(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】田植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
A01C11/02 350H
A01C11/02 350B
A01C11/02 350G
(21)【出願番号】P 2021064020
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮西 吉秀
(72)【発明者】
【氏名】山内 一喜
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】原野 朱莉
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 喬士
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-54258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0390019(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行機体と、
前記走行機体の後部に連結され、複数の苗を集めてマット状にした苗マットを載置する苗載せ台を有し、圃場に苗を植付ける苗植付装置と、
前記苗植付装置の前方に位置する状態で前記走行機体に連結され、前記苗マットを前記苗載せ台へ搬送する搬送機構を有する予備苗搬送装置と、が備えられ、
前記予備苗搬送装置のうち、前記搬送機構の搬送始端部の位置する部分に、苗箱に載置された状態の前記苗マットを前記苗箱からすくい取るすくい部が備えられ
、
前記すくい部に、前記搬送始端部に対して外方へ延びる状態で前記搬送始端部に固定されている板状のすくい板部と、すくい板部の下方で前記苗箱の底部に下方から当接可能な底受け部と、が備えられ、
前記すくい板部と前記底受け部との間に、前記苗箱を挿入可能な隙間部が形成され、
前記すくい部は、前記苗箱が前記隙間部へ挿入されると、前記苗マットを前記苗箱から分離して前記すくい板部の上をスライドさせ、前記搬送機構の前記搬送始端部へ案内するように構成され、かつ、前記苗箱を前記すくい板部の下方へ案内するように構成されている田植機。
【請求項2】
圃場を走行する走行機体と、
前記走行機体の後部に連結され、複数の苗を集めてマット状にした苗マットを載置する苗載せ台を有し、圃場に苗を植付ける苗植付装置と、
前記苗植付装置の前方に位置する状態で前記走行機体に連結され、前記苗マットを前記苗載せ台へ搬送する搬送機構を有する予備苗搬送装置と、が備えられ、
前記予備苗搬送装置のうち、前記搬送機構の搬送始端部の位置する部分に、苗箱に載置された状態の前記苗マットを前記苗箱からすくい取るすくい部が備えられ、
前記すくい部に、前記搬送始端部に対して外方へ延びる板状のすくい板部と、すくい板部の下方で前記苗箱の底部に下方から当接可能な底受け部と、が備えられ、
前記すくい板部と前記底受け部との間に、前記苗箱を挿入可能な隙間部が形成され、
前記すくい部は、前記苗箱が前記隙間部へ挿入されると、前記苗マットを前記苗箱から分離して前記すくい板部の上をスライドさせ、前記搬送機構の前記搬送始端部へ案内するように構成され、
前記搬送機構に、前記苗マットを載置支持しながら搬送する載置面部が備えられ、
前記すくい部に、前記搬送機構の搬送方向に沿って延びるロッド部と、前記隙間部に設けられるとともに前記苗箱の挿入に伴って前記ロッド部を搬送方向視において上方へ押し上げる押し上げ部と、が備えられ、
前記ロッド部は、搬送方向視において前記載置面部よりも下側に位置する第一状態と、前記押し上げ部によって搬送方向視において前記載置面部よりも上側に押し上げられた状態で前記すくい板部によって前記苗箱から分離した前記苗マットを前記載置面部へ案内する第二状態と、に状態変更可能なように構成されてい
る田植機。
【請求項3】
前記載置面部の横幅は、搬送方向視において前記苗マットの横幅よりも幅狭に構成され、
複数の前記ロッド部が、搬送方向視において前記苗マットの横幅の範囲内に位置する状態で前記載置面部を挟んで左右に振り分け配置されている請求項
2に記載の田植機。
【請求項4】
前記ロッド部の搬送方向上手側端部は前記隙間部まで延ばされ、
前記押し上げ部に、前記すくい板部の先端部から前記隙間部へ向けて延ばされる第一当接部と、前記ロッド部の搬送方向上手側端部に連結されて前記第一当接部と摺接する第二当接部と、が備えられ、
前記押し上げ部は、前記隙間部に挿入される前記苗箱が前記第一当接部に押圧作用すると前記第一当接部が前記第二当接部を押し上げることによって前記ロッド部を前記第一状態から前記第二状態に状態変更させ、前記苗箱の挿入先端部分が前記第一当接部の延出端部よりも更に奥側に挿入されると前記苗箱が前記第二当接部に押圧作用することによって前記ロッド部の前記第二状態を保持するように構成されている請求項
2または
3に記載の田植機。
【請求項5】
前記第一当接部は、搬送方向視において、前記すくい板部の先端部から離れる側ほど下側に位置するように傾斜し、
前記第一当接部の延出先端部は、前記搬送機構の搬送方向側へ向くように屈曲形成されている請求項
4に記載の田植機。
【請求項6】
前記予備苗搬送装置に、前記苗植付装置の植付け条に対応して機体横方向に並ぶ複数の前記搬送機構と、前記複数の搬送機構の前記搬送始端部の位置する部分の夫々に設けられて機体横方向に並ぶ複数の前記すくい部と、が備えられ、
複数の前記ロッド部が、一つの前記搬送機構に対して左右に振り分け配置され、
前記第二当接部は、機体横方向において互いに隣接する前記複数のすくい部のうち、左右一方側の前記すくい部における左右他方側の前記ロッド部と、左右他方側の前記すくい部における左右一方側の前記ロッド部と、の夫々の搬送方向上手側端部に連結されている請求項
4または
5に記載の田植機。
【請求項7】
前記搬送機構は、機体前後方向に沿って前記苗マットを搬送するように構成され、
前記予備苗搬送装置の前端部は、前記走行機体の前端部よりも前側まで延ばされ、
前記すくい部は、前記予備苗搬送装置の前端部に設けられ、かつ、前記搬送機構に対して搬送方向上手側に設けられている請求項1
から6の何れか一項に記載の田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の苗を集めてマット状にした苗マットを苗植付装置の苗載せ台へ搬送する予備苗搬送装置が備えられた田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された田植機では、予備苗搬送装置(文献では「予備苗供給装置」)が備えられ、予備苗搬送装置は苗マットを苗植付装置の苗載せ台へ搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで作業者が予備苗搬送装に苗マットを供給するとき、苗箱から分離した状態の苗マットは柔らかくて型崩れし易いため、一般的に作業者は『すくい板』を用いて苗マットを苗箱から分離してから予備苗搬送装に供給する。作業者がすくい板を用いずに予備苗搬送装置に苗マットを供給する構成であれば、便利である。
【0005】
本発明は、予備苗搬送装置に対する苗マットの供給の容易な田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による田植機では、圃場を走行する走行機体と、前記走行機体の後部に連結され、複数の苗を集めてマット状にした苗マットを載置する苗載せ台を有し、圃場に苗を植付ける苗植付装置と、前記苗植付装置の前方に位置する状態で前記走行機体に連結され、前記苗マットを前記苗載せ台へ搬送する搬送機構を有する予備苗搬送装置と、が備えられ、前記予備苗搬送装置のうち、前記搬送機構の搬送始端部の位置する部分に、苗箱に載置された状態の前記苗マットを前記苗箱からすくい取るすくい部が備えられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、搬送機構の搬送始端部にすくい部が備えられているため、作業者はすくい板を用いなくても搬送機構の予備苗搬送装置に苗マットを供給できる。作業者が苗箱を隙間部へ押し込むと、苗箱と苗マットとがすくい板部によって分離され、苗マットがすくい板部の上をスライドしながら搬送機構の前記搬送始端部へ押し出される構成が可能となる。このため、例えば圃場の畦際に位置する作業者が、苗マットを載置した苗箱を圃場の畦際から隙間部へ押し込むことによって、苗マットを予備苗搬送装置へ容易に供給できる。これにより、予備苗搬送装置に対する苗マットの供給の容易な田植機が実現される。
【0008】
本発明において、前記搬送機構は、機体前後方向に沿って前記苗マットを搬送するように構成され、前記予備苗搬送装置の前端部は、前記走行機体の前端部よりも前側まで延ばされ、前記すくい部は、前記予備苗搬送装置の前端部に設けられ、かつ、前記搬送機構に対して搬送方向上手側に設けられていると好適である。
【0009】
本構成によると、すくい部が予備苗搬送装置の前端部に設けられているため、例えば作業者が圃場の畦際に位置する場合、田植機の前方が畦際と対向する状態で、作業者は、苗マットをすくい部ですくい取りながら、苗マットを予備苗搬送装置に供給できる。また、すくい部が搬送機構に対して搬送方向上手側に設けられているため、作業者は、すくい部ですくい取った苗マットをそのまま押し込むだけで、搬送機構に苗マットを送り込める。
これにより、苗載せ台に対するマット苗の供給が容易になる。
【0010】
本発明において、前記すくい部に、前記搬送始端部に対して外方へ延びる板状のすくい板部と、すくい板部の下方で前記苗箱の底部に下方から当接可能な底受け部と、が備えられ、前記すくい板部と前記底受け部との間に、前記苗箱を挿入可能な隙間部が形成され、前記すくい部は、前記苗箱が前記隙間部へ挿入されると、前記苗マットを前記苗箱から分離して前記すくい板部の上をスライドさせ、前記搬送機構の前記搬送始端部へ案内するように構成されていると好適である。
【0011】
本構成であれば、作業者が苗箱を隙間部へ押し込むと、苗箱と苗マットとがすくい板部によって分離され、苗マットがすくい板部の上をスライドしながら搬送機構の前記搬送始端部へ押し出される構成が可能となる。このため、例えば圃場の畦際に位置する作業者が、苗マットを載置した苗箱を圃場の畦際から隙間部へ押し込むことによって、苗マットを予備苗搬送装置へ容易に供給できる。
【0012】
本発明による田植機では、圃場を走行する走行機体と、前記走行機体の後部に連結され、複数の苗を集めてマット状にした苗マットを載置する苗載せ台を有し、圃場に苗を植付ける苗植付装置と、前記苗植付装置の前方に位置する状態で前記走行機体に連結され、前記苗マットを前記苗載せ台へ搬送する搬送機構を有する予備苗搬送装置と、が備えられ、前記予備苗搬送装置のうち、前記搬送機構の搬送始端部の位置する部分に、苗箱に載置された状態の前記苗マットを前記苗箱からすくい取るすくい部が備えられ、前記すくい部に、前記搬送始端部に対して外方へ延びる板状のすくい板部と、すくい板部の下方で前記苗箱の底部に下方から当接可能な底受け部と、が備えられ、前記すくい板部と前記底受け部との間に、前記苗箱を挿入可能な隙間部が形成され、前記すくい部は、前記苗箱が前記隙間部へ挿入されると、前記苗マットを前記苗箱から分離して前記すくい板部の上をスライドさせ、前記搬送機構の前記搬送始端部へ案内するように構成され、前記搬送機構に、前記苗マットを載置支持しながら搬送する載置面部が備えられ、前記すくい部に、前記搬送機構の搬送方向に沿って延びるロッド部と、前記隙間部に設けられるとともに前記苗箱の挿入に伴って前記ロッド部を搬送方向視において上方へ押し上げる押し上げ部と、が備えられ、前記ロッド部は、搬送方向視において前記載置面部よりも下側に位置する第一状態と、前記押し上げ部によって搬送方向視において前記載置面部よりも上側に押し上げられた状態で前記すくい板部によって前記苗箱から分離した前記苗マットを前記載置面部へ案内する第二状態と、に状態変更可能なように構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によると、搬送機構の搬送始端部にすくい部が備えられているため、作業者はすくい板を用いなくても搬送機構の予備苗搬送装置に苗マットを供給できる。作業者が苗箱を隙間部へ押し込むと、苗箱と苗マットとがすくい板部によって分離され、苗マットがすくい板部の上をスライドしながら搬送機構の前記搬送始端部へ押し出される構成が可能となる。このため、例えば圃場の畦際に位置する作業者が、苗マットを載置した苗箱を圃場の畦際から隙間部へ押し込むことによって、苗マットを予備苗搬送装置へ容易に供給できる。搬送機構の載置面部は、苗マットをしっかりと苗載せ台へ搬送するために、滑り難くなりがちである。このため、苗マットがすくい部から載置面部へ案内される際に、載置面部で苗マットがスライドすると、苗マットの根部が荒らされる虞がある。本構成であれば、ロッド部が押し上げ部によって押し上げられると、ロッド部が第二状態で載置面部よりも上側に位置することによって、苗マットがロッド部の上をスライドしながら載置面部まで案内される構成が可能となり、苗マットが痛み難くなる。また、ロッド部の上に苗マットが位置する状態で、ロッド部が第二状態から第一状態に状態変更されることによって、苗は上方から載置面部へ載置される。これにより、予備苗搬送装に対する苗マットの供給が一層容易になる。これにより、予備苗搬送装に対する苗マットの供給の容易な田植機が実現される。
【0014】
本発明において、前記載置面部の横幅は、搬送方向視において前記苗マットの横幅よりも幅狭に構成され、複数の前記ロッド部が、搬送方向視において前記苗マットの横幅の範囲内に位置する状態で前記載置面部を挟んで左右に振り分け配置されていると好適である。
【0015】
本構成であれば、ロッド部が、苗マットの横幅の範囲内に位置する状態で、載置面部を挟んで左右に振り分け配置されているため、ロッド部は苗マットを左右両側で支持しながら載置面部へ案内できる。
【0016】
本発明において、前記ロッド部の搬送方向上手側端部は前記隙間部まで延ばされ、前記押し上げ部に、前記すくい板部の先端部から前記隙間部へ向けて延ばされる第一当接部と、前記ロッド部の搬送方向上手側端部に連結されて前記第一当接部と摺接する第二当接部と、が備えられ、前記押し上げ部は、前記隙間部に挿入される前記苗箱が前記第一当接部に押圧作用すると前記第一当接部が前記第二当接部を押し上げることによって前記ロッド部を前記第一状態から前記第二状態に状態変更させ、前記苗箱の挿入先端部分が前記第一当接部の延出端部よりも更に奥側に挿入されると前記苗箱が前記第二当接部に押圧作用することによって前記ロッド部の前記第二状態を保持するように構成されていると好適である。
【0017】
本構成であれば、作業者が苗箱を隙間部に押し込むだけで、ロッド部が第一当接部と第二当接部とを介して第一状態から第二状態へ状態変更され、苗マットがロッド部によって載置面部へ案内される。
【0018】
本発明において、前記第一当接部は、搬送方向視において、前記すくい板部の先端部から離れる側ほど下側に位置するように傾斜し、前記第一当接部の延出先端部は、前記搬送機構の搬送方向側へ向くように屈曲形成されていると好適である。
【0019】
本構成であれば、第一当接部の延出先端部が搬送機構の搬送方向側へ向くように屈曲形成されているため、作業者が苗箱を隙間部から引き抜く際に、苗箱が第一当接部に引っ掛かり難くなる。
【0020】
本発明において、前記予備苗搬送装置に、前記苗植付装置の植付け条に対応して機体横方向に並ぶ複数の前記搬送機構と、前記複数の搬送機構の前記搬送始端部の位置する部分の夫々に設けられて機体横方向に並ぶ複数の前記すくい部と、が備えられ、複数の前記ロッド部が、一つの前記搬送機構に対して左右に振り分け配置され、前記第二当接部は、機体横方向において互いに隣接する二つの前記すくい部のうち、左右一方側の前記すくい部における左右他方側の前記ロッド部と、左右他方側の前記すくい部における左右一方側の前記ロッド部と、の夫々の搬送方向上手側端部に連結されていると好適である。
【0021】
苗箱の横幅が搬送装置の横幅よりも広い場合、一つの搬送機構に対して左右一方に隣接するロッド部の第二当接部と、苗箱の左右一方側部と、が当接せず、横隣の搬送機構に設けられたロッド部の第二当接部と当接する可能性が考えられる。この場合、苗マットを供給する対象の搬送機構を挟んで左右に振り分け配置されたロッド部が意図通りに持ち上げられない虞がある。本構成であれば、このような不都合が回避され、苗マットを供給する対象の搬送機構に設けられた左右一方側のロッド部と、横隣の搬送機構に設けられた左右他方側のロッド部と、が第二当接部によって纏めて持ち上げられる。なお、本発明の左右一方側は、右側であっても良いし、左側であっても良い。左右一方側が右側である場合に左右他方側は左側となり、左右一方側が左側である場合に左右他方側は右側となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】予備苗搬送装置を有する田植機の側面図であって、予備苗搬送装置の前搬送部が下降姿勢である。
【
図2】予備苗搬送装置を有する田植機の側面図であって、予備苗搬送装置の前搬送部が上昇姿勢である。
【
図3】予備苗搬送装置を有する田植機の平面図である。
【
図4】予備苗搬送装置の前搬送部を示す要部平面図である。
【
図5】予備苗搬送装置の前搬送部及びすくい部を示す縦断面図(
図4のV-V線断面図)である。
【
図6】予備苗搬送装置の前搬送部及びすくい部を示す縦断面図(
図4のV-V線断面図)である。
【
図7】予備苗搬送装置の前搬送部及びすくい部を示す縦断面図(
図4のV-V線断面図)である。
【
図8】ベルト搬送用モータを駆動する制御部を示すブロック線図である。
【
図9】ベルト搬送用モータの駆動制御に関するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔乗用型田植機の基本構成〕
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、
図1~
図3において、矢印「F」が機体前方、矢印「B」が機体後方、矢印「U」が機体上方、矢印「D」が機体下方、矢印「L」が機体左方、矢印「R」が機体右方である。
【0024】
図1~
図3に示されているように、乗用型田植機に、圃場を走行可能な走行機体Cが備えられている。走行機体Cは、左右一対の操舵車輪10,10と、左右一対の後車輪11,11と、を有する。左右一対の操舵車輪10は、走行機体Cの機体前部に設けられて走行機体Cの向きを変更操作自在なように構成され、左右一対の後車輪11は、走行機体Cの機体後部に設けられている。走行機体Cの中央部に、各種の運転操作が行われる搭乗部23が備えられている。搭乗部23は、走行機体Cの横幅に亘って走行機体Cの上に設けられ、搭乗者が着座可能な搭乗座席23Aを有する。また、苗植付装置Wが上下昇降可能なように走行機体Cの後部に支持連結され、苗植付装置Wは圃場に対する苗を植付け可能に構成されている。苗植付装置Wは、一度に8条分の苗を植付け可能である。苗植付装置Wは、リンク機構17を介して走行機体Cの後部に昇降可能に連結されている。リンク機構17は昇降用油圧シリンダ16の伸縮動作により昇降動作する。
【0025】
走行機体Cの前部に、操舵車輪10及び後車輪11を走行駆動可能なエンジン13と、開閉式のボンネット12と、が備えられている。ボンネット12は後上がりに傾斜する傾斜面を有するとともにエンジン13を収納する。詳述はしないが、操舵車輪10と後車輪11との少なくとも一方に、エンジン13の動力を伝達するための変速機構として、公知のHST(静油圧式無段変速装置、不図示)が備えられている。エンジン13の動力が変速機構を介して操舵車輪10及び後車輪11に伝達され、変速後の動力が電動モータ駆動式の植付クラッチ(不図示)を介して苗植付装置Wに伝達される。
【0026】
苗植付装置Wに、4個の伝動ケース18と、8個の回転ケース19と、整地フロート21と、苗載せ台22と、が備えられている。回転ケース19は、各伝動ケース18の後部の左側部及び右側部に、夫々回転自在に支持されている。夫々の回転ケース19の両端部に、一対のロータリ式の植付アーム20が備えられている。整地フロート21は、圃場の田面を整地するものであり、苗植付装置Wに複数備えられている。苗載せ台22に、植付け用のマット状苗が載置される。
【0027】
苗植付装置Wは、苗載せ台22を左右に往復横送り駆動しながら、伝動ケース18から伝達される動力により各回転ケース19を回転駆動して、苗載せ台22の下部から各植付アーム20により交互に苗を取り出して圃場の田面に植付ける。詳述はしないが、苗植付装置Wは、複数の回転ケース19に備えられた植付アーム20によって苗を植付ける。
【0028】
〔予備苗搬送装置について〕
搭乗部23の上方に予備苗搬送装置30が備えられている。予備苗搬送装置30は、苗植付装置Wの前方(前上方)に位置する状態で走行機体Cに連結されている。予備苗搬送装置30は、苗植付装置Wの植付け条に亘る左右幅を有し、平面視において搭乗部23の搭乗座席23Aと重複する。予備苗搬送装置30に、前搬送部31と後搬送部32とが備えられ、前搬送部31は、後端部の機体横向きの揺動支点X1まわりに上下揺動可能に構成されている。
【0029】
後搬送部32は後側ほど下側に位置するように傾斜する。前搬送部31に搬送機構40が備えられ、搬送機構40は複数の苗を集めてマット状にした苗マットを、後方へ搬送し、後搬送部32へ受け渡す。本実施形態では、苗植付装置Wは、一度に8条分の苗を植付け可能であるため、苗植付装置Wの植付け条数に対応して8条分の搬送機構40が左右に並列配置されている。前搬送部31から後搬送部32へ受け渡された苗マットは、後搬送部32の上をスライドしながら下方の苗載せ台22へ案内される。つまり、搬送機構40は、搭乗部23の上方を経由して苗載せ台22へ搬送する。なお、前搬送部31及び後搬送部32は、苗載せ台22の往復横送り駆動と連動して左右に往復横送り駆動可能なように構成されている。
【0030】
走行機体Cに左右の側部フレーム24,24が備えられ、側部フレーム24,24は搭乗座席23Aの左右両側方において上向きに立設される。側部フレーム24,24に後支持フレーム部25が連結されている。後支持フレーム部25の上端部は、揺動支点X1に沿って機体横向きに延びる。後支持フレーム部25の上端部における左右両端部において、後支持フレーム部25は下向きに屈曲し、後支持フレーム部25の左右両端部における下端部の夫々が側部フレーム24,24に連結されている。そして、後支持フレーム部25の上端部に前搬送部31の後端部が揺動可能に連結される。また、後搬送部32の前端部は後支持フレーム部25に支持されている。
【0031】
ボンネット12の左右両側方に前支持フレーム部26,27が備えられている。前支持フレーム部26,27の夫々に、電動油圧シリンダ28と、リンク機構33と、が支持されている。リンク機構33は、前支持フレーム部26と、前搬送部31の前部における支持受け部34と、の夫々に枢支されている。
【0032】
リンク機構33に基端ブーム部33Aと先端アーム部33Bとが備えられ、基端ブーム部33Aと先端アーム部33Bとは互いに揺動可能に連結されている。基端ブーム部33Aの一端部が前支持フレーム部26に枢支され、基端ブーム部33Aの他端部が先端アーム部33Bに枢支されている。基端ブーム部33Aの長手方向中央部分が電動油圧シリンダ28の上端部と枢支されている。先端アーム部33Bの一端部が基端ブーム部33Aに枢支され、先端アーム部33Bの他端部が支持受け部34に枢支されている。
【0033】
電動油圧シリンダ28は前支持フレーム部27と基端ブーム部33Aとの夫々に枢支され、電動油圧シリンダ28の伸縮動作によって、基端ブーム部33Aが上下に揺動し、支持受け部34が昇降動作する。これにより、前搬送部31は揺動支点X1まわりに上下揺動可能に構成されている。換言すると、電動油圧シリンダ28は、搭乗部23の上方に設けられた機体横向きの揺動支点X1まわりに予備苗搬送装置30の前搬送部31を上下に揺動駆動する。
【0034】
電動油圧シリンダ28は、予備苗搬送装置30を下降姿勢と上昇姿勢とに姿勢変更可能なように構成されている。電動油圧シリンダ28が縮められると、リンク機構33の基端ブーム部33A及び先端アーム部33Bが折り畳まれ、前搬送部31は前下がりに傾斜する。この状態で、前搬送部31の前部における支持受け部34が、前支持フレーム部27の前部に設けられた載置フレーム部35に載置支持される。この状態が、予備苗搬送装置30の下降姿勢である。
【0035】
下降姿勢では、予備苗搬送装置30の前搬送部31が後上がりに傾斜する。そして、
図1の線L1で示されるように、下降姿勢では、予備苗搬送装置30の前端部が搭乗座席23Aの上端部よりも下側に位置する。また、下降姿勢では、予備苗搬送装置30の前端部がボンネット12の上端部よりも下側に位置する。予備苗搬送装置30の前端部は、下降姿勢となっている状態で、走行機体Cの前端部よりも前側に位置する。この状態で、作業者は、機体前方から予備苗搬送装置30に対して苗マットを供給できる。例えば機体前方に畦が位置する場合、作業者は、畦から予備苗搬送装置30に対して苗マットを供給できる。
【0036】
図2に示されるように、電動油圧シリンダ28が伸ばされると、リンク機構33の基端ブーム部33A及び先端アーム部33Bが前上方へ延ばされ、前搬送部31は前後に亘って水平方向に沿う。
【0037】
上昇姿勢では、予備苗搬送装置30の前搬送部31が下降姿勢よりも上向きに揺動して予備苗搬送装置30の前端部が搭乗部23に対して前上方に位置する。予備苗搬送装置30は、上昇姿勢となっている状態で、予備苗搬送装置30の前端部の高さと揺動支点X1の高さとが同じまたは略同じ状態となるように構成されている。この状態で、搭乗部23の前方は開放される。このため、搭乗部23に搭乗する搭乗者は、前搬送部31に前方の視界を遮られることなく、機体前方の圃場を視認できる。この状態が、予備苗搬送装置30の上昇姿勢である。
【0038】
〔予備苗搬送装置の搬送機構について〕
図4~
図7に示されるように、搬送機構40に、無端回動ベルト41と、複数のローラー43と、が備えられている。また、
図4~
図7に示されていないが、搬送機構40の搬送方向終端部に電動式のベルト搬送用モータ42(
図8参照)が備えられ、ベルト搬送用モータ42は揺動支点X1の下方領域に設けられている。搬送方向に沿って複数のローラー43が配置され、ローラー43の夫々は機体横向き軸芯回りに回動可能である。無端回動ベルト41は前端部のローラー43と後端部のローラー43とに亘って巻き掛けられ、後端部のローラー43がベルト搬送用モータ42によって回動駆動される。つまり、ベルト搬送用モータ42は無端回動ベルト41を回動駆動する。無端回動ベルト41は、前端部のローラー43と後端部のローラー43とに亘って、上側の搬送経路と、下側の戻り経路と、を巡回するように回動駆動される。
【0039】
無端回動ベルト41の上側の搬送経路における表面部分は苗マットの載置面部41sである。上側の搬送経路において、無端回動ベルト41の上に苗マットが載置され、苗マットは無端回動ベルト41の回動によって機体後方へ送り搬送される。即ち、搬送機構40に、苗マットを載置支持しながら搬送する載置面部41sが備えられ、苗マットが搬送機構40によって載置面部41s上を送り搬送される。
【0040】
無端回動ベルト41の横幅、即ち載置面部41sの横幅は、搬送方向視において苗マットの横幅よりも幅狭に構成されている。前搬送部31に摺接ガイド部31Gが備えられ、摺接ガイド部31Gは載置面部41sを挟んで左右に振り分け配置されている。苗マットのうち、載置面部41sよりも左右外側に位置する領域の根部は、後方へ送り搬送される際に摺接ガイド部31Gと摺接するが、摺接ガイド部31Gは平坦面状に形成されているため、苗マットの根部と摺接ガイド部31Gとで摩擦は殆ど生じない。摺接ガイド部31Gは、後述のロッド部53の位置する領域で切り欠かれ、後述の苗補給スイッチ45、ベルトスイッチ46、及び、4枚目検出スイッチ47の位置する領域で穿孔されている。
【0041】
無端回動ベルト41の載置面部41sは、搬送方向に沿って苗マットを4枚分載置可能な長さを有する。本実施形態では、4枚の苗マットを、前から順番に1枚目、2枚目、3枚目、4枚目と称する。つまり、予備苗搬送装置30は、搬送方向(機体前後方向)に沿って複数の苗マットを貯留可能なように構成されている。本実施形態では、8条分の搬送機構40が左右に並列配置されている。このため、予備苗搬送装置30は32枚分の苗マットを貯留可能なように構成されている。無端回動ベルト41の載置面部41sに、複数の係止部44として、第一係止部44Aと第二係止部44Bとが形成されている。
【0042】
第一係止部44Aは、搬送方向視において載置面部41sの左右両側部から突起し、苗マットの根部に食い込む。第二係止部44Bは、搬送方向視において載置面部41sの左右方向中央部から突起するとともに第一係止部44Aの大きさよりも大きく構成される。
第二係止部44Bは傾斜面部44cと立上り面部44dとを有する。傾斜面部44cは、搬送方向下手側ほど載置面部41sから離れる側に傾斜する。立上り面部44dは、載置面部41sと、傾斜面部44cの搬送方向後端部と、に亘って搬送方向と直交(または略直交)する方向に立ち上がる。つまり、第二係止部44Bは、傾斜面部44c及び立上り面部44dによって、機体側面視において三角形状に形成されている。これにより、前搬送部31が前下がりに傾斜する場合であっても、無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットが、載置面部41sの上を滑ることなく、第一係止部44Aと第二係止部44Bとによってしっかりと係止搬送される。このように、搬送機構40は、苗マットを後方へ搬送するように構成されている。
【0043】
〔予備苗搬送装置のすくい部について〕
予備苗搬送装置30の前端部は、走行機体Cの前端部よりも前側まで延ばされている。このため、走行機体Cの前方に畦が隣接する状態で田植機が圃場の畦際に停止し、予備苗搬送装置30が前下がりに傾斜すると、作業者は畦から予備苗搬送装置30の前端部に対して苗マットを補給できる。作業者が田植機に対して苗マットを補給する際、一般的にはすくい板で苗マットを苗箱からすくい取って苗載せ台22や予備苗台(不図示)に載置する。本実施形態では、予備苗搬送装置30が予備苗台として用いられる。本実施形態では、予備苗搬送装置30の前端部にすくい部50が備えられており、作業者は、一般的なすくい板を用いなくても苗マットを予備苗搬送装置30に供給できる。即ち、予備苗搬送装置30のうち、搬送機構40の搬送始端部の位置する部分にすくい部50が備えられ、すくい部50は苗箱に載置された状態の苗マットを苗箱からすくい取る。
【0044】
図4~
図7に示されるように、すくい部50は、搬送機構40の搬送始端部に対して搬送方向上手側に設けられている。すくい部50は、苗箱に載置された状態の苗マットを苗箱から分離する。すくい部50に、板状のすくい板部51と、底受け部52と、左右のロッド部53,53と、が備えられている。すくい板部51は搬送機構40の搬送始端部に対して前方に延びる。底受け部52はすくい板部51の下方に設けられている。
【0045】
左右のロッド部53,53の夫々は、搬送方向視において苗マットの横幅の範囲内に位置する状態で無端回動ベルト41の載置面部41sを挟んで左右に振り分け配置され、搬送機構40の搬送方向に沿って延びる。左右の摺接ガイド部31G,31Gは、左右のロッド部53,53の位置する領域でロッド部53の延び方向に沿って切り欠かれている。
左右のロッド部53,53の夫々の後端部は揺動支点X2となっており、ロッド部53,53の夫々は揺動支点X2まわりに上下揺動可能に構成されている。
【0046】
底受け部52は、すくい板部51の下方で苗箱の底部に下方から当接可能なように構成されている。すくい板部51と底受け部52とは、苗箱の四隅の立上り部分の高さに相当する距離だけ離間しており、すくい板部51と底受け部52との間に隙間部Sが形成されている。このため、隙間部Sに苗箱を挿入可能なように、すくい部50は構成されている。作業者は、苗箱に入れられた苗マットの端部を引っ張り上げ、苗マットの根部がすくい板部51に対して上側に位置する状態で、苗箱を隙間部Sに押し込む。これにより、苗マットと苗箱とがすくい板部51によって分離され、苗マットはすくい板部51の上をスライドしながら搬送機構40の搬送始端部へ案内される。このように、すくい部50は、苗箱が隙間部Sへ挿入されると、苗マットを苗箱から分離してすくい板部51の上をスライドさせ、搬送機構40の搬送始端部へ案内するように構成されている。
【0047】
搬送機構40の搬送始端部に、無端回動ベルト41の載置面部41sが存在する。つまり、作業者が苗箱を隙間部Sに押し込むと、苗マットは無端回動ベルト41の載置面部41sまでスライドする。苗箱の押し込み方向は、搬送機構40の搬送方向に対して下側に向いている。このため、隙間部Sに押し込まれた状態の苗箱は、搬送機構40の搬送方向に対して後下がりに傾斜する。
【0048】
上述の通り、無端回動ベルト41の載置面部41sに、第一係止部44Aが形成されている。このため、苗マットが無端回動ベルト41の載置面部41sまでスライドする途中で、苗マットの根部が第一係止部44Aに引っ掛かると、苗マットの根部が荒れてしまう。このような不都合を回避するため、苗マットは、無端回動ベルト41の載置面部41sまでスライドする際に、左右のロッド部53,53によって第一係止部44A及び第二係止部44Bに対して上側に持ち上げられる。このとき、左右のロッド部53,53は押し上げ部Pによって上方へ押し上げられる。押し上げ部Pは隙間部Sに設けられている。本実施形態では、押し上げ部Pとして、板バネ部材54と、当接部材55と、が備えられている。板バネ部材54は本発明の『第一当接部』に相当し、当接部材55は本発明の『第二当接部』に相当する。
【0049】
つまり、左右のロッド部53,53は、搬送方向視において載置面部41sよりも下側に位置する状態と、押し上げ部Pによって搬送方向視において載置面部41sよりも上側に押し上げられた状態で苗マットを載置面部41sへ案内する状態(以下、『押し上げ状態』と称する)と、に状態変更可能なように構成されている。この押し上げ状態は本発明の『第二状態』に相当する。また、ロッド部53が搬送方向視において載置面部41sよりも下側に位置する状態は、本発明の『第一状態』に相当する。
【0050】
板バネ部材54は、すくい板部51の前端部に支持され、すくい板部51から隙間部Sの奥側(苗箱の押し込まれる側)へ延びる。つまり、板バネ部材54は、すくい板部51の先端部から隙間部Sへ向けて延ばされ、搬送方向視においてすくい板部51の先端部から離れる側ほど下側に位置するように傾斜する。また、左右のロッド部53,53の前端部(搬送方向上手側端部)は隙間部Sまで延ばされ、当接部材55はロッド部53の前端部に溶接固定されている。つまり、当接部材55はロッド部53の前端部に支持される。
当接部材55は、板バネ部材54に対して機体後側で隣接する。当接部材55にスライド面部分が備えられ、スライド面部分は板バネ部材54に対して摺接する。本実施形態では、左右の板バネ部材54,54が、左右のロッド部53,53の夫々の当接部材55,55と当接する。
【0051】
図5~
図7に示されるように、苗箱が隙間部Sへ押し込まれると、板バネ部材54が苗箱の挿入先端部分によって押し上げられ、当接部材55と当接する。当接部材55は、板バネ部材54から押圧作用を受け、板バネ部材54と摺接しながら上方へ押し上げられる。これにより、ロッド部53が当接部材55と一体的に揺動支点X2まわりに上向きに揺動する。このように、押し上げ部Pは、隙間部Sに設けられるとともに苗箱の挿入に伴ってロッド部53を搬送方向視において上方へ押し上げる。換言すると、隙間部Sに挿入される苗箱が板バネ部材54を押圧すると板バネ部材54が当接部材55を押し上げる。これにより、押し上げ部Pは、ロッド部53を、搬送方向視において載置面部41sよりも下側に位置する状態から上述の押し上げ状態に変更させる。
【0052】
苗箱の左右幅が、搬送機構40の左右幅と、すくい部50の左右幅と、の少なくとも一方よりも幅広な場合が考えられる。このような場合、搬送機構40に対して左右両側に位置するロッド部53,53の一方の当接部材55が苗箱の左右の立上り部分と当接せず、一方のロッド部53が意図通りに押し上げられない虞が考えられる。このような不都合を回避するため、
図4に示されるように、当接部材55として、当接部材55Aと当接部材55Bとが備えられている。当接部材55Aは、一つのロッド部53の前端部に溶接固定されている。当接部材55Bは、二つのロッド部53,53の夫々の前端部に溶接固定されている。当接部材55Bは当接部材55Aよりも幅広に構成されている。
【0053】
当接部材55Bは、機体横方向において互いに隣接するすくい部50,50のうち、右側(左右一方側)のすくい部50における左側(左右他方側)のロッド部53と、左側(左右他方側)のすくい部50における右側(左右一方側)のロッド部53と、の夫々の前端部に溶接固定されている。このため、当接部材55Bに連結された二つのロッド部53,53は、一体的に揺動支点X2まわりに上下揺動する。当接部材55Bは、平面視において、機体横方向において互いに隣接するすくい部50,50のうち、右側(左右一方側)のすくい部50における左側(左右他方側)の板バネ部材54と、左側(左右他方側)のすくい部50における右側(左右一方側)の板バネ部材54と、の夫々と重複する。この構成によって、上述の幅広の苗箱であっても、供給対象の搬送機構40の左右に位置するロッド部53,53が、当該幅広の苗箱の左右の立上り部分と、当接部材55Bと、の当接によってしっかりと上側へ押し上げられる。なお、
図5~
図7に示される当接部材55は、
図4に示される当接部材55Aであるが、当接部材55Bであっても、ロッド部53及び当接部材55Bは、
図5~
図7に示される通りに揺動する。
【0054】
作業者が更に苗箱を隙間部Sに押し込むと、苗箱の挿入先端部分が板バネ部材54の延出端部よりも更に奥側に挿入される。このとき、苗箱の左右の立上り部分(四隅の立上り部分のうちの左右の部分)が当接部材55に押圧作用することによって、押し上げ部Pは、ロッド部53の押し上げ状態を保持するように構成されている。そして、苗マットは、すくい板部51及び左右のロッド部53,53をスライドしながら、無端回動ベルト41の載置面部41sまで移動する。このとき、ロッド部53は、押し上げ状態であるため、搬送方向視において複数の第一係止部44Aの上端部よりも上側に位置する。このため、苗マットの根部は第一係止部44Aに対して上側に位置する状態で、苗マットが無端回動ベルト41の載置面部41sの上方をスライド移動する。これにより、苗マットが無端回動ベルト41の載置面部41sまでスライド移動する途中で、苗マットの根部が第一係止部44Aに引っ掛からない。また、苗マットの左右中央領域が撓むが、苗マットの左右中央領域は、第二係止部44Bの傾斜面部44cと摺接する。傾斜面部44cは後ろ上がりに傾斜するため、苗マットは、傾斜面部44cに対して引っ掛かることなく、左右のロッド部53,53と、傾斜面部44cと、によって無端回動ベルト41の載置面部41sの上方を円滑にスライド移動する。また、苗マットが、左右のロッド部53,53と、第一係止部44Aよりも大きく構成された第二係止部44Bと、に支持されるため、苗マットが第一係止部44Aとの摺接を避けながら載置面部41sまで案内される。
【0055】
苗マットが苗箱から分離(または略分離)した状態で、作業者が苗箱を隙間部Sから引き抜くと、当接部材55は押圧作用を受けなくなるため、左右のロッド部53,53は揺動支点X2まわりに下向きに揺動する。そして左右のロッド部53,53は、搬送方向視において無端回動ベルト41の載置面部41sよりも下側に下がり、苗マットが無端回動ベルト41の載置面部41sに載置される。この構成によって、苗マットの根部が第一係止部44Aに引っ掛からずに、苗マットが無端回動ベルト41の載置面部41sまでスライド移動する。このとき、苗マットは、前後方向において無端回動ベルト41の載置面部41sとすくい板部51とに亘って位置するが、前後方向において苗マットの5割以上が載置面部41sに載置されていると、苗マットは第一係止部44A及び第二係止部44Bに対して十分係止される。そして、ベルト搬送用モータ42によって無端回動ベルト41が回動すると苗マットは後方へ送り搬送される。
【0056】
図5~
図7に示されるように、板バネ部材54の下部(延出端部の位置する側の部分)に折り返し面部54aが形成されている。また、当接部材55の下部に折り返し面部55cが形成されている。折り返し面部54aは板バネ部材54の延出端部の位置する側の部分において上向きに曲げ形成されている。また、折り返し面部55cは当接部材55の下部において上向きに曲げ形成されている。即ち、板バネ部材54の延出先端部と、当接部材55の下部と、の夫々は搬送機構40の搬送方向側へ向くように屈曲形成されている。
これにより、作業者が苗箱を隙間部Sから引き抜く際に、苗箱が、板バネ部材54の延出先端部または当接部材55の下部に引っ掛かる虞が軽減され、作業者は苗箱を隙間部Sから円滑に引き抜ける。
【0057】
なお、当接部材55Bの折り返し面部55cを挟んで左右に板バネ部材54,54が位置する。つまり、当接部材55Bの折り返し面部55cは、機体横方向において互いに隣接するすくい部50,50のうち、右側(左右一方側)のすくい部50における左側(左右他方側)の板バネ部材54と、左側(左右他方側)のすくい部50における右側(左右一方側)の板バネ部材54と、の間に位置する。
【0058】
〔搬送装置の搬送制御について〕
すくい部50から苗マットが予備苗搬送装置30に供給されると、作業者が苗マットを予備苗搬送装置30に続けて供給できるように、搬送機構40は、無端回動ベルト41をベルト搬送用モータ42で回動することによって、苗マットを後方へ送り搬送する。
【0059】
図3及び
図4に示されるように、搬送機構40の搬送始端部における無端回動ベルト41の側方に、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46とが前後に並んで備えられている。苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との離間距離は、無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットの前後方向の長さよりも短い。換言すると、苗補給スイッチ45及びベルトスイッチ46は、予備苗搬送装置30の1枚目の領域において前後に配置されている。このため、すくい部50から苗マットが予備苗搬送装置30の前部に供給されると、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との両方が苗マットの側部に踏まれる。左右の摺接ガイド部31G,31Gの一方が、苗補給スイッチ45及びベルトスイッチ46に対応して穿孔されている。苗補給スイッチ45及びベルトスイッチ46は、搬送機構40の搬送方向に沿って並ぶ状態、かつ、苗マットの搬送方向の長さよりも短い距離で互いに離間する状態で備えられている。苗補給スイッチ45はベルトスイッチ46に対して前側に位置する。苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との夫々は、いわゆるリミットスイッチである。苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との夫々の上部に三角形状の部材が備えられ、当該三角形状の部材が摺接ガイド部31Gの上面部分よりも上側に突出するように付勢される。無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットの側部が苗補給スイッチ45を踏むと、苗補給スイッチ45における当該三角形状の部材が摺接ガイド部31Gの上面部分よりも下側にスライドし、苗補給スイッチ45はON状態となる。また、無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットの側部がベルトスイッチ46を踏むと、ベルトスイッチ46における当該三角形状の部材が摺接ガイド部31Gの上面部分よりも下側にスライドし、ベルトスイッチ46はON状態となる。苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との夫々は、踏まれるとON状態となり、踏まれなければOFF状態となる。苗補給スイッチ45は、OFF状態からON状態に切換わることによって、一枚の苗マットが苗箱からすくい部50を介して予備苗搬送装置30の前部にしっかりと載り移ったことを検知する。また、ベルトスイッチ46は、ON状態からOFF状態に切換わることによって、一枚の苗マットが予備苗搬送装置30の前部から苗マット一枚分だけ後方へ搬送されたことを検知する。このように、苗補給スイッチ45及びベルトスイッチ46は、搬送機構40の前部において苗マットを検出する。苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との夫々の状態は、制御部60(
図8参照)へ送られる。
【0060】
搬送機構40の搬送終端部における無端回動ベルト41の側方に、4枚目検出スイッチ47が備えられている。左右の摺接ガイド部31G,31Gの一方が、4枚目検出スイッチ47に対応して穿孔されている。4枚目検出スイッチ47もリミットスイッチであって、4枚目検出スイッチ47の上部に三角形状の部材が備えられ、当該三角形状の部材が摺接ガイド部31Gの上面部分よりも上側に突出するように付勢される。無端回動ベルト41によって搬送機構40の搬送終端部まで搬送された苗マットの側部が4枚目検出スイッチ47を踏むと、当該三角形状の部材が摺接ガイド部31Gの上面部分よりも下側にスライドし、4枚目検出スイッチ47はON状態となる。つまり、4枚目検出スイッチ47は、踏まれるとON状態となり、踏まれなければOFF状態となる。この構成によって、4枚目検出スイッチ47は、搬送機構40の後端部において苗マットを検出する。4枚目検出スイッチ47の状態は、制御部60(
図8参照)へ送られる。
【0061】
図8に示されるように、制御部60は、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46と4枚目検出スイッチ47との検出結果に基づいて、ベルト搬送用モータ42を駆動制御し、すくい部50から搬送機構40の搬送始端部に供給された苗マットを自動的に送り搬送できる。
図8に、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46と4枚目検出スイッチ47とベルト搬送用モータ42とが一つずつ示されているが、8条分の搬送機構40に応じて、8組の苗補給スイッチ45、ベルトスイッチ46、4枚目検出スイッチ47、及び、ベルト搬送用モータ42が制御部60と接続されている。制御部60は、複数の搬送機構40の夫々におけるベルト搬送用モータ42に対して各別に駆動制御するように構成されている。苗載せ台22に載置された苗マットの量は植付け条ごとにバラつく場合が多いが、この構成であれば、作業者は、例えば苗載せ台22において補給の必要な植付け条のみに対して苗補給を行える。これにより、苗載せ台22において補給の不要な植付け条に対して不必要な苗補給が行われる虞が回避され、苗載せ台22において補給の必要な植付け条に対して適切な苗補給が行われる。
【0062】
上述したように、搬送機構40の搬送終端部まで送り搬送された苗マットは、更に後方に送り搬送されると、前搬送部31の後端部から後搬送部32の上をスライドしながら下方の苗載せ台22へ送られる。しかし、苗植付装置Wは、一般的なものと同様に左右にロールする。このため、苗載せ台22に対して左右一方に偏って苗マットが供給されると、苗植付装置Wが全体的に左右一方に傾き、後搬送部32と苗載せ台22とが左右に位置ずれし、苗マットが苗載せ台22に正常に案内されなくなる虞がある。このような不都合を回避するため、前搬送部31の後端部から苗マットが左右均一に苗載せ台22へ送られる構成が望ましい。
【0063】
図9のフローチャートに示されるように、制御部60は、最初に苗補給スイッチ45がOFF状態からON状態に切換ったかどうかを判定する(ステップ#01)。苗補給スイッチ45がOFF状態であれば(ステップ#01:No)、ベルト搬送用モータ42が回動駆動されずにフローチャートが終了する。苗補給スイッチ45がOFF状態からON状態に切換っていれば(ステップ#01:Yes)、制御部60は、4枚目検出スイッチ47がOFF状態であるかどうかを判定する(ステップ#02)。4枚目検出スイッチ47がON状態であれば(ステップ#02:No)、ベルト搬送用モータ42が回動駆動されずにフローチャートが終了する。4枚目検出スイッチ47がOFF状態であれば(ステップ#02:Yes)、制御部60は、ベルト搬送用モータ42を所定の回転量だけ駆動させる(ステップ#03)。本実施形態において所定の回転量は、苗マット一枚分である。
つまり、制御部60は、苗補給スイッチ45がOFF状態からON状態に切換わり、かつ、4枚目検出スイッチ47がOFF状態である場合に、ベルト搬送用モータ42で無端回動ベルト41を苗マット一枚分だけ回動駆動させる。
【0064】
本実施形態では、『苗マット一枚分』とは、無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットの搬送方向の長さよりも予め設定された長さだけ余分に長く設定された距離である。このため、無端回動ベルト41の載置面部41sに前後に並んで載置される複数の苗マットは、互いに干渉せずに、前後方向に所定の距離だけ離間した状態となる。
苗マット一枚分の長さは、例えば、苗マットの前後方向の長さよりも、ベルトスイッチ46の前後方向の寸法分だけ余分に設定される。
【0065】
無端回動ベルト41が苗マット一枚分だけ回動駆動し終えると、制御部60は、ベルトスイッチ46がON状態からOFF状態に切換ったかどうかを判定する(ステップ#04)。無端回動ベルト41が苗マット一枚分だけ回動駆動し終えた状態で、ベルトスイッチ46がON状態のままである場合が考えられる。この場合、苗マットが搬送途中で不意に引っ掛かって意図通りに搬送されず、予備苗搬送装置30の前部に留まっている可能性が考えられる。また、苗マットが意図通りに搬送された場合であっても、苗マットの搬送中に、更に新たな苗マットが予備苗搬送装置30の前部に載置され、ベルトスイッチ46が当該新たな苗マットに踏まれている可能性が考えられる。このため、ベルトスイッチ46がON状態のままである場合(ステップ#04:No)、制御部60はエラー処理を行ってアラームを出力する(アラーム報知)。これにより、作業者は予備苗搬送装置30の異常に気付いて予備苗搬送装置30における苗マットの整理作業を行える。ベルトスイッチ46がON状態からOFF状態に切換わると(ステップ#04:Yes)、フローチャートが終了する。
【0066】
すくい部50から苗マットが予備苗搬送装置30に供給される度に、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との両方が苗マットの側部に踏まれてON状態となって、無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットが、苗マット一枚分だけ後方に送り搬送される。苗マットが後方へ送り搬送された後、搬送機構40の搬送始端部に、苗マット一枚分の供給スペースが確保される。このとき、苗補給スイッチ45が苗マットに踏まれなくなってOFF状態に戻り、ベルトスイッチ46が苗マットに踏まれなくなってOFF状態に戻る。
【0067】
図9のエンド処理では、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との両方がOFF状態に戻っていることをチェックする処理があっても良い。このチェック処理で、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との少なくとも一方がON状態になっていると、制御部60はエラー処理を行ってアラームを出力する構成であっても良い。そして制御部60は、アラームがリセットされない限り、ベルト搬送用モータ42を駆動制御しない構成であっても良い。また、ステップ#01で、苗補給スイッチ45がOFF状態からON状態に切換ったかどうかを判定する処理に加えて、ベルトスイッチ46がOFF状態からON状態に切換ったかどうかを判定する処理があっても良い。この場合、ベルトスイッチ46がON状態に切り換わっていなければ、制御部60はベルトスイッチ46の異常と判定し、エラー処理を行ってアラームを出力する構成であっても良い。この場合も、制御部60は、アラームがリセットされない限り、ベルト搬送用モータ42を駆動制御しない構成であっても良い。
【0068】
搬送機構40の搬送終端部まで送り搬送された苗マットが、4枚目検出スイッチ47を踏み、4枚目検出スイッチ47がON状態となる。このとき、一つの無端回動ベルト41の載置面部41sに3枚の苗マットが前後に並んで載置されている。そして、作業者が4枚目の苗マットをすくい部50から予備苗搬送装置30に供給しても、4枚目検出スイッチ47がON状態であるため、
図9のステップ#02でNoの判定となり、無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットは送り搬送されない。このため、作業者が気付かないまま、苗載せ台22に対して左右一方に偏って苗マットが供給される虞が回避される。
【0069】
また、本実施形態の構成であれば、複数の苗マットが、互いに干渉せずに前後方向に所定の距離だけ離間する。このため、無端回動ベルト41が苗マット一枚分だけ回動駆動する際に、ベルトスイッチ46と4枚目検出スイッチ47との夫々は、必ず一旦OFF状態に切換わる。これにより、ベルトスイッチ46や4枚目検出スイッチ47が前後に並ぶ2つの苗マットによって連続的に踏まれ続ける虞が無く、ベルト搬送用モータ42が誤動作や誤検知によって余分に回動駆動し続ける虞が回避される。
【0070】
このように、制御部60は、苗補給スイッチ45が苗マットを検出し、かつ、4枚目検出スイッチ47が苗マットを検出しない場合に、苗マットが一枚分の距離だけ後方へ送り搬送されるようにベルト搬送用モータ42を自動的に回動駆動させるように構成されている。また、制御部60は、4枚目検出スイッチ47が苗マットを検出する場合に、苗補給スイッチ45及びベルトスイッチ46の検出状態にかかわらずベルト搬送用モータ42を自動的に回動駆動させないように構成されている。
【0071】
また、制御部60は、ベルト搬送用モータ42を正転制御状態と逆転制御状態とに切換え可能なように構成されている。正転制御状態で制御部60は、苗マットを苗載せ台22の位置する側へ送り搬送するようにベルト搬送用モータ42を駆動制御する。また、逆転制御状態で制御部60は、苗マットを苗載せ台22の位置する側と反対側へ送り搬送するようにベルト搬送用モータ42を駆動制御する。この構成であれば、田植機の植付け作業完了後においてマット苗が余った場合に、作業者は、ベルト搬送用モータ42の回転方向を切換えることによって、苗マットを容易に回収できる。
【0072】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0073】
(1)上述の実施形態において、搬送機構40に無端回動体として無端回動ベルト41が備えられているが、無端回動ベルト41が備えられない構成であっても良い。例えば搬送機構40に、無端回動体として無端回動チェーンが備えられ、無端回動チェーンにバケットが取り付けられる構成であっても良いし、無端回動チェーンに係止搬送用のプレートが取り付けられる構成であっても良い。つまり、苗マットを苗載せ台22へ搬送する搬送機構40を有する予備苗搬送装置30が備えられると良い。あるいは、搬送機構40はローラーコンベアであっても良い。
【0074】
(2)上述の実施形態では、すくい板部51は搬送機構40の搬送始端部に対して前方に延びるが、この実施形態に限定されない。例えば、左右端部の搬送機構40に対応して設けられるすくい板部51は、搬送機構40の搬送始端部に対して機体横外方に延びる構成であっても良い。つまり、すくい部50に、搬送機構40の搬送始端部に対して外方へ延びる板状のすくい板部51が備えられる構成であっても良い。
【0075】
(3)上述の実施形態では、押し上げ部Pとして、板バネ部材54と、当接部材55と、が備えられているが、押し上げ部Pは当接部材55のみで構成されても良い。
【0076】
(4)上述の実施形態では、ロッド部53,53が載置面部41sを挟んで左右に振り分け配置されているが、この実施形態に限定されない。例えば、一つの搬送機構40に二つの無端回動ベルト41,41が横並び状態で備えられ、無端回動ベルト41,41の間に一つのロッド部53が備えられる構成であっても良い。また、一つの搬送機構40に二つの無端回動ベルト41,41が横並び状態で備えられ、二つの無端回動ベルト41,41の左右両側部と、無端回動ベルト41,41の間と、に三個のロッド部53,53,53が備えられる構成であっても良い。
【0077】
(5)載置面部41sを挟んで左右に振り分け配置されているロッド部53,53は、揺動支点X2の位置する部分で、機体横向きの連結部材を介して連結される構成であっても良い。これにより、左右のロッド部53,53が揺動支点X2まわりに一体的に揺動する。
【0078】
(6)上述の実施形態では、ロッド部53が、後端部の揺動支点X2まわりに揺動するが、ロッド部53は揺動支点X2まわりに揺動せずに、単に上下にスライドする構成であっても良い。また、ロッド部53が前端部の揺動支点まわりに揺動する構成であっても良い。
【0079】
(7)上述の実施形態では、第二当接部としての当接部材55(55A,55B)はロッド部53の前端部(搬送方向上手側端部)に溶接固定されているが、この実施形態に限定されない。例えば、当接部材55(55A,55B)はロッド部53の前端部にボルト連結される構成であっても良い。
【0080】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。
また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、複数の苗を集めてマット状にした苗マットを苗植付装置の苗載せ台へ搬送する予備苗搬送装置が備えられた田植機に適用できる。
【符号の説明】
【0082】
22 :苗載せ台
30 :予備苗搬送装置
40 :搬送機構
41 :載置面部
50 :すくい部
51 :すくい板部
52 :底受け部
53 :ロッド部
54 :板バネ部材(第一当接部、押し上げ部)
55 :当接部材(第二当接部、押し上げ部)
55A :当接部材(第二当接部、押し上げ部)
55B :当接部材(第二当接部、押し上げ部)
C :走行機体
P :押し上げ部
S :隙間部
W :苗植付装置