(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 37/06 20060101AFI20240607BHJP
D06F 37/04 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
D06F37/06
D06F37/04
(21)【出願番号】P 2021510937
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 KR2019010620
(87)【国際公開番号】W WO2020045887
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0103078
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0001970
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】LG ELECTRONICS INC.
【住所又は居所原語表記】128, Yeoui-daero, Yeongdeungpo-gu, 07336 Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,カヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジャンフン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ミュンフン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,キュンチュル
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ソンファ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ファンジン
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0136801(KR,A)
【文献】特開2017-099723(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02280108(EP,A1)
【文献】特表2009-506797(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01382732(EP,A2)
【文献】特開平09-215894(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0123540(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0048080(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0129781(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/00-37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機であって、
ケーシング;
前記ケーシング内に配置された貯水槽;
前記貯水槽内に回転可能に備えられ、洗濯物を投入するように構成された洗濯槽;
前記洗濯槽は、円筒形であり、かつ、前方に開口部を有するドラムと、前記ドラムの後端に結束される後方カバーと、を備え、
前記洗濯槽を回転するように構成されたモータ;
前記ドラムの内周面から突出
し、前記ドラムが回転する
とき、前記洗濯物をリフトする複数の
一組のリフタ;
前記複数の
一組のリフタは、前記ドラムの長さ方向に沿って延び、かつ、前記ドラムの円周方向に互いに離間して配置され、
前記複数の
一組のリフタ
のうち一の一組のリフタは、
前記開口部に隣接して配置される前方リフタと、
前記後方カバーに隣接し、前記前方リフタの後方側に、及び前記前方リフタから離隔して、配置される後方リフタと、を備え、
前方リフタの長さの中心線と後方リフタの長さの中心線は、前記ドラムの
前記円周方向に互いに離間され、
前記ドラムの長さ方向で見るとき、前記前方リフタと前記後方リフタは、互いに重なることを特徴とする、洗濯機。
【請求項2】
前記前方リフタ及び前記後方リフタは、前記ドラムと一体に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記ドラムは、前記前方リフタと前記後方リフタとの間に配置される補強溝を有することを特徴とする、請求項2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記補強溝は、前記ドラムの
前記円周方向に延びることを特徴とする、請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
複数の補強溝は、前記ドラムの長さ方向に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記前方リフタの後端は、前記ドラムの長さ方向に前記後方リフタの前端から離間されることを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記ドラムは、前記前方リフタの後端と前記後方リフタの前端との間に配置される補強溝を有することを特徴とする、請求項6に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記前方リフタ及び前記後方リフタの間に隣接した両縁は内縁として定義され、
前記前方リフタの長さ中心線は、前記後方リフタの前記内縁からよりも、前記前方リフタの前記内縁から遠いことを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項9】
前記ドラムは、前記前方リフタの前記内縁に対向する前記前方リフタの外縁と前記後方リフタの前記内縁に対向する前記後方リフタの外縁の間に、前記ドラムの前記周辺方向に延びる補強溝を備えることを特徴とする、請求項8に記載の洗濯機。
【請求項10】
前記前方リフタと前記後方リフタとは、10mm~30mmの範囲内の高さを有することを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項11】
前記ドラムは、0.4mm~0.6mmの範囲内の厚みを有することを特徴とする、請求項2に記載の洗濯機。
【請求項12】
前記補強溝は、前記ドラムの
前記円周方向に延びることを特徴とする、請求項7に記載の洗濯機。
【請求項13】
複数の補強溝は、前記ドラムの長さ方向に配置されることを特徴とする、請求項12に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関し、特に、ドラムに形成されたリフタを備えた洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯物が投入されるドラムが水平な軸を中心に回転されるように構成された洗濯機が広く知られている。
【0003】
例えば、韓国公開特許10-2011-0022359号(従来技術1)に開示された洗濯機は、ドラムの内周面に配置されたリフタが前記ドラムの回転の際に洗濯物を汲み上げる。
【0004】
このように、ドラムにリフタが設けられた洗濯機は、リフタが洗濯物に加える物理力により洗濯物が一定高さまで汲み上げられてから落下するか、リフタと洗濯物との間に摩擦作用が導かれる。
【0005】
したがって、一定水準以上の洗濯力を確保することができ、このような洗濯力は、リフタがない構造に比べて、ドラム内に満たされた水の量、洗濯物の量(布量)、ドラムの回転速度(RPM)による影響を少なく受ける方である。
【0006】
米国登録特許US8,893,532(従来技術2)は、内周面上に突出構造(linear elevation)が形成された洗濯機用ドラムを開示している。
【0007】
従来技術2のドラムは、金属板材(metal sheet)を塑性加工して前記突出構造を形成した後、前記金属板材を丸く巻き、両端を互いに接合することによりなされる。
【0008】
ところが、前記突出構造は、ドラムの内周面では膨らんでいるが、外周面では凹んだ形態(すなわち、金属板材を局部的に曲げて加工した形態)であるため、このような突出構造が円周方向に複数形成された構造のドラムは、押しつぶしに脆弱であるという問題がある。
【0009】
具体的に、ドラムの一端部がモータと連結されて回転されるとき、突出構造の中心部分にせん断応力(shear stress)が集中され、ドラムが永久的に変形される塑性変形(plastic deformation)が発生しうる。
【0010】
モータに連結されたドラムの一端部が加速または減速して回転するようになると、ドラムの一端部と他端部との間の中間部分にドラムの回転方向にドラムを捻るせん断応力が発生するようになる。
【0011】
特に、ドラムは、薄い金属板材で形成され、突出構造は、開口面を形成し、屈曲した形状を含むため、突出構造の中間部分にせん断応力が集中されてドラムが塑性変形されるか、激しい場合、破壊されるという危険がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、第1に、金属板材を円筒形に巻き、両端を接合して形成されたドラムを備え、前記金属板材を塑性加工して前記ドラム内に突出されたリフタが形成された洗濯機において、前記リフタの構造を改善することで、前記ドラムの塑性変形を減少させることができる洗濯機を提供することである。
【0013】
第2に、前記ドラムに印加されるせん断応力が前記降伏強度以下であっても、長期間、複数回転により疲労破壊(Fatigue failure)されないようにドラムの疲労寿命(Fatigue life、N)を増加させて、優れた耐久性の洗濯機を提供することである。
【0014】
疲労破壊(Fatigue failure)は、動的な変動応力を受ける構造物において長期間加えられた応力により起こる破壊である。
【0015】
疲労寿命(Fatigue life)は、特定応力で疲労破壊を起こすのに求められる総応力サイクル回数である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、金属板材を加工してなる円筒形のドラムが水平な軸を中心に回転されるように構成された洗濯機に関するものである。前記ドラムは、前方から見るとき、円周方向に沿って離間した複数の地点に前記金属板材を加工して形成したリフタを各々備える。
【0017】
前記リフタは、前記金属板材を前記ドラムの内側に突出させて、前記ドラムの長さ方向に沿って延びるように加圧して形成した前方リフタ及び前記前方リフタより後方に配置された後方リフタを備える。
【0018】
前記後方リフタは、前記前方リフタと所定の位相角(phase angle)をなして配置される。
【0019】
前記リフタは、前記ドラムの中心に対して等間隔に配置された3つの地点または4つの地点に各々形成されることができる。
【0020】
前記回転軸方向で見るとき、前記前方リフタと前記後方リフタとは互いに重ならず、前記前方リフタの後端は、前記後方リフタの前端より前方に配置されることができる。
【0021】
前記回転軸方向で見るとき、前記前方リフタと前記後方リフタとは互いに重なり、前記前方リフタの後端は、前記後方リフタの前端より前方に配置されることができる。
【0022】
前記円周方向で見るとき、前記前方リフタと前記後方リフタとが互いに重なることができる。
【0023】
前記後方リフタは、前記ドラムの円周方向に前記前方リフタより前記位相角に対応する分だけ先立って位置することができる。
【0024】
前記前方リフタと前記後方リフタとのうち、少なくとも1つは、前記ドラムの内側に10~30mm突出されることができる。
【0025】
前記金属板材は、ステンレススチール(stainless steel)からなり、厚みが0.4~0.6mmであることができる。
【0026】
前記ドラムは、前記前方リフタの後端と前記後方リフタの前端との間の間隔に該当する領域に円周方向に延びる補強溝が形成され得る。
【0027】
前記補強溝は、前記前方リフタ外縁に対応する地点と前記後方リフタ外縁に対応する地点とを連結するように延びることができる。
【0028】
前記補強溝は、前記ドラムの長さ方向に沿って複数個が離間配置されることができる。
【0029】
前記補強溝は、前記ドラムの内周面上に形成されて、前記ドラムの外周面を膨らんで形成することができる。
【0030】
前記前方リフタの後端と前記後方リフタの前端との間の間隔に該当する領域に円周方向に延びる補強溝が形成され、前記補強溝は、前記前方リフタの外縁に対応する地点と前記後方リフタの外縁に対応する地点とを連結するように延びることができる。
【0031】
前記前方リフタの後端と前記後方リフタの前端との間及び前記前方リフタの内縁と前記後方リフタの内縁との間に該当する領域に円周方向に延びる補強溝が形成され得る。
【発明の効果】
【0032】
本発明の洗濯機は、第1に、ドラムと一体にリフタを形成し、前記リフタを前記ドラムの長さ方向に互いに離間した2つの突出部を備えて構成することで、従来の1つの長く形成された突出部からなるリフタを備えたドラムに比べて、ドラムの降伏強度(Yield strength)が向上して塑性変化を減少させることができる。
【0033】
降伏強度(Yield strength)は、塑性変形が発生する応力の大きさを意味し、降伏強度が大きければ、大きい応力にも容易に塑性変形が発生しない。
【0034】
第2に、モータによるドラム回転の際、ドラムに加えられる平均せん断応力を減少させてドラムの疲労寿命を増加させることができ、その結果、ドラムの耐久性を向上させるという効果がある。
【0035】
第3に、リフタ間に補強溝を形成し、ドラムの降伏強度と疲労寿命とを増加させて耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態に係る洗濯機の側断面図である。
【
図2】
図1に示された洗濯槽の横断面を模式的に示したものである。
【
図3】リフタが設けられたドラムを示したものである。
【
図4】
図1に示された洗濯槽の縦断面を模式的に示したものである。
【
図5】
図4のIV-IVに沿って切り取った断面図である。
【
図7】作用する応力による疲労寿命を示すグラフである。
【
図8】
図5に補強溝を付加した構造を示したものである。
【
図9】
図8のIIV-IIVに沿って切り取った断面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係るドラムの縦断面を模式的に示したものである。
【
図12】本発明のさらに他の実施形態に係るドラムの縦断面を模式的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、添付される図面とともに詳細に後述されている実施形態を参照すれば、明確になるであろう。しかしながら、本発明は、以下において開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で実現されることができ、単に本実施形態は、本発明の開示が完全なようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇により定義されるだけである。明細書全体にわたって同一参照符号は、同一構成要素を称する。
【0038】
まず、
図1を参照して本発明の実施形態に係る洗濯機の全体構造について説明する。
【0039】
本発明の実施形態に係る洗濯機は、外観を形成し、前面には、洗濯物投入口が形成されたケーシング1及び前記洗濯物投入口を開閉するドア2がケーシング1に回転可能に備えられる。
【0040】
また、ケーシング1内に配置され、洗濯水が貯留される貯水槽3と、貯水槽3内に回転可能なように設けられて洗濯物が投入される洗濯槽4と、洗濯槽4を回転させるモータ9とを備える。
【0041】
洗濯槽4は、洗濯物の入出のための開口部が形成された前面カバー41と、略水平に配置されて、前端が前面カバー41と結合される円筒形のドラム42と、ドラム42の後端に結合される後面カバー43とを備える。
【0042】
モータ9の回転軸は、貯水槽3の後壁を通過して後面カバー43と連結されることができる。洗濯槽4と貯水槽3との間に水が交流され得るように、ドラム42には通孔42hが形成され得る。
【0043】
洗濯槽4は、水平な軸を中心に回転される。ここでの「水平」は、厳密な意味での幾何学的な水平を意味するものではなく、
図1に示されたように、水平に対して所定角度で傾いた場合にも、垂直よりは水平に近い場合であるところ、洗濯槽4が水平な軸を中心に回転されるということにする。
【0044】
次いで、
図2を参考して本発明の実施形態に係る洗濯機のリフタ20構造について説明する。
【0045】
ドラム42は、前方から見るとき、円周方向に沿って離間した複数の地点に、前記金属板材を加工して形成されたリフタ20を各々備える。
【0046】
リフタ20は、複数個がドラム42の内周面上から前後方向に長く延び、望ましくは、ドラム42の中心Oに対して一定の角度(等角)で配置される。
【0047】
例えば、リフタ20は、ドラム42の中心Oに対して3等分した3つの地点または4等分した4つの地点に各々配置されることができる。
【0048】
ただし、リフタ20の配置構造は、前記記載及び図面に掲示された構造に限定されるものではなく、通常の技術者が容易に設計変更できる範囲まで含むといえるであろう。
【0049】
それぞれのリフタ20は、金属板材をドラム42の内側に10mm以上突出させて(例えば、約10~30mm)、ドラム42の長さ方向に沿って延びるように加圧して形成した前方リフタ21と後方リフタ22とを備える。
【0050】
後方リフタ22は、前方リフタ21と離間して前方リフタ21より後方に配置されることができる。
【0051】
本明細書において「後方」に配置されているとは、ドラム42に形成された前方リフタ21に比べて相対的にドア2から遠いように配置されているか、モータ9に近いように配置されていることを意味する。
【0052】
さらに、本発明の実施形態に係る後方リフタ22は、前方リフタ21と所定の位相角(Phase angle)をなして配置される。
【0053】
ここで、「位相角」は、リフタ20が円周上の1つの地点に到達するのにかかる時点をドラム42回転角度と定義し、前記位相角に対応する円周距離(D=Δθr)を表示した。実施形態では、ドラム42が時計方向に回転されると仮定するとき、後方リフタ22が前方リフタ11に比べて位相角Δθに対応する分だけ先立って同じ高さに達するようになる。
【0054】
本発明の実施形態に係る洗濯機は、ドラム42に形成されたリフタ20が前記位相角を有する前方リフタ21及び後方リフタ22を備えることにより、ドラムの強度(Strength)を向上させることができる。
【0055】
具体的に、ドラム42の降伏強度(Yield strength)を向上させて塑性変化(Plastic deformation)を減少させることができる。
【0056】
塑性変化(Plastic deformation)は、応力により変形されて回復されない状態を意味する。
【0057】
降伏強度(Yield strength)は、塑性変形が発生する応力の大きさを意味し、降伏強度が大きければ、大きい応力にも容易に塑性変形が発生しない。
これに関し、
図3~
図5を参考して詳細に説明する。
【0058】
まず、洗濯過程で回転するドラム42にはせん断応力が作用することができる。
【0059】
具体的に、モータ9は、ドラム42の後方部分でのみ結合されており、ドラム42は、薄いステンレススチール(stainless steel)、例えば、厚みが0.4~0.6mmである金属板材を丸く巻いて両端を互いに接合することができる。
【0060】
したがって、ドラム42がモータ9により加速または減速して回転するようになると、ドラム42の中間部分CPには、ドラム42を回転方向に捻るせん断応力(shear stress)が作用することができる。
【0061】
本明細書において中間部分CPは、ドラム42を二等分する仮像の正中央線を基準に所定の幅を有する領域を意味する。さらに、中間部分CPにせん断応力が作用するとは、中間部分CP以外の部分にはせん断応力が作用しないということではなく、特に、中間部分CPに主に集中されて作用することを意味する。
【0062】
具体的に、ドラム42は、一体型構造である金属板材を加工して形成したが、ドラム42の厚みが薄く、モータ9による回転力がドラム42の後方に加えられて前方に伝達される構造であるから、構造的にドラム42の前方と後方との間である中間部分CPにはせん断応力が作用することができる。
【0063】
さらには、金属板材をプレス加工して形成したリフタ20は、表面の曲率が小さく、急激な屈曲が形成された部分P1、P2を備えて、プレス20が中間部分CPに重なって配置される場合、屈曲が形成された部分P1、P2にせん断応力が集中されることができる。
【0064】
さらに、ドラム42内に水分を吸収して相当な重量である布が投入された状態でドラム42が回転される場合、中間部分CPに加えられるせん断応力が追加され得る。
【0065】
具体的に、リフタ20は、布を汲み上げる機能をして、布に支持力(Lifting force)が作用するので、支持力に対する反作用の力が作用して、ドラム42の回転の際に中間部分CPにせん断応力が付加されることができる。
【0066】
このように、金属板材を加工して一体型にリフタ20を形成したドラム42は、せん断応力集中によりドラム42の降伏強度を超えるようになると、ドラム42の形状が捻れるか、破壊される塑性変形が発生しうる。
【0067】
これにより、本発明の実施形態に係る洗濯機のドラム42は、前述したように、前記位相角を有する前方リフタ21及び後方リフタ22を備えることにより、ドラム42の降伏強度(Yield strength)を向上させて塑性変形を防止できる。
【0068】
図6に示すように、本発明の実施形態に係るドラム42は、位相角を有する前方リフタ21及び後方リフタ22により中間部分CPに作用するせん断応力を周辺に分散させて降伏強度を向上させることができる。
【0069】
具体的に、回転軸方向で見るとき、後方リフタ22は、ドラム20の円周方向に位相角の分だけ先立って位置して互いに重ならず、前方リフタ21の後端は、後方リフタ22の前端より前方に配置されることができる。
【0070】
中間部分CPは、前方リフタ21の後端と後方リフタ22の前端との間の間隔に形成されることができる。
【0071】
すなわち、前方リフタ21と後方リフタ22とは、回転軸方向及び円周方向で互いに重ならずに外れるように配置されて、中間部分CPとオーバーラップされなくならないように形成されることができる。
【0072】
したがって、前方リフタ21の後端及び後方リフタ22の前端との間の中間部分CPは、中間部分CPと延びて一体に形成された十分な広さのせん断応力拡散領域を確保することができる。
【0073】
中間部分CP作用するせん断応力は、前記せん断応力拡散領域に拡散(
図6の矢印)されて、中間部分CPにせん断応力が集中されることを防止できる。
【0074】
具体的に、中間部分CPに作用するせん断応力は、中間部分CPと延びて一体に形成された部分に拡散されることができる。
【0075】
ただし、せん断応力の拡散は、中間部分CPと同じ表面曲率を形成した場合に拡散されることができ、中間部分CPと延びて一体に形成された部分が、中間部分CPの表面曲率と大きい差の屈曲された表面を形成するならば、せん断応力の拡散が妨げられて、中間部分CPにせん断応力が集中されることができる。
【0076】
したがって、本発明の実施形態に係るドラム42は、前方リフタ21の後端、後方リフタ22の前端、及び中間部分CPにせん断応力が集中されて作用しても、中間部分CPの表面曲率と同じせん断応力拡散領域が確保されて、効果的にせん断応力を拡散させてドラム42全体の降伏強度を向上させることができるので、ドラム42の塑性変化を減少させることができる。
【0077】
ただし、せん断応力の拡散方向は、図面に掲示された方向に限定されるものではない。
【0078】
追加的に、本発明の実施形態に係るドラム42は、前述した前方リフタ21及び後方リフタ22を備えてドラム42の疲労寿命(Fatigue life、N)を増加させることができ、それにより、ドラム42の耐久性を向上させることができる。
【0079】
具体的に、ドラム42は、動的な変動応力を受ける構造物であって、降伏応力より小さい応力であっても、長期間、複数の回転により加えられた応力により破壊される疲労破壊(Fatigue failure)が発生しうる。
【0080】
これにより、本発明の実施形態に係る洗濯機は、前述した前方リフタ21と後方リフタ22とを備えて中間部分CPに加えられる平均せん断応力を減少させ、ドラム42の疲労寿命(Fatigue life、N)を増加させることができる。
【0081】
疲労寿命(Fatigue life)は、特定応力で疲労破壊を起こすのに求められる総応力サイクル回数である。
【0082】
図7に示すように、材料に加えられる平均応力の大きさが小さいほど、疲労寿命が長くなり、耐久性が向上することを確認することができる。
【0083】
これを参考として、本発明の実施形態に係るドラム42は、前方リフタ21と後方リフタ22との外れ配置構造により中間部分CPにせん断応力が集中されず、隣接したせん断応力拡散領域に拡散される。
【0084】
したがって、中間部分CPに作用する平均応力の大きさが減少し、その結果、長い疲労寿命を有し、結果的にドラム42の耐久性を向上させることができる。
【0085】
追加的な本発明の実施形態に係るドラム42は、前方リフタ21の後端と後方リフタ22の前端との間の間隔に該当する領域に円周方向に延びて形成された補強溝25を備えることができ、補強溝25は、中間部分CP内に位置することができる。
【0086】
図8及び
図9に示すように、補強溝25は、ドラム42の内周面上に形成されることができる。
【0087】
具体的に、補強溝25は、ドラム42をなす金属板材を折り曲げまたはプレシングして形成されたものである。したがって、補強溝25によりドラム42の内周面上には凹面が形成され、これと対応するドラム42の外周面上の地点には凸面が形成される。
【0088】
補強溝25は、前方リフタ21外縁21aに対応する地点と後方リフタ22外縁22aに対応する地点とを連結するように延びることができる。
【0089】
本明細書は、前方リフタ21及び後方リフタ22間に隣接した両縁を内縁21b、22b、前記内縁に反対される縁を外縁21a、22aと定義する。
【0090】
ただし、これに限らず、補強溝25は、ドラム42の外周面上に形成されることができ、この場合は、ドラム42の外周面に凹面が形成され、ドラム42の内周面には凸面が形成されるであろう。
【0091】
また、補強溝25は、複数個(望ましくは、3個以上)、深さは、3mm以上10mm未満であることができ、複数個の補強溝25は、ドラム42の長さ方向に沿って離間しており、隣接した補強溝25間は、平たくなされることができる。
【0092】
ただし、補強溝25の個数及び深さは、前記記載及び図面に掲示された内容に限定されるものではなく、通常の技術者が容易に設計変更できる範囲まで含むといえるであろう。
【0093】
本発明の実施形態に係るドラム42は、補強溝25を備えることにより、ドラム42の降伏強度を増加させることができる。
【0094】
具体的に、補強溝25は、中間部分CPに加えられるせん断応力の分散経路機能をして応力を分散させることができる。中間部分CP、特に、応力が集中される前方リフタ21の後端及び後方リフタ22の前端に隣接した部分に作用するせん断応力は、補強溝25に沿って拡散されて、周辺せん断応力拡散領域に効果的に分散されることができる。
【0095】
したがって、補強溝25を備えるドラム42は、降伏強度を向上させることができ、塑性変形をさらに減少させることができる。
【0096】
さらには、本発明の実施形態に係る補強溝25は、ドラム42の疲労寿命を向上させることができる。
【0097】
具体的に、補強溝25は、前述したように、金属板材をプレス加工して形成することができるが、プレス加工による圧縮応力が金属板材の表面に加えられて、金属板材の表面には残留圧縮応力が存在するようになる。
【0098】
金属板材の表面に存在する残留圧縮応力は、亀裂生成を抑制させることで、破損が起こる確率を減少させることができ、その結果、ドラム42の疲労寿命を向上させて、最終的に耐久性を向上させることができる。
【0099】
次いで、
図10及び
図11を参考して本発明の他の実施形態に係るドラム42について説明する。
【0100】
本実施形態に係るドラム42は、
図1~
図9を介して説明したドラム42と比較して、前方リフタ21及び後方リフタ22の配列構造及び補強溝25の配列構造が相違したことを除き、実質的に同様である。
【0101】
したがって、同じ参照符号は、同じ構成要素を称し、これにより、繰り返される説明は省略する。ここに、本実施形態に係る説明では、相違点を中心に説明する。
【0102】
本発明の他の実施形態に係るドラム42は、回転軸方向で見るとき、前方リフタ21と後方リフタ22とが互いに重なり、前方リフタ21の後端は、後方リフタ22の前端より前方に配置されることができる。
【0103】
本発明の他の実施形態に係る前方リフタ21と後方リフタ22との位相角は、前述した一実施形態に係る位相角より小さいことができる。
【0104】
本発明の他の実施形態に係るドラム42でせん断応力が印加される中間部分CPのうち、回転軸方向で見るとき、前方リフタ21及び後方リフタ22と全て重なる部分が存在しうる。
【0105】
さらには、本発明の他の実施形態に係るドラム42は、前方リフタ21の後端と後方リフタ22の前端との間の間隔に該当する領域に円周方向に延びる補強溝25が形成され得る。
【0106】
さらには、補強溝25は、前方リフタ21の外縁21aに対応する地点と後方リフタ22の外縁22aに対応する地点とを連結するように延びることができる。
【0107】
補強溝25によって本発明の他の実施形態に係るドラム25は、降伏強度と疲労寿命をさらに向上させることができ、結果的に、耐久性を強化させることができる。
【0108】
次いで、
図12及び
図13を参考して本発明のさらに他の実施形態に係るドラム42について説明する。
【0109】
本実施形態に係るドラム42は、
図1~
図9を介して説明したドラム42と比較して、前方リフタ21及び後方リフタ22の配列構造及び補強溝25の配列構造が相違したことを除き、実質的に同様である。
【0110】
したがって、同じ参照符号は、同じ構成要素を称し、これにより、繰り返される説明は省略する。ここに、本実施形態に係る説明では、相違点を中心に説明する。
【0111】
本発明のさらに他の実施形態に係るドラム42は、円周方向で見るとき、前方リフタ21と後方リフタ22とが互いに重なり得る。
【0112】
したがって、前方リフタ21の後端より後方リフタ22の前端が相対的に前方に配置されることができ、中間部分CPは、前方リフタ21と後方リフタ22との重なり部分、前方リフタ21及び後方リフタ22とも重なることができる。
【0113】
さらには、本発明のさらに他の実施形態に係るドラム42は、前方リフタ21の後端と後方リフタ22の前端との間の間隔に該当する領域に円周方向に延びる補強溝25が形成され得る。
【0114】
さらには、補強溝25は、前方リフタ21の後端と後方リフタ22の前端との間及び前方リフタ21の内縁21bと後方リフタ22の内縁22bとの間に該当する領域に円周方向に延びることができる。
【0115】
補強溝25によって本発明のさらに他の実施形態に係るドラム25は、降伏強度と疲労寿命をさらに向上させることができ、結果的に、耐久性を強化させることができる。以上では、本発明の望ましい実施形態について図示し、説明したが、本発明は、上述した特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者により様々な変形実施が可能であることはもちろんであり、このような変形実施等は、本発明の技術的思想や展望から個別的に理解されてはならないであろう。