(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】床版の架設構造及び床版の架設方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20240607BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/12
(21)【出願番号】P 2021092243
(22)【出願日】2021-06-01
【審査請求日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2020095537
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】山中 宏之
(72)【発明者】
【氏名】古市 耕輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 史
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 一弘
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 克哉
(72)【発明者】
【氏名】一宮 利通
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-197999(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109371836(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0109325(US,A1)
【文献】特開2019-206902(JP,A)
【文献】特開2017-115573(JP,A)
【文献】特開2015-025299(JP,A)
【文献】特開2019-044444(JP,A)
【文献】実開平05-054610(JP,U)
【文献】特開2006-265976(JP,A)
【文献】特開2006-307561(JP,A)
【文献】特開2020-007788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1橋桁の上に設置された第1床版と、橋軸方向に交差する方向に前記第1橋桁から離隔している第2橋桁の上に設置された第2床版とを連結する床版の架設構造であって、
前記第1床版の第1下面と、前記第2床版の第2下面とに跨って当接する下側当接部材と、
前記第1床版の第1上面と、前記第2床版の第2上面とに跨って当接する上側当接部材と、
前記下側当接部材と前記上側当接部材とを締結する締結部材と、
前記第1床版と前記第2床版とを連通し、前記第1床版及び前記第2床版に緊張力を付与する緊張材が挿通される緊張材挿通孔部と、
を備えた床版の架設構造。
【請求項2】
前記第1床版は、前記第1下面から前記第1上面へと貫通する第1孔部を有し、
前記締結部材は、前記第1孔部の中に挿通されつつ前記下側当接部材と前記上側当接部材とに跨って延在している、請求項1に記載の床版の架設構造。
【請求項3】
前記第1床版は、前記橋軸方向に面した第1橋軸方向面を有し、
前記締結部材は、前記第1橋軸方向面の外側で前記下側当接部材と前記上側当接部材とに跨って延在している、請求項1に記載の床版の架設構造。
【請求項4】
前記第1床版は、前記第2橋桁の側に対向する第1対向面を有し、
前記第2床版は、前記第1橋桁の側に対向する第2対向面を有し、
前記第1対向面と前記第2対向面とは、間隙を隔てて互いに対向し、
前記締結部材は、前記間隙に配置され、前記下側当接部材と前記上側当接部材とに跨って延在している、請求項1に記載の床版の架設構造。
【請求項5】
前記下側当接部材又は前記上側当接部材は、前記第1床版と前記第2床版とに跨って凹んだ凹部を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の床版の架設構造。
【請求項6】
第1橋桁の上に設置された第1床版と、橋軸方向に交差する方向に前記第1橋桁から離隔している第2橋桁の上に設置された第2床版とを連結する床版の架設方法であって、
前記第1橋桁の上に前記第1床版を設置する第1床版設置工程と、
前記第2橋桁の上に前記第2床版を設置する第2床版設置工程と、
前記第1床版設置工程で設置された前記第1床版の第1下面と、前記第2床版設置工程で設置された前記第2床版の第2下面とに跨って下側当接部材を当接させる下側当接工程と、
前記第1床版設置工程で設置された前記第1床版の第1上面と、前記第2床版設置工程で設置された前記第2床版の第2上面とに跨って上側当接部材を当接させる上側当接工程と、
前記下側当接工程で前記第1下面と前記第2下面とに当接させられた前記下側当接部材と、前記上側当接工程で前記第1上面と前記第2上面とに当接させられた前記上側当接部材とを締結部材により締結する締結工程と、
前記締結工程の後に、前記第1床版と前記第2床版とを連通する緊張材挿通孔部に緊張材を挿通し、前記緊張材により前記第1床版及び前記第2床版に緊張力を付与する緊張工程と、
前記緊張工程の後に、前記下側当接部材、前記上側当接部材及び前記締結部材を撤去する撤去工程と、
を備えた床版の架設方法。
【請求項7】
前記第1床版設置工程では、前記第1橋桁の上に前記橋軸方向に沿って複数の前記第1床版を互いに間隔を隔てて設置し、
前記第1床版設置工程で設置された複数の前記第1床版の前記間隔に間詰材を充填する間詰工程をさらに備え、
前記第2床版設置工程では、前記第1床版設置工程で設置されたいずれかの前記第1床版に隣接して前記第2床版を設置し、
前記下側当接工程では、前記第1床版設置工程で設置されたいずれかの前記第1床版の第1下面と、前記第2床版設置工程で設置された前記第2床版の第2下面とに跨って下側当接部材を当接させ、
前記上側当接工程では、前記第1床版設置工程で設置されたいずれかの前記第1床版の第1上面と、前記第2床版設置工程で設置された前記第2床版の第2上面とに跨って上側当接部材を当接させ、
前記緊張工程では、前記第1床版設置工程で設置されたいずれかの前記第1床版と、前記第2床版設置工程で設置された前記第2床版とを連通する前記緊張材挿通孔部に緊張材を挿通し、前記第1床版及び前記第2床版に緊張力を付与する、請求項6に記載の床版の架設方法。
【請求項8】
前記締結工程では、前記第1床版の前記第1下面から前記第1上面へと貫通する第1孔部の中に挿通されつつ前記下側当接部材と前記上側当接部材とに跨って延在している前記締結部材により、前記下側当接部材と前記上側当接部材とを締結する、請求項6又は7に記載の床版の架設方法。
【請求項9】
前記締結工程では、前記第1床版の前記橋軸方向に面した第1橋軸方向面の外側で前記下側当接部材と前記上側当接部材とに跨って延在している前記締結部材により、前記下側当接部材と前記上側当接部材とを締結する、請求項6又は7に記載の床版の架設方法。
【請求項10】
前記締結工程では、前記第1床版の前記第2橋桁の側に対向する第1対向面と前記第2床版の前記第1橋桁の側に対向する第2対向面との間の間隙に配置され、前記下側当接部材と前記上側当接部材とに跨って延在している前記締結部材により、前記下側当接部材と前記上側当接部材とを締結する、請求項6又は7に記載の床版の架設方法。
【請求項11】
前記下側当接部材又は前記上側当接部材は、前記第1床版と前記第2床版とに跨って凹んだ凹部を有する、請求項6~10のいずれか1項に記載の床版の架設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版の架設構造及び床版の架設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
拡幅工事及び補修工事等において、橋桁の上に設置された床版と、橋軸方向に交差する方向に当該橋桁から離隔しているもう一つの橋桁の上に設置されたもう一つの床版とを連結する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、橋軸直角方向に隣接する複数の橋桁の上に設置された既設の床版を橋軸直角方向に一次施工部と二次施工部とに分割して床版の取り換えを行う技術が開示されている。
【0003】
特許文献1の技術では、二次施工部の既存の床版上が道路として供用されつつ、一次施工部の既設の床版が除去され、その除去された一次施工部にプレキャストコンクリートにより形成された新たな床版が架設される。一次施工部の新たな床版上が道路として供用されつつ、二次施工部の既設の床版が除去され、その除去されたニ次施工部にプレキャストコンクリートにより形成された新たな床版が架設される。一次施工部の新たな床版と二次施工部の新たな床版とを連通する貫通孔に緊張材が挿通される。当該緊張材が緊張されることにより、一次施工部の床版と二次施工部の床版とに緊張力が付与され、一次施工部の床版と二次施工部の床版とが一体に接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような技術では、それぞれ別の橋桁の上に設置され、橋軸直角方向に隣接する2つの床版に緊張材により緊張力が付与された後には、一次施工部の床版と二次施工部の床版とが一体に接合される。しかし、2つの床版に緊張材により緊張力が付与される前には、一方の床版上が道路として供用され、一方の床版にのみ車両の通行による荷重が加わるにも関わらず、2つの床版は連結されていない。
【0006】
そのため、2つの床版に緊張材により緊張力が付与されて、2つの床版が一体に接合されるまでの間に、車両の通行による荷重により一方の床版が動き、繰り返しの変動する荷重による振動により2つの床版間に相対変位が生じ、施工の精度が確保できない可能性がある。また、2つの床版に緊張材により緊張力が付与されて、2つの床版が一体に接合されるまでの間に、車両の通行による荷重により一方の床版が動き、繰り返しの変動する荷重による振動により2つの床版間に相対変位が生じ、それぞれの互いに対向する面に損傷が生じる可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、緊張材により緊張力が付与される前に床版を連結できる床版の架設構造及び床版の架設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1橋桁の上に設置された第1床版と、橋軸方向に交差する方向に第1橋桁から離隔している第2橋桁の上に設置された第2床版とを連結する床版の架設構造であって、第1床版の第1下面と、第2床版の第2下面とに跨って当接する下側当接部材と、第1床版の第1上面と、第2床版の第2上面とに跨って当接する上側当接部材と、下側当接部材と上側当接部材とを締結する締結部材と、第1床版と第2床版とを連通し、第1床版及び第2床版に緊張力を付与する緊張材が挿通される緊張材挿通孔部とを備えた床版の架設構造である。
【0009】
この構成によれば、第1橋桁の上に設置された第1床版と、橋軸方向に交差する方向に第1橋桁から離隔している第2橋桁の上に設置された第2床版とを連結する床版の架設構造において、下側当接部材が第1床版の第1下面と第2床版の第2下面とに跨って当接し、上側当接部材が第1床版の第1上面と第2床版の第2上面とに跨って当接し、締結部材が下側当接部材と上側当接部材とを締結するため、第1床版と第2床版とを連通する緊張材挿通孔部に緊張材が挿通され、緊張材により緊張力が付与される前に第1床版と第2床版とを連結できる。
【0010】
この場合、第1床版は、第1下面から第1上面へと貫通する第1孔部を有し、締結部材は、第1孔部の中に挿通されつつ下側当接部材と上側当接部材とに跨って延在していてもよい。
【0011】
この構成によれば、締結部材は、第1床版の第1下面から第1上面へと貫通する第1孔部の中に挿通されつつ下側当接部材と上側当接部材とに跨って延在しているため、第1橋桁の上に橋軸方向に沿って複数の第1床版を互いに間隔を隔てて設置し、複数の第1床版の間隔に間詰材を充填する場合に、締結部材が間詰材の充填の障害になり難い。
【0012】
また、第1床版は、橋軸方向に面した第1橋軸方向面を有し、締結部材は、第1橋軸方向面の外側で下側当接部材と上側当接部材とに跨って延在していてもよい。
【0013】
この構成によれば、締結部材は、第1床版の橋軸方向に面した第1橋軸方向面の外側で下側当接部材と上側当接部材とに跨って延在しているため、締結部材の設置及び撤去が容易である。また、第1床版には第1下面から第1上面へと貫通する孔部が設けられていなくても、締結部材を設置及び撤去することができるので、締結部材の設置及び撤去が更に容易となる。
【0014】
また、第1床版は、第2橋桁の側に対向する第1対向面を有し、第2床版は、第1橋桁の側に対向する第2対向面を有し、第1対向面と第2対向面とは、間隙を隔てて互いに対向し、締結部材は間隙に配置され、下側当接部材と上側当接部材とに跨って延在していてもよい。
【0015】
この構成によれば、第1床版は、第2橋桁の側に対向する第1対向面を有し、第2床版は、第1橋桁の側に対向する第2対向面を有し、第1対向面と第2対向面とは、間隙を隔てて互いに対向し、締結部材は間隙に配置され、下側当接部材と上側当接部材とに跨って延在しているため、締結部材の設置及び撤去が容易である。また、第1床版には第1下面から第1上面へと貫通する孔部が設けられていなくても、締結部材を設置及び撤去することができるので、締結部材の設置及び撤去が更に容易となる。
【0016】
また、下側当接部材又は上側当接部材は、第1床版と第2床版とに跨って凹んだ凹部を有していてもよい。
【0017】
この構成によれば、下側当接部材又は上側当接部材は、第1床版と第2床版とに跨って凹んだ凹部を有しているため、振動及び施工誤差等による第1床版と第2床版との間の角度の変動に対応し易い。
【0018】
また、本発明は、第1橋桁の上に設置された第1床版と、橋軸方向に交差する方向に第1橋桁から離隔している第2橋桁の上に設置された第2床版とを連結する床版の架設方法であって、第1橋桁の上に第1床版を設置する第1床版設置工程と、第2橋桁の上に第2床版を設置する第2床版設置工程と、第1床版設置工程で設置された第1床版の第1下面と、第2床版設置工程で設置された第2床版の第2下面とに跨って下側当接部材を当接させる下側当接工程と、第1床版設置工程で設置された第1床版の第1上面と、第2床版設置工程で設置された第2床版の第2上面とに跨って上側当接部材を当接させる上側当接工程と、下側当接工程で第1下面と第2下面とに跨って当接させられた下側当接部材と、上側当接工程で第1上面と第2上面とに跨って当接させられた上側当接部材とを締結部材により締結する締結工程と、締結工程の後に、第1床版と第2床版とを連通する緊張材挿通孔部に緊張材を挿通し、緊張材により第1床版及び第2床版に緊張力を付与する緊張工程と、緊張工程の後に、下側当接部材、上側当接部材及び締結部材を撤去する撤去工程とを備えた床版の架設方法である。
【0019】
この構成によれば、緊張工程の後には、撤去工程により下側当接部材、上側当接部材及び締結部材が撤去されるため、緊張工程の後に不要となった下側当接部材、上側当接部材及び締結部材がその後の施工の障害になることを防止できる。
【0020】
この場合、第1床版設置工程では、第1橋桁の上に橋軸方向に沿って複数の第1床版を互いに間隔を隔てて設置し、第1床版設置工程で設置された複数の第1床版の間隔に間詰材を充填する間詰工程をさらに備え、第2床版設置工程では、第1床版設置工程で設置されたいずれかの第1床版に隣接して第2床版を設置し、下側当接工程では、第1床版設置工程で設置されたいずれかの第1床版の第1下面と、第2床版設置工程で設置された第2床版の第2下面とに跨って下側当接部材を当接させ、上側当接工程では、第1床版設置工程で設置されたいずれかの第1床版の第1上面と、第2床版設置工程で設置された第2床版の第2上面とに跨って上側当接部材を当接させ、緊張工程では、第1床版設置工程で設置されたいずれかの第1床版と、第2床版設置工程で設置された第2床版とを連通する緊張材挿通孔部に緊張材を挿通し、第1床版及び第2床版に緊張力を付与することが好適である。
【0021】
この構成によれば、第1床版設置工程では、第1橋桁の上に橋軸方向に沿って複数の第1床版が互いに間隔を隔てて設置され、間詰工程により第1床版設置工程で設置された複数の第1床版の間隔に間詰材が充填されるため、第1床版上を道路として供用することができる。また、第2床版設置工程では、第1床版設置工程で設置されたいずれかの第1床版に隣接して第2床版が設置され、下側当接工程、上側当接工程及び締結工程によって、緊張工程で緊張材により緊張力が付与される前に互いに隣接する第1床版と第2床版とを連結できる。
【0022】
また、締結工程では、第1床版の第1下面から第1上面へと貫通する第1孔部の中に挿通されつつ下側当接部材と上側当接部材とに跨って延在している締結部材により、下側当接部材と上側当接部材とを締結してもよい。
【0023】
また、締結工程では、第1床版の橋軸方向に面した第1橋軸方向面の外側で下側当接部材と上側当接部材とに跨って延在している締結部材により、下側当接部材と上側当接部材とを締結してもよい。
【0024】
また、締結工程では、第1床版の第2橋桁の側に対向する第1対向面と第2床版の第1橋桁の側に対向する第2対向面との間の間隙に配置され、下側当接部材と上側当接部材とに跨って延在している締結部材により、下側当接部材と上側当接部材とを締結してもよい。
【0025】
また、下側当接部材又は上側当接部材は、第1床版と第2床版とに跨って凹んだ凹部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の床版の架設構造及び床版の架設方法によれば、緊張材により緊張力が付与される前に床版を連結できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法の対象となる道路橋の平面図であり、(B)は(A)のα線による縦断面図である。
【
図2】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法における第2橋桁の上の既設床版上を道路として供用しつつ第1橋桁の上の既設床版を切断する工程を示す平面図であり、(B)は(A)のβ線による縦断面図である。
【
図3】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法における第1橋桁の上の既設床版を撤去する工程を示す平面図であり、(B)は(A)のγ線による縦断面図である。
【
図4】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法における第1床版設置工程を示す平面図であり、(B)は(A)のδ線による縦断面図であり、(C)は(A)及び(B)の状態における第1実施形態に係る床版の架設治具を示す斜視図である。
【
図5】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法における間詰工程を示す平面図であり、(B)は(A)のδ線による縦断面図であるε線による縦断面図である。
【
図6】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法における第1橋桁の上の既設床版上を道路として供用しつつ第2橋桁の上の既設床版を切断する工程を示す平面図であり、(B)は(A)のζ線による縦断面図である。
【
図7】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法における第2橋桁の上の既設床版を撤去する工程を示す平面図であり、(B)は(A)のη線による縦断面図であり、(C)は(A)及び(B)の状態における第1実施形態に係る床版の架設治具を示す斜視図である。
【
図8】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法における第2床版設置工程及び下側当接工程を示す平面図であり、(B)は(A)のθ線による縦断面図である。
【
図9】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法における上側当接工程及び締結工程並びに第1実施形態に係る床版の架設構造を示す平面図であり、(B)は(A)のι線による縦断面図であり、(C)は(A)及び(B)の状態における第1実施形態に係る床版の架設治具を示す斜視図である。
【
図10】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法における緊張工程を示す平面図であり、(B)は(A)のκ線による縦断面図である。
【
図11】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法における撤去工程を示す平面図であり、(B)は(A)のλ線による縦断面図である。
【
図12】(A)は第1実施形態に係る床版の架設方法における床版の取り換えが完了した状態をしめす平面図であり、(B)は(A)のμ線による縦断面図である。
【
図13】(A)は第2実施形態に係る床版の架設方法における第1床版設置工程を示す平面図であり、(B)は(A)のν線による縦断面図であり、(C)は(A)及び(B)の状態における第2実施形態に係る床版の架設治具を示す斜視図である。
【
図14】(A)は第2実施形態に係る床版の架設方法における第2橋桁の上の既設床版を撤去する工程を示す平面図であり、(B)は(A)のξ線による縦断面図であり、(C)は(A)及び(B)の状態における第2実施形態に係る床版の架設治具を示す斜視図である。
【
図15】(A)は第2実施形態に係る床版の架設方法における上側当接工程及び締結工程並びに第2実施形態に係る床版の架設構造を示す平面図であり、(B)は(A)のο線による縦断面図であり、(C)は(A)及び(B)の状態における第2実施形態に係る床版の架設治具を示す斜視図である。
【
図16】(A)は第3実施形態に係る床版の架設構造を示す縦断面図であり、(B)は第4実施形態に係る床版の架設構造を示す縦断面図であり、(C)は第5実施形態に係る床版の架設構造を示す斜視図である。
【
図17】(A)は第6実施形態に係る床版の架設方法における上側当接工程、締結工程及び締結工程並びに第6実施形態に係る床版の架設構造を示す平面図であり、(B)は(A)のπ線による縦断面図であり、(C)は(B)の拡大図である。
【
図18】(A)は第6実施形態に係る床版の架設方法における間隙に間詰固化体が充填された後の緊張工程を示す平面図であり、(B)は(A)のρ線による縦断面図であり、(C)は(B)の拡大図である。
【
図19】(A)は第6実施形態に係る床版の架設方法における撤去工程を示す平面図であり、(B)は(A)のσ線による縦断面図であり、(C)は(B)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る床版の架設構造及び床版の架設方法について詳細に説明する。本発明の第1実施形態に係る床版の架設構造及び床版の架設方法は、
図1(A)及び
図1(B)に示されるように、第1橋桁21及び橋軸方向D1に交差する橋軸直角方向D2に第1橋桁21から離隔している第2橋桁22の上に設置された既設床版100を取り換える際に、第1橋桁21の上に新たに設置された第1床版と、第2橋桁22の上に新たに設置された第2床版とを連結するためのものである。既設床版100の橋軸直角方向D2の両端部上には、壁高欄61,62がそれぞれ設置されている。
図1(A)及び
図1(B)の例では、既設床版100上が片側二車線の道路として供用されている。
【0029】
図2(A)及び
図2(B)に示されるように、既設床版100は、橋軸直角方向D2に既設床版101,102に二分割される。既設床版102の壁高欄62とは反対側の端部上には、仮設防護柵82が設置される。既設床版102上は片側一車線の道路として供用される。既設床版101上は通行止めとなり、壁高欄61が撤去される。既設床版101は、橋軸方向D1に沿った切断面で橋軸直角方向D2に既設床版102から分離される。既設床版101は、撤去に適した寸法になるように、橋軸直角方向D2に沿った切断面で橋軸方向D1に分離される。
図3(A)及び
図3(B)に示されるように、既設床版102上が片側一車線の道路として供用されつつ、第1橋桁21から既設床版101が撤去される。
【0030】
図4(A)及び
図4(B)に示されるように、既設床版102上が片側一車線の道路として供用されつつ、第1橋桁21の上にプレキャストコンクリートにより形成された第1床版30Aを設置する第1床版設置工程が行われる。第1床版30Aは、第1下面31と第1上面32とを有する。第1床版30Aは、橋軸直角方向D2に第1床版30Aを連通し、第1床版30Aに緊張力を付与する緊張材が挿通される第1緊張材挿通孔部33を有する。第1床版30Aは、橋軸方向D1に面した第1橋軸方向面35を有する。第1床版設置工程では、第1橋桁21の上に橋軸方向D1に沿って複数の第1床版30Aが互いに第1橋軸方向面35の間に間隔30gを隔てて設置される。第1床版30Aは、第1床版30Aの第2橋桁22の側に対向する第1対向面36を有する。第1床版設置工程の直後には、第1対向面36は、既設床版102と対向している。
【0031】
図4(A)、
図4(B)及び
図4(C)に示されるように、第1床版30Aは、第1対向面36の近傍に第1下面31から第1上面32へと貫通する2つの第1孔部34を有する。第1床版設置工程が行われる前から、第1床版30Aの第1孔部34のそれぞれには、架設治具10Aが取り付けられている。架設治具10Aは、第1床版30Aの第1下面31に当接する下側当接部材11Aと、第1床版30Aの第1上面32に当接する上側当接部材12Aと、下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとを締結する締結部材13Aとを有する。なお、締結とは、締め付け結ぶことを意味する。
【0032】
下側当接部材11A及び上側当接部材12Aは、長方形のSM490等の鋼板から形成された部材である。下側当接部材11A及び上側当接部材12Aは、長手方向に離隔して設けられた一対のボルト孔部11h,12hをそれぞれ含む。ボルト孔部11h,12hは、下側当接部材11A及び上側当接部材12Aの設置位置を調整する便宜のために、下側当接部材11A及び上側当接部材12Aの長手方向の内径が下側当接部材11A及び上側当接部材12Aの短手方向の内径よりも大きい。
【0033】
締結部材13Aは、ボルト13b及びナット13nを含む。締結部材13Aのボルト13bは、第1孔部34及び一対のボルト孔部11h,12hの一方の中に挿通されつつ下側当接部材11Aの下方と上側当接部材12Aの上方とに跨って延在している。ボルト13bの上端部と下端部とにナット13nが螺合されることにより、下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとの間に第1床版30Aが挟持されつつ、下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとが締結される。
【0034】
既設床版102の撤去及び第2床版の設置の障害とならないように、第1床版設置工程の直後には、仮上側当接工程として、第1床版設置工程で設置された第1床版30Aの第1対向面36の内側に上側当接部材12Aの全部が位置するように上側当接部材12Aが第1上面32に当接させられる。また、既設床版102の撤去及び第2床版の設置の障害とならないように、第1対向面36の内側に下側当接部材11Aの全部が位置するように下側当接部材11Aが第1下面31に当接させられる。
【0035】
図5(A)及び
図5(B)に示されるように、第1床版設置工程で設置された複数の第1床版30Aの間隔30gに間詰材30fを充填する間詰工程が行われる。後の作業の便宜のために、架設治具10Aの近傍の間隔30gには間詰材30fは充填しなくてもよい。つまり、複数の第1床版30Aの間の間隔30gには、一部に間詰材30fを充填しない未充填範囲30nを設ける。例えば、一部に間詰材30fを充填しない未充填範囲30nは第1対向面36から所定の範囲である。
【0036】
図6(A)及び
図6(B)に示されるように、間詰工程で充填された間詰材30fが硬化した後に、第1床版30Aの既設床版102とは反対側の端部には壁高欄71が設置される。第1床版の既設床版102の側の端部には仮設防護柵81が設置される。仮設防護柵81は、後の作業の便宜のために架設治具10Aから壁高欄71の側に離隔した位置に設置される。第1床版30A上は片側一車線の道路として供用される。既設床版102上は通行止めとなり、壁高欄61及び仮設防護柵82が撤去される。既設床版102は、撤去に適した寸法になるように、橋軸直角方向D2に沿った切断面で橋軸方向D1に分離される。
【0037】
図7(A)及び
図7(B)に示されるように、第1床版30A上が片側一車線の道路として供用されつつ、第2橋桁22から既設床版102が撤去される。
図7(A)、
図7(B)及び
図7(C)に示されるように、第2橋桁22から既設床版102が撤去された後であって、後述する第2床版設置工程の前に、仮下側当接工程として、第1床版設置工程で設置された第1床版30Aの第2橋桁22の側に対向する第1対向面36の外側に下側当接部材11Aの一部が突出するように下側当接部材11Aが第1下面31に当接させられる。
【0038】
上記の仮下側当接工程は、締結部材13Aのボルト13bへのナット13nの螺合を若干緩めることにより行うことができる。仮下側当接工程の終了後であって、後述する第2床版設置工程の前に、仮締結工程として、再度、ボルト13bにナット13nが螺合されることにより、仮下側当接工程で第1下面31に当接させられた下側当接部材11Aと、仮上側当接工程で第1上面32に当接させられた上側当接部材12Aとが締結部材13Aにより締結される。
【0039】
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、第1床版30A上が片側一車線の道路として供用されつつ、第2橋桁22の上にプレキャストコンクリートにより形成された第2床版40Aを設置する第2床版設置工程が行われる。第2床版設置工程では、第1床版設置工程で設置されたいずれかの第1床版30Aに隣接して第2床版40Aが設置される。
【0040】
第2床版40Aは、第2下面41と第2上面42とを有する。第2床版40Aは、橋軸直角方向D2に第2床版40Aを連通し、第2床版40Aに緊張力を付与する緊張材が挿通される第2緊張材挿通孔部43を有する。第1床版30Aの第1緊張材挿通孔部33の位置と第2床版の第2緊張材挿通孔部43の位置とは対応しており、第1緊張材挿通孔部33と第2緊張材挿通孔部43とは、第1床版30Aと第2床版40Aとを連通し、第1床版30A及び第2床版40Aに緊張力を付与する緊張材が挿通される緊張材挿通孔部50として機能する。
【0041】
第2床版40Aは、橋軸方向D1に面した第2橋軸方向面45を有する。第2床版設置工程では、第2橋桁22の上に橋軸方向D1に沿って複数の第2床版40Aが互いに第2橋軸方向面45の間に間隔40gを隔てて設置される。第2床版40Aは、第2床版40の第1橋桁21の側に対向する第2対向面46を有する。第2床版設置工程の直後には、第2床版40Aのそれぞれの第2対向面46は、第1床版設置工程で設置された第1床版30Aのそれぞれの第1対向面36と対向している。
【0042】
第2床版設置工程の際に、第1床版設置工程で設置されたいずれかの第1床版30Aの第1下面31と、第2床版設置工程で設置された第2床版40Aの第2下面41とに跨って下側当接部材11Aを当接させる下側当接工程が行われる。つまり、第2床版設置工程では、第1対向面36の外側に一部が突出した下側当接部材11Aに第2下面41を当接させつつ第2床版40Aを設置することにより、第2床版設置工程と一緒に下側当接工程が行われる。第2床版40Aは、第2対向面46の近傍に第2下面41から第2上面42へと貫通する2つの第2孔部44を有する。第2孔部44のそれぞれの位置は、下側当接工程後の下側当接部材11Aのボルト13bが挿通されていないもう一方のボルト孔部11hの位置と対応している。
【0043】
図9(A)、
図9(B)及び
図9(C)に示されるように、第1床版30A上が片側一車線の道路として供用されつつ、第2床版設置工程及び下側当接工程の後に、第1対向面36の外側に上側当接部材12Aの一部が突出するように上側当接部材12Aを移動させることにより、第1床版設置工程で設置されたいずれかの第1床版30Aの第1上面32と、第2床版設置工程で設置された第2床版40Aの第2上面42とに跨って上側当接部材12Aを当接させる上側当接工程が行われる。上側当接工程は、締結部材13Aのボルト13bへのナット13nの螺合を若干緩めることにより行うことができる。第2孔部44のそれぞれの位置は、上側当接工程後の上側当接部材12Aのボルト13bが挿通されていないもう一方のボルト孔部12hの位置と対応している。
【0044】
上側当接工程の後に、下側当接工程で第1下面31と第2下面41とに跨って当接させられた下側当接部材11Aと、上側当接工程で第1上面32と第2上面42とに跨って当接させられた上側当接部材12Aとを締結部材13Aにより締結する締結工程が行われる。締結工程では、第1床版30Aの第1下面31から第1上面32へと貫通する第1孔部34の中に挿通されつつ下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとに跨って延在している締結部材13Aにより、下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとの間に第1床版30A及び第2床版40Aが挟持されつつ、下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとが締結される。締結工程では、第1床版30Aの第1孔部34に挿通されたボルト13bにナット13nが再び螺合される。下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとが締結部材13Aにより締結されることにより、第1床版30A上が片側一車線の道路として供用され重量物である車両が走行している場合でも、第1床版30Aと第2床版40Aの上下方向の相対変位が抑制される。
【0045】
また、締結工程では、第2床版40Aの第2孔部44及び一対のボルト孔部11h,12hのもう一方の中に、もう一つの締結部材13Aのボルト13bが挿通され、下側当接部材11Aの下方と上側当接部材12Aの上方とに跨って延在させられる。第2孔部44に挿通されたボルト13bの上端部と下端部とにナット13nが螺合されることにより、下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとの間に第1床版30A及び第2床版40Aが挟持されつつ、下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとが締結される。なお、締結工程後には、ボルト13bの外周面と、第1孔部34及び第2孔部44の内壁面とは、接触せずに数mm程度の隙間が空いていることが好ましい。ボルト13bが挿通される第1孔部34及び第2孔部44はボルト13bの外径より大きく、ボルト13bが第1孔部及び第2孔部と接触しないため、相対変位による損傷を防止できる。
【0046】
締結工程後に、第1床版30Aの第1下面31と第2床版40Aの第2下面41とに跨って当接する下側当接部材11Aと、第1床版30Aの第1上面32と第2床版40Aの第2上面42とに跨って当接する上側当接部材12Aと、下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとを締結する締結部材13Aと、第1床版30Aと第2床版40Aとを連通し、第1床版30A及び第2床版40Aに緊張力を付与する緊張材が挿通される緊張材挿通孔部50とを備えた床版の架設構造1Aが形成される。第1床版30Aは第1下面31から第1上面32へと貫通する第1孔部34を有し、第2床版40Aは第2下面41から第2上面42へと貫通する第2孔部44を有し、締結部材13Aのそれぞれは、第1孔部34及び第2孔部44の中に挿通されつつ下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとに跨って延在している。
【0047】
以下、本実施形態の架設構造1Aの設計上の考え方について説明する。橋軸方向D1の主桁スパン方向のたわみ差に起因するずれについて、コンクリート床版である第1床版30A及び第2床版40Aのせん断耐力と等価な鋼板である下側当接部材11A及び上側当接部材12Aを配置する必要がある。例えば、第1床版30A及び第2床版40Aの第1対向面36及び第2対向面46が幅2000mm及び厚さ220mmであり、コンクリートのせん断応力度が0.32N/mm2であると仮定すると、コンクリート床版のせん断耐力は、2000mm×220mm×0.32N/mm2=140800Nである。また、第1床版30A及び第2床版40Aの第1対向面36及び第2対向面46は対向面が互いに面で接触している。
【0048】
一方、下側当接部材11A及び上側当接部材12Aは、一対の第1対向面36及び第2対向面46ごとに4枚の鋼板として配置される。下側当接部材11A及び上側当接部材12Aが、例えば、厚さ22mmであり、橋軸方向D1の幅がX[mm]であり、SM490のせん断応力度が105N/mm2であると仮定すると、鋼板のせん断耐力は、X[mm]×4枚×22mm×105N/mm2=9240・X[N/mm2]である。これが、上記のコンクリート床版のせん断耐力である140800Nと同じであるためには、X=15mmとなる。したがって、下側当接部材11A及び上側当接部材12Aの鋼板は、橋軸方向D1の幅が15mm以上であればよいことになる。
【0049】
一方、橋軸直角方向D2の活荷重による曲げに対しては、第1対向面36及び第2対向面46における圧縮応力については第1床版30A及び第2床版40Aが受け持つが、第1対向面36及び第2対向面46における引張応力については鉄筋の代わりに下側当接部材11A及び上側当接部材12Aの鋼板が受け持つ。当該引張応力を受け持つための鋼板とコンクリート面におけるずれせん断耐力τは、τ=A・C+N・μで算出される。Aは摩擦面の面積であり、Cは鋼板とコンクリート床版とのせん断付着強度であり、Nは締結部材13Aによる張力であり、μは鋼板とコンクリート床版との摩擦係数である。
【0050】
Aは、例えば、下側当接部材11A及び上側当接部材12Aの橋軸方向D1の幅が150mmであると仮定すると、締結部材13Aを中心とする直径150mmの円が摩擦面なると考えて、A=1/4×π×(150mm)2=17671mm2である。Cは、例えば、0.25~0.50N/mm2と仮定する。Nは、例えば、205000Nと仮定する。μは、例えば、0.28~0.60と仮定する。この場合、ずれせん断耐力τは、最小で、0.25×17671+0.28×205000=61818Nである。また、ずれせん断耐力τは、最大で、0.50×17671+0.60×205000=131836Nである。以上のようにして、第1床版30Aと第2床版40Aとが架設される条件に応じた下側当接部材11A、上側当接部材12A及び締結部材13Aを設計することができる。
【0051】
なお、下側当接部材11A及び上側当接部材12Aの厚みtに対し、第1床版30Aの第1孔部34に挿通された締結部材13Aのボルト13bと第2床版40Aの第2孔部44に挿通された締結部材13Aのボルト13bとの距離である支持長lは、下側当接部材11A及び上側当接部材12Aの鋼板がせん断耐荷型の構造となることを担保するため、支持長l/2≦厚みtであることが好ましい。
【0052】
図10(A)及び
図10(B)に示されるように、第1床版30A上が片側一車線の道路として供用されつつ、締結工程の後に、第1床版設置工程で設置されたいずれかの第1床版30Aと、第2床版設置工程で設置された第2床版40Aとを連通する緊張材挿通孔部50に緊張材51を挿通し、緊張材51により第1床版30A及び第2床版40Aに緊張力を付与する緊張工程が行われる。
図11(A)及び
図11(B)に示されるように、第1床版30A上が片側一車線の道路として供用されつつ、緊張工程の後に、下側当接部材11A、上側当接部材12A及び締結部材13Aを撤去する撤去工程が行われる。
【0053】
図12(A)及び
図12(B)に示されるように、間詰工程で間詰材30fを充填しなかった未充填範囲30n、例えば、架設治具10Aの近傍の間隔30gと、第2床版設置工程で設置された複数の第2床版40Aの間隔40gとに間詰材40fを充填する。また、第1孔部34及び第2孔部44には、間詰材90が充填される。仮設防護柵81が撤去される。第2床版40Aの第1床版30Aとは反対側の端部に壁高欄72が設置される。床版の取り換えが完了し、第1床版30A及び第2床版40A上が片側二車線の道路として供用される。
【0054】
なお、緊張工程の後に行われる下側当接部材11A、上側当接部材12A及び締結部材13Aを撤去する撤去工程は、間詰材30fを充填しなかった未充填範囲30n、例えば、架設治具10Aの近傍の間隔30gと、第2床版設置工程で設置された複数の第2床版40Aの間隔40gとに間詰材40fを充填する間詰工程の後に行われてもよい。
【0055】
以上により、第1床版30A上が片側一車線の道路として供用され重量物である車両が走行している場合でも、第1床版30Aと第2床版の上下方向の相対変位が抑制される。したがって、第1床版30Aと第2床版40Aを緊張材51により緊張力を付与して連結する時及び第2床版設置工程で設置された複数の第2床版40Aの間隔40gとに間詰材40fが充填する時に相対変位を抑制した状態で作業ができる。
【0056】
本実施形態によれば、第1橋桁21の上に設置された第1床版30Aと、橋軸方向D1に交差する方向に第1橋桁21から離隔している第2橋桁22の上に設置された第2床版40Aとを連結する床版の架設構造1Aにおいて、下側当接部材11Aが第1床版30Aの第1下面31と第2床版40Aの第2下面41とに跨って当接し、上側当接部材12Aが第1床版30Aの第1上面32と第2床版40Aの第2上面42とに跨って当接し、締結部材13Aが下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとを締結するため、第1床版30Aと第2床版40Aとを連通する緊張材挿通孔部50に緊張材51が挿通され、緊張材51により緊張力が付与される前に第1床版30Aと第2床版40Aとを連結できる。
【0057】
これにより、緊張材51により緊張力が付与されて、第1床版30A及び第2床版40Aが一体に接合されまで、車両の通行による荷重により一方の床版が動くことを防ぐことができる。したがって、第1床版30A及び第2床版40Aに緊張材51により緊張力が付与される前に第1床版30A上が片側一車線の道路として供用され、重量物である車両が走行している場合でも、繰り返しの変動する荷重による振動に対して第1床版30Aと第2床版の上下方向の相対変位が抑制され、施工の精度を確保でき、第1床版30Aの第1対向面36及び第2床版40Aの第2対向面46に損傷が生じることを防止できる。
【0058】
また、本実施形態によれば、締結部材13Aは、第1床版30Aの第1下面31から第1上面32へと貫通する第1孔部34の中に挿通されつつ下側当接部材11Aと上側当接部材12Aとに跨って延在しているため、第1橋桁21の上に橋軸方向D1に沿って複数の第1床版30Aを互いに間隔を隔てて設置し、複数の第1床版30Aの間隔30gに間詰材30fを充填する場合に、締結部材13Aが間詰材30fの充填の障害になり難い。
【0059】
また、本実施形態によれば、緊張工程の後には、撤去工程により下側当接部材11A、上側当接部材12A及び締結部材13Aが撤去されるため、緊張工程の後に不要となった下側当接部材11A、上側当接部材12A及び締結部材13Aがその後の施工の障害になることを防止できる。また、複数の第1床版30Aの間、または、複数の第2床版40Aの間に、間詰材40fを充填する工程の障害となることを防止できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、第1床版設置工程では、第1橋桁21の上に橋軸方向D1に沿って複数の第1床版30Aが互いに間隔30gを隔てて設置され、間詰工程により第1床版設置工程で設置された複数の第1床版30Aの間隔30gに間詰材30fが充填されるため、第1床版30A上を道路として供用することができる。また、第2床版設置工程では、第1床版設置工程で設置されたいずれかの第1床版30Aに隣接して第2床版40Aが設置され、下側当接工程、上側当接工程及び締結工程によって、緊張工程で緊張材51により緊張力が付与される前に互いに隣接する第1床版30Aと第2床版40Aとを連結できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、仮上側当接工程では、第1床版設置工程で設置された第1床版30Aの第1対向面36の内側に上側当接部材12Aの全部が位置するように上側当接部材12Aが第1上面32に当接させられるため、第2床版設置工程で第2床版40Aが設置される際に上側当接部材12Aが障害になることを防止できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、仮下側当接工程では、第1床版設置工程で設置された第1床版30Aの第2橋桁22の側に対向する第1対向面36の外側に下側当接部材11Aの一部が突出するように下側当接部材11Aが第1下面31に当接させられるため、第2床版設置工程で第2床版40Aが設置される際に下側当接部材11Aをガイドとして利用することができる。つまり、活荷重を受け、たわみ及び変形が生じる第1床版30Aの第1下面31に設置された下側当接部材11Aがガイドとなり、下側にたわみ傾向の状態にて、第1床版30Aと第2床版40Aとの連結が行われる。これにより、連結の精度としては、例えば、±0mmに近い精度を確保可能である。
【0063】
以下、本発明の第2実施形態に係る床版の架設構造及び床版の架設方法について説明する。本実施形態では、上記の
図1~
図3で説明した工程が第1実施形態と同様に行われる。
図13(A)、
図13(B)及び
図13(C)に示されるように、本実施形態では、第1床版設置工程で第1孔部34を有さない第1床版30Bが設置される。
【0064】
第1床版設置工程が行われる前から、第1床版30Bの第1対向面36の近傍には、2つの架設治具10Bが取り付けられている。架設治具10Bは、第1床版30Bの第1下面31に当接する下側当接部材11Bと、第1床版30Bの第1上面32に当接する上側当接部材12Bと、下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとを締結する締結部材13Bとを有する。
【0065】
下側当接部材11B及び上側当接部材12Bは、長方形のSM490等の鋼板から形成された部材である。上側当接部材12Bは、第1上面32に接する面とは反対側の面に長手方向に離隔して設けられた一対の凹部12dを含む。下側当接部材11Bも、第1下面31に接する面とは反対側の面に上側当接部材12Bと同様の凹部を含む。
【0066】
図14(A)(及び
図14(B))に示されるように、間詰工程で後の作業の便宜のために、架設治具10Bの近傍の間隔30gには間詰材30fは充填されない。つまり、複数の第1床版30Bの間の間隔30gには、一部に間詰材30fを充填しない未充填範囲30nを設ける。例えば、一部に間詰材30fを充填しない未充填範囲30nは第1対向面36から所定の範囲である。
【0067】
締結部材13Bは、この間詰材30fが充填されていない未充填範囲30nを通じて第1橋軸方向面35の外側で下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとに跨って延在している鋼製の部材として配置されている。締結部材13Bは、本体部13xとネジ部13sとを含む。本体部13xは、間詰材30fが充填されていない未充填範囲30nを通じて第1橋軸方向面35の外側で下側当接部材11Bの下方と上側当接部材12Bの上方とに跨って延在している。本体部13xは、上端部と下端部とのそれぞれに1つのネジ孔部13hを含む。ネジ孔部13hのそれぞれには、ネジ部13sが螺合される。上側のネジ部13sの先端部は、上側当接部材12Bの一方の凹部12dと嵌合する。下側のネジ部13sの先端部も、下側当接部材11Bの一方の凹部と嵌合する。ネジ孔部13hのそれぞれにネジ部13sが螺合されることにより、下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとの間に第1床版30Bが挟持されつつ、下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとが締結される。
【0068】
上記第1実施形態と同様に、第1床版設置工程の直後には、仮上側当接工程として、第1床版設置工程で設置された第1床版30Bの第1対向面36の内側に上側当接部材12Bの全部が位置するように上側当接部材12Bが第1上面32に当接させられ、第1対向面36の内側に下側当接部材11Bの全部が位置するように下側当接部材11Bが第1下面31に当接させられる。
【0069】
上記の
図5~
図6で説明した工程が第1実施形態と同様に行われる。
図14(A)及び
図14(B)に示されるように、第2橋桁22から既設床版102が撤去される。
図14(A)、
図14(B)及び
図14(C)に示されるように、第2橋桁22から既設床版102が撤去された後であって、後述する第2床版設置工程の前に、仮下側当接工程として、第1床版設置工程で設置された第1床版30Bの第2橋桁22の側に対向する第1対向面36の外側に下側当接部材11Bの一部が突出するように下側当接部材11Bが第1下面31に当接させられる。
【0070】
上記の仮下側当接工程は、締結部材13Bの本体部13xの下側のネジ孔部13hへのネジ部13sの螺合を若干緩めることにより行うことができる。仮下側当接工程の終了後であって、第2床版設置工程の前に、仮締結工程として、再度、下側のネジ孔部13hにネジ部13sが螺合されることにより、仮下側当接工程で第1下面31に当接させられた下側当接部材11Bと、仮上側当接工程で第1上面32に当接させられた上側当接部材12Bとが締結部材13Bにより締結される。
【0071】
図15(A)及び
図15(B)に示されるように、本実施形態では、第2床版設置工程で第2孔部44を有さない第2床版40Bが設置される。第2床版設置工程では、上記第1実施形態と同様に、第1対向面36の外側に一部が突出した下側当接部材11Bに第2下面41を当接させつつ第2床版40Bを設置することにより、第2床版設置工程と一緒に下側当接工程が行われる。
【0072】
図15(A)、
図15(B)及び
図15(C)に示されるように、第2床版設置工程及び下側当接工程の後に、第1対向面36の外側に上側当接部材12Bの一部が突出するように上側当接部材12Bを移動させることにより、第1床版設置工程で設置されたいずれかの第1床版30Bの第1上面32と、第2床版設置工程で設置された第2床版40Bの第2上面42とに跨って上側当接部材12Bを当接させる上側当接工程が行われる。上側当接工程は、締結部材13Bの本体部13xの上側のネジ孔部13hへのネジ部13sの螺合を若干緩めることにより行うことができる。
【0073】
上側当接工程の後に、下側当接工程で第1下面31と第2下面41とに跨って当接させられた下側当接部材11Bと、上側当接工程で第1上面32と第2上面42とに跨って当接させられた上側当接部材12Bとを締結部材13Bにより締結する締結工程が行われる。締結工程では、第1床版30Bの橋軸方向D1に面した第1橋軸方向面35の外側で下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとに跨って延在している締結部材13Bにより、下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとの間に第1床版30B及び第2床版40Bが挟持されつつ、下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとが締結される。締結工程では、上側のネジ孔部13hにネジ部13sが再び螺合される。
【0074】
また、締結工程では、第2床版40Bの橋軸方向D1に面した第2橋軸方向面45の外側で下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとに跨って延在しているもう1つの締結部材13Bにより、下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとが締結される。上側のネジ部13sの先端部が上側当接部材12Bの第2上面42の側のもう一方の凹部12dと嵌合し、下側のネジ部13sの先端部が下側当接部材11Bの第2下面41の側のもう一方の凹部と嵌合するように、もう一つの締結部材13Bが第2橋軸方向面45の近傍に配置され、下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとに跨って延在させられる。つまり、1つの架設治具10Bに対して2つの締結部材13Bが配置される。もう一つの締結部材13Bの上側及び下側のネジ孔部13hにネジ部13sが螺合されることにより、下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとの間に第1床版30B及び第2床版40Bが挟持されつつ、下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとが締結される。
【0075】
下側当接部材11B及び上側当接部材12Bの厚みtに対し、第1床版30Bの側で下側当接部材11Bに嵌合しているネジ部13sと第2床版40Bの側で下側当接部材11Bに嵌合しているネジ部13sとの距離及び第1床版30Bの側で上側当接部材12Bに嵌合しているネジ部13sと第2床版40Bの側で上側当接部材12Bに嵌合しているネジ部13sとの距離である支持長lは、下側当接部材11B及び上側当接部材12Bの鋼板がせん断耐荷型の構造となることを担保するため、支持長l/2≦厚みtであることが好ましい。
【0076】
締結工程後に、本実施形態の床版の架設構造1Bが形成される。締結部材13Bのそれぞれは、第1橋軸方向面35及び第2橋軸方向面45の外側で下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとに跨って延在している。以下、上記の
図10~
図12で説明した工程が第1実施形態と同様に行われ、床版の取り換えが完了する。
【0077】
本実施形態では、締結部材13Bは、第1床版30の橋軸方向D1に面した第1橋軸方向面35の外側で下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとに跨って延在しているため、締結部材13Bの設置及び撤去が容易である。また、第1床版30Bには、第1下面31から第1上面32へと貫通する第1孔部34を有さないで締結部材13Bを設置及び撤去することができるので締結部材13Bの設置及び撤去が更に容易となる。また、第1床版30Bには第1孔部34を設けることが不要であり、第2床版40Bには第2孔部44を設けることが不要であるため、既存のプレキャストコンクリートから形成された床版をそのまま適用できる。
【0078】
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
図16(A)に示すように、本実施形態の床版の架設構造1Cでは、第1下面31、第1上面32、第2下面41及び第2上面42は摩擦係数がその他の部位よりも大きい粗面部31r,32r,41r,42rを有する。粗面部31r,32r,41r,42rは、例えば、第1下面31、第1上面32、第2下面41及び第2上面42に粗面化処理を施すことにより形成される。
【0079】
また、本実施形態の架設治具10Cは、上記第1実施形態の架設治具10Aと略同様に下側当接部材11C、上側当接部材12C及び締結部材13Aを有するが、下側当接部材11Cは、第1下面31及び第2下面41と接触する面に平面よりも摩擦係数が大きい粗面部11rを有する。また、上側当接部材12Cは、第1上面32及び第2上面42と接触する面に平面よりも摩擦係数が大きい粗面部12rを有する。粗面部11r,12rは、下側当接部材11C及び上側当接部材12Cに粗面化処理又は波型等の加工を施すことにより形成される。下側当接部材11C及び上側当接部材12CにスプライスH鋼等が適応されてもよい。なお、粗面部11r,12r,31r,32r,41r,42rは、少なくともいずれかが設けられていてもよい。
【0080】
本実施形態によれば、粗面部11r,12r,31r,32r,41r,42rにより、下側当接部材11C及び上側当接部材12Cと、第1床版30A及び第2床版40Aとの間の摩擦係数が増大するため、ずれせん断耐力τを増大させることができる。
【0081】
以下、本発明の第4実施形態について説明する。
図16(B)に示すように、本実施形態の床版の架設構造1Dでは、架設治具10Dは、上記第1実施形態の架設治具10Aと略同様に下側当接部材11D、上側当接部材12D及び締結部材13Aを有するが、下側当接部材11Dは、第1下面31及び第2下面41と接触する面にゴム層11gを有する。また、上側当接部材12Dは、第1上面32及び第2上面42と接触する面にゴム層12gを有する。下側当接部材11D及び上側当接部材12Dと、第1床版30及び第2床版40とのなす角度が変動した場合でも、支圧を分散し、支圧が不均一になることを低減できる。
【0082】
以下、本発明の第5実施形態について説明する。
図16(C)に示すように、本実施形態の床版の架設構造1Eでは、架設治具10Eは、上記第2実施形態の架設治具10Bと略同様に下側当接部材11B、上側当接部材12B及び締結部材13Cを有するが、1つの架設治具10Eに対して1つの締結部材13Cが配置される。
【0083】
締結部材13Cは、第1橋軸方向面35及び第2橋軸方向面45の外側で下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとに跨って延在している鋼製の部材である。締結部材13Bは、本体部13yとネジ部13sとを含む。本体部13yは、第1橋軸方向面35及び第2橋軸方向面45の外側で下側当接部材11Bの下方と上側当接部材12Bの上方とに跨って延在している。本体部13yは、上端部と下端部とのそれぞれに2つのネジ孔部13hを含む。ネジ孔部13hのそれぞれには、ネジ部13sが螺合される。つまり、本実施形態では、1つの締結部材13Cが上記第2実施形態における2つの締結部材13Bを兼ねているため、締結部材13Cを配置する労力が低減される。
【0084】
以下、本発明の第6実施形態に係る床版の架設構造及び床版の架設方法について説明する。本実施形態では、上記の
図1~
図3で説明した工程が第1実施形態と同様に行われる。
図17(A)、
図17(B)及び
図17(C)に示されるように、本実施形態では、第1床版設置工程で、例えば、第1孔部34を有さない第1床版30Cが設置される。第2床版設置工程で、例えば、第2孔部44を有さない第2床版40Cが設置される。上記第1実施形態の第1床版30A及び第2床版40Aと同様に、第1床版30Cは第2橋桁22の側に対向する第1対向面36を有し、第2床版40Cは第1橋桁21の側に対向する第2対向面46を有する。
【0085】
第1対向面36は第1橋桁21の側に凹んだ凹部36kを含み、第2対向面46は第2橋桁22の側に凹んだ凹部46kを含む。第1床版設置工程及び第2床版設置工程の後に、第1対向面36と第2対向面46とは、間隙52を隔てて互いに対向するように設置される。本実施形態の架設治具10Fは、例えば、第1床版設置工程及び第2床版設置工程の後に取り付けられる。上記以外は、上記の
図4~
図8で説明した工程が第1実施形態と同様に行われる。なお、上記の第2実施形態と異なり、架設治具10Fが取り付けられる間隙52の近傍の間隔30gまで間詰材30fが充填され、間詰材30fが充填されていない未充填範囲30nを設けることは不要である。これにより、さらに作業効率を向上できる。
【0086】
架設治具10Fは、第1床版30Cの第1下面31と第2床版40Cの第2下面41とに跨って当接する下側当接部材11Eと、第1床版30Cの第1上面32と、第2床版40Cの第2上面42とに跨って当接する上側当接部材12Eと、下側当接部材11Eと上側当接部材12Eとを締結する締結部材13Dとを有する。下側当接部材11E及び上側当接部材12Eは、長方形のSM490等の鋼板から形成された部材である。下側当接部材11Eは、第1下面31及び第2下面41に対向する面に、第1床版30Cと第2床版40Cとに跨って、間隙52を跨いだ部分が凹んだ凹部11cを有する。上側当接部材12Eは、第1上面32及び第2上面42に対向する面に、第1床版30Cと第2床版40Cとに跨って、間隙52を跨いだ部分が凹んだ凹部12cを有する。
【0087】
締結部材13Dは、間隙52に配置されたシース管等の管部材53の内側に配置され、下側当接部材11Eと上側当接部材12Eとに渡って延在している。締結部材13Dは、ボルト13b及び2つのナット13nを含む。ボルト13bは、両端にネジ溝が設けられている。ボルト13bは、例えば、両端にネジ溝を設けられたPC鋼棒でもよい。ボルト13bの上端は、上側当接部材12Eの凹部12cに開口し、凹部12cとは反対側の面まで貫通していないボルト孔部12hに螺合されている。ボルト13bの下端は、下側当接部材11Eの凹部11cから凹部11cとは反対側の面まで貫通するボルト孔部11hに挿通され、2つのナット13nがそれぞれ螺合されている。
【0088】
なお、下側当接部材11E及び上側当接部材12Eの厚みtに対し、凹部11c及び凹部12cの第1床版30Cと第2床版40Cとに跨って凹んでいる距離である支持長lは、下側当接部材11C及び上側当接部材12Cの鋼板がせん断耐荷型の構造となることを担保するため、支持長l/2≦厚みtであることが好ましい。
【0089】
本実施形態では、例えば、第1床版設置工程及び第2床版設置工程の後に、上側当接部材12Eの凹部12c及びボルト孔部12hを間隙52に合わせるように上側当接部材12Eを第1床版30Cの第1上面32及び第2床版40Cの第2上面42に配置することにより、第1床版設置工程で設置された第1床版30Cの第1上面32と、第2床版設置工程で設置された第2床版40Cの第2上面42とに跨って上側当接部材を当接させる上側当接工程が行われる。
【0090】
上側当接工程の後に、上側当接部材12Eのボルト孔部12hに締結部材13Dのボルト13bの上端が螺合される。管部材53の内側にボルト13bが配置されるように管部材53が配置される。下側当接部材11Eのボルト孔部11hに締結部材13Dのボルト13bの下端を挿通させつつ、第1床版設置工程で設置された第1床版30Cの第1下面31と、第2床版設置工程で設置された第2床版40Cの第2下面41とに跨って下側当接部材11Eを当接させる下側当接工程が行われる。なお、締結部材13Dを予め上側当接部材12Eのボルト孔部12hに螺合して取り付けられた状態で上側当接工程が行われてもよいし、締結部材13Dと管部材53が予め上側当接部材12Eに取り付けられた状態で上側当接工程が行われてもよい。
【0091】
ボルト13bの下端に2つのナット13nがそれぞれ螺合されることにより、第1床版30Cの第2橋桁22の側に対向する第1対向面36と第2床版40Cの第1橋桁21の側に対向する第2対向面46との間の間隙52に配置され、下側当接部材11Eと上側当接部材12Eとに渡って延在している締結部材13Dにより、下側当接部材11Eと上側当接部材12Eとを締結する締結工程が行われる。
【0092】
以上のようにして、上側当接工程、下側当接工程及び締結工程が行われることにより、下側当接工程を含む多くの作業を第1床版30Cの第1下面31及び第2床版4Cの第2下面41の側から行うことができ、床版の取り換えの利便性を向上できる。締結工程後に、本実施形態の床版の架設構造1Fが形成される。本実施形態の床版の架設構造1Fでは、第1対向面36と第2対向面46とは間隙52を隔てて互いに対向し、締結部材13Dは間隙52に配置され、下側当接部材11Eと上側当接部材12Eとに渡って延在している。
【0093】
なお、本実施形態では、例えば、第2床版設置工程で設置される第2床版40Cに予め架設治具10Fの下側当接部材11E、上側当接部材12E、締結部材13D及び管部材53が取り付けられた状態で第2床版40Cが搬入されて第2床版設置工程が行われ、締結部材13Dのナット13nを一旦緩めてから再度締めることにより、下側当接工程、上側当接工程及び締結工程が行われてもよい。
【0094】
図18(A)、
図18(B)及び
図18(C)に示されるように、間隙52の管部材53の外側に間詰材90が充填され埋設される。間詰材90は管部材53の外側に充填されるため、管部材53の内側に配置された締結部材13Dのボルト13bの棒部は間詰材90に拘束されない。間隙52に充填された間詰材90が固化した後に、上記第1実施形態と同様に、緊張工程が行われる。
【0095】
図19(A)、
図19(B)及び
図19(C)に示されるように、緊張工程の後に、下側当接部材11E、上側当接部材12E及び締結部材13Dを撤去する撤去工程が行われる。撤去工程では、管部材53も撤去される。以下、上記の
図12で説明した工程が第1実施形態と同様に行われ、管部材53が撤去された後の間隙52の孔部91には、間詰材90が充填されることにより、床版の取り換えが完了する。なお、少なくとも下側当接部材11Eと締結部材13Dが撤去されていればよく、管部材53は残置した状態で間詰材90が管部材53の孔部91に充填されてもよい。
【0096】
本実施形態によれば、第1床版30Cは、第2橋桁22の側に対向する第1対向面36を有し、第2床版40Cは、第1橋桁21の側に対向する第2対向面46を有し、第1対向面36と第2対向面46とは、間隙52を隔てて互いに対向し、締結部材13Dは間隙52に配置され、下側当接部材11Eと上側当接部材12Eとに渡って延在しているため、締結部材13Dの設置及び撤去が容易である。また、第1床版30Cには第1下面31から第1上面32へと貫通する孔部が設けられていなくても、締結部材13Dを設置及び撤去することができるので、締結部材13Dの設置及び撤去が更に容易となる。また、第1床版30Cには第1下面31から第1上面32へと貫通する孔部を設けることが不要であり、第2床版40Cには第2下面41から第2上面42へと貫通する孔部を設けることが不要であるため、架設される床版の品質低下を招くことを抑制できる。
【0097】
また、本実施形態によれば、下側当接部材11E及び上側当接部材12Eは、第1床版30Cと第2床版40Cとに跨って凹んだ凹部11c,12cを中央部(中間)に有しているため、振動及び施工誤差等による第1床版30Cと第2床版40Cとの間の角度の変動に対応し易い。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、上記実施形態における、第1橋桁21及び第2橋桁22は鈑桁、トラス桁等の種類であってよい。また、第1橋軸方向面35及び第2橋軸方向面45から突出する継手鉄筋が備えられていてもよい。また、第1対向面36及び第2対向面46には、互いに嵌合するせん断キー又は互いに接触しないせん断キーが備えられていてもよいし、所定の間隔を隔てておいて、緊張力を付与する緊張工程をする前に、モルタル系材料や樹脂系材料等の充填材を充填してもよい。また、上記の第1実施形態、第3実施形態及び第4実施形態において、第2床版40の第2孔部44、第2孔部44に対応するボルト孔部11h,12h及び第2孔部44に挿通される締結部材13Aは省略されてもよい。
【0099】
また、上記の第2実施形態において、第2橋軸方向面45の外側で下側当接部材11Bと上側当接部材12Bとに跨って延在しているもう1つの締結部材13Bは省略されてもよい。また、上記の第2実施形態及び第5実施形態において、上側当接部材12Bの凹部12d及び下側当接部材11Bの凹部は省略され、下側当接部材11B及び上側当接部材12Bは、単なる板材でもよい。また、上記の第2実施形態及び第5実施形態において、締結部材13B,13Cは、鋳鉄製でもよい。また、上記の第2実施形態及び第5実施形態において、締結部材13B,13Cは、上端部及び下端部が鋳鉄製であり、上端部及び下端部の間の中間部が鋼製であり、上端部、中間部及び下端部が互いに着脱自在でもよい。
【0100】
また、上記第6実施形態において下側当接部材11E及び上側当接部材12Eが有していた凹部11c,12cは、上記第1~第5実施形態の下側当接部材11A,11B,11C,11D及び上側当接部材12A,12B,12C,12Dが有していてもよい。また、上記の第6実施形態では、下側当接部材11E、上側当接部材12E及び締結部材13Dの全てが撤去されたが、例えば、一日の大部分の時間に車両を通行させつつ一日の深夜等の短時間に床版の取り換えの施工が行われることが複数日に亘って繰り返される場合に、施工時間を少なくし、車両の通行時間を長くするため、最終的な本舗装が行われる前までは、上側当接部材12Eを残置したまま仮舗装をして、仮舗装上に車両を通行させ、最終的な本舗装時に上側当接部材12Eを撤去してもよい。また、最終的な本舗装時に上側当接部材12Eを本舗装の下に残置してもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、床版が橋軸直角方向D2に2分割されたが、床版が橋軸直角方向D2に3以上に分割されてもよい。また、下側当接部材11A,11B,11C,11D,11E及び上側当接部材12A,12B,12C,12D,12Eは、鋼材、鋳物及びステンレス鋼等の鉄の他、高強度コンクリートプレキャスト部材等のコンクリート及び炭素繊維から形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1A,1B,1C,1D,1E,1F…架設構造、10A,10B,10C,10D,10E,10F…架設治具、11A,11B,11C,11D,11E…下側当接部材、11h…ボルト孔部、11r…粗面部、11g…ゴム層、11c…凹部、12A,12B,12C,12D,12E…上側当接部材、12h…ボルト孔部、12d…凹部、12r…粗面部、12g…ゴム層、12c…凹部、13A,13B,13C,13D…締結部材、13b…ボルト、13n…ナット、13x,13y…本体部、13h…ネジ孔部、13s…ネジ部、21…第1橋桁、22…第2橋桁、30A,30B,30C…第1床版、30g…間隔、30f…間詰材、30n…未充填範囲、31…第1下面、31r…粗面部、32…第1上面、32r…粗面部、33…第1緊張材挿通孔部、34…第1孔部、35…第1橋軸方向面、36…第1対向面、36k…凹部、40A,40B,40C…第2床版、40g…間隔、40f…間詰材、41…第2下面、41r…粗面部、42…第2上面、42r…粗面部、43…第2緊張材挿通孔部、44…第2孔部、45…第2橋軸方向面、46…第2対向面、46k…凹部、50…緊張材挿通孔部、51…緊張材、52…間隙、53…管部材、61,62,71,72…壁高欄、81,82…仮設防護柵、90…間詰材、91…孔部、100,101,102…既設床版、t…厚み、l…支持長、D1…橋軸方向、D2…橋軸直角方向。