(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240607BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20240607BHJP
C09J 109/02 20060101ALI20240607BHJP
C09J 127/06 20060101ALI20240607BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/10
C09J109/02
C09J127/06
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2021539295
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(86)【国際出願番号】 JP2020030569
(87)【国際公開番号】W WO2021029403
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2019149013
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 学
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 直紀
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦典
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158412(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/158411(WO,A1)
【文献】特開平09-263733(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168990(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル100質量部と、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して、10~100質量部のエラストマーと、10~100質量部の可塑剤とを含む基材を有する粘着テープであって、
前記エラストマーが、アクリロニトリルモノマー単位と、クロロプレンモノマー単位、ブタジエンモノマー単位、及びイソプレンモノマー単位からなる群より選択される少なくとも1つのモノマー単位と、を含み、
前記粘着テープの吸音試験における減衰値が2dB以上であ
り、
前記基材の厚みが150~750μmである、粘着テープ。
【請求項2】
前記エラストマーのガラス転移温度が、-40℃~0℃である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記可塑剤が、フタル酸と、炭素数9~10のアルコールとのジエステルである、請求項1又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記基材の一方の表面に、前記基材の他方の表面を重ね合わせた際の粘着力が、0.5~5N/10mmである、請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記基材が、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して、カーボンブラックを1~50質量部含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着テープのテープ幅が10~300mmであり、ロール状に巻かれた形態で、65℃で72時間静置した後の変形率が10%以下である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線類を所定の形状に束ねるため、結束用のテープが用いられている。電線を結束するテープには、柔軟性に優れた基材を用いることが多く、それにより結束した電線は強度、屈曲性に優れつつ小径化が可能であり、複雑な電気配線の中の狭い隠蔽個所に設置することができる。しかしながら、電動装置などに組み込む場合には、装置の駆動時の振動によって生じうる電線同士の摩擦による摩耗や、擦過音が発生するという問題がある。
【0003】
電線類等の結束テープの基材には、通常、ポリ塩化ビニル樹脂を基材としたものが多く用いられているが、吸音性が求められる用途においては、上記振動における打音や擦過音を低減する目的で織布や不織布等からなる基材層を備える結束テープが用いられている。このような吸音性能を有する結束テープとして、例えば、特許文献1には、機械的又は湿式配置で強化されたウェブに、結合剤を添加した不織布からなる基材層を備える接着テープが記載されている。
【0004】
しかしながら、織布又は不織布からなる基材は、織糸や繊維によって構成されていることから、繊維と繊維の間に数μm~数mm程度の隙間が存在する。このような隙間に埃や塵が混入したり、水や潤滑油、冷媒等の薬品が浸透したりして内部の電線を汚染することがある。また、車両の衝突等によってガラス、樹脂等で形成された部品が破損し、その破損個所に鋭利な部位が隙間を抜けたりするなどして、内部の電線を傷つけるといった問題もある。
【0005】
上述の埃や塵の混入、水や油等による被覆物の汚染や腐食を防止できる粘着テープとして、例えば、特許文献2には、ブチルゴム等のゴム基材からなる粘着テープが提案されている。また、特許文献3、4に代表される肉厚のポリ塩化ビニル樹脂を基材とした粘着テープは、上述の鋭利な先端から電線を保護する目的で用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2004-524376号公報
【文献】特開2006-152192号公報
【文献】特許第5572546号公報
【文献】特開平11-7856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の粘着テープは、上述の車両の衝突等によってガラス、樹脂等で形成された部品が破損し、その破損個所に鋭利な部位による突き刺しに耐えられないほか、電動装置の振動による擦れにより磨耗が発生する問題がある。また、特許文献3、4に記載の粘着テープや保護材は、電線に巻きつけた際に径が太くなるために、結束によって電線の屈曲性が損なわれ、電線を小径に束ねることができなくなる問題がある。
そこで本発明は、打音や擦れ音を低減でき、埃や塵の混入や水や油の浸透による被覆物の汚染を防止でき、突き刺しや擦れに対する耐久性を有し、被覆物を結束した後の屈曲が容易である粘着テープの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
係る課題に対し、本発明者らは鋭意検討した結果、ポリ塩化ビニル樹脂に特定のエラストマーと、可塑剤とを配合した組成物をテープ形状に成形することによって、前述の全ての課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1]ポリ塩化ビニル100質量部と、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して、10~100質量部のエラストマーと、10~100質量部の可塑剤とを含む基材を有する粘着テープであって、前記エラストマーが、アクリロニトリルモノマー単位と、クロロプレンモノマー単位、ブタジエンモノマー単位、及びイソプレンモノマー単位からなる群より選択される少なくとも1つのモノマー単位と、を含み、前記粘着テープの吸音試験における減衰値が2dB以上である、粘着テープ。
[2]前記エラストマーのガラス転移温度が、-40℃~0℃である、[1]に記載の粘着テープ。
[3]前記可塑剤が、フタル酸と、炭素数9~10のアルコールとのジエステルである、[1]又は[2]に記載の粘着テープ。
[4]前記基材の一方の表面に、前記基材の他方の表面を重ね合わせた際の粘着力が、0.5~5N/10mmである、[1]から[3]のいずれか一項に記載の粘着テープ。
[5]前記基材が、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して、カーボンブラックを1~50質量部含む、[1]から[4]のいずれか一項に記載の粘着テープ。
[6]前記基材の厚みが150~750μmである、[1]から[5]のいずれか一項に記載の粘着テープ。
[7]前記粘着テープのテープ幅が10~300mmであり、ロール状に巻かれた形態で、65℃で72時間静置した後の変形率が10%以下である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、打音や擦れ音を低減でき、埃や塵の混入や水や油の浸透による被覆物の汚染を防止でき、突き刺しや擦れに対する耐久性を有し、被覆物を結束した後の屈曲が容易である粘着テープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1に係る粘着テープを表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0012】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、ポリ塩化ビニル100質量部と、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して、10~100質量部のエラストマーと、10~100質量部の可塑剤とを含む基材を有する粘着テープであって、前記エラストマーが、アクリロニトリルモノマー単位と、クロロプレンモノマー単位、ブタジエンモノマー単位、及びイソプレンモノマー単位からなる群より選択される少なくとも1つのモノマー単位と、を含み、前記粘着テープの消音試験における減衰値が2dB以上あることを特徴とする。このような粘着テープであれば、打音や擦れ音を低減でき、埃や塵の混入や水や油の浸透による被覆物の汚染を防止でき、突き刺しや擦れに対する耐久性を有し、さらに被覆物を結束した後の屈曲が容易である。なお、粘着テープの減衰値は下記の吸音試験によって求めた値のことを指す。
<吸音試験>
ドイツ自動車メーカー各社の統合規格であるLV312-1第5.5.5節の「防音材」と同様の方法にて試験を行い、減衰値を算出する。具体的には、板厚0.3mm、寸法350mm×190mmのアルミ板を直径290mmの半円状に湾曲させる。次に、直径8mmの鋼棒をアルミ板頂点の上方20mmの位置から0.16Nの荷重で落下させる。その際、衝撃位置から50mm上方に設置したマイクで衝撃時のノイズ(単位:dB)を測定する。鋼棒単体で測定したノイズに対し、鋼棒の衝撃位置に粘着テープサンプル(寸法25mm×50mm)を1層貼り付けて測定したときのノイズを測定し、その差を減衰値とする。
【0013】
本発明の粘着テープは、前記の吸音試験における減衰値が2dB以上であり、3dB以上であることが好ましく、4dB以上であることが更に好ましい。吸音試験における減衰値が高いほど、エンジンの振動や走行時の揺れになどよる打音や擦れ音を抑制することができる。減衰値を上げる方法としては、例えば、テープ基材の配合調整(例えばエラストマー成分、可塑剤の比率を上げる、充填剤を添加する等)や、テープの厚みを厚くする等の方法が挙げられる。
【0014】
<基材>
本発明の基材は、ポリ塩化ビニル100質量部と、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して、10~100質量部のエラストマーと、10~100質量部の可塑剤とを含む。本発明の基材は、それ自体が粘着性能を有する。そのため、本発明の粘着テープは、粘着層を有さなくともよい。すなわち、基材のみから構成されていてもよい。なお、粘着テープが基材のみから構成されている場合、基材の一方の表面は粘着力を有していないことが好ましい。すなわち、基材の一方の表面は粗面化されていてもよい。
1つの好ましい態様において、前記基材の一方の表面に、前記基材の他方の表面を重ね合わせた際の粘着力は、0.1~10N/10mmであることが好ましく、0.5~5N/10mmであることがより好ましい。なお、前記粘着力は、JIS Z 0237に準じた方法にて測定した180°引き剥がし粘着力の値のことを指す。粘着力が前記範囲内であれば、例えば、結束テープとして用いた際に、十分な結束性が得られやすくなる。
【0015】
本発明の粘着テープには、突き刺しや擦れに対する耐久性と、電線等を結束した後に容易に屈曲できるようにするための高い柔軟性(以下、「屈曲性」と記載する)との両方の性能が求められる。さらに、このような要求を満たしつつ、埃や塵、水や油に対する耐性(以下、「耐水性」、「耐油性」と記載することもある)も必要である。これらの性能を満足させる成分としては、ポリ塩化ビニルと可塑剤とを含む、軟質ポリ塩化ビニル樹脂が好適である。
【0016】
本発明の粘着テープの基材には、ポリ塩化ビニルと可塑剤とを含むことが必須であり、その割合はポリ塩化ビニル100質量部に対し、可塑剤10~100質量部であり、20~80質量部であることが好ましく、30~70質量部であることがより好ましい。可塑剤が上記下限値未満であると屈曲性が低下し、上記上限値超であると突き刺しや擦れに対する耐久性が低下する。
【0017】
また、本発明の粘着テープには、打突や擦れによる音の発生を抑制するための、吸音性能が求められる。この要求を満たしつつ、上述の耐久性を損なわない成分としては、エラストマーが好適である。その割合はポリ塩化ビニル100質量部に対し、エラストマー10~100質量部であり、20~80質量部であることが好ましく、30~70質量部であることがより好ましい。エラストマーが上記下限値未満であると吸音性が低下し、上記上限値超であると突き刺しや擦れに対する耐久性が低下する。
【0018】
基材に含まれるポリ塩化ビニルとしては、例えば、ポリ塩化ビニルのホモポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、突き刺しや擦れに対する耐久性、耐水性や耐油性に優れ、かつ汎用的で安価に使用可能であることから、ポリ塩化ビニルのホモポリマーが好ましい。
ポリ塩化ビニルの重合度は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、良好な加工性を得る観点から、平均重合度が500~4000のものが好ましく、800~3000のものがより好ましく、1000~2000のものが特に好ましい。
【0019】
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル及びそれらのポリエステル、リン酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤等を使用することができる。
具体例としては、フタル酸ジイソニル(DINP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ジ-n-オクチル(n-DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、イソフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOIP)、テレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOTP)、ベンジルブチルフタレート(BBP)、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル(TOTM)、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、トリクレジルホスフェート(TCP)、ベンジルオクチルアジペート(BOA)、アジピン酸-プロピレングリコール系ポリエステル、アジピン酸-ブチレングリコール系ポリエステル、フタル酸-プロピレングリコール系ポリエステル、ジフェニルクレジルホスフェート(DPCP)、アジピン酸ジイソデシル、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記可塑剤のうち、ポリ塩化ビニル樹脂に対する可塑化効果に優れ、ブリードアウトの少ないフタル酸ジイソニル(DINP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ジ-n-オクチル(n-DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)などのフタル酸ジエステルが好ましく、その中でもフタル酸ジイソニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)等の、フタル酸と炭素数9~10のアルコールとのジエステルが特に好ましい。炭素数が9以上のアルコールとのジエステルであれば、人体への影響がより小さいため好ましい。炭素数が10以下のアルコールとのジエステルであれば、より良好な可塑化効果が得られやすくなる。
【0020】
エラストマーは、上述のポリ塩化ビニルに対して分散性が高く、突き刺しや擦れに対する耐久性が損なわれにくい、アクリロニトリルモノマー単位と、クロロプレンモノマー単位、ブタジエンモノマー単位、及びイソプレンモノマー単位からなる群より選択される少なくとも1つのモノマー単位と、を含有するエラストマーを用いることを必須とする。また、アクリロニトリルモノマー単位と、クロロプレンモノマー単位、ブタジエンモノマー単位、及びイソプレンモノマー単位からなる群より選択される少なくとも1つのモノマー単位と、からなるエラストマーがより好ましい。
具体例としては、アクリロニトリル-クロロプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-イソプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-イソプレンゴム等が挙げられ、その中でも耐水性や耐油性により優れる観点から、アクリロニトリル-クロロプレンゴムが好ましい。また、突き刺しや擦れに対する耐久性に優れる観点からは、アクリロニトリル-ブタジエンゴムが好ましい。
【0021】
エラストマー中のアクリロニトリルモノマー単位の割合は、エラストマーの全モノマー単位の合計量に対して、5~45質量%が好ましく、15~35質量%がより好ましい。エラストマー中のアクリロニトリルの割合が前記範囲内であれば、ポリ塩化ビニルとの相溶性が良好のため、高い摩耗耐久性が得られやすい。
【0022】
エラストマーのガラス転移温度は-40℃~0℃であることが好ましく、-35℃~-5℃であることがより好ましく、-32℃~-8℃であることが更に好ましい。上記下限値以上であれば、突き刺しや擦れに対する耐久性が損なわれにくくなる。また、上記上限値以下であれば、屈曲性が損なわれにくい。
【0023】
なお、ガラス転移温度は、測定法や測定条件によって変化する。そこで、本実施形態のエラストマーにおけるガラス転移温度は、示差走査熱量測定法(DSC)により、大気圧下、昇温速度10℃/分で、-100℃から100℃まで変化させた時の熱容量変化の変極点とする。ここでいうガラス転移温度は、JIS K 7121に準拠し、中間点ガラス転移温度Tmg、補外ガラス転移開始温度Tig、補外ガラス転移終了温度Tegから算出することができる。その際、Tmgは各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とし、Tigは、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とし、Tegは、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度と定義される。なお、本実施形態のエラストマーにおけるガラス転移温度は、前述した示差走査熱量測定法(DSC)に記載の条件で直接Tmgを測定した値である。
【0024】
本発明の粘着テープには、増量材又は補強材等として、無機充填材が含まれていてもよい。無機充填材としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化モリブデン、リン酸グアニジン、ハイドロタルサイト、スネークタイト、硼酸亜鉛、無水硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、赤燐、タルク、カオリン、クレー、アルミナ、シリカ、ベーマイト、ベントナイト、珪酸ソーダ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の無機充填材のうち、突き刺しや擦れに対する耐久性をより向上させることのできる、タルク、カオリン、クレー、シリカ、カーボンブラックが好ましい。特にポリ塩化ビニル及びエラストマーの両方の補強効果がより高い、カーボンブラックがより好ましい。本発明の1つの態様においては、ポリ塩化ビニル100質量部に対して、1~50質量部、より好ましくは10~50質量部のカーボンブラックを基材中に含むことが好ましい。
前記無機充填材は、天然物を粉砕して得られたものでもよく、水溶液等にしたものを中和させ析出させて得られたものであっても良い。また、表面処理剤等で官能基を導入したものであってもよい。表面処理剤としては、例えば、脂肪酸、ロジン酸、リグニン酸、4級アンモニウム塩等が使用できる。
【0025】
本発明の粘着テープには、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、改質剤、分散剤、着色剤、安定剤、老化防止剤、光吸収剤、滑剤等を添加してもよい。
前記改質剤としては、例えば、ハロゲン化ビニル系共重合体(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリ塩化ビニル)、前記エラストマー以外のエラストマー成分(ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート共重合体等、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エーテル系及びエステル系ポリウレタン等)、熱可塑性樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル-スチレン共重合体)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
無機充填剤、改質剤、及びその他添加剤の含有量は、特に限定されず、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。例えば前記のポリ塩化ビニル100質量部に対して、0質量部を超え50質量部以下を配合することができる。
【0027】
本発明の粘着テープは、粘着層を有していてもよい。粘着層を有する場合、前記粘着層は、粘着剤により構成されていることが好ましい。粘着剤としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、従来結束テープに用いられている粘着剤を適宜用いることができる。具体的には、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等を用いることができる。また、前記粘着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、例えば、軟化剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、滑剤、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
粘着層を有する場合、その厚みとしては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、5~100μmが好ましく、10~50μmがより好ましい。
また、粘着層は、複数の層から構成されていてもよい。粘着層が複数の層から構成される場合、粘着層の総厚みが前記範囲内となるように調整されることが好ましい。
【0029】
[粘着テープの製造方法]
本発明の粘着テープの製造方法としては、上述のポリ塩化ビニル、エラストマー、及び可塑剤を含む原料を混合して溶融混練したのち、所定の厚み、幅、長さに製膜する方法が挙げられる。溶融混練方法は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、二軸押出機、連続式及びバッチ式のニーダー、ロール、バンバリーミキサー等の加熱装置を備えた各種混合機、混練機が使用できる。前記方法によって原料を均一に分散させた組成物を慣用の方法、例えばカレンダー法、Tダイ法、インフレーション法等によりシート状に製膜することができ、製膜したシートをロール状に巻いた形態とすることでテープとして使用することができる。
また、本発明の1つの態様において、製膜したシートをロール状に巻き取った後、100℃以上、好ましくは100~130℃で、1~6時間アニール処理を施すことが好ましい。このようなアニール処理を施すことで、以下に説明する変形率をより小さくすることができるため好ましい。
【0030】
本発明の粘着テープの厚みは、150~750μmであることが好ましく、より好ましくは250~650μmであり、さらに好ましくは300~600μmである。厚みが上記下限値以上であることにより、吸音性能及び各種耐久性により優れた粘着テープが得られやすくなる。また、上記上限値以下であることにより、結束後の屈曲性がより良好となりやすい。また、本発明の粘着テープの幅は、好ましくは10~300mm、より好ましくは15~250mm、更に好ましくは18~220mmである。テープ幅が長いほどテープ単位長さあたりの結束面積が大きくなることから、テープ幅が長いほど結束力が良好となりやすく、短いほど結束後の屈曲性がより良好となりやすい。
【0031】
本発明の粘着テープは、結束作業性の観点から、均一な幅でロール状に巻かれた形態であることが好ましく、その形態が温度変化や時間経過後も維持されることが更に好ましい。特にエラストマーを含むテープは、製膜温度やロール状形態に巻く温度よりも高温の環境下で静置すると、残留ひずみの緩和により「変形」が発生することがある。従って、その変形率が小さいほど良い。変形率を小さくするためには、テープ基材の配合調整(例えば、エラストマー成分や、可塑剤の比率を下げる等)や、テープ幅を大きくする、テープの一方の面と他方の面(テープの表面と裏面)との粘着力を上げる、巻き取り時の張力を下げる、巻き取り後に加熱処理(アニール処理)を行い、残留ひずみを予め緩和する等の方法が挙げられる。
なお、変形率は、静置前のテープロール幅をW1、静置後のテープロール幅をW2とし、以下の式で求めることができる。
[変形率(%)]=([W2]-[W1])/[W1]×100
本発明の1つの態様において、65℃で72時間静置した後の変形率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。本発明の粘着テープは、変形の原因となる粘着剤層を必須としないため、65℃で72時間静置した後の変形率を10%以下としやすくなる。
【0032】
<用途>
前述の通り、本発明の粘着テープは、打音や擦れ音を低減でき、埃や塵の混入や水や油の浸透による被覆物の汚染を防止でき、突き刺しや擦れに対する耐久性を有し、被覆物を結束した後の屈曲が容易である。そのため、これらの性能が要求される分野、例えば、電動装置の駆動部分の電気配線、車両の電装部分などに好適に用いることができる。また、家電やオフィス用品、音響機器など、特に静音性が製品品質に繋がる装置などにも好適に用いるなどができる。なお、当然ながら本発明の粘着テープは、上記用途に限定されるわけではない。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
<エラストマーの合成>
加熱冷却ジャケットと攪拌機を備えた内容積3リットルの重合缶に、アクリロニトリル単量体30質量部、クロロプレン単量体30質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成(株)製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王(株)製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体40質量部の分添を行い、分添は重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。クロロプレン単量体及びアクリロニトリル単量体の合計量に対する重合率が56%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでアクリロニトリル-クロロプレン共重合体ラテックスを得た。得られたアクリロニトリル-クロロプレン共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上で凍結凝固させることで乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のアクリロニトリル-クロロプレンゴムを得た。
上記アクリロニトリル-クロロプレンゴムのガラス転移温度は-21℃であった。
【0035】
なお、共重合体ラテックスの重合率は、共重合体ラテックスを風乾した乾燥重量から算出した。具体的には、以下の一般式(I)より計算した。式中、固形分濃度とは、サンプリングした共重合体ラテックス2gを130℃で加熱して、溶媒(水)、揮発性薬品及び原料などの揮発成分を除いた固形分の濃度(質量%)である。総仕込み量とは、重合開始からある時刻までに重合缶に仕込んだ原料、試薬、溶媒(水)の総量である。蒸発残分とは、重合開始からある時刻までに仕込んだ薬品や原料のうち、130℃の条件下で揮発せずにポリマーと共に固形分として残留する薬品の質量である。単量体仕込み量は、重合缶に初期に仕込んだ単量体及び重合開始からある時刻までに分添した単量体の量の合計である。
重合率[%]={(総仕込み量[g]×固形分濃度[質量%]/100)-(蒸発残分[g])}/単量体仕込み量[g]×100 ・・・(I)
【0036】
<粘着テープの作製>
ポリ塩化ビニル(大洋塩ビ(株)製、商品名「TH-1000」)100質量部、エラストマーとして上記アクリロニトリル-クロロプレンゴム(ガラス転移温度-21℃)を60質量部、可塑剤としてフタル酸イソノニル((株)ジェイプラス製、商品名「DINP」)を40質量部、カーボンブラック((株)旭カーボン製、商品名「#70」)を50質量部添加し、ロール温度165℃の8インチ二本ロール((株)西村マシナリー製)にて5分間混練後、厚さ400μm、幅100mm、表面粗さ(Ra)が1μmとなるようにシート状に製膜した。その後、ロール状に巻き取って、100℃にて2時間加熱処理を行って粘着テープサンプルを得た。
図1は、本発明の実施例1に係る粘着テープ100を表す断面図である。実施例1の粘着テープ100は、基材10の一方の表面10aが、表面粗さ(Ra)が1μmとなっている。また、基材10の他方の表面10bが粘着性を有している。
【0037】
<吸音性評価>
得られた粘着テープサンプルの減衰値を、以下の評価方法に沿って評価した。
ドイツ自動車メーカー各社の統合規格であるLV312-1第5.5.5節の「防音材」と同様の方法にて試験を行って、減衰値を算出した。具体的には、板厚0.3mm、寸法350mm×190mmのアルミ板を直径290mmの半円状に湾曲させた。次に、温度23±2℃、湿度50±10%の環境にて、直径8mmの鋼棒をアルミ板頂点の上方20mmの位置から0.16Nの荷重で落下させたその際、衝撃位置から50mm上方に設置したマイクで衝撃時のノイズ(単位:dB)を測定した。鋼棒単体で測定したノイズに対し、鋼棒の衝撃位置に粘着テープサンプル(寸法25mm×50mm)を1層貼り付けて測定したときのノイズを測定し、その差を減衰値とした。結果を表1に示す。
【0038】
<粘着力評価>
得られた粘着テープサンプルの粘着力を、JIS Z 0237に基づき、表面と他方の面との180°引き剥がし粘着力を測定した。すなわち、
図1において、粘着テープ100の表面10aの上に、別の粘着テープ100の表面10bを貼り付けて、180°引き剥がし粘着力を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
<変形率>
得られた粘着テープサンプルを65℃の環境下で72時間静置した後の変形率を、静置前のテープロール幅をW1、静置後のテープロール幅をW2とし、以下の式で求めた。結果を表1に示す。
[変形率(%)]=([W2]-[W1])/[W1]×100
【0040】
<結束性評価>
結束性は以下の様にして評価した。
直径1.5mm、長さ150mmの電線を20本束にして直径10mmの電線群を作成し、粘着テープ(長さ60mm、幅50mm。但しMDを長さ方向とする。)を電線群の中央に、MDが電線群と垂直となる様に巻きつけた。次に、粘着テープの端部同士を5mmずつ重ね合わせて指で30秒間圧着して、評価サンプルを作成した。
評価サンプルを100℃雰囲気のオーブンで1分間加熱した後にオーブンから取り出し、温度23±2℃、湿度50±5%RHに設定された評価試験室内で30分間静置した。その後、評価サンプルの粘着テープを片方の手で握り、電線群をもう一方の手で引っ張り、電線群の状態を以下の評価基準に沿って評価した。なお、「C」以上を合格とした。
(評価基準)
A:全ての評価サンプルで電線群が全く動かなかった。
B:一部の評価サンプルで電線群の多少の横ずれが生じた。
C:一部の評価サンプルで電線群が粘着テープより抜けた。
D:全ての評価サンプルで電線群が容易に粘着テープより抜けた。
【0041】
<屈曲性評価>
粘着テープを電線束に結束した後の屈曲性を以下の方法に沿って評価した。また、以下の評価基準に従って評価し、「C」以上を合格とした。
まず、前述の結束性評価と同じ方法にて電線束を結束した。この電線束を所定の直径の円筒側面に1周巻き付けるとき、円筒に追従させて(折れ曲がったりせずに)巻き付けることが可能な最小の円筒の径を計測した。
(評価基準)
A:円筒径が5mm未満である。
B:円筒径が5mm以上10mm未満である。
C:円筒径が10mm以上15mm未満である。
D:円筒径が15mm以上である。
【0042】
<打音抑制評価>
粘着テープの打音抑制効果を以下の方法に沿って評価した。また、以下の評価基準に従って評価し、「C」以上を合格とした。
前期結束性評価と同じ方法にて電線束を結束した。電線束を直径50mmのステンレス性円筒側面に1周巻き付けたのち、粘着テープで固定した。その後、温度23±2℃、湿度50±10%の環境にて、円筒側面を上にし、直径10mmの鋼球を高さ25cmより電線束の上に落とし、打音を発生させた。音の発生位置から50mm上方に設置したマイクで音圧(単位:μPa)を測定した。
(評価基準)
A:音圧が20μPa未満である。
B:音圧が20μPa以上40μPa未満である。
C:音圧が40μPa以上60μPa未満である。
D:音圧が60μPa以上である。
【0043】
<擦れ音抑制評価>
粘着テープの擦れ音抑制効果を以下の方法に沿って評価した。また、以下の評価基準に従って評価し、「C」以上を合格とした。
前述の結束性評価と同じ方法にて電線束を結束した。この電線束の上に、10mmΦコルゲートチューブ(パンドウィットコーポレーション社製)を電線束に対し90度の向きで重ねたのち、温度23±2℃、湿度50±10%の環境にて、コルゲートチューブを長さ方向に速度50±10mm/秒で往復運動させ、擦れ音を発生させた。音の発生位置から20mm上方に設置したマイクで音圧(単位:μPa)を測定した。
(評価基準)
A:音圧が20μPa未満である。
B:音圧が20μPa以上40μPa未満である。
C:音圧が40μPa以上60μPa未満である。
D:音圧が60μPa以上である。
【0044】
<突き刺し耐久性評価>
粘着テープの突き刺し耐久性を以下の方法に沿って評価した。また、以下の評価基準に従って評価し、「C」以上を合格とした。
粘着テープサンプルを直径20mmの穴の開いたステージの上に固定し、温度23±2℃、湿度50±10%の環境にて、穴の中心に直径1mm、R0.5mmの針にて、50mm/分の速度で突き刺した。このとき、針がサンプルを貫通するまでの最大荷重(N)を測定した。
(評価基準)
A:最大荷重が15N以上である。
B:最大荷重が10N以上15N未満である。
C:最大荷重が5N以上10N未満である。
D:最大荷重が5N未満である。
【0045】
<摩耗耐久性評価>
粘着テープの摩耗耐久性を以下の方法に沿って評価した。また、以下の評価基準に従って評価し、「C」以上を合格とした。
温度23±2℃、湿度50±10%の環境にて、粘着テープサンプルを直径10mmの円筒に1周巻き付け、その上から粒度180μmの紙やすりにて速度150mm/秒でサンプル表面を磨耗させた。このとき、サンプルに穴が開くまでの摩耗距離(mm)を測定した。
(評価基準)
A:摩耗距離が1500mm以上である。
B:摩耗距離が900mm以上1500mm未満である。
C:摩耗距離が450mm以上900mm未満である。
D:摩耗距離が450mm未満である。
【0046】
<耐水性評価>
粘着テープの耐水性を以下の方法に沿って評価した。また、以下の評価基準に従って評価し、「C」以上を合格とした。
直径1.45mm(1.65sq)の電線10本をらせん状に束ね、その上から粘着テープサンプルをらせん状に2周巻き(ハーフラップ巻き)し、電線束を結束した。この電線束を40℃の水中で72時間静置した後の端末部分の剥がれを観察した。
(評価基準)
A:結束直後と同じ状態で変化なし。
B:剥がれの兆候(表面のしわ)がみられるが剥がれてはいない。
C:端末部分の一部に剥がれがみられるが全体としては剥がれていない。
D:端末部分が全て剥がれている。
【0047】
<耐油性評価>
粘着テープの耐油性を以下の方法に沿って評価した。また、以下の評価基準に従って評価し、「C」以上を合格とした。
直径1.45mm(1.65sq)の電線10本をらせん状に束ね、その上から粘着テープサンプルをらせん状に2周巻き(ハーフラップ巻き)し、電線束を結束した。この電線束を40℃のエンジンオイル(エクソンモービル社 Mobil1TM 0W-16)中で72時間静置した後の端末部分の剥がれを観察した。
(評価基準)
A:結束直後と同じ状態で変化なし。
B:剥がれの兆候(表面のしわ)がみられるが剥がれてはいない
C:端末部分の一部に剥がれがみられるが全体としては剥がれていない。
D:端末部分が全て剥がれている。
【0048】
[実施例2~26、及び比較例1~7]
エラストマーの組成、粘着テープの配合組成、厚み、幅、表面粗さRaを表1~3に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法にて粘着テープを作成した。得られた粘着テープの厚みと幅の長さを表1~3に示した。また、各粘着テープについて、実施例1と同様の方法で、各種評価を行い、結果を表1~3に示した。
なお、上記実施例及び比較例にて用いた使用原料の詳細は以下のとおりである。
<使用原料>
(ポリ塩化ビニル)
ポリ塩化ビニル1:大洋塩ビ(株)製、商品名「TH-1000」。
ポリ塩化ビニル2:大洋塩ビ(株)製、商品名「TH-1300」。
エチレン-ポリ塩化ビニル共重合体:大洋塩ビ(株)製、商品名「TE-1050」。
(エラストマー)
アクリロニトリル-ブタジエンゴム:日本ゼオン(株)製、商品名「Nipol(登録商標)1043」、ガラス転移温度:-37℃。
水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム:日本ゼオン(株)製、商品名「Zetpol(登録商標)2010」、ガラス転移温度:-24℃。
アクリロニトリル-ブタジエン-イソプレンゴム:日本ゼオン(株)製、商品名「Nipol(登録商標)DN1201」、ガラス転移温度:-26℃。
スチレン-ブタジエンゴム:日本ゼオン(株)製、商品名「Nipol(登録商標)1502」、ガラス転移温度:-51℃。
クロロプレンゴム:デンカ(株)製、商品名「デンカクロロプレンM-40」、ガラス転移温度:-38℃。
(可塑剤)
フタル酸ジイソデシル:(株)ジェイプラス製、商品名「DIDP」。
アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル):(株)ジェイプラス製、商品名「DOA」。
トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル):(株)ジェイプラス製、商品名「TOTM」。
(無機充填剤)
カーボンブラック1:(株)東海カーボン製、商品名「SEAST(登録商標)3」。
カーボンブラック2:三菱化学(株)製、商品名「ダイアブラック(登録商標)H」。
炭酸カルシウム:神島化学工業(株)製、商品名「カルシーズ(登録商標)P」。
シリカ:東ソー・シリカ(株)製、商品名「Nipsil(登録商標) AQ」。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
表1~3に示すように、本願の構成を満たす実施例1~26の粘着テープは、打音、擦れ音抑制、突き刺し耐久性、摩耗耐久性、屈曲性、結束性、耐水・耐油性の全ての物性に優れていた。一方、本発明の構成を満たさない比較例1~7の粘着テープでは、上記全ての物性を満たすことはできなかった。以上の結果より、本発明の粘着テープは、打音や擦れ音を低減でき、水や油の浸透による被覆物の汚染を防止でき、突き刺しや擦れに対する耐久性を有し、被覆物を結束した後の屈曲が容易であることが確認された。