(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】フローセルデバイスおよびその使用
(51)【国際特許分類】
G01N 37/00 20060101AFI20240607BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240607BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240607BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20240607BHJP
G01N 35/08 20060101ALI20240607BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240607BHJP
【FI】
G01N37/00 101
C12M1/00 A
C12Q1/6869 Z
G01N21/05
G01N35/08 E
C12N15/09 200
(21)【出願番号】P 2021532135
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 US2019065073
(87)【国際公開番号】W WO2020118255
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-02
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521204909
【氏名又は名称】エレメント バイオサイエンシーズ,インク.
【住所又は居所原語表記】10055 Barnes Canyon Rd Ste 210 San Diego,California 92121,U.S.A.
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ミンハオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,レオン ズルン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,チュンホン
(72)【発明者】
【氏名】ケリンジャー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】プレヴァイト,マイケル
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-511572(JP,A)
【文献】国際公開第2018/183723(WO,A1)
【文献】特表2018-522543(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0298110(US,A1)
【文献】特表2008-501150(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065499(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0090641(US,A1)
【文献】特開2000-279169(JP,A)
【文献】国際公開第2013/006549(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00、21/03-21/15
C12M 1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローセルデバイスであって、
a)
基板にエッチングされたキャピラリー
を備える基板であって、
前記キャピラリーは、該キャピラリーの内腔の内部表面
を備え、該内部表面が生体分子を固定化するように構成される、
基板と、
b)前記キャピラリーの遠位端に配置される第1の流体アダプターおよび前記キャピラ
リーの近位端に配置される第2の流体アダプターであって、前記第1の流体アダプターお
よび前記第2の流体アダプターは、それぞれポリマー材料で形成され、前記第1の流体ア
ダプターおよび前記第2の流体アダプターは、前記キャピラリー、フローセルの試料入力
ポート、または試薬リザーバに流体接続される、第1の流体アダプターおよび第2の流体
アダプターと、
c)前記キャピラリー、前記第1の流体アダプター、および前記第2の流体アダプター
を備えるカートリッジであって、前記第1の流体アダプターおよび前記第2の流体アダプ
ターは圧縮可能であり、前記キャピラリーは、前記第1の流体アダプターおよび前記第2
の流体アダプターに嵌合する際に前記カートリッジに載置される、カートリッジと
を備えるフローセルデバイス。
【請求項2】
前記キャピラリーが光透過性である、請求項1に記載のフローセルデバイス。
【請求項3】
前記キャピラリーが、ガラス、溶融シリカ、アクリル、ポリカーボネート、環状オレフ
ィンコポリマー(COC)、環状オレフィンポリマー(COP)、またはその任意の組み
合わせから製造される、請求項1に記載のフローセルデバイス。
【請求項4】
前記キャピラリーの内腔の内部表面が、それに核酸プライマーが共有結合により固定さ
れている親水性コーティングを含む、請求項1に記載のフローセルデバイス。
【請求項5】
前記核酸プライマーが、1μm
2あたり少なくとも約1000の表面密度で固定される
、請求項4に記載のフローセルデバイス。
【請求項6】
前記親水性コーティングが親水性ポリマーを含む、請求項4に記載のフローセルデバイ
ス。
【請求項7】
2つ以上の前記キャピラリーをさらに備える、請求項4に記載のフローセルデバイス。
【請求項8】
前記2つ以上のキャピラリーがそれぞれ、前記親水性コーティングを含む前記内腔の内
部表面を備える、請求項7に記載のフローセルデバイス。
【請求項9】
前記親水性コーティングが、親水性ポリマーの1つ以上の層を含み、50度未満の水接
触角を有する、請求項4に記載のフローセルデバイス。
【請求項10】
前記キャピラリーの前記内腔の内部表面の少なくとも1つの別個の領域が、前記核酸プ
ライマーにアニーリングされた複数のクローン増幅されたサンプル核酸分子を含む、請求
項4に記載のフローセルデバイス。
【請求項11】
前記複数のクローン増幅されたサンプル核酸分子が、コンカテマー配列を含む、請求項
10に記載のフローセルデバイス。
【請求項12】
前記複数のクローン増幅されたサンプル核酸分子が、真核生物ゲノム、原核生物ゲノム
、またはトランスクリプトームから得られる、請求項10に記載のフローセルデバイス。
【請求項13】
前記複数のクローン増幅されたサンプル核酸分子またはその相補的配列がフルオロフォ
アで標識され、それにより、非シグナル飽和条件下、20x対物レンズ、532nm光源
、532nmロングパス励起光に対し最適化されたバンドパスとダイクロイックミラーフ
ィルタのセット、フルオロフォアの発光に対し最適化された発光バンドパスフィルタ、お
よびsCMOSカメラを備えた倒立蛍光顕微鏡を用いて蛍光画像が取得され、その間に前
記内部表面が、25mMのN-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(A
CES)、pH7.4の緩衝液に浸漬されたとき、前記内部表面の蛍光画像が少なくとも
20のコントラスト対ノイズ比(CNR)を示す、請求項10に記載のフローセルデバイ
ス。
【請求項14】
a)第1の試薬溶液を収容するように構成される第1のリザーバと、
b)第2の試薬溶液を収容するように構成される第2のリザーバと、
c)少なくとも1つの試薬バルブと
をさらに備え、
前記第1のリザーバの第1の出口、および前記第2のリザーバの第2の出口は、前記第
1のリザーバの第1の出口から前記キャピラリーの入口へと流れる前記第1の試薬溶液の
体積が、前記第2のリザーバの第2の出口から前記キャピラリーの入口へと流れる前記第
2の試薬の体積よりも小さくなるように、前記キャピラリーの入口に前記少なくとも1つ
の試薬バルブを介して流体結合されている、請求項1に記載のフローセルデバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの試薬バルブがダイヤフラムバルブである、請求項14に記載のフ
ローセルデバイス。
【請求項16】
前記少なくとも1つの試薬バルブの第1のバルブと第2のバルブをさらに備え、前記第
1のリザーバの第1の出口は前記キャピラリーの入口に前記第1のバルブを介して流体結
合され、前記第2のリザーバの第2の出口は前記キャピラリーの入口に前記第2のバルブ
を介して流体結合されている、請求項14に記載のフローセルデバイス。
【請求項17】
前記第1の流体アダプターまたは前記第2の流体アダプターに機械結合された少なくと
も1つのバルブをさらに備え、該少なくとも1つのバルブは、流体制御システムのリザー
バの出口、および前記第1の流体アダプターまたは前記第2の流体アダプターと流体連通
状態にある、請求項1に記載のフローセルデバイス。
【請求項18】
前記第1のリザーバの出口が、前記第2のリザーバの出口よりも前記キャピラリーの入
口の近くに位置している、請求項14に記載のフローセルデバイス。
【請求項19】
a)第1の溶液を収容するように構成されるリザーバと、
b)前記第1の流体アダプターまたは前記第2の流体アダプターに機械結合される少な
くとも1つのバルブであって、前記リザーバの出口、および前記カートリッジに収容され
る前記キャピラリーの入口と流体連通状態にある、少なくとも1つのバルブと
をさらに備える、請求項1に記載のフローセルデバイス。
【請求項20】
前記第1の試薬溶液が、反応に特異的な試薬を含み、前記第2の試薬溶液が、前記キャ
ピラリーに生じる複数の反応に共通する少なくとも1つの試薬を含む、請求項16に記載
のフローセルデバイス。
【請求項21】
前記第2の試薬溶液が、溶媒、ポリメラーゼ、およびdNTPからなる群から選択され
る少なくとも1つの試薬を含む、請求項16に記載のフローセルデバイス。
【請求項22】
前記カートリッジが、前記キャピラリーに熱結合される温度調節コンポーネントを備え
る、請求項1に記載のフローセルデバイス。
【請求項23】
前記温度調節コンポーネントが、ヒートブロック、気流のためのコース、またはファン
を含む、請求項22に記載のフローセルデバイス。
【請求項24】
前記カートリッジが、前記カートリッジを開いて前記キャピラリーにアクセスするよう
に機械結合されて構成される、ネジ、クリップ、クランプ、または固定具を有するシャー
シを含む、請求項1に記載のフローセルデバイス。
【請求項25】
前記ポリマー材料が、ガラス、溶融シリカ、セラミック、金属、ポリジメチルシロキサ
ン、ポリスチレン(PS)、マクロポーラスポリスチレン(MPPS)、ポリメチルメタ
クリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエ
チレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、環状オレフィンポリマー(COP)
、環状オレフィンコポリマー(COC)、もしくはポリエチレンテレフタレート、または
それらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載のフローセルデバイス。
【請求項26】
前記カートリッジが、ガラス、溶融シリカ、アクリル、ポリカーボネート、環状オレフ
ィンコポリマー(COC)、環状オレフィンポリマー(COP)、またはそれらの任意の
組み合わせを含む材料で製造された
コンポーネントを含む、請求項1に記載のフローセルデバイス。
【請求項27】
前記第1の流体アダプターおよび前記第2の流体アダプターがフルオロエラストマーを
含む、請求項1に記載のフローセルデバイス。
【請求項28】
前記第1の流体アダプターおよび前記第2の流体アダプターがシリコーンを含む、請求
項1に記載のフローセルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年12月7日に出願された米国仮特許出願第62/776,827号と、2019年8月27日に出願された米国仮特許出願第62/892,419号の利益を主張するものであり、これらは各々、その全体における引用により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
フローセルデバイスは、化学やバイオテクノロジーの分野で広く使用されている。特に次世代シーケンシング(NGS)システムでは、このようなデバイスを使用して、生体試料に由来する鋳型核酸分子を固定化し、その後、合成によるシーケンシング(sequencing-by-synthesis)用の試薬を繰り返し流して、鋳型配列の特定の位置に標識ヌクレオチドを付着させる。一連の標識信号が検出され、復号されることで、鋳型分子、例えば、フローセルの内部表面に取り付けられた固定および/または増幅された核酸鋳型分子のヌクレオチド配列が明らかになる。
【0003】
典型的なNGSフローセルは、平面基板および他のフローセルコンポーネントから作製された多層構造であり(例えば、特許文献1を参照)、これらはその後、機械的、化学的、またはレーザー接合技術によって接合されて、流体流路が形成される。このようなフローセルは通常、必要とされる設計仕様を達成するために、コストのかかる多段階の精密な製造技術を必要とする。一方で、安価で既製品の単一内腔(流路)キャピラリーは、様々なサイズと形状で入手可能であるが、一般的に、取り扱いの容易さや、NGSなどの用途に必要とされる試薬の反復的な切り替えとの互換性には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2018/0178215A1号
【発明の概要】
【0005】
本明細書には、核酸を配列決定するための新規のフローセルデバイスおよびシステムが記載されている。本明細書に記載されるデバイスおよびシステムは、試薬のより効率的な使用を達成し、DNA配列決定プロセスのコストおよび時間を削減するのに役立つ。本デバイスおよび本システムは、市販されている既製品のキャピラリー、または選択されたパターンのチャネルを有するマイクロスケールまたはナノスケールの流体チップを利用することができる。本明細書に記載されるフローセルデバイスおよびシステムは、迅速なDNA配列決定に適しており、他のDNA配列決定技術と比較して、高価な試薬のより効率的な使用を達成し、試料の前処理および複製に必要な時間を短縮するのに役立つ。結果として、はるかに高速で費用対効果の高いシーケンシング方法を実現することができる。
【0006】
いくつかの実施形態は、フローセルデバイスに関し、上記フローセルデバイスは、第1の溶液を収容し、入口端部および出口端部を有する第1のリザーバであって、第1の薬剤が第1のリザーバ内で入口端部から出口端部へと流れる、第1のリザーバと、第2の溶液を収容し、入口端部および出口端部を有する第2のリザーバであって、第2の薬剤が第2のリザーバ内で入口端部から出口端部へと流れる、第2のリザーバと、少なくとも1つのバルブを介して、前記第1のリザーバの出口端部および前記第2のリザーバの出口端部に流体結合された入口端部を有する中央領域と、を備え、ここで、第1のリザーバの出口から中央領域の入口へと流れる第1の溶液の体積が、第2のリザーバの出口から中央領域の入口へと流れる第2の溶液の体積よりも小さい。
【0007】
いくつかの実施形態はフローセルデバイスに関し、フローセルデバイスは、フレームワークと、フローセルに適合する複数の反応に共通する試薬を保持する複数のリザーバと、反応に特異的な試薬を保持する単一のリザーバと、1)複数のリザーバからの複数の非特異的な試薬の取り込みをゲートする第1のダイヤフラムバルブと、2)第2のダイヤフラムバルブに近接するソースリザーバからの単一の試薬の取り込みをゲートする第2のダイヤフラムバルブとを有する取り外し可能なキャピラリーと、を備える。
【0008】
いくつかの実施形態はフローセルデバイスに関し、フローセルデバイスは、フレームワークと、フローセルに適合する複数の反応に共通する試薬を保持する複数のリザーバと、反応に特異的な試薬を保持する単一のリザーバと、1)複数のリザーバからの複数の非特異的な試薬の取り込みをゲートする第1のダイヤフラムバルブと、2)第2のダイヤフラムバルブに近接するソースリザーバからの単一の試薬の取り込みをゲートする第2のダイヤフラムバルブとを有する取り外し可能または取り外し不可能なキャピラリーと、3)随意に、マウント用の統合体(embodiment)であって、これによって、キャピラリーは、インデックスマウント媒体を介してガラス基板に取り付け/マウントされる、マウント用の統合体と、を備える。
【0009】
いくつかの実施形態はフローセルデバイスに関し、フローセルデバイスは、a)交換可能である1つ以上のキャピラリーと、b)1つ以上のキャピラリーに取り付けられ、および、1つ以上のキャピラリーの各々とフローセルデバイスの外部にある流体制御システムとの間で流体連通を提供する管とかみ合うように構成された、2つ以上の流体アダプターと、および、c)随意に、1つ以上のキャピラリーがカートリッジに対して固定された配向で保持されるように、1つ以上のキャピラリーとかみ合うように構成されたカートリッジと、を備え、ここで、2つ以上の流体アダプターは、カートリッジと、随意に、マウント用の統合体と一体化しており、それによって、キャピラリーは、インデックスマウント媒体を介してガラス基板に取り付け/マウントされる。
【0010】
いくつかの実施形態は、核酸試料および第2の核酸試料を配列決定する方法であって、前記方法は、複数のオリゴヌクレオチドを、少なくとも部分的に透過性のチャンバの内部表面に送達する工程と、第1の核酸試料を内部表面に送達する工程と、複数の非特異的な試薬を、第1のチャネルを介して内部表面に送達する工程と、特異的な試薬を、第2のチャネルを介して内部表面に送達する工程であって、ここで、第2のチャネルは第1のチャネルよりも小さい体積を有する、工程と、少なくとも部分的に透過性のチャンバの内部表面で配列決定反応を視覚化する工程と、2回目の配列決定反応の前に、少なくとも部分的に透過性のチャンバを交換する工程と、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態は、配列決定反応で使用される試薬を減らす方法に関し、上記方法は、第1のリザーバに第1の試薬を提供する工程と、第2のリザーバに第2の試薬を提供する工程であって、ここで、第1のリザーバと第2のリザーバの各々が中央領域に流体結合され、および、中央領域が配列決定反応のための表面を含む、工程と、ならびに、フローセルデバイスの中央領域に第1の試薬と第2の試薬を順次導入する工程であって、ここで、第1のリザーバから中央領域の入口へと流れる第1の試薬の体積が、第2のリザーバから中央領域へと流れる第2の試薬の体積よりも小さい、工程と、を含む。
【0012】
いくつかの実施形態は、配列決定反応中の試薬の効率的な使用を増加させる方法に関し、上記方法は、第1のリザーバに第1の試薬を提供する工程と、第2のリザーバに第2の試薬を提供する工程であって、ここで、第1のリザーバと第2のリザーバの各々が中央領域に流体結合され、および、中央領域が配列決定反応のための表面を含む、工程と、ならびに、第1のリザーバから中央領域の入口へと流れる第1の試薬の体積を、第2のリザーバから中央領域へと流れる第2の試薬の体積よりも小さくなるように維持する工程と、を含む。
【0013】
引用による組み込み
本明細書で言及されるすべての出版物、特許、および、特許出願は、各々の出版物、特許、または、特許出願が、特異的にかつ個別に参照することによって組み込まれると意図されるのと同じ程度まで、全体として参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書の用語と引用される文献の用語との間で矛盾が生じる場合には、本明細書の用語の方が優先される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
特許または出願のファイルは、色つきで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面を有するこの特許または特許出願公開のコピーが、必要な料金の請求および支払い後に当該事務局によって提供される。
【0015】
本発明の新規な特徴はとりわけ添付の請求項で説明される。本発明の特徴と利点をより良く理解するには、本発明の原理が用いられる例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明と添付図面とを参照されたい。
【
図1】2つの流体工学アダプターを有する1つのキャピラリーフローセルの1つの実施形態を例証する。
【
図2】シャーシ、流体アダプター、および2つのキャピラリーを含む、フローセルカートリッジの1つの実施形態を例証する。
【
図3】様々な流体流制御コンポーネントに接続された1つのキャピラリーフローセルを含むシステムの1つの実施形態を例証し、ここで、1つのキャピラリーは、様々な画像化用途で使用するために、顕微鏡ステージ上またはカスタム画像化機器へのマウントに適合している。
【
図4】デッドボリュームを最小限に抑えて、かつある重要な試薬を保存するために、一体型のダイヤフラムバルブを有するキャピラリーフローセルカートリッジを含むシステムの1つの実施形態を例証する。
【
図5】キャピラリーフローセル、顕微鏡セットアップ、および温度調節機構を含むシステムの1つの実施形態を例証する。
【
図6】フローセルカートリッジに接触して配置される金属板の使用を介するキャピラリーフローセルの温度調節のための1つの非限定的な例を例証する。
【
図7】非接触熱制御機構を含むキャピラリーフローセルの温度調節のための1つの非限定的なアプローチを例証する。
【
図8】キャピラリー内腔におけるクラスター増幅の視覚化を例証する。
【
図9A】フローセルデバイス調製の非限定的な例を例証する。
図9Aは、1片のガラスフローセルの調製を示す。
【
図9B】フローセルデバイス調製の非限定的な例を例証する。
図9Bは、2片のガラスフローセルの調製を示す。
【
図9C】フローセルデバイス調製の非限定的な例を例証する。
図9Cは、3片のガラスフローセルの調製を示す。
【
図10A】ガラスフローセル設計の非限定的な例を例証する。
図10Aは、1片のガラスフローセル設計を示す。
【
図10B】ガラスフローセル設計の非限定的な例を例証する。
図10Bは、2片のガラスフローセル設計を示す。
【
図10C】ガラスフローセル設計の非限定的な例を例証する。
図10Cは、3片のガラスフローセル設計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例えば、フローセル中の増幅された核酸アレイから、または固定された核酸のアレイから、多数の異なる核酸配列を分析するシステムおよびデバイスが本明細書に記載されている。本明細書に記載されるシステムおよびデバイスは、例えば、比較ゲノミクス、遺伝子発現の追跡、マイクロRNA配列分析、エピゲノミクス、ならびにアプタマーおよびファージディスプレイライブラリの特性評価のための配列決定、ならびに他の配列決定用途にも有用である。本明細書のシステムおよびデバイスは、光学的、機械的、流体的、熱的、電気的、およびコンピューティングのデバイス/態様の様々な組み合わせを含む。開示されたフローセルデバイス、カートリッジ、およびシステムによってもたらされる利点としては、限定されないが、以下が挙げられる:(i)デバイスおよびシステムの製造の複雑さとコストの低減、(ii)(例えば、現在入手可能な核酸シーケンシングシステムのコストと比較した)消耗品コストの大幅な低下、(iii)典型的なフローセル表面の機能化方法との互換性、(iv)マイクロ流体コンポーネント(例えば、シリンジポンプおよびダイヤフラムバルブなど)と組み合わせた場合の柔軟な流れ制御、および(v)柔軟なシステムスループット。
【0017】
本明細書には、流体アダプター、カートリッジシャーシ、1つ以上の一体型の流体流制御コンポーネント、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る、既製品の使い捨ての単一内腔(例えば、単一流体流路)キャピラリーから構成されるキャピラリーフローセルデバイスおよびキャピラリーフローセルカートリッジが記載されている。本明細書では、1つ以上のキャピラリーフローセルデバイス、1つ以上のキャピラリーフローセルカートリッジ、流体流制御モジュール、温度調節モジュール、画像化モジュール、またはそれらの任意の組み合わせを含み得るキャピラリーフローセルベースのシステムも開示されている。
【0018】
開示されているいくつかのキャピラリーフローセルデバイス、カートリッジ、およびシステムの設計上の特徴としては、限定されないが、(i)単一の流路構造、(ii)システムとキャピラリーとの間の流体インターフェースが確実に密封され、キャピラリーの交換とシステムの再利用を容易にし、温度やpHなどの反応条件の正確な制御を可能にするような、単純なロード/アンロード機構で実施され得る試薬フロー間の密封された信頼性の高い反復的な切り替え、(iii)柔軟なシステムスループットを提供するために区別なく使用することができる、交換可能な単一流体流路デバイスまたは複数の流路を含むキャピラリーフローセルカートリッジ、および(iv)蛍光画像化などの多様な検出方法に対する適合性が挙げられる。
【0019】
開示された単一フローセルデバイスおよびシステム、キャピラリーフローセルカートリッジ、キャピラリーフローセルベースのシステム、マイクロ流体チップフローセルデバイス、およびマイクロ流体チップフローセルシステムは、主に核酸配列決定用のための使用の文脈で記載されているが、開示されたデバイスおよびシステムの様々な態様は、核酸配列決定だけでなく、任意の他のタイプの化学分析、生化学分析、核酸分析、細胞分析、または組織分析用途にも適用することができる。開示されたデバイスおよびシステムの異なる態様は、個別に、集合的に、または互いに組み合わせて評価できることを理解されたい。
【0020】
定義:特に定義されていない限り、本明細書で使用される専門用語はすべて、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0021】
本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明確に指示されない限り、複数の言及も含む。「または」への任意の言及は、別段の定めがない限り、「および/または」を包含することを意図している。
【0022】
本明細書で使用されるように、「約」との用語が付く数字は、その数字のプラスまたはマイナス10%の数字を指す。範囲の文脈で使用される際の「約」との用語は、最低値のマイナス10%、および最大値のプラス10%の範囲を指す。
【0023】
本明細書で使用されるように、一連の文脈における「少なくとも1つの(at least one of)」というフレーズは、単独で、または場合によっては列挙されていないコンポーネントと組み合わせて、一連の単一のメンバー、一連の2つのメンバー、一連のすべてのメンバーまでを含むリストを包含する。
【0024】
本明細書で使用されるように、蛍光は、表面上のオリゴの対応するセグメントに対して逆相補性の領域を有し、前記対応するセグメントにアニーリングされた核酸を介するなどして、表面にアニールされたまたは他の方法で固定されたフルオロフォアから生じる場合、「特異的」である。この蛍光は、そのようなアニーリングプロセスによって表面に固定されていない蛍光体から生じる蛍光、または、場合によっては表面のバックグラウンド蛍光と対比される。
【0025】
核酸:本明細書で使用されるように、「核酸」(「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「リボ核酸(RNA)」、または「デオキシリボ核酸(DNA)」とも呼ばれる)は、共有結合したヌクレオシド間結合によって連結された2つ以上のヌクレオチドの直鎖状ポリマー、またはその変異体もしくは機能的断片である。核酸の自然発生例では、ヌクレオシド間結合は典型的にはリン酸ジエステル結合である。しかしながら、他の例は随意に、ホスホロチオレート結合などの他のヌクレオシド間結合を含み、リン酸基を含むこともあれば、含まないこともある。核酸は、二本鎖および一本鎖のDNA、ならびに二本鎖および一本鎖のRNA、DNA/RNAハイブリッド、ペプチド-核酸(PNA)、PNAとDNAまたはRNAとのハイブリッドを含み、他のタイプの核酸修飾も含むこともある。
【0026】
本明細書で使用されるように、「ヌクレオチド」はヌクレオチド、ヌクレオシド、またはそのアナログを指す。場合によっては、ヌクレオチドは、プリン塩基またはピリミジン塩基のN-グリコシドまたはC-グリコシドである(例えば、2-デオキシ-D-リボースまたはリボヌクレオシド含有D-リボースを含有するデオキシリボヌクレオシド)。他のヌクレオチドアナログの例としては、限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチドなどが挙げられる。
【0027】
核酸は、例えば、核酸の5’末端または3’末端のいずれかとの共有結合または非共有結合を介して、標識および他の小分子、大分子(タンパク質、脂質、糖など)、および固体または半固体の支持体などの1つ以上の非ヌクレオチド部分に随意に結合してもよい。標識は、当業者に知られている様々な検出方法のいずれかを用いて検出可能であり、したがって、結合したオリゴヌクレオチドまたは核酸を同様に検出可能にする任意の部分を含む。一部の標識は、光学的に検出可能であるか、または目に見える電磁放射線を発する。代替的に、または、組み合わせて、いくつかの標識は、標識されたオリゴヌクレオチドまたは核酸を質量スペクトルデータで可視化する質量タグ、あるいは、標識されたオリゴヌクレオチドまたは核酸をアンペロメトリーまたはボルタンメトリーによって検出可能にするレドックスタグを含む。いくつかの標識は、標識されたオリゴヌクレオチドまたは核酸の分離および/または精製を容易にする磁気タグを含む。ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドはしばしば、標識に結合されず、オリゴヌクレオチドまたは核酸の存在が直接検出される。
【0028】
フローセルデバイス:フローセルデバイスが本明細書で開示され、上記フローセルデバイスは、第1の溶液を収容し、入口端部および出口端部を有する第1のリザーバであって、第1の薬剤が第1のリザーバ内で入口端部から出口端部へと流れる、第1のリザーバと、第2の溶液を収容し、入口端部および出口端部を有する第2のリザーバであって、第2の薬剤が第2のリザーバ内で入口端部から出口端部へと流れる、第2のリザーバと、少なくとも1つのバルブを介して、前記第1のリザーバの出口端部および前記第2のリザーバの出口端部に流体結合された入口端部を有する中央領域と、を備える。フローセルデバイスにおいて、第1のリザーバの出口から中央領域の入口へと流れる第1の溶液の体積が、第2のリザーバの出口から中央領域の入口へと流れる第2の溶液の体積よりも小さい。
【0029】
上記デバイスにおいて記載されるリザーバは、様々な試薬を収容するために使用することができる。いくつかの態様では、第1のリザーバで収容される第1の溶液は、第2のリザーバで収容される第2の溶液とは異なる。第2の溶液は中央領域で生じる複数の反応に共通する少なくとも1つの試薬を含む。いくつかの態様では、第2の溶液は、溶媒、ポリメラーゼ、およびdNTPからなるリストから選択された少なくとも1つの試薬を含む。いくつかの態様では、第2の溶液は低コスト試薬を含む。いくつかの態様では、第1のリザーバは、第1のバルブを介して中央領域に流体結合され、および第2のリザーバは第2のバルブを介して中央領域に流体結合される。バルブはダイヤフラムバルブまたは適切なバルブであり得る。
【0030】
フローセルデバイスの設計は、特に様々な配列決定工程で使用される高価な試薬について、他の配列決定デバイスよりも反応試薬の効率的な使用を実現することができる。いくつかの態様では、第1の溶液は試薬を含み、第2の溶液は試薬を含み、第1の溶液中の試薬は第2の溶液中の試薬よりも高価である。いくつかの態様では、第1の溶液は反応に特異的な試薬を含み、第2の溶液は中央領域で発生するすべての反応に共通する非特異的な試薬を含み、および、反応に特異的な試薬は、非特異的な試薬よりも高価である。いくつかの態様では、第1のリザーバは、第1の溶液を送達するためのデッドボリュームを減らすために、中央領域の入口に近接して配置される。いくつかの態様では、第1のリザーバは、第2のリザーバよりも中央領域の入口に近接して配置される。いくつかの態様では、反応に特異的な試薬は、複数のリザーバから第1のダイヤフラムバルブへの複数の非特異的な試薬の送達に対するデッドボリュームを減らすために、第2のダイヤフラムバルブに近接して構成される。
【0031】
中央領域:中央領域は、1つ以上のマイクロ流体チャネルを有するキャピラリーチューブまたはマイクロ流体チップを含むことができる。いくつかの実施形態では、キャピラリーチューブは既製品である。キャピラリーチューブまたはマイクロ流体チップはさらに、デバイスから取り外し可能であり得る。いくつかの実施形態では、キャピラリーチューブまたはマイクロ流体チャネルは、真核生物のゲノムを配列決定するために方向付けられたオリゴヌクレオチド集団を含む。いくつかの実施形態では、中央領域中のキャピラリーチューブまたはマイクロ流体チャネルは、取り外し可能であり得る。
【0032】
キャピラリーフローセルデバイス:本明細書では、単一のキャピラリー、および、キャピラリーの一端または両端に取り付けられた1つまたは2つの流体アダプターを含む単一キャピラリーフローセルデバイスが開示され、ここで、キャピラリーは、指定された断面積と長さの流体流路を提供し、および、流体アダプターは、外部の流体制御システムとの便利で交換可能な流体接続を提供するために、標準的な管とかみ合うように構成される。
【0033】
図1は、標準的なOD流体管とかみ合うように設計された、2つの流体アダプター-ガラスキャピラリーの片の各端部に1つずつ取り付けられている-を含む単一のガラスキャピラリーフローセルデバイスの非限定的な一例を例証している。流体アダプターは、限定されないが、圧入、接着剤による接合、溶媒接合、レーザー溶接など、またはこれらの組み合わせを含む、当業者に知られている様々な技術のいずれかを用いて、キャピラリーに取り付けることができる。
【0034】
一般に、開示されたフローセルデバイス(および、以下に説明するフローセルカートリッジ)で使用されるキャピラリーは、キャピラリーの全長に延びる少なくとも1つの内部の軸方向に位置合わせされた流体流路(または「内腔」)を有する。いくつかの態様では、キャピラリーは、2つ、3つ、4つ、5つ、または5つよりも多くの内部の軸方向に位置合わせされた流体流路(または「内腔」)を有することができる。
【0035】
単一キャピラリー(またはその内腔)の多数の指定された断面形状は、限定されないが、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、丸みを帯びた正方形、丸みを帯びた長方形、または丸みを帯びた三角形の断面形状を含む、本明細書の開示に一致する。いくつかの態様では、単一のキャピラリー(またはその内腔)は、任意の指定された断面寸法または寸法のセットを有することができる。例えば、いくつかの態様では、キャピラリーの内腔の最大の断面寸法(例えば、内腔が円形の形状である場合は直径、内腔が正方形または長方形の形状である場合は対角線)は、約10μm~約10mmの範囲であってもよい。いくつかの態様では、キャピラリー内腔の最大の断面寸法は、少なくとも10μm、少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも75μm、少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、少なくとも500μm、少なくとも600μm、少なくとも700μm、少なくとも800μm、少なくとも900μm、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mm、少なくとも5mm、少なくとも6mm、少なくとも7mm、少なくとも8mm、少なくとも9mm、または少なくとも10mmであってもよい。いくつかの態様では、キャピラリー内腔の最大の断面寸法は、最大で10mm、最大で9mm、最大で8mm、最大で7mm、最大で6mm、最大で5mm、最大で4mm、最大で3mm、最大で2mm、最大で1mm、最大で900μm、最大で800μm、最大で700μm、最大で600μm、最大で500μm、最大で400μm、最大で300μm、最大で200μm、最大で100μm、最大で75μm、最大で50μm、最大で25μm、または最大で10μmであってもよい。この段落に記載されている下限値と上限値のいずれかを組み合わせて、本開示に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの態様では、キャピラリー内腔の最大の断面寸法は、約100μm~約500μmの範囲であってもよい。当業者であれば、キャピラリー内腔の最大の断面寸法は、この範囲内の任意の値、例えば、約124μmを有してもよいことを認識するであろう。
【0036】
本開示された単一キャピラリーフローセルデバイスまたはフローセルカートリッジを作製するために使用される1つ以上のキャピラリーの長さは、約5mm~約5cmまたはそれ以上の範囲であってもよい。いくつかの例では、1つ以上のキャピラリーの長さは、5mm未満、少なくとも5mm、少なくとも1cm、少なくとも1.5cm、少なくとも2cm、少なくとも2.5cm、少なくとも3cm、少なくとも3.5cm、少なくとも4cm、少なくとも4.5cm、または少なくとも5cmであってもよい。いくつかの例では、1つ以上のキャピラリーの長さは、最大で5cm、最大で4.5cm、最大で4cm、最大で3.5cm、最大で3cm、最大で2.5cm、最大で2cm、最大で1.5cm、最大で1cm、または最大で5mmであってもよい。この段落に記載されている下限値と上限値のいずれかを組み合わせて、本開示に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、1つ以上のキャピラリーの長さは、約1.5cm~約2.5cmの範囲であってもよい。当業者であれば、1つ以上のキャピラリーの長さは、この範囲内の任意の値、例えば、約1.85cmを有してもよいことを認識するであろう。いくつかの例では、デバイスまたはカートリッジは、同じ長さである複数の2つ以上のキャピラリーを含んでもよい。いくつかの例では、デバイスまたはカートリッジは、異なる長さの複数の2つ以上のキャピラリーを含んでもよい。
【0037】
場合によっては、キャピラリーは、約または正確に50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、または500umのギャップ高さ、またはそれによって定義される範囲内に入る任意の値を有する。好ましい実施形態は、約50um~200um、50um~150um、またはそれに匹敵するギャップ高さのギャップ高さを有する。開示された単一キャピラリーフローセルデバイスまたはキャピラリーフローセルカートリッジを構築するために使用されるキャピラリーは、限定されないが、ガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラスなど)、溶融シリカ(石英)、ポリマー(例えば、ポリスチレン(PS)、マクロポーラスポリスチレン(MPPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)など)、より化学的に不活性な代替品としてポリエーテルイミド(PEI)およびパーフルオロエラストマー(FFKM)など)を含む、当業者に知られている様々な材料のいずれかから製造されてもよい。PEIは、コストと互換性の観点から、ポリカーボネートとPEEKの中間に位置する。FFKMは、Kalrez(カレッツ)またはその組み合わせとしても知られている。
【0038】
開示された単一キャピラリーフローセルデバイスまたはキャピラリーフローセルカートリッジを構築するために使用されるキャピラリーは、当業者に知られている様々な技術のいずれかを使用して作製されてもよく、ここで、作製技術の選択はしばしば、使用される材料の選択に依存し、その逆もまた然りである。適切なキャピラリー製造技術の例としては、限定されないが、押出成形、絞り加工、精密なコンピュータ数値制御(CNC)機械加工およびボーリング、レーザー光アブレーションなどが挙げられる。単品のフローセルに適合させるための任意の三次元構造を作製するために、デバイスは、流し込み成形または射出成形され得る。
【0039】
精密なキャピラリー管を提供している市販業者の例としては、Accu-Glass(ミズーリ州セントルイス、精密なガラスキャピラリー管)、Polymicro Technologies(アリゾナ州フェニックス、精密なガラスおよび溶融シリカキャピラリー管)、Friedrich & Dimmock,Inc.(ニュージャージー州ミルヴィル、カスタムの精密なガラスキャピラリー管)、Drummond Scientific(ペンシルバニア州ブルームオール、OEMガラスおよびプラスチックキャピラリー管)が挙げられる。
【0040】
マイクロ流体チップフローセルデバイス:さらに、本明細書では、1つ以上のマイクロ流体チップと、マイクロ流体チップの一端または両端に取り付けられた1つまたは2つの流体アダプターとを含むフローセルデバイスも含まれることが開示され、ここで、マイクロ流体チップは、指定された断面積と長さの1つ以上の流体流路を提供し、および、流体アダプターは、外部の流体制御システムとの便利で交換可能な流体接続を提供するために、マイクロ流体チップとかみ合うように構成される。
【0041】
2つの流体アダプター-マイクロ流体チップの各端部(例えば、マイクロ流体チャネルの入り口)に1つずつ取り付けられている-を含むマイクロ流体チップフローセルデバイスの非限定的な例を例証している。流体アダプターは、限定されないが、圧入、接着剤による接合、溶媒接合、レーザー溶接など、またはこれらの組み合わせを含む、当業者に知られている様々な技術のいずれかを用いて、チップまたはチャネルに取り付けることができる。いくつかの例では、チップ上のマイクロ流体チャネルの入口および/または出口は、チップの上面の開口部であり、流体アダプターはマイクロ流体チップの入口および出口に取り付けまたは結合可能である。
【0042】
中央領域がマイクロ流体チップを含む場合、開示されたフローセルデバイスで使用されるチップマイクロ流体チップは、1つ以上のチャネルを有する少なくとも単一の層を有する。いくつかの態様では、マイクロ流体チップは、1つ以上のチャネルを形成するために一緒に接合された2つの層を有する。いくつかの態様では、マイクロ流体チップは、1つ以上のチャネルを形成するために一緒に接合された3つの層を含むことができる。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネルは、オープントップを有する。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネルは、最上層と最下層の間に配置されている。
【0043】
一般に、開示されたフローセルデバイス(および、以下に説明するフローセルカートリッジ)で使用されるマイクロ流体チップは、チップの全長または一部の長さに延びる少なくとも1つの内部の軸方向に位置合わせされた流体流路(または「内腔」)を有する。いくつかの態様では、マイクロ流体チップは、2つ、3つ、4つ、5つ、または5つよりも多くの内部の軸方向に位置合わせされたマイクロ流体チャネル(または「内腔」)を有することができる。マイクロ流体チャネルは複数のフレームに分割することができる。
【0044】
単一のチャネルのための多数の指定された断面形状は、限定されないが、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、丸みを帯びた正方形、丸みを帯びた長方形、または丸みを帯びた三角形の断面形状を含む、本明細書の開示に一致する。いくつかの態様では、チャネルは、任意の指定された断面寸法または寸法のセットを有することができる。
【0045】
開示されたフローセルデバイスまたはフローセルカートリッジを構築するために使用されるマイクロ流体チップは、限定されないが、ガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラスなど)、石英、ポリマー(例えば、ポリスチレン(PS)、マクロポーラスポリスチレン(MPPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)など)、より化学的に不活性な代替品としてポリエーテルイミド(PEI)およびパーフルオロエラストマー(FFKM)など)を含む、当業者に知られている様々な材料のいずれかから製造されてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップは石英を含む。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップはホウケイ酸ガラスを含む。
【0046】
記載されたフローセルデバイスまたはフローセルカートリッジを構築するために使用されるマイクロ流体チップは、当業者に知られている様々な技術のいずれかを使用して作製されてもよく、ここで、作製技術の選択はしばしば、使用される材料の選択に依存し、その逆もまた然りである。チップ上のマイクロ流体チャネルは、表面にマイクロ構造またはマイクロパターンを形成するのに適した技術を用いて構築することができる。いくつかの態様では、チャネルは、レーザー照射によって形成される。いくつかの態様では、マイクロ流体チャネルは、集束フェムト秒レーザー照射によって形成される。いくつかの態様では、マイクロ流体チャネルは、限定されないが、化学エッチングまたはレーザーエッチングを含むエッチングによって形成される。
【0047】
マイクロ流体チャネルがエッチングによってマイクロ流体チップ上に形成される場合、マイクロ流体チップは少なくとも1つのエッチング層を含む。いくつかの態様では、マイクロ流体チップは、1つの非エッチング層と、1つの非エッチング層とを含むことができ、エッチング層は、非エッチング層がチャネルのための最下層またはカバー層を形成するように、非エッチング層に接合されている。いくつかの態様では、マイクロ流体チップは、1つの非エッチング層と、2つの非エッチング層とを含むことができ、ここで、エッチング層は2つの非エッチング層の間に配置される。
【0048】
本明細書に記載されるチップは、チップの表面にエッチングされた1つ以上のマイクロ流体チャネルを含む。マイクロ流体チャネルは、<1nm~1000μmの少なくとも1つの最小寸法を有する流体導管として定義される。マイクロ流体チャネルは、レーザー照射(例えば、フェムト秒レーザー照射)、リソグラフィー、化学エッチング、およびその他の適切な方法などの、いくつかの異なる方法によって作製することができる。チップ表面のチャネルは、選択的なパターニングおよびプラズマエッチングまたは化学的なエッチングによって作ることができる。チャネルは開いていてもよく、チップに表面下チャネルまたは埋設チャネルを作るために、頂部の等角の蒸着フィルムまたは層で密封可能である。いくつかの実施形態では、チップ上の犠牲層を除去することでチャネルが形成される。この方法は、バルクウエハをエッチングで除去する必要はない。その代わりに、チャネルはウェハの表面に配置される。ダイレクトリソグラフィの例としては、電子ビーム直接描画および集束イオンビームミリングが挙げられる。
【0049】
このマイクロ流体チャネルシステムは、DNA塩基の信号を捕捉または検出するための画像化システムと結合されている。ガラス基板またはシリコン基板上に作製されたマイクロ流体チャネルシステムは、およそ<1nm~1000μmのチャネル高さおよび幅を有する。例えば、いくつかの実施形態では、チャネルは、1~50μm、1~100μm、1~150μm、1~200μm、1~250μm、1~300μm、50~100μm、50~200μm、または50~300μm、または300μmよりも大きいか、あるいはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲の深さを有してもよい。いくつかの実施形態では、チャネルは、3mm以上の深さを有してもよい。いくつかの実施形態では、チャネルは、30mm以上の深さを有してもよい。いくつかの実施形態では、チャネルは、0.1mm未満、0.1mm~0.5mm、0.1mm~1mm、0.1mm~5mm、0.1mm~10mm、0.1mm~25mm、0.1mm~50mm、0.1mm~100mm、0.1mm~150mm、0.1mm~200mm、0.1mm~250mm、1mm~5mm、1mm~10mm、1mm~25mm、1mm~50mm、1mm~100mm、1mm~150mm、1mm~200mm、1mm~250mm、5mm~10mm、5mm~25mm、5mm~50mm、5mm~100mm、5mm~150mm、5mm~200mm、1mm~250mm、または250mmよりも大きいか、またはこれらの値のいずれか2つで定義される範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、チャネルは、2m以上の長さを有してもよい。いくつかの実施形態では、チャネルは、20m以上の長さを有してもよい。いくつかの実施形態では、チャネルは、0.1mm未満、0.1mm~0.5mm、0.1mm~1mm、0.1mm~5mm、0.1mm~10mm、0.1mm~15mm、0.1mm~20mm、0.1mm~25mm、0.1mm~30mm、0.1mm~50mm、または50mmよりも大きいか、あるいはこれらの値のいずれか2つで定義される範囲の幅を有してもよい。いくつかの実施形態では、チャネルは、500mm以上の幅を有してもよい。いくつかの実施形態では、チャネルは、5m以上の幅を有してもよい。チャネル長はマイクロメートル範囲であり得る。
【0050】
開示されたデバイスのためのキャピラリーまたはマイクロ流体チップを作製するために使用される1つ以上の材料は、分光法または画像化ベースの検出技術での使用を容易にするために、しばしば光透過性である。キャピラリー全体が光透過性になる。代替的に、キャピラリーの一部(例えば、光透過性の「窓」)のみが光透過性である。いくつかの例では、マイクロ流体チップ全体が光透過性になる。いくつかの例では、マイクロ流体チップの一部(例えば、光透過性の「窓」)のみが光透過性になる。
【0051】
上述したように、本明細書に開示されたフローセルデバイスおよびカートリッジのキャピラリーまたはマイクロ流体チャネルに取り付けられる流体アダプターは、標準的なODのポリマーまたはガラスの流体チューブまたはマイクロ流体チャネルとかみ合うように設計されている。
図1に示すように、流体アダプターの一端は、特定の寸法および断面形状を有するキャピラリーとかみ合うように設計され、その一方で、他端は、同じまたは異なる寸法および断面形状を有する流体チューブとかみ合うように設計されてもよい。アダプターは、様々な適切な技術(例えば、押し出し成形、射出成形、圧縮成形、精密CNC機械加工など)および材料(例えば、ガラス、融解石英、セラミック、金属、ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン(PS)、マクロポーラスポリスチレン(MPPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE))、高密度ポリエチレン(HDPE)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)など)を作製されてもよく、ここで、作製技術の選択はしばしば、使用される材料の選択に依存し、その逆もまた然りである。
【0052】
表面コーティング:マイクロ流体チップ上の1つ以上のキャピラリーまたはチャネルの内部表面(またはキャピラリー内腔の表面)は、当業者に知られている様々な表面改質技術またはポリマーコーティングのいずれかを用いてコーティングされることが多い。
【0053】
適切な表面改質またはコーティング技術の例としては、限定されないが、官能基または分子を、キャピラリー内腔の表面、共有的に結合したまたは非共有的に結合したポリマー層(例えば、ストレプトアビジン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、デキストラン、ポリリジン、ポリアクリルアミド/ポリリジンコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(n-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(POEGMA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、およびポリリジンコポリマー)、あるいはこれらの任意の組み合わせに共有結合させるための、シラン化学物質(例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、トリエトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、および、他の直鎖状、分岐状、または環状のシラン)の使用を含む。
【0054】
支持体表面に材料の1つ以上の層(例えば、ポリマー層)をグラフト結合(covalently grafted)したり、層を互いに架橋したりするために使用され得るコンジュゲーション化学の例としては、限定されないが、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用(またはそのバリエーション)、hisタグ-Ni/NTAコンジュゲーション化学、メトキシエーテルコンジュゲーション化学、カルボキシレートコンジュゲーション化学、アミンコンジュゲーション化学、NHSエステル、マレイミド、チオール、エポキシ、アジド、ヒドラジド、アルキン、イソシアネート、およびシラン化学が挙げられる。
【0055】
内部表面上または内腔表面上のポリマー層または他の化学層の数は、1~約10まで、または10よりも大きな範囲であってもよい。いくつかの例では、層の数は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10である。いくつかの例では、層の数は、最大で10、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2、または最大で1であってもよい。この段落に記載される下限値と上限値のいずれかを組み合わせて、本開示に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、層の数は約2~約4の範囲であってもよい。いくつかの例では、すべての層が同じ材料を含んでもよい。いくつかの例では、各層は異なる材料を含んでもよい。いくつかの例では、複数の層は複数の材料を含んでもよい。
【0056】
好ましい態様では、コーティング材料の1つ以上の層が、マイクロ流体チップ上のキャピラリー内腔表面またはチャネルの内部表面に適用されてもよく、ここで、層の数および/または各層の材料組成は、米国特許出願第16/363,842号に記載されているように、キャピラリーまたはチャネルの内腔の1つ以上の表面特性を調整するために選択される。
【0057】
調整することができる表面特性の例としては、限定されないが、表面の親水性/疎水性、全体のコーティングの厚さ、化学反応性官能基の表面密度、グラフト結合されたリンカー分子やオリゴヌクレオチドプライマーの表面密度などが挙げられる。いくつかの好ましい応用例では、キャピラリーまたはチャネル内腔の1つ以上の表面特性は、例えば、(i)固相核酸増幅および/または配列決定用途を含む化学的または生物学的な分析用途のタンパク質、オリゴヌクレオチド、蛍光色素、および他の分子成分の非常に低い非特異的結合を提供するために、(ii)改善された固相核酸ハイブリダイゼーションの特異性および効率をもたらすために、および(iii)改善された固相核酸増幅率、特異性、および効率をもたらすために、調整される。
【0058】
1つ以上の表面改質および/またはポリマー層は、意図された用途に使用する前に、1つ以上の適切な化学的カップリングまたはコーティング試薬をキャピラリーまたはチャネルに流すことによって適用することができる。1つ以上のコーティング試薬は、キャピラリー内腔表面の動的コーティングを提供するために、例えば、核酸ハイブリダイゼーション、増幅反応、および/または配列決定反応に使用される緩衝液に添加されてもよい。
【0059】
低非特異的結合表面:本明細書に記載されるチャネルおよびキャピラリーチューブの内部表面は、改善された核酸ハイブリダイゼーションおよび増幅性能を可能にする低非特異的結合表面組成物を含む組成物でグラフト結合またはコーティングすることができる。
【0060】
いくつかの例では、ハイブリダイズまたはクローン増幅された核酸分子(例えば、蛍光色素で直接または間接的に標識されたもの)のクラスターを作成するために、核酸ハイブリダイゼーションまたは増幅用途で使用されるときの開示された低非特異的結合表面の蛍光画像は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、210、220、230、240、250、または250よりも大きなコントラスト対ノイズ比(CNR)を示す。
【0061】
プライマーの表面密度をスケールアップし、親水性または両性の表面にさらなる次元を加えるために、PEGおよび他の親水性ポリマーの多層コーティングを含む基板が開発されている。限定されないが、以下に記載されるポリマー/コポリマー材料を含む親水性および両性の表面層アプローチを使用することで、表面上のプライマーロード密度を大幅に増加させることが可能である。一般的に単分子用途に報告されている従来のPEGコーティングアプローチは、単相プライマー蒸着を使用するが、核酸増幅用途では高いコピー数を得ることができない。本明細書で記載されるように、「積層」は、2つ以上の高度に架橋された層を含む表面が順次構築できるように、任意の適合性のあるポリマーまたはモノマーのサブユニットを用いて、従来の架橋アプローチを使用して達成することができる。適切なポリマーの例としては、限定されないが、ストレプトアビジン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、デキストラン、ポリリジン、およびポリリジンとPEGのコポリマーが挙げられる。いくつかの例では、異なる層は、限定されないが、ビオチン-ストレプトアビジン結合、アジド-アルキンクリック反応、アミン-NHSエステル反応、チオール-マレイミド反応、および正電荷ポリマーと負電荷ポリマーとの間のイオン相互作用を含む様々なコンジュゲーション反応のいずれかを介して互いに結合可能である。いくつかの例では、高プライマー密度材料を溶液中で構築し、その後、複数の工程で表面に積層させることができる。
【0062】
当業者は、本開示の所与の親水性低結合性支持表面が、50度未満のどこかの値を有する水接触角を示すことがあることを理解するであろう。
【0063】
チャネルおよびキャピラリーの開示された内部表面は、基板(または支持構造体)、共有的に結合した、または非共有的に結合した低結合性化学修飾層、例えば、シラン層、ポリマーフィルム、および一本鎖鋳型オリゴヌクレオチドを支持表面に固定するために使用され得る1つ以上の共有的に結合した、または非共有的に結合したプライマー配列の1つ以上の層を含んでもよい。いくつかの例では、表面製剤、例えば、1つ以上の層の化学組成物、1つ以上の層を支持体表面および/または相互に架橋するために使用されるカップリング化学、および層の総数を変化させることで、タンパク質、核酸分子、およびその他のハイブリダイゼーションならびに増幅反応成分の支持体表面への非特異的結合が、匹敵する単層に比べて最小限に抑えられるか、減らされるようになってもよい。多くの場合、支持体表面での非特異的なハイブリダイゼーションが、匹敵する単層と比較して最小限に抑えられるか、減少するように、表面製剤を変化させてもよい。支持体表面での非特異的な増幅が、匹敵する単層と比較して最小限に抑えられるか、減少するように、表面製剤を変化させてもよい。支持体表面での特異的な増幅率および/または収率が最大になるように、表面製剤を変化させてもよい。検出に適した増幅レベルは、本明細書に開示されている例によっては、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、または30よりも多くの増幅サイクルで達成される。
【0064】
基板または支持構造体を作製する材料の例としては、限定されないが、ガラス、溶融シリカ、シリコン、ポリマー(例えば、ポリスチレン(PS)、マクロポーラスポリスチレン(MPPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET))、またはこれらの組み合わせが挙げられる。ガラス基板とプラスチック基板の両方の様々な組成が企図されている。
【0065】
基板または支持構造体は、当業者に知られている様々な幾何学的形状および寸法のいずれかでレンダリングされてもよく、当業者に知られている様々な材料のいずれかを含んでもよい。例えば、いくつかの例では、基板または支持構造体は、局所的に平面であってもよい(例えば、顕微鏡スライドまたは顕微鏡スライドの表面を含む)。全体的には、基板または支持構造体は、円筒形(例えば、キャピラリーまたはキャピラリーの内部表面を含む)、球形(例えば、非多孔性ビーズの外部表面を含む)、または不規則(例えば、不規則な形状の非多孔性ビーズまたは粒子の外部表面を含む)であってもよい。いくつかの例では、核酸のハイブリダイゼーションおよび増幅に使用される基板または支持構造体の表面は、固体の非多孔質表面であってもよい。いくつかの例では、核酸ハイブリダイゼーションおよび増幅に使用される基板または支持構造体の表面は、本明細書に記載されるコーティングが多孔質表面を貫通し、そこで実行される核酸ハイブリダイゼーションおよび増幅反応が孔内で発生するように、多孔質であってもよい。
【0066】
1つ以上の化学修飾された層、例えば、低非特異的結合ポリマーの層を含む基板または支持構造体は、独立していてもよいし、別の構造またはアセンブリに一体化されていてもよい。例えば、いくつかの例では、基板または支持構造体は、一体化されたまたは組み立てられたマイクロ流体フローセル内に1つ以上の表面を含んでもよい。基板または支持構造体は、マイクロプレートフォーマット内に1つ以上の表面、例えば、マイクロプレート内にウェルの底面を含んでもよい。上記されるように、いくつかの好ましい実施形態では、基板または支持構造体はキャピラリーの内部表面(内腔表面など)を含む。代替的な好ましい実施形態では、基板または支持構造体は、平面チップにエッチングされたキャピラリーの内部表面(内腔表面など)を含む。
【0067】
化学修飾層は、基板または支持構造の表面にわたって一様に適用され得る。あるいは、化学修飾層が基板の1つ以上の離散的な領域に限局されるように、基板または支持構造の表面は非一様に分布またはパターン化され得る。例えば、基板表面は、表面上で化学的に修飾された領域の規則正しいアレイまたはランダムパターンを作製するために、フォトリソグラフィ技術を使用してパターン化され得る。代替的にまたは組み合わせて、基板表面は、例えば、密着焼付け技術および/またはインクジェット印刷技術を使用して、パターン化され得る。いくつかの例では、化学的に修飾された離散的な領域の規則正しいアレイまたはランダムパターンは、少なくとも1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、あるいは、10,000以上の離散的な領域、もしくは、本明細書における範囲にわたる任意の中間数を含み得る。
【0068】
低非特異的結合面(low nonspecific binding surfaces)(本明細書では「低結合の」あるいは「不動態化した」表面とも呼ばれる)を達成するために、親水性ポリマーは、基板または支持体表面に非特異的に吸着されるか、または共有グラフト結合され得る。典型的には、不動態化は、ポリ(エチレングリコール)(PEG、ポリエチレンオキシド(PEO)あるいはポリオキシエチレンとしても知られている)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリアクリルアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMA)、ポリ(2-ヒドロキシルエチル(hydroxylethyl)メタクリレート(PHEMA)、ポリ(オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート)(POEGMA)、ポリグルタミン酸(PGA)、ポリ-リジン、ポリ-グルコシド、ストレプトアビジン、デキストラン、または、例えば、シラン化学物質(silane chemistry)を使用して表面に連結される、異なる分子量および末端基を有する他の親水性ポリマーを利用して実施される。表面から遠位の末端基としては、限定されないが、ビオチン、メトキシエーテル、カルボキシレート、アミン、NHSエステル、マレイミド、およびビス-シランが挙げられ得る。いくつかの例では、親水性ポリマー(例えば、線状ポリマー、分枝ポリマー、多分岐ポリマー)の2つ以上の層は、表面に堆積する場合がある。いくつかの例では、2つ以上の層は、互いに共有結合するか、あるいは内部架橋して、結果として生じる表面の安定性を改善することができる。いくつかの例では、様々な塩基配列および塩基修飾(あるいは、他の生体分子、例えば、酵素もしくは抗体)を有するオリゴヌクレオチドプライマーを、結果として生じる表面層に様々な面密度で固定することができる。いくつかの例では、例えば、表面官能基の密度およびオリゴヌクレオチドの濃度の両方は、あるプライマーの濃度範囲を標的とするために変動する場合がある。さらに、プライマー密度は、同じ官能基を保有する他の分子でオリゴヌクレオチドを希釈することによって制御することができる。例えば、アミンで標識されたオリゴヌクレオチドは、NHSエステルでコーティングされた表面との反応において、アミンで標識されたポリエチレングリコールで希釈することで、プライマーの最終密度を減少させることができる。ハイブリダイゼーション領域と表面結合官能基(surface attachment functional group)との間に様々な長さのリンカーを有するプライマーも、面密度を制御するために適用することができる。適切なリンカーの例としては、プライマーの5’末端にあるポリT鎖およびポリA鎖(例えば、0~20の塩基)、PEGリンカー(例えば、3~20のモノマー単位)、および炭素鎖(例えば、C6、C12、C18など)が挙げられる。プライマーの密度を測定するために、蛍光標識されたプライマーを表面に固定して、蛍光読み取り値を既知濃度の色素溶液のものと比較することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは架橋ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、架橋ポリマーは、別のタイプのポリマーと架橋したあるタイプのポリマーを含むことができる。架橋したポリマーの例としては、ポリエチレンオキシド(PEO)あるいはポリオキシエチレン)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリアクリルアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMA)、ポリ(2-ヒドロキシルエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリ(オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート)(POEGMA)、ポリグルタミン酸(PGA)、ポリ-リジン、ポリ-グルコシド、ストレプトアビジン、デキストラン、または他の親水性ポリマーから選択される別のポリマーと架橋したポリ(エチレングリコール)が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、架橋ポリマーは、ポリアクリルアミドと架橋したポリ(エチレングリコール)であってもよい。
【0070】
マイクロ流体チップの1つ以上のキャピラリーあるいはチャネルの内部表面、またはキャピラリーの壁は、タンパク質および他の増幅反応試薬あるいは成分の低非特異的結合、様々な溶媒への反復暴露に対する安定性の改善、温度の変化、低いpHなどの化学的侮辱(chemical affronts)、または長期間の保存を示す場合がある。
【0071】
開示される低非特異的結合支持体は、固体支持体へのタンパク質および標識されたヌクレオチドの非特異的結合を最小限に抑える1以上のポリマーコーティング、例えば、PEGポリマーフィルムを含む。改善された核酸ハイブリダイゼーションおよび増幅率および特異性のその後の実証は、以下の本開示のさらなる態様の1つ以上によって達成され得る:(i)プライマー設計(配列および/または修飾)、(ii)個体支持体上に固定されたプライマーの密度の制御、(iii)固体支持体の表面の組成、(iv)固体支持体の表面のポリマー密度、(v)増幅前および増幅中での改善されたハイブリダイゼーション条件の使用、および/または(vi)非特異的プライマー増幅を減少させるか、あるいは鋳型増幅効率を増大させる改善された増幅製剤の使用。
【0072】
開示される低非特異的結合支持体および関連するハイブリダイゼーションおよび増幅方法の利点は、任意のシーケンシングシステムに関して以下のさらなる利点の1つ以上を与える:(i)流体洗浄時間の減少(非特異的結合の減少による、および、したがって、シーケンシングサイクル時間の短縮)、(ii)画像化時間の減少(および、したがって、アッセイ読み取りならびにシーケンシングサイクルの所用時間の短縮)、(iii)全体的なワークフロー時間要件の減少(サイクル時間の減少による)、(iv)検出器具のコストの削減(CNRの改善による)、(v)読み取り(ベースコール)精度(CNRの改善による)、(vi)試薬安定性の向上および試薬使用要件の減少(および、したがって、試薬コストの削減)、ならびに(vii)核酸増幅の失敗によるランタイム失敗の減少。
【0073】
表面のバイオアッセイ、例えば、ジェノタイピング、シーケンシングアッセイのための低結合親水性表面(多層および/または単層)は、以下の任意の組み合わせを使用することにより作製される。
【0074】
極性プロトン性、極性非プロトン性、および/または非極性の溶媒は、基板表面上の線状のあるいは多分岐した親水性ポリマーサブユニットを堆積させ、および/またはカップリングする。いくつかの分岐した親水性(hydriphilic)ポリマーサブユニットは、他のポリマーサブユニットとの共有カップリング(covalent coupling)または非共有結合相互作用を促進するための官能性末端基を含有している場合がある。適切な官能性末端基の例としては、ビオチン、メトキシエーテル、カルボキシレート、アミン、エステルの化合物、アジド、アルキン、マレイミド、チオール、およびシランの基が挙げられる。
【0075】
線状ポリマーサブユニット、分岐ポリマーサブユニット、または多分岐ポリマーサブユニットの任意の組み合わせは、直交末端カップリング化学物質あるいはそれぞれの組み合わせを有する個々のサブユニットを含み得る、改変されたカップリング化学物質/溶媒/緩衝の系を介した後の層状付加によりカップリングされ、それによって、結果として生じる表面は親水性であり、タンパク質および他の分子アッセイ成分の低非特異的結合を示す。いくつかの例では、本開示の親水性の官能化基板の表面は、35度を超えない接触角の測定値を示す。
【0076】
後の生体分子結合(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、あるいは細胞の)を、低結合または親水性の基板上で、以下に記載される様々な個々のコンジュゲーション化学のいずれか、またはそれらの任意の組み合わせにより行う。層堆積および/またはコンジュゲーション反応は、任意の比率の下記成分を含有し得る溶媒混合物を使用して実施することができる:エタノール、メタノール、アセトニトリル、アセトン、DMSO、DMF、H2Oなど。加えて、5~10の望ましいpH範囲の適合する緩衝系が、堆積およびカップリングの速度ならびに効率を制御するために使用されてもよく、それにより、カップリング速度が、従来の水性の緩衝液ベースの方法で使用されるものの>5倍を超える。
【0077】
開示される低非特異的結合支持体および関連する核酸ハイブリダイゼーションならびに増幅方法が、当業者に既知の様々な異なる細胞、組織、または試料のタイプのいずれかに由来する核酸分子を分析するために使用されてもよい。例えば、核酸は、真核生物(動物、植物、真菌、原生生物など)、古細菌、または真正細菌に由来する1つ以上の細胞型を含む細胞、あるいは組織試料から抽出され得る。場合によっては、核酸は、原核生物または真核細胞、例えば、結合性または非結合性の真核細胞から抽出され得る。核酸は、例えば、初代または不死化された、げっ歯類、ブタ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、霊長類、またはヒト細胞株からさまざまに抽出される。核酸は、様々な異なる細胞、臓器、または組織のタイプ(例えば、心臓、肺、脳、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、胸腺、膀胱、胃、結腸、もしくは小腸からの白血球、赤血球、血小板、上皮細胞、内皮細胞、ニューロン、グリア細胞、アストロサイト、線維芽細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、配偶子、あるいは細胞)のいずれかから抽出され得る。核酸は、正常な細胞または健康な細胞から抽出され得る。代替的にまたは組み合わせて、酸は、癌細胞などの異常細胞から、あるいは宿主を感染させている病原性細胞から抽出される。いくつかの核酸は、細胞型、例えば、免疫細胞(T細胞、細胞毒性の(キラー)T細胞、ヘルパーT細胞、αβT細胞、γδT細胞、T細胞前駆細胞、B細胞、B細胞前駆細胞、リンパ系幹細胞、骨髄系前駆細胞、リンパ球、顆粒球、ナチュラルキラー細胞、プラズマ細胞、メモリ細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、単球、樹状細胞、および/またはマクロファージ、あるいはそれらの任意の組み合わせなど)、未分化ヒト幹細胞、分化するように誘導されているヒト幹細胞、希少細胞(例えば、循環腫瘍細胞(CTC)、循環上皮細胞、循環内皮細胞、循環子宮内膜細胞、骨髄細胞、前駆細胞、泡沫細胞、間葉細胞、あるいは栄養膜)の別個の部分集合から抽出され得る。他の細胞が企図され、本明細書の開示に一致している。
【0078】
本明細書で開示される表面不動態化技術の結果、タンパク質、核酸、および他の生体分子は、基板に「くっつく」ことはなく、すなわち、それらは低非特異的結合(NSB)を示す。様々なガラス調製条件で、標準の単層表面処理を使用する例が以下に示される。タンパク質と核酸の極めて低いNSBを達成するために不動態化されている親水性表面は、プライマー堆積反応の効率、ハイブリダイゼーションの性能を改善し、有効な増幅を引き起こすための新規な反応条件を必要とする。これらのプロセスはすべて、オリゴヌクレオチド結合とその後のタンパク質結合、および低結合表面への送達を必要とする。以下に記載されるように、新しいプライマー表面コンジュゲーション製剤(Cy3オリゴヌクレオチドグラフトの滴定)と、結果として生じる極低非特異的(ultra-low non-specific)バックグラウンド(赤い蛍光染料および緑の蛍光染料を使用して実施されるNSB機能テスト)の組み合わせにより、開示されるアプローチの実行可能性を実証する結果がもたらされた。本明細書で開示されるいくつかの表面は、少なくとも、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、50:1、75:1、100:1、または100:1を超える値、もしくは本明細書における範囲にわたる任意の中間値の、Cy3などのフルオロフォアに関する特異的結合(例えば、固定されたプライマーまたはプローブへのハイブリダイゼーション)と非特異的結合(例えば、Binter)との比を示す。本明細書で開示されるいくつかの表面は、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、50:1、75:1、100:1、または100:1を超える値、あるいは本明細書における範囲にわたる任意の中間値の、Cy3などのフルオロフォアに関する特異的蛍光シグナルと非特異的蛍光シグナルの比(例えば、特異的にハイブリダイズされた標識オリゴヌクレオチドと、非特異的に結合された標識オリゴヌクレオチドについて、あるいは、特異的に増幅された標識オリゴヌクレオチドと、特異的に結合された(Binter)標識オリゴヌクレオチド、あるいは非特異的に増幅された(Bintra)標識オリゴヌクレオチド、もしくはそれらの組み合わせ(Binter+Bintra)について)を示す。
【0079】
低非特異的結合層のグラフト結合:第1の化学的に修飾された層をフローセル(キャピラリーあるいはチャネル)の内面にグラフト結合するために使用される結合化学反応は、一般に、支持体が作り上げられる材料および層の化学的性質の両方に依存する。いくつかの例では、第1の層は、支持体表面に共有結合され得る。いくつかの例では、第1の層は、例えば、第1の層の表面と分子成分との間の非共有結合相互作用、静電相互作用、水素結合、あるいはファンデルワールス相互作用などを介して、表面に非共有的に結合、例えば、吸着され得る。いずれの場合でも、基板表面は、第1の層の結合または堆積前に処理され得る。当業者に既知の様々な表面処理技術のいずれかを使用して、支持体表面を清潔にするか、または処置することができる。例えば、ガラスまたはシリコンの表面は、ピラニア溶液(硫酸(H2SO4)と過酸化水素(H2O2)の混合物)を使用して酸洗浄され、および/または、酸素プラズマ処理方法を使用して清潔にされてもよい。
【0080】
シラン化学物質は、ガラスあるいはシリコンの表面上のシラノール基を共有結合的に修飾して、より反応性の官能基(例えば、アミンまたはカルボキシル基)を結合させるための1つ非限定的なアプローチを構成し、このアプローチは、リンカー分子(例えば、C6、C12、C18の炭化水素などの様々な長さの直鎖状炭化水素分子あるいは線状ポリエチレングリコール(PEG)分子)、または層分子(例えば、分岐PEG分子あるいは他のポリマー)を上記表面にカップリングする際に使用され得る。開示される低結合支持体表面のいずれかを作製する際に使用され得る適切なシランの例としては、限定されないが、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、様々なPEGシラン(例えば、1K、2K、5K、10K、20Kなどの分子量を含む)のいずれか、アミノPEGのシラン(つまり、遊離アミノ官能基)、マレイミド-PEGシラン、ビオチン-PEGシランなどが挙げられる。
【0081】
限定されないが、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、他の単量体あるいはポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、当業者に既知の様々な分子のいずれかが、支持体表面上で1つ以上の化学的に修飾された層を作製する際に使用されてもよく、ここで、支持体表面の1つ以上の特性、例えば、官能基および/または固定されたオリゴヌクレオチドプライマーの表面密度、支持体表面の親水性/疎水性、もしくは支持体表面の3つの三次元性(つまり、「厚さ」)を変更するために、使用する成分の選択を変えることができる。開示される支持体表面のいずれかにおいて低非特異的結合材料の1つ以上の層を作製するために使用され得る、好ましいポリマーの例としては、限定されないが、様々な分子量と分岐構造のポリエチレングリコール(PEG)、ストレプトアビジン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、デキストラン、ポリ-リジン、およびポリ-リジンコポリマー、あるいはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。材料の1つ以上の層(例えば、ポリマー層)を支持体表面にグラフト結合する、および/または、層を互いに架橋するために使用され得るコンジュゲーション化学の例としては、限定されないが、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用(あるいは、そのバリエーション)、hisタグ-Ni/NTAコンジュゲーション化学、メトキシエーテルコンジュゲーション化学、カルボキシレートコンジュゲーション化学、アミンコンジュゲーション化学、NHSエステル、マレイミド、チオール、エポキシ、アジド、ヒドラジド、アルキン、イソシアネート、シランが挙げられる。
【0082】
多層表面の1つ以上の層は、分枝ポリマーを含んでいてもよいし、線状であってもよい。適切な分枝ポリマーの例としては、限定されないが、分岐PEG、分岐ポリ(ビニルアルコール)(分岐PVA)、分岐ポリ(ビニルピリジン)、分岐ポリ(ビニルピロリドン)(分岐PVP)、分岐)、ポリ(アクリル酸)(分岐PAA)、分岐ポリアクリルアミド、分岐ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(分岐PNIPAM)、分岐ポリ(メチルメタクリレート)(分岐PMA)、分岐ポリ(2-ヒドロキシルエチルメタクリレート(分岐PHEMA)、分岐ポリ(オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(分岐POEGMA)、分岐ポリグルタミン酸(分岐PGA)、分岐ポリ-リジン、分岐ポリ-グルコシド、およびデキストランが挙げられる。
【0083】
いくつかの例では、本明細書で開示される多層表面のいずれかの1つ以上の層を作製するために使用される分枝ポリマーは、少なくとも4つの分岐、少なくとも5つの分岐、少なくとも6つの分岐、少なくとも7つの分岐、少なくとも8つの分岐、少なくとも9つの分岐、少なくとも10の分岐、少なくとも12の分岐、少なくとも14の分岐、少なくとも16の分岐、少なくとも18の分岐、少なくとも20の分岐、少なくとも22の分岐、少なくとも24の分岐、少なくとも26の分岐、少なくとも28の分岐、少なくとも30の分岐、少なくとも32の分岐、少なくとも34の分岐、少なくとも36の分岐、少なくとも38の分岐、または少なくとも40の分岐を含み得る。分子は、2、4、8、16、32、64、または128の分岐など、「2の累乗」の分岐の数をしばしば示す。
【0084】
例示的なPEG多層は、PEG-アミン-APTES上にPEG(8arm、16arm、8arm)を含む。16armおよび64armを置き換えるために星型PEGアミンを使用して、8uMプライマーに暴露されたPEG-アミン-APTES上の3層のmulti-arm PEG(8arm、16arm、8arm)および(8arm、64arm、8arm)と、3層のmulti-arm PEG(8arm、8arm、8arm)で、同様の濃度が観察された。同等の第1、第2、および第3のPEG層を有するPEG多層も企図される。
【0085】
本明細書で開示される多層表面のいずれかの1つ以上の層を作製するために使用される線状ポリマー、分岐ポリマー、または多分岐ポリマーは、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも1,500、少なくとも2,000、少なくとも2,500、少なくとも3,000、少なくとも3,500、少なくとも4,000、少なくとも4,500、少なくとも5,000、少なくとも7,500、少なくとも10,000、少なくとも12,500、少なくとも15,000、少なくとも17,500、少なくとも20,000、少なくとも25,000、少なくとも30,000、少なくとも35,000、少なくとも40,000、少なくとも45,000、または少なくとも50,000ダルトンの分子量を有し得る。いくつかの例では、本明細書で開示される多層表面のいずれかの1つ以上の層を作製するために使用される線状ポリマー、分岐ポリマー、または多分岐ポリマーは、最大で50,000、最大で45,000、最大で40,000、最大で35,000、最大で30,000、最大で25,000、最大で20,000、最大で17,500、最大で15,000、最大で12,500、最大で10,000、最大で7,500、最大で5,000、最大で4,500、最大で4,000、最大で3,500、最大で3,000、最大で2,500、最大で2,000、最大で1,500、最大で1,000、あるいは最大で500ダルトンの分子量を有し得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、本明細書で開示される多層表面のいずれかの1つ以上の層を作製するために使用される線状ポリマー、分岐ポリマー、あるいは、多分岐ポリマーの分子量は、約1,500~約20,000のダルトンの範囲であってもよい。当業者は、本明細書で開示される多層表面のいずれかの1つ以上の層を作製するために使用される線状ポリマー、分岐ポリマー、または多分岐ポリマーの分子量が、この範囲の任意の値(例えば、約1,260ダルトン)を有し得ることを認識する。
【0086】
例えば、多層表面の少なくとも1つの層が分枝ポリマーを含むいくつかの例では、堆積している層の分枝ポリマー分子と前の層の分子との間の共有結合の数は、1分子当たり約1つの共有結合~1分子当たり約32の共有結合の範囲であり得る。いくつかの例では、新しい層の分枝ポリマー分子と前の層の分子との間の共有結合の数は、1分子当たり少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも22、少なくとも24、少なくとも26、少なくとも28、少なくとも30、あるいは少なくとも32、あるいは32を超える共有結合であり得る。いくつかの例では、新しい層の分枝ポリマー分子と前の層の分子との間の共有結合の数は、最大で32、最大で30、最大で28、最大で26、最大で24、最大で22、最大で20、最大で18、最大で16、最大で14、最大で12、最大で10、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2、または最大で1であり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、新しい層の分枝ポリマー分子と前の層の分子との間の共有結合の数が、約4~約16の範囲であってもよい。当業者は、新しい層の分枝ポリマー分子と前の層の分子との間の共有結合の数が、いくつかの例では、この範囲内の任意の値(例えば、約11)、あるいは他の例では、約4.6の平均数を有し得ることを認識する。
【0087】
材料層の支持体表面へのカップリング後に残る任意の反応性官能基は、高収率のカップリング化学を使用して、小さく不活性な分子をカップリングすることによって随意にブロックされ得る。例えば、アミンカップリング化学を使用して新しい層を前の層に結合する場合、任意の残留するアミン基は、その後、グリシンなどの小さなアミノ酸とのカップリングによって、アセチル化されるか、または非活性化され得る。
【0088】
開示される低結合支持体の表面上で堆積する低非特異的結合材料、例えば、親水性ポリマー材料の層の数は、1~約10の範囲であり得る。いくつかの例では、層の数は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10である。いくつかの例では、層の数は、最大で10、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2、または最大で1であり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、層の数は約2~約4の範囲であってもよい。いくつかの例では、層はすべて同じ材料を含み得る。いくつかの例では、層はそれぞれ異なる材料を含み得る。いくつかの例では、複数の層が複数の材料を含み得る。いくつかの例では、少なくとも1つの層は、分枝ポリマーを含み得る。いくつかの例では、層はすべて分枝ポリマーを含み得る。
【0089】
低非特異的結合材料の1つ以上の層は、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒、非極性溶媒、またはそれらの任意の組み合わせを使用して、ある場合では、基板表面に堆積され、および/またはコンジュゲートされ得る。いくつかの例では、層の堆積および/またはカップリングに使用される溶媒は、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、別の有機溶媒(例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)など)、水、水性の緩衝溶液(例えば、リン酸塩緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)など)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの例では、使用される溶媒混合液の有機成分は、全体の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%、あるいは、本明細書における範囲にわたるか、隣接する割合を含んでいてもよく、残りは水もしくは水性の緩衝溶液で構成される。いくつかの例では、使用される溶媒混合液の水性成分は、全体の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%、あるいは、本明細書における範囲にわたるか、隣接する割合を含んでいてもよく、残りは有機溶媒で構成される。使用される溶媒混合液のpHは、5未満、5、5、5、6、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、または10を超えるか、あるいは本明細書に記載される範囲にわたるか、隣接する任意の値であり得る。
【0090】
いくつかの例では、低非特異的結合材料の1つ以上の層は、有機溶媒混合物を使用して基板表面に堆積され、および/またはコンジュゲートされてもよく、ここで、少なくとも1つの成分の比誘電率は40未満であり、全混合物の少なくとも50体積%を構成する。いくつかの例では、少なくとも1つの成分の比誘電率は、40未満、30未満、20未満、10未満であり得る。いくつかの例では、少なくとも1つの成分は、全混合物の少なくとも20体積%、少なくとも30体積%、少なくとも40体積%、少なくとも50体積%、少なくとも50体積%、少なくとも60体積%、少なくとも70体積%、または少なくとも80体積%を構成する。
【0091】
述べられるように、本開示の低非特異的結合支持体は、タンパク質、核酸、ならびに、ハイブリダイゼーションおよび/または固相核酸増幅に使用される増幅製剤の他の成分の非特異的結合を減少させる。所与の支持体表面によって示される非特異的結合の程度は、定性的または定量的に評価される場合がある。例えば、いくつかの例では、標準化された一連の条件下での蛍光染料(例えば、Cy3、Cy5など)、蛍光標識されたヌクレオチド、蛍光標識されたオリゴヌクレオチド、および/または、蛍光標識されたタンパク質(例えば、ポリメラーゼ)への表面の曝露、その後の指定されたすすぎプロトコル、ならびに蛍光画像化は、様々な表面製剤を含む支持体上で非特異的結合を比較するための定性的ツールとして使用され得る。いくつかの例では、標準化された一連の条件下での、蛍光染料、蛍光標識されたヌクレオチド、蛍光標識されたオリゴヌクレオチド、および/または、蛍光標識されたタンパク質(例えば、ポリメラーゼ)への表面の曝露、その後の指定されたすすぎプロトコル、ならびに蛍光画像化は、様々な表面製剤を含む支持体上での非特異的結合を比較するための定量的ツールとして使用され得る。-ただし、この場合、蛍光画像化は、蛍光シグナルが支持体表面のフルオロフォアの数と直線的に関連する(あるいは、予測可能な方法で関連する)とともに、適切な校正標準が使用される条件下(例えば、フルオロフォアのシグナル飽和および/または自己消光が問題ではない条件下)で確実に実施されることに注意が払われていることとする。いくつかの例では、本開示の様々な支持体表面製剤によって非特異的結合が示される程度を定量的に評価するために、当業者に知られている他の技術、例えば、放射性同位体の標識および計数法が使用されてもよい。
【0092】
本明細書で開示されるいくつかの表面は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、75、100、または100を超える値、あるいは本明細書における範囲にわたる任意の中間値の、Cy3などのフルオロフォアに関する特異的結合と非特異的結合の比を示す。本明細書で開示されるいくつかの表面は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、75、100、または100を超える値、あるいは本明細書における範囲にわたる任意の中間値の、Cy3などのフルオロフォアに関する特異的蛍光と非特異的蛍光の比を示す。
【0093】
述べられているように、いくつかの例では、開示される低結合支持体によって示される非特異的結合の程度は、標準化された一連のインキュベーションおよびすすぎ条件下で、標識されたタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、ストレプトアビジン、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、ヘリカーゼ、一本鎖結合タンパク質(SSB)、あるいはそれらの任意の組み合わせ)、標識されたヌクレオチド、標識されたオリゴヌクレオチドなどと表面を接触させ、その後、表面上に残った標識の量を検出し、その結果生じるシグナルを適切な校正標準と比較するために、標準化されたプロトコルを使用して評価され得る。いくつかの例では、標識は蛍光標識を含む。いくつかの例では、標識は放射性同位体を含む。いくつかの例では、標識は、当該技術分野で知られている任意の他の検出可能な標識を含む。いくつかの例では、所与の支持体表面製剤によって示される非特異的結合の程度は、このように、1単位面積当たりの非特異的に結合されたタンパク質分子(あるいは、他の分子)の数に関して評価され得る。いくつかの例では、本開示の低結合支持体は、1μm2当たり0.001分子未満、1μm2当たり0.01分子未満、1μm2当たり0.1分子未満、1μm2当たり0.25分子未満、1μm2当たり0.5分子未満、1μm2について1分子未満、1μm2当たり10分子未満、1μm2当たり100分子、または1μm2当たり1,000分子未満の非特異的タンパク質結合(あるいは、他の指定された分子、例えば、Cy3色素の非特異的結合)を示す場合がある。当業者は、本開示の所与の支持体表面がこの範囲内のどこか、例えば、1μm2当たり86分子未満の非特異的結合を示し得ることがあることを理解するだろう。例えば、本明細書で開示されるいくつかの改質された表面は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中のCy3標識されたストレプトアビジン(GE Amersham)の1uMの溶液と15分間接触させ、その後、脱イオン水で3回すすいだ後に、0.5分子/um2未満の非特異的タンパク質結合を示す。本明細書で開示されるいくつかの改質された表面は、1um2当たり2分子未満のCy3色素分子の非特異的結合を示す。独立した非特異的結合アッセイでは、1uMの標識されたCy3 SA(ThermoFisher)、1uMのCy5 SA色素(ThermoFisher)、10uMのAminoallyl-dUTP-ATTO-647N(Jena Biosciences)、10uMのAminoallyl-dUTP-ATTO-Rho11(Jena Biosciences)、10uMのAminoallyl-dUTP-ATTO-Rho11(Jena Biosciences)、10uMの7-プロパルギルアミノ-7-デアザ-dGTP-Cy5(Jena Biosciences)、および10uMの7-プロパルギルアミノ-7-デアザ-dGTP-Cy3(Jena Biosciences)を、384のウェルプレートフォーマットにおいて、15分間、37℃で、低結合基板上でインキュベートした。各ウェルを、50ulの脱イオン化したRNase/DNase Free水で2~3回すすぎ、25mMのACES緩衝液(pH7.4)で2~3回すすいだ。384ウェルプレートを、メーカーによって指定されるように、Cy3、AF555、またはCy5フィルターセットを使用して(実施された色素試験に従って)、800のPMTゲイン設定(gain setting)および50~100μmの解像度で、GE Typhoon(GE Healthcare Lifesciences、Pittsburgh、PA)機器上で画像化した。より高解像度の画像化のために、画像を、全内部反射蛍光(TIRF)対物レンズ(20x、0.75NAあるいは100X、1.5NA、Olympus)、sCMOS Andorカメラ(Zyla 4.2)を用いて、Olympus IX83顕微鏡(Olympus Corp.、Center Valley、PA)上で収集した。ダイクロイックミラーSemrock(IDEX Health & Science, LLC, Rochester, New York)から購入し、例えば、405、488、532、あるいは633nmのダイクロイックリフレクター(dichroic reflectors)/ビームスプリッター、およびバンドパスフィルタを、適切な励起波長と一致する532LPあるいは645LPとして選択した。本明細書で開示されるいくつかの改質された表面は、1μm2当たり0.25分子未満の色素分子の非特異的結合を示す。
【0094】
いくつかの例では、本明細書で開示される表面は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、75、100、または100を超える値、あるいは本明細書における範囲にわたる任意の中間値の、Cy3などのフルオロフォアに関する特異的結合と非特異的結合の比を示す。いくつかの例では、本明細書で開示される表面は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、75、100、または100を超える値、あるいは本明細書における範囲にわたる任意の中間値の、Cy3などのフルオロフォアに関する特異的蛍光シグナルと非特異的蛍光シグナルの比を示す。
【0095】
本開示と一致する低バックグラウンド表面は、少なくとも3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、30:1、40:1、50:1、あるいは1つの非特異的に吸着された分子当たり50を超える特異的色素分子の、特異的色素結合(例えば、Cy3結合)と非特異的色素吸着(例えば、Cy3色素吸着)の比を示す。同様に、励起エネルギーにさらされると、フルオロフォア(例えば、Cy3)が結合している本開示と一致する低バックグラウンド表面は、少なくとも3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、30:1、40:1、50:1、または50:1を超える値の、非特異的に吸着された色素蛍光シグナルと特異的蛍光シグナル(例えば、表面に結合するCy3で標識されたオリゴヌクレオチドから生じる)の比を示す。
【0096】
いくつかの例では、開示される支持体表面の親水性(あるいは、水溶液との「湿潤性」)の程度は、例えば、水接触角の測定により評価することができ、その測定では、水の小さな液滴を表面に置き、表面とのその接触角を、例えば、光学張力計を使用して測定する。いくつかの例では、静的接触角が決定され得る。いくつかの例では、前進接触角または後退接触角が決定され得る。いくつかの例では、本明細書で開示される親水性の低結合支持体表面の水接触角は、約0度~約50度の範囲であり得る。いくつかの例では、本明細書で開示される親水性の低結合支持体表面の水接触角は、50度、45度、40度、35度、30度、25度、20度、18度、16度、14度、12度、10度、8度、6度、4度、2度、または1度以下であり得る。多くの場合では、接触角は、この範囲内の任意の値以下、例えば、40度以下である。当業者は、本開示の所与の親水性の低結合支持体表面が、この範囲内の任意の値、例えば、約27度を有する水接触角を示し得ることを理解する。
【0097】
いくつかの例では、本明細書で開示される親水性表面は、低結合表面への生体分子の非特異的結合の減少により、バイオアッセイの洗浄時間の短縮を容易する。いくつかの例では、適切な洗浄工程は、60未満、50、40、30、20、15、10秒、または10秒未満で実施され得る。例えば、いくつかの例では、適切な洗浄工程は、30秒未満で実施され得る。
【0098】
オリゴヌクレオチドプライマーおよびアダプター配列:一般的に、低非特異的結合材料の1つ以上の層の少なくとも1つの層は、共有的に結合あるいは非共有的に結合するオリゴヌクレオチド分子(例えば、アダプターあるいはプライマー配列)のための官能基を含む場合があるか、または、少なくとも1つの層は、支持体表面に堆積される時に、共有的に結合あるいは非共有的に結合したオリゴヌクレオチドアダプターもしくはプライマー配列をすでに含む場合がある。いくつかの例では、少なくとも1つの第3の層のポリマー分子に固定されたオリゴヌクレオチドは、層全体にわたって複数の深さで分布され得る。
【0099】
いくつかの例では、オリゴヌクレオチドアダプターまたはプライマー分子は、溶液中のプライマーに、つまり、ポリマーを表面上にカップリングまたは堆積させる前に、共有結合される。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドアダプターまたはプライマー分子は、表面上にカップリングまたは堆積された後にポリマーに共有結合される。いくつかの例では、少なくとも1つの親水性ポリマー層は、複数の共有結合したオリゴヌクレオチドアダプターまたはポリマー分子を含む。いくつかの例では、親水性ポリマーの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの層が、複数の共有結合したアダプターあるいはプライマー分子を含む。
【0100】
いくつかの例では、オリゴヌクレオチドアダプターまたはプライマー分子は、当業者に知られている様々な適切なコンジュゲーション化学のいずれかを使用して、親水性ポリマーの1つ以上の層にカップリングされ得る。例えば、オリゴヌクレオチドアダプターまたはプライマー配列は、アミン基、カルボキシル基、チオール基などと反応性である部分を含み得る。使用される可能性がある適切なアミン反応性のコンジュゲーション化学の例としては、限定されないが、イソチオシアナート、イソシアン酸、アシルアジド、NHSエステル、塩化スルホニル、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カーボネート、アリールハライド、イミドエステル、カルボジイミド、無水物、およびフルオロフェニルエステル基に関与する反応が挙げられ得る。適切なカルボキシル反応性のコンジュゲーション化学の例としては、限定されないが、カルボジイミド化合物(例えば、水溶性EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・HCL)に関与する反応が挙げられ得る。適切なスルフヒドリル(sulfydryl)反応性のコンジュゲーション化学の例としては、マレイミド、ハロアセチル(haloacetyls)、およびピリジルジスルフィドが挙げられ得る。
【0101】
1つ以上のタイプのオリゴヌクレオチド分子が、支持体表面に結合され得るか、または固定され得る。いくつかの例では、1つ以上のタイプのオリゴヌクレオチドアダプターあるいはプライマーは、スペーサー配列、アダプターにライゲートされた鋳型ライブラリ核酸配列へのハイブリダイゼーションのためのアダプター配列、フォワード増幅プライマー、リバース増幅プライマー、シーケンシングプライマー、および/または分子バーコーディング配列(molecular barcoding sequences)、あるいはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの例では、1つのプライマーあるいはアダプター配列が、表面の少なくとも1つの層に固定され得る。いくつかの例では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10を超える様々なプライマーあるいはアダプター配列が、表面の少なくとも1つの層に固定され得る。
【0102】
いくつかの例では、固定されたオリゴヌクレオチドアダプターおよび/またはプライマー配列は、長さが約10のヌクレオチド~約100のヌクレオチドの範囲であり得る。いくつかの例では、固定されたオリゴヌクレオチドアダプターおよび/またはプライマー配列は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、あるいは少なくとも100のヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの例では、固定されたオリゴヌクレオチドアダプターおよび/またはプライマー配列は、最大で100、最大で90、最大で80、最大で70、最大で60、最大で50、最大で40、最大で30、最大で20、あるいは最大で10のヌクレオチドの長さであり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、固定されたオリゴヌクレオチドアダプターおよび/またはプライマー配列の長さが約20のヌクレオチド~約80のヌクレオチドの範囲であり得る。当業者は、固定されたオリゴヌクレオチドアダプターおよび/またはプライマー配列の長さがこの範囲内の任意の値、例えば、約24のヌクレオチドを有し得ることを認識するだろう。
【0103】
いくつかの例では、固定されたアダプターまたはプライマー配列は、低結合支持体上で実施される核酸増幅の特異性および効率を促進するように設計される修飾を含み得る。例えば、いくつかの例では、プライマーはポリメラーゼ停止点(polymerase stop points)を含んでもよく、これにより、表面のコンジュゲーションポイントと修飾部位との間のプライマー配列のストレッチが常に一本鎖の形態であり、いくつかのヘリカーゼ依存性等温増幅方法で5’~3’のヘリカーゼのローディング部位(loading site)として機能するようにする。ポリメラーゼ停止点を作製するために使用され得るプライマー修飾の他の例としては、限定されないが、5’末端に向かう2つのヌクレオチド間のプライマーのバックボーンへのPEG鎖の挿入、脱塩基ヌクレオチド(つまり、プリンもピリミジン塩基も有していないヌクレオチド)の挿入、またはヘリカーゼによって迂回することができる損傷部位(lesion site)が挙げられる。
【0104】
以下の例でさらに説明されるように、所与の増幅方法を使用する際の最適なパフォーマンスのために支持体を「調整する」べく、支持体表面上の固定されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはプライマーの表面密度、および/または、固定されたアダプターあるいはプライマーの支持体表面からの間隔を、(例えば、アダプターあるいはプライマーを表面に固定するために使用されるリンカー分子の長さを変えることによって)変えることが望ましい場合がある。以下に述べられるように、固定されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはプライマーの表面密度の調節は、選択された増幅方法に従って変動する様式で、支持体上で観察される特異的増幅および/または非特異的増幅のレベルに影響を与える可能性がある。いくつかの例では、固定されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはプライマーの表面密度は、支持体表面を作製するために使用される分子の成分の比率を調節することにより変えることができる。例えば、オリゴヌクレオチドプライマー-PEGコンジュゲートが低結合支持体の最終層を作製するために使用される場合、オリゴヌクレオチドプライマー-PEGコンジュゲートとコンジュゲートしていないPEG分子の比は変動してもよい。その後、固定されたプライマー分子の結果として生じる面密度は、当業者に知られている様々な技術のいずれかを使用して、推定または測定され得る。例としては、限定されないが、放射性同位体の標識法および計数法の使用、光学的に検出可能なタグ(例えば、蛍光タグ)を含む切断可能な分子の共有カップリングの使用、または蛍光画像化技術の使用が挙げられ、ここで、上記光学的に検出可能なタグは、定義された領域の支持体表面から切断され、固定された量の適切な溶媒中で収集され、その後、蛍光シグナルを既知の光学タグ濃度の較正溶液の蛍光シグナルと比較することによって定量化され得る。ただし、この場合、蛍光シグナルが表面上のフルオロフォアの数に直線的に関連すること(例えば、表面上にフルオロフォアの有意な自己消光がないこと)を確実にするために、標識化反応条件および画像収集環境に注意が払われていることとする。
【0105】
いくつかの例では、本開示の低結合支持体表面上のオリゴヌクレオチドアダプターあるいはプライマーの結果として生じる面密度は、1μm2当たり約100のプライマー分子~1μm2当たり約1,000,000のプライマー分子の範囲であり得る。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドアダプターあるいはプライマーの表面密度は、1μm2当たり、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1,000、少なくとも1,500、少なくとも2,000、少なくとも2,500、少なくとも3,000、少なくとも3,500、少なくとも4,000、少なくとも4,500、少なくとも5,000、少なくとも5,500、少なくとも6,000、少なくとも6,500、少なくとも7,000、少なくとも7,500、少なくとも8,000、少なくとも8,500、少なくとも9,000、少なくとも9,500、少なくとも10,000、少なくとも15,000、少なくとも20,000、少なくとも25,000、少なくとも30,000、少なくとも35,000、少なくとも40,000、少なくとも45,000、少なくとも50,000、少なくとも55,000、少なくとも60,000、少なくとも65,000、少なくとも70,000、少なくとも75,000、少なくとも80,000、少なくとも85,000、少なくとも90,000、少なくとも95,000、少なくとも100,000、少なくとも150,000、少なくとも200,000、少なくとも250,000、少なくとも300,000、少なくとも350,000、少なくとも400,000、少なくとも450,000、少なくとも500,000、少なくとも550,000、少なくとも600,000、少なくとも650,000、少なくとも700,000、少なくとも750,000、少なくとも800,000、少なくとも850,000、少なくとも900,000、少なくとも950,000、または少なくとも1000,000の分子であり得る。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドアダプターあるいはプライマーの表面密度は、1μm2当たり、最大で1,000,000、最大で950,000、最大で900,000、最大で850,000、最大で800,000、最大で750,000、最大で700,000、最大で650,000、最大で600,000、最大で550,000、最大で500,000、最大で450,000、最大で400,000、最大で350,000、最大で300,000、最大で250,000、最大で200,000、最大で150,000、最大で100,000、最大で95,000、最大で90,000、最大で85,000、最大で80,000、最大で75,000、最大で70,000、最大で65,000、最大で60,000、最大で55,000、最大で50,000、最大で45,000、最大で40,000、最大で35,000、最大で30,000、最大で25,000、最大で20,000、最大で15,000、最大で10,000、最大で9,500、最大で9,000、最大で8,500、最大で8,000、最大で7,500、最大で7,000、最大で6,500、最大で6,000、最大で5,500、最大で5,000、最大で4,500、最大で4,000、最大で3,500、最大で3,000、最大で2,500、最大で2,000、最大で1,500、最大で1,000、最大で900、最大で800、最大で700、最大で600、最大で500、最大で400、最大で300、最大で200、または最大で100の分子であり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、アダプターまたはプライマーの表面密度は1μm2当たり10,000の分子~1μm2当たり約100,000の分子の範囲であってもよい。当業者は、アダプターまたはプライマーの分子の表面密度がこの範囲内の任意の値、例えば、いくつかの例では、1μm2当たり約3,800の分子、または、他の例では、1μm2当たり約455,000の分子を有し得ることを認識する。いくつかの例では、以下でさらに説明されるように、支持体表面上のアダプターあるいはプライマー配列に最初にハイブリダイズされた鋳型ライブラリ核酸配列(例えば、サンプルDNA分子)の表面密度は、固定されたオリゴヌクレオチドプライマーの表面密度について示されるもの以下であり得る。いくつかの例では、以下でもさらに説明されるように、支持体表面上のアダプターあるいはプライマー配列にハイブリダイズされた、クローン増幅された鋳型ライブラリ核酸配列の表面密度は 固定されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはプライマーの表面密度について示されるものと同じ範囲もしくは異なる範囲に及び得る。
【0106】
上に列挙されるアダプターあるいはプライマーの分子の局所的な面密度は、表面にわたる密度の変動を排除せず、その結果、表面には、例えば、500,000/um2のオリゴ密度を有する領域が含まれる一方、実質的に異なる局所的な密度を有する少なくとも1つの第2の領域も含まれる場合がある。
【0107】
低結合支持体への核酸分子のハイブリダイゼーション:本開示のいくつかの態様では、開示される低結合支持体と組み合わせて、ハイブリダイゼーション速度、ハイブリダイゼーション特異性(あるいは、ストリンジェンシー)、およびハイブリダイゼーション効率(あるいは、収率)の改善をもたらす、ハイブリダイゼーションの緩衝液製剤が記載される。本明細書で使用されるように、ハイブリダイゼーション特異性とは、一般に、完全に相補的な配列のみに正確にハイブリダイズする固定されたアダプター配列、プライマー配列、またはオリゴヌクレオチド配列の能力の尺度であるが、ハイブリダイゼーション効率とは、一般に、相補的配列にハイブリダイズされる利用可能な固定されたアダプター配列、プライマー配列、またはオリゴヌクレオチド配列全体の割合の尺度である。
【0108】
ハイブリダイゼーションの特異性および/または効率の向上は、開示される低結合表面と共に使用されるハイブリダイゼーション緩衝液製剤の最適化によって達成することができ、これは以下の例においてより詳細に説明される。パフォーマンスの改善を達成するために調節され得るハイブリダイゼーションの緩衝液成分の例としては、限定されないが、緩衝液のタイプ、有機溶媒混合物、緩衝液のpH、緩衝液の粘度、界面活性剤および双性イオンの成分、イオン強度(一価ならびに二価のイオン濃度の調整を含む)、抗酸化剤および還元剤、炭水化物、BSA、ポリエチレングリコール、デキストラン硫酸、ベタイン、他の添加剤などが挙げられ得る。
【0109】
非限定的な例として、ハイブリダイゼーションの緩衝液の製剤化に使用される適切な緩衝液としては、限定されないが、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、コハク酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、酢酸塩、Tris、TAPS、MOPS、PIPES、HEPES、MESなどが挙げられ得る。適切な緩衝液の選択は、一般に、ハイブリダイゼーションの緩衝溶液の目標のpHに依存することになる。一般的に、緩衝溶液の所望のpHは、約pH4~約pH8.4の範囲である。いくつかの実施形態では、緩衝液のpHは、少なくとも4.0、少なくとも4.5、少なくとも5.0、少なくとも5.5、少なくとも6.0、少なくとも6.2、少なくとも6.4、少なくとも6.6、少なくとも6.8、少なくとも7.0、少なくとも7.2、少なくとも7.4、少なくとも7.6、少なくとも7.8、少なくとも8.0、少なくとも8.2、または少なくとも8.4であり得る。いくつかの実施形態では、緩衝液のpHは、最大で8.4、最大で8.2、最大で8.0、最大で7.8、最大で7.6、最大で7.4、最大で7.2、最大で7.0、最大で6.8、最大で6.6、最大で6.4、最大で6.2、最大で6.0、最大で5.5、最大で5.0、最大で4.5、または最大で4.0であり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、所望のpHは約6.4~約7.2の範囲であってもよい。当業者は、緩衝液のpHがこの範囲内の任意の値(例えば、約7.25)を有し得ることを認識する。
【0110】
ハイブリダイゼーション緩衝液製剤で使用される適切な界面活性剤としては、限定されないが、双生イオン(zitterionic)の界面活性剤(例えば、1-ドデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、3-(4-tert-ブチル-1-ピリジニオ(pyridinio))-1-プロパンスルホネート、3-(N,N-ジメチルミリスチルアンモニオ(Dimethylmyristylammonio))プロパンスルホネート、3-(N,Nジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート、ASB-C80、C7BzO、CHAPS、CHAPS水和物、CHAPSO、DDMAB、ジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホネート(Dimethylethylammoniumpropane sulfonate)、N,N-ジメチルドデシルアミンNオキシド、N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、またはN-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート)、およびアニオン性の界面活性剤、カチオン性の界面活性剤、ならびに非イオン性の界面活性剤が挙げられる。非イオン性の界面活性剤の例としては、ポリ(オキシエチレン)エーテルおよび関連するポリマー(例えば、Brij(登録商標)、TWEEN(登録商標)、TRITON(登録商標)、TRITON(登録商標)X-100、ならびにIGEPAL(登録商標)CA-630)、胆汁塩、およびグリコシド界面活性剤が挙げられる。
【0111】
開示される低結合支持体を単独で、または最適化された緩衝液製剤と組み合わせて使用すると、従来のハイブリダイゼーションプロトコルの速度の約2倍~約20倍早い範囲の相対的なハイブリダイゼーション速度をもたらすことができる。いくつかの例では、相対的なハイブリダイゼーション速度は、従来のハイブリダイゼーションプロトコルの速度の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも14倍、少なくとも16倍、少なくとも18倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、または少なくとも40倍であり得る。
【0112】
いくつかの例では、開示される低結合支持体を単独で、または最適化された緩衝液製剤と組み合わせて使用すると、これらの完了メトリックについて60分、50分、40分、30分、20分、15分、10分、または5分未満の総ハイブリダイゼーション反応時間(つまり、ハイブリダイゼーション反応の90%、95%、98%あるいは99%の完了を到達するために必要な時間)をもたらすことができる。
【0113】
いくつかの例では、開示される低結合支持体を単独で、または最適化された緩衝液製剤と組み合わせて使用すると、ハイブリダイゼーションプロトコルの特異性と比較して、改善されたハイブリダイゼーション特異性をもたらすことができる。いくつかの例では、達成され得るハイブリダイゼーションの特異性は、10のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、20ハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、30のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、40のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、50のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、75のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、100のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、200のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、300のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、400のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、500のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、600のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、700のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、800のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、900のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、1,000のハイブリダイゼーション事象で1の塩基ミスマッチ、2,000のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、3,000のハイブリダイゼーション事象で1の塩基ミスマッチ、4,000のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、5,000のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、6,000のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、7,000のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、8,000のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、9,000のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチ、または10,000のハイブリダイゼーション事象で1つの塩基ミスマッチよりも良い。
【0114】
いくつかの例では、開示される低結合支持体を単独で、または最適化された緩衝液製剤と組み合わせて使用すると、従来のハイブリダイゼーションプロトコルと比較して、ハイブリダイゼーション効率の向上(例えば、標的オリゴヌクレオチド配列とのハイブリダイズに成功する、支持体表面上の利用可能なオリゴヌクレオチドプライマーの画分)をもたらすことができる。いくつかの例では、達成され得るハイブリダイゼーション効率は、下に指定される入力標的オリゴヌクレオチド濃度について、上に指定されるハイブリダイゼーション反応時間のいずれかで、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%よりも良い場合がある。いくつかの例では、例えば、ハイブリダイゼーション効率は100%未満であり、支持体表面にハイブリダイズされた標的核酸配列の結果として生じる面密度は、上記表面上のオリゴヌクレオチドアダプターまたはプライマー配列の表面密度より小さい場合がある。
【0115】
いくつかの例では、従来のハイブリダイゼーション(あるいは、増幅)プロトコルまたは最適化されたハイブリダイゼーション(あるいは、増幅)プロトコルを使用する核酸ハイブリダイゼーション(あるいは、増幅)用途のために開示される低結合支持体を使用すると、支持体表面と接触する標的(あるいは、試料)核酸分子の入力濃度の要件を減少させることができる。例えば、いくつかの例では、標的(あるいは、試料)核酸分子は、約10pM~約1μMの範囲の濃度(つまり、アニーリングまたは増幅前)で支持体表面と接触する場合がある。いくつかの例では、標的(あるいは、試料)核酸分子は、少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pM、少なくとも40pM、少なくとも50pM、少なくとも100pM、少なくとも200pM、少なくとも300pM、少なくとも400pM、少なくとも500pM、少なくとも600pM、少なくとも700pM、少なくとも800pM、少なくとも900pM、少なくとも1nM、少なくとも10nM、少なくとも20nM、少なくとも30nM、少なくとも40nM、少なくとも50nM、少なくとも60nM、少なくとも70nM、少なくとも80nM、少なくとも90nM、少なくとも100nM、少なくとも200nM、少なくとも300nM、少なくとも400nM、少なくとも500nM、少なくとも600nM、少なくとも700nM、少なくとも800nM、少なくとも900nM、または少なくとも1μMの濃度で施される場合がある。いくつかの例では、標的(あるいは、試料)核酸分子は、最大で1μM、最大で900nM、最大で800nm、最大で700nM、最大で600nM、最大で500nM、最大で400nM、最大で300nM、最大で200nM、最大で100nM、最大で90nM、最大で80nM、最大で70nM、最大で60nM、最大で50nM、最大で40nM、30nM、最大で20nM、最大で10nM、最大で1nM、最大で900pM、最大で800pM、最大で700pM、最大で600pM、最大で500pM、最大で400pM、最大で300pM、最大で200pM、最大で100pM、最大で90pM、最大で80pM、最大で70pM、最大で60pM、最大で50pM、最大で40pM、最大で30pM、最大で20pM、または最大で10pMの濃度で施される場合がある。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、標的(あるいは、試料)核酸分子は、約90pM~約200nMの範囲の濃度で施されてもよい。当業者は、標的(あるいは、試料)核酸分子が、この範囲内の任意の値、例えば、約855nMを有する濃度で施され得ることを認識する。
【0116】
いくつかの例では、開示された低結合支持体を単独で、または最適化されたハイブリダイゼーションの緩衝液製剤と組み合わせて使用すると、1μm2当たり約0.0001の標的オリゴヌクレオチド分子~1μm2当たり約1,000,000の標的オリゴヌクレオチド分子の範囲のハイブリダイズされた標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子(つまり、任意の後の固相またはクローン増幅反応を実施する前の)の表面密度を結果としてもたらすことができる。いくつかの例では、ハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチド分子の表面密度は、1μm2当たり、少なくとも0.0001、少なくとも0.0005、少なくとも0.001、少なくとも0.005、少なくとも0.01、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1,000、少なくとも1,500、少なくとも2,000、少なくとも2,500、少なくとも3,000、少なくとも3,500、少なくとも4,000、少なくとも4,500、少なくとも5,000、少なくとも5,500、少なくとも6,000、少なくとも6,500、少なくとも7,000、少なくとも7,500、少なくとも8,000、少なくとも8,500、少なくとも9,000、少なくとも9,500、少なくとも10,000、少なくとも15,000、少なくとも20,000、少なくとも25,000、少なくとも30,000、少なくとも35,000、少なくとも40,000、少なくとも45,000、少なくとも50,000、少なくとも55,000、少なくとも60,000、少なくとも65,000、少なくとも70,000、少なくとも75,000、少なくとも80,000、少なくとも85,000、少なくとも90,000、少なくとも95,000、少なくとも100,000、少なくとも150,000、少なくとも200,000、少なくとも250,000、少なくとも300,000、少なくとも350,000、少なくとも400,000、少なくとも450,000、少なくとも500,000、少なくとも550,000、少なくとも600,000、少なくとも650,000、少なくとも700,000、少なくとも750,000、少なくとも800,000、少なくとも850,000、少なくとも900,000、少なくとも950,000、または少なくとも1,000,000であり得る。いくつかの例では、ハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチド分子の表面密度は、1μm2当たり、最大で1,000,000、最大で950,000、最大で900,000、最大で850,000、最大で800,000、最大で750,000、最大で700,000、最大で650,000、最大で600,000、最大で550,000、最大で500,000、最大で450,000、最大で400,000、最大で350,000、最大で300,000、最大で250,000、最大で200,000、最大で150,000、最大で100,000、最大で95,000、最大で90,000、最大で85,000、最大で80,000、最大で75,000、最大で70,000、最大で65,000、最大で60,000、最大で55,000、最大で50,000、最大で45,000、最大で40,000、最大で35,000、最大で30,000、最大で25,000、最大で20,000、最大で15,000、最大で10,000、最大で9,500、最大で9,000、最大で8,500、最大で8,000、最大で7,500、最大で7,000、最大で6,500、最大で6,000、最大で5,500、最大で5,000、最大で4,500、最大で4,000、最大で3,500、最大で3,000、最大で2,500、最大で2,000、最大で1,500、最大で1,000、最大で900、最大で800、最大で700、最大で600、最大で500、最大で400、最大で300、最大で200、最大で100、最大で90、最大で80、最大で70、最大で60、最大で50、最大で40、最大で30、最大で20、最大で10、最大で5、最大で1、最大で0.5、最大で0.1、最大で0.05、最大で0.01、最大で0.005、最大で0.001、最大で0.0005、または最大で0.0001の分子であり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、ハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチド分子の表面密度は、1μm2当たり3,000の分子~1μm2当たり約20,000の分子の範囲であってもよい。当業者は、ハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチド分子の表面密度が、この範囲内の任意の値、例えば、1μm2当たり約2,700の分子を有し得ることを認識する。
【0117】
別の言い方をすれば、いくつかの例では、開示された低結合支持体を単独で、または最適化されたハイブリダイゼーション緩衝液製剤と組み合わせて使用すると、1mm2当たり約100のハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチド分子~1mm2当たり約1×107のオリゴヌクレオチド分子、あるいは1mm2当たり約100のハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチド分子~1mm2当たり約1×1012のハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチド分子の範囲のハイブリダイズされた標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子(つまり、任意の後の固相またはクローン増幅反応を実施する前の)の表面密度を結果としてもたらすことができる。いくつかの例では、ハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチド分子の表面密度は、1mm2当たり、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも4,000、少なくとも5,000、少なくとも6,000、少なくとも10,000、少なくとも15,000、少なくとも20,000、少なくとも25,000、少なくとも30,000、少なくとも35,000、少なくとも40,000、少なくとも45,000、少なくとも50,000、少なくとも55,000、少なくとも60,000、少なくとも65,000、少なくとも70,000、少なくとも75,000、少なくとも80,000、少なくとも85,000、少なくとも90,000、少なくとも95,000、少なくとも100,000、少なくとも150,000、少なくとも200,000、少なくとも250,000、少なくとも300,000、少なくとも350,000、少なくとも400,000、少なくとも450,000、少なくとも500,000、少なくとも550,000、少なくとも600,000、少なくとも650,000、少なくとも700,000、少なくとも750,000、少なくとも800,000、少なくとも850,000、少なくとも900,000、少なくとも950,000、少なくとも1,000,000、少なくとも5,000,000、少なくとも1×107、少なくとも5×107、少なくとも1×108、少なくとも5×108、少なくとも1×109、少なくとも5×109、少なくとも1×1010、少なくとも5×1010、少なくとも1×1011、少なくとも5×1011、または少なくとも1×1012の分子であり得る。いくつかの例では、ハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチド分子の表面密度は、1mm2当たり、最大で1×1012、最大で5×1011、最大で1×1011、最大で5×1010、最大で1×1010、最大で5×109、最大で1×109、最大で5×108、最大で1×108、最大で5×107、最大で1×107、最大で5,000,000、最大で1,000,000、最大で950,000、最大で900,000、最大で850,000、最大で800,000、最大で750,000、最大で700,000、最大で650,000、最大で600,000、最大で550,000、最大で500,000、最大で450,000、最大で400,000、最大で350,000、最大で300,000、最大で250,000、最大で200,000、最大で150,000、最大で100,000、最大で95,000、最大で90,000、最大で85,000、最大で80,000、最大で75,000、最大で70,000、最大で65,000、最大で60,000、最大で55,000、最大で50,000、最大で45,000、最大で40,000、最大で35,000、最大で30,000、最大で25,000、最大で20,000、最大で15,000、最大で10,000、最大で5,000、最大で1,000、最大で500、あるいは最大で100の分子であり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、ハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチド分子の表面密度は、1mm2当たり約50,000の分子~1mm2当たり5,000の分子の範囲であってもよい。当業者は、ハイブリダイズされた標的オリゴヌクレオチド分子の表面密度は、この範囲内の任意の値、例えば、1mm2当たり約50,700の分子を有し得ることを認識する。
【0118】
いくつかの例では、低結合支持体表面に結合するオリゴヌクレオチドアダプターまたはプライマー分子にハイブリダイズされた標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子(あるいは、核酸分子)は、長さが約0.02キロベース(kb)~約20kb、または約0.1キロベース(kb)~約20kbの範囲であり得る。いくつかの例では、標的オリゴヌクレオチド分子は、少なくとも0.001kb、少なくとも0.005kb、少なくとも0.01kb、少なくとも0.02kb、少なくとも0.05kb、少なくとも0.1kbの長さ、少なくとも0.2kbの長さ、少なくとも0.3kbの長さ、少なくとも0.4kbの長さ、少なくとも0.5kbの長さ、少なくとも0.6kbの長さ、少なくとも0.7kbの長さ、少なくとも0.8kbの長さ、少なくとも0.9kbの長さ、少なくとも1kbの長さ、少なくとも2kbの長さ、少なくとも3kbの長さ、少なくとも4kbの長さ、少なくとも5kbの長さ、少なくとも6kbの長さ、少なくとも7kbの長さ、少なくとも8kbの長さ、少なくとも9kbの長さ、少なくとも10kbの長さ、少なくとも15kbの長さ、少なくとも20kbの長さ、少なくとも30kbの長さ、または少なくとも40kbの長さ、あるいは本明細書に記載される範囲にわたる任意の中間値、例えば、少なくとも0.85kbの長さであり得る。
【0119】
いくつかの例では、標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子(あるいは、核酸分子)は、規則的に生じるモノマー単位の反復を含む一本鎖または二本鎖の多量体核酸分子を含む。いくつかの例では、一本鎖または二本鎖の多量体核酸分子は、少なくとも0.001kb、少なくとも0.005kb、少なくとも0.01kb、少なくとも0.02kb、少なくとも0.05kb、少なくとも0.1kbの長さ、少なくとも0.2kbの長さ、少なくとも0.3kbの長さ、少なくとも0.4kbの長さ、少なくとも0.5kbの長さ、少なくとも1kbの長さ、少なくとも2kbの長さ、少なくとも3kbの長さ、少なくとも4kbの長さ、少なくとも5kbの長さ、少なくとも6kbの長さ、少なくとも7kbの長さ、少なくとも8kbの長さ、少なくとも9kbの長さ、少なくとも10kbの長さ、少なくとも15kbの長さ、または少なくとも20kbの長さ、少なくとも30kbの長さ、または少なくとも40kbの長さ、あるいは本明細書に記載される範囲にわたる任意の中間値、例えば、約2.45kbの長さであり得る。
【0120】
いくつかの例では、標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子(あるいは、核酸分子)は、規則的に反復するモノマー単位の約2~約100のコピーを含む一本鎖または二本鎖の多量体核酸分子を含み得る。いくつかの例では、規則的に反復するモノマー単位のコピー数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、および少なくとも100であり得る。いくつかの例では、規則的に反復するモノマー単位のコピー数は、最大で100、最大で95、最大で90、最大で85、最大で80、最大で75、最大で70、最大で65、最大で60、最大で55、最大で50、最大で45、最大で40、最大で35、最大で30、最大で25、最大で20、最大で15、最大で10、最大で5、最大で4、最大で3、または最大で2であり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、規則的に反復するモノマー単位のコピー数は、約4~約60の範囲であってもよい。当業者は、規則的に反復するモノマー単位のコピー数が、この範囲内の任意の値、例えば、約17を有し得ることを認識する。したがって、いくつかの例では、支持体表面の1単位面積当たりの標的配列のコピー数に関して、ハイブリダイズされた標的配列の表面密度は、ハイブリダイゼーション効率が100%未満の場合であっても、オリゴヌクレオチドプライマーの表面密度を超える場合がある。
【0121】
核酸表面増幅(NASA):本明細書で使用されるように、句「核酸表面増幅」(NASA)は、句「固相核酸増幅」(あるいは、単に「固相増幅」)と交換可能に使用される。本開示のいくつかの態様では、開示される低結合支持体と組み合わせて、増幅速度、増幅特異性、および増幅効率の改善をもたらす、核酸増幅製剤が記載されている。本明細書で使用されるように、特異的な増幅とは、固体支持体に共有結合的にあるいは非共有結合的に固定された鋳型ライブラリーオリゴヌクレオチド鎖の増幅を指す。本明細書で使用されるように、非特異的増幅とは、プライマーダイマーまたは他の非鋳型核酸の増幅を指す。本明細書で使用されるように、増幅効率とは、所与の増幅サイクルまたは増幅反応中に成功裡に増幅される、支持体表面上の固定されたオリゴヌクレオチドの割合の尺度である。本明細書で開示される表面上で実施される核酸増幅により、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または95%を超える、例えば、98%あるいは99%の増幅効率を得ることができる。
【0122】
様々な熱サイクルまたは等温核酸増幅スキームのうちのいずれかを、開示される低結合支持体と共に使用することができる。開示される低結合支持体とともに利用され得る核酸増幅方法の例としては、限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、多置換増幅(MDA)、転写増幅法(TMA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、リアルタイムSDA、ブリッジ増幅、等温ブリッジ増幅(isothermal bridge amplification)、ローリングサークル増幅、サークル・サークル増幅(circle-to-circle amplification)、ヘリカーゼ依存性増幅、レコンビナーゼ依存性増幅、または一本鎖結合(SSB)タンパク質依存性増幅が挙げられ得る。
【0123】
しばしば、増幅速度、増幅特異性、および増幅効率の改善は、開示される低結合支持体を単独で、または増幅反応成分の製剤と組み合わせて使用して達成することができる。ヌクレオチド、1つ以上のポリメラーゼ、ヘリカーゼ、一本鎖結合タンパク質など(あるいは、それらの任意の組み合わせ)を含めることに加えて、増幅反応混合物は、限定されないが、緩衝液のタイプ、緩衝液のpH、有機溶媒混合物、緩衝液の粘度、界面活性剤および双生イオンの成分、イオン強度(一価および二価のイオン濃度の調整を含む)、抗酸化剤および還元剤、炭水化物、BSA、ポリエチレングリコール、デキストラン硫酸、ベタイン、他の添加剤などの選択を含む、パフォーマンスの改善を達成する様々な方法で調節され得る。
【0124】
開示される低結合支持体を単独で、または最適化された増幅反応製剤と組み合わせて使用すると、従来の支持体および増幅プロトコルを使用して得られる増幅速度と比較して、増加した増幅速度をもたらすことができる。いくつかの例では、達成され得る相対的な増幅速度は、上に記載される増幅方法のいずれかのための従来の支持体および増幅プロトコルを使用する増幅速度の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも14倍、少なくとも16倍、少なくとも18倍、または少なくとも20倍であり得る。
【0125】
いくつかの例では、開示される低結合支持体を単独で、または最適化された緩衝液製剤と組み合わせて使用すると、これらの完了メトリックのいずれかの180分、120分、90分、60分、50分、40分、30分、20分、15分、10分、5分、3分、1分、50秒、40秒、30秒、20秒、または10秒未満の総増幅反応時間(つまり、増幅反応の90%、95%、98%、99%の完了に達するのに必要な時間)をもたらすことができる。
【0126】
本明細書で開示されるいくつかの低結合支持体表面は、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、50:1、75:1、100:1、または100:1を超える値、あるいは本明細書における範囲にわたる任意の中間値の、Cy3などのフルオロフォアに関する特異的結合と非特異的結合の比を示す。本明細書で開示されるいくつかの表面は、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、50:1、75:1、100:1、または100:1を超える値、あるいは本明細書における範囲にわたる任意の中間値の、Cy3などのフルオロフォアに関する特異的蛍光シグナルと非特異的蛍光シグナルの比を示す。
【0127】
いくつかの例では、開示される低結合支持体を単独で、または最適化された増幅緩衝液製剤と組み合わせて使用すると、60分、50分、40分、30分、20分、あるいは10分以下のより速い増幅反応時間(つまり、増幅反応の90%、95%、98%、99%の完了に達するのに必要な時間)を可能にすることができる。同様に、開示される低結合支持体を単独で、または最適化された緩衝液製剤と組み合わせて使用すると、場合によっては、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、あるいは30サイクル以下で、増幅反応を完了することができる場合がある。
【0128】
いくつかの例では、開示される低結合支持体を単独で、あるいは最適化された増幅反応製剤と組み合わせて使用すると、従来の支持体ならびに増幅プロトコルを使用して得られるものと比較して、増加した特異的増幅、および/または減少した非特異的増幅をもたらすことができる。いくつかの例では、達成され得る特異的増幅と非特異的増幅の結果として生じる比は、少なくとも4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1、600:1、700:1、800:1、900:1、または1,000:1である。
【0129】
いくつかの例では、低結合支持体を単独で、あるいは最適化された増幅反応製剤と組み合わせて使用すると、従来の支持体および増幅プロトコルを使用して得られる増幅効率と比較して、増加した増幅効率をもたらすことができる。いくつかの例では、達成され得る増幅効率は、上で指定される増幅反応時間のいずれかにおいて、50%、60%、70% 80%、85%、90%、95%、98%、または99%よりも良い。
【0130】
いくつかの例では、低結合支持体表面に結合するオリゴヌクレオチドアダプターまたはプライマー分子にハイブリダイズされた、クローン増幅された標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子(あるいは、核酸分子)は、長さが約0.02キロベース(kb)~約20kb、または、約0.1キロベース(kb)~約20kbの範囲であり得る。いくつかの例では、クローン増幅された標的オリゴヌクレオチド分子は、少なくとも0.001kb、少なくとも0.005kb、少なくとも0.01kb、少なくとも0.02kb、少なくとも0.05kb、少なくとも0.1kbの長さ、少なくとも0.2kbの長さ、少なくとも0.3kbの長さ、少なくとも0.4kbの長さ、少なくとも0.5kbの長さ、少なくとも1kbの長さ、少なくとも2kbの長さ、少なくとも3kbの長さ、少なくとも4kbの長さ、少なくとも5kbの長さ、少なくとも6kbの長さ、少なくとも7kbの長さ、少なくとも8kbの長さ、少なくとも9kbの長さ、少なくとも10kbの長さ、少なくとも15kbの長さ、または少なくとも20kbの長さ、あるいは本明細書に記載される範囲にわたる任意の中間値、例えば、少なくとも0.85kbの長さであり得る。
【0131】
いくつかの例では、クローン増幅された標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子(あるいは、核酸分子)は、規則的に生じるモノマー単位の反復をさらに含む一本鎖または二本鎖の多量体核酸分子を含み得る。いくつかの例では、クローン増幅された一本鎖または二本鎖の多量体核酸分子は、少なくとも0.1kbの長さ、少なくとも0.2kbの長さ、少なくとも0.3kbの長さ、少なくとも0.4kbの長さ、少なくとも0.5kbの長さ、少なくとも1kbの長さ、少なくとも2kbの長さ、少なくとも3kbの長さ、少なくとも4kbの長さ、少なくとも5kbの長さ、少なくとも6kbの長さ、少なくとも7kbの長さ、少なくとも8kbの長さ、少なくとも9kbの長さ、少なくとも10kbの長さ、少なくとも15kbの長さ、または少なくとも20kbの長さ、あるいは本明細書に記載される範囲にわたる任意の中間値、例えば、約2.45kbの長さであり得る。
【0132】
いくつかの例では、クローン増幅された標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子(あるいは、核酸分子)は、規則的に反復するモノマー単位の約2~約100のコピーを含む一本鎖または二本鎖の多量体核酸分子を含み得る。いくつかの例では、規則的に反復するモノマー単位のコピー数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、および少なくとも100であり得る。いくつかの例では、規則的に反復するモノマー単位のコピー数は、最大で100、最大で95、最大で90、最大で85、最大で80、最大で75、最大で70、最大で65、最大で60、最大で55、最大で50、最大で45、最大で40、最大で35、最大で30、最大で25、最大で20、最大で15、最大で10、最大で5、最大で4、最大で3、または最大で2であり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、規則的に反復するモノマー単位のコピー数は、約4~約60の範囲であり得る。当業者は、規則的に反復するモノマー単位のコピー数が、この範囲内の任意の値、例えば、約12を有し得ることを認識する。したがって、いくつかの例では、支持体表面の1単位面積当たりの標的配列のコピー数に関して、クローン増幅された標的配列の表面密度は、ハイブリダイゼーションおよび/または増幅効率が100%未満である場合でも、オリゴヌクレオチドプライマーの表面密度を超える場合がある。
【0133】
いくつかの例では、開示される低結合支持体を単独で、または最適化された増幅反応製剤と組み合わせて使用すると、従来の支持体および増幅プロトコルを使用して得られるクローンのコピー数と比較して、増加したクローンのコピー数をもたらすことができる。いくつかの例では、例えば、クローン増幅された標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子は、単量体標的配列の連鎖状の多量体反復を含み、クローンのコピー数は、従来の支持体および増幅プロトコルを使用して得られるものと比較して、実質的に小さい場合がある。したがって、いくつかの例では、クローンのコピー数は、1つの増幅されたコロニー当たり約1つの分子~約100,000の分子(例えば、標的配列分子)の範囲であり得る。いくつかの例では、クローンのコピー数は、1つの増幅されたコロニー当たり、少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも2,000、少なくとも3,000、少なくとも4,000、少なくとも5,000、少なくとも6,000、少なくとも7,000、少なくとも8,000、少なくとも9,000、少なくとも10,000、少なくとも15,000、少なくとも20,000、少なくとも25,000、少なくとも30,000、少なくとも35,000、少なくとも40,000、少なくとも45,000、少なくとも50,000、少なくとも55,000、少なくとも60,000、少なくとも65,000、少なくとも70,000、少なくとも75,000、少なくとも80,000、少なくとも85,000、少なくとも90,000、少なくとも95,000、または少なくとも100,000の分子であり得る。いくつかの例では、クローンのコピー数は、1つの増幅されたコロニー当たり、最大で100,000、最大で95,000、最大で90,000、最大で85,000、最大で80,000、最大で75,000、最大で70,000、最大で65,000、最大で60,000、最大で55,000、最大で50,000、最大で45,000、最大で40,000、最大で35,000、最大で30,000、最大で25,000、最大で20,000、最大で15,000、最大で10,000、最大で9,000、最大で8,000、最大で7,000、最大で6,000、最大で5,000、最大で4,000、最大で3,000、最大で2,000、最大で1,000、最大で500、最大で100、最大で50、最大で10、最大で5、または最大で1つの分子であり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、クローンのコピー数は約2,000の分子~約9,000の分子の範囲であってもよい。当業者は、クローンのコピー数が、この範囲内の任意の値、例えば、いくつかの例では、約2,220の分子、または他の例では、約2の分子を有し得ることを認識する。
【0134】
上に述べられるように、いくつかの例では、増幅された標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子(あるいは、核酸分子)は、単量体標的配列の連鎖状の多量体反復を含み得る。いくつかの例では、増幅された標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子(あるいは、核酸分子)は複数の分子を含み、その複数の分子の各々は単一の単量体標的配列である。したがって、開示される低結合支持体を単独で、または最適化された増幅反応製剤と組み合わせて使用すると、1mm2当たり約100の標的配列コピー~1mm2当たり約1×1012の標的配列コピーの範囲の標的配列コピーの表面密度を結果としてもたらすことができる。いくつかの例では、標的配列コピーの表面密度は、1mm2当たり、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも15,000、少なくとも20,000、少なくとも25,000、少なくとも30,000、少なくとも35,000、少なくとも40,000、少なくとも45,000、少なくとも50,000、少なくとも55,000、少なくとも60,000、少なくとも65,000、少なくとも70,000、少なくとも75,000、少なくとも80,000、少なくとも85,000、少なくとも90,000、少なくとも95,000、少なくとも100,000、少なくとも150,000、少なくとも200,000、少なくとも250,000、少なくとも300,000、少なくとも350,000、少なくとも400,000、少なくとも450,000、少なくとも500,000、少なくとも550,000、少なくとも600,000、少なくとも650,000、少なくとも700,000、少なくとも750,000、少なくとも800,000、少なくとも850,000、少なくとも900,000、少なくとも950,000、少なくとも1,000,000、少なくとも5,000,000、少なくとも1×107、少なくとも5×107、少なくとも1×108、少なくとも5×108、少なくとも1×109、少なくとも5×109、少なくとも1×1010、少なくとも5×1010、少なくとも1×1011、少なくとも5×1011、または少なくとも1×1012のクローン増幅された標的配列分子であり得る。いくつかの例では、標的配列コピーの表面密度は、1mm2当たり、最大で1×1012、最大で5×1011、最大で1×1011、最大で5×1010、最大で1×1010、最大で5×109、最大で1×109、最大で5×108、最大で1×108、最大で5×107、最大で1×107、最大で5,000,000、最大で1,000,000、最大で950,000、最大で900,000、最大で850,000、最大で800,000、最大で750,000、最大で700,000、最大で650,000、最大で600,000、最大で550,000、最大で500,000、最大で450,000、最大で400,000、最大で350,000、最大で300,000、最大で250,000、最大で200,000、最大で150,000、最大で100,000、最大で95,000、最大で90,000、最大で85,000、最大で80,000、最大で75,000、最大で70,000、最大で65,000、最大で60,000、最大で55,000、最大で50,000、最大で45,000、最大で40,000、最大で35,000、最大で30,000、最大で25,000、最大で20,000、最大で15,000、最大で10,000、最大で5,000、最大で1,000、最大で500、または最大で100の標的配列コピーであり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、標的配列コピーの表面密度は、1mm2当たり約1,000の標的配列コピー~1mm2当たり約65,000標的配列コピーの範囲であってもよい。当業者は、標的配列コピーの表面密度が、この範囲内の任意の値、例えば、1mm2当たり約49,600の標的配列コピーを有し得ることを認識する。
【0135】
いくつかの例では、開示される低結合支持体を単独で、または最適化された増幅緩衝液製剤と組み合わせて使用すると、1mm2当たり約100の分子~1mm2当たり約1×1012のコロニーの範囲のクローン増幅された標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子(あるいは、クラスター)の表面密度を結果としてもたらすことができる。いくつかの例では、クローン増幅された分子の表面密度は、1mm2当たり、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも15,000、少なくとも20,000、少なくとも25,000、少なくとも30,000、少なくとも35,000、少なくとも40,000、少なくとも45,000、少なくとも50,000、少なくとも55,000、少なくとも60,000、少なくとも65,000、少なくとも70,000、少なくとも75,000、少なくとも80,000、少なくとも85,000、少なくとも90,000、少なくとも95,000、少なくとも100,000、少なくとも150,000、少なくとも200,000、少なくとも250,000、少なくとも300,000、少なくとも350,000、少なくとも400,000、少なくとも450,000、少なくとも500,000、少なくとも550,000、少なくとも600,000、少なくとも650,000、少なくとも700,000、少なくとも750,000、少なくとも800,000、少なくとも850,000、少なくとも900,000、少なくとも950,000、少なくとも1,000,000、少なくとも5,000,000、少なくとも1×107、少なくとも5×107、少なくとも1×108、少なくとも5×108、少なくとも1×109、少なくとも5×109、少なくとも1×1010、少なくとも5×1010、少なくとも1×1011、少なくとも5×1011、または少なくとも1×1012の分子であり得る。いくつかの例では、クローン増幅された分子の表面密度は、1mm2当たり、最大で1×1012、最大で5×1011、最大で1×1011、最大で5×1010、最大で1×1010、最大で5×109、最大で1×109、最大で5×108、最大で1×108、最大で5×107、最大で1×107、最大で5,000,000、最大で1,000,000、最大で950,000、最大で900,000、最大で850,000、最大で800,000、最大で750,000、最大で700,000、最大で650,000、最大で600,000、最大で550,000、最大で500,000、最大で450,000、最大で400,000、最大で350,000、最大で300,000、最大で250,000、最大で200,000、最大で150,000、最大で100,000、最大で95,000、最大で90,000、最大で85,000、最大で80,000、最大で75,000、最大で70,000、最大で65,000、最大で60,000、最大で55,000、最大で50,000、最大で45,000、最大で40,000、最大で35,000、最大で30,000、最大で25,000、最大で20,000、最大で15,000、最大で10,000、最大で5,000、最大で1,000、最大で500、または最大で100の分子であり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、クローン増幅された分子の表面密度は、1mm2当たり5,000の分子~1mm2当たり約50,000の分子の範囲であってもよい。当業者は、クローン増幅されたコロニーの表面密度が、この範囲内の任意の値、例えば、1mm2当たり約48,800の分子を有し得ることを認識する。
【0136】
いくつかの例では、開示される低結合支持体を単独で、または最適化された増幅緩衝液製剤と組み合わせて使用すると、1mm2当たり約100の分子~1mm2当たり約1×109コロニーの範囲のクローン増幅された標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチド分子(あるいは、クラスター)の表面密度を得ることができる。いくつかの例では、クローン増幅された分子の表面密度は、1mm2当たり、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも15,000、少なくとも20,000、少なくとも25,000、少なくとも30,000、少なくとも35,000、少なくとも40,000、少なくとも45,000、少なくとも50,000、少なくとも55,000、少なくとも60,000、少なくとも65,000、少なくとも70,000、少なくとも75,000、少なくとも80,000、少なくとも85,000、少なくとも90,000、少なくとも95,000、少なくとも100,000、少なくとも150,000、少なくとも200,000、少なくとも250,000、少なくとも300,000、少なくとも350,000、少なくとも400,000、少なくとも450,000、少なくとも500,000、少なくとも550,000、少なくとも600,000、少なくとも650,000、少なくとも700,000、少なくとも750,000、少なくとも800,000、少なくとも850,000、少なくとも900,000、少なくとも950,000、少なくとも1,000,000、少なくとも5,000,000、少なくとも1×107、少なくとも5×107、少なくとも1×108、少なくとも5×108、少なくとも1×109の分子であり得る。いくつかの例では、クローン増幅された分子の表面密度は、1mm2当たり、最大で1×109、最大で5×108、最大で1×108、最大で5×107、最大で1×107、最大で5,000,000、最大で1,000,000、最大で950,000、最大で900,000、最大で850,000、最大で800,000、最大で750,000、最大で700,000、最大で650,000、最大で600,000、最大で550,000、最大で500,000、最大で450,000、最大で400,000、最大で350,000、最大で300,000、最大で250,000、最大で200,000、最大で150,000、最大で100,000、最大で95,000、最大で90,000、最大で85,000、最大で80,000、最大で75,000、最大で70,000、最大で65,000、最大で60,000、最大で55,000、最大で50,000、最大で45,000、最大で40,000、最大で35,000、最大で30,000、最大で25,000、最大で20,000、最大で15,000、最大で10,000、最大で5,000、最大で1,000、最大で500、または最大で100の分子であり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、クローン増幅された分子の表面密度は、1mm2当たり5,000の分子~1mm2当たり約50,000の分子の範囲であり得る。当業者は、クローン増幅されたコロニーの表面密度が、この範囲内の任意の値、例えば、1mm2当たり約48,800の分子を有し得ることを認識する。
【0137】
いくつかの例では、開示される低結合支持体を単独で、または最適化された増幅緩衝液製剤と組み合わせて使用すると、1mm2当たり約100のコロニー~1mm2当たり約1×109のコロニーの範囲のクローン増幅された標的(あるいは、試料)オリゴヌクレオチドコロニー(あるいは、クラスター)の表面密度を得ることができる。いくつかの例では、クローン増幅されたコロニーの表面密度は、1mm2当たり、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも15,000、少なくとも20,000、少なくとも25,000、少なくとも30,000、少なくとも35,000、少なくとも40,000、少なくとも45,000、少なくとも50,000、少なくとも55,000、少なくとも60,000、少なくとも65,000、少なくとも70,000、少なくとも75,000、少なくとも80,000、少なくとも85,000、少なくとも90,000、少なくとも95,000、少なくとも100,000、少なくとも150,000、少なくとも200,000、少なくとも250,000、少なくとも300,000、少なくとも350,000、少なくとも400,000、少なくとも450,000、少なくとも500,000、少なくとも550,000、少なくとも600,000、少なくとも650,000、少なくとも700,000、少なくとも750,000、少なくとも800,000、少なくとも850,000、少なくとも900,000、少なくとも950,000、少なくとも1,000,000、少なくとも5,000,000、少なくとも1×107、少なくとも5×107、少なくとも1×108、少なくとも5×108、少なくとも1×109、少なくとも5×109、少なくとも1×1010、少なくとも5×1010、少なくとも1×1011、少なくとも5×1011、あるいは少なくとも1×1012のコロニーであり得る。いくつかの例では、クローン増幅されたコロニーの表面密度は、1mm2当たり、最大で1×1012、最大で5×1011、最大で1×1011、最大で5×1010、最大で1×1010、最大で5×109、最大で1×109、最大で5×108、最大で1×108、最大で5×107、最大で1×107、最大で5,000,000、最大で1,000,000、最大で950,000、最大で900,000、最大で850,000、最大で800,000、最大で750,000、最大で700,000、最大で650,000、最大で600,000、最大で550,000、最大で500,000、最大で450,000、最大で400,000、最大で350,000、最大で300,000、最大で250,000、最大で200,000、最大で150,000、最大で100,000、最大で95,000、最大で90,000、最大で85,000、最大で80,000、最大で75,000、最大で70,000、最大で65,000、最大で60,000、最大で55,000、最大で50,000、最大で45,000、最大で40,000、最大で35,000、最大で30,000、最大で25,000、最大で20,000、最大で15,000、最大で10,000、最大で5,000、最大で1,000、最大で500、または最大で100のコロニーであり得る。この段落に記載される下限値および上限値のいずれかを組み合わせて、本開示内に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、クローン増幅されたコロニーの表面密度は、1mm2当たり5,000のコロニー~1mm2当たり約50,000のコロニーの範囲であってもよい。当業者は、クローン増幅されたコロニーの表面密度が、この範囲内の任意の値、例えば、1mm2当たり約48,800のコロニーを有し得ることを認識する。
【0138】
場合により、開示された低結合支持体を単独で、または最適化された増幅反応製剤と組み合わせて使用すると、50%、40%、30%、20%、15%、10%、5%、または5%未満など、変動係数が50%以下である増幅かつ標識された核酸集団からのシグナル(例えば、蛍光シグナル)を得ることができる。
【0139】
同じく場合により、最適化された増幅反応製剤を単独で、または開示された低結合支持体と組み合わせて使用すると、50%、40%、30%、20%、15%、10%、または10%未満など、変動係数が50%以下である増幅かつ標識された核酸集団からのシグナルを得ることができる。
【0140】
場合により、前記支持体表面と、本明細書に開示されるような方法により、15C、20C、25C、30C、40C、あるいはそれ以上などの高伸長温度で、または約21Cまたは23Cでの増幅が可能となる。
【0141】
場合により、前記支持体表面と、本明細書に開示されるような方法を使用することで、増幅反応の単純化が可能となる。例えば、場合により増幅反応は、1、2、3、4、または5つ以下の試薬を用いて行う。
【0142】
場合により、前記支持体表面と、本明細書に開示されるような方法を使用することで、増幅中に単純化温度プロファイルの使用が可能となり、これにより反応は、15C、20C、25C、30C、または40Cの低温から、40C、45C、50C、60C、65C、70C、75C、80C、または80C超の高温まで及ぶ温度、例えば、20C~65Cの範囲で実行される。
【0143】
増幅反応はさらに、さらに少量の鋳型(例えば、標的分子または試料分子)が、500nMの試料など、1pM、2pM、5pM、10pM、15pM、20pM、30pM、40pM、50pM、60pM、70pM、80pM、90pM、100pM、200pM、300pM、400pM、500pM、600pM、700pM、800pM、900pM、1,000pM、2,000pM、3,000pM、4,000pM、5,000pM、6,000pM、7,000pM、8,000pM、9,000pM、10,000pM、または10,000pM超の試料といった、表面上に認識可能なシグナルを生じさせるのに十分な量となるように改善される。例示的な実施形態では、約100pMの入力は、信頼できるシグナル判定のためにシグナルを生成するのに十分な入力である。
【0144】
支持体表面の蛍光画像化:開示された固相核酸増幅反応製剤および低結合支持体は、様々な核酸解析用途、例えば、核酸塩基識別、核酸塩基分類、核酸塩基要求、核酸検出用途、核酸シーケンシング用途、核酸を用いた(遺伝学的およびゲノム)診断用途のいずれかに使用してもよい。これらの用途の多くでは、ハイブリダイゼーション、増幅、および/またはシーケンシング反応をモニタリングするために蛍光画像化技法を使用してもよい。
【0145】
蛍光画像化は、当業者に既知の様々なフルオロフォア、蛍光画像化技法、および蛍光画像化デバイスのいずれかを用いて行ってもよい。(例えば、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはタンパク質への抱合により)使用してもよい適切な蛍光染料の例として、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、シアニン、およびそれらの誘導体が挙げられるがこれらに限定されるものではない。前記誘導体として、シアニン誘導体シアニン染料-3(Cy3)、シアニン染料-5(Cy5)、シアニン染料-7(Cy7)などが挙げられる。使用してもよい蛍光画像化技法の例として、広視野蛍光顕微鏡検査法、蛍光顕微鏡検査画像化、蛍光共焦点画像化、二光子蛍光などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。使用してもよい蛍光画像化デバイスの例として、画像センサーまたはカメラを搭載した蛍光顕微鏡、広視野蛍光顕微鏡、共焦点蛍光顕微鏡、二光子蛍光顕微鏡、または、光源、レンズ、ミラー、プリズム、ダイクロイックリフレクター、開口部、および画像センサーまたはカメラの適切な選択を含むカスタム機器などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。開示された低結合支持体表面、およびその上でハイブリダイズされる標的核酸配列のクローン増幅コロニー(すなわちクラスタ)の画像を獲得するために搭載される蛍光顕微鏡の非限定的な例は、Olympus IX83倒立蛍光顕微鏡であり、この顕微鏡には、20×、0.75NA、光源532nm、ロングパス励起532nmに対し最適化されたバンドパスとダイクロイックミラーフィルタのセット、Cy3蛍光放射フィルタ、Semrock532nmダイクロイックリフレクター、およびカメラ(Andor sCMOS,Zyla 4.2)が備わっており、シグナル飽和を回避するべく励起光強度が調整される。多くの場合、画像取得の間に前記支持体表面は緩衝液(例えば、25mMのACES、pH7.4の緩衝液)に浸漬されてもよい。
【0146】
いくつかの例では、開示された反応製剤と低結合支持体を用いる核酸ハイブリダイゼーションおよび/または増幅反応のパフォーマンスは、蛍光画像化技法を用いて評価することができ、この場合の画像のコントラスト-ノイズ比(CNR)は、支持体中の増幅特異性と非特異的結合を評価するのに重要な測定基準(metric)をもたらす。CNRはよく、CNR=(シグナル-バックグラウンド)/ノイズとして定められる。バックグラウンド期間はよく、特定の関心領域(ROI)に特定の特徴(回折限界スポット、DLS)を取り囲む格子間領域に対して測定されるシグナルであるとみなされる。信号対ノイズ比(SNR)は、シグナルの品質全体のベンチマークであると考慮されることが多いが、以下の例に示されるように、CNRの改善により、速やかな画像キャプチャを必要とする用途(例えば、サイクル時間の最小化が必要とされるシーケンシング用途)においてシグナル品質のベンチマークとしてSNRより重要な利点を得ることが可能ということを認めることができる。高CNRでは、正確な鑑別への到達を求められる画像化時間は、(したがってシーケンシング用途の場合では正確なベースコール)は、CNRの改善が中等度でも劇的に短くなる場合がある。
【0147】
大半のアンサンブルベースのシーケンシング手法では、バックグラウンド期間は通常、「格子間」領域に関連するシグナルとして測定される。「格子間」バックグラウンド(Binter)に加えて、「格子内」バックグラウンド(Bintra)も、増幅DNAコロニーが占める領域内に存在する。これらの2つのバックグラウンドシグナルを組み合わせることで、達成可能なCNRが規定され、続いて、光学機器要件、構造コスト、試薬コスト、実行時間、コスト/ゲノム、および、最終的には環状アレイを用いるシーケンシング用途の精度とデータ品質に直接影響が及ぶ。Binterバックグラウンドシグナルは、様々な供給源から生じる。その数少ない例として、消費可能なフローセル由来の自家蛍光、ROIからのシグナルを不明瞭にする偽性蛍光シグナルをもたらす検出分子の非特異的吸着、非特異的DNA増幅産物の存在(例えば、プライマー二量体から生じるもの)が挙げられる。通常の次世代シーケンシング(NGS)用途では、このような現在の視野(FOV)でのバックグラウンドシグナルは経時的に平均化され、控除される。個々のDNAコロニーから生じるシグナル(FOVにおける(S)-Binter)は、分類することのできる鑑別可能な特徴をもたらす。いくつかの例では、格子内バックグラウンド(Bintra)は交絡蛍光シグナルに寄与する場合があり、このシグナルは対象となる標的に特異的でないが同じROIに存在するため、平均化と控除がさらに困難となる。
【0148】
以下の例で実証されるように、本発明開示の低結合基板上で核酸増幅を実施することで、非特異的結合の減少によりBinterバックグラウンドシグナルが減少し、特異的な核酸増幅が改善し、および、格子間と格子内両方の領域から生じるバックグラウンドシグナルに影響を及ぼし得る非特異的増幅の減少が生じる場合がある。いくつかの例では、開示された低結合支持体表面は、場合により開示されたハイブリダイゼーションおよび/または増幅反応製剤と併用すると、従来の支持体およびハイブリダイゼーション、増幅、および/またはシーケンシングプロトコルを用いて達成されるよりも2、5、10、100、または1000倍、CNRを改善することができる。本明細書では、読み出しモードまたは検出モードとして蛍光画像化が使用されると記載されるが、同様に、光学検出モードと非光学検出モードの両方を含む他の検出モードに対する開示された低結合支持体ならびに核酸ハイブリダイゼーション製剤および増幅製剤の使用に、同じ原理が適用される。
【0149】
開示された低結合支持体は、場合により開示されたハイブリダイゼーションおよび/または増幅プロトコルと併用すると、(i)タンパク質と他の反応成分との些少な非特異的結合(ゆえに基板バックグラウンドを最小化する)、(ii)些少な非特異的核酸増幅産物、および(iii)調整可能な核酸増幅反応の提供を示す固相反応をもたらす。本明細書では主に、核酸ハイブリダイゼーション、増幅、およびシーケンシングアッセイが記載されているが、サンドイッチイムノアッセイや酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などを含むがこれらに限定されない他の様々なバイオアッセイフォーマットのいずれかに本開示の低結合支持体が使用されてもよいことが当業者に理解される。
【0150】
プラスチック表面:基板または支持構造が製造される材料の例として、ガラス、溶融シリカ、ケイ素、ポリマー(例えば、ポリスチレン(PS)、マクロ多孔性ポリスチレン(MPPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはそれらの任意の組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ガラス基質とプラスチック基質からなる様々な組成物が企図される。
【0151】
本明細書に開示される目的のために表面修飾を行うには、アミンを含む多くの化学基(-R)に対して表面を反応性にすることが必要になる。適切な基質上で調製すると、これら反応性表面は室温で長期間、少なくとも3か月間以上保管することができる。本明細書に別記されるように、このような表面はさらに、核酸の表面上増幅のためにR-PEGおよびRプライマーオリゴマーとグラフト結合(grafted)することができる。環状オレフィンポリマー(COP)などのプラスチック表面は、当該技術分野で知られる多くの方法のうちいずれかを用いて修飾されてもよい。例えば、この表面は、Ti:Sapphireレーザーアブレーション、UV媒介性エチレングリコールメタクリレート光グラフト、または機械的撹拌(例えば、サンドブラスティング、研磨など)により処理することで、アミンなど多くの化学基に対する反応性を数か月間維持することが可能な親水性表面を作り出す。その後、これら化学基は、生物化学的活性を損ねることなく、PEGなどの不動態化ポリマー、またはDNAあるいはタンパク質などの生体分子の抱合を可能にする場合がある。例えば、DNAプライマーオリゴマーの付着により、タンパク質、フルオロフォア分子、または他の疎水性分子の非特異的吸着を最小限にしながら不動態化プラスチック表面上でのDNA増幅が可能となる。
【0152】
加えて、表面修飾は、例えば、レーザー印刷やUV遮蔽と組み合わせることで、パターン化表面を作り出すことができる。これにより、DNAオリゴマー、タンパク質、または他の部分のパターン化付着が可能となり、表面ベースの酵素活性、結合、検出、または処理がもたらされる。例えば、DNAオリゴマーは、パターン化特徴内でのみDNAを増幅するために、またはパターン化様式で長い増幅DNAコンカテマーを捕捉するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、溶液ベースの基板と反応可能なパターン化領域に酵素島(enzyme islands)を形成してもよい。プラスチック表面はこれら処理形式に対し特に適用可能であるため、本明細書に企図されるようないくつかの実施形態では、プラスチック表面は特に都合が良いと認識される場合がある。
【0153】
さらに、プラスチックは射出成形し、エンボス加工し、または3D印刷することで、マイクロ流体デバイスを含むあらゆる形状、すなわちガラス基板よりはるかに大きなものを作り出すことができるため、複数の構成で生体試料の結合と解析のための表面、例えば、バイオマーカー検出またはDNAシーケンシングのためのsample-to-resultマイクロ流体チップを作り出すために使用することができる。
【0154】
修飾プラスチック表面上で局在化された特異的なDNA増幅が調製される場合があり、蛍光標識でのプロービング時に極めて高いコントラスト-ノイズ比と非常に低いバックグラウンドを持つスポットを産生することができる。
【0155】
アミンプライマーおよびアミン-PEGを伴う親水化されたアミン反応性の環状オレフィンポリマー表面が調製される場合があり、これはローリングサークル増幅を支持する。フルオロフォアで標識したプライマーによるプロービング時、またはポリメラーゼにより標識dNTPをハイブリダイズされたプライマーに加えたとき、極めて低いバックグラウンドを伴う100を超えるシグナル対ノイズ比を示したDNAアンプリコンの輝点が観察され、蛍光ベースのDNAシーケンサーなどの高精度検出システムの特徴である高度に特異的な増幅、極めて低量のタンパク質、および疎水性フルオロフォア結合を認めた。
【0156】
オリゴヌクレオチドプライマーとアダプター配列:概して、キャピラリーまたはチャネル内腔表面に適用される1つ以上の表面修飾またはポリマー層のうち少なくとも1つの層は、オリゴヌクレオチドアダプターまたはプライマー配列を共有結合または非共有結合で取り付けるための官能基を含んでもよく、または、支持体表面にグラフト結合されるかその上に堆積される共有結合または非共有結合で取り付けられたオリゴヌクレオチドアダプターまたはプライマー配列を既に含んでいてもよい。いくつかの態様では、キャピラリーまたはマイクロ流体チャネルは、原核生物のゲノムを配列決定することを目的としたオリゴヌクレオチド集団を含む。いくつかの態様では、キャピラリーまたはマイクロ流体チャネルは、トランスクリプトームを配列決定することを目的としたオリゴヌクレオチド集団を含む。
【0157】
フローセルデバイスまたはシステムの中央領域は、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドが固定されている表面を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、この表面はマイクロ流体チャネルまたはキャピラリーチューブの内部表面であってもよい。いくつかの態様では、前記表面は局所的に平面である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは前記表面に直接固定される。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは中間分子を介して前記表面に固定される。
【0158】
前記中央領域の内部表面に固定されるオリゴヌクレオチドは、異なる標的に結合する部分を備えていてもよい。いくつかの例では、前記オリゴヌクレオチドは、真核生物ゲノムの核酸セグメントに特異的にハイブリダイズする部分を呈する。いくつかの例では、前記オリゴヌクレオチドは、原核生物ゲノムの核酸セグメントに特異的にハイブリダイズする部分を呈する。いくつかの例では、前記オリゴヌクレオチドは、ウイルス核酸セグメントに特異的にハイブリダイズする部分を呈する。いくつかの例では、前記オリゴヌクレオチドは、トランスクリプトーム核酸セグメントに特異的にハイブリダイズする部分を呈する。前記中央領域が、1つ以上のオリゴヌクレオチドが固定されている表面を含むとき、前記中央領域の内部容積は、実行されるシーケンシングの種類に基づき調整できる。いくつかの実施形態では、前記中央領域は、真核生物ゲノムを配列するのに適した内部容積を含む。いくつかの実施形態では、前記中央領域は、原核生物ゲノムを配列するのに適した内部容積を含む。いくつかの実施形態では、前記中央領域は、トランスクリプトームを配列するのに適した内部容積を含む。例えば、いくつかの実施形態では、前記中央領域の内部容積は、0.05μl未満、0.05μlと0.1μlの間、0.05μlと0.2μlの間、0.05μlと0.5μlの間、0.05μlと0.8μlの間、0.05μlと1μlの間、0.05μlと1.2μlの間、0.05μlと1.5μlの間、0.1μlと1.5μlの間、0.2μlと1.5μlの間、0.5μlと1.5μlの間、0.8μlと1.5μlの間、1μlと1.5μlの間、1.2μlと1.5μlの間、あるいは1.5μl超、または前述のいずれか2つにより定められる範囲の容積を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記中央領域の内部容積は、0.5μl未満、0.5μlと1μlの間、0.5μlと2μlの間、0.5μlと5μlの間、0.5μlと8μlの間、0.5μlと10μlの間、0.5μlと12μlの間、0.5μlと15μlの間、1μlと15μlの間、2μlと15μlの間、5μlと15μlの間、8μlと15μlの間、10μlと15μlの間、12μlと15μlの間、あるいは15μl超、または前述のいずれか2つにより定められる範囲の容積を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記中央領域の内部容積は、5μl未満、5μlと10μlの間、5μlと20μlの間、5μlと500μlの間、5μlと80μlの間、5μlと100μlの間、5μlと120μlの間、5μlと150μlの間、10μlと150μlの間、20μlと150μlの間、50μlと150μlの間、80μlと150μlの間、100μlと150μlの間、120μlと150μlの間、あるいは150μl超、または前述のいずれか2つにより定められる範囲の容積を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記中央領域の内部容積は、50μl未満、50μlと100μlの間、50μlと200μlの間、50μlと500μlの間、50μlと800μlの間、50μlと1000μlの間、50μlと1200μlの間、50μlと1500μlの間、100μlと1500μlの間、200μlと1500μlの間、500μlと1500μlの間、800μlと1500μlの間、1000μlと1500μlの間、1200μlと1500μlの間、あるいは1500μl超、または前述のいずれか2つにより定められる範囲の容積を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記中央領域の内部容積は、500μl未満、500μlと1000μlの間、500μlと2000μlの間、500μlと5mlの間、500μlと8mlの間、500μlと10mlの間、500μlと12mlの間、500μlと15mlの間、1mlと15mlの間、2mlと15μlの間、5mlと15mlの間、8mlと15mlの間、10mlと15mlの間、12mlと15mlの間、あるいは15ml超、または前述のいずれか2つにより定められる範囲の容積を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記中央領域の内部容積は、5ml未満、5mlと10mlの間、5mlと20mlの間、5mlと50mlの間、5mlと80mlの間、5mlと100mlの間、5mlと120mlの間、5mlと150mlの間、10mlと150mlの間、20mlと150mlの間、50mlと150mlの間、80mlと150mlの間、100mlと150mlの間、120mlと150mlの間、あるいは150ml超、または前述のいずれか2つにより定められる範囲の容積を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法とシステムは、複数の別個のキャピラリー、マイクロ流体チャネル、流体チャネル、チャンバ、もしくは内腔領域を備えたフローセルデバイスあるいはシステムのアレイまたは集合体を含み、組み合わせた内部容積は、本明細書に開示される範囲内にある値の1つ以上であり、これらを備え、またはこれらを含んでいる。
【0159】
一種類以上のオリゴヌクレオチドプライマーが支持体表面に取り付けまたは固定されてもよい。いくつかの例では、一種類以上のオリゴヌクレオチドアダプターまたはプライマーは、スペーサー配列、アダプターライゲーションが行われた鋳型ライブラリ核酸配列へのハイブリダイゼーションを目的としたアダプター配列、フォワード増幅プライマー、リバース増幅プライマー、シーケンシングプライマー、および/あるいは分子バーコーディング配列、またはそれらの任意の組み合わせを含む場合がある。
【0160】
固定されたオリゴヌクレオチドアダプターおよび/またはプライマー配列の長さは、約10ヌクレオチドから約100ヌクレオチドまで及ぶ場合がある。いくつかの例では、固定されたオリゴヌクレオチドアダプターおよび/またはプライマー配列の長さは、10以下、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100のヌクレオチドであってもよい。いくつかの例では、固定されたオリゴヌクレオチドアダプターおよび/またはプライマー配列の長さは、多くとも100、多くとも90、多くとも80、多くとも70、多くとも60、多くとも50、多くとも40、多くとも30、多くとも20、または多くとも10のヌクレオチドであってもよい。本段落で記載した下限値と上限値のうちいずれかを組み合わせて本開示内に含まれる範囲を形成してもよい。例えば、いくつかの例では、固定されたオリゴヌクレオチドアダプターおよび/またはプライマー配列の長さは約20~約80のヌクレオチドに及ぶ場合がある。当業者は、固定されたオリゴヌクレオチドアダプターおよび/またはプライマー配列の長さがこの範囲内の任意の値、例えば、約24ヌクレオチドを有してもよいことを認識する。
【0161】
コーティング層の数、および/または各層の材料組成は、コーティングを施したキャピラリー内腔表面上でのオリゴヌクレオチドプライマー(または他の付着分子)の表面密度を調整するように選択される。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドプライマーの表面密度は、約1,000プライマー分子/μm2~約1,000,000プライマー分子/μm2であってもよい。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドプライマーの表面密度は、少なくとも1,000、少なくとも10,000、少なくとも100,000、または少なくとも1,000,000分子/μm2であってもよい。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドプライマーの表面密度は、多くとも1,000,000、多くとも100,000、多くとも10,000、または多くとも1,000分子/μm2であってもよい。本段落に記載される下限値と上限値のうちいずれかを組み合わせて、本開示の範囲内に含まれる範囲を形成してもよい。例えば、いくつかの例では、プライマーの表面密度は約10,000分子/μm2~約100,000分子/μm2であってもよい。当業者は、プライマー分子の表面密度がこの範囲内にある任意の値、例えば、約455,000分子/μm2を有してもよいことを認識する。いくつかの例では、固定されたオリゴヌクレオチドプライマーの表面密度を含む、キャピラリーまたはチャネル内腔コーティングの表面特性は、例えば、固相核酸ハイブリダイゼーションの特異性と効率、ならびに/または固相核酸増幅の速度、特異性、および効率を最適化するように調整されてもよい。
【0162】
キャピラリーフローセルカートリッジ:本明細書にはさらに、独立型フローチャネルを作り出すべく、1、2、またはそれ以上のキャピラリーを含んでもよいキャピラリーフローセルカートリッジが開示される。
図2はキャピラリーフローセルカートリッジの非限定的な例を示しており、該カートリッジは、2本のガラスキャピラリー、流体アダプター(この例ではキャピラリー1本につき2つ)、ならびに、キャピラリーがカートリッジに対して固定方向に保持されるようにキャピラリーおよび/または流体アダプターに嵌合するカートリッジシャーシを備えている。いくつかの例では、前記流体アダプターは前記カートリッジシャーシに一体化されてもよい。いくつかの例では、前記カートリッジは、前記キャピラリーおよび/またはキャピラリー流体アダプターに嵌合する追加のアダプターを備えてもよい。いくつかの例では、前記キャピラリーは、前記カートリッジ内に恒久的に取り付けられる。いくつかの例では、前記カートリッジシャーシは、前記キャピラリーフローセルカートリッジの1つ以上のカートリッジが交換可能に取り外し可能かつ交換可能となるように設計される。例えば、いくつかの例では、前記カートリッジシャーシは、1つ以上のキャピラリー取り外しかつ交換されるように開口を可能とする、ヒンジ付き「クラムシェル」構成を備えてもよい。いくつかの例では、前記カートリッジシャーシは、例えば、顕微鏡システムのステージ上、または機器システムのカートリッジホルダー内で取り付けるように構成される。
【0163】
本開示のキャピラリーフローセルカートリッジは、1つのキャピラリーを備えてもよい。いくつかの例では、本開示のキャピラリーフローセルカートリッジは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または20を超えるキャピラリーを備えてもよい。前記キャピラリーフローセルカートリッジの1つ以上のキャピラリーは、1つのキャピラリーフローセルデバイスについて上述されるような幾何学的形状、寸法、材料組成、および/またはコーティングのいずれかを呈する場合がある。同様に、カートリッジ中の個々のキャピラリーに対する流体アダプター(通常、キャピラリー1つにつき2つの流体アダプター)は、いくつかの例で流体アダプターが
図2に例示されるようにカートリッジシャーシに直接統合されてもよいという点を除いて、1つのキャピラリーフローセルデバイスについて上述されるような幾何学的形状、寸法、および材料組成のいずれかを呈する場合がある。いくつかの例では、前記カートリッジは、キャピラリーおよび/または流体アダプターに嵌合するとともに前記カートリッジ内でのキャピラリーの位置決めを補助する、追加のアダプタ(流体アダプターに加えて)を備えてもよい。これらアダプターは、流体アダプターについて上述されるものと同じ製造技法と材料を用いて構築することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、本開示に係る1つ以上のデバイスは、全体的に前記フローチャネルの内部に面する配向に第1の表面を備えていてもよく、前記第1の表面はさらに、本明細書で別記されるようなポリマーコーティングを含んでもよく、かつ、捕捉オリゴヌクレオチド、アダプターオリゴヌクレオチド、または本明細書に開示されるような他の任意のオリゴヌクレオチドなど1つ以上のオリゴヌクレオチドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記デバイスは、全体的に前記フローチャネルの内部に面するとともに全体的に前記第1の表面に面するまたは平行な配向に第2の表面を備えていてもよく、前記第2の表面はさらに、本明細書で別記されるようなポリマーコーティングを含んでもよく、かつ、捕捉オリゴヌクレオチド、アダプターオリゴヌクレオチド、または本明細書に開示されるような他の任意のオリゴヌクレオチドなど1つ以上のオリゴヌクレオチドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本開示のデバイスは、全体的にフローチャネルの内部に面する配向にある第1の表面と、全体的にフローチャネルの内部に面するとともに全体的に前記第1の表面に面するまたは平行な配向にある第2の表面と、全体的に第2のフローチャネルの内部に面する第3の表面と、全体的に前記第2のフローチャネルの内部に面するとともに全体的に前記第3の表面に対向するまたは平行な第4の表面とを備えていてもよく、前記第2の表面と第3の表面は、反射性、透明、または半透明の基板である全体的に平面の基板の反対側に位置するか、または前記反対側に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、フローセル内の画像化表面は、フローセルの中心内に、または、フローセルの2つのサブユニットもしくはサブ区画(subdivisions)間の一区画内あるいはその一部として位置づけられてもよく、前記フローセルは上面と下面とを備えてもよく、その一方または両方は、利用されるような検出モードに対して透過的な場合があり、オリゴヌクレオチドあるいはポリヌクレオチドおよび/または1つ以上のポリマーコーティングを含む表面は、フローセルの内腔内で配置または挿入されてもよい。いくつかの実施形態では、前記上面および/または下面は、取り付けられたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含まない。いくつかの実施形態では、前記上面および/または下面は、取り付けられたオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、前記上面または下面のいずれかが、取り付けられたオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドを含んでもよい。フローセルの内腔内で配置または挿入される表面は、反射的、透明、または半透明な基板である全体的に平面の基板の取り付け側、反対側、またはその両側に位置づけられてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で別記されるか、またはその他の方法により当該技術分野で知られるような光学機器は、第1の表面、第2の表面、第3の表面、第4の表面、フローセルの内腔内に挿入される表面、またはこれらに取り付けられる1つ以上のオリゴヌクレオチドあるいはポリヌクレオチドを含有し得る本明細書に記載の他の表面の画像を提供するために利用される。
【0165】
マイクロ流体チップ・フローセル・カートリッジ:本明細書にはさらに、複数の独立型フローチャネルを有するマイクロ流体チャネル・フローセル・カートリッジが開示される。マイクロ流体チップ・フローセル・カートリッジの非限定的な例は、上に2つ以上の平行ガラスチャネルが形成されているチップ、該チップに繋げられる流体アダプター、前記チップがカートリッジに対して固定配向に置かれるように前記チップおよび/または流体アダプターに嵌合するカートリッジシャーシを備えている。いくつかの例では、前記流体アダプターは前記カートリッジシャーシに一体化されてもよい。いくつかの例では、前記カートリッジは、前記チップおよび/または流体アダプターに嵌合する追加のアダプターを備えてもよい。いくつかの例では、前記チップは、前記カートリッジ内に恒久的に取り付けられる。いくつかの例では、前記カートリッジシャーシは、前記マイクロ流体チップ・フローセル・カートリッジの1つ以上のカートリッジが交換可能に取り外し可能かつ交換可能となるように設計される。例えば、いくつかの例では、前記カートリッジシャーシは、1つ以上のキャピラリー取り外しかつ交換されるように開口を可能とする、ヒンジ付き「クラムシェル」構成を備えてもよい。いくつかの例では、前記カートリッジシャーシは、例えば、顕微鏡システムのステージ上、または機器システムのカートリッジホルダー内で取り付けるように構成される。前記非限定的な例にほんの1つのチップしか記載されていなくとも、マイクロ流体チャネル・フローセル・カートリッジには1より多くのチップが使用可能であることが理解される。
【0166】
本開示のフローセルカートリッジは、1つまたは複数のマイクロ流体チップを備えてもよい。いくつかの例では、本開示のフローセルカートリッジは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または20を超えるマイクロ流体チップを備えてもよい。いくつかの例では、前記マイクロ流体チップには1つのチャネルがあってもよい。いくつかの例では、前記マイクロ流体チップには、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または20を超えるチャネルがあってもよい。前記フローセルカートリッジの1つ以上のチップは、1つのマイクロ流体チップフローセルデバイスについて上述されるような幾何学的形状、寸法、材料組成、および/またはコーティングのいずれかを呈する場合がある。同様に、カートリッジ中の個々のチップに対する流体アダプター(通常、キャピラリー1つにつき2つの流体アダプター)は、いくつかの例で流体アダプターがカートリッジシャーシに直接統合されてもよいという点を除いて、1つのマイクロ流体チップフローセルデバイスについて上述されるような幾何学的形状、寸法、および材料組成のいずれかを呈する場合がある。いくつかの例では、前記カートリッジは、チップおよび/または流体アダプターに嵌合するとともに前記カートリッジ内でのチップの位置決めを補助する、追加のアダプタ(流体アダプターに加えて)を備えてもよい。これらアダプターは、流体アダプターについて上述されるものと同じ製造技法と材料を用いて構築することができる。
【0167】
前記カートリッジシャーシ(または「ハウジング」)は、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、ポリカーボネート(PC)、アクリル(PMMA)、またはUltem(PEI)などの金属および/またはポリマー材料から製造されてもよく、一方で他の材料も本開示に一貫している。ハウジングはCNC機械加工および/または成形技法を用いて製造され、かつ、1、2、または2より多くのキャピラリーが固定配向でシャーシにより拘束されることで独立型フローチャネルを作り出すように設計される。前記キャピラリーは、例えば、圧縮フィット設計を用いて、またはシリコーンあるいはフルオロエラストマーから作られる圧縮可能なアダプターに嵌合させることにより、シャーシに取り付けることができる。いくつかの例では、カートリッジシャーシの2つ以上のコンポーネント(例えば、上半分と下半分)は、上下半分が分離可能となるように例えば、ネジ、クリップ、クランプ、または他の固定具を用いて組み立てられる。いくつかの例では、カートリッジシャーシの2つ以上のコンポーネントは、2つ以上のコンポーネントが恒久的に取り付けられるように例えば、接着剤、溶媒接合、またはレーザー溶接を用いて組み立てられる。
【0168】
本開示のフローセルカートリッジの一部はさらに、特定用途のためにパフォーマンスを向上させるためにカートリッジに統合される追加のコンポーネントを備える。カートリッジに統合され得る追加のコンポーネントの例として、流体流制御コンポーネント(例えば、小型バルブ、小型ポンプ、混合マニホールドなど)、温度調節コンポーネント(例えば、抵抗加熱要素、熱源またはシンクとして機能する金属製平板、加熱または冷却用の圧電気(ペルチェ)デバイス、温度センサー)、または光学コンポーネント(例えば、光学レンズ、1つ以上のキャピラリー・フロー・チャネルの分光器測定および/または画像化を容易にするべくまとめて使用してもよいウィンドウ、フィルタ、ミラー、プリズム、光ファイバー、および/または発光ダイオード(LED)などの小型光源)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0169】
システムとシステムコンポーネント:本明細書に開示されるフローセルデバイスとフローセルカートリッジは、様々な化学解析、生化学解析、核酸解析、細胞解析、または組織解析の用途向けに設計されるシステムのコンポーネントとして使用されてもよい。概して、このようなシステムは、1つ以上の流体流制御モジュール、温度調節モジュール、分光器測定モジュールおよび/あるいは画像化モジュール、プロセッサ、またはコンピュータのほか、本明細書に記載の単一キャピラリーフローセルデバイスとキャピラリーフローセルカートリッジ、またはマイクロ流体フローセルデバイスとフローセルカートリッジを備えてもよい。
【0170】
本明細書に開示されるシステムは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10を超える単一キャピラリーフローセルデバイスまたはキャピラリーフローセルカートリッジを備えてもよい。いくつかの例では、単一キャピラリーフローセルデバイスまたはキャピラリーフローセルカートリッジは、開示されたシステムの取り外し可能で交換可能なコンポーネントでもよい。いくつかの例では、単一キャピラリーフローセルデバイスまたはキャピラリーフローセルカートリッジは、開示されたシステムの使い捨て可能または消耗可能なコンポーネントでもよい。本明細書に開示されるシステムは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10を超える単一マイクロ流体チャネルフローセルデバイスまたはマイクロ流体チャネル・フローセル・カートリッジを備えてもよい。いくつかの例では、単一マイクロ流体チャネルフローセルデバイスまたはマイクロ流体チャネル・フローセル・カートリッジは、開示されたシステムの取り外し可能で交換可能なコンポーネントでもよい。いくつかの例では、フローセルデバイスまたはフローセルカートリッジは、開示されたシステムの使い捨て可能または消耗可能なコンポーネントでもよい。
【0171】
図3は、様々な流体流制御コンポーネントに接続された単一キャピラリーフローセルを備える単純なシステムの一実施形態を図示しており、ここで単一のキャピラリーは、光学的に利用可能であるとともに、顕微鏡ステージ上での取り付け、または様々な画像化用途での使用のためにカスタム画像化機器の中での取り付けに適合可能である。単一キャピラリーフローセルデバイスの入口端には複数の試薬リザーバが流体結合されており、ここで、所与の時点でキャピラリーを通って流れる試薬は、ユーザーによる試薬の流れのタイミングと持続時間の調節を可能にするプログラム可能なロータリーバルブを用いて調節される。この非限定的な例では、流体流は、容積流体流および流体流速度の正確な調節とタイミングを提供する、プログラム可能なシリンジポンプを用いて調節される。
【0172】
図4は、デッドボリュームを最小限にするとともに特定の重要な試薬を保存するべくダイヤフラムバルブを統合したキャピラリーフローセルカートリッジを備えるシステムの一実施形態を図示する。小型ダイヤフラムバルブをカートリッジに統合することで、バルブをキャピラリーの入口付近に位置決めし、これによりデバイス内でのデッドボリュームを最小限にし、高価な試薬の消費を少なくすることができる。バルブなどの流体調節コンポーネントをキャピラリーフローセルカートリッジ内に統合することでも、より大きな流体流制御機能をカートリッジ設計に組み込むことができる。
【0173】
図5は、顕微鏡一式と併用されるキャピラリーフローセルカートリッジを用いた流体システムの一例を示しており、ここで、カートリッジは、カートリッジ内でキャピラリーと接触するとともに熱源/シンクとして機能する、金属板などの温度調節コンポーネントに組み込まれるか、またはこれに嵌合される。前記顕微鏡一式は、光学システムに対してカートリッジを移動させるために、顕微鏡セットアップは、照明システム(例えば、光源としてレーザー、LED、ハロゲンランプなどが挙げられる)、対物レンズ、画像化システム(例えば、CMOSまたはCCDのカメラ)、および光学システムに対しカートリッジを動かすための移動ステージからなるものであり、これにより例えば、ステージを動かすとキャピラリーフローセルの様々な領域に対して蛍光および/または明視野像を取得することができる。
【0174】
図6は、フローセルカートリッジに接した状態で配置される金属板を使用したフローセル(例えば、キャピラリーまたはマイクロ流体チャネルフローセル)の温度調節に関する非限定的な一例を図示する。いくつかの例では、前記金属板は前記カートリッジシャーシに一体化されてもよい。いくつかの例では、前記金属板は、ペルチェまたは抵抗加熱器を使用して温度調節されてもよい。
【0175】
図7は、非接触式熱調節機構を備える、フローセル(例えば、キャピラリーまたはマイクロ流体チャネルフローセル)の温度調節に関する非限定的な一手法を図示する。この手法では、温度調節した空気流は、気温調節システムを使用してフローセルカートリッジを通って(例えば、単一キャピラリーフローセルデバイスまたはマイクロ流体チャネルフローセルデバイスの方へと)配向される。前記気温調節システムは、熱交換器、例えば、抵抗加熱器コイル、ペルチェ素子に付けたフィンなどを備えており、これらは空気を加熱および/または冷却し、一定かつユーザーに特異的な温度に維持することができる。前記気温調節システムはさらに、加熱または冷却空気流をキャピラリーフローセルカートリッジに向けるファンなどの空気送達デバイスを備える。いくつかの例では、前記気温調節システムは一定温度T
1に設定してもよく、そうすることで、空気流、および最終的にフローセルまたはカートリッジ(例えば、キャピラリーフローセルまたはマイクロ流体チャネルフローセル)は一定温度T
2に維持される。T
2は場合により、環境温度や空気流速度などに応じて設定温度T
1と異なっていてもよい。いくつかの例では、このような2つ以上の気温調節システムはキャピラリーフローセルデバイスまたはフローセルカートリッジの周囲に設置されてもよく、そうすることでキャピラリーまたはカートリッジは、どの気温調節システムを所与の時点で起動させるか調節することで、様々な異なる温度間で速やかに循環することができる。他の手法では、気温調節システムの温度設定は様々であってもよく、これに応じてキャピラリーフローセルまたはカートリッジの温度が変更されてもよい。
【0176】
流体流制御モジュール:全体的に、開示された機器システムは、該システムに接続される1つ以上のフローセルデバイスまたはフローセルカートリッジ(例えば、単一キャピラリーフローセルデバイスまたはマイクロ流体チャネルフローセルデバイス)に試料または試薬を送達するために流体流制御能をもたらす。試薬と緩衝液は、チューブおよびバルブのマニホールドによりフローセル入口に接続される、ボトル、試薬・緩衝液用カートリッジなどの適切な容器に保存することができる。開示されたシステムはさらに、キャピラリーフローセルデバイスまたはキャピラリーフローセルカートリッジの下流で流体を集めるために、ボトルやカートリッジなどの適切な容器の形で、処理済み試料および廃棄物用のリザーバを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、前記流体流制御(または「流体」)モジュールは、様々な供給源、例えば、機器に位置づけられる試料あるいは試薬用のリザーバまたはボトル、および中央領域(例えば、キャピラリーまたはマイクロ流体チャネル)入口の間で流れをプログラム可能に切り換えることができる。いくつかの実施形態では、前記流体流制御モジュールは、中央領域(例えば、キャピラリーまたはマイクロ流体チャネル)出口と様々な収集点、例えば、前記システムに接続される処理済み試料用リザーバや廃棄物用リザーバなどとの間で流れをプログラム可能に切り換えることができる。いくつかの例では、試料、試薬、および/または緩衝液は、フローセルカートリッジ自体に統合されるリザーバ内に保存してもよい。いくつかの例では、処理済み試料、消費済み試薬、および/または使用済み緩衝液は、フローセルカートリッジ自体に統合されるリザーバ内に保存してもよい。
【0177】
開示されたシステムによる流体流の調節は通常、ポンプ(または他の流体作動機構)およびバルブ(例えば、プログラム可能なポンプおよびバルブ)を使用して実施される。適切なポンプの例として、シリンジポンプ、プログラム可能なシリンジポンプ、ペリスタル型ポンプ、ダイヤフラムポンプなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。適切なバルブの例として、チェックバルブ、電気機械式二方向または三方向バルブ、空気式二方向および三方向バルブなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、前記システムを通る流体流は、正の空気圧を、試薬・緩衝液用の容器にある1つ以上の入口、またはフローセルカートリッジ(例えば、キャピラリーまたはマイクロ流体チャネル・フローセル・カートリッジ)に組み込んだ入口に適用することで調節してもよい。いくつかの実施形態では、前記システムを通る流体流は、廃棄物リザーバにある1つ以上の出口、またはフローセルカートリッジ(例えば、キャピラリーまたはマイクロ流体チャネル・フローセル・カートリッジ)に組み込んだ1つ以上の出口にて真空引きすることで調節してもよい。
【0178】
いくつかの例では、流体流の様々なモードがアッセイまたは解析手順の様々な点で利用され、例えば、前方流(所与のキャピラリーフローセルデバイスの入口および出口に対する)、後方流、振動流、拍動流、またはこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの用途では、振動流または拍動流は、例えば、1つ以上のフローセルデバイスまたはフローセルカートリッジ(例えば、単一キャピラリーフローセルデバイスまたはカートリッジ、およびマイクロ流体チップフローセルデバイスまたはカートリッジ)内での完全かる効率的な流体交換を容易にするために、アッセイ洗浄/すすぎ工程中に適用されてもよい。
【0179】
場合により、同様に様々な流体流速度が、アッセイまたは解析手順のワークフローの様々な点で利用されてもよく、例えば、いくつかの例では、体積流量は-100ml/secから+100ml/secまで変動してもよい。いくつかの実施形態では、体積流量の絶対値は、少なくとも0.001ml/sec、少なくとも0.01ml/sec、少なくとも0.1ml/sec、少なくとも1ml/sec、少なくとも10ml/sec、または少なくとも100ml/secでもよい。いくつかの実施形態では、体積流量の絶対値は、多くとも100ml/sec、多くとも10ml/sec、多くとも1ml/sec、多くとも0.1ml/sec、多くとも0.01ml/sec、または多くとも0.001ml/secでもよい。所与の点での体積流量の値は、この範囲内の任意の値でもよく、例えば、前方流量は2.5ml/sec、後方流量は-0.05ml/sec、または値は0ml/sec(流れの停止)である。
【0180】
温度調節モジュール:上述のように、いくつかの例では、開示されたシステムは、アッセイまたは解析結果の精度と再現性を促進する目的で温度調節機能を含む。機器システム(またはキャピラリーフローセルカートリッジ)設計に組み込み可能な温度調節コンポーネントの例として、抵抗加熱要素、赤外線源、ペルチェ加熱器または冷却デバイス、ヒートシンク、サーミスター、熱電対などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの例では、前記温度調節モジュール(または「温度調節器」)は、特定のアッセイまたは解析工程を実施する前の調整可能な特定の時間にプログラム可能な温度変化をもたらすことができる。いくつかの例では、前記温度調節器は、特定の時間間隔にわたりプログラム可能な温度変化をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、前記温度調節器はさらに、特定周波数とランプレートにより2つ以上の設定温度間の温度サイクルをもたらすことができ、こうすることで増幅反応の熱サイクルを実行することができる。
【0181】
分光法または画像化モジュール:上述のように、いくつかの例では、開示されたシステムは光学画像化または他の分光測定能を含む。例えば、明視野、暗視野、蛍光、発光、またはリン光の画像化を含むがこれらに限定されない、当業者に知られる様々な画像化モードのいずれかを実施することができる。いくつかの実施形態では、前記中央領域は、中央領域の少なくとも一部の照射と画像化を可能にするウィンドウを含む。いくつかの実施形態では、前記キャピラリーは、キャピラリーの少なくとも一部の照射と画像化を可能にするウィンドウを含む。いくつかの実施形態では、前記マイクロ流体チップは、チップチャネルの少なくとも一部の照射と画像化を可能にするウィンドウを含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、単一の波長励起と放射蛍光画像化が実行されてもよい。いくつかの実施形態では、二重の波長励起および発光(または多重波長励起あるいは発光)蛍光画像化が実行されてもよい。いくつかの例では、画像化モジュールは映像を獲得するように構成される。画像化モードの選択は、キャピラリーまたはカートリッジのすべてあるいは一部が対象のスペクトル領域にわたり光透過性である必要があるという点で、フローセルデバイスまたはフローセルカートリッジの設計に影響を及ぼす場合がある。いくつかの例では、キャピラリーフローセルカートリッジ内の複数のキャピラリーが、単一画像内でそのまま画像化されてもよい。いくつかの実施形態では、キャピラリーフローセルカートリッジ内の1つのキャピラリーのみあるいはキャピラリーの部分集合、またはその一部が、1つの画像内で画像化されてもよい。いくつかの実施形態では、一連の画像は、カートリッジ内のキャピラリーのうち1つ、2つ、数個、または複数の単一高解像度画像を作り出すために「敷設(tiled)」されてもよい。いくつかの例では、マイクロ流体チップ内の複数のチャネルは、単一画像内でそのまま画像化されてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チップ内の1つのチャネルのみあるいはチャネルの部分集合、またはその一部が、1つの画像内で画像化されてもよい。いくつかの実施形態では、一連の画像は、カートリッジ内のキャピラリーまたはマイクロ流体チャネルのうち1つ、2つ、数個、または複数の単一高解像度画像を作り出すために「敷設」されてもよい。
【0183】
分光または画像化モジュールは、例えば、CCDカメラのCMOSを搭載した顕微鏡を備えてもよい。いくつかの例では、分光または画像化モジュールは、例えば、対象となる特定の分光または画像化技法を実行するように構成されたカスタム機器を備えてもよい。概して、画像化モジュールに関連付けられるハードウェアは、光源、検出器、および他の光学コンポーネントのほか、プロセッサまたはコンピュータを備えてもよい。
【0184】
光源:画像化光または励起光を提供するために、タングステンランプ、ハロゲン電球、アーク灯、レーザー、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオードを含むがこれらに限定されない様々な光源のうち、いずれかを使用してもよい。いくつかの例では、1つ以上の光源と追加の光学コンポーネント、例えば、レンズ、フィルタ、開口部、ダイヤフラム、ミラーなどとの組み合わせは、照明システム(またはサブシステム)として構成されてもよい。
【0185】
検出器:画像化を目的として、フォトダイオードアレイ、電荷結合素子(CCD)カメラ、または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画像センサーを含むがこれらに限定されない様々な画像センサーのうち、いずれかを使用してもよい。本明細書では「画像化センサー」という用語は、一次元(リニア)センサーまたは二次元アレイセンサーであってもよい。多くの例では、1つ以上の画像センサーと追加の光学コンポーネント、例えば、レンズ、フィルタ、開口部、ダイヤフラム、ミラーなどとの組み合わせは、画像化システム(またはサブシステム)として構成されてもよい。いくつかの例では、例えば、画像化ではなく分光測定が前記システムにより実行される場合、適切な検出器として、フォトダイオード、アバランシェ・フォトダイオード、および光電子増倍管を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0186】
他の光学コンポーネント:分光測定または画像化モジュールのハードウェアコンポーネントも、前記システムによる光ビームの誘導、成形、フィルタ処理、または収束を目的とした様々な光学コンポーネントを備える場合がある。適切な光学コンポーネントの例として、レンズ、ミラー、プリズム、開口部、回折格子、カラーガラスフィルタ、ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタ、バンドパスフィルタ、狭帯域干渉フィルタ、広帯域干渉フィルタ、ダイクロイックリフレクター、光ファイバー、光導波路などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの例では、分光測定または画像化モジュールはさらに、照明および/または検出/画像化サブシステムに対してキャピラリーフローセルデバイスおよびカートリッジを動かす目的で、またはその逆で1つ以上の移動ステージまたは他の動作制御機構を備えてもよい。
【0187】
全内反射:いくつかの例では、光モジュールまたはサブシステムは、全内反射により励起光をキャピラリーまたはチャネル内腔に送るために、フローセルデバイスおよびカートリッジ中のキャピラリーまたはマイクロ流体チャネルの光透過性の壁のすべてまたは一部を導波路として使用するように設計されてもよい。(キャピラリーまたはチャネルの壁材料およびキャピラリーまたはチャネル内の水性緩衝液の相対屈折率により求められる)臨界角より大きな表面に対し垂直な角度でキャピラリーまたはチャネル内腔の表面に入射励起光が当たると、その表面に全内反射が生じ、光はキャピラリーまたはチャネルの長さに沿ってキャピラリーまたはチャネルの壁を通って伝播する。全内反射により内腔表面にエバネセント波が生じ、このエバネセント波は、極めて短い距離で内腔内部に浸透し、前記表面、例えば、固相プライマー伸長反応によって成長オリゴヌクレオチドへとポリメラーゼにより組み込まれる標識ヌクレオチドにてフルオロフォアを選択的に励起させるために使用されてもよい。
【0188】
画像処理ソフトウェア:いくつかの例では、前記システムはさらに、画像処理能と解析能を提供するためのコードを含むコンピュータ(またはプロセッサ)およびコンピュータ可読媒体を備えてもよい。ソフトウェアが提供可能な画像処理能と解析能の例として、手動、半自動、あるいは完全自動の画像露出補正(例えば、ホワイトバランス、コントラスト補正、信号平均化、他のノイズ減少能など)、自動エッジ検出と物体認知(例えば、キャピラリーフローセルデバイスの内腔表面上の蛍光標識されたオリゴヌクレオチドのクローン増幅クラスターの特定を目的とするもの)、自動統計解析(例えば、キャピラリー内腔表面の一単位面積ごとに特定されるオリゴヌクレオチドのクローン増幅クラスターの数の判定、または、核酸シーケンシング用途おける自動ヌクレオチドベースコールを目的とするもの)、手動測定能(例えば、クラスターまたは他の物体間の距離の測定を目的とするもの)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。場合により、機器制御および画像処理/解析のソフトウェアは、別個のソフトウェアモジュールとして書かれてもよい。いくつかの実施形態では、機器制御および画像処理/解析のソフトウェアは、統合パッケージに組み込んでもよい。
【0189】
システム制御ソフトウェア:いくつかの例では、前記システムは、コンピュータ(またはプロセッサ)およびコンピュータ可読媒体を含んでもよく、これらは、ユーザーインターフェースのほか、全システム機能の手動、半自動、あるいは完全自動の制御、例えば、流体モジュール、温度調節モジュール、および/または分光あるいは画像化モジュールの制御や、その他データ解析およびディスプレイオプションを提供するためのコードを含んでいる。前記システムのコンピュータまたはプロセッサは、前記システムの一体型コンポーネント(例えば、機器内に埋め込まれるマイクロプロセッサまたはマザーボード)、または独立型モジュール、例えば、メインフレームコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータであってもよい。システム制御ソフトウェアが提供可能な流体調節機能の例として、体積流体流量、流体流速度、試料および試薬添加のタイミングと持続期間、バッファー添加、ならびにすすぎ工程が挙げられるが、これらに限定されるものではない。システム制御ソフトウェアが提供可能な温度調節機能の例として、温度設定点の特定、ならびに、温度変化のタイミング、持続期間、およびランプレートの調節が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記システム制御ソフトウェアが提供する分光測定または画像化調節機能の例として、オートフォーカス能、照明または励起光の露光時間と強度の調節、画像取得率の調節、露光時間、およびデータ保管オプションが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0190】
プロセッサとコンピュータ:いくつかの例では、開示されたシステムは、1つ以上のプロセッサまたはコンピュータを備えてもよい。前記プロセッサは、中央処理装置(CPU)、映像処理装置(GPU)、汎用処理装置、またはコンピューティングプラットフォームなどのハードウェアプロセッサでもよい。前記プロセッサは、様々な適切な集積回路、マイクロプロセッサ、論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのうちいずれかで構成されてもよい。いくつかの例では、前記プロセッサはシングルコアプロセッサあるいはマルチコアプロセッサでもよく、または、並列処理のために複数のプロセッサが構成されてもよい。本発明の開示はプロセッサに対する言及とともに記載されるが、他の種類の集積回路および論理回路も適用可能である。前記プロセッサは任意の適切なデータ演算能を有してもよい。例えば、前記プロセッサは、512ビット、256ビット、128ビット、64ビット、32ビット、または16のビットのデータ演算を実行することができる。
【0191】
前記プロセッサまたはCPUは、一連の機械可読命令を実行することができ、この命令はプログラムまたはソフトウェアに埋め込まれる場合がある。前記命令はメモリ位置に記憶されてもよい。前記命令は前記CPUを対象とする場合があり、後に、例えば、本開示のシステム制御方法を実施するようにCPUをプログラムまたはその他の方法により構成することができる。CPUが実行する操作の例として、フェッチ、デコード、実行、ライトバックを挙げることができる。
【0192】
いくつかのプロセッサは、コンピュータシステムの処理装置である。前記コンピュータシステムは、クラウドを利用したデータ保管、および/またはコンピューティングを可能にする場合がある。いくつかの例では、前記コンピュータシステムは、通信インターフェースの補助によりコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)に動作可能に接続されてもよい。前記ネットワークは、インターネット、イントラネットおよび/あるいはエクストラネット、インターネットと通信しているイントラネットおよび/あるいはエクストラネット、またはローカル・エリア・ネットワーク(LAN)であってもよい。場合によりネットワークは、電気通信および/またはデータのネットワークである。前記ネットワークは1つ以上のコンピュータサーバーを備えてもよく、これにより、クラウドを利用したコンピューティングなどの分散コンピューティングが可能になる場合がある。
【0193】
前記コンピュータシステムはさらに、コンピュータメモリあるいはメモリ位置(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶装置(例えば、ハードディスク)、1つ以上の他のシステムと通信するための通信インターフェース(例えば、ネットワークアダプタ)、ならびにキャッシュ、他のメモリユニット、データ記憶装置、および/あるいは電子ディスプレイアダプタなどの周辺機器も備えていてもよい。いくつかの例では、前記通信インターフェースにより、コンピュータは1つ以上の追加のデバイスと通信可能となる場合がある。前記コンピュータは、解析のために接続デバイスから入力データを受け取ることができる。メモリユニット、記憶装置、通信インターフェース、および周辺機器は、通信バス(実線)を介してプロセッサまたはCPUと通信状態にあってもよく、例えば、マザーボードに組み込まれてもよい。メモリまたは記憶装置は、データを記憶するためのデータ記憶装置(またはデータレポジトリ)でもよい。前記メモリまたは記憶装置は、ドライバ、ライブラリ、および保存されたプログラムなどのファイルを記憶することができる。前記メモリまたは記憶装置は、ユーザーデータ、例えば、ユーザー嗜好性およびユーザープログラムを記憶することができる。
【0194】
本明細書に記載されるようなシステム制御、画像処理、および/またはデータ解析の方法は、コンピュータシステムの電子記憶位置、例えば、メモリまたは電子記憶装置に記憶される、機械により実行可能なコードによって実施することができる。機械により実行可能または機械により読み取り可能なコードは、ソフトウェアの形で提供されてもよい。使用中、前記コードはプロセッサにより実行可能である。場合により前記コードを電子記憶装置から取得し、メモリに記憶することで、プロセッサによるアクセスを容易にすることができる。場合により、電子記憶装置は排除されてもよく、機械により実行可能な命令がメモリに記憶される。
【0195】
いくつかの例では、前記コードは、コードの実行に適したプロセッサを有する機械とともに使用するために予めコンパイルされ、かつ構成されてもよい。いくつかの例では、前記コードはランタイム中にコンパイルされてもよい。前記コードは、予めコンパイルされた、またはアズコンパイルされた(as-compiled)様式でコードが実行可能となるよう選択可能なプログラミング言語で提供されてもよい。
【0196】
本明細書に提供されるシステムと方法のいくつかの態様は、ソフトウェアで具体化することができる。この技術の様々な態様は、通常、一種の機械可読媒体上で運ばれるまたは埋め込まれる、機械(またはプロセッサ)により実行可能なコードおよび/または関連データの形にある「製品」または「製造品」として考慮されてもよい。機械により実行可能なコードは、メモリ(例えば、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)またはハードディスクなどの電子記憶装置に記憶することができる。「記憶」型媒体は、様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどのコンピュータやプロセッサの有形メモリ、またはその関連モジュールのうちいずれかあるいはすべてを含む場合があり、これらはソフトウェアのプログラミングのためにいかなる時も非一時的な記憶を提供する場合がある。ソフトウェアのすべてまたは一部は時折、インターネットなどの様々な電気通信ネットワークを介して通信されてもよい。このような通信により例えば、1つのコンピュータまたはプロセッサから別のものへの、例えば、管理サーバーまたはホストコンピュータからアプリケーションサーバーのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアのローディングが可能になる。ゆえに、ソフトウェア要素を持つ場合がある別の種類の媒体は、有線および光地上通信線ネットワークを通じた、ならびに様々なエアリンク(air-links)上でのローカルデバイス間の物理インターフェースにわたって使用されるものといった光波、電波、および電磁波を含む。有線リンク、無線リンク、光リンクなど、先述のような波を運ぶ物理要素も、ソフトウェアを持つ媒体と考慮される場合がある。本明細書で使用されるように、非一時的で有形の「記憶」媒体に制限されない限り、コンピュータまたは機械「可読媒体」などの用語は、実行のためにプロセッサに命令することを必要とする媒体を指す。
【0197】
いくつかの例では、本開示のシステム制御、画像処理、および/またはデータ解析の方法は、1つ以上のアルゴリズムとして実施されてもよい。アルゴリズムは、中央処理装置による実行に際してソフトウェアにより実施することができる。
【0198】
核酸シーケンシング用途:核酸シーケンシングは、開示されたフローセルデバイスおよびカートリッジ(例えば、キャピラリーフローセルまたはマイクロ流体チップのフローセルデバイスおよびカートリッジ)向けの用途の、1つの非限定的な例を提供する。多くの「第二世代」および「第三世代」シーケンシング技法が、合成によるシーケンシング(SBS)に対して大きく平行する周期的アレイ手法を利用する。そこでは、固形支持体に固定される単鎖鋳型オリゴヌクレオチド配列の正確なデコーディングは、ポリメラーゼによる相補的オリゴヌクレオチド鎖に対する段階的なA、G、C、およびTのヌクレオチドの追加から生じるシグナルを上手く分類することに左右される。これらの方法では通常、オリゴヌクレオチド鋳型を、固定長の既知のアダプター配列で修飾し、アダプター配列のものと相補的な既知の配列の表面固定プローブのハイブリダイゼーションによりランダムアレイあるいはパターニングアレイにおいて固形支持体(例えば、開示されたキャピラリーまたはマイクロ流体チップのフローセルデバイスおよびチップカートリッジの内腔表面)に固定し、続いて、例えば、鋳型オリゴヌクレオチド中の塩基配列を同定する蛍光標識ヌクレオチドを使用する一連の周期的な単一の塩基付加プライマー伸長反応を介してプロービングすることが必要になる。これらのプロセスはゆえに、シーケンシング反応を行うフローセルに試薬を導入するタイミングを正確かつ複製可能に調節し、および高価な試薬の消費を最小限にするべく小さな容積を提供する小型化流体システムの使用を必要とする。
【0199】
現在市販されているNGSフローセルは、エッチングされ、ラッピングされ、および/または、画像化、冷却、および/または他の要件に必要な厳格な寸法公差を満たす他の方法により処理されている、ガラスの層で構築される。フローセルが消耗品として使用されると、その製造に必要な高価な製造工程により、シーケンシング実行あたりのコストは高くなりすぎてしまい、研究空間と臨床空間にいる科学者および医療専門家はシーケンシングを慣例的に利用できなくなる。
【0200】
本開示は、低コストのガラスあるいはポリマーのキャピラリーまたはマイクロ流体チャネル、流体アダプター、およびカートリッジシャーシを備えた、低コストのフローセル構造を提供する。それらの最終的な幾可学的断面形状で押し出されるガラスまたはポリマーのキャピラリーを利用することで、高精度で高価な複数のガラス製造プロセスは必要なくなる。キャピラリーまたはチャネルの配向を強く制限し、かつ成型プラスチック成分および/またはエラストマー成分を用いて都合の良い流体接続を設けることで、さらにコストを削る。ポリマーカートリッジシャーシの構成部品をレーザー接合することで、固定具も接着剤も使用することなくキャピラリーまたはマイクロ流体チャネルの密封、ならびに、キャピラリーまたはチャネルおよびフローセルカートリッジの構造的安定化を、迅速かつ効率的に行うことができる。
【0201】
フローセルデバイスとシステムの用途:本明細書に記載のフローセルデバイスとシステムは、高価な試薬の効率的な使用を改善するべくシーケンシング解析など様々な用途に使用することができる。例えば、核酸試料と第2の核酸試料を配列決定する方法は、少なくとも部分的に透過性のチャンバの内部表面に複数のオリゴヌクレオチドを送達する工程と、前記内部表面に第1の核酸試料を送達する工程と、第1のチャネルを介して前記内部表面に複数の非特異的な試薬を送達する工程と、前記第1のチャネルよりも容積が小さい第2のチャネルを介して前記内部表面に特異的な試薬を送達する工程と、前記少なくとも部分的に透過性のチャンバの内部表面上でのシーケンシング反応を視覚化する工程と、第2のシーケンシング反応前に前記少なくとも部分的に透過性のチャンバを交換する工程とを含む。いくつかの態様では、気流は、少なくとも部分的に透過性の表面の外部表面を通過する。いくつかの態様では、記載された方法は、真核生物ゲノムを配列決定するために複数のオリゴヌクレオチドを選択する工程を含む場合がある。いくつかの態様では、記載された方法は、プレハブ式(prefabricated)チューブを前記少なくとも部分的に透過性のチャンバとして選択する工程を含む場合がある。いくつかの態様では、記載された方法は、原核生物ゲノムを配列決定するために複数のオリゴヌクレオチドを選択する工程を含む場合がある。いくつかの態様では、記載された方法は、トランスクリプトームを配列決定するために複数のオリゴヌクレオチドを選択する工程を含む場合がある。いくつかの態様では、記載された方法は、キャピラリーチューブを前記少なくとも部分的に透過性のチャンバとして選択する工程を含む場合がある。いくつかの態様では、記載された方法は、マイクロ流体チップを前記少なくとも部分的に透過性のチャンバとして選択する工程を含む場合がある。
【0202】
記載されたデバイスとシステムはさらに、シーケンシング反応に使用する試薬を減らす方法に使用可能であり、該方法は、第1のリザーバに第1の試薬を提供する工程と、最初の第2のリザーバに第2の試薬を提供する工程であって、第1のリザーバと第2のリザーバの各々は中央領域に流体結合されており、該中央領域はシーケンシング反応のための表面を含んでいる、工程と、前記第1の試薬と前記第2の試薬をフローセルデバイスの中央領域に連続して導入する工程であって、前記第1のリザーバから前記中央領域の入口まで流れる前記第1の試薬の体積は、前記第2のリザーバから前記中央領域までを流れる前記第2の試薬の体積より小さい、工程とを含む。
【0203】
記載されたデバイスとシステムのさらなる使用は、シーケンシング反応における試薬の効率的な使用を向上させる方法であり、該方法は、第1のリザーバに第1の試薬を提供する工程と、最初の第2のリザーバに第2の試薬を提供する工程であって、第1のリザーバと第2のリザーバの各々は中央領域に流体結合されており、該中央領域はシーケンシング反応のための表面を含んでいる、工程と、前記第1のリザーバから前記中央領域の入口まで流れる前記第1の試薬の体積を、前記第2のリザーバから前記中央領域までを流れる前記第2の試薬の体積より小さく維持する工程とを含む。
【0204】
概して、前記第1の試薬は前記第2の試薬よりも高価である。いくつかの態様では、前記第1の試薬は、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、およびヌクレオチドアナログからなる群から選択される。
【0205】
マイクロ流体チップの製造方法:マイクロ流体チップは、微細加工プロセスの組み合わせにより製造可能である。本明細書に記載のマイクロ流体チップを製造する方法は、表面を設ける工程と、該表面上に少なくとも1つのチャネルを形成する工程とを含む。前記製造方法はさらに、複数のチャネルを持つ少なくとも1つの第1の平面を有する第1の基板を設ける工程と、少なくとも1つの第2の平面を持つ第2の基板を設ける工程と、前記第1の基板の第1の平面を前記第2の基板の第2の平面に結合させる工程とを含む。いくつかの例では、前記第1の表面上のチャネルの上側は開いており、下側は閉じており、前記第2の表面は、前記チャネルの下側を通じて前記第1の表面に接合し、これにより前記チャネルの開いた上側は影響を受けないままとなる。いくつかの例では、本明細書に記載の方法はさらに、第3の平面を持つ第3の基板を設ける工程と、前記チャネルの開いた上側を介して前記第3の表面を前記第1の表面に接合する工程とを含む。接合条件として、例えば、基板の加熱、または、第1あるいは第2の基板のうち一方の平面への接着剤の塗布を挙げることができる。
【0206】
通常、前記デバイスは微細加工されるので、基板材料は、既知の微細加工技法、例えば、フォトリソグラフィ、湿式化学エッチング、レーザーアブレーション、レーザー照射、エアアブレーション技法、射出成形、エンボス加工などの技法との適合性に基づき選択される。基板材料はさらに、一般的に、極度のpH、温度、塩濃度、および照明または電界の適用を含む、マイクロ流体デバイスが被りかねない完全範囲の条件との適合性に対して選択される。したがって、いくつかの好ましい態様では、基板材料は、ホウケイ酸ガラス、クオーツ、ならびにその他基板材料などのシリカ系基板を含む場合がある。
【0207】
さらに好ましい態様では、前記基板材料は、ポリマー材料、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(登録商標))、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリスルホンなどのプラスチックを含む。このようなポリマー基板は、上述のように利用可能な微細加工技法を使用して、射出成形、エンボス加工、あるいはスタンプ加工など周知の成型技法を用いて微細加工材料(microfabricated master)から、または型の中のポリマー前駆体材料を重合体化することにより、容易に製造される(米国特許第5,512,131号を参照)。このようなポリマー基板材料は、その製造を容易にし、コストと廃棄可能性を下げるほか、大半の極度な反応条件に対する全体的な不活性に好ましい。再度、これらポリマー材料は、マイクロ流体システム中での有用性を向上させるため、例えば、流体誘導を向上させるために処理された表面、例えば、誘導体化または被覆表面を含む場合がある。
【0208】
マイクロ流体デバイスのチャネルおよび/またはチャンバは通常、上述の微細加工技法を使用して、マイクロスケールチャネル(例えば、溝、窪み)として第1の基板の上面に製造される。前記第1の基板は、第1の平面を有する上側と下側とを含む。本明細書に記載の方法に従い調製したマイクロ流体デバイスでは、複数のチャネル(例えば、溝および/または窪み)は、前記第1の平面に形成される。いくつかの例では、前記第1の平面(第2の基板を追加する前)に形成されるチャネル(例えば、溝および/または窪み)は、底部と、上側が開いたままの側壁とを有している。いくつかの例では、前記第1の平面(第2の基板を追加する前)にされるチャネル(例えば、溝および/または窪み)は、底部、側壁、閉じた状態の上側を有している。いくつかの例では、前記第1の平面(第2の基板を追加する前)にされるチャネル(例えば、溝および/または窪み)は、側壁しか有しておらず、上面と下面はない。
【0209】
前記第1の基板の第1の平面が、前記第2の基板の平面と接して配置し、かつ接合すると、第2の基板は、第1の基板の表面にある溝および/または窪みを覆うおよび/または密封することができ、これによりこれら2つの要素の界面にデバイスのチャネルおよび/またはチャンバ(例えば、内部部分)が形成される。
【0210】
第1の基板を第2の基板に接合した後、この構造はさらに第3の基板と接して配置し、かつ接合することができる。前記第3の基板は、前記第2の基板に接していない前記第1の基板の側と接して配置することができる。いくつかの実施形態では、第1の基板は、第2の基板と第3の基板との間に配置される。いくつかの実施形態では、第2の基板と第3の基板は、第1の基板上の溝、窪み、または開口部を覆うおよび/または密封することができ、これによりこれら要素の界面にデバイスのチャネルおよび/またはチャンバ(例えば、内部部分)が形成される。
【0211】
前記デバイスは、前記溝または窪みからデバイスの内部に形成されるチャネルおよび/またはチャンバのうち少なくとも1つと連通するように配向される開口部を有する場合がある。いくつかの実施形態では、前記開口部は第1の基板に形成される。いくつかの実施形態では、前記開口部は第1および第2の基板に形成される。いくつかの実施形態では、前記開口部は第1、第2、および第3の基板に形成される。いくつかの実施形態では、前記開口部はデバイスの上側に位置決めされる。いくつかの実施形態では、前記開口部はデバイスの下側に位置決めされる。いくつかの実施形態では、前記開口部はデバイスの第1および/または第2の端部に位置決めされ、チャネルは前記第1の端部から前記第2の端部までの方向に沿っている。
【0212】
基板が一体的に結合される条件は一般的に広く理解されており、このような基板の接合は一般的に多くの方法のうちいずれかにより実行されるが、使用する基板材料の性質に応じて変動する場合がある。例えば、基板の熱接合は、例えば、ガラスまたはシリカ系基板のほか、ポリマー系基板を含む多数の基板材料に適用することができる。このような熱接合は通常、高温および場合により外圧印加の条件下で、接合される基板と一体的に嵌合させる工程を含む。正確な温度と圧力は概して、使用する基板材料の性質に応じて変動する。
【0213】
例えば、シリカ系基板材料、すなわちガラス(硼珪酸ガラス、Pyrex(商標)、ソーダ石灰ガラスなど)や石英などでは、基板の熱接合は通常、約500℃~約1400℃、好ましくは約500℃~約1200℃の温度で実行される。例えば、ソーダ石灰ガラスは通常約550℃の温度で接合されるが、硼珪酸ガラスは通常約800℃で熱接合される。他方、石英基板は通常約1200℃の温度で熱接合される。これら接合温度は通常、接合対象の基板を高温アニーリングオーブンに入れることで達成される。
【0214】
一方、熱接合されるポリマー基板は通常、基板の過剰な溶解および/または歪みを防ぐために、例えば、デバイスすなわちチャネルまたはチャンバの内部部分を平滑化するためにシリカ系基板よりも低い温度および/または圧力を利用する。概して、このようなポリマー基板を接合させる高温は、使用するポリマー材料に応じて約80℃~約200℃で変動し、好ましくは約90℃と150℃との間にある。ポリマー基板の接合に必要な温度を大幅に下げたことで、このような接合は通常、シリカ系基板の接合に使用されるような高温オーブンを必要とすることなく実行することができる。以下で詳述するように、これにより単一の一体型接合システム内での熱源の組み込みが可能となる。
【0215】
接着剤を使用しても周知の方法に従い基板を一体的に接合することができ、この方法は通常、接合対象の基板間に接着剤の層を塗布する工程と、接着剤を塗布するまで接合対象の基板を押圧する工程とを含む。例えば、市販で入手可能なUV硬化性接着剤を含む様々な接着剤を、これらの方法に従い使用することができる。例えば、ポリマー部分の音響接着、超音波接着、および/または溶媒接着を含む代替的な方法を使用して、本発明に従い基板を一体的に接合することができる。
【0216】
通常、記載されたマイクロ流体チップまたはデバイスの多くが一度に製造される。例えば、ポリマー基板は、一体的に嵌合および接合可能である大きな分離可能なシート中で型押しされ、または成型されてもよい。次いで、個々のデバイスまたは接合基板を大きなシートから分離してもよい。同様に、シリカ系基板では、個々のデバイスは、更に大きな基板ウェハまたはプレートから製造可能であり、これによりさらに高い処理能力を持つ製造プロセスが可能になる。具体的に、多数のチャネル構造を第1の基板ウェハまたはプレートへと製造し、続いて第2の基板ウェハまたはプレートを重ね、場合によりさらに第3の基板ウェハまたはプレートに重ねることができる。次いで、結果形成された複数のデバイスは、ソーイング、スクライビング、破壊など基地の方法を用いて、大きな基板から分割される。
【0217】
上述のように、様々なチャネルおよびチャンバを密封するために上部基板または第2の基板が、下部基板または第1の基板に重ねられる。本発明の方法に従い接合プロセスを実行するには、第1の基板と第2の基板の接合は、2つの基板表面を最適な接触状態に維持するために真空を用いて行われる。具体的に、下部基板の平面と上部基板の平面とを嵌合させ、上部基板に配置される穴に真空をかけることにより、下部基板は上部基板と最適に接触した状態で維持されてもよい。通常、上部基板の穴への真空の適用は、一体型真空源を有する真空チャック上に上部基板を置くことにより実行され、前記真空チャックは通常、載置台または表面を備えている。シリカ系基板の場合、最初の接合を作り出すために接合基板は高温にさらされ、そうすることで接合基板は、互いに対する移動を行うことなくアニーリングオーブンに移すことができる。
【0218】
本明細書に記載のデバイスに組み込むための代わりの接合システムとして、例えば、2つの基板平面間に接着剤層を適用するための接着剤分配システムが挙げられる。このことは、基板の嵌合前に接着剤層を適用すること、または一定量の接着剤を隣接する基板の一端に塗布すること、および、2つの嵌合基板のウィッキング作用により2つの基板間の空間全体にわたり接着剤を引き出すことを可能にすることで行われてもよい。
【0219】
ある実施形態では、接合システム全体は、上部基板と下部基板を載置表面に置くとともにこれらを後の接合のために位置合わせするための、自動操作可能なシステムを備える場合がある。通常、このようなシステムは、載置表面または上部基板と下部基板の1つ以上を互いに対して動かすための移動システムを備えている。例えば、ロボットシステムを使用して、上部基板と下部基板の各々を、載置表面の上、およびアライメント構造内に運び、移動させ、かつ配置することができる。接合プロセスの後、このようなシステムはさらに、仕上げ品を載置表面から取り外して、これら嵌合基板を次の操作、例えば、分離操作、シリカ系基板ではアニーリングオーブンなどへと移動させてから、その上に追加の基板を接合させることができる。
【0220】
いくつかの例では、マイクロ流体チップの製造は、チップを作製するために2つ以上の基板層を層状化または積層化する工程を含む。例えば、マイクロ流体デバイスでは、デバイスのマイクロ流体要素は通常、レーザー照射、エッチング、またはその他の方法による製造特徴により、第1の基板の表面に作製される。次いで、第1の基板の表面に第2の基板を積層または接合して、これらの特徴を密封し、デバイスの流体要素、例えば、流体チャネルを提供する。
【実施例】
【0221】
これら実施例は例示のみを目的として提供されるものであり、本明細書に提供される特許請求の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0222】
キャピラリー内に核酸クラスターを確立し、これを蛍光画像化にかける。キャピラリーチューブを有するフローデバイスを本試験に使用した。結果として得たクラスターの画像を
図8に表す。この図では、本明細書に開示されるようなキャピラリーシステムの内腔内にあるクラスターは確実に増幅かつ視覚化することができることを実証した。
【実施例2】
【0223】
フローセルデバイスは、
図9に示すように複数の工程のうち1つを使用して1、2、または3層のガラスで構成できる。
図9では、フローセルデバイスは1、2、または3層のガラスで作製することができる。眼鏡は石英(quarts)または硼珪酸ガラスのいずれかの場合がある。
図9A~9Cは、集束フェムト秒レーザー照射(1片)および/またはレーザガラス接合(2また3片構築)などの技法によりウェハ水準で前記デバイスを作製する方法を示す。
【0224】
図9Aでは、ウェハの第1の層をレーザー(例えば、フェムト秒レーザー照射)で処理し、ウェハ材料を切除することでパターニング表面をもたらす。このパターニング表面は、ウェハ1つにつき12個のチャネルなど、表面上にある複数のチャネルであってもよい。ウェハは直径210mmである。次いで、処理したウェハを支持台に置き、流体流を特定方向に向けるのに使用可能なチャネルを形成する。
【0225】
図9Bでは、パターニング表面を持つウェハの第1の層をウェハの第2の層に接して配置し、接合させる。接合はレーザガラス接合技法を用いて実行可能である。前記第2の層は、パターニング表面を持つウェハ上の溝、窪み、または開口部を覆うおよび/または密封することができ、これによりこれら要素の界面にデバイスのチャネルおよび/またはチャンバ(例えば、内部部分)が形成される。次いで、2つのウェハ層を伴う接合構造を支持板に置くことができる。このパターニング表面は、ウェハ1つにつき12個のチャネルなど、表面上にある複数のチャネルであってもよい。ウェハは直径210mmであってもよい。
【0226】
図9Cでは、パターニング表面を持つウェハの第1の層は、一端でウェハの第2の層に接して配置し、これに接合させることができ、ウェハの第3の層は他端でウェハの第1の層に接合させることができ、こうすることで、ウェハの第1の層を第2の層と第3の層との間に位置決めする。接合はレーザガラス接合技法を用いて実行可能である。前記ウェハの第2の層と第3の層は、パターニング表面を持つウェハ上の溝、窪み、または開口部を覆うおよび/または密封することができ、これによりデバイスのチャネルおよび/またはチャンバ(例えば、内部部分)が形成される。次いで、3つのウェハ層を伴う接合構造を支持板に置くことができる。このパターニング表面は、ウェハ1つにつき12個のチャネルなど、表面上にある複数のチャネルであってもよい。ウェハは直径210mmであってもよい。
【実施例3】
【0227】
図10Aは、1片のガラスフローセル設計を示す。この設計では、集束フェムト秒レーザー照射法を用いてフローチャネルと出入口穴を作製することができる。フローセル上には2つのチャネル/レーンがあり、各チャネルは2つの行があり、それぞれに26のフレームがある。チャネルは深度約100μmであってもよい。チャネル(1)には入口穴(A1)と出口穴(A2)があり、チャネル(2)には入口穴(B1)と出口穴(B2)がある。フローセルにはさらに、1D線形コードとヒトが読み取り可能なコード、場合により2Dマトリックスコードがある場合がある。
【0228】
図10Bは、2片のガラスフローセルを示す。この設計では、集束フェムト秒レーザー照射または化学エッチング技法を用いてフローチャネルと出入口穴を作製することができる。前記2片はレーザガラス接合技法により一体的に接合させることができる。出入口穴は構造の最上層に置に置くことができ、デバイスの内部部分に形成されるチャネルおよび/またはチャンバのうち少なくとも1つと連通状態になるように配向することができる。セル上には2つのチャネルがあり、各チャネルは2つの行があり、それぞれに26のフレームがある。チャネルは深度約100μmであってもよい。チャネル(1)には入口穴(A1)と出口穴(A2)があり、チャネル(2)には入口穴(B1)と出口穴(B2)がある。フローセルにはさらに、1D線形コードとヒトが読み取り可能なコード、場合により2Dマトリックスコードがある場合がある。
【0229】
図10Cは、3片のガラスフローセルを示す。この設計では、集束フェムト秒レーザー照射または化学エッチング技法を用いてフローチャネルと出入口穴を作製することができる。前記3片はレーザガラス接合技法により一体的に接合させることができる。パターニング表面を持つウェハの第1の層は、一端でウェハの第2の層に接して配置し、これに接合させることができ、ウェハの第3の層は他端でウェハの第1の層に接合させることができ、こうすることで、ウェハの第1の層を第2の層と第3の層との間に位置決めする。出入口穴は構造の最上層に置に置くことができ、デバイスの内部部分に形成されるチャネルおよび/またはチャンバのうち少なくとも1つと連通状態になるように配向することができる。セル上には2つのチャネルがあり、各チャネルは2つの行があり、それぞれに26のフレームがある。チャネルは深度約100μmであってもよい。チャネル(1)には入口穴(A1)と出口穴(A2)があり、チャネル(2)には入口穴(B1)と出口穴(B2)がある。フローセルにはさらに、1D線形コードとヒトが読み取り可能なコード、場合により2Dマトリックスコードがある場合がある。
【実施例4】
【0230】
調製したガラスチャネルをKOHで洗浄し、続いてエタノールですすぎ、65℃で30分間シラン処理を行うことで、フローセルを被覆した。チャネル表面をEDC-NHSで30分間賦活させ、続いて5μmプライマーで20分間インキュベーションすることでプライマーをグラフト結合させ、30μmのPEG-NH2で不動態化させた。
【0231】
実施例4の手法を行った後に多層表面を作製する。ここでは、PEG不動態化の後、PEG-NH2を追加してから多腕PEG-NHSをチャネルに流し、続いて場合によりPEG-NHSでさらにインキュベーションを行い、場合により多腕PEG-NH2でさらにインキュベーションを行った。これら表面では、特に多腕PEG-NH2を最後に追加してから、任意の工程でプライマーをグラフト結合してもよい。
【0232】
本発明の好ましい実施形態を本明細書中で示しかつ記載してきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものであることは、当業者に明白である。多数の変形、変更、および置き換えは、本発明から逸脱することなく、当業者によって現在想到されるものである。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において任意の組み合わせで利用される得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲およびその同等物の範囲内の方法と構造は、それにより包含されることが、意図されている。