TAが平面視で反時計回り方向に変化することと同じである。例えば、基準方位TAの値が10°減少することは、基準方位TAが平面視で反時計回り方向に10°変化することと同じである。
【0130】
以上で説明した構成により、通信端末4は、人為的な操作入力によって、基準方位TAを所定角度刻みで変更可能に構成されている。本実施形態において、この所定角度は、0.1°である。即ち、通信端末4は、人為的な操作入力によって、基準方位TAを0.1°刻みで変更可能に構成されている。ただし、本発明はこれに限定されず、この所定角度は、0.1°以外のいかなる角度であっても良い。
【0131】
現在方位ボタン75は、タッチ操作可能なボタンである。オペレータが現在方位ボタン75をタッチ操作すると、所定の信号が方位決定部31へ送られる。方位決定部31は、この信号を受け取ると、現在方位ボタン75がタッチ操作された時点でのコンバイン1の姿勢方位に基づいて、基準方位TAを変更する。より具体的には、方位決定部31は、基準方位TAを、現在方位ボタン75がタッチ操作された時点でのコンバイン1の姿勢方位に一致させるように、変更する。
【0132】
このように、通信端末4は、人為的な操作入力を受け付ける現在方位ボタン75を有しており、且つ、現在方位ボタン75が操作された時点でのコンバイン1の姿勢方位に基づいて基準方位TAを変更可能である。
【0133】
例えば、図12に示す状態では、コンバイン1の姿勢方位は、353.8°である。また、基準方位TAは、330.2°である。このとき、現在方位ボタン75がタッチ操作されると、基準方位TAは、330.2°から353.8°に変更される。
【0134】
また、基準方位表示部72がタッチ操作されると、図13に示すように、ディスプレイ4bに、値入力部76が表示される。値入力部76には、方位を示す値を人為的に入力可能である。
【0135】
詳述すると、図13に示すように、値入力部76は、「0」から「9」までの数字キーを含んでいる。オペレータは、各数字キーをタッチ操作することにより、方位を示す値を入力することができる。入力後、値入力部76における「OK」ボタンをタッチ操作すると、入力された値が方位決定部31へ送られる。方位決定部31は、受け取った値に基づいて、基準方位TAを変更する。より具体的には、方位決定部31は、基準方位TAを、受け取った値に一致させるように、変更する。
【0136】
このように、通信端末4は、方位を示す値を人為的に入力可能に構成されており、且つ、入力された値に基づいて基準方位TAを変更可能である。
【0137】
以上で説明した構成により、通信端末4は、人為的な操作入力に応じて、方位決定部31を介して基準方位TAを変更する。
【0138】
即ち、走行制御システムAは、方位決定部31により決定された基準方位TAを、人為的な操作入力に応じて変更可能な通信端末4を備えている。
【0139】
尚、通信端末4の操作によって基準方位TAが変更された場合、変更後の基準方位TAが、基準方位表示部72に表示される。
【0140】
以上で説明した構成であれば、人為的な操作入力により、基準方位TAを変更することができる。これにより、オペレータは、基準方位TAの変更を任意に行うことができる。
【0141】
また、以上で説明した構成であれば、人為的な操作入力により、自動操舵目標ラインGLを平行移動させることができる。ここで、自動操舵制御による走行中に、自動操舵目標ラインGLが平行移動すると、コンバイン1の走行位置が左または右へ変化することとなる。そのため、以上で説明した構成であれば、オペレータは、人為的な操作入力により、自動操舵制御による走行中の走行位置の変更を行うことができる。これにより、オペレータは、自動操舵制御による走行中の走行位置の変更を任意に行うことができる。
【0142】
従って、以上で説明した構成であれば、基準方位TAの変更、及び、自動操舵制御による走行中の走行位置の変更を、オペレータが任意に行うことができる走行制御システムAを実現できる。
【0143】
〔その他の実施形態〕
(1)走行装置11は、ホイール式であっても良いし、セミクローラ式であっても良い。
【0144】
(2)操舵操作具41は、ステアリングホイールにより構成されていても良い。
【0145】
(3)自車位置算出部21、走行制御部24、自車方位算出部25、自動操舵制御部30、方位決定部31、経路算出部32、平行移動部35のうち、一部または全てがコンバイン1の外部に備えられていても良いのであって、例えば、コンバイン1の外部に設けられた管理施設や管理サーバに備えられていても良い。
【0146】
(4)平行移動部35は、自動操舵モードによるコンバイン1の自動操舵制御が実行中であるとき、操舵操作具41が操作された場合、操舵操作具41の操作量にかかわらず、平行移動処理を実行するように構成されていても良い。
【0147】
(5)操舵操作具41の人為的な操作に応じて基準方位TAが変更されるように構成されていても良い。この場合、操舵操作具41は、本発明に係る「方位変更部」に相当する。また、本発明に係る「方位変更部」に相当する部材として、通信端末4及び操舵操作具41以外の部材が設けられていても良い。
【0148】
(6)通信端末4の人為的な操作に応じて自動操舵目標ラインGLが平行移動するように構成されていても良い。
【0149】
(7)方位決定部31は、値入力部76に入力された値を受け取ると共に、当該値を、各種情報に基づいて補正して、補正後の値に基準方位TAを一致させるように構成されていても良い。この場合、基準方位TAは、値入力部76に入力された値に基づいて変更されている。
【0150】
(8)方位決定部31は、現在方位ボタン75がタッチ操作された時点でのコンバイン1の姿勢方位を受け取ると共に、当該姿勢方位を、各種情報に基づいて補正して、補正後の姿勢方位に基準方位TAを一致させるように構成されていても良い。この場合、基準方位TAは、現在方位ボタン75がタッチ操作された時点でのコンバイン1の姿勢方位に基づいて変更されている。
【0151】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、普通型のコンバインだけではなく、自脱型のコンバイン、トラクタ、田植機、トウモロコシ収穫機、ジャガイモ収穫機、ニンジン収穫機、建設作業機等、種々の作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0153】
1 コンバイン(作業車)
4 通信端末(方位変更部)
24 走行制御部
31 方位決定部
35 平行移動部
41 操舵操作具
75 現在方位ボタン(入力受付部)
A 走行制御システム
GL 自動操舵目標ライン(目標走行経路)
TA 基準方位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13