(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 29/034 20060101AFI20240607BHJP
B23B 39/00 20060101ALI20240607BHJP
B23C 5/24 20060101ALI20240607BHJP
B23B 27/16 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
B23B29/034 B
B23B39/00 B
B23C5/24
B23B27/16 B
(21)【出願番号】P 2021509174
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2019071542
(87)【国際公開番号】W WO2020038749
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】102018214123.1
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508064506
【氏名又は名称】ギューリング カーゲー
【氏名又は名称原語表記】GUEHRING KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マタイス,クラウス
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-155520(JP,A)
【文献】特開2016-136970(JP,A)
【文献】特開2008-155318(JP,A)
【文献】特開2002-113609(JP,A)
【文献】特開平10-146705(JP,A)
【文献】特開平01-295709(JP,A)
【文献】特開昭57-008011(JP,A)
【文献】特表2015-528400(JP,A)
【文献】特表2012-530612(JP,A)
【文献】特表2001-519724(JP,A)
【文献】特表平08-509430(JP,A)
【文献】特表昭60-501945(JP,A)
【文献】特公昭45-005993(JP,B1)
【文献】実開昭64-042806(JP,U)
【文献】実開昭61-078505(JP,U)
【文献】実開昭56-062808(JP,U)
【文献】米国特許第05217333(US,A)
【文献】米国特許第04848199(US,A)
【文献】米国特許第04353669(US,A)
【文献】米国特許第03332130(US,A)
【文献】国際公開第2013/041075(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/104635(WO,A1)
【文献】英国特許出願公告第01219333(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
B23B 35/00-49/06
B23C 1/00-9/00
B23D 67/00-81/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向中心軸(9)に沿って延在するベース本体(4)と、
前記ベース本体(4)上で軸方向および/または半径方向に調整可能に保持され、クランプ爪(3)によって締め付け可能な切削インサート(1)と
を有する切削工具であって、
前記切削インサート(1)は、
前記ベース本体(4)上に位置調整可能に固定されたクランプホルダ(2)であって、前記切削インサート(1)を押圧する前記クランプ爪(3)によって前記ベース本体(4)に対して締め付け可能なクランプホルダ(2)によって、保持され、
前記ベース本体(4)は、前記長手方向中心軸(9)を横切る方向に移動可能に前記クランプホルダ(2)を収容する収容ポケット(42)を有し、
前記収容ポケット(42)は、
前記クランプホルダ(2)の外形と同様の形状を有することにより前記クランプホルダ(2)を軸方向に拘束的に収容し、
前記切削インサート(1)は、前記ベース本体(4)上で軸方向に調整可能に保持されることを特徴とする切削工具。
【請求項2】
前記クランプ爪(3)は、前記クランプホルダ(2)を貫通する締め付けねじ(5)によって前記ベース本体(4)にねじ止めされていることを特徴とする、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記クランプホルダ(2)は、前記クランプホルダ(2)の移動方向に延在する、前記収容ポケット(42)の平坦な支持面(45)に対して、平坦に締め付け可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記ベース本体(4)は、前記クランプ爪(3)を前記クランプホルダ(2)に向かって直線的に案内する案内開口部(46)を有することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項5】
前記クランプ爪(3)が前記クランプホルダ(2)をベース本体上のストッパに押し付けるように、前記案内開口部(46)の延在方向が前記収容ポケット(42)の支持面(45)に対して傾斜していることを特徴とする、請求項4に記載の切削工具。
【請求項6】
前記案内開口部(46)は、前記クランプ爪(3)を形状嵌合で案内することを特徴とする、請求項4または5に記載の切削工具。
【請求項7】
前記クランプ爪(3)とは独立して、前記ベース本体(4)に前記クランプホルダ(2)を固定するために前記ベース本体(4)に一体化された固定装置(8)を有することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項8】
前記固定装置(8)は、
前記ベース本体(4)にねじ止めされて、前記クランプホルダ(2)を前記ベース本体(4)に押し付ける、締め付けねじ(8)から形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の切削工具。
【請求項9】
前記切削インサート(1)は、前記クランプホルダ(2)上の切削インサート座(23)に、前記クランプホルダ(2)に対して位置を固定して配置されることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項10】
前記切削インサートは、切削プレート(1)によって形成されることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項11】
前記長手方向中心軸(9)に対する前記クランプホルダの半径方向および/または軸方向の位置の調整のための、前記クランプホルダ(2)に一体化された調整装置(6)を有することを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項12】
前記調整装置(6)は、前記クランプホルダ(2)にねじ止めされて前記ベース本体(4)を押圧する調整ねじ(6)から形成されていることを特徴とする、請求項11に記載の切削工具。
【請求項13】
前記長手方向中心軸(9)に対する前記クランプホルダ(2)の半径方向および/または軸方向の位置の調整のための、前記ベース本体(4)に一体化された調整装置(7)を有することを特徴とする、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項14】
前記調整装置(7)は、前記ベース本体(4)にねじ止めされて前記クランプホルダ(2)を押圧する調整ねじ(7)から形成されていることを特徴とする、請求項13に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ爪を介して切削インサートをベース本体に固定することができる切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような切削工具は、例えばEP 0 381 924 A2に示されている。EP 0 381 924 A2は、切削工具のベース本体に切削アタッチメントを固定するためにクランプ爪を使用することを提案している。このクランプ爪は、締め付けねじによってベース本体に押し付けられ、突出端部にて切削アタッチメントに押し付けられる。その結果、切削アタッチメントは、ベース本体の凹部の底面に対して平坦に締め付けられる。この配置の欠点は、切削アタッチメントの微調整が不可能であることである。
【0003】
同様に、この主題をさらに発展させたDE 101 44 923 A1は、切削工具を開示しており、この切削工具では、切削インサート、特に割出し切削プレートが、切削工具のベース本体に対して軸方向および半径方向の位置を調整することができるクランプ爪のポケット内に形状嵌合で収容される。クランプ爪は、切削インサートをベース本体上の支持面に対して締め付ける。全体的な省スペース設計では、切削工具は、切削インサートが、ベース本体上のクランプ爪を介して比較的容易に固定され、位置調整されることを可能にする。切削インサートを交換するには、クランプ爪を緩めるか、解放しなければならない。したがって、切削インサートを交換するには、常に、クランプ爪の新たな位置調整が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、切削インサートが交換されるとき、切削インサートが新たな調整なしにベース本体上の予め定められた位置に配置されることができるように、冒頭に記載されたタイプの切削工具を開発する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を有する切削工具によって達成される。好ましいさらなる展開は、従属請求項の主題である。
【0006】
DE 101 44 923 A1から知られている切削工具と同様に、本発明による切削工具は、例えば、穿孔、旋削、フライス削り、リーミング工具などとして設計することができ、この切削工具は、長手方向中心軸に沿って延びるベース本体と、クランプ爪によって固定することができる、ベース本体上で軸方向および/または半径方向に位置調整可能に保持される切削インサートとを有する。
【0007】
ベース本体は、当業者に公知の方法で、モジュラー工具システムのモジュールまたは機械スピンドルに結合するためのいわゆるHSK(略して、中空シャフトテーパ)シャフトを有するシャフト部分を有することができる。この場合、ベース本体は、シャフト部分と、軸方向に隣接する切削部分とに機能的に分割することができ、切削インサートは、切削部分上に配置される。
【0008】
DE 101 44 923 A1から公知の切削工具とは対照的に、本発明による切削工具では、切削インサートは、クランプ爪(締め付け爪)を介してベース本体に対して直接締め付けられず、ベース本体上に位置調整可能に固定されたクランプホルダ(締め付けホルダ)を介して締め付けられる。したがって、切削インサートの軸方向および/または半径方向の位置調整は、ベース本体上に位置調整可能に配置されたクランプホルダを介して間接的に実行されるので、クランプ爪の機能は、ベース本体上に(クランプホルダを介して)切削インサートを締め付けて固定することに限定される。これにより、切削インサートを交換するためにクランプ爪を緩めたり解放したりしても、一度行われたクランプホルダの位置調整を維持することができる。したがって、本発明による切削工具は、軸方向および/または半径方向の位置調整およびクランプホルダのベース本体への固定の機能と、ベース本体に対する切削インサートの締め付けての固定機能とが別々に解放されることを特徴とする。したがって、切削インサートは、新たな位置調整の必要なしに交換することができる。クランプ爪とは独立してベース本体上に配置されたクランプホルダは、クランプ爪を介して、ベース本体への付加的な力結合による固定を受ける。
【0009】
好ましい実施形態では、クランプ爪は、クランプホルダを貫通する締め付けねじによってベース本体にねじ止めされる。締め付けねじは、クランプホルダが締め付けねじに対して軸方向および/または半径方向の位置調整のために限界内で移動できるように、十分な遊びをもってクランプホルダの穴を貫通する。締め付けねじが締め付けられると、クランプ爪が切削インサートに押し付けられ、それによって切削インサートがクランプホルダに押し付けられ、それによってクランプホルダがベース本体上の支持面に押し付けられる。このようにして、クランプ爪、切削インサートおよびクランプホルダは、締め付けねじによってベース本体に押し付けられ、それによってベース本体に固定される。後により詳細に説明するように、皿穴をクランプ爪に設けることができ、この皿穴は、締め付けねじの頭部の円錐面と相互作用し、締め付けねじをクランプ爪に対して常に明確に位置決めする。その結果、クランプ爪は、ねじ止めによってベース本体上に位置決めされた締め付けねじに対して、再現可能な方法で位置合わせされる。これらの手段の結果として、クランプ爪は、切削インサートをクランプホルダに対して締め付ける。
【0010】
クランプ爪を使用する別の利点は、切削インサート、例えば切削プレート、特に割出し切削プレートが、それをベース本体に固定するために中央貫通孔をもはや必要としないことである。それによって、さもなければ中央開口部によって弱くなりすぎる非常に小さい切削プレートでさえも使用できる。切削インサート、特に使用された切削プレートは、それが広い面積にわたってクランプホルダ上に載るように、応力を加えることができる。これにより、接触応力を最小限に抑えることができ、これは、超硬合金、セラミック材料、またはサーメット材料などの極めて硬い切削材料が使用される場合に特に有利である。
【0011】
より好ましくは、ベース本体は、長手方向中心軸を横切る方向に移動可能にクランプホルダを収容し、さらに好ましくは軸方向の前方に拘束的に収容する、収容ポケットを有する。このように設計された収容ポケットは、ベース本体上へのクランプホルダの簡単な組み立てに寄与し、したがって、セットアップ時間の短縮に寄与する。
【0012】
収容ポケットは、クランプホルダの移動方向に延在してその支持面に対してクランプホルダを広い面積にわたって締め付け可能である、収容ポケットの好ましくは平坦な支持面を形成することができる。移動方向は、半径方向および/または軸方向に平行であってもよく、またはベクトル的に見て、そのうちの1つが半径方向に延び、1つが軸方向に延びる方向ベクトルの追加として理解されてもよい。しかしながら、移動は、長手方向中心軸が延びる平面内で行われる必要はなく、半径方向ベクトルおよび長手方向中心軸が及ぶ平面に平行な平面内で行われてもよい。クランプホルダがベース本体側の支持面上に平坦に載置される場合、ベース本体内の応力が低減され、その結果、より少ない歪みも期待され得る。全体として、これらの手段は、機能的切刃からキャリア本体への力の流れをさらに最適化することができる。
【0013】
好ましい実施形態では、ベース本体は、例えば形状嵌合によって、クランプ爪をクランプホルダに向かって直線的に、案内する、案内開口部をさらに有することができる。案内開口部内でのクランプ爪の形状嵌合での案内は、クランプ爪が案内開口部から、一方向、すなわち案内方向にのみ取り外され得ることを実現する。したがって、分解するために締め付けねじが完全に解放されても、クランプ爪は、案内開口部内において、案内方向を横切る方向に保持されることができる。
【0014】
切削工具が、上述の収容ポケットと、クランプ爪を直線的に案内する案内開口部との両方を有する場合、切削インサートを介してクランプ爪がクランプホルダをベース本体側のストッパに押し付けるように、案内開口部の延在方向が収容ポケットの支持面に対して傾斜していると、特に有利である。ベース本体側のこのストッパは、ベース本体側に設けられた調整装置の調整要素、例えば調整ねじとすることができ、これにより、ベース本体上のクランプホルダの軸方向および/または半径方向の位置調整が可能になる。収容ポケットの支持面に対する案内開口部の延在方向の傾斜角度を適切に選択することにより、クランプ爪とクランプホルダとの間の固定時に力成分を発生させることができ、この力成分がクランプホルダをベース本体側の上述のストッパに押し付ける。
【0015】
上述の手段は、ベース本体上のクランプホルダの高い位置精度および簡単な組み立てに寄与する。
【0016】
クランプホルダは、(位置調整された後に、)クランプ爪とは独立して、ベース本体に一体化された固定装置を用いて、ベース本体に固定することができる。この固定装置は、ベース本体にねじ止めされて、クランプホルダをベース本体に押し付ける、締め付けねじから形成することができる。既に述べたように、クランプ爪とは独立してクランプホルダをベース本体に固定することにより、クランプ爪が解放されても、クランプホルダがベース本体内のその位置を軸方向および/または半径方向に不変に保持することが保証される。クランプホルダがこのように固定されている場合、切削インサート、例えば切削プレートは、ベース本体からクランプホルダを外す必要なしに、クランプ爪を緩めたり解放したりすることにより、クランプホルダから外すことができる。これは、必要な場合に、工具全体をその後に新たに調整する必要なしに、切削インサートだけを交換することを可能にする。クランプホルダをベース本体に固定するために締め付けねじを使用することは、切削工具のコストを全体的に低く保つのに役立つ。
【0017】
切削インサートをベース本体上の軸方向および/または半径方向にできるだけ正確に位置決めするために、切削インサートは、例えば形状嵌合によって、クランプホルダ上の切削インサート座に、クランプホルダに対して位置を固定して配置することができる。切削インサートがクランプホルダ上に位置を固定して配置されている場合、特にクランプホルダがベース本体上に固定されている場合、切削インサートを容易に取り外し、再取り付けすることができる。
【0018】
この実施形態では、特に、切削インサートは、既に述べたように、切削プレート、特に割出し切削プレートによって、好都合に形成することができる。このような切削プレートは、対応する工具の構成要素として周知である。
【0019】
クランプホルダの軸方向および/または半径方向の位置調整のために、本発明による切削工具は、ベース本体の長手方向中心軸に対するクランプホルダの半径方向および/または軸方向の位置の調整のための、クランプホルダに一体化された調整装置を有することができる。例えば、クランプホルダ側の調整装置は、クランプホルダにねじ止めされてベース本体を押圧する調整ねじから形成される。調整ねじの軸方向の移動と比較してねじ山を減少させること、および、調整ねじの先端とクランプホルダとの楔角度をさらに適合させることによって、敏感な調整が可能である。
【0020】
上述のクランプホルダ側に設けられた調整装置の代替として、またはそれに加えて、切削工具は、長手方向中心軸に対するクランプホルダの半径方向および/または軸方向の位置の調整のための、ベース本体に一体化された調整装置を有することができる。このような調整装置は、ベース本体にねじ止めされてクランプホルダを押圧する調整ねじから形成することができる。また、この調整装置は、最終的には、ベース本体におけるクランプホルダの規定された収容を介して、切り換え時間を短縮する役割を果たす。
【0021】
以下、好ましい実施形態に基づいて、添付の図面を用いて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明による切削工具の部分縦断面図を示す。
【
図3】クランプホルダと、切削インサートと、切削工具のベース本体上に位置調整可能に配置されたクランプ爪とから形成された装置の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
例えば旋削、穿孔またはフライス削りのために使用することができる
図1および
図2に示す切削工具は、旋削方向中心軸または長手方向中心軸9に沿って延びる、不完全にのみ示されているベース本体4を有する。
図1および
図2から分かるように、ベース本体4は、本質的に回転対称の本体から形成されている。ここでは示されていないが、ベース本体4は、当業者に公知の方法で、例えば、切削工具を工作機械の駆動スピンドルに結合するためのHSK(中空シャフトテーパ)シャフトを有するシャフト部分を有することができる。
図1および
図2は、DE 101 44 923 A1から公知の切削工具の例に基づくベース本体が、ここでは図示されていないさらなる切削工具、例えばリーマを収容するための中央収容開口部47を有することを示している。
【0024】
さらに、
図1および
図2には、以下により詳細に説明され、切削インサート(ここでは切削プレート1の形態である)、クランプホルダ2、およびクランプ爪3から形成され、ベース本体上に位置調整可能に配置された構成が見られる。
【0025】
好ましい実施形態では、切削インサートは、切削プレート1として、特に割出し切削プレートとして設計される。図示の実施形態では、切削プレート1は、形状嵌合によって、クランプホルダ2上の切削インサート座23に位置を固定して配置される。
【0026】
クランプホルダ2は、直方体を基準とした外形を有している。特に
図1および
図3に見られるように、クランプホルダ2は、前方(図では左)および後方(右)部分においてほぼ完全に直方体であり、後方部分は、楔形の中央部分のために、前方部分よりも大きな厚さを有する。クランプホルダ2は、後ろ側(
図1の右側)に、(後述する)締め付けねじ8の押圧片が配置されるトラフ形状の凹部24を有する。図示されていない変形例では、クランプホルダ2は、例えば、その全長にわたって楔形であってもよい。
【0027】
切削プレート1は、形状嵌合によって、クランプホルダ2上の切削インサート座23に位置を固定して保持される。その結果、切削プレート1はクランプホルダ2に対して明確に固定される。クランプ爪3は、切削プレート1をクランプホルダ2に対して締め付けるために、締め付けねじ5によって切削プレート1に押し付けられる。
【0028】
ベース本体4は、締め付けねじ4のためのテンションねじ41と、クランプホルダ2のための(クランプホルダのための平坦な支持面45を有する)収容ポケット42と、(後述する)調整ねじ7のためのねじ穴43と、(後述する)締め付けねじ8のためのねじ穴44と、さらなる工具のための中央収容開口部47と、クランプ爪3のための案内開口部46とを有する。
図1および
図2から分かるように、クランプ爪3は、直線方向(
図1および
図2の上方から)にベース本体内に導入され、締め付けねじ5を介してベース本体に締め付けられる。
【0029】
クランプホルダ2は、長手方向中心軸9を横切る方向(
図1の図面の平面に垂直)に挿入することができて半径方向および軸方向に位置調整可能なようにクランプホルダ2を収容するベース本体4の収容ポケット42内に収容される。(後述する)調整ねじ6は、長手方向中心軸9を横切る方向またはベース本体4の半径方向に、ベース本体4に対してクランプホルダを調整する。
【0030】
ベース本体4の収容ポケット42は、クランプホルダ2が長手方向中心軸9を横切る方向に挿入されることができるように、クランプホルダ2の外形と同様の形状を有する。クランプホルダ2は、2つの直方体部分と、これらを接続する楔形中央部分とにより、収容ポケット内で、限られた範囲で軸方向に移動することができるが、拘束的に配置される。この実施形態では、クランプホルダ2のための上述の収容ポケットと同様に、クランプ爪3のための案内開口部も設けられている。案内開口部は、クランプホルダ2のための収容ポケット42に合流し、クランプ爪3をクランプホルダ2に直線的に案内する。
【0031】
軸方向および/または半径方向の位置調整が行われた後、ベース本体4のねじ穴44にねじ込まれた締め付けねじ8が、クランプホルダ2をベース本体4に対して締め付ける。締め付けねじ8は、グラブねじとして設計されている。
【0032】
図1~
図5は、クランプ爪3を示している。図から分かるように、クランプ爪3の外形は、プリズム状の直方体を形成し、この直方体は、一方の側(
図1、
図3、および
図4の右側)では、締め付けねじ5のための貫通孔31の周りの半円筒で終わり、他方の側(
図1~
図4の左側)では、傾斜したプリズム面に合流する。また、クランプ爪は、
図3の平面図において、他方の側に向かって先細りになっている。図示された形状は、必要なスペースが比較的小さくて安定性が高いという利点を有するが、クランプ爪は、締め付けねじ5によって及ぼされる力を切削プレート1に確実に伝達してそれを確実に保持する限り、工具の条件に応じて異なって形成することもできる。
【0033】
本実施形態では、クランプ爪3は、締め付けねじ5によって、切削プレート1を介してクランプホルダ2に押し付けられる。
図1から分かるように、締め付けねじ5は、ベース本体4のテンションねじ41にねじ込まれるために、クランプ爪3の貫通孔31およびクランプホルダ2のさらなる貫通孔21を貫通する。クランプ爪3は切削プレート1を押圧する。
図1から分かるように、貫通孔31は皿穴を有し、締め付けのときに締め付けねじ5がクランプ爪3においてセンタリングされるようになっている。
図1から分かるように、締め付けねじ5がクランプ爪5を、クランプ爪が前側(
図1:左側)にいくほど下がって切削プレート1に載る程度にわずかに傾斜させて締め付けるように、貫通孔21、31およびねじ穴41は、ベース本体の半径方向に対して傾斜している。これにより、主要な力成分(図示せず)が生じ、この主要な力成分が、クランプ爪3を半径方向に切削プレート1に押し付け、これにより切削プレート1をクランプホルダ2に押し付け、クランプホルダ2をベース本体4の支持面45に押し付ける。加えて、切削インサート1上のクランプ爪3の接触点に(より小さい)力成分FJが生じ、この力成分が、切削プレート1をクランプホルダ2上の切削インサート座に押し付け、また、クランプホルダ2を調整ねじ7に対して軸方向に押し付ける。より明確にするために、
図1では、この力成分は、その起源の場所には示されず、それが作用するクランプホルダ2内に示されている。
【0034】
調整ねじ6および7は、軸方向および/または半径方向の位置調整のための調整装置として設けられている。
【0035】
調整ねじ7は、ベース本体4のねじ穴43にねじ込まれ、クランプホルダ2の関連する後方の楔面22を押圧する。調整ねじ7がさらにねじ込まれまたは調整される場合、調整ねじ7は、クランプホルダ2およびクランプホルダ2に接続された切削プレート1を、楔面22上で前方(
図1の左側)に押圧する。さらに、
図3から分かるように、楔面22もクランプホルダ2上で斜めに形成されているので、調整ねじ7が進むと、クランプホルダ2も同時に収容ポケット42に入る(
図1では図の平面に垂直に、
図3では上方に)。その結果、クランプホルダ2は、一方では収容ポケット42内で、他方では調整ねじ6に対して、締め付けられる。上述した収容ポケット42内への調整は、調整ねじ6によって制限することができる。この調整ねじ7は、上述した力FJを収容する本体側の上述したストッパとして機能する。
【0036】
クランプホルダ2の軸方向の位置合わせの後、調整ねじ6は、調整ねじ6が収容ポケット42の半径方向の停止面を押圧することによってクランプホルダ2を半径方向に固定する程度まで、調整ねじ7によってねじ込まれる。その結果、調整ねじ6によって、クランプホルダ2は、ベース本体4および調整ねじ7に対して半径方向に移動または締め付けられる。
【0037】
調整ねじ6および7による上述の軸方向および/または半径方向の位置調整の後、クランプホルダ2は、圧力片を介してクランプホルダ2内のトラフ形状の凹部24の底部を押圧する締め付けねじ8によって固定される。この状態では、切削プレート1は、クランプ爪3によって締め付けられ、その結果、クランプホルダ2は、ベース本体に対して追加の支えを受ける。
【0038】
上述したように、調整ねじ6、7は、クランプホルダ2、ひいては切削インサート1の位置合わせを固定し、一方、締め付けねじ5は、クランプ爪3において貫通孔31の上部の皿穴を介して締め付けを行うときにクランプ爪3においてクランプホルダ2および切削インサート1をセンタリングする。このセンタリングおよび案内開口部内の付加的な形状嵌合は、ベース本体4内のクランプ爪3の位置を明確に固定する。さらに、
図1から分かるように、締め付けねじ5は、クランプホルダ2の穴21を比較的大きな遊びで貫通する。したがって、クランプホルダ2は、締め付けねじ5による干渉なしに位置合わせすることができ、次いで、クランプホルダおよび切削プレートが所望の位置になった後、締め付けねじ5は、問題なく締め付けられることができる。締め付けの結果、クランプ爪3は、クランプホルダ2をベース本体4に対して締め付ける。
【0039】
上記の説明および
図1から分かるように、ここに示された実施形態は、クランプ本体2およびそこに位置を固定して配置された切削プレート1の、ベース本体4に対する固定の静的過剰決定をもたらす。したがって、随意的に、もし必要であれば、締め付けねじ5(およびそれゆえクランプ爪3)、調整ねじ6または調整ねじ7は、切削プレート1の位置を変えることなく緩めることができ、これは、締め付けねじ8がクランプホルダを確実に保持し続けるからである。逆に、締め付けねじ8が緩められて締め付けねじ5および両方の調整ねじ6および7は変化しないままのときには、切削プレート1の位置は変化しない。
【0040】
図2は、本発明による切削工具の斜視側面図を示す。
図2では、任意の追加の工具のための収容開口部47が、また、斜視図により、クランプ爪3および関連する案内開口部の形状が、
図1よりも明確に見ることができる。この図から分かるように、
図2に示す実施形態のクランプ爪3は、上方から、すなわち締め付けねじ5の軸方向に、案内開口部内へ挿入されることができる。
図3および
図5からさらによく分かるように、クランプ爪3および関連する案内開口部が、締め付けねじ5のための貫通孔31の位置から切削インサート上の支持体に向かって先細りになっている場合、クランプ爪3は、本質的に、ベース本体4に対して、一方向、すなわち締め付けねじの軸方向にのみ、移動することができる。
【0041】
図3は、切削インサート1、クランプホルダ2、クランプ爪3、および締め付けねじ、調整ねじおよび締め付けねじ5~8から形成されて、切削工具のベース本体上に位置調整可能に配置された装置、すなわち、ベース本体4に収容されたすべての部品の装置の上面図を示し、ベース本体4自体は簡略化のために省略されている。
図3から、
図1を参照して既に述べた楔面22が、ベース本体4のおよびそれに平行に位置合わせしたクランプホルダ2の長手方向軸に対して斜めに延びていることがよりよく分かる。その結果、調整ねじ7をねじ込む(「調整する」)ことによって、クランプホルダ2は、ベース本体4に対して半径方向に、すなわち
図3では上方に、同時に(
図1参照)前方に、すなわち
図1~
図3では左に、移動させることができる。設定面22によって画定されたクランプホルダ2のポケット内に調整ねじ7が突出するとすぐに、さらに、クランプホルダ2は、脱落しないようにこのねじ7によって固定され、このねじ7によって調整される。
【0042】
図4は、
図3に示される装置の側面図を示し、
図5は、
図3に示される装置の正面図を示す。機能を明確にするために、
図4は、切削プレート1、クランプホルダ2、クランプ爪3、および締め付けねじ、調整ねじおよび締め付けねじ5~8を、
図1と同じ側から見た組み立てられた状態で示すが、切断されておらず、また、
図3について上述したのと同様に、ベース本体4は簡略化のために省略されている。したがって、
図1とは対照的に、例えば、調整ねじ6の頭部(
図1では切断されている)も見ることができる。
図4から分かるように、調整ねじ6は、上述した調整ねじ7および締め付けねじ8と同様に、この実施形態ではグラブねじとして形成されている。